説明

トンネル監視員通路の破損した縦壁のタイル壁の補修方法

【課題】 自動車道のトンネル側壁際の監視員通路の欠損した縦壁のタイル表面の全面を一括して張り直して補修する方法を提供する。
【解決手段】 トンネル1内の監視員通路4の手摺りの支柱6aのベースプレート6b及び縦壁5のタイルの剥離箇所などの欠損部をステンレス製L字型タイル補修板9の上面補修枠11とタイル模様補修板10により補修する方法で、補修する箇所にアンカーを打込み、保守箇所の縦壁5にタイル模様補修板10を、監視員通路の欠損した部分に上面補修枠11をそれぞれ当接してタイル模様補修板10をパネル材で覆い、これらを支保材14で支持した後、面補修枠11の開口部にモルタルを注入固化し、モルタルの固化後に支保材を取り去りパネルを除去して縦壁5のタイル模様を補修する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車専用道路のトンネルでは、長期間の使用によりトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路の手摺りの下部の監視員通路の内部が劣化して損壊し、この内部の損壊が監視員通路の縦壁のタイル壁まで及んで破損する。この発明は損壊した箇所の補修方法に関し、特に監視員通路の内部の補修に加えて縦壁表面の破損したタイル壁をステンレス製L字型タイル補修板により補修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車専用道路の長大なトンネルにおけるトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路はその路側帯に面したコンクリート製の縦壁を有しており、この縦壁の上に監視員の安全をはかる鉄パイプ製の手摺りが立設されている。ところで、長大なトンネルの側壁は、運転者から見たトンネルの内視環境の改善のために、コンクリート壁からなるトンネル側壁にタイルを張りめぐらしてタイル内装としている。このトンネル側壁のタイル内装に合わせて、監視員通路の手摺りの下部の走行車線がわのコンクリート製の縦壁にも、通常はタイルを張りめぐらし、縦壁の壁面をコンクリート表面とした場合に受ける無味乾燥な感じを解消して、トンネル内を走行する自動車の運転者の心を整ったタイル壁面により和ませて安全運転をはかっている。
【0003】
ところで、寒冷地の自動車道路では、路面が凍結して滑り易くなるので、走行中にスリップする危険が極めて高い。そこで、このような路面凍結を防止するために、路面に凍結防止剤、例えば塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの塩分を散布している。このため、これらの凍結防止剤の散布された道路を走行してきた自動車がトンネル内に進入してくると、トンネル外でタイヤに付着した凍結防止剤の塩分をそのままトンネル内に持ち込み、トンネル内の路面に落とす。さらに、落下した凍結材をタイヤで跳ね飛ばし、トンネル側壁ぎわの監視員通路の下部の路側帯側の縦壁やその縦壁の上に立てられている鉄パイプ製の手摺りに凍結防止剤を付着させる。この付着した凍結防止剤にトンネル内の湧水が掛かると、凍結防止剤が徐々に溶解されて手摺りの付け根のベースプレートの部分から監視員通路の中に浸透する。このように凍結防止剤が監視員通路の中に浸透すると、監視員通路下部を構成するコンクリートに埋設の鉄筋が腐蝕され、この腐蝕された部分とその周囲が膨潤して劣化して損壊し、さらに縦壁を劣化し損壊する。このように監視員通路下部のコンクリートの断面破壊が起こって縦壁に及び、終にはコンクリート壁の表面に張りめぐらしたタイル面に剥離が生じ、タイルが脱落する。
【0004】
一方、トンネルの側壁面にクラックや欠損が生じ、あるいは監視員通路に不陸が生じると、これらに起因してトンネル内に湧水を生じ、上記したように凍結防止剤が徐々に溶解されて監視員通路に浸透して内部のコンクリートを損壊し、監視員通路の縦壁のタイル壁も損壊する。これらの損壊した部分の修復方法としては、表面の汚れを除去し、その上にプライマーを塗布し、プライマーの硬化後に不陸調整剤を塗布し、その表面に炭素繊維などの繊維シートを貼り付け、仕上げ剤を塗布するなどの修復工事が行われる。この方法は、不陸調整剤の塗布技術に高度な熟練を要とし、また繊維シートの貼り付けは、迅速な作業を必要とする。さらに、繊維シート内には貼り付け時に気泡を内包し易く、このため繊維シートの強度が低下して、再び漏水する事故も発生し易く、再度の補修が行う必要がある。これらの繰返しで、トンネル内壁や監視員通路の縦壁のコンクリート壁の強度は脆弱化されていた。このようになると、トンネル内壁の漏水した部分のコンクリート壁体をしゃくり取って、その内部に漏水を導く流下水路を形成した後に下地処理を行い、その表面をモルタルで平滑化し、その上にタイルプレートを貼り付け、タイルの目地部を充填することにより、トンネル内壁面を修復する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法では、修復後は、漏水が壁面を修復したタイル内装の表面を流れることはなくなり、従前のタイル内装したタイルの景観を回復することができるが、しかし、この方法による監視員通路の路側帯側の縦壁では、縦壁のタイル面のコンクリート下地すなわちタイルを表面に張りめぐらしているコンクリート下地の部分であるタイル内装部分損壊箇所の削り取りなどの作業を路側帯側から行う必要がある。このため、長期の工事期間にわたって、路側帯に最も近い車道の一車線を安全のために規制しなければならず、長期間にわたって交通渋滞を引き起し、また費用もかかる問題があった。
【0005】
さらに、凍結防止剤による塩害を受けたコンクリート構造物の補修方法として、コンクリート構造物の劣化した部分を取り除き、その箇所に型枠を配設して亜硫酸塩を含むグラウトまたはモルタルを流し込んで、コンクリートと型枠を一体化させる補修方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。ところで、この補修方法では、型枠は撤去しないので、モルタルの養生および型枠撤去のための工事期間を設ける必要はないが、この方法はタイル壁の補修方法に係る方法ではないので、この方法をトンネル内壁面にタイルを張ってタイル内装の壁面としている箇所に適用しても、元のタイル壁面や監視員通路の縦壁のタイル面を得ることはできない。そこで、タイル内装の景観を回復させるために、この補修方法で劣化した部分にモルタルを流し込んで型枠と一体化しても、現場の路側帯において、一体化した型枠の表面にさらにタイルを張りめぐらすか、あるいはタイルの色彩形状を描くなどの余分の工程を行う必要がある。このためにトンネル内での交通規制の必要な工事期間を延長しなければならない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−343796号公報
【特許文献2】特開2004−52413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、自動車用道路のトンネル内の走行車線の路面の状況やトンネル内壁などの状況を監視するために、トンネル内壁ぎわに設けられた監視員通路において、監視員通路の路側帯側の手摺りの下部の縦壁のタイル壁面に生じたタイルの剥がれや監視員通路のコンクリートの断面破壊の損壊による欠損部分の縦壁表面に張りめぐらしたタイルを個々に貼り直すことなく、その欠損部分のタイルの全面を一括して張り直して補修することで、元のタイル壁面と変わらないタイル壁の景観を付与する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
監視員通路の路側帯側の手摺りの下部のコンクリートの縦壁の壁面である縦壁の表面に貼られたタイル壁の経年変化による剥落を起こした部分や、あるいは、トンネル外の走行車線の路面に冬期に散布した凍結防止剤の塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの塩分が走行車両のタイヤなどによってトンネル内に持ち込まれ、タイヤから凍結防止剤の塩分が監視員通路側に跳ね飛ばされ、トンネル内の漏水と合わさって溶解され、この塩分を含む水が監視員通路の手摺りのベースプレートの部分から、下部のコンクリートの縦壁内に浸透する。このコンクリートの縦壁内に浸透した塩分を含む水がコンクリートの縦壁内に埋設された鉄筋を腐蝕し、さらに腐蝕した鉄筋とその周囲の部分が膨潤してコンクリートの縦壁を劣化する。この結果、監視員通路の縦壁内部のコンクリートの断面破壊やコンクリートの縦壁表面のタイル壁の剥離を引き起こす。そこで、このようにコンクリートの断面破壊あるいはコンクリートの縦壁表面のタイル壁の剥離の起こった部分をステンレス製L字型タイル補修板で被覆し、この被覆したステンレス製L字型タイル補修板の中にモルタルを埋め戻し、さらに埋め戻した部分の監視員通路のコンクリートの縦壁の表面を元のタイル壁面と変わらない色彩からなるタイル模様の壁面に補修し、走行車線を走行する車両の運転手から見た監視員通路の縦壁の景観を良好なものとする。さらに、この補修したタイル壁面を凍結防止剤の塩分による腐蝕に耐え得るものとする方法を発明者は鋭意研究して見出した。この方法として、コンクリートの縦壁の表面の当初のタイル壁面の色彩模様を模して描いたタイル模様を有するステンレス製の前面タイル補修板と監視員通路の手摺りのベースプレートの部分の上面に載置するステンレス製の上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を補修箇所の縦壁の最外部の壁面及びその縦壁の上面に載置し、この前面タイル模様補数板である縦壁の部分にパネル材を被せ、これらを断面C字型の支保材で支持し、上面に当接した上面補修枠に設けた開口部からコンクリートの縦壁内の欠損部にモルタルを流し込んでこのステンレス製L字型タイル補修板を監視員通路のコンクリート路盤と一体化する。この一体化の方法により監視員通路の路側帯側の手摺りの下部のコンクリートの縦壁の断面破壊した部分とそのタイルの剥離や損壊したタイル部分を当初のタイル模様と見た目に変わらない状態に補修する方法である。
【0009】
すなわち、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の手段では、監視員通路の路側帯側の手摺り支柱のベースプレートの下部のコンクリートからなる監視員通路の欠損した通路面の部分およびこの通路面の路側帯側の欠損したコンクリートの縦壁の部分およびこの縦壁表面のタイル剥離面の部分や損壊タイル面の部分の補修方法である。この補修方法としては、これらの補修を必要とする部分に前面タイル模様補修板および上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を当接し、さらに該ステンレス製L字型タイル補修板の前面タイル模様補修板の表面をパネル材で覆い、該パネル材および該上面補修枠を断面C字型の支保材により監視員通路面およびコンクリートの縦壁に取り付け支持した後、上面補修枠に有する開口部から下部の監視員通路のコンクリート欠損部およびその側面の縦壁欠損部に無収縮性モルタルを流し込み、該監視員通路のコンクリート路盤の欠損部およびその縦壁面のタイル剥離面あるいはタイル損壊面に、上面補修枠および前面タイル模様補修板を該無収縮性モルタルで固着し、固着後に該支保材を解体し、さらにパネル材を取り外す方法からなる、トンネル側壁ぎわの監視員通路の通路面の欠損部並びに縦壁およびタイル壁面の欠損部のステンレス製L字型タイル補修板による補修方法である。
【0010】
請求項2の手段では、前面タイル模様補修板および上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を当接し、さらに該前面タイル模様補修板の表面にパネル材で覆い、該パネル材および該上面補修枠を断面C字型の支保材により監視員通路面およびコンクリートの縦壁に取り付けて支持する方法である。この方法は、前面タイル模様補修板の表面を覆ったパネル材の表面に断面C字型の支保材を縦方向に当接し、該支保材の下端部の内面のコンクリートにコンクリートアンカーを打ち込み、該支保材の下端部の表面から固定ボルトを該コンクリートアンカーに結合してパネル材の下端部を支持する。さらに、上面補修枠の後端側の監視員通路の上面にコンクリートアンカーを打ち込み、L字型受け材の横部材の表面から固定ボルトを該コンクリートアンカーに結合し、該支保材の上端部の表面から長尺の固定ボルトをL字型受け材の縦部材の上部に挿通してナットで固定してパネル材の上端部を支持し、前面タイル模様補修板および上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を支持する方法からなる、請求項1の手段のトンネル側壁ぎわの監視員通路の通路面の欠損部並びに縦壁およびタイル壁面の欠損部のステンレス製L字型タイル補修板による補修方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手段の自動車道のトンネルの監視員通路の縦壁の走行車線側の前面壁であるタイル壁面の欠損部の補修方法により、従来の補修のように欠損部分をモルタルで補修して縦壁表面のタイルを1枚ずつ貼り直す必要がなく、一挙に短時間でタイル模様の壁面に補修できる。しかも、補修期間であるトンネル内の走行車線の通行規制期間も短期日ででき従来の工法に比して大幅に通行規制の期間を短縮することができる。
【0012】
さらに、本発明の支保材の使用により、ステンレス製L字型タイル補修板の上面補修枠内にモルタルを流入する作業では、上面補修枠から流入したモルタルによってステンレス製L字型タイル補修板を部分的に縦壁前面に膨出することなく、しかも、ステンレス製L字型タイル補修板で補修されているので、冬期に凍結防止材の塩分がタイヤで撥ね飛ばされて縦壁表面に付着しても塩害によって再び腐蝕されることが無く、かつ、ステンレス板の表面に描かれたタイル模様による修復で、元の縦壁の走行車線側の壁面のタイル壁面の模様と一体的に見えるので、走行車線を走る車両の運転手は違和感なく安心して走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一般的なトンネル側壁ぎわの監視員通路と手摺りと手摺りの下部の縦壁と円形水路を下部に有する路側帯および走行車線を示す斜視図である。
【図2】トンネル側壁ぎわの監視員通路の手摺りの下部の縦壁に塩害により生じた欠損部を示す斜視図である。
【図3】ステンレス製L字型タイル補修板の立面図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】ステンレス製L字型タイル補修板の上面補修板で、(a)は支柱開口部カバーの無い上面補修板、(b)は支柱開口部カバーを示す。
【図5】監視員通路の欠損した縦壁にステンレス製L字型タイル補修板を適用する補修状況を示す斜視図である。
【図6】監視員通路の欠損した縦壁の補修箇所に設けたステンレス製L字型タイル補修板を部分的に示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図7】監視員通路の縦壁に支保材を取付けた上面補修枠を示す平面図である。
【図8】監視員通路の縦壁にステンレス製L字型タイル補修板を支保材で支持した図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】トンネル内の監視員通路の縦壁にステンレス製L字型タイル補修板を支保材で取り付けた斜視図である。
【図10】トンネル内の縦壁を補修した監視員通路と走行車線の路側帯を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して以下に説明する。図1に示すように、一般的な自動車専用道路のトンネル1のトンネル側壁1aぎわに設けたコンクリート路盤4aにより一段と高くなって車の衝突の際の安全をはかった監視員通路4がある。この監視員通路4のトンネル側壁1aぎわには細い溝4bがあり、トンネル側壁1aや監視員通路4に溜まった水を流すようになっている。さらに、この監視員通路4を形成するコンクリート路盤4aの走行車線2及びその路側帯3の側部には縦壁5があり、走行車線2に対面して設けられている。通常、この縦壁5には、トンネル側壁1aと共にタイルが貼られてタイル壁面となっている。監視員通路4の縦壁5の近辺の上には手摺り6が設けられており、この手摺り6は手摺支柱6aに支持され、手摺支柱6aの下部はベースプレート6bにより監視員通路4のコンクリート路盤4aに固定されている。この縦壁5の下端きわには路面下に埋設した円形水路3aがあり、この円形水路3aの上面が路側帯3の一部となっており走行車線に持ち込まれた雨水などを円形水路3aで流下する。
【0015】
このような、自動車専用道路のトンネル1は、開通してから長期間にわたって使用された結果、トンネル内の車の通る走行車線2の路面や、トンネル側壁1aや、トンネル側壁1aぎわに設けられている監視員通路4が傷んでくる。そこで、走行車線2の路面やトンネル側壁1aや上面のトンネル壁は、走行車の安全のために、頻繁に補修されている。ところで、上記したように、走行車線2の路側帯3とトンネル側壁1aの間の路側帯3よりも一段と高い位置には、この位置から走行車線2の路面やトンネル内の状況を監視する監視員が通る監視員通路4が設けられている。ところで、この監視員通路4も長年の間に監視員通路4のコンクリート路盤4aの内部に、冬期にトンネル内を走行する車のタイヤに付着した凍結防止剤が撥ね飛ばされ、トンネル内の漏水と共にその塩分が浸入する。すなわち、トンネル内の漏水と共に凍結防止剤の塩分が路側帯3がわの監視員通路4のコンクリート路盤4a上にかかり、コンクリート路盤4aに立設された手摺6の支柱6aの監視員通路面のベースプレート6bの部分から下部の監視員通路4のコンクリート路盤4aの中に浸潤する。この浸潤した凍結防止剤の塩分によりコンクリート路盤4aを形成する鉄筋コンクリートの鉄筋4cが、図2に示すように、腐蝕されて膨潤し、膨潤部4dとなり、さらにコンクリート路盤4aの内部構造が損壊されて欠損7となる。このようにコンクリート路盤4aの内部構造が損壊されると、路側帯3との間を形成する監視員通路4のコンクリート路盤4aの側部の縦壁5にも欠損を生し、これらの縦壁5にタイル壁面5aが形成されていると、このタイル壁面5aも破損される。そこで、これらの欠損した監視員通路4のコンクリート路盤4aおよび監視員通路4の側部のタイル壁面5aを有する縦壁5を補修する必要が生じる。
【0016】
ところで、上記の監視員通路4のコンクリート路盤4aの縦壁5には、タイルが全面に張られて縦壁5の前面がタイル壁面5aとなっている。そこで、上記した凍結防止剤による塩分で欠損した部分は、これら縦壁5の前面のタイル壁面5aにも及び、タイルが割れたり剥落したりしている。そこで、監視員通路4のコンクリート路盤4aの中およびその表面である縦壁5の前面のタイル壁面5aの補修に当たっては、トンネル内を走行する車の走行規制の期間を短くして、できる限り影響を及ぼさないようにする必要がある。このため、補修する際にタイルを1枚ずつ貼り替える手間を省略して、一定の面積の多数のタイル面を一挙に補修することが出来る、前面タイル模様補修板10と上面補修枠11からなるステンレス製L字型タイル補修板9と、このステンレス製L字型タイル補修板9を用いて補修する際に、ステンレス製L字型タイル補修板9がモルタルで固着するまで固定するために支持する断面C字型の鉄製の支保材14を用いて補修する。この支保材14は断面形状がC字型に形成されているので支保材の剛性が向上し、ステンレス製L字型タイル補修板9及びパネル材12をコンクリート路盤4a及び縦壁5に堅固に支持できる。
【0017】
このために使用するステンレス製L字型タイル補修板9の大きさは、その前面タイル模様補修板10では、図3の(a)の正面図では、縦横共に略900mmで、縦の右側サイドは幅20mmの挿入重ね部9bは、2枚以上のステンレス製L字型タイル補修板9を横に並べて補修する際に使用する。また、前面タイル模様補修板10の下側は縦幅20mmの傾斜面9cとなっており、さらに幅50mmの縦方向の取付け面9dを有し、さらにステンレス製L字型タイル補修板9の上面は上面補修枠11であり、上面補修枠11の横幅は図3の(a)の正面図に示す横幅と同じ900mmで、その奥行きは、図3の(b)の側面図の上部に示すように、200mmからなっている。この上面補修枠11は、監視員通路4の面であるコンクリート路盤4aの上面よりも略50mm高い位置に水平に配設されその後端は50mmの傾斜面9cとなってコンクリート路盤4aに当接し、さらに40mmの水平方向の取付け面9dでコンクリート路盤4aに載っている。このように50mm高い位置に上面補修枠11を位置させる理由は、コンクリート路盤4aよりも略10mm高い位置に上面補修枠11を設けた場合、図4に示す上面補修枠11のモルタル注入孔11cからモルタルを注入した時に十分にモルタルが補修箇所の欠損部7に十分に流れ込みにくい。しかしながら、上面補修枠11が略50mm高い位置に設けられていると、欠損部7までモルタルが良好に流入できるからである。なお、略50mm高い位置に設けた上面補修枠11の側端部から注入したモルタルを流出させないために、補修箇所の最端部となるステンレス製L字型タイル補修板9の部分は、上面補修枠11の側端部を50mm下部の監視員通路4の上面に当接するように下方に曲げて側端部を閉じるようにする。
【0018】
以上に説明した、前面タイル模様補修板10と上面補修枠11からなるステンレス製L字型タイル補修板9による自動車専用道路のトンネル内のトンネル側壁際に設けられた監視員通路の縦壁の補修方法について、そのフローの概略を簡単に示すと、1.事前調査による施工位置の決定→2.前処理→3.マーキング→4.アンカーの削孔及び打込み→5.ステンレス製補修板、パネル材、支保材の取り付け→6.充填材(モルタル)注入→7.充填材の固化→8.支保材解体→9.片付け撤収となる。
【0019】
これらについて、さらに詳細に説明する。先ず、補修の施工前に事前調査を実施する。すなわち、自動車専用道路のトンネル1内の状況を把握するために、事前調査として監視員通路4の走行車線2の側に安全のために設けられている手摺り6の支柱6aの下部のベースプレート6bの周辺の監視員通路4の通路面や走行路線2のがわの監視員通路4の縦壁5の壁面などの補修箇所の状況を記録して、補修を必要とする箇所の施工場所を決定する。この決定した監視員通路4の補修箇所に対して前処理を実施する。この前処理では、事前調査で見出した監視員通路4の手摺り6の支柱6aの下部のベースプレート6bの周辺の監視員通路4の通路面や走行路線2のがわの監視員通路4の縦壁5の壁面に長年の使用による劣化による表面のコンクリートやタイルの剥離や浮きに対し、あるいは、凍結防止剤の塩分によってコンクリート路盤4aを形成する鉄筋コンクリートの鉄筋4cが、図2に示すように、腐蝕されて膨潤した膨潤部4dに対し、それらの剥離や浮きあるいは膨潤部4dをハンマーなどでハツリ取り、あるいは鉄筋4cに錆を生じている場合、錆の部分をワイヤーブラシなどをかけて錆を除去するなどの補修の予備処理を行う。この予備処理を終えると、本処理のために、トンネル1における補修箇所の端部を決定し、その部分の監視員通路4の縦壁5に通路方向と直角向きのマーキングをダイヤモンドホイールで行う。
【0020】
補修箇所の端部が決定すると、走行車線の補修箇所に近接の1車線を走行規制し、この走行車線を規制した箇所に資機材を持ち込み、補修作業を開始する。補修作業の手始めとして、監視員通路4の補修用のステンレス製L字型タイル補修板9あるいはその上に被せるパネル材12を支持するための支保材14の取り付けに必要なコンクリートアンカー17を打ち込む位置にマーキングを行う。このマーキングでは、監視員通路4のコンクリート路盤4a及び手摺り6の下部の走行車線2のがわの縦壁5の下部のそれぞれのコンクリートアンカー17の打ち込み位置に、ステンレス製L字型タイル補修板9及びその上に重ねるパネル材12に合わせて、マーキング用の所定の位置に振動ドリルで先導孔をあけ、その後に指定太さのハンマードリルで削孔を行って穿孔する。この場合穿孔の深さが所定のものとなるように、ドリルビットにビニールテープでマーキングして深さを確認して穿孔する。さらに上記で決定した補修箇所の端部に、非補修箇所のタイル模様と連続させるための、タイル模様となる幅のL字型端部止め型枠を、幅900mmのステンレス製L字型タイル補修板9から重ね合わせ部を設けて切り出す。この切り出したL字型端部止め型枠を取り付けるために、監視員通路4と縦壁5の下部に通路方向と鉛直向きのマーキングを行ない、そのマーキング位置に上記と同様の方法で穿孔する。これらの穿孔した箇所にコンクリートアンカー17を打ち込む際には、必ずアンカー打ち込み棒を使用し、壁面に直角になるように打ち込む。
【0021】
以上のコンクリートアンカー17の打込みが終わると、先ず、ステンレス製L字型タイル補修板9、パネル材12及び支保材14の取り付け位置のコンクリート面の凹凸を確認しながら、先ずステンレス製L字型タイル補修板9を監視員通路4とその縦壁5に当接する。すなわち前面タイル模様補修板10を縦壁5に当接し上面補修枠11を監視員通路4に当接する。さらに当接した上面補修枠11の端部の傾斜面11a及び取付け面11b並びにこれらの両側の傾斜面11a及び水平な取付け面11bの間の下側に傾斜面11aおよび水平な取付け面11bの形状をした支柱開口部カバー11fを差し入れて設ける。これらの傾斜面11a及び取付け面11b並びに支柱開口部カバー11fの下部のコンクリート面に、図5に示すように、シールゴム13からなるパッキンを貼り付ける。ステンレス製L字型タイル補修板9の前面タイル模様補修板10及び上面補修枠11と、前面タイル模様補修板10に重ねたパネル材12は支保材14で表面から支持し、図8の(b)に示すように、上部は長い固定ボルト15でL字型受け材16にワッシャー15aで締め付けてコンクリートアンカー17に取り付け、下部は短い固定ボルト15でコンクリートアンカー17に取り付けて、それぞれゆるみの無いように固定する。この場合、上記したように、シールゴム13を取付け面11bの下部のコンクリート面の上に敷いているので、監視員通路4の部分に溜まった湧き水などが補修した箇所に浸入することは無い。またステンレス製L字型タイル補修板9、と隣接のステンレス製L字型タイル補修板9の継目の挿入重ね部9b及び11eは図示しないビスで固定し、継目の間に段差が生じたり、注入したモルタルが漏れないようにする。さらに、ステンレス製L字型タイル補修板9の上面補修枠11のモルタル注入孔11cからモルタルを注入した際に、監視員通路4のコンクリート路盤4aの前面に設けた前面タイル模様補修板10が注入されたモルタルによる面圧2t/m2の圧力で前面の路側帯3の側へ膨れ出ることを防止する必要がある。このため前面タイル模様補修板10の表面を厚さ略20mmの木質のパネル材12で覆って、パネル材12を支保材14で支持する。
【0022】
上記の支保材の取付けが完了すると、充填材であるモルタルと練り混ぜて準備する。この準備では、モルタル(商品名:デンカハイプレタスコン)に対し、モルタル25kg当たり水4.5kgとなるように計量した水を容器の中に入れ、ハンドミキサーで十分に練り混ぜる。この十分に混練したモルタルを上面補修枠11のモルタル注入孔11cへ練り混ぜた容器から直接に注入する。この注入した部分の天端は注入したモルタルが落ち着いてから2回手作業により平滑化する仕上げ行う。次いで、充填したモルタルは凡そ1時間余りで固化するので、モルタルの注入完了から2時間後にモルタル注入孔11cから充填したモルタルの硬さを確認してから、固定ボルト15を外して支保材14を解体し、前面タイル模様補修板10の前面のパネル材12を取り外す。この後、解体した支保材14を撤去した後、コンクリートアンカー17の部分に解体の際にボルトを抜いて生じたボルト孔に、再びステンレス製ボルトを挿着して固定して、ボルト孔から水などが浸入しないものとする。これらの一連の作業が終了すると、作業箇所とした走行車線の片付けを行なってすべての資機材を回収し、さらに注入材であるモルタルの付着した箇所を清掃して、片付け撤収した後、走行車線の走行規制を解除し、次の補修箇所に移動して補修の準備及び補修作業を実施する。
【符号の説明】
【0023】
1 トンネル
1a トンネル側壁
2 走行車線
3 路側帯
3a 円形水路
4 監視員通路
4a コンクリート路盤
4b 溝
4c 鉄筋
4d 膨潤部
5 縦壁
5a タイル壁面
6 手摺り
6a 支柱
6b ベースプレート
7 欠損部
8 補修箇所
9 ステンレス製L字型タイル補修板
9a 前面タイル模様
9b 挿入重ね部
9c 傾斜面
9d 取付け面
10 前面タイル模様補修板
11 上面補修枠
11a 傾斜面
11b 取付け面
11c モルタル注入孔
11d 支柱開口部
11e 挿入重ね部
11f 支柱開口部カバー
12 パネル(コンパネ)材
13 シールゴム
14 支保材(C字型の)
15 固定ボルト
16 L字型受け材
17 コンクリートアンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視員通路の路側帯側の手摺り支柱のベースプレートの下部のコンクリートからなる監視員通路の欠損した通路面の部分およびこの通路面の路側帯側の欠損したコンクリートの縦壁の部分やこの縦壁表面のタイル剥離面の部分や損壊タイル面の部分に前面タイル模様補修板および上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を当接し、該前面タイル模様補修板の表面をパネル材で覆い、該パネル材および該上面補修枠を監視員通路面およびコンクリートの縦壁に断面C字型の支保材で取り付け支持した後、上面補修枠に有する開口部から下部の監視員通路のコンクリート欠損部およびその側面の縦壁欠損部に無収縮性モルタルを流し込み該欠損部を充填固化して、該監視員通路のコンクリート欠損部およびその側面のタイル剥離面あるいはタイル損壊面に、上面補修枠および前面タイル模様補修板を固着し、この固着後に該支保材を解体してパネル材を取り外す方法からなることを特徴とするトンネル側壁ぎわの監視員通路の通路面の欠損部並びに縦壁およびタイル壁面の欠損部のステンレス製L字型タイル補修板による補修方法。
【請求項2】
前面タイル模様補修板および上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を当接し、該前面タイル模様補修板の表面にパネル材で覆い、該パネル材および該上面補修枠を監視員通路面およびコンクリートの縦壁に断面C字型の支保材で取り付け支持する方法は、前面タイル模様補修板の表面を覆ったパネル材の表面に断面C字型の支保材を縦方向に当接し、該支保材の下端部の内面のコンクリートにコンクリートアンカーを打ち込み、該支保材の下端部の表面から固定ボルトを該コンクリートアンカーにねじ結合してパネル材の下端部を支持し、上面補修枠の後端側の監視員通路の上面にコンクリートアンカーを打ち込み、L字型受け材の横部材の表面から固定ボルトを該コンクリートアンカーにねじ結合し、該支保材の上端部の表面から長尺の固定ボルトをL字型受け材の縦部材の上部に挿通してナットで固定してパネル材の上端部を支持して、前面タイル模様補修板および上面補修枠からなるステンレス製L字型タイル補修板を支持する方法からなることを特徴とする請求項1に記載のトンネル側壁ぎわの監視員通路の通路面の欠損部並びに縦壁およびタイル壁面の欠損部のステンレス製L字型タイル補修板による補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144869(P2012−144869A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2484(P2011−2484)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【特許番号】特許第4880075号(P4880075)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000161817)ケイコン株式会社 (37)
【Fターム(参考)】