説明

ドアの位置センサ

本発明は、第1アンテナ(15)及び第2アンテナ(11)に接続されたセンサ回路を有する容量性センサシステムに関するものであり、第1アンテナ(15)は、第1物体(10)上に配置されており、第2アンテナ(11)は、第1物体(10)に対し移動可能である第2物体(11)上に配置されている。第1アンテナ(15)は、第2物体(11)の動き及び/又は位置を検出するべくセンサ回路のために第2物体(11)の直ぐ隣に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1アンテナが第1物体上に配置されており、第2アンテナが第1物体に対し移動可能である第2物体上に配置されている第1及び第2アンテナに接続されたセンサ回路を有する容量性センサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容量性センサシステムは、人体の存在に基づいて様々な装置の制御及び動作を提供するその能力において周知である。このようなシステムは、一般に、例えば、米国特許第4,453,112号及び米国特許第5,621,290号に記述されている。これらの文献においては、センサ電極が車窓の窓枠に配置されている。手などの人体の一部がセンサ電極に接近すると、即座にセンサ電極と接地電極の間の容量が増大する。この容量の増大によって電極の出力信号の周波数が変化することから、この周波数を基準と比較し、この変化に基づいて、窓を作動させるモーターが動作している。このセンサシステムは、人体などの半導電性の要素には応答可能であるが、プラスチック及び木材には、なんの効果も、もたらさない。
【0003】
未公開のスウェーデン国特許出願第0402261−2号(SE0402261−2)は、冷蔵庫キャビネットのドアと本体の間の小さな身体の一部を検出する問題を解決するべく提供された容量性検知システムを具備した容量性検知システムを開示している。通常、容量に対するキャビネット本体の大きな影響は、容量に対する身体の一部によって生じるわずかな影響よりも格段に大きいため、キャビネット本体に起因し、ドアアンテナの検出能力が失われることになる。これを解決するべく、この開示された発明は、キャビネット本体のエッジにガスケットのように取り付けられた、ドアと冷蔵庫本体の間の電磁シールドを有している。このシールドが、キャビネット本体によって生じる影響を除去することになる。このシールドは、冷蔵庫本体に対し固定された位置と、冷蔵庫本体に対し一定の容量と、を具備している。ドアは、このシールドに電気的に接続されており、ドアプロセスの動きによって冷蔵庫本体に対するドアの容量が変化することはない。
【0004】
しかしながら、この開示されたシステムに伴う1つの欠点は、その高価な構築費用にある。このフレームは、薄い導電性のフォイル(例えば、銅)である必要があるが、美的な観点から、これは、なんらかのプラスチック要素によってカバーする必要があり、このフレームのすべての側部を、相互に、且つ、制御基板に対して電気的に接続する必要がある。閉じる際には、ドアカバーフレーム要素による大きな圧力の影響がガスケットに及ぶことから、プラスチックは、この条件に耐えるように十分丈夫(高価)なものにする必要がある。
【0005】
もう1つの問題点は、このフレームが真のシールドではないという点にある。ドアのサイズ(図1を参照されたい)がフレームの合計面積よりも格段に大きくなっている。これは、ドアと冷蔵庫本体の間に電磁場C3が形成されることを意味している。この結果、更なる可変容量がシステムの計測回路に追加されることになる。実際には、シールドを(真のシールドではないために)制御基板上に配置された「通常」の一定のコンデンサC1によって置換可能であろう。この結果、これは、シールドを有していない冷蔵庫キャビネット用の容量性検知システムと同一になる。容量C3は、ドアの角度に依存しており、且つ、前述の回路(図2を参照されたい)の合計容量に影響を与えることになる。更には、フレームが冷蔵庫本体に格段に近接しているため、その容量C1も各段に大きくなっている(約2〜3nFであり、その平均は、人体からドアへの容量C2の10倍も大きくなっている)。
【0006】
従って、シールドから本体への1つの一定の容量のみならず、フレームから冷蔵庫へのもの、並びに、ドアから冷蔵庫へのものという、人体からドアへのもの(C2)よりも合計容量が10倍も大きい並列接続された2つのコンデンサC1、C3が存在することになる。図1〜図2は、これを示している。更には、ドアの角度に起因したC3の変動にも対処しなければならない。これに起因し、人体の動きを検出できるようにするには、高分解能のADCと、フルレンジにおいて信号の一部のみを増幅する複雑な信号処理と、を必要とすることになる。問題は、合計容量における変動が、ドアの動き又は人体の存在のいずれに依存しているのかを識別することにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、容量の影響を受けるフレームによって保持されたドア又は蓋に適用された、人体の小さな部分を容易に且つ確実に検出可能である容量性センサシステムを提供することが本発明の目的である。この目的は、請求項1の特徴部分に定義されているように、本発明に従って実現されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照し、本発明について更に説明することとする。
【0009】
図1及び図2は、未公開のスウェーデン国特許出願第0402261−2号(SE0402261−2)における従来技術による実施例を示す図であり、図3〜図6は、本発明による容量性センサシステムの例示用の実施例を示す図である。この例示の実施例は、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0010】
この実施例の目的は、本発明を適用する方法を例示すると共に、本発明の範囲を例示することにある。
【0011】
図1を参照すれば、従来技術による容量性検知システムは、キャビネットを取り囲む外部金属シートを有する本体を具備した冷蔵庫キャビネット10に適用されている。このキャビネットは、ヒンジによって本体につるされたドア11を有している。背景技術において記述したように、このシステムは、キャビネット本体のエッジにガスケットのように取り付けられた、ドアと冷蔵庫本体の間の電磁シールド12を有している。これ(13)は、ドアに結合されている。このシールドは、キャビネット本体によって生じる影響を除去することになる。図2は、この構成によって形成される対応した計測回路(電流サマライジング)を示しており、この回路は、合計容量の次の計算式に対応している。
【0012】
Ctot=C1+C2+C3
【0013】
C1は、シールドとキャビネット本体の間に形成される固定された容量である。これは、大きな値(nF)を具備している。C2は、ドアと接地レベルの間に形成される可変容量であり、これは、ドアにおける人体の動き又は存在に依存している。これは、小さな値(pF)を具備している。C3は、ドアとキャビネット本体の間に形成される計算外の可変容量である。これは、大きな値(nF)を具備しており、且つ、ドアの開放角度に依存している。回路(図2)の出力14における合計容量を計測した場合に、人体の動き(C2の変動)を識別することは非常に困難である。この問題は、合計容量の変動が、ドアの動き又は人体の存在のいずれに依存しているのかを識別することになろう。
【0014】
図3〜図6は、本発明による例示用の実施例を示す図である。図3には、ヒンジ接続されたドア11を有するキャビネット10が示されている。外部金属シートがキャビネット本体をカバーしている。本発明によれば、シールド12が冷蔵庫の上部面上の電極15によって置換されている。この電極は、ユーザーインターフェイス、回路基板、及びその他の電気コンポーネントを保持している上部パネル(図示されてはいない)上に配置された金属ストリップとして製造されている。この電極は、容量性検知回路用のアンテナとして動作している。本システムは、従来技術の解決策に伴う前述の問題点を解決する1つの方法として、ドアの位置を検出可能である。
【0015】
図3には、新しいシステム構成によって形成されるコンデンサが示されている。C1は、電極15とキャビネット本体10の間に形成される固定された容量である。C2は、ドアと接地レベルの間に形成される可変容量であり、これは、ドアの近傍における人体の存在又は動きに依存している。C3は、ドアとキャビネット本体の間に形成される可変容量である。これは、ドアの開放角度に依存している。C4は、電極とドアの間に形成される可変容量である。これは、ドアの開放角度に依存している。後述するように、本システムは、この容量C4の値に関する情報を使用することにより、人体16がドアに接近しているのかどうかを検出している。
【0016】
図4は、計測システム要素の構成を示す図であり、図5は、本容量性検知システムの対応する計測回路を示す図である。図4は、回路(図5)の出力17において計測される合計容量に影響を与える様々なアンテナ(キャビネット本体10、電極15、ドア11、人体16)を示している。ここで、出力17における合計容量の計算式を検討すれば、次のとおりである。
【0017】
Ctot=C1+1/(1/C4+1/(C2+C3))
【0018】
本発明においては、電極の容量(C1及びC4)の値は、ドア及び人体の容量C2/C3(合計で200〜400pF)と比べて、格段に小さくなっており(10pF未満)、従って、金属ストリップの容量に対するC2及びC3の影響は、大きいものではなく、例えば、次のとおりである。
【0019】
C1=10pF、C4=10pFであり、C3=300pF、C2=100pF(ユーザーがドアに触れている)である場合には、合計容量は、次式のとおりである。
【0020】
C=C1+1/(1/C4+1/(C2+C3))=10+1(1/10+1/(300+100))=19.76pF
【0021】
C1=10pF、C4=10pFであり、C3=300pF、C2=0pF(ユーザーがドアから離れている)場合には、合計容量は、次式のとおりである。
【0022】
C=C1+1/(1/C4+1/(C2+C3))=10+1(1/10+1/(300+0))=19.67pF
【0023】
従って、ドアの近傍における、並びに、場合によっては、ドアに触れる人体の動きは、(特に、ドアが開放されており、容量C4が非常に小さい場合には)ドア位置の計測結果に現実的な影響を与えないことになる。
【0024】
図6を検討すれば、ドアを開く際には、上部面の金属ストリップの下方におけるその位置が変化すると共に、共通カバリング表面の面積も変化する。従って、この可変コンデンサの容量は、図に示されているように、開放角度に依存している(但し、線形にはなっていない)。変化の最大の部分は、ドアを開き始める際にのみ発生しており、ドアがほとんど開放された際には、非常に小さくなっている。このセンサは、ドアの閉鎖状態の判定に非常に良好な精度を、そして、ドアの開放状態については、低い精度を具備している。冷蔵庫の適切な機能のためには、開放よりも、ドアの閉鎖状態の信頼性の高い識別のほうが重要であり、従って、開放状態における相対的に良好ではない精度は、許容可能である。
【0025】
この結果は、異なるドア角度における出力17の合計容量をシステムが認知できように、システムを起動する際に較正することが容易であるというものである。ユーザーは、キャビネットを自宅に設置する際に、この較正を実行するように指示されることになる。この結果、本システムは、ドアの位置に関する情報を常に具備することになり、ユーザーの動作(動き及びドアへの接触)を伴うことのない特定のドアの角度における予想合計容量信号を算出し、これを実際の信号から減算可能である。これにより、純粋なユーザー動作の信号が得られることになる。この結果、冷蔵庫キャビネット用の実用的な容量性検知システムを実現可能である。
【0026】
実際には、容量性センサ回路は、較正の際に、電気回路内の合計容量を計測し、且つ、これを、保存されている合計容量と第2物体の位置の間の関係のダイアグラムと比較することにより、第2物体の位置を検出することになる。センサ回路は、第2物体の位置を検出した際に、第2物体に隣接するユーザーの身体の一部の動き及び/又は位置を検出することになる。
【0027】
もう1つの利点は、冷蔵庫内において通常使用されている2つの機械的スイッチ(ドア開放アラームスイッチ及び内部照明スイッチ)を除去可能であるという点にある。機械的な構造の単純化に起因し、コストの低減が期待される。
【0028】
当業者には、本発明が、冷却キャビネット用にのみ適合された容量性センサシステムに限定されてはいないことが明らかである。むしろ、本発明は、容量性検知システム用のアンテナ装置が実装されている可動部分を具備したあらゆる装置に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】冷蔵庫キャビネットに適用された従来技術による容量性検知システムを示す図である。
【図2】図1によるシステム用の対応する計測回路を示す図である。
【図3】本発明による冷蔵庫キャビネットに適用された容量性検知システムを示す図である。
【図4】図3によるシステム用の計測システム要素の構成を示す図である。
【図5】図3及び図4によるシステム用の対応する計測回路を示す図である。
【図6】「ドアの開放角度に依存した容量」を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナ(15)及び第2アンテナ(11)に接続されたセンサ回路を有する容量性センサシステムであって、前記第1アンテナ(15)は、第1物体(10)上に配置されており、前記第2アンテナ(11)は、前記第1物体(10)に対し移動可能である第2物体(11)上に配置されている、容量性センサシステムにおいて、
前記第1アンテナ(15)は、前記センサ回路が前記第2物体(11)の動き及び/又は位置を検出するように前記第2物体(11)の直ぐ隣に配置されていることを特徴とする容量性センサシステム。
【請求項2】
前記第1アンテナ(15)は、前記第2物体(11)上の表面と実質的に平行に配置されている請求項1に記載の容量性センサシステム。
【請求項3】
前記第1アンテナ(15)と前記第2物体(11)上の前記表面とは、正面において前記表面を観察する状態において、少なくとも部分的にオーバーラップしている請求項2に記載の容量性センサシステム。
【請求項4】
前記第1アンテナ(15)と前記第2物体(11)上の前記表面とは、長方形の形状を具備しており、この場合に、前記アンテナ(15)と前記表面との両方の主延長方向は、前記第2物体(11)の少なくとも1つの位置において実質的に平行である請求項2または3に記載の容量性センサシステム。
【請求項5】
前記第2物体(11)は、前記第1物体(10)に回転自在に又は摺動自在に取り付けられたドアであり、前記第2物体(11)の前記表面は、ドアの形状の一部であり、前記表面は、前記ドアのエッジ上に形成されている請求項2乃至4のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項6】
前記第2アンテナ(11)は、前記ドア上のカバーシートとして形成されている請求項5記載の容量性センサシステム。
【請求項7】
前記第1物体(10)は、キャビネット本体であり、前記本体は、前記ドアと共に、キャビネット空間を取り囲んでおり、前記第1アンテナ(15)は、前記第2物体(11)上の前記表面に対向するアンテナ表面に配置されている請求項5または6に記載の容量性センサシステム。
【請求項8】
前記アンテナ表面は、前記ドアのエッジに対向するべく、前記キャビネット本体の延長部分上に配置されている請求項7に記載の容量性センサシステム。
【請求項9】
前記第2アンテナ(11)は、前記センサ回路が前記第2物体(11)に隣接したユーザーの身体の一部(16)の動き及び/又は位置を検出するように配置されている請求項1乃至8のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項10】
前記第1アンテナ(15)と前記第1物体(10)の間に第1容量(C1)が形成されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項11】
前記第2アンテナ(11)と接地レベルの間に第2容量(C2)が形成されている請求項1乃至10のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項12】
前記第2アンテナ(11)と前記第1物体(10)の間に第3容量(C3)が形成されている請求項1乃至11のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項13】
前記第1アンテナ(15)と前記第2アンテナ(11)の間に第4容量(C4)が形成されている請求項1乃至12のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項14】
前記第4容量(C4)の値は、前記第1物体(10)に対する前記第2物体(11)の動きの影響を受ける請求項10乃至13のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項15】
前記第2容量(C2)の値は、前記第2物体(11)における人体(16)の存在の影響を受ける請求項10乃至14のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項16】
前記容量(C1、C2、C3、C4)は、前記第1容量が少なくとも前記第2及び第4容量の間の直列接続と並列に接続されている等価電気回路を形成している請求項10乃至14のいずれか1項に記載の容量性センサシステム。
【請求項17】
第1アンテナ(15)及び第2(11)アンテナに接続されたセンサ回路を有する容量性センサシステム用の方法であって、前記第1アンテナ(15)は、第1物体(10)上に配置されており、前記第2アンテナ(11)は、前記第1物体(10)に対して移動可能である第2物体(11)上に配置されており、前記アンテナの構成は、等価電気回路を形成している、方法において、
前記センサ回路は、前記電気回路内の合計容量(17)を計測し、且つ、これを、合計容量と前記第2物体(11)の位置の間の関係の保存されているダイアグラムと比較することにより、前記第2物体(11)の位置を検出することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記第2物体(11)は、前記第1物体(10)に回転自在に取り付けられたドアであり、前記第2物体(11)の位置は、前記第1物体(10)に対しその回転角度に対応している請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記センサ回路は、前記第2物体(11)の位置を検出した際に、前記第2物体(11)に隣接するユーザーの身体の一部の動き及び/又は位置を検出可能である請求項17または18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−530768(P2009−530768A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500327(P2009−500327)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000258
【国際公開番号】WO2007/108746
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(504064375)エレクトロラックス ホーム プロダクツ コーポレイション ナームロゼ フェンノートシャップ (15)
【Fターム(参考)】