説明

トンネル用ケーブル支持具

【課題】
トンネル内への各種ケーブルの布設工事を、比較的簡単な作業にて迅速に、且つ、確実に行えるように工夫したトンネル用ケーブル支持具を提供する。
【解決手段】
トンネルの内壁面TNに取付けた金属製支持金具20に対して、ケーブルKを抱持する湾曲面部11が凹設された受け皿体10を装着すると共に、この受け皿体10には、上記抱持されたケーブルKの上側面に掛け渡した樹脂バンド30の両端部30A,30Bを挿通する左右のロッキングヘッド15,17を設け、これ等両ロッキングヘッド15,17には、樹脂バンド30を上記ケーブルKを締め付けた状態に維持するロック爪16,18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルや通信ケーブルと言った各種のケーブル類(以下単にケーブルという)を、トンネル内に布設する時に用いて好適なトンネル用ケーブル支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル内への各種ケーブルの布設に当たっては、例えば、特許文献1に見られるように、トンネル内の側壁に対して、縦添え状態にして間隔的に多数取り付けられる金属製の支持金具と、これ等各支持金具の前面に上下に多段的に取り付けられる複数個の受け皿体(受座)と、によって構成されているトンネル用ケーブル支持具が、一般的に使用されている。
【0003】
しかし、上記の特許文献1に見られるように、ケーブルを単に受け皿体の円弧状部分(凹部)に載置しただけの状態で布設した場合には、列車通過時の強烈な風圧や振動等を受けて、ケーブルが受け皿体からはずれて垂れ下がってしまう危険があるため、従来は、例えば特許文献2や3、或いは、添付した図4に見られるように、受け皿内に載置したケーブルが容易に外れないようにするための工夫を施したり、或いは、特許文献4に見られるように、受け皿にケーブル脱落防止用のバンドを取り付けたり、更には、添付した図5(A),(B)に示すように、受け皿60に載置したケーブルKを紐又はワイヤーW等で縛着したりして、脱落を防止していた。
【0004】
而して、図4に示した(従来例1)は、上記特許文献2に記載の構成を説明したものであって、図中、TNはトンネルの壁面符号20に全体的に示したものは、上下両端部にアンカーボルト40,40へ装着するための挿通穴21A,21Aを備えた固定用耳部21,22が設けられた支持金具である。
【0005】
この支持金具20には図示の如く中心線上に沿ってスリット20Vが設けられ、このスリット20Vに複数個の受け皿体50X…が多段的に取り付けられている。各受け皿体50X…は、ボルト52を介して相対的に摺動できるように連結されている固定部材50と可動部材51とから成り、これ等両部材50,51は、布設されたケーブルKを締め付け状態に抱持できるように、相対向した湾曲面部50R,51Rを備えている。また、固定部材50の背面部には、スリット20V内に挿入して受け皿50Xを90°回転することで、支持金具20の裏面側に係止することができる係止部50’が設けられている。
【0006】
更に図4において、前述したボルト52は上記可動部材51及びそのガイド筒54を挿通して、先端のネジ部が戻しバネ52Sを介して上記固定部材50に設けたナット53Sに螺合されていて、このボルト52の締め付け具合によって、上記ケーブルKに対する上記固定部材50と可動部材51による係止力を強弱自由に調節して、ケーブルKの脱落を防止している。
【0007】
また、(従来例2)が示されている図5(A),(B)において、60は受け皿体、61はその基台部、62は受け皿体60に設けた紐又はワイヤーWの挿通部、CKはケーブルKの周面部に懸渡した紐又はワイヤーWに取り付けたカバー、WXは紐又はワイヤーWの縛着部であって、受け皿体60内に載置(布設)されたケーブルKは、図示の如く紐又はワイヤーWによって受け皿体60内に縛着される仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭59−107530号公報
【特許文献2】特開2004−140985号公報
【特許文献3】特開2004−140984号公報
【特許文献4】実公昭45−9739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に記載のケーブル支持具は、これを添付した図4の(従来例1)の記載に従って説明すると、ケーブルKを支持する受け皿体50Xが、固定部材50と可動部材51に分割形成され、且つ、これ等両部材50と51をボルト12を螺動操作して相対的に摺動させることにより、両部材50,51の湾曲面部50R,51Rの間隔を調整して、ケーブルKを抱持する仕組みに成っているため、構成が頗る複雑で、製造価格が高くなる問題と、ケーブルKの抱持作業が繁雑化する問題があった。
【0010】
また、上記特許文献3に記載のケーブル支持装置も、当該公報の記載に従って説明すると、雌ねじ5に対する雄ねじ6のねじ込み具合によって、受け皿6としての弾性板によるケーブルCの締め付け具合を調整する構成であるため、支持金具1に対して多段的に取り付けられる各受け皿4の構造が複雑で、ケーブル支持具の製造単価が高くなって、工事価格の高騰を招いてしまう問題があった。
【0011】
更に、前記特許文献4に記載のケーブル支持装置は、バンド11の両端に設けた鉤孔12,12を、支持金具8の凹部の両側に切起して形成した鉤片10,10に係合させることにより、金具8の凹部6に載置したケーブルaを把持固定する構成であるため、ケーブルaに対する締め付け力を強弱調節することができず、従って、ケーブルaの太さ(直径)が異なると、充分な結着力(固着力)を発揮できない問題があり、また、前記図5に示した(従来例2)に記載のケーブル支持具は、縛着した紐又はワイヤーWが過年で伸びたり、縛着が緩んだりして、トンネル内での支持に支障を来たり、更には、縛着部WXが強固にねじられていて、容易に取り外したり交換したりすることができない問題があった。
【0012】
従って本発明の技術的課題は、トンネル内への各種ケーブルの布設工事を、比較的簡単な作業にて迅速に、且つ、確実に行えるように工夫したトンネル用ケーブル支持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係るトンネル用ケーブル支持具は、上下両端部にアンカーボルトへ装着する固定用突片がは設けられ、且つ、全体が縦長の矩形状を成すと共に、前面の中心線上にスリットが設けられた金属製の支持金具と、この支持金具のスリット内に上下多段的に装着される複数のケーブル支持用の受け皿体とによって構成されたトンネル用ケーブル支持具であって、
ケーブルを下から抱持する略半円弧状の湾曲面部が凹設されている前記各受け皿体に、当該湾曲面部を挟んだ状態で、その左右両側部に、上記湾曲面部内に抱持された前記ケーブルの上側面に掛け渡した樹脂バンドの両端部側を夫々挿通可能とする左右二つのロッキングヘッドを設け、これ等左右のロッキングヘッドには、挿通した樹脂バンドに係合して、樹脂バンドを上記ケーブルを締め付けた状態に維持するロック爪が設けられていることを特徴としている。
【0014】
(2) また、本発明の請求項2に係るトンネル用ケーブル支持具は、支持するケーブルの径に合わせて、前記湾曲面部のサイズが大小異なる複数種の受け皿体が、予め用意されていることを特徴としている。
【0015】
(3) また、本発明の請求項3に係るトンネル用ケーブル支持具は、前記湾曲面部が凹設されている受け皿体に、この湾曲面部を挟んでその左右両側にヘッド部を設け、これ等両ヘッド部内に設けられた嵌込穴には、前記左右のロッキングヘッドを嵌め込んで固定すると共に、これ等左右のヘッド部の外壁には、前記樹脂バンドの両端側を各々ロッキングヘッドに挿通させるための挿入口と引出し口が開口形成されていることを特徴としている。
【0016】
(4) また、本発明の請求項4に係るトンネル用ケーブル支持具は、前記左右のロッキングヘッドには、いずれも内部に略L字状に屈曲形成したロック爪が収められていて、各ロック爪は、その刃先が前記各ヘッド部の引出し口の方向に向いた状態で、且つ、挿通した前記樹脂バンドの面に弾接する状態に設けられていることを特徴としている。
【0017】
(5) 更に、本発明の請求項5に係るトンネル用ケーブル支持具は、前記受け皿体の全体が、難燃性の合成樹脂材を用いて一体成形されていることを特徴としている。
【0018】
上記(1)で述べた請求項1に係るトンネル用ケーブル支持具によれば、トンネルの壁面にアンカーボルトを用いて多数のケーブル支持具を間隔的に取り付け、且つ、これ等各ケーブル支持具に装着した受け皿体の湾曲面部の間に、各種ケーブルを上から嵌め込んで抱持させれば、トンネル内の壁面に各種ケーブルを容易に敷設することができる。
【0019】
また、各受け皿体の湾曲面部に抱持されたケーブルは、弛み止め機能を備えている樹脂バンドの締め付け作用によって、各受け皿体、即ち、ケーブル支持具側に確実に固定されるため、列車等の車輌通過時の風圧や震動等によってケーブルが受け皿体から外れて垂れ下がる心配がなく、列車等の運行を安全に守ることができると共に、長年に亘ってその支持状態を維持することを可能にする。
【0020】
また、上記(2)で述べた請求項2に係るトンネル用ケーブル支持具によれば。トンネル内に布設されるケーブルには、信号用や照明用等、各種のものが存在し、その用途によってケーブル径も相違するが、ケーブル径の多少の相違は樹脂バンドの締め付け具合を調整することにより充分に対応可能である。一方、ケーブル径の差が大きい場合、或いは、ケーブル径が極端に細い場合には、予め用意されている中から、そのケーブル径に合った湾曲面部を備える受け皿体を選んで使用することにより、各種径のケーブルに対応した支持作用を発揮することができる。
【0021】
また、上記(3)と(5)で述べた請求項3及び5に係るトンネル用ケーブル支持具によれば、受け皿体とロッキングヘッドが別々に造られていて、受け皿体を例えば難燃ナイロンのような難燃性合成樹脂材料を用いて一体成形できるため、大量生産による生産コストの低減化を図れると共に、左右のロッキングヘッドは別生産して、その後、受け皿体の左右のヘッド部内に夫々組み込む生産方式の採用により、生産性の向上を図ることを可能にする。
【0022】
更に、上記4で述べた請求項4に係る手段によれば、受け皿体の左右のヘッド部内に取り付けられた ロッキングヘッドのロック爪は、樹脂バンドの挿通(挿入)は可能にするが、これを引き戻す方向に引っ張ると、ロック爪の刃先が樹脂バンドの面に食い込んでロックする。従って、一旦引き締めてケーブルを受け皿体の湾曲面部内に抱持した樹脂バンドは、これを緩める方向に操作することは非常に難しく、従って、切断工具類等でこれを切断しない限り、受け皿体への 抱持状態は解除できないことになる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べた次第で、本発明に係るトンネル用ケーブル支持具によれば、トンネルの内壁面に取り付けた金属製の支持金具に対し、上下多段式に装着されている各受け皿体の湾曲面部に抱持された各ケーブルを、樹脂バンドの引き締めによってその抱持状態に保持し、且つ、この抱持状態をロッキングヘッドのロック爪が確実に維持できるものであって、全体の構成が比較的簡単で、而も、低コストにて製造可能な点、並びに、ロック爪の係止によって樹脂バンドによる各種ケーブルの抱持状態を長期間に亘って維持できる点と相俟って、鉄道や道路といった各種交通手段用トンネルへのケーブル布設に用いて、洵に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本発明に係るトンネル用ケーブル支持具の実施例を示した側面図で、(B)はその正面図、(C)の(イ)と(ロ)は本発明で使用するロッキングヘッドの実施例を示した側面図と平面図である。
【図2】本発明で使用する金属製支持金具の実施例を示したもので、(A)は一部破断平面図、(B)は一部破断側面図、(C)は底面図である。
【図3】本発明に係るトンネル用ケーブル支持具を用いて、トンネル内に布設するケーブルを支持している状態を説明した側面図である。
【図4】従来例1の構成を説明した一部断面側面図である。
【図5】(A)は従来例2の構成を説明した側面図で、(B)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、上述した本発明に係るトンネル用ケーブル支持具の実施の形態について、これを図面と共に詳細に説明すると、図1において符号10で全体的に示したのは、本発明を構成する受け皿体であって、例えば、難燃ナイロンの如き難燃性の合成樹脂材を用いて一体成形されたこの受け皿体10は、敷設するケーブルKを下から受け止めて抱持する略半円弧形状の湾曲面部11が凹接された支持アーム10Tと、この支持アーム10Tの根端部に一体形成された基台部12とによって構成されていて、この受け皿体10は支持するケーブルKの径の種類(大小)に合わせて、上記湾曲面部11の径が異なるものが予め複数種用意されている。
【0026】
しかし、本発明で使用する受け皿体10は、図1(A)に示す如く、後述する樹脂バンドの締め付け具合によって、一定の径のケーブルKだけではなく、点線で示した異なる径のケーブルKSも抱持可能であるため、ある程度の範囲内であれば、ケーブル径の大小に適応することは可能である。
【0027】
更に図中、13と14は上記湾曲面部11を挟んだ状態で、上記支持アーム10Tの左右の上端部分に設けたヘッド部で、これ等左右のヘッド部13,14の内部には、左右のロッキングヘッド15,17が、夫々支持アーム10Tの側面手前側より嵌め込んで接着固定されている。
【0028】
次に、30は上記のケーブルK又はKSを上記受け皿体10の湾曲面部11の中に締め付けて抱持させる樹脂バンドで、例えば比較的硬質の難燃性の合成樹脂材(例えば難燃ナイロン)を用いて構成されている。尚、この樹脂バンド30は、例えば、長尺に形成されたものを必要な長さに切断しながら使用するが、予め同一長さに切断したものを使用するようにしてもよく、その選択は任意とする。
【0029】
また、上記左右のヘッド部13,14には、上記樹脂バンド30の根端側30Bと先端部30Aを挿入し、且つ、挿通させるための入り口13A,14Aと、出口13B,14Bが夫々形成され、更に、左右のロッキングヘッド15,17には、上記樹脂バンド30の挿通路H,Hが形成されている。また、これ等一方の入り口13A,挿通路H,出口13Bと、他方の入り口14A,挿通路H,出口14Bは、夫々が斜め上方に向けて同一線上に位置するように設けられていて、上記樹脂バンド30の根端側30Bと先端側30Aのスムーズな挿通を可能にしている。
【0030】
更に具体的には、上記左右のロッキングヘッド15,17は、各ヘッド部13,14の内部に、図1(A)に示す如く夫々が抱持するケーブルKの上部接線方向に向けて斜め上向きに傾斜させた状態に取り付けられていて、ケーブルKの上部周面に掛け渡した樹脂バンド30の根端部30B及び先端部30Aの挿通と締め付けを、効果的に行えるように構成している。
【0031】
加えて、各ロッキングヘッド15,17の内部には、図示の如く全体が略L字形状に形成され、且つ、各刃先を夫々出口13B,14Bの方向に向けた状態で、前記挿通路H,H内に挿通された樹脂バンド30の内側面、及び、外側面に夫々接する様に構成した左右のロック爪16と18が、図1(C)の(イ)、(ロ)に示した取付台16T,18Tに支持された状態で取付られている。尚、図1(A)において、12Tはロッキングヘッド15を固定するために、前記基台部12に設けた保持部であって、この保持部12Tも前記ヘッド部13の一部を構成している。
【0032】
従って、各ロッキングヘッド15,17の各ロック爪16,18は、樹脂バンド30の根端部30Bと先端部30Aが、夫々ロッキングヘッド15,17の出口13B,14Bの方向に挿通されている時、即ち、締め付け操作時には、両端部30B,30A側の面に刃先が係止せずにその挿通をフリーにしているが、当該端部30B,30Aに対して各ロッキングヘッド15,17の入り口13A,14Aの方向に引き戻す力が作用されると、刃先が樹脂バンド30の面に食い込んで、樹脂バンド30の引き戻しをロックする仕組みに成っている。
【0033】
以上の事から、図1(A)に示すように、受け皿体10の湾曲面部11にケーブルKを載置した状態、又は、載置する前に、樹脂バンド30の根端部30B側を、一方のヘッド部13の入口13Aから、一方のロッキングヘッド15の挿通路Hを挿通して出口13Bから引き出した後、この樹脂バンド30を受け皿体10の湾曲面部11内に抱持されたケーブルKの上周面に掛け渡し、次いで、当該樹脂バンド30の先端部30A側を、他方のヘッド部14の入口14Aから、他方のロッキングヘッド17の挿通路H内を挿通させて出口14Bから引出、これを矢印に示す長手方向に引っ張れば、先ず、一方の ロッキングヘッド15のロック爪15の刃先が樹脂バンド30の根端部30B側の面に食い込んでロックし、その後、その引張力を解除すれば、樹脂バンド30に引き戻し力が作用するため、他方のロッキングヘッド17のロック爪18の刃先が、樹脂バンド30の先端部30A側の面に食い込んでロックするため、両端部側30Aと30Bがこの様にロックされた樹脂バンド30によって、ケーブルKを受け皿体10の湾曲面部11内に強力に抱持させることができる。
【0034】
尚、上記樹脂バンド30を矢印方向に引っ張る場合は、作業員が樹脂バンド30の先端部30A側を手で持って引っ張っても、或いは、専用の工具類も用いて引っ張ってもよく、また、一度樹脂バンド30で受け皿体10に抱持させたケーブルKを取り外す場合は、切断工具等で樹脂バンド30を切断すれば、ケーブルKの取り外しと、各ロッキングヘッド15,17からの切断済み樹脂バンド30の取り外しを容易に行うことができる。
【0035】
図2は、本発明に係るトンネル用ケーブル支持具を構成する金属製の支持金具20の構成を示したものであって、(A)図はその一部省略正面図、(B)図はその側面図、(C)図は底面図であり、これ等の図面において夫々符号20で全体的に示した支持金具は、上下両端部に夫々アンカーボルト40,40(図3参照)へ装着する略L字形状の固定用突片21,22が突接された縦長の矩形状を成すと共に、前面の中心線上にスリット20Hが大きく開口形成された、断面が上向きの略凹型形状に形成されている。
【0036】
更に図2において、20A,20Aは上記のスリット20Hの両サイドを構成する左右のガイド板で、20Nはスリット20Hの上端口、23はスリット20Hの下端口を塞ぐストッパー、21Aと22Aは前述した上下の固定用突片21,22に設けた上記アンカーボルト40,40用の取付穴であって、上部の取付穴21Aは横長に形成され、下部の取付穴22Aは縦長に形成されていて、アンカーボルト40,40によるトンネル内壁面TNへの取付け角度や、上下の位置を調節可能に構成している。
【0037】
以上の如く構成した多数の金属製支持金具20…を、トンネルの内壁面TNに対して、トンネルの長さ横方向に所定の間隔で夫々アンカーボルト40,40を用いて固定した後、各支持金具20の上端口20Nより、前述した各受け皿体10…の基台部12…を空洞状に形成された支持金具20の内部に落とし込めば、図3に示す様に複数の受け皿体10…を、その支持アーム10T…を夫々前記スリット20Hよりトンネル内の方向に突出させた状態で、トンネルの内壁面TNに取付けることができる。
【0038】
図3では、3台目の 受け皿体10を上から落とし込んでいる状態が示されており、従って、図示したサイズの支持金具20には、計4台の受け皿体10…を落とし込むことが可能であるが、これは実施の一例であって、支持金具20の長さを変えることによって、受け皿体10…の落とし込み台数、即ち、 ケーブルKの支持本数を加減可能であることは勿論である。
【0039】
また、図2、図3において夫々符号23’で示したのは、上記支持金具20の上端口20Nの下側部分に設けたストッパー用差込穴であって、図示した実施例では、計4台の受け皿体10…を支持金具20の内部に落とし込んだ後に、この差込穴23’に棒状のストッパー(図示省略)を差し込んでロックすれば、支持金具20内からの受け皿体10の抜け出し(脱落)を防止可能にしている。
【0040】
一般的には、上記受け皿体10の湾曲面部11へのケーブルKの嵌め込みと、樹脂バンド30による締め付け作業は、受け皿体10を支持金具20に取付た後に夫々行うが、これは、 受け皿体10を先にケーブルKの所定箇所に感覚的に取付、その後、各 受け皿体10…をトンネルの内壁面TNに感覚的に取付けられている各支持金具20に嵌め込んで取付けるようにしてもよく、その選択は任意とする。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述した実施例の説明では、本発明を鉄道用トンネルのケーブル敷設用として使用することが記載されているが、これは実施の一例であって、本発明は自動車専用のトンネルや人間専用のトンネルにも利用可能であって、各種トンネルへのケーブルの布設に利用して頗る好適なものである。
【符号の説明】
【0042】
K ケーブル
10 受け皿体
11 湾曲面部
12 基台部
13,14 ヘッド部
15,17 ロッキングヘッド
16,18 ロック爪
20 支持金具
20H スリット
23 ストッパー
30 樹脂バンド
40 アンカーボルト
TN トンネルの内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両端部にアンカーボルトへ装着する固定用突片が設けられ、且つ、全体が縦長の矩形状を成すと共に、前面の中心線植にスリットが設けられた金属製の支持金具と、この支持金具のスリット内に上下多段的に装着される複数のケーブル支持用の受け皿体とによって構成されたケーブル支持具であって、ケーブルを下から抱持する略半円弧状の湾曲面部が凹設されている前記各受け皿体に、当該湾曲面部を挟んだ状態で、その左右両側部に、上記湾曲面部内に抱持された前記ケーブルの上側面に掛け渡した樹脂バンドの両端部側を夫々挿通可能とする左右二つのロッキングヘッドを設け、これ等左右のロッキングヘッドには、挿通した樹脂バンドに係合して、樹脂バンドを上記ケーブルを締め付けた状態に維持するロック爪が設けられていることを特徴とするトンネル用ケーブル支持具。
【請求項2】
支持するケーブルの径に合わせて、前記湾曲面部のサイズが大小異なる複数種の受け皿体が、予め用意されていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル用ケーブル支持具。
【請求項3】
前記湾曲面部が凹設されている受け皿体に、この湾曲面部を挟んでその左右両側にヘッド部を設け、これ等両ヘッド部内に設けられた嵌込穴には、前記左右のロッキングヘッドを嵌め込んで固定すると共に、これ等左右のヘッド部の外壁には、前記樹脂バンドの両端側を各々ロッキングヘッドに挿通させるための挿入口と引出し口が開口形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル用ケーブル支持具。
【請求項4】
前記左右のロッキングヘッドには、いずれも内部に略L字状に屈曲形成したロック爪が収められていて、各ロック爪は、その刃先が前記各ヘッド部の引出し口の方向に向いた状態で、且つ、挿通した前記樹脂バンドの面に弾接する状態に設けられていることを特徴とする請求項1、2または3に記載のトンネル用ケーブル支持具。
【請求項5】
前記受け皿体の全体が、難燃性の合成樹脂材を用いて一体成形されていることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載のトンネル用ケーブル支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5706(P2013−5706A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138171(P2011−138171)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000148276)株式会社浅羽製作所 (13)
【Fターム(参考)】