説明

ドナー基板および表示装置の製造方法

【課題】転写層の所望の範囲を精度よく転写することが可能なドナー基板およびこれを用いた表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ドナー基板40は、基体41上に、光吸収層42,断熱層43,凸構造44および汚染防止層45を順に有している。汚染防止層45は、凸構造44の上面の第1部分45Aと、断熱層43の上面の第2部分45Bとを有しており、第1部分45Aと第2部分45Bとが分断されている。汚染防止層45を介した熱拡散が大幅に低減され、転写層50の非所望の範囲が転写されてしまうおそれが小さくなり、所望の範囲が精度よく転写される。凸構造44は逆テーパの断面形状を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子の発光層を転写法により形成するためのドナー基板およびこれを用いた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示装置が盛んに開発されており、駆動用基板に、第1電極、発光層を含む複数の有機層および第2電極を順に積層した有機発光素子(有機EL(Electroluminescence )素子)を用いた有機発光表示装置が注目されている。有機発光表示装置は、自発光型であるので視野角が広く、バックライトを必要としないので省電力が期待でき、応答性が高く、装置の厚みを薄くできるなどの特徴を有している。そのため、テレビ等の大画面表示装置への応用が強く望まれている。
【0003】
このような有機発光表示装置の大型化や生産性向上のため、更に大型のマザーガラスの使用が検討されている。その際、一般的なメタルマスクを用いた発光層の形成方法では、金属シートに開口パターンを設けたメタルマスクを介して発光材料を蒸着または塗布することによりR,G,Bの発光層をパターニングするようにしているので、大型基板に対応してメタルマスクも大型化する必要がある。
【0004】
しかしながら、メタルマスクの大型化により、マスクの自重によるたわみ、搬送の煩雑さが顕著になり、アライメントが難しくなる。そのため、開口率を十分に大きくすることができず、結果的に素子特性も落ちてしまう。
【0005】
そこで、メタルマスクを必要としないパターニング技術として、レーザなどの輻射線を用いた転写法がある。転写法は、支持材に発光材料を含む転写層を形成したドナー要素を形成し、このドナー要素を、有機発光素子を形成するための被転写基板に対向配置し、減圧環境下で輻射線を照射することにより転写層を被転写基板に転写する方法である。輻射線としては、レーザのほか、キセノンフラッシュランプからの光をレンズで集光して用いる場合もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
従来のドナー基板は、例えば、ガラスまたはフィルムよりなる基材の所望の範囲(転写させたい範囲)のみに、クロム(Cr)などよりなる光熱変換層をパターニングしたものである。転写工程では、ドナー基板上に有機材料よりなる転写層を形成し、光熱変換層に対応してレーザ光を部分的に照射し、転写層の所望の範囲のみを被転写基板に転写するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1997−167684号公報(段落0017,0028)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レーザを用いて熱転写する場合、基板サイズが大きくなると処理時間が莫大になり、装置コスト等が増大してしまうという問題があった。そこで、キセノンフラッシュランプやハロゲン赤外ランプなどが、広い面積を一括ないし一筆書きで処理することができ、レーザに代わる輻射線源として有望と考えられている。しかし、従来では、フラッシュランプやハロゲン赤外ランプのような波長の広い輻射線を効率よく吸収することができるドナー基板は開発されておらず、従来のドナー基板を用いた場合には大幅なパワーのロスが生じてしまっていた。
【0009】
また、従来のドナー基板では、基材および光熱変換層の表面は、SiO などよりなる断熱層で覆われており、この断熱層の上に、モリブデン(Mo)などよりなる汚染防止層が形成されていた。そのため、光吸収層の熱が、汚染防止層の面内で、放射的に拡散し、転写層の有機材料が融解して輪郭のダレが生じ、転写層の所望の範囲のみならず、非所望の範囲(転写させたくない範囲)まで転写されてしまっていた。そのため、転写精度の低下や、隣接画素への混色などが生じ、生産性が著しく低下していた。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、波長の広い輻射線を効率よく吸収することが可能なドナー基板およびこれを用いた表示装置の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、転写層の所望の範囲を精度よく転写することが可能なドナー基板およびこれを用いた表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による第1のドナー基板は、発光材料を含む転写層を形成し、前記転写層を被転写基板に対向配置して輻射線を照射し、前記転写層を昇華または気化させて被転写基板に転写することにより発光層を形成するためのものであって、以下の(A)〜(C)の構成要件を備えたものである。
(A)基体
(B)基体上に設けられた光熱変換層
(C)基体および光熱変換層の間に設けられると共に屈折率の異なる2以上の層を有する熱干渉層
【0013】
本発明による第2のドナー基板は、発光材料を含む転写層を形成し、転写層を被転写基板に対向配置して輻射線を照射し、転写層を昇華または気化させて被転写基板に転写することにより発光層を形成するためのものであって、以下の(A)〜(E)の構成要件を備えたものである。
(A)基体
(B)基体上に、被転写基板上の発光層を形成したい領域に対応して設けられた光熱変換層
(C)光熱変換層上および基体上に形成された断熱層
(D)断熱層上に、光熱変換層の間の領域に設けられた凸構造
(E)凸構造の上面に形成された第1部分および断熱層の上面に形成された第2部分を有し、第1部分および第2部分が分断されている汚染防止層
【0014】
本発明による第1または第2の表示装置の製造方法は、駆動用基板に、第1電極、第1電極の発光領域に対応して開口部を有する絶縁層、発光層を含む複数の有機層、および第2電極を順に有する有機発光素子を形成するものであって、駆動用基板に、第1電極、絶縁層、および複数の有機層の一部を形成し、被転写基板を形成する工程と、ドナー基板に発光材料を含む転写層を形成し、転写層を被転写基板に対向配置して輻射線を照射し、転写層を昇華または気化させて被転写基板に転写することにより発光層を形成する工程と、複数の有機層の残部および第2電極を形成する工程とを含み、ドナー基板として、上記本発明の第1または第2のドナー基板を用いるようにしたものである。
【0015】
本発明の第1のドナー基板では、基体および光熱変換層の間に、屈折率の異なる2以上の層を有する熱干渉層が設けられているので、この熱干渉層の反射率を輻射線の発光帯に応じて調整することにより、ドナー基板に照射された輻射線が光熱変換層に吸収されて熱に変換される際の吸収率を高めることが可能となる。
【0016】
本発明の第2のドナー基板では、汚染防止層が、凸構造の上面に形成された第1部分と
、断熱層の上面に形成された第2部分とを有しており、第1部分および第2部分が分断されているので、汚染防止層を介した熱拡散が大幅に低減される。よって、転写層の非所望の範囲が転写されてしまうおそれが小さくなり、所望の範囲が精度よく転写される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1のドナー基板によれば、基体および光熱変換層の間に、屈折率の異なる2以上の層を有する熱干渉層を設けるようにしたので、この熱干渉層の屈折率(材料)および厚みを調整することにより、広い波長範囲において吸収率を高くすることが可能となる。
【0018】
本発明の第2のドナー基板によれば、汚染防止層が、凸構造の上面に形成された第1部分と、断熱層の上面に形成された第2部分とを有するようにすると共に、第1部分および第2部分を分断させるようにしたので、汚染防止層を介した熱拡散を大幅に低減することができ、転写層の所望の範囲を精度よく転写することが可能となる。よって、このドナー基板を用いて有機発光表示装置を製造すれば、マスクを使用することなく発光層を高精度に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した第1電極および絶縁層の構成を表す平面図である。
【図5】図1に示した表示装置の製造方法に用いるドナー基板の構成を表す断面図および平面図である。
【図6】ドナー基板の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図7】図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図8】図4に示したリブの作用を説明するための断面図である。
【図9】従来のドナー基板の一例およびその問題点を説明するための断面図である。
【図10】図7(B)に示した工程の変形例を表す断面図である。
【図11】図5に示したドナー基板の変形例を表す断面図である。
【図12】図11に示したドナー基板を用いた表示装置の製造方法を表す断面図である。
【図13】図12に示した工程の変形例を表す断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るドナー基板の構成を表す断面図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るドナー基板の構成を表す断面図である。
【図16】熱干渉層の吸収スペクトルを表す図である。
【図17】熱干渉層の吸収スペクトルを表す図である。
【図18】熱干渉層の吸収スペクトルを表す図である。
【図19】図15に示したドナー基板を用いた転写工程を表す断面図である。
【図20】輻射線の照射方法の一例を表す平面図である。
【図21】輻射線の照射方法の他の例を表す平面図である。
【図22】図15に示したドナー基板の変形例を表す断面図である。
【図23】比較例1のドナー基板の構成およびその問題点を説明するための断面図である。
【図24】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図25】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図26】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図27】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図28】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図29】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図30】図3に示した表示領域の他の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(輻射線としてレーザ光を用い、ドナー基板に凸構造を設けた例)2.変形例1(凸構造で分割された領域ごとに異なる色の転写層を設ける例)
3.第2の実施の形態(基体と光熱変換層との間に、単層構造の熱干渉層を設けた例)
4.第3の実施の形態(波長の広い輻射線源を用い、熱干渉層を積層構造とした例)
【0021】
(第1の実施の形態)
(表示装置)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、ガラスよりなる駆動用基板11の上に、後述する複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が形成されると共に、この表示領域110の周辺に、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されたものである。
【0022】
表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極13の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0023】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走
査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0024】
図3は、表示領域110の断面構成の一例を表したものである。表示領域110には、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に形成されている。有機発光素子10R,10G,10Bは長方形の平面形状を有し、各色別に長手方向(列方向)に配列されている。なお、隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。画素ピッチは例えば300μmである。
【0025】
有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、駆動用基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタ(図示せず)および平坦化絶縁膜(図示せず)を間にして、陽極としての第1電極13、絶縁層14、後述する赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを含む有機層15、および陰極としての第2電極16がこの順に積層された構成を有している。
【0026】
このような有機発光素子10R,10G,10Bは、窒化ケイ素(SiNx )などの保護膜17により被覆され、更にこの保護膜17上に接着層20を間にしてガラスなどよりなる封止用基板30が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0027】
第1電極13は、例えば、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されている。また、第1電極13は、反射電極により構成してもよい。その場合、第1電極13は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、第1電極13を構成する材料としては、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。
【0028】
絶縁層14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば厚みが1μm程度であり、酸化シリコンまたはポリイミドなどの感光性樹脂により構成されている。絶縁層14には、第1電極13の発光領域13Aに対応して開口部が設けられており、後述するドナー基板40の凸構造44に対応して、駆動用基板11側の凸構造としての機能も有している。なお、有機層15および第2電極16は、発光領域13Aだけでなく絶縁層14の上にも連続して設けられていてもよいが、発光が生じるのは絶縁層14の開口部だけである。
【0029】
図4は、第1電極13および絶縁層14の平面構成の一例を表したものである。絶縁層14は、例えば格子状に設けられている。絶縁層14の上には、第1電極13の発光領域13Aから離れた位置(例えば、絶縁層14の格子の交点部分)に、リブ14Aが設けられている。このリブ14Aは、後述する転写工程においてドナー基板40の凸構造44と絶縁層14との接触を回避するためのものである。そのため、リブ14Aの高さHは凸構造44よりも高いことが望ましく、例えば5μm程度とすることができる。リブ14Aは、例えば、絶縁膜14と同じ材料により構成されている。なお、駆動用基板11には、後述する転写工程においてドナー基板40との位置合わせのためのアライメントマークMが設けられている。
【0030】
図3に示した有機層15は、第1電極13の側から順に、正孔注入層および正孔輸送層15AB,赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CB、並びに電子輸送層および電子注入層15DEを積層した構成を有するが、これらのうち赤色発光
層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CB以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層15は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBへの正孔輸送効率を高めるためのものである。赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子注入層は、例えば厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li Oなどにより構成されている。なお、図4では、正孔注入層および正孔輸送層を一層(正孔注入層および正孔輸送層15AB)、電子輸送層および電子注入層を一層(電子輸送層および電子注入層15DE)として表している。
【0031】
有機発光素子10Rの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの赤色発光層15CRは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6・ビス[4´・メトキシジフェニルアミノ)スチリル]・1,5・ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、8・ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq )により構成されている。
【0032】
有機発光素子10Gの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの緑色発光層15CGは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq により構成されている。
【0033】
有機発光素子10Bの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの青色発光層15CBは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNに4,4´・ビス[2・{4・(N,N・ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq により構成されている。
【0034】
図3に示した第2電極16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。
【0035】
図3に示した保護膜17は、有機層15に水分などが侵入することを防止するためのも
のであり、透過水性および吸水性の低い材料により構成されると共に十分な厚みを有している。また、保護膜17は、発光層15Cで発生した光に対する透過性が高く、例えば80%以上の透過率を有する材料により構成されている。このような保護膜17は、例えば、厚みが2μmないし3μm程度であり、無機アモルファス性の絶縁性材料により構成されている。具体的には、アモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1−x )およびアモルファスカーボン(α−C)が好ましい。これらの無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないので透水性が低く、良好な保護膜17となる。また、保護膜17は、ITOのような透明導電材料により構成されていてもよい。
【0036】
図3に示した接着層20は、例えば熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。
【0037】
図3に示した封止用基板30は、有機発光素子10R,10G,10Bの第2電極16の側に位置しており、接着層20と共に有機発光素子10R,10G,10Bを封止するものであり、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板30には、例えば、カラーフィルタ(図示せず)が設けられており、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっていてもよい。
【0038】
(ドナー基板)
次に、この表示装置の製造方法に用いられるドナー基板について説明する。
【0039】
図5は、ドナー基板の構成を表したものである。ドナー基板40は、転写法により赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成する工程に用いられるものであり、基体41上に、光熱変換層42,断熱層43,凸構造44および汚染防止層45を順に有している。
【0040】
基体41は、後述するように、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを構成する発光材料を含む転写層を形成するためのものであり、後述する被転写基板との位置合わせが可能な堅固さを有すると共に、レーザ光に対する透過性の高い材料、例えばガラスまたはフィルムにより構成されている。
【0041】
光熱変換層42は、レーザ光を吸収して熱に変換するものであり、例えば、モリブデン(Mo),クロム(Cr),チタン(Ti),スズ(Sn)あるいはこれらを含む合金など吸収率の高い金属材料により構成されている。光熱変換層42は、駆動用基板11上の赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成したい領域(発光領域13A)に対応して、例えば幅100μmのストライプ状に形成されている。
【0042】
断熱層43は、光熱変換層42からの熱拡散を抑えるためのものであり、光熱変換層42上および基体41上の全面に形成されている。断熱層43は、例えば、厚みが300nm程度であり、SiO ,SiN,SiON,Al により構成されている。
【0043】
凸構造44は、断熱層43上に、光熱変換層42の間の領域にストライプ状に設けられ、例えばポリイミドまたはアクリル樹脂により構成されている。
【0044】
汚染防止層45は、転写層の所望の範囲以外の領域に照射されたレーザ光を反射することにより、被転写基板上の既に形成された有機層15や画素駆動回路140を保護するためのものであり、例えば、450nmから1500nmの波長域において、85%以上の
反射率を有することが望ましい。反射率が低いと汚染防止層45が光を吸収して熱をもってしまうおそれがあるからである。汚染防止層45の構成材料としては、例えば、モリブデン(Mo),クロム(Cr),チタン(Ti),スズ(Sn)あるいはこれらを含む合金などの金属材料が挙げられる。
【0045】
汚染防止層45は、凸構造44の上面に形成された第1部分45Aと、断熱層43の上面に形成された第2部分45Bとを有しており、第1部分45Aおよび第2部分45Bとは分断されている。これにより、このドナー基板40では、転写層の所望の範囲を精度よく転写することができるようになっている。
【0046】
すなわち、凸構造44は、汚染防止層45の第1部分45Aおよび第2部分45Bを分断させることにより、汚染防止層45を介した熱拡散を低減する熱拡散防止部としての機能を有している。そのため、凸構造44は、上面の幅W1よりも下面の幅W2が狭い逆テーパの断面形状を有することが好ましい。汚染防止層45の成膜時に、リソグラフィ工程なしに、第1部分45Aおよび第2部分45Bを確実に分断させることができるからである。また、転写層をインクジェット法により形成する場合には、液滴が凸構造44の外に漏れてしまうのを抑えることができる。具体的には、凸構造44の側面が基体41の平坦面に対してなす傾斜角αは、75度以上140度以下であることが好ましい。
【0047】
また、凸構造44は、0.3μm以上10μm以下の高さを有することが好ましい。光熱変換層42と汚染防止層45の第1部分45Aとの間の距離を長くすることによって断熱層43および凸構造44自体を介した熱拡散を小さくすることができるからである。
【0048】
更に、汚染防止層45の厚みが25nm以上500nm以下であることが好ましい。25nm未満では、レーザ光が透過してしまい、十分な効果が得られなくなり、500nmよりも厚いと、汚染防止層45の成膜時に、第1部分45Aおよび第2部分45Bを確実に分断させることが難しくなるからである。
【0049】
このドナー基板40は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0050】
まず、図6(A)に示したように、上述した材料よりなる基体41上に、例えばスパッタリング法により、上述した材料よりなる光熱変換層42を形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。次いで、図6(B)に示したように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法により、上述した材料よりなる断熱層43を形成する。
【0051】
続いて、同じく図6(B)に示したように、基体41の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により所定の形状に成形し、焼成することにより、凸構造44を形成する。その際、凸構造44の高さを例えば3μmとし、逆テーパの断面形状となるように形成する。
【0052】
そののち、例えばスパッタリング法により、上述した材料よりなる汚染防止層45を、例えば150nmの厚みで形成する。このとき、汚染防止層45は、凸構造44の側面で途切れ、凸構造44の上面に形成された第1部分45Aと、断熱層43の上面に形成された第2部分45Bとは分断される。よって、フォトリソグラフィなどのパターニング工程は不要である。以上により、図5に示したドナー基板40が形成される。
【0053】
(表示装置の製造方法)
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0054】
まず、駆動用基板11に、第1電極13、絶縁層14および正孔注入層および正孔輸送層15ABを形成し、被転写基板11Aを形成する。
【0055】
すなわち、上述した材料よりなる駆動用基板11を用意し、この駆動用基板11の上に画素駆動回路140を形成したのち、全面に感光性樹脂を塗布することにより平坦化絶縁膜(図示せず)を形成し、露光および現像により所定の形状にパターニングすると共に、駆動トランジスタTr1と第1電極13との接続孔(図示せず)を形成し、焼成する。
【0056】
次いで、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第1電極13を形成し、例えばドライエッチングにより所定の形状に成形する。なお、駆動用基板11の所定の位置には、後述する転写工程においてドナー基板との位置合わせに使用するアライメントマークを形成してもよい。
【0057】
続いて、駆動用基板11の全面にわたり絶縁層14を形成し、例えばフォトリソグラフィ法により、第1電極13の発光領域13Aに対応して開口部を設ける。
【0058】
そののち、絶縁層14の上に、第1電極13の発光領域13Aから離れた位置(例えば、絶縁層14の格子の交点部分)に、上述した高さおよび材料よりなるリブ14Aを設ける。
【0059】
そののち、例えばエリアマスクを用いた蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる正孔注入層および正孔輸送層15ABを順次成膜する。これにより、被転写基板11Aが形成される。
【0060】
被転写基板11Aを形成したのち、上述したドナー基板40を複数用意し、例えば真空蒸着法により、図7(A)に示したように、各ドナー基板40に赤色,緑色または青色のいずれかの転写層50を形成する。
【0061】
次いで、ドナー基板40を用いた転写法により赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成する。すなわち、図7(B)に示したように、例えば赤色発光層15CRを形成するため、ドナー基板40の転写層50を被転写基板11Aに対向配置する。その際、被転写基板11Aの絶縁膜14上にリブ14A(図4参照。)が設けられているので、ドナー基板40の凸構造44と絶縁層14との間に空間Gが形成され、図8に示したように両者が接触することはない。よって、両者の接触により成膜後の有機層15に段差が生じることを抑え、発光スジなどの画質低下を防止することができる。
【0062】
続いて、同じく図7(A)に示したように、ドナー基板40の裏面側からレーザ光LBを照射し、転写層50を昇華または気化させて被転写基板11Aに転写することにより赤色発光層15CRを形成する。ここでは、汚染防止層45が、凸構造44の上面に形成された第1部分45Aと、断熱層43の上面に形成された第2部分45Bとを有しており、第1部分45Aおよび第2部分45Bが分断されているので、汚染防止層45を介した熱拡散が大幅に低減される。よって、転写層50の非所望の範囲が転写されてしまうおそれが小さくなり、所望の範囲が精度よく転写される。
【0063】
これに対して、従来のドナー基板では、図9(A)に示したように、汚染防止層845が断熱層844の全面に連続して形成されていたので、図9(B)において矢印A1で示したように、光熱変換層842からの熱が、汚染防止層845面内で、放射的に拡散していた。そのため、転写層850の有機材料が融解して輪郭のダレが生じ、転写層850の所望の範囲852のみならず、非所望の範囲(転写させたくない範囲)851まで転写さ
れてしまい、転写精度の低下や、隣接画素への混色などが生じ、生産性が著しく低下していた。なお、図9では、図5および図7と同一の構成要素には800番台の符号を付して表している。
【0064】
なお、図10に示したように、ドナー基板40の裏側全面にレーザ光LBを照射するようにしてもよい。この場合、光熱変換層42が形成されていない領域では、矢印A4で示したように、レーザ光LBが汚染防止層45で反射されるので、転写層50の非所望の範囲51は転写されない。一方、光熱変換層42が形成された領域では、レーザ光LBが光熱変換層42に吸収され、転写層50の所望の範囲52のみが被転写基板11Aに転写される。
【0065】
そののち、赤色発光層15CRと同様にして、緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成する。
【0066】
赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成したのち、ドナー基板40と被転写基板11Aとを分離する。被転写基板11Aには、例えば蒸着により、電子輸送層および電子注入層15DE、並びに第2電極16を形成する。このようにして、有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。一方、使用済みのドナー基板40は、転写層50の残りを洗浄・除去し、ドライプロセスまたはウェットプロセスにより汚染防止層45を剥離したのち、繰り返し使用が可能である。
【0067】
有機発光素子10R,10G,10Bを形成したのち、これらの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。保護膜17の形成方法は、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法またはCVD法が好ましい。また、保護膜17は、第2電極16を大気に暴露することなく、第2電極16の形成と連続して行うことが望ましい。大気中の水分や酸素により有機層15が劣化してしまうのを抑制することができるからである。更に、有機層15の劣化による輝度の低下を防止するため、保護膜17の成膜温度は常温に設定すると共に、保護膜17の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0068】
そののち、保護膜17の上に、接着層20を形成し、この接着層20を間にして、カラーフィルタを設けた封止用基板30を貼り合わせる。その際、封止用基板30のカラーフィルタを形成した面を、有機発光素子10R,10G,10B側にして配置することが好ましい。以上により、図1に示した表示装置が完成する。
【0069】
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第2電極16,カラーフィルタおよび封止用基板30を透過して取り出される。
【0070】
このように本実施の形態では、汚染防止層45が、凸構造44の上面に形成された第1部分45Aと、断熱層43の上面に形成された第2部分45Bとを有するようにすると共に、第1部分45Aおよび第2部分45Bを分断させるようにしたので、汚染防止層45を介した熱拡散を大幅に低減することができ、転写層50の所望の範囲を精度よく転写することが可能となる。よって、このドナー基板40を用いて有機発光表示装置を製造すれば、マスクを使用することなく赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを高精度に形成することが可能となる。
【0071】
(変形例1)
図11は、本発明の変形例1に係るドナー基板40の構成を表したものである。本変形例のドナー基板40Aは、凸構造44で分割された領域ごとに光熱変換層42を設けたものであり、これにより、各領域に異なる色の発光材料を含む転写層を形成し、転写回数を削減することができるようになっている。このことを除いては、上記実施の形態と同様の構成を有している。
【0072】
本変形例のドナー基板40Aは、凸構造44で分割される領域ごとに光熱変換層42を設けることを除いては、上記実施の形態と同様にして製造することができる。
【0073】
次に、本変形例のドナー基板40Aを用いた表示装置の製造方法について説明する。
【0074】
まず、上記実施の形態と同様にして、駆動用基板11に、第1電極13、絶縁層14および正孔注入層および正孔輸送層15ABを形成し、被転写基板11Aを形成する。
【0075】
次いで、図12に示したように、例えばインクジェット法により、凸構造42で分割された領域ごとに異なる色の発光材料を含む赤色転写層50R,緑色転写層50Gおよび青色転写層50Bを形成する。
【0076】
続いて、同じく図12に示したように、レーザ光LBを照射することにより、一回の転写で被転写基板11Aに赤色発光層15CR,緑色発光層15CG,青色発光層15CBをすべて形成することができる。よって、発光材料の使用効率を向上させることができ、ランニングコストを削減することが可能となる。また、転写回数を削減することができ、製造装置のコストを低減すると共に生産能力も高めることができる。
【0077】
なお、図13に示したように、ドナー基板40Aの裏面全面にレーザ光LBを照射するようにしてもよい。
【0078】
赤色発光層15CR,緑色発光層15CG,青色発光層15CBを形成したのち、ドナー基板40と被転写基板11Aとを分離する。被転写基板11Aには、上記実施の形態と同様にして、例えば蒸着により、電子輸送層および電子注入層15DE、並びに第2電極16を形成する。このようにして、有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。
【0079】
有機発光素子10R,10G,10Bを形成したのち、上記実施の形態と同様にして、これらの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。そののち、保護膜17の上に、接着層20を形成し、この接着層20を間にして、カラーフィルタを形成した封止用基板30を貼り合わせる。以上により、図1に示した表示装置が完成する。
【0080】
(第2の実施の形態)
図14は、本発明の第2の実施の形態に係るドナー基板40Bの構成を表したものである。このドナー基板40Bは、基体41および光熱変換層42の間に熱干渉層46を設けたことを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
基体41、光熱変換層42、断熱層43、凸構造44および汚染防止層45は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0082】
熱干渉層46は、光熱変換層42によるレーザ光LBの吸収率を高めるためのものであり、例えば、厚みが15nm以上80nm以下であり、a−Siにより構成されている。
光熱変換層42および熱干渉層46は、被転写基板11A上の赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成したい領域(発光領域13A)に対応して設けられている。
【0083】
このドナー基板40Bは、基体41の上に上述した厚みおよび材料よりなる熱干渉層46および光熱変換層42を連続して形成したのち、これらを所定の形状に成形することを除いては、上記第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0084】
このドナー基板40Bは、第1の実施の形態と同様にして表示装置の製造に用いることができる。その際、ドナー基板40Bには、基体41および光熱変換層42の間に熱干渉層46が設けられているので、図7(B)に示した転写工程において、光熱変換層42によるレーザ光LBの吸収率が高くなり、損失が抑えられる。また、低パワーのレーザ光LBを用いることが可能となる
【0085】
このように本実施の形態では、基体41および光熱変換層42の間に熱干渉層46を設けるようにしたので、光熱変換層42によるレーザ光LBの吸収率を高め、損失を抑えると共に、低パワーのレーザ光LBを用いることが可能となる。
【0086】
(第3の実施の形態)
図15は、本発明の第3の実施の形態に係るドナー基板40Cの構成を表したものである。このドナー基板40Cは、熱干渉層46を屈折率の異なる2以上の層の積層構造としたこと、および、凸構造44を設けないことを除いては、上記第1および第2の実施の形態と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0087】
基体41、光熱変換層42および断熱層43は、上記第1および第2の実施の形態と同様に構成されている。
【0088】
熱干渉層46は、上述したように屈折率の異なる2以上の層を有している。具体的には、熱干渉層46は、例えば基体41側から順に、SiO ,SiN,SiONまたはAl により構成され、厚みが50nm以上200nm以下の第1干渉層46Aと、a−Siにより構成され、厚みが15nm以上80nm以下の第2干渉層46Bとを有している。これにより、このドナー基板40Cでは、キセノンないしクリプトン等のフラッシュランプ、ビーム状ハロゲンランプなどの波長の広い輻射線を効率よく吸収することができるようになっている。
【0089】
熱干渉層46の2以上の層(例えば、第1干渉層46Aおよび第2干渉層46B)の屈折率および厚みは、輻射線の発光帯のうち連続した100nm以上の波長領域において反射率が0.1以下になるように調整される。図16は、熱干渉層46が、SiO よりなる厚み100nmの第1干渉層46Aと、a−Siよりなる厚みが15nmの第2干渉層46Bとを有する場合の吸収スペクトルを、第1干渉層46Aがない(第2干渉層46Bの単層構造とした)場合と比較して表したものである。なお、反射率は、一般的な光学多層薄膜における反射率計算方法により求めたものである(例えば、Principles of Optics, Max Born and Emil Wolf, 1974 (PERGAMON PRESS) 等参照)。図16からは、熱干渉層46を、第1干渉層46Aおよび第2干渉層46Bの積層構造とした場合には、第1干渉層46Aがない場合に比べて広範囲の波長域で吸収率が高くなっていることが分かる。
【0090】
図17は、第2干渉層46Bの厚みを15nm、35nmと異ならせた場合の吸収スペクトルを表したものである。また、図18は、第1干渉層46Aの厚みを200nm、100nmと異ならせた場合の吸収スペクトルを表したものである。図16ないし図18か
ら、第1干渉層46A,第2干渉層46Bの厚みを変えることにより吸収スペクトルを変化させることができることが分かる。
【0091】
このように熱干渉層46の構成を、使用する輻射線の発光スペクトルに合わせて最大の吸収になるように最適化することが可能である。例えば、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ等の輻射線は主に400nm〜1000nm付近に発光帯がある。よって、図17から、熱干渉層46を、SiO よりなる厚み100nmの第1干渉層46Aと、a−Siよりなる厚みが15nmの第2干渉層46Bとの積層構造とすれば、上記の発光帯のうち連続した100nm以上の波長領域で透過率を0.1以下とすることができることが分かる。なお、この場合、第1干渉層46Aの厚みを50nm以上100nm以下、第2干渉層46Bの厚みを15nm以上22nm以下とすれば、図17と同等の効果が得られる。
【0092】
また、例えば、ハロゲンランプ等の赤外線輻射熱は色温度によって主に900nm〜1600nm付近に発光ピークを有する。よって、図18から、熱干渉層46を、SiO よりなる厚み200nmの第1干渉層46Aと、a−Siよりなる厚みが35nmの第2干渉層46Bとの積層構造とすれば、上記の発光帯のうち連続した100nm以上の波長領域で透過率を0.1以下とすることができることが分かる。なお、この場合、第1干渉層46Aの厚みを150nm以上250nm以下、第2干渉層46Bの厚みを35nm以上80nm以下とすれば、図18と同等の効果が得られる。
【0093】
また、このドナー基板40Cは、熱干渉層46を積層構造としたことにより、凸構造44を設ける必要をなくすことができ、汚染防止層45は、断熱層43の表面に連続して形成されている。よって、ドナー基板40の構成および製造方法をより簡素化することが可能となる。
【0094】
このドナー基板40Cは、基体41の上に上述した厚みおよび材料よりなる第1干渉層46A,第2干渉層46Bおよび光熱変換層42を連続して形成したのち、これらを所定の形状に成形することを除いては、上記第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0095】
このドナー基板40Cは、例えば次のようにして表示装置の製造方法に用いることができる。
【0096】
まず、第1の実施の形態と同様にして、駆動用基板11に、第1電極13、絶縁層14および正孔注入層および正孔輸送層15ABを形成し、被転写基板11Aを形成する。
【0097】
次いで、ドナー基板40Cを複数用意し、例えば真空蒸着法により、各ドナー基板40Cに赤色,緑色または青色のいずれかの転写層50を形成する。
【0098】
続いて、ドナー基板40Cを用いた転写法により赤色発光層15CR,緑色発光層15CGまたは青色発光層15CBを形成する。すなわち、図19に示したように、例えば赤色発光層15CRを形成するため、ドナー基板40Cの転写層50を被転写基板11Aに対向配置する。その際、第1の実施の形態と同様に、被転写基板11Aの絶縁膜14上にリブ14A(図4参照。)が設けられているので、ドナー基板40Cと絶縁層14との間に空間Gが形成され、図8に示したように両者が接触することはない。よって、両者の接触により成膜後の有機層15に段差が生じることを抑え、発光スジなどの画質低下を防止することができる。
【0099】
続いて、同じく図19に示したように、ドナー基板40の裏面側から輻射線Rを照射し
、転写層50を昇華または気化させて被転写基板11Aに転写することにより赤色発光層15CRを形成する。その際、図20に示したように、輻射線Rとしてキセノンフラッシュランプを使用し、面描写してもよいし、図21に示したように、輻射線Rとしてハロゲンランプを光学系で集光したラインビームRBとして使用し、ラインビームRBを矢印A5方向に移動させてライン描写するようにしてもよい。
【0100】
ここでは、熱干渉層46が、屈折率の異なる第1干渉層46Aと第2干渉層46Bとを有しているので、この熱干渉層46の反射率を輻射線Rの発光帯に応じて調整することにより、ドナー基板40Cに照射された輻射線Rが光熱変換層42に吸収されて熱に変換される際の吸収率を高めることが可能となる。よって、波長の広い輻射線Rが効率よく吸収され、損失が抑えられる。また、転写に用いるパワーが大幅に低減される。
【0101】
また、このとき、輻射線Rは熱干渉層46により効率的に吸収されるので、汚染防止層45が凸構造44により分断されていなくても、汚染防止層45内の熱拡散は低減され、高精度の転写が可能である。
【0102】
このように本実施の形態では、熱干渉層46を、屈折率の異なる第1干渉層46Aと第2干渉層46Bとの積層構造とするようにしたので、波長の広い輻射線Rの吸収率を高め、損失を抑えると共に、転写に用いるパワーを大幅に低減することが可能となる。
【0103】
なお、上記実施の形態では、凸構造44を設けないで、汚染防止層45を、断熱層43の表面に連続して形成するようにした場合について説明したが、図22に示したように、断熱層43上に凸構造44を形成し、汚染防止層45の第1部分45Aおよび第2部分45Bを凸構造44により分断するようにしてもよい。
【実施例】
【0104】
更に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0105】
(実施例1)
上記第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。まず、ガラスよりなる駆動用基板11に、ITOよりなる第1電極13、ポリイミドよりなる厚み1μmの絶縁層14、ポリイミドよりなる高さ5μmのリブ14A、並びに正孔注入層および正孔輸送層15ABを形成し、被転写基板11Aを形成した。正孔注入層および正孔輸送層15ABは、蒸着法により形成し、正孔注入層は厚み25nmのm−MTDATA、正孔輸送層は厚み30nmのα−NPDとした。
【0106】
次いで、ドナー基板40を作製した(図5参照。)。ガラスよりなる基体41に、スパッタリング法により、クロム(Cr)よりなる光熱変換層42を200nmの厚みで形成し、例えばフォトリソグラフィ法により、幅100μmのストライプ状に成形した。次いで、CVD法により、SiO よりなる断熱層43を300nmの厚みで形成した。続いて、上述した材料よりなる凸構造44を3μmの厚みで形成し、フォトリソグラフィ法により、ストライプ状に成形すると共に逆テーパ形の断面形状とした。
【0107】
そののち、モリブデン(Mo)よりなる汚染防止層45を150nmの厚みで形成した。
【0108】
このドナー基板40に、蒸着法により、転写層50を25nmの厚みで形成した(図7(A)参照。)。
【0109】
続いて、ドナー基板40を被転写基板11Aの上に配置した(図7(B)参照。)。両
基板間には、リブ14Aの高さ5μmと凸構造44の高さ3μmとの差に相当する約2μmの空間Gが維持されていた。この状態で、ドナー基板40の裏面側から、波長800nmのレーザ光LBを照射し、転写層50を被転写基板11Aに転写した(図7(B)参照。)。レーザ光LBのスポットサイズは100μm×20μmに固定し、スポットサイズの長手方向に直交する方向においてレーザ光LBを走査した(刈幅100μm)。
【0110】
以上を繰り返して、赤色発光層15C,緑色発光層15Gおよび青色発光層15Bを形成したのち、蒸着により、電子輸送層および電子注入層15DE、並びに第2電極16を形成した。電子輸送層は、厚み20nmのAlq、電子注入層は厚み0.3nmのLiF(蒸着速度〜0.01nm/sec)とした。第2電極16は、厚み10nmのMgAgとした。そののち、保護膜17および接着層20を形成し、封止用基板30を貼り合わせて表示装置を構成した。
【0111】
比較例1として、図23(A)に示したような、光熱変換層842と断熱層843との間に、アルミニウム(Al)よりなる反射層846を全面に設けたドナー基板840を形成し、これを用いて上記実施例1と同様にして表示装置を作製した。その際、反射層847は、アルミニウム(Al)により構成し、厚みを100nmとした。
【0112】
得られた実施例1および比較例1の表示装置について、発光状態を目視で確認したところ、実施例1では隣接画素への混色は認められなかったが、比較例1では、隣接画素への混色が認められた。また、実施例1および比較例1のそれぞれについて、転写された発光層の幅を調べた。その結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1から分かるように、レーザ光のスポットサイズの長辺(刈幅)を100μmとして照射し、転写された発光層の幅は、実施例1では105μmであったのに対して、比較例1では122μmとなっており、実施例1では比較例1に比べて転写精度が大幅に向上していた。
【0115】
この理由は以下のように考えられる。図23(A)に示した比較例1のドナー基板840では、レーザ光LBを全面に照射すると、光熱変換層842が形成されていない領域では、図23(B)において矢印A2で示したように、レーザ光LBが反射層846で反射される。一方、光熱変換層842が形成された領域では、レーザ光LBが光熱変換層842に吸収され、転写層846の所望の範囲852のみが被転写基板に転写される。しかしながら、比較例1のドナー基板840では、矢印A3で示したように、反射層846内で熱伝導が生じてしまった。そのため、転写層850の有機材料が融解して輪郭のダレが生じ、転写層850の所望の範囲852のみならず、非所望の範囲(転写させたくない範囲)851まで転写されてしまい、転写精度の低下や、隣接画素への混色などが生じた。
【0116】
すなわち、汚染防止層45が、凸構造44の上面に形成された第1部分45Aと、断熱層43の上面に形成された第2部分45Bとを有するようにすると共に、第1部分45Aおよび第2部分45Bを分断させるようにすれば、汚染防止層45を介した熱拡散を大幅に低減することができ、転写層50の所望の範囲を精度よく転写することが可能となることが分かった。
【0117】
(実施例2,3)
上記第3の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、実施例2では、輻射線Rとしてキセノンフラッシュランプを使用し、図20に示したような面描写により転写工程を行った。ドナー基板40Cの構成は、以下のようにした。
基体41:ガラス
熱干渉層46:SiO よりなる厚み100nmの第1干渉層46Aと、a−Siよりなる厚みが15nmの第2干渉層46Bとの積層構造
光熱変換層42:チタン(Ti)、厚み200nm
断熱層43:SiO 、厚み300nm
汚染防止層45:アルミニウム(Al)、厚み50nm
【0118】
実施例3では、輻射線Rとしてハロゲンランプを光学系で集光したラインビームRBとして使用し、図21に示したようなライン描写により転写工程を行った。ドナー基板40Cの構成は、以下のようにした。
基体41:ガラス
熱干渉層46:SiO よりなる厚み200nmの第1干渉層46Aと、a−Siよりなる厚みが35nmの第2干渉層46Bとの積層構造
光熱変換層42:チタン(Ti)、厚み200nm
断熱層43:SiO 、厚み300nm
汚染防止層45:アルミニウム(Al)、厚み50nm
【0119】
比較例2,3として、ドナー基板に第1干渉層を設けなかった(第2干渉層のみの単層構造)ことを除いては、実施例2,3と同様にして表示装置を作製した。
【0120】
実施例2,3および比較例2,3で使用した輻射線Rの照射パワーを調べた。結果を表2および表3に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
表2および表3から分かるように、熱干渉層46を屈折率の異なる第1干渉層46Aと第2干渉層46Bとの積層構造とした実施例2,3では、第1干渉層を設けなかった比較例2,3に比べて照射パワーが大幅に低減された。すなわち、熱干渉層46を、屈折率の異なる第1干渉層46Aと第2干渉層46Bとの積層構造とすれば、転写に必要なパワーの大幅な低減が可能となることが分かった。
【0124】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した各実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記各実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0125】
(モジュール)
上記各実施の形態の表示装置は、例えば、図24に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、被転写基板11の一辺に、封止用基板30および接着層20から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0126】
(適用例1)
図25は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0127】
(適用例2)
図26は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0128】
(適用例3)
図27は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体51
0,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0129】
(適用例4)
図28は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0130】
(適用例5)
図29は、上記各実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0131】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、転写工程でレーザ光、またはフラッシュランプなどの輻射線を照射する場合について説明したが、例えばヒートバー,サーマルヘッドなど他の光源を用いて輻射線を照射するようにしてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態では、R,G,Bすべての発光層15Cを転写法により形成する場合について説明したが、図30に示したように、赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGのみを転写法により形成したのち、青色発光層15CBを蒸着法により全面成膜するようにしてもよい。このとき、有機発光素子10Rでは、赤色発光層15CRと、青色発光層15CBとが形成されているが、最もエネルギー準位の低い赤色にエネルギー移動が起こり、赤色発光が支配的となる。有機発光素子10Gでは、緑色発光層15CGと、青色発光層15CBとが形成されているが、よりエネルギー準位の低い緑色にエネルギー移動が起こり、緑色発光が支配的となる。有機発光素子10Bでは、青色発光層15CBのみを有するので、青色発光が生じる。
【0133】
更に、例えば、上記実施の形態および実施例において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法,成膜条件およびレーザ光の照射条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法,成膜条件および照射条件としてもよい。例えば、第1電極13は、誘電体多層膜を有するようにすることもできる。
【0134】
加えて、例えば、上記実施の形態においては、駆動用基板11の上に、第1電極13,有機層15および第2電極16を駆動用基板11の側から順に積層し、封止用基板30の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、積層順序を逆にして、駆動用基板11の上に、第2電極16,有機層15および第1電極13を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0135】
更にまた、例えば、上記実施の形態では、第1電極13を陽極、第2電極16を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極13を陰極、第2電極16を陽極としてもよい。さらに、第1電極13を陰極、第2電極16を陽極とすると共に、駆動用基板11の上に、第2電極16,有機層15および第1電極13を被転写基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもでき
る。
【0136】
加えてまた、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば、第1電極13と有機層15との間に、酸化クロム(III)(Cr ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【0137】
更にまた、上記実施の形態では、第2電極16が半透過性電極により構成され、発光層15Cで発生した光を第2電極16の側から取り出す場合について説明したが、発生した光を第1電極13の側から取り出すようにしてもよい。この場合、第2電極16はできるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。
【0138】
加えてまた、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…画素、10R,10G,10B…有機発光素子、11…駆動用基板、11A…被転写基板、13…第1電極、14…絶縁層、15…有機層、15AB…正孔注入層および正孔輸送層、15C…発光層、15DE…電子輸送層および電子注入層、16…第2電極、17…保護膜、20…接着層、30…封止用基板、40…ドナー基板、41…基体、42…光熱変換層、43…断熱層、44…凸構造、45…汚染防止層、46…熱干渉層、46A…第1干渉層、46B…第2干渉層、50…転写層、50R…赤色転写層、50G…緑色転写層、50B…青色転写層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光材料を含む転写層を形成し、前記転写層を被転写基板に対向配置して輻射線を照射し、前記転写層を昇華または気化させて被転写基板に転写することにより発光層を形成するためのドナー基板であって、
基体と、
前記基体上に、前記被転写基板上の前記発光層を形成したい領域に対応して設けられた光熱変換層と、
前記光熱変換層上および前記基体上に形成された断熱層と、
前記断熱層上に、前記光熱変換層の間の領域に設けられた凸構造と、
前記凸構造の上面に形成された第1部分および前記断熱層の上面に形成された第2部分を有し、前記第1部分および前記第2部分が分断されている汚染防止層と
を備えたドナー基板。
【請求項2】
前記凸構造は、上面の幅よりも下面の幅が狭い逆テーパの断面形状を有する
請求項1記載のドナー基板。
【請求項3】
前記凸構造は、0.3μm以上10μm以下の高さを有する
請求項2記載のドナー基板。
【請求項4】
前記汚染防止層の厚みが25nm以上500nm以下である
請求項3記載のドナー基板。
【請求項5】
前記基体および前記光熱変換層の間に熱干渉層を有する
請求項4記載のドナー基板。
【請求項6】
駆動用基板に、第1電極、前記第1電極の発光領域に対応して開口部を有する絶縁層、発光層を含む複数の有機層、および第2電極を順に有する有機発光素子を形成する表示装置の製造方法であって、
前記駆動用基板に、前記第1電極、前記絶縁層、および前記複数の有機層の一部を形成し、被転写基板を形成する工程と、
ドナー基板に発光材料を含む転写層を形成し、前記転写層を前記被転写基板に対向配置して輻射線を照射し、前記転写層を昇華または気化させて被転写基板に転写することにより発光層を形成する工程と、
前記複数の有機層の残部および第2電極を形成する工程と
を含み、
前記ドナー基板として、
基体と、
前記基体上に、前記被転写基板上の前記発光層を形成したい領域に対応して設けられた光熱変換層と、
前記光熱変換層上および前記基体上に形成された断熱層と、
前記断熱層上に、前記光熱変換層の間の領域に設けられた凸構造と、
前記凸構造の上面に形成された第1部分および前記断熱層の上面に形成された第2部分を有し、前記第1部分および前記第2部分が分断されている汚染防止層と
を備えたものを用いる表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記凸構造は、上面の幅よりも下面の幅が狭い逆テーパの断面形状を有する
請求項6記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記凸構造は、0.3μm以上10μm以下の高さを有する
請求項7記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記汚染防止層の厚みが25nm以上500nm以下である
請求項8記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記基体および前記光熱変換層の間に熱干渉層を有する
請求項9記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記基体上の前記凸構造により分割された領域ごとに異なる色の発光材料を含む転写層を形成し、一回の転写で前記被転写基板に2色以上の前記発光層を形成する
請求項6ないし10のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−199095(P2010−199095A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136184(P2010−136184)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2008−313105(P2008−313105)の分割
【原出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】