説明

トンネル構築工法のシールド機の発進方法

【課題】 工期を短縮することができるとともに、工事費を安く抑えることができるトンネル構築工法のシールド機の発進方法を提供する。
【解決手段】 シールド機を用いて地盤を掘進しながら、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、道路等をアンダーパスするトンネルを構築するトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、トンネルへのアプローチとなる部分に地上発進部1を設け、その地盤2上にシールド機20の発進時の反力をとる反力手段4を設ける。反力手段4は、地上発進部1の地盤2上に設置される架台5であって、架台5は、シールド機20の発進時の反力をとる反力受台6と、シールド機20の発進時の自重を支持する発進受台11とから構成される。反力受台6及び発進受台11は、地盤2に打設した複数の杭14によって支持され、シールド機20の自重によって沈下するのが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路等をアンダーパスする際に用いられるトンネル構築工法のシールド機の発進方法に関し、特に、地上からシールド機を発進させるためのトンネル構築工法のシールド機の発進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等をアンダーパスするトンネルを構築するトンネル構築工法の一例として、トンネルを構築する部分の全体を開削し、開削した部分にトンネルを構築し、その後に開削した部分を埋め戻すように構成したトンネル構築工法が知られている。
しかし、このようなトンネル構築工法にあっては、掘削する土量が多く、その排出、埋め戻しに非常に手間がかかり、工期が長くなるとともに、工事費が高くついてしまう。また、交通を遮断して作業を行わなければならないため、周辺の生活環境に影響を及ぼしてしまう。
【0003】
一方、トンネル構築工法の他の例として、道路等の両側にシールド機の外径よりも深い発進立坑及び到達立坑を構築し、発進立坑内にシールド機を設置し、この発進立坑の内面に支圧壁を構築し、この支圧壁とシールド機のシールドジャッキとの間に仮組セグメントを設置し、この仮組セグメントによりシールドジャッキの推進力の反力をとることにより、シールド機を発進立坑から発進させて掘進を開始させるように構成したトンネル構築工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような構成のトンネル構築工法にあっては、道路を開削する必要がないので、交通を遮断する必要はなく、周辺の生活環境に影響を及ぼすようなことはないものである。
【特許文献1】特開平10−184268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、道路等の両側への発進立坑及び到達立坑の構築、発進立坑への支圧壁の構築、仮組セグメントの設置等に手間がかかり、工期が長くなるとともに、工事費が高くついてしまう。また、発進立坑の構築、到達立坑の構築等を行う際に騒音、振動を伴うため、周辺の生活環境に影響を及ぼしてしまう。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、工期を短縮することができるとともに、工事費を安く抑えることができ、また、交通を遮断して周辺の生活環境に影響を及ぼすことなく、さらに、騒音や振動を小さく抑えることができて、周辺の生活環境への影響を少なくすることができるトンネル構築工法のシールド機の発進方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、シールド機を用いて地盤を掘進しながら、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、例えば道路等をアンダーパスするトンネルを構築するトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、トンネルへのアプローチとなる部分にシールド機を発進させる地上発進部を設け、該地上発進部の地盤上にシールド機の発進時の反力をとる反力手段を設けたことを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、トンネルへのアプローチ部に地上発進部を設け、この地上発進部の地盤上に反力手段を設けることにより、シールド機の発進時の反力をとることができることになる。従って、シールド機を地上から発進させることが可能となるので、発進立坑の構築、到達立坑の構築、発進立坑内への支圧壁の構築、仮組セグメントの設置等が不要となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記反力手段は、前記地上発進部の地盤上に設置される架台であることを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、地上発進部の地盤上に設置した架台によりシールド機を地上発進させる際の反力をとることができることになる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記架台は、前記シールド機の発進時の反力をとるための反力受台と、前記シールド機の発進時の自重を支持する発進受台とからなることを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、地上発進部の地盤上に設置した架台の反力受台によりシールド機を地上発進させる際の反力をとることができるとともに、発進受台によりシールド機の発進時の自重を支持することができることになる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記地上発進部の地盤に複数の杭を打設し、この複数の杭によって前記シールド機の発進時の反力をとることを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、地上発進部の地盤に打設した複数の杭によって架台の反力をとることができるとともに、シールド機の発進の際に、シールド機の自重によって架台が沈下するのを防止できる。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記地上発進部の地盤に複数のアンカーを打設し、このアンカーによって前記架台の反力をとることを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、地上発進部の地盤に打設した複数のアンカーによって架台の反力をとることができる。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記地上発進部の下方地盤または背面側地盤を改良し、この改良地盤によって前記架台の反力をとるように構成したことを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、地上発進部の下方地盤または背面側地盤を改良した改良地盤によって架台の反力をとることができるとともに、地上発進部の下方地盤を改良した場合には、シールド機の発進の際に、シールド機の自重によって架台が沈下するのを防止できる。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記地上発進部の背面側に位置する舗装によって前記架台の反力をとるように構成したことを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、アンカーを打設したり、地盤改良を施すといった繁雑な作業を行うことなく、架台の反力をとることができる。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項2から7の何れかに記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、前記地上発進部の地盤上に敷設されるセグメントを前記架台に固定手段を介して固定するように構成したことを特徴とする。
本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法によれば、地上発進部の地盤上に敷設されるセグメントは、固定手段によって架台に固定されることになるので、シールド機の推進時の反力をセグメントによってとる際に、セグメントが浮き上がるのを防止できることになる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明によるトンネル構築工法によれば、地上発進部の地盤上に反力手段(架台)を設置し、この反力手段によりシールド機の発進時の反力をとることにより、シールド機を地上発進させることができることになる。従って、発進立坑の構築、発進立坑内への支圧壁の構築、シールド機と支圧壁との間への仮組セグメントの設置等が不要となるので、工事全体に要する工程数を少なくすることができ、工期を短縮することができるとともに、工事費を安く抑えることができる。
【0017】
また、交通を遮断することなくトンネルを構築することができるので、周辺の生活環境に影響を与えることがなくなる。
【0018】
さらに、地上発進部の地盤に打設した杭、アンカー、改良地盤又は舗装によって架台の反力をとることができるとともに、場合によっては、シールド機の発進時にシールド機の自重によって架台が沈下するようなことはなく、シールド機を地上から確実に発進させることができる。
【0019】
さらに、地上発進部に敷設したセグメントを架台に固定手段によって固定することができるので、シールド機の推進時の反力をセグメントでとる際に、セグメントが浮き上がるようなことはなく、トンネルの構築を連続して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法の一実施の形態が示されていて、図1はトンネルのアプローチ部を示す概略平面図、図2は図1の正面図、図3は図1のA−A線断面図、図4はシールド機の発進時の状態を示す正面図である。
【0021】
すなわち、このトンネル構築工法のシールド機の発進方法は、例えば、既存の道路等をアンダーパスするトンネルを構築する際に、地上からシールド機を発進させるのに有効なものである。
以下、図1〜図4を参照しながら、この実施の形態によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法について具体的に説明する。
【0022】
まず、道路等(この実施の形態においては道路を対象とする。)をアンダーパスするトンネルへの一方のアプローチ部の端部をシールド機20の地上発進部1とし、他方のアプローチ部の端部を地上到達部(図示せず)とし、地上発進部1の地盤2上にシールド機20の地上発進時の反力をとるための反力手段4を設置する。
【0023】
反力手段4は、複数の鋼材を組み合わせて構成した架台5であって、架台5の一部で後述するシールド機20のシールドジャッキ42を支持することにより、シールド機20の発進時の反力をとることができ、シールド機20を地上発進させることが可能となる。架台5は、地上発進部1の地盤2上にコンクリート製の基台3を介して設置される。なお、地上発進部1の地盤2が硬質の場合には、基台3を介さずに直接に地盤2上に架台5を設置しても良い。
【0024】
架台5は、図1〜図3に示すように、シールド機20の発進時の反力をとるための反力受台6と、シールド機20の発進時の自重を支持するための発進受台11とを備えている。反力受台6及び発進受台11は、それぞれ別体に形成して地上発進部1の地盤2上に設置しても良いし、一体に形成して地盤2上に設置しても良い(この実施の形態においては別体に形成して地盤2上に設置している。)。
【0025】
反力受台6は、シールド機20の推進方向に対して略平行に設置される一対の脚7、7と、両脚7、7の長手方向の中央部間に両脚7、7と直角をなすように架設される梁8と、各脚7の長手方向の中央部に垂直に立設される支柱9と、各支柱9の後面側(シールド機20の推進方向後方側の面)の上端部と各脚7の長手方向の一端部(シールド機20の推進方向後方側の端部)との間に斜めに架設される筋交10とから構成される。
【0026】
上記のような構成の反力受台6は、図4に示すように、各支柱9の前面側(シールド機20の推進方向前方側の面)で後述するシールド機20のシールドジャッキ42の後端部を支持し、これによりシールド機20の推進時の反力をとることができ、シールド機20を地上発進させることが可能となる。反力受台6の脚7、梁8の本数は、特に制限はなく、地盤2の状態、使用するシールド機20の種類等に応じて適宜の本数とすれば良い。
【0027】
発進受台11は、反力受台6の両脚7、7間に設置され、シールド機20の推進方向に対して略平行に設置される3本の脚12、12、12と、それらの脚12、12、12間の後端部(シールド機20の推進方向後方側の端部)間に脚12、12、12と直角をなすように架設される2本の梁13、13とから構成される。
【0028】
発進受台11の各脚12は、反力受台6の各脚7よりも長く形成され、各脚12の後端が反力受台6の各脚7の後端と面一となり、各脚12の前端が反力受台6の各脚7の前端よりもシールド機20の推進方向前方に所定の長さ突出するように、反力受台6の両脚7、7間に設置される。
【0029】
発進受台11は、図4に示すように、シールド機20の地上発進の際にシールド機20の自重を支持し、シールド機20が沈下するのを防止している。発進受台11の脚12、梁13の本数は、特に制限はなく、地盤2の状態、使用するシールド機20の種類等に応じて適宜の本数とすれば良い。
【0030】
反力受台6の各脚7及び梁8に対応する地盤2の部分には、図2及び図3に示すように、それぞれ複数本の杭14が打設され、これらの杭14の上部に各脚7及び梁8が溶接、ボルト等の連結手段により一体に連結されている。
【0031】
杭14は、各脚7及び梁8を支持できるものであれば特に制限はなく、周知の鋼管杭、鉄筋コンクリート杭、プレストレスト杭等を使用することができる。杭14の打設方法も特に制限はなく、使用する杭14の種類に応じた周知の打設方法を使用することができる。
【0032】
上記のように地盤2に打設した複数の杭14によって反力受台6の各脚7及び梁8を支持することにより、シールド機20の発進時にシールド機20の自重によって反力受台6が沈下するのを防止することができ、地盤2の状態に影響されることなく、シールド機20を地上から発進させることができる。
【0033】
発進受台11の各脚12及び梁13に対応する地盤2の部分には、図2及び図3に示すように、それぞれ複数本の杭14が打設され、これらの杭14の上部に各脚12及び梁13が溶接、ボルト等の連結手段により一体に連結されている。
【0034】
杭14は、反力受台6の杭14と同様に、各脚12及び梁13を支持できるものであれば特に制限はなく、周知の鋼管杭、鉄筋コンクリート杭、プレストレスト杭等を使用することができる。また、杭14の打設方法も特に制限はなく、使用する杭14の種類に応じた周知の打設方法を使用することができる。
【0035】
上記のように地盤2に打設した複数の杭14によって発進受台11の各脚12及び梁13を支持することにより、シールド機20の発進時にその反力をとることができるとともに、シールド機20の自重によって発進受台11が沈下するのを防止することができ、地盤2の状態に影響されることなく、シールド機20を地上から掘進させることができる。
【0036】
なお、杭14は、必要に応じて打設すれば良い。また、上述した実施形態では、杭14の上部に各脚7及び梁8が溶接、ボルト等の連結手段により一体に連結することにより、杭14と反力受台6とを直接連結したものを例示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、杭14の頭部を基台3の中間部にとどめ、杭14と反力受台6とを基台3を介して間接的に連結することもできる(図示せず)。
【0037】
なお、反力受台6の各脚7及び梁8、発進受台11の各脚12及び梁13を、図4に示すように、各脚7、12及び梁8、13に対応する地盤2の部分に斜めに複数のアンカー15を打設し、このアンカー15に溶接、ボルト等の固定手段を介して各脚7、12及び梁8、13を固定するように構成しても良い。
【0038】
架台5の反力受台6及び発進受台11の各脚7、12及び梁8、13の上部には、枕木16を介してレール17が敷設され、このレール17上を機関車18が走行可能に構成され、この機関車18を介して機材の搬入、搬出、掘削した土砂の排出等の作業を行うことができる。
【0039】
シールド機20は、図4に示すように、地盤2を掘削するためのカッター29、36を備えた機械本体部21と、機械本体部21を推進させるための動力部40と、機械本体部21と動力部40とを連結する連結手段44とから構成されている。
【0040】
機械本体部21は、矩形筒状の前胴体22と、前胴体22内に縦横に所定の組合せで配列されるとともに、各々が独立して前胴体22から出没可能、かつ各々が独立して駆動可能な複数の矩形状の主シールド25と、幅方向の両端の主シールド25と前胴体22との間に設けられるとともに、各々が独立して前胴体22から出没可能、かつ各々が独立して駆動可能な複数の矩形状の側部シールド32とを備えている。
【0041】
前胴体22の内部は、各主シールド25及び各側部シールド32がスライド自在に設けられ、前胴体22からその前方に向かって出没可能に構成されている。各主シールド25及び各側部シールド32は、独立して前胴体22から出没可能に構成されている。なお、各主シールド25間、及び主シールド25と側部シールド32との間には、前胴体22と一体の隔壁を設けることもできる。
【0042】
主シールド25の配列は、構築するトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組合せとすることができ、例えば、縦×横=2(段)×3(列)、2(段)×5(列)、3(段)×3(列)等とすることができる。
【0043】
各主シールド25は、前胴体22内にスライド自在に設けられる矩形状のシールド本体26と、シールド本体26と前胴体22との間に設けられて、シールド本体26を進退させるスライドジャッキ27と、シールド本体26の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター29を有するカッターヘッド28と、シールド本体26に設けられる駆動源30と、駆動源30の駆動力をカッターヘッド28に伝達する動力伝達機構31とを備えている。
【0044】
各側部シールド32は、前胴体22内にスライド自在に設けられる矩形状のシールド本体33と、シールド本体33と前胴体22との間に設けられて、シールド本体33を進退させるスライドジャッキ34と、シールド本体33の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター36を有するカッターヘッド35と、シールド本体33に設けられる駆動源37と、駆動源37の駆動力をカッターヘッド35に伝達する動力伝達機構38とを備えている。
【0045】
各主シールド25のシールド本体26及び各側部シールド32のシールド本体33には、掘削した土砂を排出するための排出装置39がそれぞれ接続されている。排出装置39は、例えば、スクリューコンベアと圧送ポンプとの組合せ等が挙げられる。
【0046】
動力部40は、機械本体部21の前胴体22の後部に連結手段44を介して連結される矩形筒状の後胴体41と、後胴体41内の4隅に設けられてシールド機全体20を推進させる複数のシールドジャッキ42とを備えている。
【0047】
連結手段44は、前胴体22と後胴体41とを、上下方向及び左右方向に相対的に屈曲自在に連結する連結継手(図示せず)と、前胴体22と後胴体41との間に設けられて、前胴体22の後胴体41に対する上下方向及び左右方向への相対的な屈曲角度を所定の値に設定する中折れジャッキ45とから構成されている。
【0048】
後胴体41の内側にはセグメント組立装置43が設けられ、このセグメント組立装置43により、掘削した部分の内面に順次セグメント47が組み立てられ、セグメント47による内壁が構築される。
【0049】
そして、図4に示すように、上記のように構成したシールド機20を架台5の発進受台11の上部に位置し、各シールドジャッキ42の後端部を反力受台6の各支柱9の前面側に当接させ、シールドジャッキ42を作動させて反力受台6によって反力をとるとともに、機械本体部21の側部シールド32又は主シールド25を作動させてカッターヘッド35、28を回転駆動させることにより、シールド機20が地上発進部から発進されるとともに、カッターヘッド35、28の先端部のカッター36、29によって地盤2の掘削が開始される。
【0050】
この場合、シールド機20の各シールドジャッキ42の後端部を反力受台6に当接させることにより、シールド機20の発進時の反力をとることができるので、地上発進部1に発進立坑を構築したり、発進立坑内に支圧壁を構築したり、支圧壁と発進立坑との間に仮組セグメントを設置したりする作業が不要となる。従って、工事全体の工程数を少なくすることができるので、工期を短縮することができるとともに、工事費を安く抑えることができる。
【0051】
また、架台5の反力受台6の脚7及び梁8、及び発進受台11の脚12及び梁13は、それぞれ地盤2に打設した複数の杭14又はアンカー15によって架台5の反力をとっているので、シールド機20の自重によって沈下するようなことはなく、シールド機20の発進時の反力を確実にとることができ、地盤2の状態に影響されることなく、地上発進、地上到達により道路をアンダーパスするトンネルを構築することができる。
【0052】
また、道路を開削することなく、道路をアンダーパスするトンネルを構築することができるので、交通を遮断することなくトンネルを構築することができ、工事によって周辺の生活環境に影響を与えるようなことはない。
【0053】
そして、シールド機20により地盤2を掘削しながら、掘削した部分にセグメント47を敷設する場合には、地上発進部1に敷設するセグメント47をボルト等の固定手段により架台5側に固定することができるので、シールドジャッキ42の後端部を反力受台6からセグメント47の端面に変えても、セグメント47が浮き上がるようなことはなく、確実に反力をとることができて、シールド機20を推進させることができる。
【0054】
図5(a),(b)は架台の反力をとるための他の例を示す断面図である。図5(a),(b)の例は、地上発進部1の下方地盤を改良し、この改良地盤50によって架台5の反力をとるように構成している。これにより、地上発進部1の下方の改良地盤50によって架台5の反力をとることができ、シールド機20の発進の際に、シールド機の自重によって架台が沈下するのを防止できる。図5(a)の例では、改良地盤50中に芯材として例えば複数のH型鋼48、48が鉛直配置されており、図5(b)の例では、芯材がない。芯材がない図5(b)の例では、反力受台6が備える脚7,7に直接或いは間接的に当接する受け部7Aを一体的に設けることが好ましい。受け部7Aは、同図のように脚7,7の前面側端部に設けて改良地盤50の前端縁に当接させることもできるし、脚7,7の長手方向中間部に設けて改良地盤50の中間部内に埋設するように当接させることもできる。なお、図5(a)の例でも受け部7Aを設けることができる。
【0055】
図6は、地上発進部1の背面側地盤を改良し、この改良地盤50によって架台5の反力をとるように構成している。この例においては、反力受台6が備える脚7,7の背面側端部に改良地盤50の前端縁に直接或いは間接的に当接する受け部7Aを一体的に設けることが好ましい。
【0056】
図7の例は、地上発進部1の背面側に位置する舗装52によって架台5の反力をとるように構成している。具体的には、反力受台6が備える脚7、7の背面側端縁を舗装52の前端縁に直接或いは間接的に当接している。この例においても、反力受台6が備える脚7,7の背面側端部に舗装52の前端縁に直接或いは間接的に当接する受け部7Aを一体的に設けることが好ましい。
【0057】
また、前記の説明においては、道路をアンダーパスするトンネルの構築に本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法を適用したが、その他の既存のものをアンダーパスするトンネル、さらには、地下駐車場などのトンネルの構築に本発明を適用しても良いものであり、その場合にも、同様の作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法の一実施の形態を示した概略平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】本発明によるトンネル構築工法のシールド機の発進方法の変形例を示した概略図である。
【図5】(a),(b)は架台の反力をとるための例を示す断面図である。
【図6】は架台の反力をとるための他の例を示す断面図である。
【図7】は架台の反力をとるためのさらに他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 地上発進部
2 地盤
3 基台
4 反力手段
5 架台
6 反力受台
7、12 脚
8、13 梁
9 支柱
11 発進受台
14 杭
15 アンカー
20 シールド機
21 機械本体部
22 前胴体
25 主シールド
26、33 シールド本体
32 側部シールド
47 セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機を用いて地盤を掘進しながら、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、トンネルを構築するトンネル構築工法のシールド機の発進方法であって、
トンネルへのアプローチとなる部分にシールド機を発進させる地上発進部を設け、該地上発進部の地盤上にシールド機の発進時の反力をとる反力手段を設けたことを特徴とするトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項2】
前記反力手段は、前記地上発進部の地盤上に設置される架台であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項3】
前記架台は、前記シールド機の発進時の反力をとるための反力受部と、前記シールド機の発進時の自重を支持する発進受部とからなることを特徴とする請求項2に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項4】
前記地上発進部の地盤に複数の杭を打設し、この複数の杭によって前記シールド機の発進時の反力をとるように構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項5】
前記地上発進部の地盤に複数のアンカーを打設し、このアンカーによって前記架台の反力をとることを特徴とする請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項6】
前記地上発進部の下方地盤または背面側地盤を改良し、この改良地盤によって前記架台の反力をとるように構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項7】
前記地上発進部の背面側に位置する舗装によって前記架台の反力をとるように構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。
【請求項8】
前記地上発進部の地盤上に敷設されるセグメントを前記架台に固定手段を介して固定するように構成したことを特徴とする請求項2から7の何れかに記載のトンネル構築工法のシールド機の発進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−16960(P2006−16960A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176767(P2005−176767)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【分割の表示】特願2004−197168(P2004−197168)の分割
【原出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】