説明

ドットラインプリンタの印刷制御方法

【課題】 バーコード等の高密度印刷データの連続印刷中に行う印刷制限を生じないように印刷データを加工し、印刷速度がマニュアルに記載されている仕様に近くなるようにすることを課題とする。
【解決手段】 本発明のドットラインプリンタの制御方法は、印刷データに印刷制限を生じないような加工を施した上で実際の印刷を行うので、印刷速度の低下が発生せず、印刷時間の算出が容易になる。さらに、ユーザーが印刷制限による印刷速度低下をプリンタの不具合という誤認識を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットラインプリンタを用いて連続印刷する場合に、印刷制限による印刷速度低下を防止する制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドットラインプリンタ等の印刷装置において連続印刷を行う場合、一度に大量印刷を行う場合が多く、仕様通りの印刷速度によって印刷することをユーザーは望んでいる。しかし、印刷データ中にバーコード等の高密度印刷、及び罫線の印刷データがある印刷を行う場合、印刷不正防止のための印刷制限によって印刷速度が低下している可能性があり、マニュアルより算出した印刷時間と実際の印刷時間は誤差が生じてしまう。印刷制限による印刷時間の遅延は、オペレータにプリンタ不具合と誤解され易く、プリンタは正常動作しているのにも関わらず「不具合」との報告がメーカ側にあるため、原因究明のため現地まで保守員を派遣し調査する必要があった。
【0003】
印刷制限は、主に印刷密度が過密な印刷データを印刷する場合にハンマ機構部の連続動作によって生じる温度上昇を防止するため、打ち分け、連続印刷待機等の制限を行ってハンマ機構部を保護するために行う印刷制御である。この印刷制限の設定値は、印刷制御部によって印刷データを監視し、印刷制限を行うための各設定値が所定値以上となったときに、最も適した印刷制限を行うよう制御している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、連続印刷は長時間行うことが多く、さらに時間的制約が厳しいため、連続印刷を仕様通りに行えるよう要求するユーザーもいる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−52985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドットラインプリンタにおいて、特にバーコード等の高密度印刷を行う場合、印刷品質の確保、及びプリンタ故障防止のための印刷制限は必要不可欠であり、この印刷制限によって生じる印刷速度の低下は印刷制御において正常な動作である。しかし、高密度印刷データの連続印刷中に印刷不正防止のための印刷制限を行うために印刷速度低下を生じるという問題がある。
【0007】
その一方、ユーザーは使用通りの印刷速度を要求しており、高密度印刷を行っているドットラインプリンタが所定速度で印刷されていない場合には故障と誤認されてしまうという問題もある。
【0008】
よって、本発明が解決しようとする課題は、印刷制限を生じないように印刷データを加工し、印刷速度がマニュアルに記載されている仕様通りの印刷を可能とし、印刷時間が算出しやすく、さらに、ユーザーが印刷制限による印刷速度低下をプリンタの不具合という誤認識を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、印刷制御部で印刷データを監視し、印刷制限を行う必要のある印刷データである場合に、印刷データを印刷制限の各設定値以上にならず、かつ本来の印刷データから極端にかけ離れた印刷データにならない程度に加工し、印刷速度低下を生じないように印刷を行う印刷制御方法である。
【0010】
すなわち、本発明は、複数個の印字素子を搭載した印刷機構部と、前記ハンマバンクを桁方向に往復移動させるシャトル機構部と、ステッピングモータ等を用いて桁方向と垂直に印刷用紙を間欠的に搬送するための紙送り機構部と、前記ハンマバンクの印字力を支持すると共に前記印字用紙のガイドとなるプラテンと、印刷モード等の印刷仕様の設定を行う操作パネルと、上記各機構部を制御する印刷制御部を有し、印刷データの印刷密度に基づき印刷制限制御を実施するドットラインプリンタにおいて、前記印刷制限制御が不要と判断された場合には、前記印刷制限制御を行うことを検出した際に、印刷制限を行う制限値内に収まるように印刷データを加工して、印刷制限制御を回避するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドットラインプリンタの制御方法は、印刷制限による印刷速度低下を生じないため、印刷速度がマニュアルに記載されている仕様通りになることにより連続印刷を行う場合の印刷時間が算出しやすくなる。さらに、ユーザーが印刷制限による印刷速度低下をプリンタの不具合という誤認識を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ハード的な変更なしで制御するソフトウェアの追加のみで実現できる点にポイントがある。以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1は本発明で用いるドットラインプリンタの概略図である。
【0014】
図1において、1は印刷機構部(以下、ハンマバンクという)、2はインクリボン、3は印刷用紙、4はプラテン機構部、5はシャトル機構部、6は紙送り機構部、7は印刷制御部、8は操作パネルである。
【0015】
印刷用紙3の前面のインクリボン2を挟んで対向する側には、印字素子(図示せず)が複数個並んで配置されたハンマバンク1が設けられている、ハンマバンク1はシャトル機構部5の駆動力によって桁方向に往復運動し、印刷データに基づいて印字素子を駆動し、インクリボン2を介して印刷用紙3に印刷を行う。プラテン機構部4はハンマバンク1の打撃力を支持するものであって、プラテン機構部4はインクリボン2と印刷用紙3との厚さが適するギャップに固定される。シャトル機構部5によりハンマバンク1が移動端部に到達し、印刷用紙3が次の印刷位置まで搬送されると、次の印刷データの印刷を行う。以下同様に印刷動作、紙送り動作を繰り返して連続紙の印刷を行う。印刷制御部7は、操作パネル8でユーザーが設定した印刷モードで印刷できるように、各部位の印刷制御を行う。
【0016】
図2は本発明の一例となるドットラインプリンタの制御ブロック図である。
【0017】
図2において1はハンマバンク、4はプラテン機構部、5はシャトル機構部、6は紙送り機構部、7は印刷制御部、8は操作パネル、9は上位装置、10はCPU、11はハンマバンク駆動回路、12はプラテン駆動回路、13はシャトル駆動回路、14は紙送り駆動回路、15は印刷制限回避データ加工部である。
【0018】
印刷制御部7はCPU10を中心として、印刷に関する全ての制御を行っている。印刷制御部7はユーザーが操作パネル8によって選択した印刷モードに対応した動作をハンマバンク駆動回路11、プラテン駆動回路12、シャトル駆動回路13、紙送り駆動回路14に同期させて制御し、各駆動回路によってハンマバンク1、プラテン機構部4、シャトル機構部5、紙送り機構部6を駆動して連続印刷を行っている。なお、印刷モードは複数種有しており、夫々の印刷モードにおいて印刷密度及び/または印刷速度が異なっている。通常、ユーザーのニーズに応じた様々なモード(例えば高速印刷、高品質印刷等)が設定されている。
【0019】
印刷制御部7はハンマバンク1を構成する印字素子の打撃不良による脱ドット、余ドット等の印刷不正防止のため、印刷密度制限、罫線印刷制限等の印刷制限により印刷品質を確保している。印刷制限は印刷データによって様々な組み合わせで印刷制限を行うため印刷速度低下を生じることになり、マニュアルに記載されている印刷速度より遅くなってしまう。
【0020】
前述したように、印刷制限については、印刷密度によって制限を行う印刷密度制限と、罫線のような桁方向に連続したドットについて制限を行う罫線印刷制限とがある。これら二つの印刷制限は上位装置9から送信され、CPU10でドットマトリクス形式に編集された印刷データからドット密度算出、及び罫線データの有無の確認を行っている。印刷密度制限は不揮発性素子16に記憶されている許容する印刷密度制限値を超える印刷データを印刷する場合には、印刷不正の原因となる電源の許容量不足、及びハンマバンク1を構成する印字素子の温度上昇による破損の防止のため、ハンマバンク1を搭載するシャトル機構部5が桁方向に1回移動する間にハンマバンク1が印刷するドット密度が印刷密度制限値以下になるように算出したドット密度によって自動的に数回に打ち分けて印刷する。罫線印刷制限は、ハンマバンク1を構成する隣接する複数の印字素子が同時に駆動することによって印字素子の正常駆動が行われず脱ドットを生じてしまう場合があるので、駆動する隣接する印字素子を複数同時に駆動しないよう、駆動する印字素子の順番を決めて数回に打ち分けて印刷する。
【0021】
本発明においては、印刷制限による速度低下を生じない連続印刷を行いたい場合、オペレータは操作パネル8によって印刷制限回避モードを設定する。CPU10は上位装置9より送信された印刷データを、印刷制限を行う必要のある印刷データかどうかを監視する。印刷制限を行う必要のある印刷データである場合、印刷制限回避データ加工部15において不揮発性素子16に記憶されている印刷制限を生じないドット密度の印刷データを部分的に置き換える加工を施し、加工した印刷データを用いて印刷を行うことで印刷制限を回避する。
【0022】
例えば、図4に示す印刷密度の高い印刷データにおいて、CPU10はこのような高密度の印刷データ部分をチェックし、この印刷データを不揮発性素子16に記憶されている印刷制限を生じない印刷密度の印刷データに印刷制限回避データ加工部15にて置き換え加工後印刷データに編集する。
【0023】
あるいは、図5に示す横罫線等の連続するドットのある加工前印刷データにおいて、印刷制限は連続するドット数が原因となるので、印刷データの連続するドットを制限値の閾値以下の連続するドットになるように不揮発性素子16に記憶されている印刷制限を生じない横罫線の印刷データに印刷制限回避データ加工部15にて置き換え加工後印刷データに編集する。
【0024】
なお、上述した方法により印刷データを加工すれば、連続印刷において印刷データの印刷品質を損なうことはない。
【0025】
ここで本発明の印刷制御方法に関し、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
上位装置9より送信された印刷データは、CPU10にてドットマトリクス形式に編集され(S2)、編集された印刷データのドット数をカウントして印刷データのドット数を算出し(S3)、この算出したドット数から印刷データのドット密度を算出する(S4)。更にCPU10は、算出したドット密度と印刷密度制限の制限値A(Aは任意の数)とを比較することで印刷密度制限実行の可否を判断する(S5)。
【0027】
(S5)において印刷密度制限による印刷制限が生じる場合、いわゆる「制限あり」の場合は、印刷密度制限回避のため、印刷データが印刷品質を損なわないよう、印刷密度が過密となっている印刷データの部分を不揮発性素子16に記憶されている印刷密度制限を回避できる印刷データに部分的に置き換え、印刷密度制限の制限値以下になるように加工する(S6)。確認のため、加工した印刷データをもう一度ドット数を算出し(S7)、加工された印刷データが制限値Aよりも小さい値で、かつ印刷密度制限が生じるか否かを判断し、加工されたデータが制限値Aを下回るまで繰り返し処理される(S8、S9)。
【0028】
一方、(S5)において、「制限なし」と判断された場合には、罫線印刷制御に直接進む。
【0029】
罫線印刷制限による印刷制限は、連続する罫線印刷データのドット数を算出し(S10)、この算出したドット数と罫線印刷制限の制限値B(Bは任意の数)とを比較することで罫線印刷制限実行の可否が判断できる(S11)。
【0030】
罫線印刷制限による印刷制限が生じる場合、いわゆる「制限あり」の場合は、算出した罫線のドット数から罫線の長さが算出できるので、この長さを変更しないように、不揮発性素子16に記憶されている罫線印刷制限を生じない、罫線印刷データに置き換えて罫線印刷制限の制限値以下になるように加工する(S12)。確認のため、加工した印刷データをもう一度罫線印刷データのドット数を算出し(S13)、加工された印刷データに罫線印刷制限が生じるか否かを確認する(S14)。
【0031】
以上の通り、印刷制御部で印刷データを監視し、印刷制限を行う必要のある印刷データである場合に、印刷データを印刷制限の各設定値以上にならず、かつ本来の印刷データから極端にかけ離れた印刷データにならない程度に加工することにより、印刷速度低下を生じないように印刷を行うことができる。
【0032】
なお、本発明は、連続紙を印刷媒体とし、印刷制限を行う必要のある印刷装置であれば全てに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明で用いるドットラインプリンタの一例を示す概略斜視図。
【図2】本発明の一例となるドットラインプリンタの制御ブロック図。
【図3】本発明の一例のドットラインプリンタの印刷制御のフローチャート。
【図4】本発明で実施する印刷密度制限印刷パターンの一例を示す説明図。
【図5】本発明で実施する罫線印刷制限印刷パターンの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1はハンマバンク、2はインクリボン、3は印刷用紙、4はプラテン機構部、5はシャトル機構部、6は紙送り機構部、7は印刷制御部、8は操作パネル、9は上位装置、10はCPU、11はハンマバンク駆動回路、12はプラテン駆動回路、13はシャトル駆動回路、14は紙送り機構部駆動回路、15は印刷制限回避データ加工部、16は不揮発性素子である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の印字素子を搭載した印刷機構部と、前記ハンマバンクを桁方向に往復移動させるシャトル機構部と、ステッピングモータ等を用いて桁方向と垂直に印刷用紙を間欠的に搬送するための紙送り機構部と、前記ハンマバンクの印字力を支持すると共に前記印字用紙のガイドとなるプラテンと、印刷モード等の印刷仕様の設定を行う操作パネルと、上記各機構部を制御する印刷制御部を有し、印刷データの印刷密度に基づき印刷制限制御を実施するドットラインプリンタにおいて、
前記印刷制限制御が不要と判断された場合には、前記印刷制限制御を行うことを検出した際に、印刷制限を行う制限値内に収まるように印刷データを加工して、印刷制限制御を回避するようにしたことを特徴とするドットラインプリンタの印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−44269(P2008−44269A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223248(P2006−223248)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】