説明

トンネル覆工方法、セグメント及びトンネル二次覆工用蓋

【課題】トンネルの内面となる鋼製のセグメントに対してセグメントの腐食防止および内面平滑化のためにコンクリートやモルタルなどを吹き付ける二次覆工作業を省略可能なトンネル覆工方法やセグメントなどを提供する。
【解決手段】底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体2の底板をトンネル空洞部の地山面35に向けて当該セグメント筐体2を設置した後に、セグメント筐体2の開口部を防食構成体により形成された蓋4で塞いだことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネルの内面となる鋼製のセグメントに対してセグメントの腐食防止および内面平滑化のためにコンクリートやモルタルなどを吹き付ける二次覆工作業を省略可能なトンネル覆工方法やセグメントなどに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルのトンネル空洞部の一次覆工として用いられるスチール(鋼)セグメントとして、底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と相対峙する側板と側板とに接続された補強板とを備えたスチール製のセグメント筐体と、開口部を塞ぐスチール製の蓋とを備えたものが知られている。
【特許文献1】特開昭63−201299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスチールセグメントでは、トンネルの内面となるスチールセグメントの蓋の腐食を防止するためにコンクリートやモルタルなどを吹き付ける二次覆工作業が必要となるといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のトンネル覆工方法は、底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体の底板をトンネル空洞部の地山面に向けて当該セグメント筐体を設置した後に、セグメント筐体の開口部を防食構成体により形成された蓋で塞いだことを特徴とする。
蓋を防食構成体により形成された係合ピンによって側板の一端及び補強板の一端に取付けたことも特徴とする。
防食構成体により形成されて蓋と一体に設けられた係合ピンを側板の一端及び補強板の一端に取付けたことによって開口部を蓋で塞いだことも特徴とする。
セグメント筐体の底板と側板と蓋とで囲まれた空間内に詰物を詰めたことも特徴とする。
詰物を、前記空間内に設置されたバックアップ材と、このバックアップ材とセグメント筐体の内面との間に充填されたセメント含有物とにより形成したことも特徴とする。
本発明のセグメントは、底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体と、セグメント筐体の開口部を塞ぐ蓋とを備え、蓋が防食構成体により形成されたことを特徴とする。
本発明のトンネル二次覆工用蓋は、底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体の開口部を塞ぐ蓋であって、防食構成体により形成され、二次覆工として用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のトンネル覆工方法によれば、トンネルの内面となる蓋が防食構成体により形成されたので、蓋の腐食を防止でき、蓋の腐食を防止するための蓋に対する二次覆工工事を不要とでき、工期の短縮化が図れる。
セグメント筐体の開口部を塞ぐように蓋をセグメント筐体の側板の一端及び補強板の一端に係合ピンで取付けたので、蓋の取付作業が容易となり、施工性を向上できる。
蓋と一体に設けられた係合ピンを用いたので、蓋の取付作業がより容易となり、施工性を向上できる。
セグメント筐体の内側の空間内に詰物を詰めたので、開口部を塞ぐように取付けられた蓋の外面を平滑化でき、蓋に外力が加わった場合の蓋の強度を大きくできるので、蓋の破損防止効果が得られる。
セグメント筐体の内側の空間内にバックアップ材を詰めたので、セメント含有物の使用量を減らすことができる。また、セメント含有物の重量を抑えることができるため、蓋の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1、図2、図4は最良の形態1を示し、図1はトンネル空洞部の地山面に設置されたセグメントの断面を示し、図2は係合ピンによる蓋の取付構造を断面で示し、図4はセグメントを分解して示す。
【0007】
シールドトンネルにおいては、トンネル壁体をRCセグメントによって構築することが多く、RCセグメントを用いることによって二次覆工を不要とできる。しかしながら、トンネルのカーブ部においては、カーブ部の曲がりに追従させるために幅の狭いセグメントを用いる必要がある。幅の狭いRCセグメントは、厚さ不足や鉄筋量不足によって構造的に脆くなってしまうので、シールドマシンを推進させる力の反力が幅の狭いRCセグメントに加わると壊れてしまう。このため、トンネルのカーブ部において使用する幅の狭いセグメントとしては、スチールセグメントを用いる。本発明によれば、トンネルのカーブ部において用いる幅の狭いセグメントとして好適なセグメントを提供できる。
【0008】
図1に示すように、セグメント1は、スチール製のセグメント筐体2と、セグメント筐体2内に詰められた詰物3と、防食構成体により形成された蓋4とを備える。詰物3は、例えば、セメント含有物32としてのモルタルと、セメント含有物32の使用量を少なくするためのバックアップ材31としての発泡スチロールとにより形成される。
【0009】
図4に示すように、セグメント筐体2は、矩形形状に形成された平面板の長手方向で対向する一対の短辺5と短辺5が互いに近づくように湾曲形成された底板6と、底板6の外周縁より同一方向に立ち上がるように設けられた側板7;7;7;7と、側板7の一端縁で囲まれた開口部9と、底板6と側板7とに溶接などで接続された補強板10とを備える。
【0010】
補強板10は、底板6の長辺11より立ち上がるように設けられて平行に対向する一対の側板7の内面と底板6の内面とに溶接で接続される。底板6と側板7とで囲まれた内部空間が底板6の長辺に沿った方向において間隔を隔てて設けられた複数の補強板10によって複数の部屋17に区画される。図1;4では、底板6と側板7とで囲まれた内部空間が3つの補強板10で4つの部屋17に区画された例を示す。
補強板10は、底板6より開口部9の方向に延長する壁部15と壁部15の先端に設けられて開口部9の開口面に沿うフランジ部16とを備えた断面T字形状に形成される。
補強板10の一端に設けられたフランジ部16、及び、底板6の短辺5から立ち上がる側板7の一端8に開口部9の開口面に沿うよう設けられたフランジ部16には、係合ピン20を係合させるための貫通孔12が形成される。
【0011】
蓋4を形成する防食構成体とは、腐食しない材料、あるいは、腐食しにくい材料のことである。つまり、蓋4は、例えば、塩化ビニル、高密度ポリエチレン、FRPなどの樹脂材料により板状(プレート)に形成される。
蓋4の板厚は、10mm程度に形成される。蓋4には、係合ピン20の先端係合部21が貫通する貫通孔22、充填孔23が形成される。
【0012】
係合ピン20も上述した防食構成体により形成される。係合ピン20は、図2に示すように、軸部25と、軸部25及び貫通孔12の径より大径に形成された先端係合部21と、軸部25より大径に形成された頭部26とを備え、先端係合部21には、貫通孔22;12への貫通を容易にするための先割部27が形成される。
【0013】
図1;図2;図4を参照し、覆工方法を説明する。トンネルのストレート部においては、RCセグメントを使用する。トンネルのカーブ部においては、セグメント筐体2の底板6をトンネル空洞部におけるカーブ部の地山面35に向けてセグメント筐体2を設置し、セグメント筐体2を図外の継手などを用いて後ろのRCセグメントに接続するとともに、地山面35の周方向に隣り合うように設置されたセグメント筐体2同士を図外の継手などを用いて繋ぐことによって、セグメント筐体2によるリングを構築する。そして、セグメント筐体2の補強板10で仕切られた複数の部屋17のそれぞれにバックアップ材31を詰めた後に、セグメント筐体2の開口部9を塞ぐように蓋4を取付ける。蓋4は、図2に示すように、係合ピン20の先端係合部21を蓋4の貫通孔22と補強板10や側板7のフランジ部16に形成された貫通孔12とに貫通させてフランジ部16の裏面18に係合させることによって、セグメント筐体2の開口部9を塞ぐように取付けられる。蓋4を取付けた後に、蓋4で覆われた複数の部屋17により形成された空間内に充填孔23からセメント含有物32としてのモルタルを充填する。つまり、セグメント筐体2の底板6と側板7と蓋4とで囲まれた空間19内に詰物3が詰められる。
【0014】
最良の形態1によれば、トンネルの内面となる蓋4が防食構成体により形成されたので、蓋4の腐食を防止できるため、トンネルの内面となる蓋4の腐食を防止するための蓋4に対する二次覆工工事を不要とでき、工期の短縮化が図れる。
最良の形態1によれば、シールド掘進作業と並行して、蓋4の取付作業、バックアップ材31の詰め作業、セメント含有物32の充填作業を施工できるので、工期の短縮化が図れる。
即ち、従来のようにスチール製の蓋を使用した場合には、トンネル坑内から全ての機材を撤去した後にセグメントの蓋の内側に型枠を設置して二次覆工コンクリート打設作業を行わなければならず、工期の短縮化が図れなかったが、最良の形態1によれば、工期の短縮化が図れる。
最良の形態1によれば、蓋4で閉じられたセグメント筐体2の内側の部屋17内にバックアップ材31が設けられたので、部屋17に充填するセメント含有物32の使用量を減らすことができる。また、部屋17に充填されるセメント含有物32の重量を抑えることができるため、蓋4の負担を軽減できる。
最良の形態1によれば、部屋17内に詰物3を詰めたので、開口部9を塞ぐように取付けられた蓋4の外面を平滑化でき、蓋4に外力が加わった場合の蓋4の強度を大きくできるので、蓋4の破損防止効果が得られるとともに、セグメント1の強度を大きくできる。
最良の形態1によれば、開口部9を塞ぐように蓋4を係合ピン20で取付けたので、蓋4の取付作業が容易となる。また、係合ピン20も防食構成体により形成したので、係合ピン20の腐食も防止できる。
【0015】
最良の形態2
図3に示すように、係合ピン20が一体に成形された蓋4を用いてもよい。即ち、防食構成体により形成されて蓋4と一体に設けられた係合ピン20を側板7の一端及び補強板10の一端のフランジ部16に形成された貫通孔12に取付けることによって開口部9を蓋4で塞ぐ。
最良の形態2の蓋4を用いれば、係合ピン20の紛失を防止できるし、蓋4の取付作業も容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
蓋4は、金属板の表面に防食剤を塗布して構成された防食構成体により形成されたものを用いても良い。詰物3は、発泡スチロールやモルタル以外のものを用いてもよい。例えば、ウレタン、スポンジ、セメントミルク、コンクリートなどを用いてもよい。
最良の形態1で用いる係合ピン20に代えて、蓋4を止ねじで取付けても良い。この場合、フランジ部16に止ねじを締結するためのねじ孔を形成しておく。この場合の止ねじは、上述した防食構成体により形成された止ねじを用いればよい。
セグメント1は、シールドマシンを推進させる力の反力に抵抗できるように補強板10で補強された構造であれば、部屋17内に詰物3が詰められていないものでもよい。
尚、本発明のセグメントは、トンネルのカーブ部だけではなく、トンネルのストレート部にも適用できる。従って、トンネル全体に本発明のセグメントを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】セグメントの断面図(最良の形態1)。
【図2】蓋の取付構造を示す断面図(最良の形態1)。
【図3】蓋の取付構造を示す断面図(最良の形態2)。
【図4】セグメントの分解斜視図(最良の形態1)。
【符号の説明】
【0018】
1 セグメント、2 セグメント筐体、3 詰物、4 蓋、6 底板、
7 側板、9 開口部、10 補強板、19 空間、20 係合ピン、
31 バックアップ材、32 セメント含有物、35 地山面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体の底板をトンネル空洞部の地山面に向けて当該セグメント筐体を設置した後に、セグメント筐体の開口部を防食構成体により形成された蓋で塞いだことを特徴とするトンネル覆工方法。
【請求項2】
蓋を防食構成体により形成された係合ピンによって側板の一端及び補強板の一端に取付けたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工方法。
【請求項3】
防食構成体により形成されて蓋と一体に設けられた係合ピンを側板の一端及び補強板の一端に取付けたことによって開口部を蓋で塞いだことを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工方法。
【請求項4】
セグメント筐体の底板と側板と蓋とで囲まれた空間内に詰物を詰めたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトンネル覆工方法。
【請求項5】
詰物を、前記空間内に設置されたバックアップ材と、このバックアップ材とセグメント筐体の内面との間に充填されたセメント含有物とにより形成したことを特徴とする請求項4に記載のトンネル覆工方法。
【請求項6】
底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体と、セグメント筐体の開口部を塞ぐ蓋とを備え、蓋が防食構成体により形成されたことを特徴とするセグメント。
【請求項7】
底板と底板の外周より同一方向に立ち上がるように設けられた側板と側板の一端縁で囲まれた開口部と底板と側板とに接続された補強板とを備えた鋼製のセグメント筐体の開口部を塞ぐ蓋であって、防食構成体により形成され、二次覆工として用いられることを特徴とするトンネル二次覆工用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−163584(P2008−163584A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351963(P2006−351963)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】