トンネル分岐合流部の非開削築造方法
【課題】ボルトや連結金物などを使用しないセグメントを使用することで、分岐合流部におけるシールド掘削機の掘進効率を向上させるようにした。
【解決手段】シールド掘削機で切削可能な材料からなり、本線トンネル10の分岐合流箇所をトンネル周方向に分割させてなる連結部を有し、連結部の一方の継手面に凸状ヒンジ部を形成させ、連結部の他方の継手面に凹状ヒンジ部を形成させてなるヒンジ継手Tを設けた切削セグメント12A,12Bを備え、分岐合流部1の切削セグメント12A,12Bをシールド掘削機で切削しながら掘進させ、掘進後に、分岐合流部1の本線トンネル10と支線トンネル20とを接合して一体化させた。
【解決手段】シールド掘削機で切削可能な材料からなり、本線トンネル10の分岐合流箇所をトンネル周方向に分割させてなる連結部を有し、連結部の一方の継手面に凸状ヒンジ部を形成させ、連結部の他方の継手面に凹状ヒンジ部を形成させてなるヒンジ継手Tを設けた切削セグメント12A,12Bを備え、分岐合流部1の切削セグメント12A,12Bをシールド掘削機で切削しながら掘進させ、掘進後に、分岐合流部1の本線トンネル10と支線トンネル20とを接合して一体化させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支線トンネルと本線トンネルとが接続するトンネル分岐合流部の非開削築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば道路や地下鉄等のトンネルの施工において、先行してシールド工法により掘削された本線トンネルに地上と連絡される支線トンネルを接続させる施工では、支線トンネル及び接続部(分岐合流部)を地上から開削工法で行うのが主流となっている。
支線トンネルと分岐合流部の築造方法は、これらの築造範囲の外側に止水と山留めを目的とした連続地中壁を施工しておき、本線トンネルのシールド掘削機を掘進させてセグメントを構築する。その後に支線トンネルを開削により施工すると共に、本線トンネルのセグメントを解体して分岐合流部を構築するといった開削工法による方法で施工されている。
しかし、近年では、地上における施工スペースの確保が困難であり、また路面の占有面積が広範囲になると、路面の使用が制限されることによる交通障害や施工中の騒音などの環境問題が発生することから、都市部の大規模な開削工法は困難な状態となっている。
このような問題に対して、開削工法によらない施工方法(非開削工法)として、例えば地中の掘削部の外周を形成するように複数の曲線ボーリングを施工し、その周囲を地盤改良することで屋根状の防護壁を形成し、その内空側で地下空間を形成する工法が実施されている。
また、開削工法によらない非開削工法によって構築される分岐合流施工法が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1は、地上より掘り下げて発進基地を構築し、この発進基地から縦長の矩形断面をなすシールド掘削機を斜め下方の地下に向けて発進させ、先行施工した二本のシールドトンネル(本線トンネル)の間にシールド掘削機を接続させて支線トンネルを構築するものである。そして、支線トンネルと本線トンネルとがラップする接合部は、支線トンネルのシールド掘削機によって切削可能な材料からなるセグメントを設置しておき、シールド掘削機のカッタでこの切削可能なセグメントを切削して構築される。
【特許文献1】特開2003−148086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の非開削工法によるトンネル分岐合流部の施工方法では、以下のような問題があった。
一般的に、土中のセグメントには、周囲の土水圧により曲げモーメントが作用する。このため、セグメントの周方向をなすピース間の継手は曲げモーメントにより発生する引張力を伝達するため、緊結力の大きいボルトやボルト以外の連結金物などで固定されている。そのため、特許文献1のようにセグメントをシールド掘削機のカッタで切削するような施工では、ボルトや連結金物がカッタによる切削を妨げることになり、シールド掘進機の掘進の効率が低下するといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ボルトや連結金物などを使用しないセグメントを使用することで、分岐合流部におけるシールド掘削機の掘進効率を向上させるようにしたトンネル分岐合流部の非開削築造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル分岐合流部の非開削築造方法では、シールド工法により施工された本線トンネルに支線トンネルを接続させるトンネル分岐合流部の非開削築造方法であって、シールド掘削機で切削可能な材料からなり、本線トンネルの分岐合流箇所をトンネル周方向に分割させてなる連結部を有し、連結部の一方の継手面に凸状部を形成させ、連結部の他方の継手面に凹状部を形成させてなるヒンジ継手を設けた切削セグメントを備え、トンネル分岐合流部の切削セグメントをシールド掘削機で切削しながら掘進させ、掘進後に、分岐合流部の本線トンネルと支線トンネルとを接合して一体化するようにしたことを特徴としている。
本発明では、本線トンネルにおける分岐合流部の切削セグメントにヒンジ継手を設けることで、そのヒンジ継手の継手面にかかる曲げモーメントが抑制される構造となる。そのため、このヒンジ継手には、ボルトなどの剛性の大きな連結部材による連結が不要となり、シールド掘削機のカッタの切削に影響されることなく掘進することができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができる。また、シールド掘削機によって本線トンネルに備えた切削セグメントを切削しながら掘進させて支線トンネルと本線トンネルとを接合させ、分岐合流部を支線トンネル及び本線トンネルの内部から築造することができるため、開削工法が不要となる。
【0006】
また、本発明に係るトンネル分岐合流部の非開削築造方法では、シールド掘削機を、一方の地上部より発進させ、分岐合流部を通過させて他方の地上部に到達させるようにすることが可能である。
本発明では、土被りの小さな部分からシールド掘削機でトンネルを構築することができるため、立坑や開削にかかるコストを低減させることができ、工期短縮を図ることができる。そして、開削範囲を削減できることから、地上部における施工範囲を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトンネル分岐合流部の非開削築造方法によれば、本線トンネルにおける分岐合流部の切削セグメントにヒンジ継手を設けることで、シールド掘削機のカッタの切削に影響を及ぼしていたボルトや連結金物などの従来の継手が不要となるため、分岐合流部におけるシールド掘削機の掘進効率を向上させることができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができ、セグメントの組み立て作業の手間が減り、セグメント組み立て時間の短縮を図ることができる。
そして、シールド掘削機によって本線トンネルを切削しながら掘進させて支線トンネルと本線トンネルとを接合させ、支線トンネル及び本線トンネルの内部から分岐合流部を築造することができるため、開削工法が不要となる効果が得られる。
また、支線トンネルや分岐合流部の周囲に大掛かりな地盤改良を施したりする必要もないので、施工コストや施工工期を低減することができる。
さらに、分岐合流部の築造を非開削とすることで、地上部における占有面積が広範囲にならないことから、地上部の交通渋滞など周辺環境を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のトンネル分岐合流部の非開削築造方法の実施の形態について、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法によって築造された分岐合流部の概略構成を説明するための平面断面図、図2は本線トンネルと支線トンネルとの概略構成を説明するための側断面図、図3(a)、(b)、(c)はそれぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、図4は本線セグメントを示す断面図、図5は本線セグメントに設けられる切削セグメントのヒンジ継手を示す斜視図、図6(a)、(b)はシールド掘削機の構成および発進状態を説明する図、図7(a)、(b)はシールド掘削機のカッタを傾斜位置にしたときの掘削状態を説明する図、図8(a)はシールド掘削機のカッタを垂直位置にしたときの掘削状態を説明する図、図9(a)はシールド掘削機の軌条の敷設状態を示す図、(b)は図9(a)に示すトンネルを後方から見た図、図10〜図11は分岐合流部を構築するための工程説明図であって、夫々図3(c)に対応した図である。
【0009】
図1及び図2に示すように、本実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法は、センターランプ方式の道路トンネルに採用されている。分岐合流部1は、地下に所定の間隔を開けて平行に配置された二本の本線トンネル10A(図中左側から右側を進行方向とする「上り線」)、10B(図中右側から左側を進行方向とする「下り線」)の間に、地上部2に連絡される第一及び第二ランプ部20A、20Bが分岐又は合流して接続されている。
なお、本線トンネル10A、10Bは、以下、必要に応じて「本線トンネル10」で総称する。また、二本の本線トンネル10A、10Bの所定の間隔とは、第一及び第二ランプ部20A、20Bを構築することのできる間隔である。
また、説明の便宜上、上り線の本線トンネル10Aに関する部材に符号Aを付加し、下り線の本線トンネル10Bに関する部材に符号Bを付加して区別する。
【0010】
図3(a)に示すように、本線トンネル10A、10Bは、シールド工法によって、地山5内に延設された円管状の本線セグメント11A、11Bにより構築されたシールドトンネルである。シールド工法としては、周知の種々の工法を採用することができる。
【0011】
第一及び第二ランプ部20A、20Bは、本線トンネル10への乗り降りをする連絡通路であり、車線の進行方向により合流道路(入口ランプ)にもなれば、分岐道路(出口ランプ)にもなるが、いずれも主たる構成は変わることがないので、便宜上、以下の説明では、図1において、上り線の本線トンネル10Aが第一ランプ部20Aに接続し、下り線の本線トンネル10Bが第二ランプ部20Bに接続するものとする。つまり、車両は、第一ランプ部20Aでは図1の矢印Laの方向に走行して進行方向左側から本線トンネル10Aに合流し、第二ランプ部20Bでは矢印Lbの方向に走行して進行方向右側から本線トンネル10Bに合流する。
また、第一ランプ部20Aの地上部2を第一ランプ出入口21とし、同じく第二ランプ部20Bの地上部2を第二ランプ出入口22とする。
【0012】
図2及び図3(a)に示すように、第一及び第二ランプ部20A、20Bは、トンネル延設方向で同一線上に揃うように接近して配置され、シールド工法により施工された1本の連続したシールドトンネル(「支線トンネル20」とする)であり、本線トンネル10と同様に円筒形状の支線セグメント20aを備えて構築されている。
【0013】
そして、図3(a)〜(c)に示すように、支線トンネル20は、第一ランプ出入口21から本線トンネル10A、10Bに向かって少しずつ下っていき、断面視で本線トンネル10A、10B間の上方に徐々に接近して合流する。そして、合流した状態のまま所定の位置で支線トンネル20は略水平方向となり、一定区間を略水平なトンネルで通過し、再び所定位置でトンネルの向きを上向きに変えて本線トンネル10A,10Bから徐々に離れて第二ランプ出入口22に向かっていく。このため、分岐合流部1の断面形状は徐々に変化している。
【0014】
ここで、図3(c)に示すように、分岐合流部1の本線トンネル10A、10Bの本線セグメント11A、11Bの夫々には、支線トンネル20を掘削するシールド掘削機30(図6(a)参照)によって掘削される領域に、シールド掘削機30のカッタ32によって掘削可能な材料からなる切削セグメント12A、12Bが設けられている。この切削セグメント12A、12Bの材料としては、例えば石灰石粗骨材を使用した高強度コンクリートと鉄筋に近いヤング係数を有する炭素繊維強化プラスチックなどを使用できる。なお、切削セグメント12A、12Bを除く部分の本線セグメント11A(11B)には、コンクリートセグメント、合成セグメント、鋼製セグメントなどが採用できる。
【0015】
また、図4に示すように、切削セグメント12A、12Bは、トンネル周方向に連結されるピース間にヒンジ構造をなすヒンジ継手Tが設けられている。図5に示すように、このヒンジ継手Tは、一方の切削セグメント12Aの継手面に形成されていてトンネル軸方向に延設された断面視円弧状の周面を形成させた凸状ヒンジ部12a(凸状部)と、他方の切削セグメント12Bの継手面に形成されていて前記凸状ヒンジ部12aにヒンジ構造となるように係合してなる凹状ヒンジ部12b(凹状部)とからなる。
このように本線セグメント11の円周上に1箇所のヒンジ継手Tが設けられていることから、そのヒンジ継手Tの継手面にかかる曲げモーメントが抑制される構造となる。そのため、このヒンジ継手Tには、ボルトなどの剛性の大きな連結部材による連結が不要となり、シールド掘削機30のカッタ32の切削に影響されることなく掘進することができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができることから、本線セグメント11A(11B)の組み立て時間を短縮する効果を奏する。
【0016】
さらに、切削セグメント12A,12Bには、内部に埋設される鉄筋(図示省略)の代わりに、シールド掘削機30のカッタ32によって切削可能なグラスファイバーや炭素繊維などの材料が使用され、その場合、上述したようにヒンジ継手Tを有する本線セグメント11A(11B)の曲げモーメントが小さいため、これら炭素繊維などを少なくすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0017】
次に、上述した分岐合流部1は、以下に説明する本実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法により築造することができ、その詳細について図面に基づいて説明する。
図2に示すように、支線トンネル20は、第一ランプ出入口21を発進側とし、反対側の第二ランプ出入口22を到達側として後述する傾斜可能なカッタ32を具備した円形断面のシールド掘削機30(図6参照)によって施工される。
【0018】
ここで、本実施の形態に使用するシールド掘削機30の構成について図6乃至図9などに基づいて説明する。なお、以下の説明では、シールド掘削機30の掘進方向を「前方」、その反対側を「後方」とする。
図6(a)及び(b)に示すように、本シールド掘削機30は、掘削機本体31に対して前傾姿勢で前倒しになるように傾斜可能に構成されたカッタ32と、カッタ32の前傾時に掘削機本体31との隙間を覆うようにトンネル進行方向にスライド可能なルーフ部材33とを備えている。ここで、カッタ32が垂直位置(トンネル軸に対して垂直方向)にあるときを垂直位置Xとし、カッタ32が傾斜角度θで前傾姿勢にあるときを傾斜位置Yとする。
【0019】
このようなシールド掘削機30を地上部2より発進させるときは、まず、図6(a)に示すように、シールド掘削機30の発進箇所、すなわち第一ランプ出入口21又は第二ランプ出入口22(図2参照)の地上部2に、シールド掘削機30の推進反力を受ける反力受3Aを据え付けて発進基地3を設置する。そして、発進基地3に、シールド掘削機30をトンネル掘進方向と同方向をなす斜め下向きに向けて設置する。ここで、この発進基地3は、シールド掘削機30の略下半分が地下に配置される位置まで地盤を下げておくことで、シールド掘削機30を発進し易い状態にしておく。
地盤下げ掘削を行うことにより、地上部2に敷設される軌条34aの高さと坑内の軌条34bの高さとを同一にすることができ、施工性を向上させることができる(図9(a)参照)。また、支線セグメント20a内の路盤Rの高さと地表との高さを同一とすることで経済性を向上させることができる(図9(b)参照)。
なお、このような地盤下げ掘削を行なわずに地上部2から直接掘削してもよい。
【0020】
そして、図7(a)に示すようなシールド掘削機30の全体が地下に埋まるまでの開削区間や、図7(b)に示すようなトンネル深度の小さな低土被り区間では、カッタ32を傾斜位置Yとしてルーフ部材33をカッタ32の外周面端部まで突出させてカッタ32と掘削機本体31との間の隙間を覆って掘削する。ここで、低土被り区間とは、例えば地表からシールド掘削機30の上端までの深さの区間をいい、例えばシールド掘削機30の外径に対して0.5〜1.0倍程度となる。なお、シールド掘削機30のカッタ32は回転により掘削できるが、図7(a)及び(b)に示す開削区間や低土被り区間を掘削する場合は、カッタ32周辺の地山5に与える影響を少なくするために、カッタ32を回転させずに揺動により掘削するようにしてもよい。
このように、カッタ32を傾斜位置Yとする掘削では、掘削断面の上方を先行掘削させることで、垂直位置Xの場合と比較して、カッタ32の上方の地山がカッタ32及びルーフ部材33で支えられて崩れにくい状態とされる。
【0021】
また、図8(a)に示すように、シールド掘削機30が所定のトンネル深度に達したとき、つまり低土被り区間を通過したときには、カッタ32を傾斜位置Yから垂直位置Xに戻し、同時に切羽側に突出していたルーフ部材33を掘削機本体31内に戻して掘削する。
【0022】
次に、このように構成されるシールド掘削機30によって掘削される支線トンネル20の施工方法について図10及び図11などを用いて説明する。
先ず、図10(a)に示すように、分岐合流部1の本線トンネル10A、10Bの本線セグメント11A、11Bは、シールド掘削機30(図6(a)参照)で掘削できるように切削セグメント12A、12Bを予め設置しておく(図4、図5参照)。
【0023】
また、本線トンネル10A、10Bと支線トンネル20とがオーバーラップする部分には、本線トンネル10A、10Bの内部にトンネル内部を上下方向に仕切る仮壁13A、13Bを夫々本線セグメント11A、11Bの上下間に撤去可能に固定し、仮壁13A、13Bと切削セグメント12A、12Bとの間にシールド掘削機30で切削可能な低強度のモルタルなどの切削材14を充填しておく。
仮壁13A、13Bは、分岐合流部1が築造されるまでの間、本線セグメント11A、11Bにかかる土圧を支持してトンネル断面形状を維持する構造部材となっている。
【0024】
次に、シールド掘削機30を使用し、土被りの大きさに応じてそのカッタ32の傾斜角度θを変えることで支線トンネル20が掘削される(図6〜図8参照)。
先ず、シールド掘削機30を地上部2の発進基地3より反力受3Aに推進反力を取って発進し、シールド掘削機30と反力受3Aとの間にセグメント20aを設置しながら本線トンネル10A、10Bの間に向けて掘進する(図6(a)及び(b)、図7(a)及び(b)参照)。
そして、図10(a)に示すように、シールド掘削機30が第一ランプ部20Aを掘進しながら本線トンネル10A、10Bの間に到達し、さらに本線トンネル10A、10B間を掘削すると同時に切削セグメント12A、12Bを切削しながら掘進する。続いて、シールド掘削機30は、分岐合流部1における所定の位置で本線トンネル10A、10Bの向きと略平行に掘進する。
なお、仮壁13A,13Bが設けられていることで本線トンネル10が補強されるため、シールド掘削機30が切削セグメント12A、12Bを掘削しても問題はなく、本線トンネル10を暫定開業しながら分岐合流部1の施工が可能となる。
【0025】
次いで、分岐合流部1の所定位置(第二ランプ部20Bに移行する位置)でシールド掘削機30の向きを第二ランプ出入口22の到達基地4(図2参照)へ向け、徐々に本線トンネル10から離れるようにして掘進し、第二ランプ部20Bを形成する。そして、地上部2の第二ランプ出入口22に到達させて掘削が終了となる。なお、本実施の形態では、シールド掘削機30が第一ランプ出入口21から発進し、第二ランプ出入口22まで掘進したが、逆に第二ランプ出入口22から発進させ、第一ランプ出入口21まで掘進してもよい。
【0026】
次に、分岐合流部1の築造手順について図面に基づいて説明する。
図10(b)に示すように、本線セグメント11と支線セグメント20aとの交点部(以下、「接合部S」とする)を施工する前に、この接合部S周辺の地盤に所定の注入範囲をもって地盤改良15を行っておく。地盤改良15は、例えば図示しない注入管からモルタルなどの地盤改良材を注入して行う。
【0027】
続いて、本線トンネル10と分岐合流部1との接合部Sの接続を行う。
先ず、図10(b)に示すように、支線セグメント20aを上下方向に支持するための支柱16をトンネル内部に適宜間隔で立設する。
そして、図11(a)に示すように、上部側の支線セグメント20aを支線トンネル20の内部側から取り外し、適宜切削材14を取り除く。さらに、本線トンネル10Aと支線トンネル20との車線接続部分に相当する箇所における車線側上部接合部S1は、両セグメント11A、20a同士を溶接などの固定手段によって接合して一体化する。
また、図11(b)に示すように、下部側の車線側下部接合部S2についても上部側と同様に、支線セグメント20aと本線セグメント11Aとを一体化させる。その後、図11(c)に示すように、不要になった支柱16および仮壁13Aを撤去して本線トンネル10Aと支線トンネル20とをトンネルの幅方向に連通させる。
【0028】
図11(a)〜(c)に示すように、接合部Sのうち上述以外の本線トンネル10Bと支線トンネル20との接合部S3、S4では、本線セグメント11Bと支線セグメント20aとをトンネル上下方向に支持する鉄筋コンクリート壁などからなる支持壁17Bをトンネルの上部側から下部側に向けて設置する。
以上に説明した工程を実施することによって、支線トンネル20が本線トンネル10A、10Bに接続された分岐合流部1の築造が完了する。本実施の形態では、1台のシールド掘削機30で地上部2から支線トンネル20を連続して掘削するため、分岐合流部1を非開削により施工できる。また、土被りの小さな部分からシールド掘削機30でトンネルを構築することができるため、立坑や開削にかかるコストを低減させることができ、工期短縮を図ることができる。そして、開削範囲を削減できることから、地上部2における施工範囲を小さくすることができる。
なお、分岐合流部1の接合部Sや支持壁17などの構造や位置は、構築される道路設備に応じて適宜設計されることは言うまでもない。
【0029】
上述した本実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法では、本線トンネル10における分岐合流部1の切削セグメント12A、12Bにヒンジ継手Tを設けることで、シールド掘削機30のカッタ32の切削に影響を及ぼしていたボルトや連結金物などの従来の継手が不要となるため、分岐合流部1におけるシールド掘削機30の掘進効率を向上させることができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができ、セグメントの組み立て作業の手間が減り、セグメント組み立て時間の短縮を図ることができる。
そして、シールド掘削機30によって本線トンネル10を切削しながら掘進させて支線トンネル20と本線トンネル10とを接合させ、支線トンネル20及び本線トンネル10の内部から分岐合流部1を築造することができるため、開削工法が不要となる効果が得られる。
また、支線トンネル20や分岐合流部1の周囲に大掛かりな地盤改良を施したりする必要もないので、施工コストや施工工期を低減することができる。
さらに、分岐合流部1の築造を非開削とすることで、地上部2における占有面積が広範囲にならないことから、地上部の交通渋滞など周辺環境を向上させることができる。
【0030】
以上、本発明によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では第一ランプ部20Aと第二ランプ部20Bを1台のシールド掘削機30で掘進して構築しているが、これに限定されることはなく、このほかに例えば1箇所のランプ部が本線トンネル10に合流している場合にも適用できる。この場合、シールド掘削機30で1箇所のランプ部を掘進させて所定の分岐合流部1を通過させた後、任意の地上部に向けて掘削を継続し、その地上部に到達させればよい。
また、本実施の形態では2本の本線トンネル10A、10Bの間に支線トンネル20が分岐合流する施工としているが、これに限定されず、1本又は3本以上の本線トンネルに対しても同様の非開削築造方法を適用して分岐合流部を築造することができる。
さらに、本実施の形態では道路トンネルに適用された分岐合流部1について説明したが、道路トンネルの用途に限定されることはなく、地下鉄が地上の鉄道と相互乗り入れするような場合の鉄道トンネル等に適用してもかまわない。
さらにまた、本実施の形態ではカッタ32が前傾姿勢となるシールド掘削機30を使用しているが、このようなカッタ構造或いはシールド掘削機に限定されることはない。例えば、図12に示すように上下方向に二分割されたカッタ41を有するシールド掘削機40を使用し、上部41aを下部41bより前方に突出させて掘進させてもよい。また、トンネル掘削方向に対して垂直方向の面(図8(a)の垂直位置に相当)のカッタを有する一般的なシールド掘削機を使用してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法によって築造された分岐合流部の概略構成を説明するための平面断面図である。
【図2】本線トンネルと支線トンネルとの概略構成を説明するための側断面図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は、それぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図である。
【図4】本線セグメントを示す断面図である。
【図5】本線セグメントに設けられる切削セグメントのヒンジ継手を示す斜視図である。
【図6】(a)、(b)は、シールド掘削機の構成および発進状態を説明する図である。
【図7】(a)、(b)は、シールド掘削機のカッタを傾斜位置にしたときの掘削状態を説明する図である。
【図8】(a)は、シールド掘削機のカッタを垂直位置にしたときの掘削状態を説明する図である。
【図9】(a)はシールド掘削機の軌条の敷設状態を示す図、(b)は図9(a)に示すトンネルを後方から見た図である。
【図10】(a)、(b)は、分岐合流部を構築するための工程説明図であって、夫々図3(c)に対応した図である。
【図11】(a)、(b)、(c)は、図10(b)に続く分岐合流部を構築するための工程説明図であって、夫々図3(c)に対応した図である。
【図12】シールド掘削機の変形例を示す図であって、図7(b)に対応した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 分岐合流部
2 地上部
3 発進基地
10、10A、10B 本線トンネル
11、11A、11B 本線セグメント
12A、12B 切削セグメント
12a 凸状ヒンジ部(凸状部)
12b 凹状ヒンジ部(凹状部)
13A、13B 仮壁
14 切削材
20 支線トンネル
20a 支線セグメント
20A 第一ランプ部
20B 第二ランプ部
30 シールド掘削機
32 カッタ
S 接合部
T ヒンジ継手
【技術分野】
【0001】
本発明は、支線トンネルと本線トンネルとが接続するトンネル分岐合流部の非開削築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば道路や地下鉄等のトンネルの施工において、先行してシールド工法により掘削された本線トンネルに地上と連絡される支線トンネルを接続させる施工では、支線トンネル及び接続部(分岐合流部)を地上から開削工法で行うのが主流となっている。
支線トンネルと分岐合流部の築造方法は、これらの築造範囲の外側に止水と山留めを目的とした連続地中壁を施工しておき、本線トンネルのシールド掘削機を掘進させてセグメントを構築する。その後に支線トンネルを開削により施工すると共に、本線トンネルのセグメントを解体して分岐合流部を構築するといった開削工法による方法で施工されている。
しかし、近年では、地上における施工スペースの確保が困難であり、また路面の占有面積が広範囲になると、路面の使用が制限されることによる交通障害や施工中の騒音などの環境問題が発生することから、都市部の大規模な開削工法は困難な状態となっている。
このような問題に対して、開削工法によらない施工方法(非開削工法)として、例えば地中の掘削部の外周を形成するように複数の曲線ボーリングを施工し、その周囲を地盤改良することで屋根状の防護壁を形成し、その内空側で地下空間を形成する工法が実施されている。
また、開削工法によらない非開削工法によって構築される分岐合流施工法が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1は、地上より掘り下げて発進基地を構築し、この発進基地から縦長の矩形断面をなすシールド掘削機を斜め下方の地下に向けて発進させ、先行施工した二本のシールドトンネル(本線トンネル)の間にシールド掘削機を接続させて支線トンネルを構築するものである。そして、支線トンネルと本線トンネルとがラップする接合部は、支線トンネルのシールド掘削機によって切削可能な材料からなるセグメントを設置しておき、シールド掘削機のカッタでこの切削可能なセグメントを切削して構築される。
【特許文献1】特開2003−148086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の非開削工法によるトンネル分岐合流部の施工方法では、以下のような問題があった。
一般的に、土中のセグメントには、周囲の土水圧により曲げモーメントが作用する。このため、セグメントの周方向をなすピース間の継手は曲げモーメントにより発生する引張力を伝達するため、緊結力の大きいボルトやボルト以外の連結金物などで固定されている。そのため、特許文献1のようにセグメントをシールド掘削機のカッタで切削するような施工では、ボルトや連結金物がカッタによる切削を妨げることになり、シールド掘進機の掘進の効率が低下するといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ボルトや連結金物などを使用しないセグメントを使用することで、分岐合流部におけるシールド掘削機の掘進効率を向上させるようにしたトンネル分岐合流部の非開削築造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル分岐合流部の非開削築造方法では、シールド工法により施工された本線トンネルに支線トンネルを接続させるトンネル分岐合流部の非開削築造方法であって、シールド掘削機で切削可能な材料からなり、本線トンネルの分岐合流箇所をトンネル周方向に分割させてなる連結部を有し、連結部の一方の継手面に凸状部を形成させ、連結部の他方の継手面に凹状部を形成させてなるヒンジ継手を設けた切削セグメントを備え、トンネル分岐合流部の切削セグメントをシールド掘削機で切削しながら掘進させ、掘進後に、分岐合流部の本線トンネルと支線トンネルとを接合して一体化するようにしたことを特徴としている。
本発明では、本線トンネルにおける分岐合流部の切削セグメントにヒンジ継手を設けることで、そのヒンジ継手の継手面にかかる曲げモーメントが抑制される構造となる。そのため、このヒンジ継手には、ボルトなどの剛性の大きな連結部材による連結が不要となり、シールド掘削機のカッタの切削に影響されることなく掘進することができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができる。また、シールド掘削機によって本線トンネルに備えた切削セグメントを切削しながら掘進させて支線トンネルと本線トンネルとを接合させ、分岐合流部を支線トンネル及び本線トンネルの内部から築造することができるため、開削工法が不要となる。
【0006】
また、本発明に係るトンネル分岐合流部の非開削築造方法では、シールド掘削機を、一方の地上部より発進させ、分岐合流部を通過させて他方の地上部に到達させるようにすることが可能である。
本発明では、土被りの小さな部分からシールド掘削機でトンネルを構築することができるため、立坑や開削にかかるコストを低減させることができ、工期短縮を図ることができる。そして、開削範囲を削減できることから、地上部における施工範囲を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトンネル分岐合流部の非開削築造方法によれば、本線トンネルにおける分岐合流部の切削セグメントにヒンジ継手を設けることで、シールド掘削機のカッタの切削に影響を及ぼしていたボルトや連結金物などの従来の継手が不要となるため、分岐合流部におけるシールド掘削機の掘進効率を向上させることができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができ、セグメントの組み立て作業の手間が減り、セグメント組み立て時間の短縮を図ることができる。
そして、シールド掘削機によって本線トンネルを切削しながら掘進させて支線トンネルと本線トンネルとを接合させ、支線トンネル及び本線トンネルの内部から分岐合流部を築造することができるため、開削工法が不要となる効果が得られる。
また、支線トンネルや分岐合流部の周囲に大掛かりな地盤改良を施したりする必要もないので、施工コストや施工工期を低減することができる。
さらに、分岐合流部の築造を非開削とすることで、地上部における占有面積が広範囲にならないことから、地上部の交通渋滞など周辺環境を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のトンネル分岐合流部の非開削築造方法の実施の形態について、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法によって築造された分岐合流部の概略構成を説明するための平面断面図、図2は本線トンネルと支線トンネルとの概略構成を説明するための側断面図、図3(a)、(b)、(c)はそれぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、図4は本線セグメントを示す断面図、図5は本線セグメントに設けられる切削セグメントのヒンジ継手を示す斜視図、図6(a)、(b)はシールド掘削機の構成および発進状態を説明する図、図7(a)、(b)はシールド掘削機のカッタを傾斜位置にしたときの掘削状態を説明する図、図8(a)はシールド掘削機のカッタを垂直位置にしたときの掘削状態を説明する図、図9(a)はシールド掘削機の軌条の敷設状態を示す図、(b)は図9(a)に示すトンネルを後方から見た図、図10〜図11は分岐合流部を構築するための工程説明図であって、夫々図3(c)に対応した図である。
【0009】
図1及び図2に示すように、本実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法は、センターランプ方式の道路トンネルに採用されている。分岐合流部1は、地下に所定の間隔を開けて平行に配置された二本の本線トンネル10A(図中左側から右側を進行方向とする「上り線」)、10B(図中右側から左側を進行方向とする「下り線」)の間に、地上部2に連絡される第一及び第二ランプ部20A、20Bが分岐又は合流して接続されている。
なお、本線トンネル10A、10Bは、以下、必要に応じて「本線トンネル10」で総称する。また、二本の本線トンネル10A、10Bの所定の間隔とは、第一及び第二ランプ部20A、20Bを構築することのできる間隔である。
また、説明の便宜上、上り線の本線トンネル10Aに関する部材に符号Aを付加し、下り線の本線トンネル10Bに関する部材に符号Bを付加して区別する。
【0010】
図3(a)に示すように、本線トンネル10A、10Bは、シールド工法によって、地山5内に延設された円管状の本線セグメント11A、11Bにより構築されたシールドトンネルである。シールド工法としては、周知の種々の工法を採用することができる。
【0011】
第一及び第二ランプ部20A、20Bは、本線トンネル10への乗り降りをする連絡通路であり、車線の進行方向により合流道路(入口ランプ)にもなれば、分岐道路(出口ランプ)にもなるが、いずれも主たる構成は変わることがないので、便宜上、以下の説明では、図1において、上り線の本線トンネル10Aが第一ランプ部20Aに接続し、下り線の本線トンネル10Bが第二ランプ部20Bに接続するものとする。つまり、車両は、第一ランプ部20Aでは図1の矢印Laの方向に走行して進行方向左側から本線トンネル10Aに合流し、第二ランプ部20Bでは矢印Lbの方向に走行して進行方向右側から本線トンネル10Bに合流する。
また、第一ランプ部20Aの地上部2を第一ランプ出入口21とし、同じく第二ランプ部20Bの地上部2を第二ランプ出入口22とする。
【0012】
図2及び図3(a)に示すように、第一及び第二ランプ部20A、20Bは、トンネル延設方向で同一線上に揃うように接近して配置され、シールド工法により施工された1本の連続したシールドトンネル(「支線トンネル20」とする)であり、本線トンネル10と同様に円筒形状の支線セグメント20aを備えて構築されている。
【0013】
そして、図3(a)〜(c)に示すように、支線トンネル20は、第一ランプ出入口21から本線トンネル10A、10Bに向かって少しずつ下っていき、断面視で本線トンネル10A、10B間の上方に徐々に接近して合流する。そして、合流した状態のまま所定の位置で支線トンネル20は略水平方向となり、一定区間を略水平なトンネルで通過し、再び所定位置でトンネルの向きを上向きに変えて本線トンネル10A,10Bから徐々に離れて第二ランプ出入口22に向かっていく。このため、分岐合流部1の断面形状は徐々に変化している。
【0014】
ここで、図3(c)に示すように、分岐合流部1の本線トンネル10A、10Bの本線セグメント11A、11Bの夫々には、支線トンネル20を掘削するシールド掘削機30(図6(a)参照)によって掘削される領域に、シールド掘削機30のカッタ32によって掘削可能な材料からなる切削セグメント12A、12Bが設けられている。この切削セグメント12A、12Bの材料としては、例えば石灰石粗骨材を使用した高強度コンクリートと鉄筋に近いヤング係数を有する炭素繊維強化プラスチックなどを使用できる。なお、切削セグメント12A、12Bを除く部分の本線セグメント11A(11B)には、コンクリートセグメント、合成セグメント、鋼製セグメントなどが採用できる。
【0015】
また、図4に示すように、切削セグメント12A、12Bは、トンネル周方向に連結されるピース間にヒンジ構造をなすヒンジ継手Tが設けられている。図5に示すように、このヒンジ継手Tは、一方の切削セグメント12Aの継手面に形成されていてトンネル軸方向に延設された断面視円弧状の周面を形成させた凸状ヒンジ部12a(凸状部)と、他方の切削セグメント12Bの継手面に形成されていて前記凸状ヒンジ部12aにヒンジ構造となるように係合してなる凹状ヒンジ部12b(凹状部)とからなる。
このように本線セグメント11の円周上に1箇所のヒンジ継手Tが設けられていることから、そのヒンジ継手Tの継手面にかかる曲げモーメントが抑制される構造となる。そのため、このヒンジ継手Tには、ボルトなどの剛性の大きな連結部材による連結が不要となり、シールド掘削機30のカッタ32の切削に影響されることなく掘進することができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができることから、本線セグメント11A(11B)の組み立て時間を短縮する効果を奏する。
【0016】
さらに、切削セグメント12A,12Bには、内部に埋設される鉄筋(図示省略)の代わりに、シールド掘削機30のカッタ32によって切削可能なグラスファイバーや炭素繊維などの材料が使用され、その場合、上述したようにヒンジ継手Tを有する本線セグメント11A(11B)の曲げモーメントが小さいため、これら炭素繊維などを少なくすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0017】
次に、上述した分岐合流部1は、以下に説明する本実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法により築造することができ、その詳細について図面に基づいて説明する。
図2に示すように、支線トンネル20は、第一ランプ出入口21を発進側とし、反対側の第二ランプ出入口22を到達側として後述する傾斜可能なカッタ32を具備した円形断面のシールド掘削機30(図6参照)によって施工される。
【0018】
ここで、本実施の形態に使用するシールド掘削機30の構成について図6乃至図9などに基づいて説明する。なお、以下の説明では、シールド掘削機30の掘進方向を「前方」、その反対側を「後方」とする。
図6(a)及び(b)に示すように、本シールド掘削機30は、掘削機本体31に対して前傾姿勢で前倒しになるように傾斜可能に構成されたカッタ32と、カッタ32の前傾時に掘削機本体31との隙間を覆うようにトンネル進行方向にスライド可能なルーフ部材33とを備えている。ここで、カッタ32が垂直位置(トンネル軸に対して垂直方向)にあるときを垂直位置Xとし、カッタ32が傾斜角度θで前傾姿勢にあるときを傾斜位置Yとする。
【0019】
このようなシールド掘削機30を地上部2より発進させるときは、まず、図6(a)に示すように、シールド掘削機30の発進箇所、すなわち第一ランプ出入口21又は第二ランプ出入口22(図2参照)の地上部2に、シールド掘削機30の推進反力を受ける反力受3Aを据え付けて発進基地3を設置する。そして、発進基地3に、シールド掘削機30をトンネル掘進方向と同方向をなす斜め下向きに向けて設置する。ここで、この発進基地3は、シールド掘削機30の略下半分が地下に配置される位置まで地盤を下げておくことで、シールド掘削機30を発進し易い状態にしておく。
地盤下げ掘削を行うことにより、地上部2に敷設される軌条34aの高さと坑内の軌条34bの高さとを同一にすることができ、施工性を向上させることができる(図9(a)参照)。また、支線セグメント20a内の路盤Rの高さと地表との高さを同一とすることで経済性を向上させることができる(図9(b)参照)。
なお、このような地盤下げ掘削を行なわずに地上部2から直接掘削してもよい。
【0020】
そして、図7(a)に示すようなシールド掘削機30の全体が地下に埋まるまでの開削区間や、図7(b)に示すようなトンネル深度の小さな低土被り区間では、カッタ32を傾斜位置Yとしてルーフ部材33をカッタ32の外周面端部まで突出させてカッタ32と掘削機本体31との間の隙間を覆って掘削する。ここで、低土被り区間とは、例えば地表からシールド掘削機30の上端までの深さの区間をいい、例えばシールド掘削機30の外径に対して0.5〜1.0倍程度となる。なお、シールド掘削機30のカッタ32は回転により掘削できるが、図7(a)及び(b)に示す開削区間や低土被り区間を掘削する場合は、カッタ32周辺の地山5に与える影響を少なくするために、カッタ32を回転させずに揺動により掘削するようにしてもよい。
このように、カッタ32を傾斜位置Yとする掘削では、掘削断面の上方を先行掘削させることで、垂直位置Xの場合と比較して、カッタ32の上方の地山がカッタ32及びルーフ部材33で支えられて崩れにくい状態とされる。
【0021】
また、図8(a)に示すように、シールド掘削機30が所定のトンネル深度に達したとき、つまり低土被り区間を通過したときには、カッタ32を傾斜位置Yから垂直位置Xに戻し、同時に切羽側に突出していたルーフ部材33を掘削機本体31内に戻して掘削する。
【0022】
次に、このように構成されるシールド掘削機30によって掘削される支線トンネル20の施工方法について図10及び図11などを用いて説明する。
先ず、図10(a)に示すように、分岐合流部1の本線トンネル10A、10Bの本線セグメント11A、11Bは、シールド掘削機30(図6(a)参照)で掘削できるように切削セグメント12A、12Bを予め設置しておく(図4、図5参照)。
【0023】
また、本線トンネル10A、10Bと支線トンネル20とがオーバーラップする部分には、本線トンネル10A、10Bの内部にトンネル内部を上下方向に仕切る仮壁13A、13Bを夫々本線セグメント11A、11Bの上下間に撤去可能に固定し、仮壁13A、13Bと切削セグメント12A、12Bとの間にシールド掘削機30で切削可能な低強度のモルタルなどの切削材14を充填しておく。
仮壁13A、13Bは、分岐合流部1が築造されるまでの間、本線セグメント11A、11Bにかかる土圧を支持してトンネル断面形状を維持する構造部材となっている。
【0024】
次に、シールド掘削機30を使用し、土被りの大きさに応じてそのカッタ32の傾斜角度θを変えることで支線トンネル20が掘削される(図6〜図8参照)。
先ず、シールド掘削機30を地上部2の発進基地3より反力受3Aに推進反力を取って発進し、シールド掘削機30と反力受3Aとの間にセグメント20aを設置しながら本線トンネル10A、10Bの間に向けて掘進する(図6(a)及び(b)、図7(a)及び(b)参照)。
そして、図10(a)に示すように、シールド掘削機30が第一ランプ部20Aを掘進しながら本線トンネル10A、10Bの間に到達し、さらに本線トンネル10A、10B間を掘削すると同時に切削セグメント12A、12Bを切削しながら掘進する。続いて、シールド掘削機30は、分岐合流部1における所定の位置で本線トンネル10A、10Bの向きと略平行に掘進する。
なお、仮壁13A,13Bが設けられていることで本線トンネル10が補強されるため、シールド掘削機30が切削セグメント12A、12Bを掘削しても問題はなく、本線トンネル10を暫定開業しながら分岐合流部1の施工が可能となる。
【0025】
次いで、分岐合流部1の所定位置(第二ランプ部20Bに移行する位置)でシールド掘削機30の向きを第二ランプ出入口22の到達基地4(図2参照)へ向け、徐々に本線トンネル10から離れるようにして掘進し、第二ランプ部20Bを形成する。そして、地上部2の第二ランプ出入口22に到達させて掘削が終了となる。なお、本実施の形態では、シールド掘削機30が第一ランプ出入口21から発進し、第二ランプ出入口22まで掘進したが、逆に第二ランプ出入口22から発進させ、第一ランプ出入口21まで掘進してもよい。
【0026】
次に、分岐合流部1の築造手順について図面に基づいて説明する。
図10(b)に示すように、本線セグメント11と支線セグメント20aとの交点部(以下、「接合部S」とする)を施工する前に、この接合部S周辺の地盤に所定の注入範囲をもって地盤改良15を行っておく。地盤改良15は、例えば図示しない注入管からモルタルなどの地盤改良材を注入して行う。
【0027】
続いて、本線トンネル10と分岐合流部1との接合部Sの接続を行う。
先ず、図10(b)に示すように、支線セグメント20aを上下方向に支持するための支柱16をトンネル内部に適宜間隔で立設する。
そして、図11(a)に示すように、上部側の支線セグメント20aを支線トンネル20の内部側から取り外し、適宜切削材14を取り除く。さらに、本線トンネル10Aと支線トンネル20との車線接続部分に相当する箇所における車線側上部接合部S1は、両セグメント11A、20a同士を溶接などの固定手段によって接合して一体化する。
また、図11(b)に示すように、下部側の車線側下部接合部S2についても上部側と同様に、支線セグメント20aと本線セグメント11Aとを一体化させる。その後、図11(c)に示すように、不要になった支柱16および仮壁13Aを撤去して本線トンネル10Aと支線トンネル20とをトンネルの幅方向に連通させる。
【0028】
図11(a)〜(c)に示すように、接合部Sのうち上述以外の本線トンネル10Bと支線トンネル20との接合部S3、S4では、本線セグメント11Bと支線セグメント20aとをトンネル上下方向に支持する鉄筋コンクリート壁などからなる支持壁17Bをトンネルの上部側から下部側に向けて設置する。
以上に説明した工程を実施することによって、支線トンネル20が本線トンネル10A、10Bに接続された分岐合流部1の築造が完了する。本実施の形態では、1台のシールド掘削機30で地上部2から支線トンネル20を連続して掘削するため、分岐合流部1を非開削により施工できる。また、土被りの小さな部分からシールド掘削機30でトンネルを構築することができるため、立坑や開削にかかるコストを低減させることができ、工期短縮を図ることができる。そして、開削範囲を削減できることから、地上部2における施工範囲を小さくすることができる。
なお、分岐合流部1の接合部Sや支持壁17などの構造や位置は、構築される道路設備に応じて適宜設計されることは言うまでもない。
【0029】
上述した本実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法では、本線トンネル10における分岐合流部1の切削セグメント12A、12Bにヒンジ継手Tを設けることで、シールド掘削機30のカッタ32の切削に影響を及ぼしていたボルトや連結金物などの従来の継手が不要となるため、分岐合流部1におけるシールド掘削機30の掘進効率を向上させることができる。また、ボルトや連結金物などによるセグメント連結作業を省略することができ、セグメントの組み立て作業の手間が減り、セグメント組み立て時間の短縮を図ることができる。
そして、シールド掘削機30によって本線トンネル10を切削しながら掘進させて支線トンネル20と本線トンネル10とを接合させ、支線トンネル20及び本線トンネル10の内部から分岐合流部1を築造することができるため、開削工法が不要となる効果が得られる。
また、支線トンネル20や分岐合流部1の周囲に大掛かりな地盤改良を施したりする必要もないので、施工コストや施工工期を低減することができる。
さらに、分岐合流部1の築造を非開削とすることで、地上部2における占有面積が広範囲にならないことから、地上部の交通渋滞など周辺環境を向上させることができる。
【0030】
以上、本発明によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では第一ランプ部20Aと第二ランプ部20Bを1台のシールド掘削機30で掘進して構築しているが、これに限定されることはなく、このほかに例えば1箇所のランプ部が本線トンネル10に合流している場合にも適用できる。この場合、シールド掘削機30で1箇所のランプ部を掘進させて所定の分岐合流部1を通過させた後、任意の地上部に向けて掘削を継続し、その地上部に到達させればよい。
また、本実施の形態では2本の本線トンネル10A、10Bの間に支線トンネル20が分岐合流する施工としているが、これに限定されず、1本又は3本以上の本線トンネルに対しても同様の非開削築造方法を適用して分岐合流部を築造することができる。
さらに、本実施の形態では道路トンネルに適用された分岐合流部1について説明したが、道路トンネルの用途に限定されることはなく、地下鉄が地上の鉄道と相互乗り入れするような場合の鉄道トンネル等に適用してもかまわない。
さらにまた、本実施の形態ではカッタ32が前傾姿勢となるシールド掘削機30を使用しているが、このようなカッタ構造或いはシールド掘削機に限定されることはない。例えば、図12に示すように上下方向に二分割されたカッタ41を有するシールド掘削機40を使用し、上部41aを下部41bより前方に突出させて掘進させてもよい。また、トンネル掘削方向に対して垂直方向の面(図8(a)の垂直位置に相当)のカッタを有する一般的なシールド掘削機を使用してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態によるトンネル分岐合流部の非開削築造方法によって築造された分岐合流部の概略構成を説明するための平面断面図である。
【図2】本線トンネルと支線トンネルとの概略構成を説明するための側断面図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は、それぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図である。
【図4】本線セグメントを示す断面図である。
【図5】本線セグメントに設けられる切削セグメントのヒンジ継手を示す斜視図である。
【図6】(a)、(b)は、シールド掘削機の構成および発進状態を説明する図である。
【図7】(a)、(b)は、シールド掘削機のカッタを傾斜位置にしたときの掘削状態を説明する図である。
【図8】(a)は、シールド掘削機のカッタを垂直位置にしたときの掘削状態を説明する図である。
【図9】(a)はシールド掘削機の軌条の敷設状態を示す図、(b)は図9(a)に示すトンネルを後方から見た図である。
【図10】(a)、(b)は、分岐合流部を構築するための工程説明図であって、夫々図3(c)に対応した図である。
【図11】(a)、(b)、(c)は、図10(b)に続く分岐合流部を構築するための工程説明図であって、夫々図3(c)に対応した図である。
【図12】シールド掘削機の変形例を示す図であって、図7(b)に対応した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 分岐合流部
2 地上部
3 発進基地
10、10A、10B 本線トンネル
11、11A、11B 本線セグメント
12A、12B 切削セグメント
12a 凸状ヒンジ部(凸状部)
12b 凹状ヒンジ部(凹状部)
13A、13B 仮壁
14 切削材
20 支線トンネル
20a 支線セグメント
20A 第一ランプ部
20B 第二ランプ部
30 シールド掘削機
32 カッタ
S 接合部
T ヒンジ継手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法により施工された本線トンネルに支線トンネルを接続させるトンネル分岐合流部の非開削築造方法であって、
シールド掘削機で切削可能な材料からなり、前記本線トンネルの分岐合流箇所をトンネル周方向に分割させてなる連結部を有し、該連結部の一方の継手面に凸状部を形成させ、前記連結部の他方の継手面に凹状部を形成させてなるヒンジ継手を設けた切削セグメントを備え、
前記トンネル分岐合流部の前記切削セグメントを前記シールド掘削機で切削しながら掘進させ、
前記掘進後に、前記分岐合流部の前記本線トンネルと前記支線トンネルとを接合して一体化するようにしたことを特徴とするトンネル分岐合流部の非開削築造方法。
【請求項2】
前記シールド掘削機を、一方の地上部より発進させ、前記分岐合流部を通過させて他方の地上部に到達させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル分岐合流部の非開削築造方法。
【請求項1】
シールド工法により施工された本線トンネルに支線トンネルを接続させるトンネル分岐合流部の非開削築造方法であって、
シールド掘削機で切削可能な材料からなり、前記本線トンネルの分岐合流箇所をトンネル周方向に分割させてなる連結部を有し、該連結部の一方の継手面に凸状部を形成させ、前記連結部の他方の継手面に凹状部を形成させてなるヒンジ継手を設けた切削セグメントを備え、
前記トンネル分岐合流部の前記切削セグメントを前記シールド掘削機で切削しながら掘進させ、
前記掘進後に、前記分岐合流部の前記本線トンネルと前記支線トンネルとを接合して一体化するようにしたことを特徴とするトンネル分岐合流部の非開削築造方法。
【請求項2】
前記シールド掘削機を、一方の地上部より発進させ、前記分岐合流部を通過させて他方の地上部に到達させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル分岐合流部の非開削築造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−321537(P2007−321537A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156471(P2006−156471)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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