説明

ドライ真空ポンプ装置

【課題】適正な位置にポンプ内の過圧縮を防止する過圧縮防止機構を設け、過負荷による回転数低下を抑制させることにより、排気時間を短縮できる多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置を提供すること。
【解決手段】多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置であって、多段ルーツ型ドライ真空ポンプの最終段に気体を吐出す最終段吐出口(吐出口18)、圧縮比の高い位置に中抜吐出口(圧力逃し孔19)を備え、最終段吐出口(吐出口18)に逆止弁(排気部逆止弁51)を接続して大気領域に開放し、中抜吐出口(圧力逃し孔19)に過圧縮防止逆止弁(中間部逆止弁52)を接続して大気領域に開放した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置に関し、特に過圧縮ガスを逃がす機構を備えた多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気圧から動作が可能で、クリーンな真空環境が容易に得られるドライ真空ポンプが、半導体製造設備等の幅広い分野で使用されている。特に半導体デバイスの製造は、300以上の工程数からなり、そこで使用される真空ポンプの数も非常に多い。そのため真空ポンプ装置の省フットプリント化は工場内の敷地面積を有効に利用する上で非常に重要である。特に真空ポンプ装置の幅に合せて複数の真空ポンプ装置を並べて設置することが多いため、幅を小さくすることが重要である。このような要望に応えるドライ真空ポンプとして、多段ルーツ型ドライ真空ポンプがある。
【0003】
このような、多段ルーツ型ドライ真空ポンプで大容量チャンバの排気を行うと大流量のガスが流れ、ポンプ各段の排気速度の違いによりポンプ内部が過圧縮になる。それにより圧縮動力が増加して過負荷防止の回転数制御がかかり回転数が低下する。回転数が低下すると排気速度も低下する。その結果、チャンバの排気時間が長くなり、半導体や液晶のデバイス製造リードタイムを長くしてしまうということになる。この対策としてポンプの中段に中抜吐出口を設け、該中段中抜吐出口から過圧縮ガスを吐出し、ポンプ内部の過圧縮を防止する過圧縮防止機構を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−289167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多段ルーツ型ドライ真空ポンプにおいて、一般に初段のロータ室の容積は設計する真空ポンプの排気速度により決定される。このため、排気速度の大きな真空ポンプを設計する場合は、初段のロータ室の容積を大きくすることが必要となる。これに対し、最終段のロータ室の容積は、最終段のロータ室での前後の圧力差によって発熱(圧縮熱)、及びその圧力差に抗してロータを回転させるモータの消費電力を抑えるために小さくする必要がある。しかしながら、最終段のロータ室の容積を小さくすると、スムーズに排気できなくなる。このように、容積比と発熱とはトレードオフの関係にあるため、どの点を重視して真空ポンプを設計するかによって、容積比(圧縮比)を大きくするか小さくするかを決定することになる。この容積比(圧縮比)と過圧縮防止機構の取り付け位置が排気速度を短縮する上で重要になっている。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、適正な位置にポンプ内の過圧縮を防止する過圧縮防止機構を設け、過負荷による回転数低下を抑制させることにより、排気時間を短縮できる多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置であって、多段ルーツ型ドライ真空ポンプの最終段に気体を吐出す最終段吐出口、圧縮比の高い位置に中抜吐出口を備え、最終段吐出口に逆止弁を接続して大気領域に開放し、中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続して大気領域に開放したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は上記ドライ真空ポンプにおいて、多段ルーツ型ドライ真空ポンプは5段のロータ室と、各段のロータ室に配置したロータを備えた5段ルーツ型ドライ真空ポンプであり、中抜吐出口を2段目のロータ室に連通して設け、1段目のロータの軸方向の幅を2段目のロータの軸方向の幅の2倍以上としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は上記ドライ真空ポンプ装置において、逆止弁の吐出口及び過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサの下流側の排気流路を装置排気口に接続して大気領域に開放したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記ドライ真空ポンプ装置において、逆止弁、過圧縮防止逆止弁、排気流路、及びサイレンサを排気ユニットとして一体に構成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記ドライ真空ポンプ装置において、多段ルーツ型ドライ真空ポンプはブースタポンプとメインポンプとからなり、ブースタポンプの最終段吐出口にメインポンプの1段目の吸込口を接続し、排気ユニットはメインポンプに設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多段ルーツ型ドライ真空ポンプの圧縮比の高い位置に中抜吐出口を備え、該中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続して大気領域に開放したので、過負荷による回転数数の低下を抑制でき、排気時間を短縮することが可能となる。
【0013】
本発明によれば、多段ルーツ型ドライ真空ポンプは5段ルーツ型ドライ真空ポンプであり、中抜吐出口を2段目のロータ室に連通して設け、1段目のロータの軸方向の幅を2段目のロータの軸方向の幅の2倍以上としたので、2段目のロータ室の圧縮比は高く、該2段目のロータ室に連通する中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続して大気領域に開放することにより、過負荷による回転数数の低下が効果的に抑制でき、排気時間を短縮することが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、逆止弁の吐出口及び過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサの下流側の排気流路を装置排気口に接続したので、最終吐出口から吐き出される気体の騒音と、中抜吐出口から吐き出される過圧縮機体の騒音とを消音(低減)できる。
【0015】
また、本発明によれば、逆止弁、過圧縮防止逆止弁、排気流路、及びサイレンサを排気ユニットとして一体に構成したので、ドライ真空ポンプの排気系統の部品点数の削減が可能で小型化でき、装置全体の小型化及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るドライ真空ポンプ装置が備える多段ルーツ型ドライ真空ポンプの縦断面構造を示す図である。
【図2】図1の多段ルーツ型ドライ真空ポンプの横断面構造を示す図である。
【図3】多段ルーツ型ドライ真空ポンプの各ロータの軸方向幅寸法を示す図である。
【図4】本発明に係るドライ真空ポンプ装置のフローシートを示す図である。
【図5】排気ユニットの構造を説明するための図である。
【図6(a)】排気ユニットの断面構造を示す平面図である。
【図6(b)】排気ユニットの断面構造を示す正面図である。
【図7】排気ユニットのサイレンサ部の構造を示す図である。
【図8】本発明に係るドライ真空ポンプ装置のフローシートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。先ず本発明に係るドライ真空ポンプ装置が備える多段ルーツ型ドライ真空ポンプを図1及び図2を用いて説明する。図1は多段ルーツ型ドライ真空ポンプの全体構成を示す縦断面図であり、図2は図1のA−A断面図である。本多段ルーツ型ドライ真空ポンプ10は5段のポンプであり、2本の回転軸11a、11bに一対の5段のルーツ型ロータ12a、12b、12c、12d、12eがそれぞれ固定されている。回転軸11a、11bはそれぞれ軸受20、21により回転自在に支持されている。なお、以下の説明では、一対のロータ12a、12b、12c、12d、12eを総称して適宜ロータ12、12と称する。
【0018】
ロータ12、12間、及びロータ12、12とロータケーシング14の内周面との間には微小な隙間が形成されており、ロータ12、12は、それぞれの回転軸11a、11bを中心として非接触で回転するようになっている。ロータ12a、12b、12c、12d、12eをそれぞれ収容して気体を移送するロータ室13a、13b、13c、13d、13eがそれぞれ2本の回転軸11a、11bに沿って直列に1つのロータケーシング14内に配置されている。ロータケーシング14の上面には図示しないカバー部材が取り付けられている。ロータケーシング14の上部には吸込口17が形成されており、吸込口17は初段のロータ室13aに連通している。ロータケーシング14の吐出口側面には第1のサイドケーシング26が固定されており、サイドケーシング26の側面には軸受ケーシング23が固定されている。サイドケーシング26には、最終段のロータ室13eに連通する吐出口18が形成されている。吐出口18は後に詳述するように、排気部逆止弁、及びサイレンサを介して大気領域にガスを排出する。
【0019】
図1に示すように、軸受20の図中左側にモータ(例えばブラシレスDCモータ)22が配置されている。即ち、回転軸11a、11bの一方の端部にモータロータ22aが固定され、その周囲にモータステータ22bが配置されている。モータ22は図示しないインバータ装置等の電力供給装置により周波数可変電力の供給を受け、ソフトスタート等を含む真空ポンプの回転速度制御を行う。モータ22は、モータケーシング24の内部に配置されている。モータ22に、ブラシレスDCモータを採用すると、ロータ12、12は回転軸11a、11bを介してこのブラシレスDCモータ22により同期反転させられる。回転軸11a、11bの他方の端部には、それぞれタイミングギア29及び吐出側の軸受21は軸受ケーシング23に収容されている。軸受20、21はそれぞれ軸受ケース40、41に保持されており、これらの軸受ケース40、41はそれぞれモータケーシング24及び軸受ケーシング23に収容されている。
【0020】
各ロータ室13a〜13eにおいては、2本の回転軸11a、11bにそれぞれ固定されたロータ12、12とロータケーシング14の内周面との間に閉じ込められた気体が吸込側から吐出側に移送される。ロータケーシング14は二重ケーシングとなっており、二重ケーシングを構成する内外周囲壁の間には気体流路15a、15b、15c、15d、15eが設けられている。ロータ室13aの吐出側と次段のロータ室13bの吸込側は気体流路15aによって連通しており、ロータ室13a内のロータ12aによって圧縮された気体は気体流路15aを通ってロータ室13bの吸込側に移送される。このようにして、各段のロータ12、12によって圧縮された気体は、気体流路15a〜15eを通って吐出し側に順次移送され、吐出口18に移送される。
【0021】
一般に多段ルーツ型ドライ真空ポンプにおいて、初段のロータ室の容積は設計する真空ポンプの排気速度により決定される。このため、排気速度の大きな真空ポンプを設計する場合は、初段のロータ室の容積を大きくすることが必要となる。これに対し、最終段のロータ室の容積は、最終段のロータ室での前後の圧力差によって発熱(圧縮熱)、及びその圧力差に抗してロータを回転させるモータの消費電力を抑えるために小さくする必要がある。しかしながら、最終段のロータ室の容積を小さくすると、スムーズに排気できなくなる。このように、容積比と発熱とはトレードオフの関係にあるため、どの点を重視して真空ポンプを設計するかによって、容積比(圧縮比)を大きくするか小さくするかを決定することになる。ここでは、1段目のロータ室13aの軸方向の幅寸法を2段目のロータ室13bの幅寸法の2倍以上としている。即ち、図3に示すように、1段目のロータ12aの軸方向の幅寸法を2段目のロータ12bの幅寸法の2倍以上としている。そして順次3段目のロータ12c、4段目のロータ12d、5段目のロータ12eをその軸方向幅を所定の比で小さくしている。
【0022】
モータ22に、ブラシレスDCモータを採用すると、モータ22の回転速度制御を行うことで、最終段のロータ室13eの容積を小さくしたまま排気速度を大きくすることができ、且つ発熱及びモータ消費電力を抑えることができる。つまり、通常のモータを使用した従来の真空ポンプに比べて、同じ排気速度を達成しつつ容積比(圧縮比)を大きくできると共に、発熱量を抑えることができる。また、2本の回転軸11a、11bを回転駆動する駆動源として上記のようにブラシレスDCモータ22を用いることで、モータとしての効率が良いだけでなく大きな負荷変動に対応することができ、更に起動時における圧縮動力の増大にも対応することができる。
【0023】
ドライ真空ポンプの吐出口18の近傍には軸受21が配置され、吸込側の軸受20と共に回転軸11a、11bを回転自在に支持している。軸受21は軸受ケーシング23内に収容され、軸受ケーシング23とロータケーシング14との間にはサイドケーシング26が配置されている。軸受ケーシング23とサイドケーシング26との間には図示しないOリングシール(シール部)が配置され、これにより軸受ケーシング23とサイドケーシング26との間の微小な隙間が封止されている。また、サイドケーシング26とロータケーシング14との間にも図示しないOリングシール(シール部)が配置され、これによりサイドケーシング26とロータケーシング14との間の微小な隙間が封止されている。軸受20はモータケーシング24内に収容されており、モータケーシング24とロータケーシング14との間には第2のサイドケーシング30が配置されている。サイドケーシング30とロータケーシング14との間には図示しないOリングシール(シール部)が配置されている。更に、サイドケーシング30とモータケーシング24との間には図示しないOリングシール(シール部)が配置されている。
【0024】
上記構成のドライ真空ポンプにおいて、モータ22を起動し、回転軸11a、11bを回転させると、ロータ12a、12b、12c、12d、12eが回転し、吸込口17から吸込まれたガスはロータ室13a、13b、13c、13d、13e内のロータ12a、12b、12c、12d、12eで圧縮され、気体流路15a〜15eを通って吐出し側に順次移送され、吐出口18から大気圧縮域に排出される。該吐出口18には排気ユニット50が接続され、該吐出口18から排出されたガスは該排気ユニット50を通して排出される。排気ユニット50には、排気部逆止弁(最終段逆止弁)51と、2段目出口中抜きの中間部逆止弁52と、サイレンサ53が設けられている。中間部逆止弁52はドライ真空ポンプ内のガスが外気圧以上に圧縮された気体を外気中に逃がして、本ドライ真空ポンプの動力ロスを少なく抑えるために設けた圧力逃し孔19(図4参照)に設けられた過圧縮防止弁である。
【0025】
図4はドライ真空ポンプ10と排気ユニット50のフローシートを示す図である。図示するように多段ルーツ型ドライ真空ポンプ10を運転すると吸込口17に吸込まれたガスは気体流路15a〜15eを通って吐出口18から排気ユニット50に流入し、排気部逆止弁(最終段逆止弁)51及びサイレンサ53を通って外部(大気領域)に排出される。また、ドライ真空ポンプ10の起動時等内部が過圧縮になった場合、気体流路15b(2段目のロータ室13bに連通)に連通する圧力逃し孔(中抜吐出口)19から排気ユニット50に流入したガスは中間部逆止弁(過圧縮防止逆止弁)52を通ってサイレンサ53へ送られる。排気部逆止弁51、中間部逆止弁52、及びサイレンサ53は後に詳述するように、排気ユニット50内に一体的に配置され、ドライ真空ポンプ10に排気ユニット50を装着することにより、排気部逆止弁51、中間部逆止弁52、及びサイレンサ53はドライ真空ポンプ10に装着できるようになっている。
【0026】
図5は排気ユニット50の構造を説明するための図であり、上記のようにドライ真空ポンプ10には、ロータ室13a、13b、13c、13d、13eが設けられており、それぞれのロータ室内には、図示を省略するが図1に示すようにロータ12a、12b、12c、12d、12eが配置されている。ドライ真空ポンプ10の各ロータ室で圧縮され、最終段のロータ室13eに連通する吐出口18から排出されるガスは、排気ユニット50内に設けられた気体流路54を通って、排気部逆止弁51に流入し、該排気部逆止弁51から出たガスは排気ユニット50内に設けられた気体流路56を通ってサイレンサ53へ送られる。また、ドライ真空ポンプ10の2段目ロータ室13bに連通する圧力逃し孔19は排気ユニット50内に設けられた気体流路55を通って中間部逆止弁52に連通しており、ドライ真空ポンプ10内が過圧縮になった場合、過圧縮ガスは中間部逆止弁52を通って、気体流路56からサイレンサ53へ送られる。
【0027】
図6は排気ユニット50の構成を示す図で、図6(a)は平面図6(b)正面図である。排気ユニット50のバルブ部50aとサイレンサ部50bとからなる。バルブ部50aには排気部逆止弁51及び中間部逆止弁52が配置されている。図5に示すように、排気部逆止弁51の入口部は気体流路54を通って吐出口18に連通するようなっており、中間部逆止弁52の入口部は気体流路55を通って圧力逃し孔19に連通するようになっている。また、排気部逆止弁51及び中間部逆止弁52の吐出口は気体流路56に連通するようになっている。また、気体流路56はサイレンサ部50bの気体流路61に連通している。
【0028】
図7はサイレンサ50b内のサイレンサ53の構成を示す図である。図7(a)は本サイレンサの側断面構成を示す図で、図7(b)はA−A断面図である。本サイレンサ53は共鳴型サイレンサ53−1と膨張型サイレンサ53−2を一体的に形成された複合型サイレンサであり、共鳴型サイレンサ53−1と膨張型サイレンサ53−2の間には壁70が介在している。共鳴型サイレンサ53−1、及び膨張型サイレンサ53−2は排気ユニット50の気体流路(図示せず)に連通する気体流路61に連通して設けられ、共鳴型サイレンサ53−1を上流側に、膨張型サイレンサ53−2は下流側に配置している。
【0029】
本サイレンサ53は厚板状のサイレンサケーシング60と蓋体69を備えている。サイレンサケーシング60の片側面には気体流路56に連通する上部が開口した溝状の気体流路61、共鳴型サイレンサ53−1を構成する上部が開口した凹状の共鳴室62、膨張型サイレンサ53−2を構成する上部が開口した凹状の第1膨張室63、及び第2膨張室64が形成されている。更に、共鳴室62と気体流路61を連通する上部が開口した溝状の共鳴口65、第1膨張室63と気体流路61を連通する上部が開口した溝状の第1絞り口66、第1膨張室63と第2膨張室64を連通する上部が開口した第2絞り口67、第2膨張室64と外部を連通する第3絞り口68が設けられている。
【0030】
上記サイレンサケーシング60の気体流路61、共鳴室62、第1膨張室63、及び第2膨張室64等が形成されている面を蓋体69で覆うことにより、気体流路61、共鳴室62、第1膨張室63、及び第2膨張室64は上部開口部が閉塞された空間となる。上部開口が閉塞された共鳴室62及び第1膨張室63はそれぞれ共鳴口65を通して気体流路61に連通し、上部開口が閉塞された第1膨張室63と第2膨張室64は第2絞り口67で互いに連通し、更に該第2膨張室64は第3絞り口68を通して外部に連通する。
【0031】
本サイレンサ53は上記のように厚板状のサイレンサケーシング60に共鳴型サイレンサ53−1、及び膨張型サイレンサ53−2を一体的に形成し、その開口部を蓋体69で閉塞した構成の複合型サイレンサである。また、サイレンサ53が厚板状のサイレンサケーシング60と蓋体69で構成されるので、平板状で小型化されたサイレンサとなる。排気ユニット50の気体流路から、気体流路61に流入したガス流の有する騒音は、共鳴口65及び共鳴室62で構成される共鳴型サイレンサ53−1の固有周波数に共鳴して消音(低減)される。該共鳴型サイレンサ53−1を通ったガス流は第1絞り口66を通って第1膨張室63に流入することにより該第1膨張室63で膨張して消音(低減)され、続いて、第2絞り口67を通って第2膨張室64に流入することにより該第2膨張室64内で膨張して消音(低減)され、更に第3絞り口68を通して外気に流出し膨張して消音(低減)される。
【0032】
共鳴型サイレンサ53−1は小型化が可能で、気体流路61を流れるガスの流を妨げないという特徴があるが、消音できる騒音の周波数領域は膨張型に比べて狭い。これに対して、膨張型サイレンサ53−2は幅広い周波数領域で騒音の消音が可能であるが、消音できる周波数はサイレンサの長さに反比例するため、低周波領域を消音する場合、サイレンサが長くなってしまう。そこで小型化できる共鳴型サイレンサ53−1でガス流の低周波領域の騒音を消音させ、残る高周波領域の騒音をサイレンサの長さが消音周波数反比例する膨張型サイレンサ53−2で消音させることにより、共鳴型サイレンサ53−1と膨張型サイレンサ53−2の両者が小型となり、サイレンサ53の全体を小型化できると共に、騒音の幅広い周波数帯域での消音(低減)が可能になる。
【0033】
また、共鳴型サイレンサ53−1を気体流路61の上流側に設けるので、共鳴型サイレンサ53−1は気体流路61に流入したガスの流を妨げない特徴を有しているから、このような複合型サイレンサを排気ユニット50の気体流路のガス排出側に設けても、排気ユニット50のガス排出機能を低減し極力抑えることが可能となる。
【0034】
排気ユニット50のバルブ部50aとサイレンサ部50bは一体に構成され、ドライ真空ポンプ装置を構成する1つの部品として構成されるようになっている。従って、排気部逆止弁51をドライ真空ポンプ10の吐出口18に接続するための配管等部品、中間部逆止弁52を圧力逃し孔19に接続するための配管等部品、更にはサイレンサ部50bの気体流路61とバルブ50aの気体流路56に接続するための配管等部品が不必要となり、ドライ真空ポンプ10の排気部を構成するための部品点数が少なくなり、コストも安価となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、図8のフローシートに示すように、メインポンプMPとして多段ルーツ型ドライ真空ポンプ10−2、ブースタポンプBPとして多段ルーツ型ドライ真空ポンプ10−1を備え、メインポンプMPの吸込口17をブースタポンプBPの吐出口18に接続し、メインポンプMPに排気ユニット50を装着し、メインポンプMPの吐出口18が排気部逆止弁51に、圧力逃し孔19が中間部逆止弁52に接続されるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、多段ルーツ型ドライ真空ポンプの圧縮比の高い位置に中抜吐出口を備え、該中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続して大気領域に開放したので、過負荷による回転数数の低下が抑制でき、排気時間を短縮することが可能な多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空装置として利用できる。
【符号の説明】
【0037】
10 ドライ真空ポンプ
11a 回転軸
11b 回転軸
12 ロータ
12a〜12e ロータ
13a〜13e ロータ室
14 ロータケーシング
15a〜15e 気体流路
17 吸込口
18 吐出口
19 圧力逃し孔
20 軸受
21 軸受
22 モータ
22a モータロータ
22b モータステータ
23 軸受ケーシング
24 モータケーシング
26 サイドケーシング
29 タイミングギア
30 サイドケーシング
40 軸受ケース
41 軸受ケース
50 排気ユニット
51 排気部逆止弁
52 中間部逆止弁
53 サイレンサ
53−1 共鳴型サイレンサ
53−2 膨張型サイレンサ
54 気体流路
55 気体流路
56 気体流路
60 サイレンサケーシング
61 気体流路
62 共鳴室
63 第1膨張室
64 第2膨張室
65 共鳴口
66 第1絞り口
67 第2絞り口
68 第3絞り口
69 蓋体
70 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段ルーツ型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置であって、
前記多段ルーツ型ドライ真空ポンプの最終段に気体を吐出す最終段吐出口、圧縮比の高い位置に中抜吐出口を備え、
前記最終段吐出口に逆止弁を接続して大気領域に開放し、
前記中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続して大気領域に開放したことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライ真空ポンプにおいて、
前記多段ルーツ型ドライ真空ポンプは5段のロータ室と、各段のロータ室に配置したロータを備えた5段ルーツ型ドライ真空ポンプであり、
前記中抜吐出口に2段目のロータ室に連通して設け、
1段目の前記ロータの軸方向の幅を2段目の前記ロータの軸方向の幅の2倍以上としたことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライ真空ポンプ装置において、
前記逆止弁の吐出口及び前記過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサの下流側の排気流路を装置排気口に接続して大気領域に開放したことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドライ真空ポンプ装置において、
前記逆止弁、前記過圧縮防止逆止弁、前記排気流路、及び前記サイレンサを排気ユニットとして一体に構成したことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドライ真空ポンプ装置において、
前記多段ルーツ型ドライ真空ポンプはブースタポンプとメインポンプとからなり、前記ブースタポンプ最終段吐出口に前記メインポンプの1段目の吸込口を接続し、前記排気ユニットは前記メインポンプに設けたことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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