説明

ドア構造

【課題】 使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によってドアが一時的に反ったり、捻られたりして一時的に変形した場合に元に復元させる機能を発揮できるだけでなく、内部空間内の空気の温度、湿度を均等化せしめて、反りや捻りを防止するドア構造を提供する。
【解決手段】 左右の縦桟間の上下各々に上下桟3a〜3dが結合されて成る桟部材4の内部空間5中に、複数の内側縦桟6,7と交差する中間桟8が収納された態様で、内部空間5の左右には、複数の縦桟2a〜2eが並設され縦桟2a〜2eの間で形成される間隙に少なくとも1本の断面ロ字状に形成された薄肉金属パイプT,Tが挟持され、且つ両金属パイプT,Tの両側面は縦桟2a〜2eの間の何れかに密接接合されると共に、両金属パイプT,Tの表裏両面は、表面材9a,9bとの間で微小隙間C2,C2が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドア構造に係り、更に詳しくは高さの高い、いわゆる木製ハイドアに適用するに好適であって、反りを有効に防止するドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅用建具として広く用いられているドアにはフラッシュドア、框組ドア等があり、上記のフラッシュドアは、一般的に左右の縦桟と上下の横桟より成り、且つ必要な中桟及び芯材を備え、それらに表面材が接合された構造を有する。そして、これらドアの使用環境に着目してみると、季節により使用環境の温度、湿度が異なると共に1日の単位でみても朝、夕又は昼夜では使用環境の温度、湿度が異なり、加えてドア自体に日光が照射されているか否かでも使用環境の温度、湿度が異なり、更には暖房、冷房を使用しているか否かでも使用環境の温度、湿度が異なる。つまりドア自体が激しい温度、湿度の変化の中に置かれている。このような使用環境の温度、湿度が変化するとドアを構成する材料の内部応力が主として水分の変動により変化することになるから、反りの問題が生ずる。
【0003】
そこで従来から、この反りの問題を解決せんとして幾つかの提案が成されている。即ち1つの従来技術は、左右の竪框と上下の横框とを有する扉枠部とこの扉枠部によって囲まれた扉中央部とから成り、上記扉枠部の竪框と横框がそれぞれ外方框材と内方框材を備え、内方框材に扉中央部の内部構造材が接合されるフラッシュ構造の扉において、上記内方框材は、金属製薄板材によって形成された角パイプから成り、扉全体の剛性を高めた技術である(特許文献1参照)。
【0004】
もう1つは、左右の縦桟と上下の横桟とを有するドア桟部材によって囲まれた中板とから成り、上記ドア桟部材の縦桟と横桟は木製の内側保持桟とその外側に配置される外側保持桟とを有し、該内側保持桟と外側保持桟間の表裏両面に面材を接合すると共に、内側保持桟の内側面にドア中央部の中板が接合される木製ドアに於いて、上記内側保持桟は、その内側面に上記中板の外周縁が装着可能な第1凹溝を有すると共に、その外側面に長手方向に沿って第2凹溝を有し、上記第1凹溝に装着された中板の接合部周縁の表裏には額縁が接合され、且つ上記第2凹溝内には金属製の角パイプが嵌入されて成るドアである(特許文献2参照)。
【0005】
上記特許文献2によると、ドアの構成部材に反りが生じようとすると、金属角パイプの剛性がその反りに抗することから確かに反りが予防されるし、又一時的に反りが生じた後、金属角パイプには復元力があるからその復元力によりドアの反りが復元される。
【0006】
然して、金属角パイプによる反り防止は、上述したように金属角パイプの剛性と復元力の機能によるものであって、ドア使用環境の変化に基づく温度、湿度の変化に応じて生ずるドアの構成部材の内部応力の変化を積極的に防止して反りを防止せんとするものではない。従って、ドアの反り防止には限界がある。
【0007】
特に、これら従来技術の場合、反りを復元する為の金属角パイプを有していてもドアの内部空間は閉じられており、内部に閉じ込められた空気は温度が高くなると上方に向かうので、ドア内部の上方に高い温度の空気が偏在する一方で、水分を帯びて重くなった空気はドア内部の下方に偏在する。すると、ドアの上下にわたる内部空間内の空気の温度、湿度の分布が不均一になる。特にドア使用環境の変化、即ち季節変動、昼夜の別、日照の有無、暖冷房の有無等によって環境の温度、湿度が変化すると上記の内部空間の温度、湿度の分布が不均一となる。すると、内部応力の変動が大きくなり、反りを発生し易くなり、上記の金属角パイプだけでは限界が生ずる。
【0008】
とりわけ、いわゆるハイドアと称して高さが2400mm位あるドアの場合、高さが高い分だけ反りが生じ易くなる。従って、従来は木製のハイドアの製造が難しかった。この点をより詳述すると、金属角パイプを設けた場合でも、それだけであると、ハイドアにすると最大変形量が7mm,変形残留量が3mm弱程あり、金属角パイプだけでハイドアの反りを防止するには不十分であった。この為、従来ハイドアにする為には木製ドアの一般の厚さが30〜36mmのところ、45mm程度の厚さにして厚くするとか、ガラス入りとして剛性を強化するとか、外回りにアルミニウム金属の補強をする等手間のかかる構造を施していた。
【0009】
このような問題点を解決するために本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、左右の縦桟間の上下各々に上下桟を結合した桟部材の内部空間中に芯材を収納した態様で表面材を表面に接合し、上下桟の各々にドアの外と内部空間を連通する為の空気出入孔を形成すると共に上記芯材の構成片にも空気を流通させる為の空気出入孔を形成し、上記空気出入孔を上記上下桟の長手方向に沿って複数形成し、しかも内部空間中に縦桟の各々に金属パイプを取付部材または釘などを用いて取付け、上記金属パイプの各々を、それらの上下端部と上下桟との間に間隙が形成されるように配設した構成のドアを提案した(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−197750(請求項1、発明の効果、図1)
【特許文献2】特開2001−280026(請求項1、図3)
【特許文献3】特許第3965520号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献3によると、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によってドアが一時的に反ったり、捻られたりして、一時的に変形した場合に、その反りや、捻りを金属角パイプにより元に復元させる機能を発揮することができ、ドア上下にわたる内部空間内の空気の温度、湿度をその変化に応じて各部均等化し、ドア上下方向の内外の温度差、湿度差を各部ほぼ均一とし、反りや捻りを防止することができる。
【0011】
上記のドアは、温度、湿度の急激な変化や、使い方による一時的なドアの反りや捻れは金属パイプに剛性によって元に復元させる機能を有しているものの、上記金属パイプは縦桟の各々に取付部材または釘を用いて取付けた構造となっている。
【0012】
ところが、金属パイプを取付ける縦桟の取付け面は、密接状態で接合されていることから、この部分での空気の流通が阻害されるのでその部分の温度、湿度の分布が不均一となる。その結果、反りや捻れが発生し易く最大変形量やその残留変形量を小さくするには限界があった。
【0013】
従って、本発明の目的とするところは、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によってドアが一時的に反ったり、捻られたりして一時的に変形した場合に元に復元させる機能を発揮できるだけでなく、内部空間内の空気の温度、湿度を均等化せしめて、反りや捻りを防止するドア構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する為に、本発明のドア構造は、左右の縦桟間の上下各々に上下桟3a〜3dが結合されて成る桟部材4を有し、この桟部材4の内部空間5中に複数の内側縦桟6,7と交差する中間桟8が収納された態様で上記桟部材4と上記縦桟の表裏両面に表面材9a,9bが接合されて成り、上記上下桟3a〜3dの表裏両面に上記内部空間5と外部を連通する為の複数の空気出入溝Gが形成されているドア構造において、上記内部空間5の左右には、複数の縦桟2a〜2eが並設され上記縦桟2a〜2eの間で形成される間隙の何れかに、少なくとも1本の断面ロ字状に形成された薄肉金属パイプT,Tの両側面が挟持され、且つ挟持されるその両側面は、上記縦桟2a〜2eの間の何れかに密接接合されると共に上記両金属パイプT,Tの表裏両面は、上記桟部材4ないし縦桟の表裏両面に接合される上記表面材9a,9bとの間で微小隙間C2,C2が形成されることを第1の特徴とするドア構造である。
上記のドア構造によれば、ドアの桟部材4の内部空間5中に内側縦桟と交差する中間桟が収納された態様で、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によって、ドアの構成部材に反りが生じようとすると、左右に並設される複数の縦桟2a〜2eの間で形成される間隙の何れかに挟持された断面ロ字状の薄肉金属パイプT,Tの剛性がその反りに抗し、又上記金属角パイプT,Tの復元力によりドアの反りが復元されるだけでなく、金属パイプT,Tの表裏両面に形成される微小隙間を通して空気が流通可能になると共に、上下桟3a,3b,3c,3dの表裏両面に形成された複数の空気出入溝Gを通してドアの内側から外側、外側から内側に空気を出入りさせることで、内部空間内の空気の温度、湿度が自然にドアの上下に亘って均等化せしめられる。
【0015】
本発明のドア構造は、左右の縦桟間の上下各々に上下桟3a〜3dが結合されて成る桟部材4を有し、この桟部材4の内部空間5中に芯材M1,M2が収納された態様で上記桟部材4と縦桟の表裏両面に表面材9a,9bが接合されて成り、上記上下桟3a〜3dの表裏両面に上記内部空間5と外部を連通する為の複数の空気出入溝Gが形成され、而も上記芯材M1,M2の構成片に、芯材M1,M2を通して空気を流通させる空気挿通孔が形成されているドア構造において、上記内部空間5の左右には、複数の縦桟2a〜2eが並設され上記縦桟2a〜2eの間で形成される間隙の何れかに、少なくとも1本の断面ロ字状に形成された薄肉金属パイプT,Tが挟持され、且つ挟持されるその両側面は、上記縦桟2a〜2eの間の何れかに密接接合されると共に上記両金属パイプT,Tの表裏両面は、上記桟部材4ないし縦桟の表裏両面に接合される上記表面材9a,9bとの間で微小隙間C2,C2が形成されることを第2の特徴とするドア構造である。
上記のドア構造によれば、ドアの桟部材4の内部空間5中に芯材M1,M2が収納された態様で、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によって、ドアの構成部材に反りが生じようとすると、左右に並設される複数の縦桟2a〜2eの間で形成される間隙の何れかに挟持された断面ロ字状の薄肉金属パイプT,Tの剛性がその反りに抗し、又上記金属角パイプT,Tの復元力によりドアの反りが復元されるだけでなく、金属パイプT,Tの外周に形成される微小隙間を通して空気が流通可能になると共に、上下桟3a〜3dの表裏両面に形成された複数の空気出入溝Gを通してドアの内側から外側、外側から内側に空気が出入りされる。また、内部空間5中に収納された芯材M1,M2の空気挿通孔を通して空気を流通させることで、内部空間内の空気の温度、湿度が自然にドアの上下に亘って均等化せしめられる。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の特徴を有する発明によれば、ドアの桟部材の内部空間5中に内側縦桟と交差する中間桟が収納された態様で、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方により、一時的に変形したドアの反りや、捻りを断面ロ字状の金属パイプにより元に復元されるだけでなく、金属パイプの表裏両面に形成される微小隙間を通して空気が流通可能になると共に、上下桟の表裏両面に形成された複数の空気出入溝を通してドアの内側から外側、外側から内側に空気を出入りさせることで、ドア上下にわたる内部空間内の空気の温度、湿度をその変化に応じて各部が均等化し、反りや捻りによるドアの変形量を軽減することができる。更に言えば、微小隙間を作ることで、金属パイプ内の温度上昇を抑え金属パイプの最大変形量を少とすると共に、金属パイプ内の微小隙間によって金属パイプの温度が下げられる傾向にあるので、金属パイプの残留変形が少になる。
【0017】
上記第2の特徴を有する発明によれば、ドアの桟部材4の内部空間5中に芯材M1,M2が収納された態様で、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方により、一時的に変形したドアの反りや、捻りを金属角パイプにより元に復元されるだけでなく、金属パイプの表裏両面に形成される微小隙間を通して空気が流通可能になると共に、上下桟の表裏両面に形成された複数の空気出入溝を通してドアの内側から外側、外側から内側に空気を出入りさせる。また、内部空間中に収納された芯材の空気挿通孔を通して空気を流通させることで、ドア上下にわたる内部空間内の空気の温度、湿度をその変化に応じて各部が均等化し、反りや捻りによるドアの変形量を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、添付図面(図1乃至図5)に従い、本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の実施例1に係るドアの表面材を剥した内部構造を示す正面図、図2は2本の縦桟の間に断面ロ字状の薄肉金属パイプを挟持した状態を示すドア下端の部分斜視図、図3は図2のA−A断面図、図4は上桟の表裏両面に複数の空気出入溝を形成したドアの上部を示す部分斜視図、図5は本発明の実施例1に係るドアの組立工程を示す工程図である。
【0019】
図1乃至図5は、本発明をフラッシュタイプのドアの一例に適用した例であり、図1乃至図5に示す実施例1に於いて、1はフラッシュタイプドア全体を示し、このフラッシュタイプドア1は、左側3本の縦桟と右側2本の縦桟として構成されたもので、符号2a,2b,2cは左の縦桟、符号2d,2eは右の縦桟を示している。
【0020】
これら左右の縦桟2a,2b,2c及び2d,2e間は、上部に於いては、二本の上桟3a,3bによって結合され、下部に於いては二本の下桟3c,3dによって結合されている。これにより桟部材4が構成される。この実施例1の場合、上下の高さが2400mm程度のいわゆるハイドアを例にしてある。そして、縦桟2a,2bの縦方向の略中間にはハンドル取付部Dが設けられている。
【0021】
上記桟部材4の内部には内部空間5が形成されており、この内部空間5内に一定間隔をもって向き合う内側の縦桟2c,2eの間には、中桟8が横に取付けられて内部空間5を上下に区画している。この中間桟8の上下面には内側縦桟を構成する三本の内側上縦桟6と内側下縦桟7の内側上下端部が結合されると共に、上記内側上下縦桟6,7の両外側端部は、上桟3a,3bと下桟3c,3dにそれぞれ結合されて横方向等間隔に配設されている。
【0022】
そして、一定間隔で並設された左側の縦桟2b,2cの間、並びに右側の縦桟2d,2eの間には、断面ロ字状に形成された図1に黒塗りで示す2本の薄肉金属パイプT,Tが、その両側面がそれぞれ挟持された状態で収容されている。
【0023】
上記金属パイプT,Tは、上記縦桟2b,2c及び2d,2eの全長より短尺に形成されており、両金属パイプT,Tは、縦桟2b乃至2d内壁の上下端部に取付けられた支持片10a,10b,10c,10dにより上下端部が支持されて、両金属パイプT,Tの両端と上桟3a,3b、ないし下桟3c,3dの間にはそれぞれ間隙Hが形成されている。
【0024】
更に、ドア1左側の縦桟2b,2c、並びに右側の縦桟2d,2eの間には2本の金属パイプT,Tの両側面が挟持され、上記両金属パイプT,Tの表裏面は、後述する表面材9a,9bにより覆われる。
【0025】
従って、図2、図3に一部を示したように、2本の金属パイプT,Tが夫々挟持される各金属パイプT,Tの両側面と左側の縦桟2b,2c、ないし右側の縦桟2d,2eの間C1,C1は密着接合されると共に、各金属パイプT,Tの表裏面には表面材9a,9bとの間で微小空間C2,C2が形成され、且つ上記金属パイプT,Tの四隅には、四つ角に形成される円弧Rに囲まれた縦方向の空気通路がそれぞれ形成される。尚、実施例1では上記金属パイプT,Tは、断面ロ字状に折り曲げたスチールパイプを用いた例を示してあるが、一体成型の金属角パイプまたは他の異形の金属角パイプを用いてもよい。
【0026】
また、図4に示す上桟3a,3bの表裏面には、内部空間5と外部を連通する為の複数の縦方向の空気出入溝Gが形成されており、特に図示しないが上記下桟3c,3dの表裏面にも内部空間5と外部を連通する為の複数の縦方向の空気出入溝Gが形成され、上記中間桟8の表裏面にも内部空間5の上下を連通する空気出入溝Gが形成されている。
【0027】
次に、実施例1に係るドアの組立工程に付き図5(a)乃至(e)を参照して説明する。先ず、図5(a)において、左の縦桟2a,2b,2cと右の縦桟2d,2eを結合した上桟3a,3bと下桟3c,3dによって桟部材4が構成されると、桟部材4の内部には中間桟8が横に取付けられ、この中間桟8の上下面には、三本の上縦桟6と下縦桟7の端部が上桟3a,3bと下桟3c,3dにそれぞれ結合されて等間隔に配設されたドアの枠組み構造Sが構成される。
【0028】
図5(b)において、上記のように構成された枠組み構造Sの裏面に、接着剤が塗布され、塗布後の枠組み構造Sの裏面に表面材9bが貼着される。枠組み構造Sの裏面に表面材9bが貼着されると、図5(c)に示すように、左側の縦桟2b,2cの間、並びに右側の縦桟2d,2eの間には、断面ロ字状に形成された2本の薄肉金属パイプT,Tが上方から収容されて、その両側面がそれぞれ密接接合状態で挟持され、同時に金属パイプT,Tの上下端面は、上記支持片10a,10b,10c,10dにより支持されて金属パイプT,Tの上下端部と上桟3a,3bないし下桟3c,3dの間に間隙Hが形成される。
【0029】
図5(d)に示すように、上記両金属パイプT,Tの表面以外の枠組み構造Sの表面に接着剤が塗布されて、塗布後の枠組み構造Sの上面に表面材9aが貼着されると、 図5(e)において、上記表面材9a,9bの上下面が図示しないプレスにより約90秒間圧接することで、フラッシュタイプのドア1が構成される。
【0030】
上記の実施例1に係るドア構造によれば、ドア1の桟部材の内部空間5中に内側縦桟6,7と交差する中間桟8が収納された態様で、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によって、ドア1の構成部材に反りが生じようとすると、左右に並設される複数の縦桟2a,2b,2cないし2d,2eの間で形成される間隙の何れかに挟持された断面ロ字状の薄肉金属パイプT,Tの剛性がその反りに抗するだけでなく、ドアの反りは上記金属角パイプT,Tの復元力により復元される。
【0031】
又、上記のように金属パイプT,Tの上下端部に形成される隙間Hや、金属パイプT,Tの表裏面に形成される微小隙間C2及び金属パイプT,Tの四隅に形成される円弧Rに囲まれた縦方向の空気通路を通して空気が上下に循環する。これにより、ドア上下内にわたる金属パイプT,Tの表面の温度、湿度はその変化に応じて各部均等化し易くなり、金属パイプT,T各部が均等化し、反りや捻りによるドアの変形量を軽減することができる。
【0032】
図6の例は、実施例2を示すフラッシュタイプドアを示すものであり、図6は、本発明の実施例2に係るドアの表面材を剥した内部構造を示す正面図である。尚、上記実施例1に係る構成と同一構成については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
符号20は、実施例2に係るドアであって、このドア20は、実施例1と同様に上下の高さが2400mm程度のいわゆるハイドアを例にしてある。上記桟部材4の内部には内部空間5が形成されており、この内部空間5内に一定間隔をもって向き合う内側の縦桟2c,2eの間には、中間桟8が横に取付けられて内部空間5を上下に区画している。この中間桟8の上下面には中間桟8が横に取付けられて内部空間5を上下に区画している。
【0034】
中間桟8によって内部空間5を上下に区画する片側の表面材9bには、必要な芯材として例えばハニカム構造の芯材M1,M2が収容されている。これら芯材M1,M2各々の表裏面に表面材9a,9bを取着することにより一般的なフラッシュタイプドアが形成される。勿論この例は一例で、而も簡易に説明したものであり、その他様々な構造のものがある。
【0035】
上記芯材M1,M2の外周には、内部空間5中に於けるドア上下にわたる空気の流れを良くするために略均等な隙間W1,W2が形成されてあり、上記芯材M1,M2は、ハニカム構造体の場合、上記芯材M1,M2の図示しない複数の構成片が空気を包み込み、ハニカム構造のコアを形成していて、そのコアの中は、閉じた空間になっているから、その構成片にも図示しない空気出入り孔を形成し、空気がハニカム構造の芯材M1,M2を通して内部空間5の中を自然に流れを良くし、ドア20上下にわたる内部空間5内の空気を温度、湿度を各部ほぼ均一化せしめるようにしてある。
【0036】
上記の実施例2に係るドア構造によれば、ドア20の桟部材4の内側の縦桟2c,2eの間に横に取付けられた中間桟8により上下に区画された内部空間5中に芯材M1,M2が収納された態様で、使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によって、ドア20の構成部材に反りが生じようとした場合に、薄肉金属パイプT,Tの剛性がその反りに抗するだけでなく、上記金属角パイプT,Tの復元力によりドアの反りが復元される。
【0037】
又、上記のように金属パイプT,T上下端部の隙間Hや、金属パイプT,Tの表裏面に形成される微小隙間C2及び金属パイプT,Tの四隅に形成される円弧Rに囲まれた縦方向の空気通路を通して空気が上下に循環する。これにより、ドア上下方向にわたる表面材9a,9b内外の温度差、湿度差は各部ほぼ均一となり、反りや捻りを防止する効果は実施例1と同じであるが、実施例2では、これに加えて内部空間5,5中に収納された芯材M1,M2の空気挿通孔を通して空気を流通させることで、ドア20上下にわたる内部空間5,5内の空気の温度、湿度をその変化に応じて各部が均等化し、反りや捻りによるドア20の変形量を軽減することができる。
【0038】
次に、図7は各ドアの加熱照射変形試験の結果を示している。この試験は、ドアの熱に対する安全性を試験項目とし、熱に対するドアの変形、変化をチェックすることを目的とする。試験体としての各ドアは、実際に使用するものを用い、これら各ドアの片面を太陽熱程度のふく射熱により加熱し、面外変形(反り)を調べた。
【0039】
試験方法は、実際の施工に合わせて、熱による変形のない剛性のある躯体に設置し、高さ2.4mのドアの片面全面に800Kcal/mhr(表面温度;48℃〜52℃)のふく射熱を8時間照射し、その後16時間放置する。この24時間を1サイクルとして5サイクルの加熱繰返しを行い、各ドアの最大変形量と変形残留量の測定を行った。
【0040】
その結果が図7であり、縦軸は最大変形量、並びに変形残留量(mm)である。横軸は、図中、太線の左側に示す従来構造のドアにおける測定回数、太線の右側に示す本発明の実施例1に係るドアの測定回数を示している。図7の図表において、○は最大変形量、△は変形残留量を示す。
【0041】
この試験では、6回の測定を行った。このことから判る通り、実施例1のドアは1回目の測定では、最大変形量が5.82mmでこの試験例の中でも二番目に大きいが、残留変形量は0.63mmと四番目に小さな残留量であった。
【0042】
4回目の測定では、最大変形量が5.52mmでこの試験例の中でも一番小さいが、残留変形量は1.20mmと一番大きな残留量であった。また、6回目の測定では、最大変形量が6.02と一番大きいが、残留変形量は0.11mmと一番小さい残留量であった。上記のすべての最大変形量、及び残留変形量の測定値は、従来構造のドアに比しすべて小さな変形量が得られた。
【0043】
これらのことから判明する通り、従来のように、断面ロ字状の金属パイプを設け、空気出入溝又は空気流路を設ける構成によると、反りに対して復元力を与えるとともに最大変形量,変形残留量の大きさを一定以下に抑えるには限度があった。
【0044】
そこで、上述したように金属パイプT,Tの両側面とその表裏面に微小な隙間Cを形成すると共に、金属パイプT,Tの四隅にも円弧Rを形成するならば、上記微小な隙間C並びに円弧Rに囲まれた縦方向の空気通路を通してドア上下にわたる内部空間5内の空気が循環し、空気の温度、湿度はその変化に応じて各部が均等化し易くなり、ドアの使用環境の温度、湿度の急激な変化や、使い方によるドアの最大変形量,変形残留量を軽減するものとして十分機能するのである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例1に係るドアの表面材を剥した内部構造を示す正面図である。
【図2】2本の縦桟の間に断面ロ字状の薄肉金属パイプを挟持した状態を示すドア下端の部分斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】上桟の表裏両面に複数の空気出入溝を形成したドアの上部を示す部分斜視図である。
【図5】本発明の実施例1に係るドアの組立工程を示す工程図である。
【図6】本発明の実施例2に係るドアの表面材を剥した内部構造を示す正面図である。
【図7】加熱照射変形試験結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0046】
1,20 フラッシュドア
2a,2b,2c 縦桟
2d,2e 縦桟
3a,3b 上桟
3c,3d 下桟
4 桟部材
5 内部空間
6 内側上縦桟
7 内側下縦桟
8 中間桟
9a,9b 表面材
10a,10b 支持片
10c,10d 支持片
C1 密接接合間隙
C2 微小隙間
D ハンドル取付部
H 隙間
M1,M2 芯材
R 円弧
T 金属パイプ
W1,W2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦桟間の上下各々に上下桟3a〜3dが結合されて成る桟部材4を有し、この桟部材4の内部空間5中に複数の内側縦桟6,7と交差する中間桟8が収納された態様で上記桟部材4と上記縦桟の表裏両面に表面材9a,9bが接合されて成り、上記上下桟3a〜3dの表裏両面に上記内部空間5と外部を連通する為の複数の空気出入溝Gが形成されているドア構造において、
上記内部空間5の左右には、複数の縦桟2a〜2eが並設され上記縦桟2a〜2eの間で形成される間隙の何れかに、少なくとも1本の断面ロ字状に形成された薄肉金属パイプT,Tの両側面が挟持され、且つ挟持されるその両側面は、上記縦桟2a〜2eの間の何れかに密接接合されると共に上記両金属パイプT,Tの表裏両面は、上記桟部材4ないし縦桟の表裏両面に接合される上記表面材9a,9bとの間で微小隙間C2,C2が形成されることを特徴とするドア構造。
【請求項2】
左右の縦桟間の上下各々に上下桟3a〜3dが結合されて成る桟部材4を有し、この桟部材4の内部空間5中に芯材M1,M2が収納された態様で上記桟部材4と縦桟の表裏両面に表面材9a,9bが接合されて成り、上記上下桟3a〜3dの表裏両面に上記内部空間5と外部を連通する為の複数の空気出入溝Gが形成され、而も上記芯材M1,M2の構成片に、芯材M1,M2を通して空気を流通させる空気挿通孔が形成されているドア構造において、
上記内部空間5の左右には、複数の縦桟2a〜2eが並設され上記縦桟2a〜2eの間で形成される間隙の何れかに、少なくとも1本の断面ロ字状に形成された薄肉金属パイプT,Tが挟持され、且つ挟持されるその両側面は、上記縦桟2a〜2eの間の何れかに密接接合されると共に上記両金属パイプT,Tの表裏両面は、上記桟部材4ないし縦桟の表裏両面に接合される上記表面材9a,9bとの間で微小隙間C2,C2が形成されることを特徴とするドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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