説明

ドットプリンタ

【課題】 紙粉等によるインクリボン走行不良、印字ハンマの作動不良、印字不良のないドットプリンタを提供する。
【解決手段】 インクリボン11の一部にクリーニングリボン部12が設けられ、そのクリーニングリボン部12の到来を検出する検出マーク13を前記インクリボン11に付し、その検出マーク13はインクリボン走行方向においてクリーニングリボン部12の前方に配置され、前記検出マーク13を検出する検出装置14を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットプリンタに係り、特にドットプリンタの印字機構部及びインクリボン走行路のクリーニング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6及び図7にドットプリンタの印字機構部の概略の一例を示す。複数の印字ハンマ10を有するハンマバンク1には、印字ハンマ10の先端に対向する開口部を有し、インクリボン2と印字用紙3の直接接触を防ぐためのリボンマスク8が固定されている。
【0003】
ハンマバンク1は、図示しないシャトル機構部により桁方向(図中矢印A→B、B→A方向)に往復運動する。また、ハンマバンク1は印字力を支持するためのプラテン5と対向した状態で配置されていて、ハンマバンク1が往復運動している状態で、印字ハンマ10が適時駆動される毎にドットマトリクスの形で文字、図形等が印字用紙3に印字される。
【0004】
印字用紙3は、印字の過程で適時トラクタ4、紙送りモータ7を搭載した紙送り機構部6により、垂直方向(図中矢印D方向)に送られる。トラクタ4は、印字用紙3の両端に連続的に配置される送り穴にピンを嵌合させ、印字用紙3を搬送する。
【0005】
図8にインクリボン2の走行を説明するための平面図を示す。インクリボン2は、一対のローラで構成されたリボンドライブローラ21及びガイドローラ22、リボンガイド23、24及びリボンブレーキ部25で支持されており、リボンドライブローラ21の回転に従い常に矢印C方向へ送られる。なおリボンドライブローラ21は図示しないモータ等により矢印E方向に駆動される。図中の26はリボントレイである。
【0006】
ドットプリンタは印字ハンマをインクリボンに叩き付け、印字用紙に文字、図形等を印字するその印字方法から、印字ハンマ、リボンマスクがインクや、インクリボンのかす、又は紙粉等で汚れるため定期的にクリーニングする必要がある。
【0007】
ここで、特開昭62−176866号公報に記載のクリーニング方法および装置においては、プリンタの印字ハンマに付着した付着物を除去するためのクリーニングリボンを提案している。これによれば、クリーニング専用のクリーニングリボンカセットを用い、印字ハンマに付着する付着物を除去するため、プリンタの印刷用インクリボンカセットをクリーニング専用リボンカセットに交換装着し、クリーニング動作を行うと言うものである。クリーニング専用のクリーニングリボンカセットを使用する方法は、オペレータが印刷を中断し、リボンカセットを交換しなければならず、オペレータにクリーニング操作を求めるものである。また、清掃時期の判断はオペレータが行うため、必ずしもオペレータが定期的にクリーニングを行わない場合もあり、印刷品質が保たれるとは限らない。
【0008】
特開平5−104841号公報に記載の印字装置においては、インク含浸層とインクが含浸されていないクリーニング層とが平行に形成されたインクリボンを使用し、ドットプリンタのリボンマスクの汚れを除去する印字装置を提案している。これによれば、インクリボンをそれの走行方向と直行する方向にシフトさせるインクリボン切替手段を有し、定期的にインクリボン切替を行い、クリーニング層をリボンマスク開口部に接触させクリーニング動作を行うと言うものである。しかしながらクリーニング層を使用するためには、インクリボンの切替機構、又は印字ハンマ及びリボンマスクの切替機構が必要となり、多色印刷を行わないドットプリンタでは、クリーング動作のみのために切替機構を設けることは、コスト面において得策ではない。
【0009】
特開昭62−66976号公報に記載の印字装置におけるリボン構造においては、インクリボンの終末端にクリーニング用テープを設け、プリントヘッドに摺接して、プリントヘッドをクリーニングするインクリボン、リボン構造を提案している。これによれば、インクリボン終末端に設けたクリーニング用テープで、オペレータにクリーニング専用リボンへの交換を求めず、プリントヘッドの清掃を行える。インクリボン終末端に設けたクリーニング用テープは、インクリボンを1回限りの使用で交換するタイプのプリンタ(サーマルプリンタ)では有効であるが、インクリボンの同じ箇所を複数回使用可能なドットトプリンタ(インパクトプリンタ)では、1回限り使用可能なインクリボンの使用は経済的ではない。
【0010】
【特許文献1】特開昭62−176866号公報
【特許文献2】特開平05−104841号公報
【特許文献3】特開昭62−66976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
印字ハンマを用いるドットプリンタは印字ハンマをインクリボンに叩き付け、印字用紙に文字、図形等を印字する。ドットプリンタはその印字方法から、印字ヘッドがインクや、インクリボンのかす又は紙粉等で汚れるため、定期的にクリーニングする必要がある。
【0012】
紙粉に関しては、近年の傾向として環境の対応などから再生紙が用いられたり、低コスト追求の点から粗面紙が用いられたりするなど、紙質が悪化することによる問題が発生している。例えば、再生紙や粗面紙は上質紙と比較して、印字用紙表面に不均一な紙の繊維や、紙を作る課程で加えられる様々な添加剤などが多く付着しており、この印字用紙表面に印字ハンマで打撃を与えた場合、印字用紙から多量の紙粉が発生する。
【0013】
特に印字速度の速いドットプリンタでは、紙紛の発生が多く、粘性を持つインクと混ざると粘着性のある固まりとなり、インクリボン駆動ローラ、インクリボン搬送路、印字ハンマ、リボンマスクに付着すると、インクリボン走行不良の原因、印字ハンマの作動不良により印字欠け、印刷用紙への汚れの付着などの印字不良の原因となる。
【0014】
本発明は、安価で簡易で、定期的に印字機構部及びインクリボン走行路のクリーニングができるドットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、複数個の印字ハンマを搭載したハンマバンクと、該ハンマバンクを往復移動させるためのシャトル機構と、印字用紙を送るための紙送り機構と、前記印字ハンマの印字力を支持するプラテンと、前記印字ハンマと前記プラテンの間に前記印字用紙と印字行方向に沿って常に同一方向に移動するように配置したエンドレスインクリボンとを備えて、前記ハンマバンクの往復運動の過程で前記印字ハンマを駆動し前記インクリボンを介して前記印字用紙に印字するドットプリンタにおいて、前記インクリボンの一部にクリーニングリボン部が設けられ、そのクリーニングリボン部の到来を検出する検出マークを前記インクリボンに付し、その検出マークはインクリボン走行方向においてクリーニングリボン部の前方に配置され、前記検出マークを検出する検出装置を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記インクリボンのクリーニング部を検出したときに印字動作を一時中断して、前記クリーニングリボン部を印字せずにクリーニング動作を行うことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、前記プラテンがプラテン開閉機構を有し、前記クリーニングリボン部のクリーニング動作を行う際に前記プラテン開閉機構によりプラテンを開き、前記印字ハンマとプラテン間のギャップを広げてクリーニング動作を行うことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第4の手段はインクリボンにおいて、一部にクリーニングリボン部が設けられ、そのクリーニングリボン部の到来を検出する検出マークをインクリボン走行方向において前記クリーニングリボン部の前方に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドットラインプリンタの印字機構部及びインクリボン走行路を定期的にクリーニングすることにより、印字機構部の汚れによる印刷不良、インクリボンの搬送不良を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1(a),(b)は、本発明の実施形態に係るエンドレスインクリボンの斜視図である。このエンドレスインクリボンは、インクが含浸されているインクリボン11と、インクが含浸されていないクリーニングリボン12とが一続きになり、端部のないエンドレスリボンとなっている。
【0021】
また、クリーニングリボン12を検出する導電材よりなる検出マーク13は、エンドレスインクリボン11の進行方向に対してクリーニングリボン12よも前方側に施されている。検出マーク13は、図1(a)のようなインクリボン両面を使用するためにねじりを加えられたメビウスインクリボンの場合はインクリボン両面に、図1(b)のような片面のみを使用するためにねじりを加えられていないストレートインクリボンはインクリボン内側のみに施すと良い。図1(b)の場合、検出マーク13は内側に施されているため、検出マーク13を破線で図示している。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係るクリーニングリボン検出装置の斜視図である。前記検出マーク13の検出は、円筒状の接触式検出端子14をインクリボン走行路においてハンマバンク1の前方に配置されたリボンガイド24に設け(図8参照)、検出端子14に検出マーク13が接触することにより行う。検出端子14は図2に示すように、インクリボン11の走行経路上の角部に配置する。インクリボン11は角部では内側に巻き込む力が作用するため、この角部に検出端子14を配置することにより、検出マーク13と検出端子14が密着するようになる。また、検出端子14近傍でのインクリボン浮き上がりによる未検出等の障害を防止することができる。
【0023】
クリーニングリボン12の検出マーク13が、検出端子14を通過した場合には印字動作を一時中断し、クリーニングリボン12を印字せずにハンマバンク1前面をクリーニングリボン12が通過する。このとき、クリーニングリボン12がハンマ機構部の印字領域を完全に通過するまでの印字停止時間Tは、ハンマ機構部の印字ハンマの受持つ印字領域の距離X(mm)、インクリボン速度をV(mm/s)、印字停止時間をT(s)とし、インクリボンの走行はゴムローラで巻込むように引張る方法のために若干のスリップが発生するのでそのスリップ率をAとすると、
T≧X/(1−A)V
の関係で設定することで可能となる。
【0024】
図3は、クリーニングリボン12によるハンマ機構部のクリーニング動作を説明するためのフローチャートである。始めに、印刷動作中に検出マーク13を検出した場合を説明する。
【0025】
S1にて検出マークの有無を判別し、検出マーク有と判別するとS2にて印刷中かを判別する。印刷中の場合はS3にてハンマ駆動回路への印刷データの転送を中止し、S4にてシャトル機構の往復運動を停止させる。そしてS5にて、前述した時間Tの間、インクリボンを搬送することにより、クリーニングリボン上を打撃することなく、印字機構部の印字ハンマ、リボンマスクのクリーニングが可能となる。
【0026】
一方、印刷中以外の待機中などに点検等によりオペレータが手動でリボンフィードノブ等を回す場合もあるので、検出マーク13の検出タイミングは常時検出する方法が望ましく、このような印刷中でない場合に検出マーク13を検出した場合は、印刷開始データを受信した後、印刷開始の直前に時間Tだけインクリボンを搬送するように制御すると良い。
【0027】
図4は、本発明の実施形態に係るエンドレスインクリボンのクリーニングリボン部の一例を示す図である。ドットプリンタに用いられるインクリボンは、ポリアミド繊維やポリエステル繊維等の熱溶融性織布材が用いられ、その生地にインクを含浸させている。図4(a)エンドレスインクリボン11のクリーニングリボン12は、インク含浸部と同じ生地に多孔質フィルムを両面に張り合わせる方法、または、クリーニングリボン部をインク含浸部と異なる生地で作られ、インク含浸リボンと同じ幅の多孔質クリーニングリボンの両端をインク含浸リボンに溶着する方法で形成されている。図4(b)のエンドレスインクリボン11のクリーニングリボン12は、両面がブラシ状の毛足の短い繊維で形成されているインク含浸リボンと同じ幅のリボン形状で、その両端をインク含浸リボンに溶着されている。
【0028】
図4(b)のように、クリーニングリボン12の厚さがインク含浸リボン生地厚さと著しく異なる場合、ハンマバンク1前面とプラテン5の微小ギャップ区間でクリーニングリボン12の厚みが負荷となり、インクリボン搬送不良、または印字ハンマ10へクリーニングリボン12が引っかかることによるクリーニングリボン12の破損等、障害を引き起こすことが考えられる。
【0029】
そこで検出端子14が検出マーク13を検出した場合に、図示しないプラテン開閉機構で、プラテン5を一定量開くことにより、クリーニングリボン12が走行するためのハンマバンク1前面とプラテン5のギャップが確保され、インクリボンの搬送不良、クリーニングリボン12の破損を防止することが可能である。
【0030】
図5は、検出マーク13を検出した時、プラテン5を一定量開いてハンマ機構部のクリーニング動作を行う場合のフローチャートである。前述のように検出マークの有無を判別し、次に印刷中かを判別する。印刷中の場合は、ハンマ駆動回路への印刷データの転送を中止し、シャトル機構の往復運動を停止させる。
【0031】
そしてプラテンを一定量開き、前述の時間Tの間インクリボンを搬送することにより、クリーニングリボンを打撃することなく、かつインクリボン搬送負荷を増すことなく、印字機構部の印字ハンマ、リボンマスクのクリーニングが可能となる。一方、印刷中でない場合に検出マーク13を検出したときには、印刷開始データを受信した後、プラテンを一定量開き、時間Tだけインクリボンを搬送するように制御すると良い。
【0032】
ここまで、クリーニングリボン12前方に施された検出マーク13とリボンガイド部24の検出端子14の関係による印字機構部の印字ハンマ10、リボンマスク8のクリーニング方法を詳述したが、エンドレスインクリボンにクリーニングリボン12を設けることにより、インクリボン走行路全領域がクリーニングできることは言うまでもない。特に、図8に示したリボンドライブローラ21をクリーニングすることは、前述のインクリボンのスリップ率Aの低減を図ることが可能であり、これによりインクリボン搬送不良の発生を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るエンドレスインクリボンの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクリーニングリボン検出装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るハンマ機構部のクリーニング動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るエンドレスインクリボンのクリーニングリボン部の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るハンマ機構部のクリーニング動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】印字機構の斜視図である。
【図7】印字機構の断面図である。
【図8】インクリボンの走行を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1はハンマバンク、2はインクリボン、3は印字用紙、4はトラクタ、5はプラテン、6は紙送り機構部、7は紙送りモータ、8はリボンマスク、10は印字ハンマ、11はエンドレスインクリボン、12はクリーニングリボン、13は検出マーク、14は検出端子、21はリボンドライブローラ、22はガイドローラ、23はリボンガイド、24はリボンガイド、25はリボンブレーキ部、26はリボントレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の印字ハンマを搭載したハンマバンクと、該ハンマバンクを往復移動させるためのシャトル機構と、印字用紙を送るための紙送り機構と、前記印字ハンマの印字力を支持するプラテンと、前記印字ハンマと前記プラテンの間に前記印字用紙と印字行方向に沿って常に同一方向に移動するように配置したエンドレスインクリボンとを備えて、前記ハンマバンクの往復運動の過程で前記印字ハンマを駆動し前記インクリボンを介して前記印字用紙に印字するドットプリンタにおいて、
前記インクリボンの一部にクリーニングリボン部が設けられ、そのクリーニングリボン部の到来を検出する検出マークを前記インクリボンに付し、その検出マークはインクリボン走行方向においてクリーニングリボン部の前方に配置され、前記検出マークを検出する検出装置を有することを特徴とするドットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のドットプリンタ前記において、前記インクリボンのクリーニング部を検出したときに印字動作を一時中断して、前記クリーニングリボン部を印字せずにクリーニング動作を行うことを特徴とするドットプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のドットプリンタにおいて、前記プラテンがプラテン開閉機構を有し、前記クリーニングリボン部のクリーニング動作を行う際に前記プラテン開閉機構によりプラテンを開き、前記印字ハンマとプラテン間のギャップを広げてクリーニング動作を行うことを特徴とするドットプリンタ。
【請求項4】
一部にクリーニングリボン部が設けられ、そのクリーニングリボン部の到来を検出する検出マークをインクリボン走行方向において前記クリーニングリボン部の前方に設けたことを特徴とするインクリボン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−126570(P2008−126570A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315668(P2006−315668)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】