説明

ドライクリーナの定置洗浄方法

【課題】被洗物の乾燥時間の短縮などの作業効率を向上させることができるドライクリーナの定置洗浄方法を提供する。
【解決手段】
外胴3の内側に配設した回転自在な内胴2内に入れた被洗物を溶剤で洗濯するドライクリーナにおいて、外胴の内面を洗浄するために外胴内に入れる溶剤4を、被洗物を洗濯する際の溶剤の液位よりも高液位に設定するとともに、
内胴の回転速度を、被洗物の洗濯時よりも速くして、溶剤を内胴の回転により連れ回して内胴、外胴の頂部に至らせ、そこで溶剤を落下・飛散させて外胴内面に付着する汚れ等の固形物を流し落とす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーナの外胴の内面に付着して除去することが困難な汚れ等の固着物を除去することができる洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライクリーナとしては、石油系溶剤を使用する石油系ドライクリーナと、テトラクロロエチレン、フロン溶剤、ペンタフルオルブタン等の合成溶剤を使用する合成溶剤系ドライクリーナとが存在している。
この内、石油系ドライクリーナにおいては、一般的に被洗物を洗浄・脱液した後、専用の乾燥機で乾燥、脱臭、仕上げするのに対し、合成溶剤系ドライクリーナにあっては、被洗物に対する洗浄、脱液、乾燥、脱臭の一連の工程について、下記の手順により1台の装置で行っている。
【0003】
(1)洗浄工程:溶剤を貯留するベースタンクから溶剤が、カートリッジフィルタを通じて被洗物を入れた内胴・外胴内に送られ、そして内胴が回転して被洗物の洗浄が行われる。
(2)脱液工程:被洗物の洗浄が完了すると、内胴・外胴内の溶剤は排出され、ボタンなどの固形物を除去するためのボタントラップを経て、ポンプによりスチルタンク、スチルコンデンサー、水分分離器に送られて蒸留、浄化された後、新液タンクに回収される。
(3)乾燥工程:内胴・外胴内に送り込まれる加熱空気は、内部の溶剤を蒸発させ、この溶剤を含んだ空気はリントボックスでリントを除去され、ファンにより一次コンデンサー・低温コンデンサーヒータに送られて冷却凝縮液化して溶剤が回収され、この溶剤が除去された空気は再び内胴・外胴内に送られて、これら一連の作業を繰り返す。
(4)脱臭工程:内胴・外胴内に外気を導入し、その空気を活性炭槽を通過させて臭気を除去して排気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−24178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した合成溶剤を用いるドライクリーナにあっては、溶剤中に液状洗剤を投入して被洗物を洗浄するものであって、図4に示すごとく、洗浄・脱液後に外胴11の内面前方や内面後方に、洗剤分と被洗物からのリントや埃が一体となった粘着性の固形物12が付着し、これが乾燥工程において乾燥することにより強固に固着することとなっていた。
そして、この一連の工程が何十回と繰り返し行われると、図4に示すごとく、固形物12が徐々に増大していき、ある程度大きくなったところで被洗物の洗浄中に振動等により剥がれ落ちることがあった。そして、この剥がれ落ちた汚れ等の固形物12が、洗浄した被洗物を逆汚染するおそれがあった。
【0006】
そこで、固形物12が外胴11内面に堆積しないように、被洗物の洗浄開始時に、外胴11内面に溶剤を噴射することにより、固形物12の固着防止を図る装置も案出されているものの、装置が大掛かりになることに加えて、その割には外胴11内面をきれいに掃除することはできなかった。その原因の一つとしては、固形物12が付着する外胴11内面と内胴13外面との隙間が、図4に示すごとく、数センチメートル以下という狭い領域であることから、掃除するための器具を入れたり、手作業で掃除したりすることができない構造にあった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、合成溶剤を用いるドライクリーナにおいて、外胴内面に付着する汚れ等の固形物を簡単な方法で除去して清潔さを維持することができるドライクリーナの定置洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、ドライクリーナに新たな装置を取り付けることなく、簡単な方法で外胴内面に付着する汚れ等の固形物を除去することができるドライクリーナの定置洗浄方法を案出するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のドライクリーナの定置洗浄方法は、外胴の内側に配設した回転自在な内胴内に入れた被洗物を溶剤で洗濯するドライクリーナにおいて、外胴の内面を洗浄するために外胴内に入れる洗浄液を、被洗物を洗濯する際の溶剤の液位よりも高液位に設定するとともに、前記内胴の回転速度を、前記洗浄液が前記内胴の回転により連れ回されて内胴、外胴の頂部に達するほどに被洗物の洗濯時よりも速くして、前記洗浄液を前記内胴、外胴の頂部で落下・飛散させて前記外胴内面に付着する汚れ等の固形物を流し落とすことを特徴とするものである。
【0010】
また、内胴の回転速度を1.5G〜3.0Gの遠心倍率に相当する回転速度とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明のドライクリーナの定置洗浄方法によれば、外胴と内胴の間で頂点付近に持ち上げられた溶剤が、内胴上面に落下して跳ね返って外胴内の全方向に飛散し、この飛散した溶剤が外胴内に付着した汚れ等の固形物を流れ落とすことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のドライクリーナのシステム図である。
【図2】本発明のドライクリーナにおける内胴が静止した状態を示す説明図である。
【図3】本発明のドライクリーナの定置洗浄方法を示す説明図である。
【図4】ドライクリーナに汚れ等の固形物が固着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のドライクリーナの定置洗浄方法を実施するための形態を詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0014】
図1及び図2は、本発明の定置洗浄方法に係るドライクリーナを示し、このドライクリーナ1は、被洗物を入れる横向きの円筒状の槽で、水平軸回りに回転する内胴2と、この内胴2全体を覆い、内部に溶剤4を貯留する外胴3とを備えている。
【0015】
内胴2は、その裏面側において外胴3を挿通する水平な回転軸(図示せず)に軸支され、洗濯時に一方向に回転、若しくは一定の時間間隔で回転方向を反転しながら定速で回転する。内胴2の手前には、被洗物を投入・排出するための開口が設けられ、そして外胴3にはその開口に対応して開閉扉が設けられている。
ドライクリーナ1の外胴3には、貯留する溶剤の液位を一定に保つためのオーバーフロー口(図示せず)が設けられており、このオーバーフロー口の液位まで溶剤4を注入して被洗物を洗濯している。
【0016】
本実施例において、内胴2の外径は920mm、外胴3の内径は966mm、そして外胴3と内胴2の隙間は23mmとなっている。被洗物を収納して回転する内胴2は、多孔性の筒体とすることにより、外胴3内に貯留された溶剤が孔部を通じて内胴2内の下部に出入り自在に貯まって、被洗物を浸すものである。
【0017】
このような構造からなるドライクリーナ1において、本発明の定置洗浄方法について以下に詳述する。
まず図2に示すごとく、外胴3内に溶剤4を注入し、オーバーフロー口(図示せず)閉じて、通常の洗濯時よりも高液位に設定する。
【0018】
次に、内胴2を、通常の洗濯時よりも高速の69rpmの回転速度(この回転速度における内胴外面の遠心力を、標準重力加速度9.8m/sの倍率(これを遠心倍率と称す)で換算すると2.44Gになる)で、正転で3分間回転させ、続けて逆転で3分間回転させた。
このとき、図3に示すごとく、溶剤4は高速で回転する内胴2に連れ回されて内胴2、外胴3の頂部に達し、そこで落下した溶剤4が内胴2上面に当たるなどして外胴3内の全方向に飛散する。この飛散した溶剤4が、外胴3内面に付着する汚れ等の固形物を好適に流し落とすことができた。この流し落とされた固形物の内、大きなものは、図1に示すボタントラップ5で補足され、小さいものはスチルタンクに送られ、蒸留して回収される。
【0019】
本実施例にあっては、遠心倍率が上述した2.44Gのときに最も効率的に固形物を流し落とすことができたが、この値に限定されるものではなく、内胴、外胴の寸法によって好適な遠心倍率に幅があり、その範囲が1.5G〜3.0Gであることが実験により確認された。そして本発明の定置洗浄方法は、従来のドライクリーナに新たな装置を取り付けることなく、50回洗濯を行うごとに1度だけ、溶剤を多めに貯留して内胴の3分間の正転と、3分間の逆転をさせるだけで付着する汚れ等の固形物を好適に流し落とすことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のドライクリーナの定置洗浄方法は、ドライクリーナを製造する産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 ドライクリーナ
2 内胴
3 外胴
4 溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外胴の内側に配設した回転自在な内胴内に入れた被洗物を溶剤で洗濯するドライクリーナにおいて、
外胴の内面を洗浄するために外胴内に入れる洗浄液を、被洗物を洗濯する際の溶剤の液位よりも高液位に設定するとともに、
前記内胴の回転速度を被洗物の洗濯時よりも速くして、前記洗浄液を前記内胴の回転により連れ回して内胴、外胴の頂部に至らせ、そこで洗浄液を落下・飛散させて前記外胴内面に付着する汚れ等の固形物を流し落とすことを特徴とするドライクリーナの定置洗浄方法。
【請求項2】
内胴の回転速度を1.5G〜3.0Gの遠心倍率に相当する回転速度とすることを特徴とする請求項1に記載のドライクリーナの定置洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110574(P2012−110574A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263693(P2010−263693)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】