説明

ドア構造

【課題】 隣接する室内に臭気や湿気などを漏らすことなく、効率の良い換気を行うことができるドア構造を提供する。
【解決手段】屋外との間に窓21aが設けられたトイレ21と、これに隣接する廊下22との間の出入口ドア10の構造であって、出入口ドア10には、開口部10aが設けられ、この開口部10aには、廊下22側からトイレ21側へ通気し、トイレ21側から廊下22側へは通気しない蓋体1が設けられている。蓋体1は、開口部10aに装着される開口部材11と、蓋片12とを具備し、開口部材11は、開口11fが形成された傾斜面11dが形成され、開口11fを塞ぐようにしてトイレ21側から傾斜面11dに蓋片12が当接され、蓋片12は、トイレ21内に負圧を生じた際に開口11fを開き、負圧が解消された際に自重で開口11fを閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内におけるトイレなどの空間と、それに隣接する他の空間との間のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅内の空間は、屋外との間の壁に、窓や換気扇を設けて換気するようになされている。
【0003】
しかし、効率良く換気するためには、上記した窓や換気扇と併用して、この空間と、それに隣接する他の空間とを仕切るドアにガラリやレジスターを設けたり(例えば、特許文献1参照)、ドアの下部を2cm程カットして通気可能なアンダーカット部を形成したり、この空間へ連通する吸気孔を設けたり(例えば、特許文献2参照)して換気する空間の通気性を良くすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3073325号公報
【特許文献2】特開平5−332037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の換気構造の場合、屋外から空間に吹き込む外気風が勝ると、空間から、上記したガラリ、レジスター、アンダーカット部、吸気孔を介して空間内の空気が他の空間に逆流してしまう。この場合、空間がトイレなどの臭気を発生する空間である場合は、他の空間に臭気が漏れることとなる。また、空間が浴室などの湿気を発生する空間である場合は、他の空間に湿気が漏れることとなる。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、隣接する室内に臭気や湿気などを漏らすことなく、効率の良い換気を行うことができるドア構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明のドア構造は、屋外との間に窓および/または換気扇が設けられた一方の空間と、これに隣接する他方の空間との間の出入口ドアの構造であって、ドア本体には、このドア本体を貫通する開口部が設けられ、この開口部には、他方の空間側から一方の空間側へ通気し、一方の空間側から他方の空間側へは通気しない蓋体が設けられてなるものである。
【0008】
また、上記ドア構造において、蓋体は、開口部に装着される略円筒状の開口部材と、略半円形状に形成され、切片に沿った直径方向の上下に突起が設けられた一対の蓋片とを具備し、開口部材には、下側が一方の空間側寄りに上側が他の空間側寄りに傾斜する傾斜面が形成されるとともに、この傾斜面は、中央に上下に伸びる柱状の区画を残して、上記蓋片より一回り小さい略半円形状の一対の開口が形成されてなり、これらの開口を塞ぐように一方の空間側から傾斜面に蓋片が当接されるとともに、蓋片の上下に設けられた突起が開口部材内に支持され、蓋片は、一方の空間内に負圧を生じた際に突起間を結ぶ直線を回転軸にして開口を開き、負圧が解消された際に自重で開口を閉じるようになされたものである。
【0009】
さらに、上記ドア構造において、一方の空間がトイレとなされたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によると、ドア本体を貫通する開口部に、他方の空間側から一方の空間側へ通気し、一方の空間側から他方の空間側へは通気しない蓋体を設けているので、開口部を介して一方の空間から他方の空間へと通気するのを防止することができる。したがって、一方の空間が臭気を発生するトイレであったり、湿気を発生する浴室であったりしても、他方の空間にこれらの臭気や湿気を漏らさず、快適な空間を保つことができる。
【0011】
また、窓および/または換気扇から一方の空間内の空気を換気する場合は、開口部を介して他方の空間から一方の空間へと通気するので、効率良く一方の空間を換気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明に係るドア構造の全体構成の概略を示す正面図、( b) は同図(a)のI-I 線断面図である。
【図2】図1(a)のII-II 線断面図である。
【図3】(a)は本発明に係るドア構造に用いられる蓋体の全体構成の概略を示す分解斜視図、(b)は開口部材のフランジ面側から見た正面図である。
【図4】(a)および(b)は、蓋体を構成する蓋片の平面図および正面図である。
【図5】本発明に係るドア構造を採用した住宅建物の間取りの一部分を示す間取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1および図2はドア構造の全体構成の概略を示し、図3は同ドア構造に用いられる蓋体1を示し、図4は蓋体1を構成する蓋片12を示し、図5は同ドア構造を採用した住宅建物2の間取りを示している。
【0015】
すなわち、このドア構造は、トイレ21と、このトイレ21に隣接する廊下22との間に設けられた出入口ドア10に蓋体1を設けて構成されている。
【0016】
蓋体1は、出入口ドア10を貫通するように穿孔した直径約110mmの開口部10aに設けられる。この蓋体1は、開口部材11と、蓋片12と、換気蓋13とからなり、廊下22からトイレ21へ通気し、トイレ21から廊下22へは通気しないようになされている。蓋体1を構成する開口部材11、蓋片12および換気蓋13は、金属素材、樹脂素材、またはこれらを複合した材料から構成することができる。
【0017】
開口部材11は、通気用スリット11aが設けられた円盤状のフランジ面11bの片面に、円筒状に形成された円筒部11cを設けて構成されている。円筒部11cは、出入口ドア10に穿孔した開口部10a内に嵌挿可能な略円筒状に形成されている。この円筒部11c内には、傾斜面11dが設けられている。この傾斜面11dは、下側が円筒部11cの一端側寄りに位置し、上側がフランジ面11b側寄りに位置するように傾斜して、この円筒部11c内を遮るように設けられている。この傾斜面11dには、中央に柱状の仕切り部11eを残してその両側に半円形状の開口11fが形成されている。
【0018】
蓋片12は、上記した開口部材11の円筒部11c内に設けられた開口11fよりも一回り大きな略半円形状に形成され、切片に沿った直径方向の上下に突起12aが設けられている。この蓋片12は、傾斜面11dの仕切り部11eの上下に設けられた支持部11gに突起12aを嵌合することによって取り付けられ、開口11fを閉塞するように傾斜面11dに設けられる。この蓋片12は、トイレ2aに負圧を生じた際には、突起12a間を結ぶ直線を回転軸にして開口11fを開き、負圧が解消されると自重で開口11fを閉じることとなる。この蓋片12の切片と対向する円弧部分は、蓋片12の他の部分よりも肉厚に形成された肉厚部12bが形成されており、負圧で開いた蓋片12が自重で容易に開口11fを閉じることができるようになされている。どの程度の負圧に反応して蓋片12が開いたり閉じたりするのかについては、傾斜面11dの傾斜具合や、蓋片12の素材や、この肉厚保部12bの厚みなどに応じて調整することができる。
【0019】
換気蓋13は、通気用スリット13aが設けられた円盤状のフランジ面13bの片面に、開口部材11の円筒部11cの先端に嵌合する略リング状の嵌合部13cを設けて構成されている。
【0020】
次に、この蓋体1を図5に示す住宅建物2のトイレ21の出入口ドア10に取り付ける方法について述べる。
【0021】
図5において、21はトイレ、22は廊下、23は玄関ホール、24は玄関、25は階段、26は居室である。この間取りはあくまでも一例である。
【0022】
まず、取り付けに先立って出入口ドア10に開口部10aを穿孔する。この際、開口部10aは、特に出入口ドア10のどの位置に穿孔するものであってもよいが、トイレ21内の換気効率を考えると、トイレ21に設けられた窓21aから離れた位置、すなわち出入口ドア10の下端部付近に設けることが好ましい。
【0023】
次いで、開口部材11の円筒部11cを、出入口ドア10に穿孔された開口部10aの廊下2b側から挿通し、この開口部10aのトイレ2a側から換気蓋13を当接して開口部材11の円筒部11cと換気蓋13とをビス14で固定する。この際、開口部材11の円筒部11cの外周面と出入口ドア10に穿孔された開口部10aの内周面との間から空気が漏れないように、シールリングまたはシール材15を介在させて取り付けられる。
【0024】
この際、開口部材11は、傾斜面11dの下側が円筒部11c内のトイレ側21に位置し、上側が廊下22側に位置するように固定される。
【0025】
このようにして出入口ドア10に蓋体1を設けたドア構造によると、トイレ21の窓21aを開けてトイレ21内の換気を行う場合、蓋体1からトイレ21内に取り入れられる空気が窓21aから抜けることによって効率良くトイレ21内の換気を行うことができる。すなわち、窓21aの外側で風が吹くと、トイレ21内が負圧になり、この負圧によって蓋体1の蓋片12が開口11fを開くこととなり、トイレ21内の空気は窓21aから屋外へと換気されることとなる。
【0026】
また、窓21aを開けた時の風向きが悪くてトイレ21内に風が吹き込むような場合であっても、蓋体1は、蓋片12によって開口11fが閉じられているので、トイレ21の臭気が蓋体1を介して廊下22へと流れることを防止することができる。したがって、住宅内環境がトイレ21の臭気で悪化するといったことを防止することができる。
【0027】
さらに、トイレ21の窓21aを閉めた状態で、トイレ21の出入口ドア10を開けるような場合、トイレ21が密閉されているため、出入口ドア10を開ける時に空気抵抗で出入口ドア10が重くなるが、蓋片12によって開口11fが開いて蓋体1から空気が抜けるので、空気抵抗を感じることなく容易に出入口ドア10を開けることができる。
【0028】
なお、本実施の形態において、トイレ21には、窓21aを設けて換気をするようになされているが、窓21aではなく換気扇(図示省略)を設けて換気するように構成されたものであってもよい。この場合、屋外が無風であっても、換気扇によってトイレ21内を強制的に負圧にすることができるので、蓋体1から空気を取り入れてトイレ21内の換気を行うことが可能となる。
【0029】
また、本実施の形態において、トイレ21は、出入口ドア10を挟んで廊下22に隣接しているが、特に、このような廊下22に限定されるものではなく、トイレ21の臭気が漏れ出ることを防止することによって快適な空間を形成することができる空間であれば、玄関、吹き抜け空間、リビング、ダイニングなどに隣接するものであってもよい。
【0030】
さらに、本実施の形態において、ドア構造は、トイレ21の出入口ドア10に蓋体1を設けて構成されているが、トイレ21以外の空間であってもよく、例えば、浴室やキッチン(共に図示省略)の場合であってもよい。浴室の場合、浴室の湿気を他の室内空間に入れることなく、効率よく屋外に排気することができる。また、キッチンの場合、キッチンで調理している料理のニオイを隣接する廊下やリビングなどの他の室内空間に充満させることなく、効率よく換気扇から屋外に排気することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るドア構造は、住宅建物内のドアに設置して使用される。
【符号の説明】
【0032】
1 蓋体
10 出入口ドア
10a 開口部
11 開口部材
11d 傾斜面
11e 仕切り部(区画)
11f 開口
12 蓋片
12a 突起
21 トイレ(一方の空間)
21a 窓
22 廊下(他方の空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外との間に窓および/または換気扇が設けられた一方の空間と、これに隣接する他方の空間との間の出入口ドアの構造であって、
ドア本体には、このドア本体を貫通する開口部が設けられ、この開口部には、他方の空間側から一方の空間側へ通気し、一方の空間側から他方の空間側へは通気しない蓋体が設けられてなることを特徴とするドア構造。
【請求項2】
蓋体は、開口部に装着される略円筒状の開口部材と、略半円形状に形成され、切片に沿った直径方向の上下に突起が設けられた一対の蓋片とを具備し、
開口部材には、下側が一方の空間側寄りに上側が他の空間側寄りに傾斜する傾斜面が形成されるとともに、この傾斜面は、中央に上下に伸びる柱状の区画を残して、上記蓋片より一回り小さい略半円形状の一対の開口が形成されてなり、
これらの開口を塞ぐように一方の空間側から傾斜面に蓋片が当接されるとともに、蓋片の上下に設けられた突起が開口部材内に支持され、蓋片は、一方の空間内に負圧を生じた際に突起間を結ぶ直線を回転軸にして開口を開き、負圧が解消された際に自重で開口を閉じるようになされた請求項1記載のドア構造。
【請求項3】
一方の空間がトイレである請求項1または2記載のドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−42977(P2011−42977A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191771(P2009−191771)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】