説明

ドライクリーニング用洗浄剤組成物、ドライクリーニング用洗浄液およびそれを用いたドライクリーニング方法

【課題】 ドライクリーニングにおいて、洗浄性、再汚染防止性に優れるだけでなく、安全であり、皮膚への悪影響も少なく、しかも洗浄液の後処理を容易にすることを一の課題とする。
【解決手段】 炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体が溶剤として使用されるドライクリーニングにおいて、該溶剤とともに使用されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とを含有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーニングに好適に使用されるドライクリーニング用洗浄剤組成物およびドライクリーニング用洗浄液、並びにそれを用いたドライクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライクリーニング用の洗浄剤としては、石油溶剤に、アニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤を添加してなるものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−192085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライクリーニングにおいては、被洗浄物の汚れを落とすこと(洗浄性)に加え、例えば、一旦落ちた汚れが被洗浄物に再付着するのを防止すること(再汚染防止性)や、使用する溶剤の引火点が高く安全性が高いこと、被洗浄物に残存した洗浄液が皮膚に悪影響を及ぼさないこと、使用済みの溶剤の処理が容易であることといった多数の要望を同時に満たすことが求められている。
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のようないわゆる石油溶剤を主成分とする従来のドライクリーニング用洗浄剤組成物を用いた場合には、このような多数の要望をバランス良く満たすことは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、ドライクリーニングにおいて、洗浄性、再汚染防止性に優れるだけでなく、安全であり、皮膚への悪影響も少なく、しかも洗浄液の後処理を容易にすることを一の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意研究したところ、いわゆる天然柑橘系溶剤と呼ばれる環式モノテルペン及び/又はその誘導体を溶剤として用い、同時に、カチオン界面活性剤、および非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の少なくとも何れか1種を添加することにより、上述のような種々の要望をバランス良く満たし得るような洗浄液となることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、(1)炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体が溶剤として使用されるドライクリーニングにおいて、該溶剤とともに使用されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とを含有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物、(2)溶剤として、炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体が配合され、洗浄剤組成物として、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とが配合されてなることを特徴とするドライクリーニング用洗浄液、(3)溶剤として、炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体を使用し、洗浄剤組成物として、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とを使用することを特徴とするドライクリーニング方法に関する。
【0009】
炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体は、優れた洗浄力を有するだけでなく、引火点が高いことから安全性の面で優れており、また、天然の成分であるが故に皮膚への刺激も少なく使用後の処理も容易であるという特性を有している。よって該溶剤をドライクリーニング用の溶剤として用いることにより、これを用いたドライクリーニング用洗浄液は、これらの特性を兼ね備えたものとなる。
【0010】
さらに、溶剤としてこのような炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体を使用し、且つ洗浄剤組成物としてカチオン界面活性剤を併用することにより、洗浄の際の再汚染防止性が極めて優れたものとなる。これは、被洗浄物から分離された汚れ成分が、該溶剤中でのカチオン界面活性剤による作用と、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方による作用とにより、安定化されやすくなるからであると考えられる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、ドライクリーニングにおいて、被洗浄物の洗浄性に優れ、被洗浄物の再汚染を防止するとともに、溶剤の残留による皮膚への悪影響を防止し、また、使用済みの溶剤の処理が容易であるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係るドライクリーニング用洗浄剤組成物は、炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体と、アニオン界面活性剤と、カチオン界面活性剤と、非イオン界面活性剤とを含有するものである。
【0013】
環式モノテルペンとは、2つのイソプレンが環状に結合したものであり、下記式(1)に示されたボルナン類、下記式(2)に示されたカラン類、下記式(3)に示されたフェンカン類、下記式(4)に示されたp−メンタン類、下記式(5)に示されたピナン類、下記式(6)に示されたツジャン類がある。
尚、式(1)〜(6)において、R1、R2およびR3は、炭素数が1〜2の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、互いに同じであっても異なっていても良い。
また、式(1)〜(6)中には、隣り合わない任意の位置に少なくとも2箇所以上の二重結合が含まれており、さらに、任意の位置に水酸基が付与されていてもよい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0014】
前記式(1)に示されたボルナン類の具体例としては、ボルナン、ボルニル、ボルネオール、イソボルネオール、ショウノウ、カンホルキノン、ノルボルナン、ノルボニル、カンフェンなどが挙げられる。
【0015】
前記式(2)に示されたカラン類の具体例としては、カラン、カリル、ノルカラン、ノルカリルなどが挙げられる。
【0016】
前記式(3)に示されたフェンカン類の具体例としては、フェンカン、フェンキルアルコール、フェンコンなどが挙げられる。
【0017】
前記式(4)に示されたp−メンタン類の具体例としては、p−メンタン、p−メンチル、リモネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、α−テルピネオール、ペリルアルデヒド、メントン、カルボン、ピペリトン、プレゴンなどが挙げられる。
【0018】
前記式(5)に示されたピナン類の具体例としては、ピナン、α−ピナン、クリサンテノン、ベルベノン、ノルピナンが挙げられる。
【0019】
前記式(6)に示されたツジャン類の具体例としては、ツジャン、ツジル、ツジョンなどが挙げられる。
【0020】
上記のような炭素数が10〜13である環式モノテルペンは、十分な洗浄力と、洗浄した後の被洗浄物の乾燥性とを併せ持ち、さらに、洗浄に際して被洗浄物の傷みが少なく、その使用に際しての制約が少なく、しかも引火点が高いことから安全性が高いという優れた効果を有する。
中でも、炭素数が10〜11の環式モノテルペンは、上記のような洗浄力、乾燥性、安全性のバランスが良く、被洗浄物の傷みも少ない洗浄剤組成物を構成できる、という点で特に好適に使用できる。
【0021】
炭素数が9以下の場合には、そもそも環式モノテルペンではなくなり、十分な洗浄力と、洗浄した後の被洗浄物の乾燥性とを併せ持つものではあるが、分子の極性が大きくなることによって洗浄に際して被洗浄物の傷みが多くなってしまう。また、分子量が小さくなることによって引火点が下がり、安全性の高い洗浄剤組成物を得ることができない。
【0022】
逆に、炭素数が14以上の場合には、洗浄に際しての被洗浄物の傷みが少なく、より安全性は高くなるが、洗浄力が低下し、洗浄後の被洗浄物の乾燥性に劣るという点で好ましくない。また、環式モノテルペンの分子量が大きくなると、生分解性が低下し、廃棄処理が困難になるという点で好ましくない。
【0023】
さらに、前記環式モノテルペンの誘導体とは、前記式(1)〜(6)中のR1〜R3が炭素数1〜2の基であるもののうち、前記環式モノテルペンを除いたものをいう。
R1〜R3の具体例としては、アルキル基、ビニル基、アルコキシル基、アルデヒド基などが挙げられ、アルキル基、ビニル基が好ましく用いられる。アルキル基、ビニル基を用いた場合は、被洗浄物の繊維を傷めることなく汚れの洗浄がより効果的になるという効果がある。
【0024】
上述のような環式モノテルペン及び/又はその誘導体のうち、好ましいものとして、炭素環に対して側鎖がパラ位に配位しているp−メンタン類(式4)およびツジャン類(化6)が挙げられる。このp−メンタン類(式4)およびツジャン類(化6)は、液状であるためドライクリーニング用洗浄剤組成物として適した形態であり、取り扱いが容易であるとともに、皮膚への刺激が比較的少ないという利点がある。
特に、p−メンタン類(式4)の中では、p−メンタン、p−メンチル、リモネン、γ−テルピネンがより好ましく用いられ、ツジャン類(化6)の中では、ツジャンがより好ましく用いられる。
【0025】
また、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物に用いられるカチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩型カチオン界面活性剤、アシルアミン塩型カチオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、アミド結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、エステル結合またはエーテル結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、イミダゾリンまたはイミダゾリウム塩型カチオン界面活性剤などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前記アルキルアミン塩型カチオン界面活性剤、アシルアミン塩型カチオン界面活性剤 の具体例としては、例えば、C1218のアルキル基を有する第1級アミン塩(塩酸塩、酢酸塩など)、C17のアルキル基またはアルケニル基を有するアシルアミノエチルジエチルアミン塩(塩酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)、C1218のアルキル基を有するN−アルキルポリアルキレンポリアミン塩(塩酸塩、酢酸塩、アルキレン基のC数は2〜3、アルキレンアミン基の繰返し数は1〜3)、C17のアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪酸ポリエチレンポリアミド塩(塩酸塩、エチレンアミン基の繰返し数は2)、C17のアルキル基を有するジエチルアミノエチルアミド塩(塩酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
前記第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、アミド結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばC1218のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルトリメチルアンモニウム塩(陰イオンはCl-、Br-、C25SO4-、CH3SO4-など)、C1218のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルジメチルエチルアンモニウム塩(陰イオンはCl-、Br-、C25SO4-、CH3SO4-など)、C1218のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するジアルキルまたはジアルケニルジメチルアンモニウム塩(陰イオンはCl-、Br-、C25SO4-、CH3SO4-)、C1218のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルジメチルベンジルアンモニウム塩(陰イオンはCl-)、C1218のアルキル基を有するアルキルピリジウム塩(陰イオンはCl-、Br-)、C17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するアシルアミノエチルメチルジエチルアンモニウム塩(陰イオンはCH3SO4-)、C13のアルキル基を有するアシルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩(陰イオンはCl-)、C17のアルキル基を有するアシルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩(陰イオンはCl-)、C11のアルキル基を有するアシルアミノエチルピリジニウム塩(陰イオンはCl-)、C17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するジアシルアミノエチルジメチルアンモニウム塩(陰イオンはCl-、なお、メチル基の1つがヒドロキシエチル基になっていてもよい)などが挙げられる。また、トリアルキルまたはアルケニルジアルキルアミンなどの3級アミンを、キシレニルジクロライドなどの4級化剤を用いてカチオン化させた化合物なども挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記エステル結合またはエーテル結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばC17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するジアシロキシエチルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩(陰イオンは、CH3SO4-)、C16のアルキル基を有するアルキルオキシメチルピリジウム塩(陰イオンはCl-)などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
前記イミダゾリンまたはイミダゾリウム塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばC1117のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルイミダゾリン(酢酸塩、炭酸塩、四級化物がある)、C1117のアルキル基またはC17のアルケニル基を有する1−ヒドロキシエチル2−アルキルまたはアルケニルイミダゾリン(第四級化物もある)、C17のアルキル基またはアルケニル基を有する1−アシルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリウム塩(陰イオンは、CH3SO4-、C25SO4-、2位のアルキル基はメチル基またはエチル基)などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記カチオン界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのカチオン界面活性剤のうちでも、環式モノテルペン及び/又はその誘導体に対する溶解性および安定性に優れるという観点から、特に第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が好ましい。
【0031】
また、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物に用いられるアニオン界面活性剤としては、カルボン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、リン酸エステル型アニオン界面活性剤などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記カルボン酸型アニオン界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩、ロジン酸塩、ナフテン酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩、N−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
前記硫酸エステル型アニオン界面活性剤の具体例としては、硫酸第1アルキル塩、硫酸第2アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸アルキルフェニルポリオキシエチレン塩、硫酸モノアシルグリセリン塩、アシルアミノ硫酸エステル塩、オリブ油、ひまし油、綿実油、なたね油、牛脂などの油脂中の2重結合や水酸基が硫酸エステル化物の塩(一部アシルグリセリンの加水分解、硫酸化も起こっている)である硫酸化油、オレイン酸、リシノール酸などの2重結合、水酸基を有する脂肪酸のプロピル、ブチルエステルなどの硫酸エステル化物の塩である硫酸化脂肪酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記スルホン酸型アニオン界面活性剤の具体例としては、例えばC1419のα−オレフィンのスルホン化物であるα−オレフィンスルホン酸(AOS)塩、C820のn−パラフィンにSO2、Cl2のスルホオキシ化物あるいはスルホクロル化物をアルカリで中和して得られる第2アルカンスルホン酸塩、C1218の脂肪酸のメチル、イソプロピルエステルなどのα−スルホン化物の塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS、LAS)、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記リン酸エステル型アニオン界面活性剤の具体例としては、例えばリン酸アルキル塩((1)リン酸モノエステル塩、(2)ジエステル塩、(3)(1)と(2)の混合物として存在する)、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩(通常はジエステル塩との混合物として存在する)、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩(通常はモノエステル塩とジエステル塩との混合物として存在する)などが挙げられる。また、前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩(Na塩、K塩など)、前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩(Na塩、K塩など)などが挙げられる。
【0036】
上記アニオン界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのアニオン界面活性剤のうちでも、環式モノテルペン及び/又はその誘導体に対する溶解性および安定性に優れるという観点から、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましい。
【0037】
また、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物に用いられる非イオン界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド化合物、ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステル、および多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0038】
これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの非イオン界面活性剤のうちでも、環式モノテルペン及び/又はその誘導体に対する溶解性および安定性に優れるという観点から、特にポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0039】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物の配合としては、前記カチオン界面活性剤が1〜90重量%、好ましくは10〜40重量%含まれ、アニオン界面活性剤が0〜60重量%、好ましくは1〜30重量%含まれ、非イオン界面活性剤が0〜60重量%、好ましくは1〜30重量%含まれたものとする。
【0040】
また、本発明に係るドライクリーニング用洗浄剤組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、他の成分を添加することができる。他の成分としては、例えば、溶剤としても使用する環式モノテルペン及び/又はその誘導体や他の石油溶剤(以下、洗浄剤組成物中の溶剤を「溶剤成分」ともいう)、溶解助剤として機能するグリコールエーテルなどの高沸点アルコール系溶剤、平滑剤として機能するシリコーン油、水、防錆剤等が挙げられる。
溶剤成分を添加することにより、該ドライクリーニング用洗浄剤組成物の粘度を低下させ、使用しやすくなるという効果がある。
本発明に係るドライクリーニング用洗浄剤組成物に溶剤成分を添加する場合、溶剤成分の合計量が1〜90重量%となるように添加することが好ましく、30〜60重量%となるように添加することがより好ましい。
【0041】
本発明に係るドライクリーニング用洗浄液は、溶剤として前記環式モノテルペン及び/又はその誘導体を含有し、洗浄剤組成物としてアニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と前記カチオン界面活性剤とを含有するものである。
【0042】
また、本発明のドライクリーニング用洗浄液は、前記環式モノテルペン及び/又はその誘導体に加えて石油溶剤が添加されていてもよい。石油溶剤を添加することにより、溶剤単価を低減することができる。該石油溶剤の配合量は、溶剤である環式モノテルペン及び/又はその誘導体および前記界面活性剤の作用効果を阻害しない程度であれば特に制限はないが、通常、溶剤全量に対して80重量%未満とすることが好ましい。
【0043】
該石油溶剤としては、例えば、ナフテンやパラフィンといったC911の炭化水素系油を主成分とするものが挙げられる。
中でも、乾燥性や臭気が少ないという観点から、特にノルマルデカンが好ましい。
【0044】
本発明に係るドライクリーニング用洗浄液の組成は、通常、前記溶剤が95〜99.99重量%、前記洗浄剤組成物が0.01〜5重量%からなり、好ましくは前記溶剤が99〜99.9重量%、前記洗浄剤組成物が0.1〜1重量%からなるものである。
【0045】
また、本発明のドライクリーニング方法は、上述のようなドライクリーニング用洗浄液を用いて被洗浄物を洗浄する方法である。
具体的には、まず、被洗浄物を上記洗浄液中に浸漬させた後、さらに、攪拌、回転、落下、振動等の物理的な外力を加えて洗浄する。浸漬によって被洗浄物に付着した汚れ成分を洗浄液中に溶出させることができ、物理的な外力を加えることによって被洗浄物のより細部にまで洗浄液を浸透させ、繊維と汚れ成分との分離を促進させることによって洗浄効率の向上を図ることができる。
【0046】
また、洗浄においては、前記洗浄液を加温することができ、好ましくは25℃程度に加温することにより、汚れ成分の洗浄剤中への溶解性を高め、洗浄効率の向上を図ることができる。また、引火の危険性や衣料に対するダメージなどの観点から、25℃を超える場合には、該洗浄液を適宜冷却することもできる。
【0047】
洗浄後、被洗浄物と、汚れ成分の溶出した洗浄液とを分離し、被洗浄物を乾燥させる。この分離、乾燥により、被洗浄物中に洗浄液が残留することを防止し、化学やけどの危険性を低下させることができる。分離方法としては、搾りや、遠心力を利用した方法を採用することができる。また、乾燥方法としては、常温によるもの又は加熱によるものの、いずれの方法でも可能であるが、乾燥を促進させるという観点から加熱によるものが好ましい。加熱温度としては、40〜80℃が好ましく、この温度範囲であれば乾燥を促進させつつ被洗浄物の傷みの少ないものとなる。
【0048】
また、被洗浄物と分離された洗浄液は、再度、ドライクリーニングに使用することができる。この場合、洗浄液中の汚れ成分の量に応じて、新しい洗浄液を添加することにより、洗浄力を維持させることができる。
また、汚れ成分の溶出した洗浄液は、蒸留あるいはカートリッジフィルターでろ過した後、再び使用してもよい。蒸留あるいはカートリッジフィルターでろ過することによって汚れ成分がほとんど含まれていない洗浄液を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明する。
【0050】
ドライクリーニング用洗浄剤組成物の調製
下記表1に示した配合に基づき、実施例および比較例のドライクリーニング用洗浄剤組成物を調製した。尚、溶剤および界面活性剤としては、以下のものを使用した。

カチオン界面活性剤A : ラウリルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート
カチオン界面活性剤B : パルミチルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート
アニオン界面活性剤 : ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム
非イオン界面活性剤 : ポリオキシエチレンアルキルエーテル
溶剤成分 : リモネン(前記式(4)においてR1〜R3が全てCH3である環式モノテルペン)
【0051】
【表1】

【0052】
汚染布の調製
(湿式汚染布)
牛脂硬化油と流動パラフィンとの混合物にカーボンブラックを加えて混合したものを、パークロールエチレンに溶かし、汚染浴とした。そして、該汚染浴にウール布(10×8cm)を浸漬した後、風乾することによってウール湿式汚染布(以下、ウール湿式ともいう)を作成した。
さらに、もう1種の湿式汚染布として、財団法人洗濯科学協会より入手した人工湿式汚染布を使用した。
【0053】
(乾式汚染布)
人工皮脂とガラスビーズとをビーカーに入れて均一に混合攪拌し、その上に土、砂およびクリーナーダストを加えて均一になるまで混合攪拌し、汚垢を調製した。そして、この汚垢を汚染機に入れ、布(ウール、ポリエステル:10×8cm)に付着させることによってウール乾式汚染布(以下、ウール乾式ともいう)およびポリエステル乾式汚染布(以下、PE乾式ともいう)を作成した。
【0054】
洗浄性試験および再汚染性試験
(試験方法)
上記実施例および比較例のドライクリーニング用洗浄剤組成物を用い、ドライクリーニングにおける洗浄性ついて試験を行なった。
具体的には、250mlのガラス瓶にリモネン100mlを入れ、さらに前記実施例および比較例の洗浄剤組成物をリモネンに対して0.5重量%添加し、スタラーでよく攪拌した後、該ガラス瓶に反射率測定後の各汚染布と白布(ウール、綿、ポリエステル、アクリル、シルク)とを入れ、振とう器で10分洗浄し、ドラフト内で風乾した。
【0055】
(評価方法)
色差計(東京電色株式会社製、「TC1500SX」)で白度を測定し、下式に基づいて洗浄効率と再汚染率を求めた。
【数1】

【数2】

洗浄効率の試験結果を表2に、再汚染率の試験結果を表3に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
表2より、本発明に係る実施例1〜4のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、比較例1および2のドライクリーニング用洗浄剤組成物と比較して被洗浄物の洗浄性に優れていることがわかる。
また、表3より、本発明に係る実施例1〜4のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、比較例1および2のドライクリーニング用洗浄剤組成物と比較して被洗浄物の再汚染が少ないことがわかる。
【0059】
次に、ドライクリーニングにおける溶剤の配合を変えて同様の試験を行なった。
具体的には、上記実施例1のドライクリーニング用洗浄剤組成物を用い、溶剤としてリモネン20重量%と石油溶剤(日米礦油(株)製、「ニューソルDX」)80重量%とからなる溶剤Aを使用した場合と、石油溶剤(同上)のみからなる溶剤Bを使用した場合について、それぞれ上記と同様の試験を行なった。結果を表4および表5に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
表4および表5より、本発明に係る実施例1のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、石油溶剤のみからなる溶剤Bに使用した場合よりも、環式モノテルペンの1種であるリモネンを含む溶剤Aに使用した場合の方が、洗浄性および再汚染防止性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体が溶剤として使用されるドライクリーニングにおいて、該溶剤とともに使用されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、
アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とを含有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【請求項2】
溶剤として、炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体が配合され、洗浄剤組成物として、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とが配合されてなることを特徴とするドライクリーニング用洗浄液。
【請求項3】
溶剤として、炭素数10〜13の環式モノテルペン及び/又はその誘導体を使用し、洗浄剤組成物として、アニオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の少なくとも何れか一方と、カチオン界面活性剤とを使用することを特徴とするドライクリーニング方法。

【公開番号】特開2006−70168(P2006−70168A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255512(P2004−255512)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【出願人】(594032481)ゲンブ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】