説明

トンネル工事における発破粉塵の抑制方法

【課題】 横向きの発破孔に水又はゲル水を短時間に充填できるトンネル工事における発破粉塵の抑制方法を提供する。
【解決手段】 静電気が除去された紙管2に水4(又はゲル水)を充満させた袋体3を挿入して紙管2の片方の開口を閉塞板2aで閉塞し、奥部に爆薬6を配置した発破孔5に紙管2をその閉塞面が爆薬6側へ向くようにして詰め込む。発破すると爆圧で紙管2と袋体3が瞬時に粉砕され、削孔全体に拡張して袋体3の水4により粘土込め物と同等の剪断抵抗が生じ、同時に噴出した水蒸気が蒸発時に気化熱を奪って発破現場の温度を低下させ、細霧が飛散している粉塵を捕捉して地面へ落下し、作業環境が改善される。また、発破の衝撃も水4が緩和して地山Gの余掘りが防止される。水4は袋体3に充満させて紙管2に予め挿入されているから、発破孔5への詰め込みが短時間に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事における発破粉塵の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベンチ発破方法が特許文献1に開示されている。この技術は、防水性を有する紙管に爆薬を入れて発破孔に装填し、発破孔の孔壁と紙管との間の空隙にゲル水を充満させて発破することを特徴とし、爆圧によって噴出した細霧で粉塵を捕捉し、粉塵の飛散を減少させて作業環境を改善するという効果を奏するものである。
【0003】
ところで、前記技術におけるゲル水の充満は、ゲル粉と水を発破孔に投入してゲル化させることで成されており、作業が煩雑で発破までに時間を要していた。また、横向きの発破孔の奥へゲル粉を投入するのは難しく、ゲル化までに水が流れ出てしまうこともあった。
【特許文献1】特許第2832500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、横向きの発破孔に水又はゲル水を短時間に充填できるトンネル工事における発破粉塵の抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 帯電防止処理されたポリエチレン樹脂製の袋体に水又はゲル水を充満し、同袋体を静電気が除去された紙管に挿入し、同紙管の片方の開口を閉塞して発破孔詰込み部材を構成し、発破孔の奥部に爆薬を配置し、同発破孔に前記発破孔詰込み部材をその閉塞面が爆薬側へ向くようにして挿入し、その後爆薬に点火して発破し、その爆圧によって噴出した袋体内の水又はゲル水の細霧で粉塵を捕捉して飛散を減少させるようにしたことを特徴とする、トンネル工事における発破粉塵の抑制方法
2) 帯電防止処理されたポリエチレン樹脂製の袋体に水又はゲル水を充満し、同袋体を静電気が除去された紙管に挿入し、同紙管の片方の開口を閉塞した、発破孔詰込み部材
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水又はゲル水は袋体に充満させて紙管に予め挿入されているから、発破孔への詰め込みが短時間に行えて発破までの時間を短縮でき、発破するまでに水又はゲル水が流れ出ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の紙管としては、細長い板紙を螺旋状に巻いて接着したスパイラル紙管が一般的に用いられ、ラップフィルムやアルミニウム箔シート等の巻芯として利用されているものが使用できる。紙管の寸法としては、外径が25〜35mm、長さが500〜1000mmのものが実用的で、発破孔の深さや位置・発破パターン等に応じて選択する。静電気は公知の静電気除去装置で除去される。
【0008】
袋体としては、帯電防止剤を混入して長期間帯電しない特性を付与したポリエチレン樹脂製のものが用いられ、求める強度に応じて二重構造や三重構造にしてもよい。水又はゲル水の水量としては、紙管の内部空間の容積に応じて400〜1000ccの範囲で且つ紙管に挿入した際に袋体が容易に抜けない程度の量とし、紙管と袋体との間の空隙をできるだけ少なくする。ゲル水としては澱粉系と高分子吸水系があるが、作業者に対して影響の無い水を用いるのが望ましい。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は実施例の発破孔詰込み部材の一部切欠き説明図、図2は実施例の発破孔詰込み部材の挿入位置を示す説明図、図3は実施例の発破孔の断面図である。図中、1は発破孔詰込み部材、2は紙管、2aは閉塞板、3は袋体、4は水、5は発破孔、6は爆薬、7はリード線、8は切羽、Gは地山、Tはトンネルである。
【0010】
本実施例の発破孔詰込み部材1は、図1に示すように、静電気が除去された紙管2に水4を充満させた袋体3を挿入し、紙管2の片方の開口を紙製の閉塞板2aで閉塞している。紙管2の長さは1000mm、外径は33mm、紙厚は1.5mmである。閉塞板2aは接着剤又は粘着テープ等で固着する。静電気は公知の静電気除去装置で除去している。
【0011】
袋体3は帯電防止処理されたポリエチレン樹脂で二重構造にしている。水4の水量は1000ccである。この発破孔詰込み部材1は予め工場で多数本を製造し、発破現場に搬入する。
【0012】
図2,3に示すように、切羽8に45mm径の発破孔5を穿孔し、発破孔5の奥部に爆薬6を装填し、発破孔5に前記の発破孔詰込み部材1をその閉塞面が爆薬6側へ向くようにして詰め込む。このとき、紙管2の前端は閉塞板2aで閉塞されているから、詰め込み時に袋体3が地山Gに接触して破れることはない。リード線7は図示しない発破器に結線する。
【0013】
発破器で爆薬6に点火して発破すると、爆圧で紙管2と袋体3が瞬時に粉砕され、削孔全体に拡張して袋体3の水4により粘土込め物と同等の剪断抵抗が生じる。水4の約30%は水蒸気となり、残りの約70%は微小粒の細霧となって噴出し、水蒸気は蒸発する際に気化熱を奪って発破現場の温度を低下させ、細霧は飛散している粉塵を捕捉して地面へ落下させて粉塵の飛散が減少し、作業環境が改善される。また、発破の衝撃も水4が緩和して地山Gの余掘りが防止される。
【0014】
水4は袋体3に充満させて紙管2に予め挿入されているから、切羽8での作業は発破孔5への詰め込みだけで短時間に行え、発破までの準備時間が従来技術と比較して大幅に短縮されて作業効率が良く、取り扱いも容易である。また、水4は袋体3に充満させているから、発破するまでに流れ出ることがない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の技術は、粉塵の飛散を抑制するために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の発破孔詰込み部材の一部切欠き説明図である。
【図2】実施例の発破孔詰込み部材の挿入位置を示す説明図である。
【図3】実施例の発破孔の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 発破孔詰込み部材
2 紙管
2a 閉塞板
3 袋体
4 水
5 発破孔
6 爆薬
7 リード線
8 切羽
G 地山
T トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止処理されたポリエチレン樹脂製の袋体に水又はゲル水を充満し、同袋体を静電気が除去された紙管に挿入し、同紙管の片方の開口を閉塞して発破孔詰込み部材を構成し、発破孔の奥部に爆薬を配置し、同発破孔に前記発破孔詰込み部材をその閉塞面が爆薬側へ向くようにして挿入し、その後爆薬に点火して発破し、その爆圧によって噴出した袋体内の水又はゲル水の細霧で粉塵を捕捉して飛散を減少させるようにしたことを特徴とする、トンネル工事における発破粉塵の抑制方法。
【請求項2】
帯電防止処理されたポリエチレン樹脂製の袋体に水又はゲル水を充満し、同袋体を静電気が除去された紙管に挿入し、同紙管の片方の開口を閉塞した、発破孔詰込み部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−96419(P2010−96419A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267380(P2008−267380)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(591145737)エスビー工業株式会社 (3)