説明

ドットプリンタ

【課題】紙送りモータの温度上昇を抑えて、紙送りモータの性能を最大限発揮させ、印刷速度を向上させることである。
【解決手段】紙送り制御手段15が、一括紙送りを許容する一括紙送り許容ドット規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを予め設定しており、単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と、一括紙送り許容ドット規定値ならびに分割休止紙送りドット規定値とを比較して、単位時間当たりの紙送りドット数が一括紙送り許容ドット規定値になるまでは、分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行し、単位時間当たりの紙送りドット数が一括紙送り許容ドット規定値以上となった場合は、分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドットラインプリンタなどのドットプリンタに係り、特にそれの紙送り制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドット印刷を行う代表的な印刷装置として、ドットラインプリンタが挙げられる。このドットラインプリンタにおける印字機構部の概略構成の一例を図7と共に説明する。
【0003】
印字ハンマなどの印字素子(図示せず)を有するハンマバンク1は、図示していないシャトル機構部により桁方向に往復運動するようになっている。また、ハンマバンク1はインクリボン2を印字用紙3との間に挟み、印字力を支持するためのプラテン4と対向した状態で配置されている。
【0004】
前記印字素子は、往復運動した状態で適時駆動される毎にドットマトリックスの形で文字や図形等を印字用紙3に印刷する。印字用紙3はその過程において、トラクタ5および紙送りモータ7等により構成される紙送り機構部6により適時桁方向と直交する方向へ送られる。
【0005】
通常、ドットプリンタの紙送りモータ7にはステッピングモータが用いられ、1ステップ駆動する毎に印刷用紙3を印字素子の1ドット相当分搬送するよう設定されている。例えばドットプリンタの印刷密度を180ドット/インチ(180dpi)とする場合、印字用紙3の搬送分解能力も最低限180dpiとする必要がある。このようにすることで印字用紙3にドットマトリクス形式で印刷することが可能となり、印字用紙3の位置決めなども容易になる。
【0006】
このような印刷装置は、伝票などの帳票印刷業務が一般的な用途である。帳票印刷では、1頁に日時や品名、金額等、数行のみ印刷し、次頁に紙を送るジョブが頻繁にあり、このように1回に送る紙送り量が多くかつ連続的に紙を送った場合、紙送りモータ7の温度が上昇し、各種トラブルの原因となる。
【0007】
この紙送りモータ7の温度上昇を抑制するために、冷却系の強化や高性能モータの使用などが考えられる。しかし、近年、価格競争は厳しさを増しており、コストを抑えるために部品の追加や高性能で高価な部品を使わず、紙送り動作を分割し、その分割の間に休止時間を設け、時間当たりの送り量を少なくする方法(以下、分割休止紙送りと称する)を採用している(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように従来は、紙送りモータの温度上昇を抑制するために、一定量以上の紙送りを実施する際は紙送りを分割し、更に分割の間に休止時間を設け、時間当たりの紙送り量を少なくしている。
【0009】
しかし、この方法では紙送りモータの温度上昇に関係なく、すなわち紙送りモータの温度が低い場合でも、一定量以上の紙送りを常に分割休止紙送りしてしまうので、紙送りモータの能力を十分に発揮できず、結果的に印刷速度を低下させる原因となっていた。
【0010】
例えば、分割休止紙送りを実施する規定値を450ドット(2.5インチ)以上、紙送り速度を同一と仮定して、頁長12インチ(2160ドット)用紙の6分割した位置に1行(30ドット)ずつ印刷した場合の紙送り量は、印字送りを含め360ドットを6回行うこととなる。この時の紙送りは分割を行う規定値450ドット未満のため一括で送られるのでドットプリンタの性能通りの印刷速度となる。
【0011】
一方、頁長12インチの用紙上部に6行の印刷紙送り(180ドット:1インチ)を行い、残り11インチ(1980ドット)の紙を送る場合は、450ドットの分割休止紙送りを4回と残り180ドットを送ることとなるので、ドットプリンタの性能が出せず印刷速度が低下する。
【0012】
ここで両者の紙送り量は同値(12インチ:2180ドット)であり、紙送り速度が同一と仮定しているので、前者の紙送り方法で紙送りモータの温度が許容値未満であるならば、後者で分割休止紙送りをしている部分(11インチ)を一括で送っても紙送りモータ温度は許容値内となり印刷速度も低下せず問題ないと考えられる。
【0013】
本発明の目的は、前述のような従来技術の欠点を解消し、紙送りモータの温度上昇を抑えることでコストアップせずに、紙送りモータの性能を最大限発揮させ、印刷速度を向上させることができるドットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明は、
複数個の印字素子を搭載したハンマバンクと、
前記ハンマバンクを桁方向に往復移動するためのシャトル機構部と、
前記ハンマバンクと対向して、前記ハンマバンクの移動方向に対して直交する方向に印字用紙を送る紙送りモータを含む紙送り機構部と、
紙送りドット数に基づいて前記紙送り機構部に駆動信号を出力する紙送り制御手段とを有するドットプリンタを対象とするものである。
【0015】
そして本発明の第1の手段は、前記紙送り制御手段が、
一括紙送りを許容する一括紙送り許容ドット規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを設定しており、
単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と、前記一括紙送り許容ドット規定値ならびに分割休止紙送りドット規定値とを比較して、
前記単位時間当たりの紙送りドット数が前記一括紙送り許容ドット規定値以上となり、かつ、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記紙送り制御手段が、
前記単位時間当たりの紙送りドット数が前記一括紙送り許容ドット規定値になるまでは、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
当該ドットプリンタの動作環境温度の違いによって前記一括紙送り許容ドット規定値を複数設定し、
前記ドットプリンタの動作環境温度を検出する例えばサーミスタなどの動作環境温度検出手段を設け、
前記動作環境温度検出手段からの検出温度に基づいて前記複数の一括紙送り許容ドット規定値のうちから検出温度に応じた一括紙送り許容ドット規定値を選択する構成になっていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第4の手段は、前記紙送り制御手段が、
一括紙送りを許容する一括紙送り許容発熱規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを設定しており、
単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数に対応する発熱値と前記一括紙送り許容発熱規定値、ならびに前記単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と分割休止紙送りドット規定値とを比較して、
前記単位時間当たりの紙送りドット数に対応する発熱値が前記一括紙送り許容発熱規定値以上となり、かつ、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第5の手段は前記第4の手段において、
前記紙送り制御手段が、
前記単位時間当たりの紙送りドット数に対応する発熱値が前記一括紙送り許容発熱規定値になるまでは、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第6の手段は前記第4または第5の手段において、
当該ドットプリンタの動作環境温度の違いによって前記一括紙送り許容発熱規定値を複数設定し、
前記ドットプリンタの動作環境温度を検出する動作環境温度検出手段を設け、
前記動作環境温度検出手段からの検出温度に基づいて前記複数の一括紙送り許容発熱規定値のうちから検出温度に応じた一括紙送り許容発熱規定値を選択する構成になっていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第7の手段は前記第4ないし第6のいずれかの手段において、
前記紙送りドット数に対応する発熱値は、その紙送りドット数毎に前記紙送りモータに通電される電流値から換算した発熱値であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は前述のような構成になっており、単位時間当たりの紙送り量あるいは単位時間当たりの紙送りのために発生する発熱値を記憶、監視することで、紙送りモータの動作状況によりモータ温度を推測することができ、紙送りモータが発熱した場合のみ紙送りモータの温度を下げる分割休止紙送りを実行することが可能となる。
【0023】
そのため、ドットプリンタのコストアップすることなく、紙送りモータの温度上昇を抑え、且つ紙送りモータの性能を最大限発揮させて、印刷速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るドットラインプリンタのエンジン制御部とその周辺部材の関係を示すブロック図である。
【図2】その第1実施形態に用いる紙送りドット記憶メモリの詳細を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るドットラインプリンタのエンジン制御部とその周辺部材の関係を示すブロック図である。
【図4】その第2実施形態に用いる紙送り制御手段のフローチャートである。
【図5】その紙送り制御に用いる紙送りドット数に対応する発熱値変換テーブルの一例を示す図である。
【図6】その第2実施形態に用いる紙送り発熱値記憶メモリの詳細を示す説明図である。
【図7】ドットラインプリンタにおける印字機構部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の本発明は、紙送りモータの発熱を単位時間当たりの紙送り量から推定し、紙送りモータが発熱した場合にのみ分割休止紙送りを行うものである。
【0026】
より具体的には、紙送りドット数に基づいて紙送り機構部に駆動信号を出力する紙送り制御手段が、
一括紙送りを許容する一括紙送り許容ドット規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを予め設定しており、
単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と、前記一括紙送り許容ドット規定値ならびに分割休止紙送りドット規定値とを比較して、
前記単位時間当たりの紙送りドット数が前記一括紙送り許容ドット規定値になるまでは、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行し、
前記単位時間当たりの紙送りドット数が前記一括紙送り許容ドット規定値以上となった場合は、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするもので、後述する第1実施形態と対応している。
【0027】
第2の本発明は、紙送りモータの発熱値を紙送りドット数から推定し、紙送りモータが発熱した場合にのみ分割休止紙送りを行うものである。
【0028】
より具体的には、紙送りドット数に基づいて紙送り機構部に駆動信号を出力する紙送り制御手段が、
一括紙送りを許容する一括紙送り許容発熱規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを予め設定しており、
単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数に対応する発熱値と、前記一括紙送り許容発熱規定値、ならびに前記単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と分割休止紙送りドット規定値とを比較して、
前記単位時間当たりの紙送りドット数に対応する発熱値が前記一括紙送り許容発熱規定値になるまでは、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行し、
前記単位時間当たりの紙送りドット数に対応する発熱値が前記一括紙送り許容発熱値以上となった場合は、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするもので、後述する第2実施形態と対応している。
【0029】
次に本発明の実施形態について図面と共に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るドットラインプリンタのエンジン制御部とその周辺部材の関係を示すブロック図、図2はこの実施形態に用いる紙送りドット記憶メモリの詳細を示す説明図である。
【0030】
ドットラインプリンタにおける印字機構部の概略構成は先に述べた図7と同じであるので、それらの説明は省略する。
図1において10はエンジン制御部で、内部にデータ編集手段12、印刷制御手段13、紙送り制御手段15ならびに紙送りドット数記憶メモリ16などを備え、図に示すような接続関係になっている。
【0031】
同図に示すように、上位装置11から転送された印字・紙送りデータは、データ編集手段12により印字データは印字可能なデータとして加工され、印刷制御手段13において印刷ドット数やサーミスタ18から得た温度情報から印刷制限等を考慮したタイミングで、ハンマ14へ印字データとして転送される。そして、ハンマ14により印字用紙3上にドットマトリックスの形で文字や図形等の印字が行われる。前記サーミスタ18は、ドットラインプリンタの内部に設置されて、プリンタの動作環境温度を検出している。
【0032】
また、紙送りデータは紙送りドット数として紙送り制御手段15へと転送される。この紙送り制御手段15では、受信した紙送りドット数分の紙送りを実行するために、紙送りモータ(ステッピングモータ)17に駆動信号を出力する。なお、分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信したときの紙送り方法は、以下に示す紙送り制御手段15の制御方法により決定される。
【0033】
まず受信した紙送りドット数は、一定間隔の時間で紙送りドット数記憶メモリ16に記憶する。同時にその紙送りドット数記憶メモリ16から読み出した単位時間分の総紙送りドット数と一括紙送り許容ドット規定値とを比較し、その総紙送りドット数が前記規定値(許容値)未満の場合は一括送りを指定し、総紙送りドット数が前記規定値(許容値)以上の場合は分割休止紙送りを指定する。
【0034】
次に図2を用いて、前記紙送り制御方法の詳細について、紙送りドット数記憶メモリ16の状態とともに説明する。
【0035】
本実施形態ではその一例として、受信した紙送りドット数を紙送りドット数記憶メモリ16に記憶する間隔は1秒、紙送りドット数記憶メモリ16の記憶時間である単位時間は60秒、一括紙送り許容ドット規定値(一括紙送り許容値)は60000ドットと仮定して説明する。
【0036】
図2の左側部分では(A)一括送りの場合を、同図右側部分では(B)分割休止紙送りの場合を示している。
先ず、同図(A)一括送りの場合について説明する。
紙送り制御手段15により1秒間に受信した紙送りドット数d0(1000)が紙送りドット数記憶メモリ16に記憶されると、その紙送りドット数記憶メモリ16のデータを全て1アドレス分シフトし、最新の紙送りドット数d0が紙送りドット数記憶メモリ16のアドレスn1に格納され、60秒前の最古の紙送りドット数d60は破棄される。
【0037】
次に紙送りドット数記憶メモリ16のドット数総合計(d1+d2・・・・+d60=59500ドット)を算出し、予め設定されている一括紙送り許容ドット規定値(許容値:60000ドット)と前記算出した値を比較する。この場合、算出した値(59500ドット)が一括紙送り許容ドット規定値(60000ドット)を超えていないため、次の1秒間に受信した紙送りは分割休止紙送りドット規定値(450ドット)以上であっても、分割休止紙送りは行なわず(分割休止紙送り解除)、紙送りを一括送りにして、それを実行する。
【0038】
次にその後の1秒間で一括送りを実施した時の紙送りドット数記憶メモリ16の状態を、同図の(B)に示す。
一括送りにより増加した1秒間当たりの紙送り量d0(1800ドット)を前述と同様に紙送りドット数記憶メモリ16に記憶し、ドット数総合計(60100ドット)を算出する。そのドット数総合計(60100ドット)が予め設定されている一括紙送り許容ドット規定値(許容値:60000ドット)を超えたため、次の1秒間に受信した紙送りが分割休止紙送りドット規定値(450ドット)以上の場合、前記分割休止紙送りドット規定値(450ドット)で分割紙送りし、その分割した紙送りの間に待ち時間を入れた分割休止紙送りを指定して、それを実施する。
【0039】
以上のような紙送り制御により、単位時間当たりの紙送りドット数を記憶し、その紙送りドット数と一括紙送り許容ドット規定値(許容値)とを比較することで、紙送りモータ17の温度状態を推定でき、紙送りモータ17が発熱した場合にのみ分割休止紙送りを行うことが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係るドットラインプリンタのエンジン制御部とその周辺部材の関係を示すブロック図、図4は紙送り制御手段のフローチャート、図5は紙送りドット数に対応する発熱値変換テーブルの一例を示す図、図6は紙送り発熱値記憶メモリの詳細を示す説明図である。
【0041】
この実施形態においてもドットラインプリンタにおける印字機構部の概略構成は先に述べた図7と同じであるので、それらの説明は省略する。
図3において10はエンジン制御部で、内部にデータ編集手段12、印刷制御手段13、紙送り制御手段15ならびに紙送り発熱値記憶メモリ19などを備え、図に示すような接続関係になっている。
【0042】
同図に示すように、上位装置11から転送された印字・紙送りデータは、データ編集手段12により印字データは印字可能なデータとして加工され、印刷制御手段13において印刷ドット数やサーミスタ18から得た温度情報から印刷制限等を考慮したタイミングで、ハンマ14へ印字データとして転送される。そして、ハンマ14により印字用紙3上にドットマトリックスの形で文字や図形等の印字が行われる。前記サーミスタ18は、ドットラインプリンタの内部に設置されて、プリンタの動作環境温度を検出している。
【0043】
また、紙送りデータは紙送りドット数として紙送り制御手段15へと転送される。この紙送り制御手段15では、受信した紙送りドット数分の紙送りを実行するために、紙送りモータ(ステッピングモータ)17に駆動信号を出力する。なお、分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信したときの紙送り方法は、紙送り制御手段15により決定される。
【0044】
次に紙送り制御手段15の制御方法について、図4ならびに図5を用いて説明する。
【0045】
まずS10において紙送り制御手段15が紙送りドット数を受信したことを確認すると、S20において分割休止紙送り指定の有無を判定する。分割休止紙送り指定が無いと判断した場合は、紙送りモータ17の温度は低いと推定しているため、S60において先に受信した紙送りドット数分の紙送りを一括して実行する。
【0046】
前記S20において分割休止紙送りが指定されていると判断した場合は、紙送りモータ17の温度は高いと推定しているので、S30において先に受信した紙送りドット数と分割休止紙送りドット規定値が比較される。
【0047】
その比較結果、受信した紙送りドット数が分割休止紙送りドット規定値以上の場合は、S40において分割休止紙送りを実行し、S50において次に送る分割された残りの紙送り量を算出して、保持する。一方、S30において先に受信した紙送りドット数が分割休止紙送りドット規定値より少ないと判断した場合は、S60において紙送りを一括で実行する。
【0048】
なお、前記S50において分割された残りの紙送りは、S40で実行した分割休止紙送りが終了したタイミングをS130において判別し、前述のS30以降の処理を実行する。
【0049】
次にS70において一定時間内の発熱量を検出するため、前段で実行した紙送り量に対する発熱値を変換テーブルから取得し、その発熱量を加算して、それを紙送り発熱値記憶メモリ19(図3参照)に保存する。前記変換テーブルは、紙送りドット数毎に紙送りモータ7に通電される電流値の測定、温度上昇評価等の結果により発熱量に換算して、数値化したものを用いるとよい。
【0050】
図5は、紙送りドット数に対応する発熱値変換テーブルの一例を示す図である。同図に示すように、それぞれの紙送りドット数(P)に対する発熱値が予め求められている。
【0051】
なお、紙送りドット数が100(P)以上になると、紙送りドット数に対応する発熱値は下記の計算式によって算出される。
【0052】
[(P−50)×2+200]
なお、式中P:紙送りドット数
数値50:固定送り量(スローアップ+ダウン)
数値2:スルー送り1DL当りの発熱値
数値200:固定送り量(50)の発熱値

以上のように紙送りを実行し、その紙送り量に対応した発熱値を加算する処理を一定時間繰り返し、S80において一定時間経過したと判断すると、S90において一定時間内の発熱値の合計値を紙送り発熱値記憶メモリ19(図3参照)に記憶する。
【0053】
そしてS100において前記紙送り発熱値記憶メモリ19から読み出した単位時間分の紙送り発熱値と一括紙送り許容発熱規定値を比較し、単位時間分の紙送り発熱値が一括紙送り許容発熱規定値以上の場合は分割休止紙送り指定処理S110を行い、単位時間分の紙送り発熱値が一括紙送り許容発熱値未満の場合は分割休止紙送り指定解除処理S120を行う。
【0054】
次に図6を用いて、前記紙送り制御方法の詳細について、紙送り発熱値記憶メモリ19の状態とともに説明する。
【0055】
本実施形態ではその一例として、一定時間実行した紙送りドット数分の発熱値を紙送り発熱値記憶メモリ19に記憶する間隔は1秒、紙送り発熱値記憶メモリ19の記憶時間である単位時間は60秒、一括紙送り許容発熱値は60000[F/Step]と仮定して説明する。
【0056】
図6の左側部分では(A)一括送り(分割休止紙送り解除)の場合を、同図右側部分では(B)分割休止紙送り(分割休止紙送り指定)の場合を示している。
先ず、同図(A)一括送りの場合について説明する。
紙送り制御手段15により1秒間に実行した紙送り発熱値d0(1000[F/Step])が紙送り発熱値記憶メモリ19に記憶されると、その紙送り発熱値記憶メモリ19のデータを全て1アドレス分シフトし、最新の紙送り発熱値d0が紙送り発熱値記憶メモリ19のアドレスn1に格納され、60秒前の最古の紙送り発熱値d60は破棄される。
【0057】
次に紙送り発熱値記憶メモリ19の発熱値総合計(d1+d2・・・・+d60=59500[F/Step])を算出し、予め設定されている一括紙送り許容発熱値(許容値:60000[F/Step])と前記算出した値を比較する。
【0058】
この場合、算出した値(59500[F/Step])が一括紙送り許容発熱値(60000[F/Step])を超えていないため、次の1秒間に受信した紙送りは分割休止紙送りドット規定値(450ドット)以上であっても分割休止紙送りは行なわず(分割休止紙送り解除)、紙送りを一括送りにして、それを実行する。
【0059】
次にその後の1秒間で一括送りを実施した時の紙送り発熱値記憶メモリ19の状態を、同図の(B)に示す。
一括送りにより増加した1秒間当たりの発熱値d0(1800[F/Step])を前述と同様に紙送り発熱値記憶メモリ19に記憶し、発熱値総合計(60100[F/Step])を算出する。その発熱値総合計(60100[F/Step])が予め設定されている一括紙送り許容発熱値(60000[F/Step])を超えたため、次の1秒間に受信した紙送りが分割休止紙送りドット規定値(450ドット)以上の場合、その分割休止紙送りドット規定値(450ドット)で分割紙送りし、その分割した紙送りの間に待ち時間を入れた分割休止紙送りを指定して、それを実施する。
【0060】
以上のような紙送り制御により、単位時間当たりの紙送り発熱値を記憶し、その紙送り発熱値と一括紙送り許容発熱値(許容値)とを比較することで紙送りモータ17の温度状態を推定でき、紙送りモータ17が発熱した場合にのみ分割休止紙送りを行うことが可能となる。
【0061】
なお、ドットラインプリンタに搭載されているサーミスタ18により動作環境温度を検出し、その検出温度に基づいて低温時は一括紙送り許容発熱値(許容値)を多く、高温時は一括紙送り許容発熱値(許容値)を少なく設定することで、より紙送りモータ17の温度状態に合わせた紙送りを行うことが可能となり、印刷速度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1:ハンマバンク、2:インクリボン、3:印字用紙、4:プラテン、5:トラクタ、6:紙送り機構部、7:紙送りモータ、10:エンジン制御部、11:上位装置、12:データ編集手段、13:印刷制御手段、14:ハンマ、15:紙送り制御手段、16:紙送りドット数記憶メモリ、17:紙送りモータ、18:サーミスタ、19:紙送り発熱値記憶メモリ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開平10−297042号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の印字素子を搭載したハンマバンクと、
前記ハンマバンクを桁方向に往復移動するためのシャトル機構部と、
前記ハンマバンクと対向して、前記ハンマバンクの移動方向に対して直交する方向に印字用紙を送る紙送りモータを含む紙送り機構部と、
紙送りドット数に基づいて前記紙送り機構部に駆動信号を出力する紙送り制御手段と
を有するドットプリンタにおいて、
前記紙送り制御手段が、
一括紙送りを許容する一括紙送り許容ドット規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを設定しており、
単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と、前記一括紙送り許容ドット規定値ならびに分割休止紙送りドット規定値とを比較して、
前記単位時間当たりの紙送りドット数が前記一括紙送り許容ドット規定値以上となり、かつ、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするドットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のドットプリンタにおいて、
前記紙送り制御手段が、
前記単位時間当たりの紙送りドット数が前記一括紙送り許容ドット規定値になるまでは、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするドットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドットプリンタにおいて、
当該ドットプリンタの動作環境温度の違いによって前記一括紙送り許容ドット規定値を複数設定し、
前記ドットプリンタの動作環境温度を検出する動作環境温度検出手段を設け、
前記動作環境温度検出手段からの検出温度に基づいて前記複数の一括紙送り許容ドット規定値のうちから検出温度に応じた一括紙送り許容ドット規定値を選択する構成になっていることを特徴とするドットプリンタ。
【請求項4】
複数個の印字素子を搭載したハンマバンクと、
前記ハンマバンクを桁方向に往復移動するためのシャトル機構部と、
前記ハンマバンクと対向して、前記ハンマバンクの移動方向に対して直交する方向に印字用紙を送る紙送りモータを含む紙送り機構部と、
紙送りドット数に基づいて前記紙送り機構部に駆動信号を出力する紙送り制御手段と
を有するドットプリンタにおいて、
前記紙送り制御手段が、
一括紙送りを許容する一括紙送り許容発熱規定値と、分割休止紙送りを行なう分割休止紙送りドット規定値とを設定しており、
単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数に対応する発熱値と前記一括紙送り許容発熱規定値、ならびに前記単位時間当たりに送られてきた紙送りドット数と分割休止紙送りドット規定値とを比較して、
前記単位時間当たりの紙送りドット数に対応する発熱値が前記一括紙送り許容発熱規定値以上となり、かつ、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合に分割休止紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするドットプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のドットプリンタにおいて、
前記紙送り制御手段が、
前記単位時間当たりの紙送りドット数に対応する発熱値が前記一括紙送り許容発熱規定値になるまでは、前記分割休止紙送りドット規定値以上の紙送りドット数を受信した場合であっても一括して紙送りを実行する構成になっていることを特徴とするドットプリンタ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のドットプリンタにおいて、
当該ドットプリンタの動作環境温度の違いによって前記一括紙送り許容発熱規定値を複数設定し、
前記ドットプリンタの動作環境温度を検出する動作環境温度検出手段を設け、
前記動作環境温度検出手段からの検出温度に基づいて前記複数の一括紙送り許容発熱規定値のうちから検出温度に応じた一括紙送り許容発熱規定値を選択する構成になっていることを特徴とするドットプリンタ。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載のドットプリンタにおいて、
前記紙送りドット数に対応する発熱値は、その紙送りドット数毎に前記紙送りモータに通電される電流値から換算した発熱値であることを特徴とするドットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194873(P2011−194873A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188627(P2010−188627)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】