ドライバICの配線接続構造
【課題】ドライバICに正確に信号を伝送する。
【解決手段】COF51に実装されたドライバIC61の複数の入力端子63と、COF51に接続されたFPC52上に形成された複数の入力配線71の接続端子72とが、それぞれ、互いに同じ長さを有する複数のボンディングワイヤ81によって接続されている。そして、駆動波形信号を入力するための駆動波形信号入力配線71bに接続されるボンディングワイヤ81bは、電源に接続された電源入力配線71aに接続されるボンディングワイヤ81aよりもCOF51からのループ高さが高くなっており、ノズルからのインクの噴射タイミングを示す噴射データ信号を入力するためのデータ信号入力配線71c、及び、クロックを入力するためのクロック入力配線71dに接続されるボンディングワイヤ81cは、ボンディングワイヤ81bよりもさらに上記ループ高さが高くなっている。
【解決手段】COF51に実装されたドライバIC61の複数の入力端子63と、COF51に接続されたFPC52上に形成された複数の入力配線71の接続端子72とが、それぞれ、互いに同じ長さを有する複数のボンディングワイヤ81によって接続されている。そして、駆動波形信号を入力するための駆動波形信号入力配線71bに接続されるボンディングワイヤ81bは、電源に接続された電源入力配線71aに接続されるボンディングワイヤ81aよりもCOF51からのループ高さが高くなっており、ノズルからのインクの噴射タイミングを示す噴射データ信号を入力するためのデータ信号入力配線71c、及び、クロックを入力するためのクロック入力配線71dに接続されるボンディングワイヤ81cは、ボンディングワイヤ81bよりもさらに上記ループ高さが高くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバICとドライバICに接続された配線とを含むドライバICの配線接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタヘッドにおいては、圧電アクチュエータの上面にFPC(Flexible Printed Circuit)が配置されている。FPCの表面にはドライバIC(駆動ICチップ)が実装されているとともに、ドライバICから圧電アクチュエータと反対側に引き出された入力側配線と、ドライバICから圧電アクチュエータ側に引き出された出力側配線とが形成されている。さらに、FPCの圧電アクチュエータと反対側の端部にFFC(Flexible Flat Cable)が接続されることによって、入力側配線が、FFC上の配線と接続されている。
【0003】
ここで、入力側配線は、ドライバICと電源とを接続する配線や、ドライバICに記録データの信号やクロックを伝送するための配線などを含んでおり、出力側配線は、ドライバICにおいて生成した圧電アクチュエータの駆動信号を伝送するための配線を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−83707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、インクジェットプリンタにおいては、高解像度での印刷の実現などのために、ノズルの数を増やすことが考えられるが、この場合には、ノズル数の増加に合わせて出力側配線の数も増やす必要がある。
【0006】
しかしながら、この場合には、多数の出力側配線と入力側配線とが1つのFPC上に配置されることとなるため、入力側配線と出力側配線との間隔が小さくなり、その結果、例えば、入力側配線を伝送される、記録データの信号やクロックなどの比較的低電圧の信号が、出力側配線を伝送される比較的高電圧の駆動信号からノイズの影響を受けやすくなってしまう。
【0007】
そこで、本願の発明者は、FPC上には入力側配線を形成せず、FFC上の配線とドライバICとをボンディングワイヤを介して接続する(ワイヤボンディングを行う)ことを考えた。
【0008】
しかしながら、この場合でも、出力配線を流れる電流により、出力配線の周囲には磁束が発生するため、ボンディングワイヤを伝送される記録データの信号やクロックが、この磁束による影響を受けてしまう虞がある。
【0009】
また、ドライバICにおいては、端子や回路などをできるだけコンパクトに配置する必要があることから、ドライバICのボンディングワイヤと接続される入力端子の間隔は、FFCのボンディングワイヤと接続される配線の接続端子の間隔に比べて狭くなる。このため、FFC上の配線の接続端子とドライバICの入寮端子とをボンディングワイヤを介して接続した場合に、ボンディングワイヤの長さにばらつきが生じる場合がある。そして、このような場合には、複数のノズルに対応する記録データの信号をドライバICに入力する際に、信号が入力されるタイミングにばらつきが生じ、その結果、ノズルからのインクの噴射タイミングにばらつきが生じてしまう虞がある。
【0010】
本発明の目的は、ドライバICへの正確な信号の入力が可能なドライバICの配線接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1配線基板と、前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、前記ドライバICの前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、前記複数の入力配線は、ノイズの影響の受けやすさが互いに異なる複数種類の信号を伝送する複数種類の信号入力配線を含んでおり、前記複数種類の信号入力配線と接続されるボンディングワイヤは、互いに同じ長さを有しているとともに、前記第1配線基板からのループ高さが互いに異なっており、ノイズの影響を受けやすい信号を伝送する信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤほど、前記ループ高さが高いことを特徴とする。
【0012】
ドライバICのと複数の入力配線とが第1配線基板上で接続されている場合には、入力配線及び出力配線の数が多くなると、第1配線基板上に入力配線と出力配線とが密集して配置されることとなり、出力配線を伝送される駆動信号により、入力配線を伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。
【0013】
しかしながら、本発明では、複数の入力配線とドライバICとが、複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線を伝送される信号にノイズが発生してしまうのを防止することができる。
【0014】
さらに、複数種類の信号を伝送する信号入力配線に接続される複数のボンディングワイヤが、互いに同じ長さを有するものとなっているため、信号入力配線からドライバICにこれら複数種類の信号が入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0015】
また、複数の入力配線とドライバICとを複数のボンディングワイヤにより接続したとしても、ボンディングワイヤを伝送される信号は、出力配線を流れる電流によって発生する磁束の影響を受けることとなり、ボンディングワイヤのループ高さが低いほど、つまり、ボンディングワイヤが出力配線に近い位置にあるほど、上記磁束の影響を受けやすく、伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。
【0016】
しかしながら、本発明では、ノイズの影響を受けやすい信号が伝送されるボンディングワイヤほど、ループ高さが高くなっているので、ノイズの影響を受けやすい信号にノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。
【0017】
第2の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1の発明に係るドライバIC
の配線接続構造であって、前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする。
【0018】
入力配線が、ドライバICが実装されている第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されている場合、入力配線とドライバICとが、第1配線基板上の配線を介して接続されているとすると、入力配線と上記第1配線基板上の配線との接続部分においてインピーダンスが大幅に増加するため、当該インピーダンスの増加により入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまう虞がある。
【0019】
しかしながら、本発明では、第2配線基板上の複数の入力配線とドライバICとが複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線とドライバICとの間に上述のようなインピーダンスの大幅な増加の要因となる部分がなく、入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまうのを防止することができる。
【0020】
第3の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1又は第2の発明に係るドライバICの配線接続構造であって、前記ドライバICが、複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドを駆動するためのものであって、前記複数種類の信号入力配線が、クロックを入力するためのクロック入力配線と、前記複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための噴射データ信号入力配線と、前記ドライバICの前記出力端子から出力される、前記液滴噴射ヘッドを駆動するための駆動信号に対応する駆動波形の信号を入力するための駆動波形信号入力配線とを含んでおり、前記クロック入力配線、及び、前記噴射データ信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さが、前記駆動波形信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さよりも高いことを特徴とする。
【0021】
これによると、ノイズの影響を受けやすい噴射データ信号やクロックにノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。
【0022】
第4の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1〜第3のいずれかの発明に係る配線接続構造であって、前記複数の入力配線が、電源に接続された電源入力配線をさらに含んでおり、前記電源入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤは、前記複数種類の信号入力配線の接続端子に接続されるボンディングワイヤと同じ長さを有しているとともに、これらのボンディングワイヤよりもループ高さが低いことを特徴とする。
【0023】
これによると、電源よりも電圧が低く、ノイズの影響を受けやすい入力信号にノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。また、電源入力配線に接続されるボンディングワイヤと信号入力配線に接続されるボンディングワイヤとが互いに同じ長さを有しているので、長さが同じ1種類のワイヤのみを用いて全てのボンディングワイヤを形成することができる。
【0024】
第5の発明に係るドライバICの配線接続構造は、複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドと、前記液滴噴射ヘッドと接続される第1配線基板と、前記第1配線基板上に実装されており、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有し、前記液滴噴射ヘッドを駆動するドライバICと、前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、前記複数のノズルが、一方向に沿って配列された複数のノズル列を形成しており、前記ドライバICの前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、前記複数の入力配線は、前記一方向の一方側から数えて奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第1噴射データ信号入力配線と、前記一方向の一方側から数えて偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第2噴射データ信号入力配線とを含んでおり、前記複数のボンディングワイヤが、前記複数の第1噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第1ワイヤと、前記複数の第2噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第2ワイヤとを含み、前記複数の第1ワイヤが、互いに同じ長さを有しており、前記複数の第2ワイヤが、互いに同じ長さを有していることを特徴とする。
【0025】
液滴噴射ヘッドが複数のノズル列を有するものである場合、いわゆるクロストークを防止するために、奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングと、偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングとをずらす場合があるが、本発明では、このような場合に、ドライバICに奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルに対応する液滴の噴射データの信号が入力されるタイミング、及び、ドライバICに偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルに対応する液滴の噴射データが入力されるタイミングに、それぞればらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0026】
第6の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1配線基板と、前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線端子の間隔よりも狭くなっており、前記複数のボンディングワイヤは、前記第1配線基板からのループ高さが互いに同じとなっていることを特徴とする。
【0027】
ドライバICと複数の入力配線とが第1配線基板上で接続されている場合には、入力配線及び出力配線の数が多くなると、第1配線基板上に入力配線と出力配線とが密集して配置されることとなり、出力配線を伝送される駆動信号(電流)により、入力配線を伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。
【0028】
しかしながら、本発明では、複数の入力配線とドライバICとが、複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線を伝送される信号にノイズが発生してしまうのを防止することができる。
【0029】
また、ボンディングワイヤを伝送される信号は、出力配線を流れる電流によって発生する磁束の影響を受けることとなるが、ボンディングワイヤのループ高さが低いほど、つまり、ボンディングワイヤが出力配線に近い位置にあるほど、上記磁束の影響を受けやすく、伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。そのため、複数のボンディングワイヤのループ高さにばらつきがあると、ボンディングワイヤからドライバICに入力される信号などに発生するノイズにばらつきが生じてしまう虞がある。
【0030】
しかしながら、本発明では、複数のボンディングワイヤのループ高さが互いに同じとなっているため、各ボンディングワイヤを伝送される信号に発生するノイズにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0031】
第7の発明に係るドライバICに配線接続構造は、第6の発明に係るドライバICの配線接続構造であって、前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする。
【0032】
入力配線が、ドライバICが実装されている第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されている場合、入力配線とドライバICとが、第1配線基板上の配線を介して接続されているとすると、入力配線と上記第1配線基板上の配線との接続部分においてインピーダンスが大幅に増加するため、当該インピーダンスの増加により入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまう虞がある。
【0033】
しかしながら、本発明では、第2配線基板上の複数の入力配線とドライバICとが複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線とドライバICとの間に上述のようなインピーダンスの大幅な増加の要因となる部分がなく、入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、複数の入力配線とドライバICとが、複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線を伝送される信号にノイズが発生してしまうのを防止することができる。
【0035】
さらに、互いに異なる種類の信号を伝送する複数種類の信号入力配線に接続される複数のボンディングワイヤが互いに同じ長さを有するものとなっているため、信号入力配線からドライバICにこれら複数種類の信号が入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図5を矢印VIの方向から見た図である。
【図7】第2実施形態の図4相当の図である。
【図8】第2実施形態の図5相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0038】
図1は、第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(液滴噴射ヘッド)、用紙搬送ローラ4などを備えている。
【0039】
キャリッジ2は、ガイド軸5に沿って走査方向(図1の左右方向)に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に取り付けられており、その下面に形成された複数のノズル15(図2参照)からインク滴を噴射する。用紙搬送ローラ4は、記録用紙Pを紙送り方向(図1の手前方向)に搬送する。
【0040】
そして、プリンタ1においては、用紙搬送ローラ4により紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインク滴を噴射することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0041】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2はインクジェットヘッド3の平面図である。図3は図2の部分拡大図である。図4は図3のIV−IV線断面図である。図2〜図4に示すように、インクジェットヘッド3は、後述する圧力室10やノズル15などのインク流路が形成された流路ユニット31と、流路ユニット31の上面に配置された圧電アクチュエータ32とを備えている。
【0042】
流路ユニット31は、キャビティプレート21、ベースプレート22、マニホールドプレート23及びノズルプレート24が互いに積層されることによって形成されている。ここで、これら4枚のプレート21〜24のうち、ノズルプレート24を除いた3枚のプレート21〜23はステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート24は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。あるいは、ノズルプレート24も他の3枚のプレート21〜23と同様の金属材料によって構成されていてもよい。
【0043】
キャビティプレート21には、複数の圧力室10が形成されている。圧力室10は、その平面形状が、走査方向(図2の左右方向)を長手方向とする略楕円となっている。また、複数の圧力室10は、紙送り方向に配列されることによって1つの圧力室列8を形成しているとともに、このような圧力室列8が、紙送り方向に4列に配列されている。ベースプレート22には、各圧力室10の長手方向に関する両端部に、それぞれ、略円形の貫通孔12、13が形成されている。
【0044】
マニホールドプレート23には、マニホールド流路11が形成されている。マニホールド流路11は、各圧力室列8を構成する複数の圧力室10の略右半分と対向する部分において、それぞれ紙送り方向に延びているとともに、紙送り方向に延びた部分同士が、図2における下側端部において互いに接続されている。また、マニホールド流路11には、その図2における下側の端部に設けられたインク供給口9からインクが供給される。また、マニホールドプレート23には、各貫通孔13と対向する部分に略円形の貫通孔14が形成されている。
【0045】
ノズルプレート24には、各貫通孔14と対向する部分にノズル15が形成されており、これらのノズル15は、圧力室10と同様、紙送り方向に配列されることによって1つのノズル列7を形成しているとともに、このようなノズル列7が走査方向に4列に配列されている。
【0046】
そして、流路ユニット31においては、マニホールド流路11が貫通孔12を介して圧力室10に連通しており、さらに、圧力室10は、貫通孔13、14を介してノズル15に連通している。このように、流路ユニット31には、マニホールド流路11の出口から圧力室10を経てノズル15に至る複数の個別インク流路が形成されている。
【0047】
圧電アクチュエータ32は、振動板41、圧電層42、複数の個別電極43などを備えている。振動板41は、ステンレスなどの金属材料からなり、複数の圧力室10を覆うように、キャビティプレート21の上面に接合されている。
【0048】
圧電層42は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、振動板41の上面に複数の圧力室10にまたがって連続的に形成されている。また、圧電層42は、各圧力室10と対向する部分が、その厚み方向に分極されている。
【0049】
複数の個別電極43は、圧電層42の上面に、複数の圧力室10に対して個別に形成されている。各個別電極43は、圧力室10よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、各圧力室10の略中央部と対向するように配置されている。また、各個別電極43の図2の右端部は、圧力室10と対向しない部分まで延びており、その先端部が接続端子43aとなっている。接続端子43aの上面には、ランド44が形成されており、ランド44には、COF(Chip On Film)51(第1配線基板)の後述する出力配線62が接続されており、これにより、個別電極43は、後述するように出力配線62を介してドライバIC61と接続されている。そして、個別電極43には、ドライバIC61により、出力配線62及びランド44を介して駆動電圧(駆動信号)が付与される。
【0050】
また、導電性を有する上記振動板41は、圧電層42に形成された図示しないスルーホールを介して圧電層42の上面に形成された図示しない表面電極に接続されており、この表面電極は、さらに、その上面に形成された図示しないランド、及び、COF51に形成された出力配線62を介してドライバIC61と接続されている。そして、振動板41はドライバIC61により常にグランド電位に保持されており、圧電アクチュエータ32を駆動する際の共通電極を兼ねている。
【0051】
ここで、COF51について説明する前に、圧電アクチュエータ32の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ32においては、複数の個別電極43は、予めグランド電位に保持されている。そして、ドライバIC61により、いずれかの個別電極43に駆動電位が付与されると、圧電層42のこの個別電極43と共通電極としての振動板41とに挟まれた部分に電位差が生じ、この電位差によって圧電層42のこの部分に厚み方向の電界が発生する。この電界の方向は圧電層42の分極方向と一致しているため、圧電層42のこの部分は、分極方向と直交する水平方向に収縮し、これにより、振動板41及び圧電層42の圧力室10と対向する部分が全体として、圧力室10側に凸となるように変形する。この変形により、圧力室10の容積が小さくなって、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、このインクの圧力上昇により、圧力室10に連通するノズル15からインク滴が噴射される。
【0052】
次に、COF51及びCOF51に接続されるFPC(Flexible Printed circuit)52(第2配線基板)について説明する。図5は図4のCOF51及びFPC52のドライバIC61近傍の部分の拡大図である。図6は図5を矢印VIの方向から見た図である。なお、図面を見やすくするため、図6では、後述する出力端子64のうち、後述する入力端子63と重なる位置に配置されているものの図示を省略している。
【0053】
図4〜図6に示すように、COF51は、圧電アクチュエータ32の上方に配置されており、圧電アクチュエータ32と対向する部分において水平方向に延びているとともに、圧電アクチュエータ32と対向しないその一端部が折り曲げられて上方に延びている。また、COF51の上方に延びた部分の上端部はFPC52の一端部に接続されている。なお、FPC52の他端部は、図示しない本体基板の制御装置に接続されている。
【0054】
COF51には、ドライバIC61が実装されているとともに、複数の出力配線62が形成されている。ドライバIC61は、略矩形の平面形状を有しており、COF51の、上記上方に延びた部分の図4における右側の面に、図6の左右方向がその長手方向となるように実装されている。また、ドライバIC61のCOF51と反対側の面(以下、ドライバIC61の上面とする)には、図6の左右方向にほぼ等間隔に配列された複数の入力端子63が設けられている。また、ドライバIC61のCOF51側の面(以下、ドライバIC61の下面とする)には、その図6における上側及び下側の端部に、それぞれ、図6の左右方向にほぼ等間隔に配列された複数の出力端子64a、64bが設けられている。
【0055】
ここで、複数の入力端子63は、図示しない本体基板からドライバIC61に電源の供給や、信号の入力などを行うためのものであり、複数の出力端子64a、64bは、ドライバIC63から圧電アクチュエータ32を駆動する駆動信号などを出力するためのものである。
【0056】
複数の出力配線62は、複数のノズル15に対応して設けられており、ドライバIC61の出力端子64a、64bに接続されている。そして、出力配線62のうち、出力端子64aに接続された出力配線62aは、出力端子64aから図6の下方に延び、そのままCOF51の延在方向に沿って、対応するランド44と重なる部分まで延びている。一方、出力端子64bに接続された出力配線62bは、出力端子64bから図6の上方に延びているとともに途中で約180°反転し、その後、ドライバIC61を避けるようにしてCOF51の延在方向に沿って、対応するランド44と重なる部分まで延びている。
【0057】
ここで、本実施形態のプリンタ1においては、例えば、高解像度での印刷を実現するために、インクジェットヘッド3には多数のノズル15が形成されているが、ドライバIC61の圧電アクチュエータ32側(図6の下側)、及び、圧電アクチュエータ32と反対側(図6の上側)の両側から出力配線62a、62bを引き出すことによって、COF51上に、上記多数のノズル15に対応した出力配線62を形成している。
【0058】
そして、ドライバIC61は、上述したように、出力配線62及びランド44を介して、個別電極43に駆動電位を付与するとともに、共通電極としての振動板41をグランド電位に保持する。
【0059】
FPC52には、複数の入力配線71が形成されている。複数の入力配線71は、それぞれがFPC52の延在方向(図6の上下方向)に、FPCの全長にわたって延びているとともに、図6の左右方向にほぼ等間隔に配列されている。また、各入力配線71の図6における下側の端部には、それぞれ、接続端子72が設けられている。
【0060】
そして、複数の入力配線71の接続端子72は、それぞれ、COF51上の出力配線62bをまたぐように延びた複数のボンディングワイヤ81を介して、ドライバIC61の複数の入力端子63と接続されている。複数のボンディングワイヤ81は、金などの導電性材料からなるワイヤであり、その両端部が、それぞれ、入力端子63及び接続端子72に押し当てられるとともに、押し当てた部分に超音波が照射されることによって、入力端子63及び接続端子72に接合されている。また、複数のボンディングワイヤ81は全て同じ長さを有している。
【0061】
ここで、ドライバIC61は、高集積化のため、入力端子63を配置するためのスペースに大きな制約があるのに対して、FPC52はドライバIC61に比べてスペースに余裕があるので、接続端子72の間隔は、入力端子63の間隔よりも広くなっている。そのため、図6の左右方向に関する内側ほど、入力端子63と接続端子72との直線距離が短くなっている。
【0062】
したがって、互いに同じ長さを有する複数のボンディングワイヤ81は、図5に示すように、そのループ高さが互いに異なっており、直線距離の短い図6の左右方向に関する内側の入力端子63と接続端子72とを接続するボンディングワイヤ81ほど、そのループ高さが高くなっている。
【0063】
また、複数の入力配線71には、図示しない本体基板に設けられた電源に接続された電源入力配線71a、ドライバIC61に駆動波形信号を入力するための駆動波形信号入力配線71b、ドライバIC61にノズル15からのインクの噴射データの信号を入力するための複数のデータ信号入力配線71c、クロックを入力するためのクロック入力配線71dが含まれている。なお、本実施の形態では、駆動波形信号入力配線71b、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dが、本発明に係る信号入力配線である。
【0064】
ここで、駆動波形信号とは、出力端子64から出力される駆動信号に対応する駆動波形の信号であり、出力端子64からは、駆動波形の信号が電源電圧で増幅された信号が駆動信号として出力される。
【0065】
また、噴射データ信号とは、ノズル15からのインクの噴射タイミングを示す信号であり、噴射データ信号が示すタイミングで、ドライバIC61の出力端子64から上記駆動信号が出力される。このとき、例えば、ノズル15から複数種類の体積のインク滴を噴射できるようにする場合など、上記駆動波形信号が複数種類ある場合には、噴射データ信号は、ノズル15からのインクの噴射タイミングとともに、どの駆動波形信号を選択するかも示している。また、クロックは、ドライバIC61の駆動のタイミングの基準となる信号である。
【0066】
そして、これらの配線71a〜71dは、駆動波形信号入力配線71bが電源入力配線71aよりも内側にくるとともに、データ信号入力配線71cやクロック入力配線71dが、駆動波形信号入力配線71bよりもさらに内側にくるように配置されている。
【0067】
これにより、電源入力配線71aは、ループ高さの低いボンディングワイヤ81aに接続され、駆動波形信号入力配線71bは、ボンディングワイヤ81aよりもループ高さの高いボンディングワイヤ81bと接続され、データ信号入力配線71cやクロック入力配線71dは、ボンディングワイヤ81bよりもさらにループ高さの高いボンディングワイヤ81cに接続されている。
【0068】
そして、ドライバIC61(出力端子64a、64b)から駆動信号が出力されることにより、上述したように、個別電極43に駆動電位が付与されて、圧電アクチュエータ32が駆動され、ノズル15からインク滴が噴射される。
【0069】
また、ここで、本実施の形態とは異なり、入力端子63をドライバIC61の下面に設け、複数の入力配線71と入力端子63とをCOF51上に形成された配線を介して接続することも考えられる。
【0070】
しかしながら、この場合には、出力配線62bがCOF51の、FPC52との接続部分とドライバIC61との間の部分に配置されているため、出力配線62bと、入力配線71と入力端子63とを接続するための配線とが互いに近接した位置に配置されることとなってしまう。そのため、出力配線62bを伝送される駆動信号の影響によって、入力配線71を伝送されてドライバIC61に入力される信号などにノイズが発生してしまう虞がある。
【0071】
このとき、ドライバIC61に入力される電源の電圧は、出力配線62を伝送される駆動信号の電圧と同程度(例えば、20V程度)であるため、上記ノイズの影響はそれほど大きくはないが、駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどは、電源電圧よりも低電圧(例えば、3.3V程度)の信号であるため、上記ノイズの影響を受けやすい。
【0072】
さらに、駆動波形信号にノイズが発生したとしても、これに対応して出力端子64から出力される駆動信号に多少ゆがみなどが生じる虞はあるものの、これによって駆動信号自体が出力されないといったことはなく、印刷品質が大幅に低下してしまうことは少ない。
【0073】
これに対して、インクの噴射タイミングを示す駆動データ信号や、ドライバIC61の駆動のタイミングの基準となるクロックにノイズが発生してしまうと、インク滴を噴射すべきタイミングでノズル15からインク滴が噴射されなかったり、これとは逆に、インク滴を噴射すべきタイミング以外のタイミングでインク滴が噴射されたり、選択されるべき駆動波形信号とは異なる駆動波形信号に対応する駆動信号によって圧電アクチュエータ32が駆動されたりするなどの問題が発生し、これらの問題が発生した場合には、印刷品質が大幅に低下してしまう虞がある。
【0074】
以上のことから、本実施の形態では、駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどの信号は、電源電圧に比べてノイズの影響を受けやすく、さらに、噴射データ信号やクロックは、その中でも特にノイズの影響を受けやすいといえる。
【0075】
また、この場合には、FPC52上の入力配線71の接続端子72と、COF51上の入力端子63に接続される配線の接続端子とをCOF51とFPC52との接続部分において接続することとなる、すなわち、互いに異なる配線基板上の接続端子同士をこれらの配線基板の接続部分において直接接続することとなるため、これらの接続端子の接続部分においてインピーダンスが大幅に増加し、このインピーダンスの増加によってドライバIC61に入力される信号の電圧が大きく減衰してしまう虞がある。特に、駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどは低電圧であるため、このような電圧の減衰は大きな問題となる。
【0076】
これに対して、本実施の形態では、FPC52上の入力配線71の接続端子72と、ドライバIC61の入力端子63とが、出力配線62から離隔したボンディングワイヤ81によって接続されているため、出力配線62を伝送される駆動信号によって、入力信号71を伝送されてドライバIC61に入力される噴射データ信号やクロックにノイズが発生しにくくなる。また、入力配線71と入力端子63との間に上述のようなインピーダンスの増加の要因となる部分がないため、入力配線71を伝送される信号などが減衰しにくい。
【0077】
さらに、複数のボンディングワイヤ81の長さが全て同じとなっているため、ボンディングワイヤ81を介してドライバIC61に、上述した駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどが入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのが防止され、これにより、複数のノズル15からのインクの噴射タイミングにばらつきが生じてしまうのが防止される。
【0078】
また、複数のボンディングワイヤ81の長さが全て同じであるので、長さが同じ1種類のワイヤのみを用いて全てのボンディングワイヤ81を形成することができる。
【0079】
ただし、接続端子72と入力端子63とがボンディングワイヤ81により接続されている場合でも、ボンディングワイヤ81を伝送される信号などには、駆動信号が伝送される際に出力配線62に流れる電流によって発生する磁束の影響によってノイズが発生してしまう虞がある。また、このとき、ボンディングワイヤ81の上記ループ高さが低い、つまり、ボンディングワイヤ81が出力配線62に近い位置にあるほど、上記磁束の影響は大きくなり、ノイズが発生しやすくなる。
【0080】
そこで、本実施の形態では、上述したように、ノイズの影響を受けにくい電源の電圧が入力される電源入力配線71aを、ループ高さの低いボンディングワイヤ81aに接続し、電源の電圧よりもノイズの影響を受けやすい駆動波形信号が伝送される駆動波形信号入力配線71bをボンディングワイヤ81aよりもループ高さの高いボンディングワイヤ81bに接続している。さらに、駆動波形信号よりもノイズの影響を受けやすい噴射データ信号やクロックが伝送される、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dを、ボンディングワイヤ81bよりもさらにループ高さの高いボンディングワイヤ81cに接続している。
【0081】
そして、これにより、ノイズの影響を受けやすい信号に、出力配線62を流れる電流によって発生する磁束によるノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。
【0082】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。ただし、第1実施形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0083】
図7は第2実施形態における図5相当の図である。図8は第2実施形態における図6相当の図である。図7、図8に示すように、第2実施形態においては、複数のボンディングワイヤ91のループ高さが全て同じとなっている。ただし、この場合には、上述したように、ドライバIC61の入力端子63の間隔が、FPC52の接続端子72の間隔よりも狭くなっているため、複数のボンディングワイヤ91の長さは互いに異なっており、図8の左右方向に関して内側に位置しているものほどその長さが短くなっている。
【0084】
また、第2実施形態においても、図8に示すように、上述の電源入力配線71a、駆動波形信号入力配線71b、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dのうち、駆動波形信号入力配線71bが電源入力配線71aよりも内側に配置されているとともに、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dが、駆動波形信号入力配線71bよりもさらに内側に配置されている。
【0085】
これにより、駆動波形信号入力配線71bは、電源入力配線71aに接続されるボンディングワイヤ91aよりも長さの短いボンディングワイヤ91bに接続され、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dは、ボンディングワイヤ91bよりもさらに長さの短いボンディングワイヤ91cに接続されている。
【0086】
この場合でも、第1実施形態と同様、FPC52上の入力配線71の接続端子と、ドライバIC61の入力端子63とが、出力配線62から離隔したボンディングワイヤ91によって接続されているため、出力配線62を伝送される駆動信号によってドライバIC61に入力される噴射データ信号やクロックにノイズが発生しにくくなり、また、入力配線71と入力端子63との間に上述のようなインピーダンスの増加の要因となる部分がないため、入力配線71を伝送される信号などが減衰しにくい。
【0087】
また、上述したように、接続端子72と入力端子63とがボンディングワイヤ91により接続されている場合でも、ボンディングワイヤ81を伝送される信号などには、出力信号が伝送される際に出力配線62に流れる電流によって発生する磁束の影響によってノイズが発生してしまう虞があり、ボンディングワイヤ91のループ高さが低いほど、上記磁束の影響を大きく受けてノイズが発生しやすくなるため、ボンディングワイヤ91のループ高さにばらつきがあると、ボンディングワイヤ91を伝送される信号などに生じるノイズにばらつきが生じてしまう虞がある。
【0088】
しかしながら、第2実施形態では、複数のボンディングワイヤ91のループ高さが互いに同じとなっているため、各ボンディングワイヤ91からドライバIC61に入力される信号などに発生するノイズにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0089】
なお、このように、ボンディングワイヤ91のループ高さを全て同じとすれば、各ボンディングワイヤ91からドライバIC61に入力される信号に発生するノイズのばらつきは小さくなるものの、ボンディングワイヤ91の長さの違いによって、伝送される信号に発生するノイズには僅かにばらつきがあり、ボンディングワイヤ91の長さが長いほど、発生するノイズは大きくなりやすい。
【0090】
そこで、第2実施形態では、上述したように、ノイズの影響を受けやすい信号が伝送される入力配線71ほど内側に配置された長さの短いボンディングワイヤ91に接続しており、これにより、ノイズの影響を受けやすい信号に発生するノイズを極力抑えることができる。
【0091】
次に、第1、第2実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0092】
第1、第2実施形態では、入力配線71が、ドライバIC61が実装されたCOF51とは異なるFPC52上に形成されていたが、入力配線71は、ドライバIC61が実装されているのと同じCOF51上に形成されていてもよい。
【0093】
また、第1実施形態では、ドライバIC61に駆動波形信号、噴射データ信号、クロックが入力信号として入力される場合について説明したが、これらの信号以外の信号がドライバIC61に入力されるようになっており、ノイズの影響を受けやすい信号を入力するための入力配線71ほど、ループ高さの高いボンディングワイヤ81に接続されていてもよい。また、この場合でも、信号が伝送される入力配線71は、全て、電源入力配線71aと接続されるものよりもループ高さの高いボンディングワイヤ81に接続されることが好ましい。
【0094】
さらに、第2実施形態においても、駆動波形信号、噴射データ信号、クロック以外の信号がドライバIC61に入力されるようになっており、ノイズの影響を受けやすい信号を入力するための入力配線71ほど長さの短いボンディングワイヤ91に接続されていてもよい。また、この場合でも、信号が伝送される入力配線71は、全て、電源入力配線71aと接続されるものよりも長さの短いボンディングワイヤ91に接続されることが好ましい。
【0095】
また、第1実施形態では、全てのボンディングワイヤ81の長さが同じとなっていたが、これには限られない。
【0096】
例えば、インクジェットヘッド3においては、圧電アクチュエータ32を駆動したときの、圧電層42のある圧力室10と対向する部分の変形が、他の圧力室10と対向する部分に伝達することによってノズル15からのインクの噴射特性が変動してしまう、いわゆるクロストークを防止するために、図2に示す4列のノズル列7のうち、左から(一方向の一方側から)数えて1番目及び3番目(奇数番目)のノズル列7aを構成するノズル15と、左から数えて2番目及び4番目(偶数番目)のノズル列7bを構成するノズル15とで、インクの噴射タイミングを変えるように、圧電アクチュエータ32を駆動することがある。
【0097】
そして、このような場合には、図2の4列のノズル列7のうち、左から数えて1番目及び3番目(奇数番目)のノズル列7aを構成するノズル15に対応するデータ信号入力配線71c(第1噴射データ入力配線)の接続端子72に接続される複数のボンディングワイヤ81c(第1ワイヤ)の長さが互いに同じとなっているとともに、左から数えて2番目及び4番目(偶数番目)のノズル列7bを構成するノズル15に対応するデータ信号入力配線71c(第2噴射データ入力配線)の接続端子72に接続される複数のボンディングワイヤ81c(第2ワイヤ)の長さが互いに同じとなっていれば、上記第1ワイヤの長さと上記第2ワイヤ長さとは互いに異なっていてもよい。
【0098】
この場合にも、同じタイミングでインク滴を噴射するノズル15に対応する複数のボンディングワイヤ81c(第1ワイヤ同士及び第2ワイヤ同士)の長さが互いに同じとなっているため、同じタイミングでインク滴を噴射するノズル15に対応する噴射データ信号が、ドライバIC61に入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0099】
また、上述の例以外でも、入力配線71がドライバIC61に同時に入力すべき信号を伝送する複数の信号入力配線を含んでいる場合に、これらの信号入力配線に接続される複数のボンディングワイヤ81の長さが互いに同じとなっていれば、これらのボンディングワイヤ81と、他のボンディングワイヤ81とは長さが異なっていてもよい。
【0100】
また、以上では、本発明を、ノズル15からインク滴を噴射することによって印刷を行うプリンタに適用した例について説明したが、これには限られず、インク以外の液体を噴射する液体装置や、その他ドライバICによって駆動される装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
3 インクジェットヘッド
51 COF
52 FPC
61 ドライバIC
62 出力配線
63 入力端子
64 出力端子
71 入力配線
71a 電源入力配線
71b 駆動波形信号入力配線
71c データ信号入力配線
71d クロック入力配線
81 ボンディングワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバICとドライバICに接続された配線とを含むドライバICの配線接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタヘッドにおいては、圧電アクチュエータの上面にFPC(Flexible Printed Circuit)が配置されている。FPCの表面にはドライバIC(駆動ICチップ)が実装されているとともに、ドライバICから圧電アクチュエータと反対側に引き出された入力側配線と、ドライバICから圧電アクチュエータ側に引き出された出力側配線とが形成されている。さらに、FPCの圧電アクチュエータと反対側の端部にFFC(Flexible Flat Cable)が接続されることによって、入力側配線が、FFC上の配線と接続されている。
【0003】
ここで、入力側配線は、ドライバICと電源とを接続する配線や、ドライバICに記録データの信号やクロックを伝送するための配線などを含んでおり、出力側配線は、ドライバICにおいて生成した圧電アクチュエータの駆動信号を伝送するための配線を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−83707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、インクジェットプリンタにおいては、高解像度での印刷の実現などのために、ノズルの数を増やすことが考えられるが、この場合には、ノズル数の増加に合わせて出力側配線の数も増やす必要がある。
【0006】
しかしながら、この場合には、多数の出力側配線と入力側配線とが1つのFPC上に配置されることとなるため、入力側配線と出力側配線との間隔が小さくなり、その結果、例えば、入力側配線を伝送される、記録データの信号やクロックなどの比較的低電圧の信号が、出力側配線を伝送される比較的高電圧の駆動信号からノイズの影響を受けやすくなってしまう。
【0007】
そこで、本願の発明者は、FPC上には入力側配線を形成せず、FFC上の配線とドライバICとをボンディングワイヤを介して接続する(ワイヤボンディングを行う)ことを考えた。
【0008】
しかしながら、この場合でも、出力配線を流れる電流により、出力配線の周囲には磁束が発生するため、ボンディングワイヤを伝送される記録データの信号やクロックが、この磁束による影響を受けてしまう虞がある。
【0009】
また、ドライバICにおいては、端子や回路などをできるだけコンパクトに配置する必要があることから、ドライバICのボンディングワイヤと接続される入力端子の間隔は、FFCのボンディングワイヤと接続される配線の接続端子の間隔に比べて狭くなる。このため、FFC上の配線の接続端子とドライバICの入寮端子とをボンディングワイヤを介して接続した場合に、ボンディングワイヤの長さにばらつきが生じる場合がある。そして、このような場合には、複数のノズルに対応する記録データの信号をドライバICに入力する際に、信号が入力されるタイミングにばらつきが生じ、その結果、ノズルからのインクの噴射タイミングにばらつきが生じてしまう虞がある。
【0010】
本発明の目的は、ドライバICへの正確な信号の入力が可能なドライバICの配線接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1配線基板と、前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、前記ドライバICの前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、前記複数の入力配線は、ノイズの影響の受けやすさが互いに異なる複数種類の信号を伝送する複数種類の信号入力配線を含んでおり、前記複数種類の信号入力配線と接続されるボンディングワイヤは、互いに同じ長さを有しているとともに、前記第1配線基板からのループ高さが互いに異なっており、ノイズの影響を受けやすい信号を伝送する信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤほど、前記ループ高さが高いことを特徴とする。
【0012】
ドライバICのと複数の入力配線とが第1配線基板上で接続されている場合には、入力配線及び出力配線の数が多くなると、第1配線基板上に入力配線と出力配線とが密集して配置されることとなり、出力配線を伝送される駆動信号により、入力配線を伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。
【0013】
しかしながら、本発明では、複数の入力配線とドライバICとが、複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線を伝送される信号にノイズが発生してしまうのを防止することができる。
【0014】
さらに、複数種類の信号を伝送する信号入力配線に接続される複数のボンディングワイヤが、互いに同じ長さを有するものとなっているため、信号入力配線からドライバICにこれら複数種類の信号が入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0015】
また、複数の入力配線とドライバICとを複数のボンディングワイヤにより接続したとしても、ボンディングワイヤを伝送される信号は、出力配線を流れる電流によって発生する磁束の影響を受けることとなり、ボンディングワイヤのループ高さが低いほど、つまり、ボンディングワイヤが出力配線に近い位置にあるほど、上記磁束の影響を受けやすく、伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。
【0016】
しかしながら、本発明では、ノイズの影響を受けやすい信号が伝送されるボンディングワイヤほど、ループ高さが高くなっているので、ノイズの影響を受けやすい信号にノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。
【0017】
第2の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1の発明に係るドライバIC
の配線接続構造であって、前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする。
【0018】
入力配線が、ドライバICが実装されている第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されている場合、入力配線とドライバICとが、第1配線基板上の配線を介して接続されているとすると、入力配線と上記第1配線基板上の配線との接続部分においてインピーダンスが大幅に増加するため、当該インピーダンスの増加により入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまう虞がある。
【0019】
しかしながら、本発明では、第2配線基板上の複数の入力配線とドライバICとが複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線とドライバICとの間に上述のようなインピーダンスの大幅な増加の要因となる部分がなく、入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまうのを防止することができる。
【0020】
第3の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1又は第2の発明に係るドライバICの配線接続構造であって、前記ドライバICが、複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドを駆動するためのものであって、前記複数種類の信号入力配線が、クロックを入力するためのクロック入力配線と、前記複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための噴射データ信号入力配線と、前記ドライバICの前記出力端子から出力される、前記液滴噴射ヘッドを駆動するための駆動信号に対応する駆動波形の信号を入力するための駆動波形信号入力配線とを含んでおり、前記クロック入力配線、及び、前記噴射データ信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さが、前記駆動波形信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さよりも高いことを特徴とする。
【0021】
これによると、ノイズの影響を受けやすい噴射データ信号やクロックにノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。
【0022】
第4の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1〜第3のいずれかの発明に係る配線接続構造であって、前記複数の入力配線が、電源に接続された電源入力配線をさらに含んでおり、前記電源入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤは、前記複数種類の信号入力配線の接続端子に接続されるボンディングワイヤと同じ長さを有しているとともに、これらのボンディングワイヤよりもループ高さが低いことを特徴とする。
【0023】
これによると、電源よりも電圧が低く、ノイズの影響を受けやすい入力信号にノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。また、電源入力配線に接続されるボンディングワイヤと信号入力配線に接続されるボンディングワイヤとが互いに同じ長さを有しているので、長さが同じ1種類のワイヤのみを用いて全てのボンディングワイヤを形成することができる。
【0024】
第5の発明に係るドライバICの配線接続構造は、複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドと、前記液滴噴射ヘッドと接続される第1配線基板と、前記第1配線基板上に実装されており、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有し、前記液滴噴射ヘッドを駆動するドライバICと、前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、前記複数のノズルが、一方向に沿って配列された複数のノズル列を形成しており、前記ドライバICの前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、前記複数の入力配線は、前記一方向の一方側から数えて奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第1噴射データ信号入力配線と、前記一方向の一方側から数えて偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第2噴射データ信号入力配線とを含んでおり、前記複数のボンディングワイヤが、前記複数の第1噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第1ワイヤと、前記複数の第2噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第2ワイヤとを含み、前記複数の第1ワイヤが、互いに同じ長さを有しており、前記複数の第2ワイヤが、互いに同じ長さを有していることを特徴とする。
【0025】
液滴噴射ヘッドが複数のノズル列を有するものである場合、いわゆるクロストークを防止するために、奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングと、偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングとをずらす場合があるが、本発明では、このような場合に、ドライバICに奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルに対応する液滴の噴射データの信号が入力されるタイミング、及び、ドライバICに偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルに対応する液滴の噴射データが入力されるタイミングに、それぞればらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0026】
第6の発明に係るドライバICの配線接続構造は、第1配線基板と、前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線端子の間隔よりも狭くなっており、前記複数のボンディングワイヤは、前記第1配線基板からのループ高さが互いに同じとなっていることを特徴とする。
【0027】
ドライバICと複数の入力配線とが第1配線基板上で接続されている場合には、入力配線及び出力配線の数が多くなると、第1配線基板上に入力配線と出力配線とが密集して配置されることとなり、出力配線を伝送される駆動信号(電流)により、入力配線を伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。
【0028】
しかしながら、本発明では、複数の入力配線とドライバICとが、複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線を伝送される信号にノイズが発生してしまうのを防止することができる。
【0029】
また、ボンディングワイヤを伝送される信号は、出力配線を流れる電流によって発生する磁束の影響を受けることとなるが、ボンディングワイヤのループ高さが低いほど、つまり、ボンディングワイヤが出力配線に近い位置にあるほど、上記磁束の影響を受けやすく、伝送される信号にノイズが発生しやすくなる。そのため、複数のボンディングワイヤのループ高さにばらつきがあると、ボンディングワイヤからドライバICに入力される信号などに発生するノイズにばらつきが生じてしまう虞がある。
【0030】
しかしながら、本発明では、複数のボンディングワイヤのループ高さが互いに同じとなっているため、各ボンディングワイヤを伝送される信号に発生するノイズにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0031】
第7の発明に係るドライバICに配線接続構造は、第6の発明に係るドライバICの配線接続構造であって、前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする。
【0032】
入力配線が、ドライバICが実装されている第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されている場合、入力配線とドライバICとが、第1配線基板上の配線を介して接続されているとすると、入力配線と上記第1配線基板上の配線との接続部分においてインピーダンスが大幅に増加するため、当該インピーダンスの増加により入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまう虞がある。
【0033】
しかしながら、本発明では、第2配線基板上の複数の入力配線とドライバICとが複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線とドライバICとの間に上述のようなインピーダンスの大幅な増加の要因となる部分がなく、入力配線を伝送される信号が大きく減衰してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、複数の入力配線とドライバICとが、複数のボンディングワイヤにより接続されているため、入力配線を伝送される信号にノイズが発生してしまうのを防止することができる。
【0035】
さらに、互いに異なる種類の信号を伝送する複数種類の信号入力配線に接続される複数のボンディングワイヤが互いに同じ長さを有するものとなっているため、信号入力配線からドライバICにこれら複数種類の信号が入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図5を矢印VIの方向から見た図である。
【図7】第2実施形態の図4相当の図である。
【図8】第2実施形態の図5相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0038】
図1は、第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(液滴噴射ヘッド)、用紙搬送ローラ4などを備えている。
【0039】
キャリッジ2は、ガイド軸5に沿って走査方向(図1の左右方向)に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に取り付けられており、その下面に形成された複数のノズル15(図2参照)からインク滴を噴射する。用紙搬送ローラ4は、記録用紙Pを紙送り方向(図1の手前方向)に搬送する。
【0040】
そして、プリンタ1においては、用紙搬送ローラ4により紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインク滴を噴射することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0041】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2はインクジェットヘッド3の平面図である。図3は図2の部分拡大図である。図4は図3のIV−IV線断面図である。図2〜図4に示すように、インクジェットヘッド3は、後述する圧力室10やノズル15などのインク流路が形成された流路ユニット31と、流路ユニット31の上面に配置された圧電アクチュエータ32とを備えている。
【0042】
流路ユニット31は、キャビティプレート21、ベースプレート22、マニホールドプレート23及びノズルプレート24が互いに積層されることによって形成されている。ここで、これら4枚のプレート21〜24のうち、ノズルプレート24を除いた3枚のプレート21〜23はステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート24は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。あるいは、ノズルプレート24も他の3枚のプレート21〜23と同様の金属材料によって構成されていてもよい。
【0043】
キャビティプレート21には、複数の圧力室10が形成されている。圧力室10は、その平面形状が、走査方向(図2の左右方向)を長手方向とする略楕円となっている。また、複数の圧力室10は、紙送り方向に配列されることによって1つの圧力室列8を形成しているとともに、このような圧力室列8が、紙送り方向に4列に配列されている。ベースプレート22には、各圧力室10の長手方向に関する両端部に、それぞれ、略円形の貫通孔12、13が形成されている。
【0044】
マニホールドプレート23には、マニホールド流路11が形成されている。マニホールド流路11は、各圧力室列8を構成する複数の圧力室10の略右半分と対向する部分において、それぞれ紙送り方向に延びているとともに、紙送り方向に延びた部分同士が、図2における下側端部において互いに接続されている。また、マニホールド流路11には、その図2における下側の端部に設けられたインク供給口9からインクが供給される。また、マニホールドプレート23には、各貫通孔13と対向する部分に略円形の貫通孔14が形成されている。
【0045】
ノズルプレート24には、各貫通孔14と対向する部分にノズル15が形成されており、これらのノズル15は、圧力室10と同様、紙送り方向に配列されることによって1つのノズル列7を形成しているとともに、このようなノズル列7が走査方向に4列に配列されている。
【0046】
そして、流路ユニット31においては、マニホールド流路11が貫通孔12を介して圧力室10に連通しており、さらに、圧力室10は、貫通孔13、14を介してノズル15に連通している。このように、流路ユニット31には、マニホールド流路11の出口から圧力室10を経てノズル15に至る複数の個別インク流路が形成されている。
【0047】
圧電アクチュエータ32は、振動板41、圧電層42、複数の個別電極43などを備えている。振動板41は、ステンレスなどの金属材料からなり、複数の圧力室10を覆うように、キャビティプレート21の上面に接合されている。
【0048】
圧電層42は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、振動板41の上面に複数の圧力室10にまたがって連続的に形成されている。また、圧電層42は、各圧力室10と対向する部分が、その厚み方向に分極されている。
【0049】
複数の個別電極43は、圧電層42の上面に、複数の圧力室10に対して個別に形成されている。各個別電極43は、圧力室10よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、各圧力室10の略中央部と対向するように配置されている。また、各個別電極43の図2の右端部は、圧力室10と対向しない部分まで延びており、その先端部が接続端子43aとなっている。接続端子43aの上面には、ランド44が形成されており、ランド44には、COF(Chip On Film)51(第1配線基板)の後述する出力配線62が接続されており、これにより、個別電極43は、後述するように出力配線62を介してドライバIC61と接続されている。そして、個別電極43には、ドライバIC61により、出力配線62及びランド44を介して駆動電圧(駆動信号)が付与される。
【0050】
また、導電性を有する上記振動板41は、圧電層42に形成された図示しないスルーホールを介して圧電層42の上面に形成された図示しない表面電極に接続されており、この表面電極は、さらに、その上面に形成された図示しないランド、及び、COF51に形成された出力配線62を介してドライバIC61と接続されている。そして、振動板41はドライバIC61により常にグランド電位に保持されており、圧電アクチュエータ32を駆動する際の共通電極を兼ねている。
【0051】
ここで、COF51について説明する前に、圧電アクチュエータ32の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ32においては、複数の個別電極43は、予めグランド電位に保持されている。そして、ドライバIC61により、いずれかの個別電極43に駆動電位が付与されると、圧電層42のこの個別電極43と共通電極としての振動板41とに挟まれた部分に電位差が生じ、この電位差によって圧電層42のこの部分に厚み方向の電界が発生する。この電界の方向は圧電層42の分極方向と一致しているため、圧電層42のこの部分は、分極方向と直交する水平方向に収縮し、これにより、振動板41及び圧電層42の圧力室10と対向する部分が全体として、圧力室10側に凸となるように変形する。この変形により、圧力室10の容積が小さくなって、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、このインクの圧力上昇により、圧力室10に連通するノズル15からインク滴が噴射される。
【0052】
次に、COF51及びCOF51に接続されるFPC(Flexible Printed circuit)52(第2配線基板)について説明する。図5は図4のCOF51及びFPC52のドライバIC61近傍の部分の拡大図である。図6は図5を矢印VIの方向から見た図である。なお、図面を見やすくするため、図6では、後述する出力端子64のうち、後述する入力端子63と重なる位置に配置されているものの図示を省略している。
【0053】
図4〜図6に示すように、COF51は、圧電アクチュエータ32の上方に配置されており、圧電アクチュエータ32と対向する部分において水平方向に延びているとともに、圧電アクチュエータ32と対向しないその一端部が折り曲げられて上方に延びている。また、COF51の上方に延びた部分の上端部はFPC52の一端部に接続されている。なお、FPC52の他端部は、図示しない本体基板の制御装置に接続されている。
【0054】
COF51には、ドライバIC61が実装されているとともに、複数の出力配線62が形成されている。ドライバIC61は、略矩形の平面形状を有しており、COF51の、上記上方に延びた部分の図4における右側の面に、図6の左右方向がその長手方向となるように実装されている。また、ドライバIC61のCOF51と反対側の面(以下、ドライバIC61の上面とする)には、図6の左右方向にほぼ等間隔に配列された複数の入力端子63が設けられている。また、ドライバIC61のCOF51側の面(以下、ドライバIC61の下面とする)には、その図6における上側及び下側の端部に、それぞれ、図6の左右方向にほぼ等間隔に配列された複数の出力端子64a、64bが設けられている。
【0055】
ここで、複数の入力端子63は、図示しない本体基板からドライバIC61に電源の供給や、信号の入力などを行うためのものであり、複数の出力端子64a、64bは、ドライバIC63から圧電アクチュエータ32を駆動する駆動信号などを出力するためのものである。
【0056】
複数の出力配線62は、複数のノズル15に対応して設けられており、ドライバIC61の出力端子64a、64bに接続されている。そして、出力配線62のうち、出力端子64aに接続された出力配線62aは、出力端子64aから図6の下方に延び、そのままCOF51の延在方向に沿って、対応するランド44と重なる部分まで延びている。一方、出力端子64bに接続された出力配線62bは、出力端子64bから図6の上方に延びているとともに途中で約180°反転し、その後、ドライバIC61を避けるようにしてCOF51の延在方向に沿って、対応するランド44と重なる部分まで延びている。
【0057】
ここで、本実施形態のプリンタ1においては、例えば、高解像度での印刷を実現するために、インクジェットヘッド3には多数のノズル15が形成されているが、ドライバIC61の圧電アクチュエータ32側(図6の下側)、及び、圧電アクチュエータ32と反対側(図6の上側)の両側から出力配線62a、62bを引き出すことによって、COF51上に、上記多数のノズル15に対応した出力配線62を形成している。
【0058】
そして、ドライバIC61は、上述したように、出力配線62及びランド44を介して、個別電極43に駆動電位を付与するとともに、共通電極としての振動板41をグランド電位に保持する。
【0059】
FPC52には、複数の入力配線71が形成されている。複数の入力配線71は、それぞれがFPC52の延在方向(図6の上下方向)に、FPCの全長にわたって延びているとともに、図6の左右方向にほぼ等間隔に配列されている。また、各入力配線71の図6における下側の端部には、それぞれ、接続端子72が設けられている。
【0060】
そして、複数の入力配線71の接続端子72は、それぞれ、COF51上の出力配線62bをまたぐように延びた複数のボンディングワイヤ81を介して、ドライバIC61の複数の入力端子63と接続されている。複数のボンディングワイヤ81は、金などの導電性材料からなるワイヤであり、その両端部が、それぞれ、入力端子63及び接続端子72に押し当てられるとともに、押し当てた部分に超音波が照射されることによって、入力端子63及び接続端子72に接合されている。また、複数のボンディングワイヤ81は全て同じ長さを有している。
【0061】
ここで、ドライバIC61は、高集積化のため、入力端子63を配置するためのスペースに大きな制約があるのに対して、FPC52はドライバIC61に比べてスペースに余裕があるので、接続端子72の間隔は、入力端子63の間隔よりも広くなっている。そのため、図6の左右方向に関する内側ほど、入力端子63と接続端子72との直線距離が短くなっている。
【0062】
したがって、互いに同じ長さを有する複数のボンディングワイヤ81は、図5に示すように、そのループ高さが互いに異なっており、直線距離の短い図6の左右方向に関する内側の入力端子63と接続端子72とを接続するボンディングワイヤ81ほど、そのループ高さが高くなっている。
【0063】
また、複数の入力配線71には、図示しない本体基板に設けられた電源に接続された電源入力配線71a、ドライバIC61に駆動波形信号を入力するための駆動波形信号入力配線71b、ドライバIC61にノズル15からのインクの噴射データの信号を入力するための複数のデータ信号入力配線71c、クロックを入力するためのクロック入力配線71dが含まれている。なお、本実施の形態では、駆動波形信号入力配線71b、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dが、本発明に係る信号入力配線である。
【0064】
ここで、駆動波形信号とは、出力端子64から出力される駆動信号に対応する駆動波形の信号であり、出力端子64からは、駆動波形の信号が電源電圧で増幅された信号が駆動信号として出力される。
【0065】
また、噴射データ信号とは、ノズル15からのインクの噴射タイミングを示す信号であり、噴射データ信号が示すタイミングで、ドライバIC61の出力端子64から上記駆動信号が出力される。このとき、例えば、ノズル15から複数種類の体積のインク滴を噴射できるようにする場合など、上記駆動波形信号が複数種類ある場合には、噴射データ信号は、ノズル15からのインクの噴射タイミングとともに、どの駆動波形信号を選択するかも示している。また、クロックは、ドライバIC61の駆動のタイミングの基準となる信号である。
【0066】
そして、これらの配線71a〜71dは、駆動波形信号入力配線71bが電源入力配線71aよりも内側にくるとともに、データ信号入力配線71cやクロック入力配線71dが、駆動波形信号入力配線71bよりもさらに内側にくるように配置されている。
【0067】
これにより、電源入力配線71aは、ループ高さの低いボンディングワイヤ81aに接続され、駆動波形信号入力配線71bは、ボンディングワイヤ81aよりもループ高さの高いボンディングワイヤ81bと接続され、データ信号入力配線71cやクロック入力配線71dは、ボンディングワイヤ81bよりもさらにループ高さの高いボンディングワイヤ81cに接続されている。
【0068】
そして、ドライバIC61(出力端子64a、64b)から駆動信号が出力されることにより、上述したように、個別電極43に駆動電位が付与されて、圧電アクチュエータ32が駆動され、ノズル15からインク滴が噴射される。
【0069】
また、ここで、本実施の形態とは異なり、入力端子63をドライバIC61の下面に設け、複数の入力配線71と入力端子63とをCOF51上に形成された配線を介して接続することも考えられる。
【0070】
しかしながら、この場合には、出力配線62bがCOF51の、FPC52との接続部分とドライバIC61との間の部分に配置されているため、出力配線62bと、入力配線71と入力端子63とを接続するための配線とが互いに近接した位置に配置されることとなってしまう。そのため、出力配線62bを伝送される駆動信号の影響によって、入力配線71を伝送されてドライバIC61に入力される信号などにノイズが発生してしまう虞がある。
【0071】
このとき、ドライバIC61に入力される電源の電圧は、出力配線62を伝送される駆動信号の電圧と同程度(例えば、20V程度)であるため、上記ノイズの影響はそれほど大きくはないが、駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどは、電源電圧よりも低電圧(例えば、3.3V程度)の信号であるため、上記ノイズの影響を受けやすい。
【0072】
さらに、駆動波形信号にノイズが発生したとしても、これに対応して出力端子64から出力される駆動信号に多少ゆがみなどが生じる虞はあるものの、これによって駆動信号自体が出力されないといったことはなく、印刷品質が大幅に低下してしまうことは少ない。
【0073】
これに対して、インクの噴射タイミングを示す駆動データ信号や、ドライバIC61の駆動のタイミングの基準となるクロックにノイズが発生してしまうと、インク滴を噴射すべきタイミングでノズル15からインク滴が噴射されなかったり、これとは逆に、インク滴を噴射すべきタイミング以外のタイミングでインク滴が噴射されたり、選択されるべき駆動波形信号とは異なる駆動波形信号に対応する駆動信号によって圧電アクチュエータ32が駆動されたりするなどの問題が発生し、これらの問題が発生した場合には、印刷品質が大幅に低下してしまう虞がある。
【0074】
以上のことから、本実施の形態では、駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどの信号は、電源電圧に比べてノイズの影響を受けやすく、さらに、噴射データ信号やクロックは、その中でも特にノイズの影響を受けやすいといえる。
【0075】
また、この場合には、FPC52上の入力配線71の接続端子72と、COF51上の入力端子63に接続される配線の接続端子とをCOF51とFPC52との接続部分において接続することとなる、すなわち、互いに異なる配線基板上の接続端子同士をこれらの配線基板の接続部分において直接接続することとなるため、これらの接続端子の接続部分においてインピーダンスが大幅に増加し、このインピーダンスの増加によってドライバIC61に入力される信号の電圧が大きく減衰してしまう虞がある。特に、駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどは低電圧であるため、このような電圧の減衰は大きな問題となる。
【0076】
これに対して、本実施の形態では、FPC52上の入力配線71の接続端子72と、ドライバIC61の入力端子63とが、出力配線62から離隔したボンディングワイヤ81によって接続されているため、出力配線62を伝送される駆動信号によって、入力信号71を伝送されてドライバIC61に入力される噴射データ信号やクロックにノイズが発生しにくくなる。また、入力配線71と入力端子63との間に上述のようなインピーダンスの増加の要因となる部分がないため、入力配線71を伝送される信号などが減衰しにくい。
【0077】
さらに、複数のボンディングワイヤ81の長さが全て同じとなっているため、ボンディングワイヤ81を介してドライバIC61に、上述した駆動波形信号、噴射データ信号、クロックなどが入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのが防止され、これにより、複数のノズル15からのインクの噴射タイミングにばらつきが生じてしまうのが防止される。
【0078】
また、複数のボンディングワイヤ81の長さが全て同じであるので、長さが同じ1種類のワイヤのみを用いて全てのボンディングワイヤ81を形成することができる。
【0079】
ただし、接続端子72と入力端子63とがボンディングワイヤ81により接続されている場合でも、ボンディングワイヤ81を伝送される信号などには、駆動信号が伝送される際に出力配線62に流れる電流によって発生する磁束の影響によってノイズが発生してしまう虞がある。また、このとき、ボンディングワイヤ81の上記ループ高さが低い、つまり、ボンディングワイヤ81が出力配線62に近い位置にあるほど、上記磁束の影響は大きくなり、ノイズが発生しやすくなる。
【0080】
そこで、本実施の形態では、上述したように、ノイズの影響を受けにくい電源の電圧が入力される電源入力配線71aを、ループ高さの低いボンディングワイヤ81aに接続し、電源の電圧よりもノイズの影響を受けやすい駆動波形信号が伝送される駆動波形信号入力配線71bをボンディングワイヤ81aよりもループ高さの高いボンディングワイヤ81bに接続している。さらに、駆動波形信号よりもノイズの影響を受けやすい噴射データ信号やクロックが伝送される、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dを、ボンディングワイヤ81bよりもさらにループ高さの高いボンディングワイヤ81cに接続している。
【0081】
そして、これにより、ノイズの影響を受けやすい信号に、出力配線62を流れる電流によって発生する磁束によるノイズが発生してしまうのを極力抑えることができる。
【0082】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。ただし、第1実施形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0083】
図7は第2実施形態における図5相当の図である。図8は第2実施形態における図6相当の図である。図7、図8に示すように、第2実施形態においては、複数のボンディングワイヤ91のループ高さが全て同じとなっている。ただし、この場合には、上述したように、ドライバIC61の入力端子63の間隔が、FPC52の接続端子72の間隔よりも狭くなっているため、複数のボンディングワイヤ91の長さは互いに異なっており、図8の左右方向に関して内側に位置しているものほどその長さが短くなっている。
【0084】
また、第2実施形態においても、図8に示すように、上述の電源入力配線71a、駆動波形信号入力配線71b、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dのうち、駆動波形信号入力配線71bが電源入力配線71aよりも内側に配置されているとともに、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dが、駆動波形信号入力配線71bよりもさらに内側に配置されている。
【0085】
これにより、駆動波形信号入力配線71bは、電源入力配線71aに接続されるボンディングワイヤ91aよりも長さの短いボンディングワイヤ91bに接続され、データ信号入力配線71c及びクロック入力配線71dは、ボンディングワイヤ91bよりもさらに長さの短いボンディングワイヤ91cに接続されている。
【0086】
この場合でも、第1実施形態と同様、FPC52上の入力配線71の接続端子と、ドライバIC61の入力端子63とが、出力配線62から離隔したボンディングワイヤ91によって接続されているため、出力配線62を伝送される駆動信号によってドライバIC61に入力される噴射データ信号やクロックにノイズが発生しにくくなり、また、入力配線71と入力端子63との間に上述のようなインピーダンスの増加の要因となる部分がないため、入力配線71を伝送される信号などが減衰しにくい。
【0087】
また、上述したように、接続端子72と入力端子63とがボンディングワイヤ91により接続されている場合でも、ボンディングワイヤ81を伝送される信号などには、出力信号が伝送される際に出力配線62に流れる電流によって発生する磁束の影響によってノイズが発生してしまう虞があり、ボンディングワイヤ91のループ高さが低いほど、上記磁束の影響を大きく受けてノイズが発生しやすくなるため、ボンディングワイヤ91のループ高さにばらつきがあると、ボンディングワイヤ91を伝送される信号などに生じるノイズにばらつきが生じてしまう虞がある。
【0088】
しかしながら、第2実施形態では、複数のボンディングワイヤ91のループ高さが互いに同じとなっているため、各ボンディングワイヤ91からドライバIC61に入力される信号などに発生するノイズにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0089】
なお、このように、ボンディングワイヤ91のループ高さを全て同じとすれば、各ボンディングワイヤ91からドライバIC61に入力される信号に発生するノイズのばらつきは小さくなるものの、ボンディングワイヤ91の長さの違いによって、伝送される信号に発生するノイズには僅かにばらつきがあり、ボンディングワイヤ91の長さが長いほど、発生するノイズは大きくなりやすい。
【0090】
そこで、第2実施形態では、上述したように、ノイズの影響を受けやすい信号が伝送される入力配線71ほど内側に配置された長さの短いボンディングワイヤ91に接続しており、これにより、ノイズの影響を受けやすい信号に発生するノイズを極力抑えることができる。
【0091】
次に、第1、第2実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0092】
第1、第2実施形態では、入力配線71が、ドライバIC61が実装されたCOF51とは異なるFPC52上に形成されていたが、入力配線71は、ドライバIC61が実装されているのと同じCOF51上に形成されていてもよい。
【0093】
また、第1実施形態では、ドライバIC61に駆動波形信号、噴射データ信号、クロックが入力信号として入力される場合について説明したが、これらの信号以外の信号がドライバIC61に入力されるようになっており、ノイズの影響を受けやすい信号を入力するための入力配線71ほど、ループ高さの高いボンディングワイヤ81に接続されていてもよい。また、この場合でも、信号が伝送される入力配線71は、全て、電源入力配線71aと接続されるものよりもループ高さの高いボンディングワイヤ81に接続されることが好ましい。
【0094】
さらに、第2実施形態においても、駆動波形信号、噴射データ信号、クロック以外の信号がドライバIC61に入力されるようになっており、ノイズの影響を受けやすい信号を入力するための入力配線71ほど長さの短いボンディングワイヤ91に接続されていてもよい。また、この場合でも、信号が伝送される入力配線71は、全て、電源入力配線71aと接続されるものよりも長さの短いボンディングワイヤ91に接続されることが好ましい。
【0095】
また、第1実施形態では、全てのボンディングワイヤ81の長さが同じとなっていたが、これには限られない。
【0096】
例えば、インクジェットヘッド3においては、圧電アクチュエータ32を駆動したときの、圧電層42のある圧力室10と対向する部分の変形が、他の圧力室10と対向する部分に伝達することによってノズル15からのインクの噴射特性が変動してしまう、いわゆるクロストークを防止するために、図2に示す4列のノズル列7のうち、左から(一方向の一方側から)数えて1番目及び3番目(奇数番目)のノズル列7aを構成するノズル15と、左から数えて2番目及び4番目(偶数番目)のノズル列7bを構成するノズル15とで、インクの噴射タイミングを変えるように、圧電アクチュエータ32を駆動することがある。
【0097】
そして、このような場合には、図2の4列のノズル列7のうち、左から数えて1番目及び3番目(奇数番目)のノズル列7aを構成するノズル15に対応するデータ信号入力配線71c(第1噴射データ入力配線)の接続端子72に接続される複数のボンディングワイヤ81c(第1ワイヤ)の長さが互いに同じとなっているとともに、左から数えて2番目及び4番目(偶数番目)のノズル列7bを構成するノズル15に対応するデータ信号入力配線71c(第2噴射データ入力配線)の接続端子72に接続される複数のボンディングワイヤ81c(第2ワイヤ)の長さが互いに同じとなっていれば、上記第1ワイヤの長さと上記第2ワイヤ長さとは互いに異なっていてもよい。
【0098】
この場合にも、同じタイミングでインク滴を噴射するノズル15に対応する複数のボンディングワイヤ81c(第1ワイヤ同士及び第2ワイヤ同士)の長さが互いに同じとなっているため、同じタイミングでインク滴を噴射するノズル15に対応する噴射データ信号が、ドライバIC61に入力されるタイミングにばらつきが生じてしまうのを防止することができる。
【0099】
また、上述の例以外でも、入力配線71がドライバIC61に同時に入力すべき信号を伝送する複数の信号入力配線を含んでいる場合に、これらの信号入力配線に接続される複数のボンディングワイヤ81の長さが互いに同じとなっていれば、これらのボンディングワイヤ81と、他のボンディングワイヤ81とは長さが異なっていてもよい。
【0100】
また、以上では、本発明を、ノズル15からインク滴を噴射することによって印刷を行うプリンタに適用した例について説明したが、これには限られず、インク以外の液体を噴射する液体装置や、その他ドライバICによって駆動される装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
3 インクジェットヘッド
51 COF
52 FPC
61 ドライバIC
62 出力配線
63 入力端子
64 出力端子
71 入力配線
71a 電源入力配線
71b 駆動波形信号入力配線
71c データ信号入力配線
71d クロック入力配線
81 ボンディングワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線基板と、
前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、
前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、
前記複数の入力配線は、ノイズの影響の受けやすさが互いに異なる複数種類の信号を伝送する複数種類の信号入力配線を含んでおり、
前記複数種類の信号入力配線と接続されるボンディングワイヤは、互いに同じ長さを有しているとともに、前記第1配線基板からのループ高さが互いに異なっており、
ノイズの影響を受けやすい信号を伝送する信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤほど、前記ループ高さが高いことを特徴とするドライバICの配線接続構造。
【請求項2】
前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項3】
前記ドライバICが、複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドを駆動するためのものであって、
前記複数種類の信号入力配線が、
クロックを入力するためのクロック入力配線と、
前記複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための噴射データ信号入力配線と、
前記ドライバICの前記出力端子から出力される、前記液滴噴射ヘッドを駆動するための駆動信号に対応する駆動波形の信号を入力するための駆動波形信号入力配線とを含んでおり、
前記クロック入力配線、及び、前記噴射データ信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さが、前記駆動波形信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さよりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項4】
前記複数の入力配線が、電源に接続された電源入力配線をさらに含んでおり、
前記電源入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤは、前記複数種類の信号入力配線の接続端子に接続されるボンディングワイヤと同じ長さを有しているとともに、これらのボンディングワイヤよりも前記ループ高さが低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項5】
複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドと、
前記液滴噴射ヘッドと接続される第1配線基板と、
前記第1配線基板上に実装されており、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有し、前記液滴噴射ヘッドを駆動するドライバICと、
前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、
前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記複数のノズルが、一方向に沿って配列された複数のノズル列を形成しており、
前記ドライバICの前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、
前記複数の入力配線は、
前記一方向の一方側から数えて奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第1噴射データ信号入力配線と、
前記一方向の一方側から数えて偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第2噴射データ信号入力配線とを含んでおり、
前記複数のボンディングワイヤが、前記複数の第1噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第1ワイヤと、前記複数の第2噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第2ワイヤとを含み、
前記複数の第1ワイヤが、互いに同じ長さを有しており、
前記複数の第2ワイヤが、互いに同じ長さを有していることを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項6】
第1配線基板と、
前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、
前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、
前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線端子の間隔よりも狭くなっており、
前記複数のボンディングワイヤは、前記第1配線基板からのループ高さが互いに同じとなっていることを特徴とするドライバICの接続構造。
【請求項7】
前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項1】
第1配線基板と、
前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、
前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、
前記複数の入力配線は、ノイズの影響の受けやすさが互いに異なる複数種類の信号を伝送する複数種類の信号入力配線を含んでおり、
前記複数種類の信号入力配線と接続されるボンディングワイヤは、互いに同じ長さを有しているとともに、前記第1配線基板からのループ高さが互いに異なっており、
ノイズの影響を受けやすい信号を伝送する信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤほど、前記ループ高さが高いことを特徴とするドライバICの配線接続構造。
【請求項2】
前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項3】
前記ドライバICが、複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドを駆動するためのものであって、
前記複数種類の信号入力配線が、
クロックを入力するためのクロック入力配線と、
前記複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための噴射データ信号入力配線と、
前記ドライバICの前記出力端子から出力される、前記液滴噴射ヘッドを駆動するための駆動信号に対応する駆動波形の信号を入力するための駆動波形信号入力配線とを含んでおり、
前記クロック入力配線、及び、前記噴射データ信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さが、前記駆動波形信号入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤの前記ループ高さよりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項4】
前記複数の入力配線が、電源に接続された電源入力配線をさらに含んでおり、
前記電源入力配線の前記接続端子に接続されるボンディングワイヤは、前記複数種類の信号入力配線の接続端子に接続されるボンディングワイヤと同じ長さを有しているとともに、これらのボンディングワイヤよりも前記ループ高さが低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドライバICの配線接続構造。
【請求項5】
複数のノズルから液滴を噴射する液滴噴射ヘッドと、
前記液滴噴射ヘッドと接続される第1配線基板と、
前記第1配線基板上に実装されており、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有し、前記液滴噴射ヘッドを駆動するドライバICと、
前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、
前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記複数のノズルが、一方向に沿って配列された複数のノズル列を形成しており、
前記ドライバICの前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線の前記接続端子の間隔よりも狭くなっており、
前記複数の入力配線は、
前記一方向の一方側から数えて奇数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第1噴射データ信号入力配線と、
前記一方向の一方側から数えて偶数番目のノズル列を構成する複数のノズルからの液滴の噴射タイミングを示す噴射データの信号を入力するための複数の第2噴射データ信号入力配線とを含んでおり、
前記複数のボンディングワイヤが、前記複数の第1噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第1ワイヤと、前記複数の第2噴射データ信号入力配線の前記接続端子と接続される複数の第2ワイヤとを含み、
前記複数の第1ワイヤが、互いに同じ長さを有しており、
前記複数の第2ワイヤが、互いに同じ長さを有していることを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項6】
第1配線基板と、
前記第1配線基板上に実装され、入力用の入力端子と出力用の出力端子とをそれぞれ複数有するドライバICと、
前記第1配線基板上に形成されているとともに、前記ドライバICの前記出力端子に接続された複数の出力配線と、
前記入力端子との接続を行うための接続端子をそれぞれ有する複数の入力配線と、
前記ドライバICの前記入力端子と前記複数の入力配線の前記接続端子とを接続する複数のボンディングワイヤとを備えており、
前記入力端子の間隔が、前記複数の入力配線端子の間隔よりも狭くなっており、
前記複数のボンディングワイヤは、前記第1配線基板からのループ高さが互いに同じとなっていることを特徴とするドライバICの接続構造。
【請求項7】
前記複数の入力配線が、前記第1配線基板とは別の第2配線基板上に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のドライバICの配線接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−152757(P2011−152757A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16974(P2010−16974)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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