説明

ドラフトローラのクリーニング装置、ドラフト装置、及び繊維機械

【課題】ドラフトローラの外周面に接触可能に設けられたパッド体を備えるクリーニング装置であって、パッド体からの風綿の除去が容易で、風綿の堆積しにくい構成を提供する。
【解決手段】フロントボトムローラ28をクリーニングするためのクリーニング装置61は、フロントボトムローラ28の外周面に接触可能に設けられたパッド体62と、前記フロントボトムローラ28の外周面に対面するように備えられる吸引コレクタ64と、を備える。前記パッド体62の幅Wは、ファイバの平均繊維長Lavgの1/2以上(好ましくは最大繊維長Lmaxの1/2以上)であり、かつ前記吸引コレクタ64の吸引口65の幅V以下となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束をドラフトするドラフトローラに付着した綿糖等を除去してクリーニングするクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、紡績機に設けられるドラフト装置を開示する。このドラフト装置は複数対のドラフトローラを備え、このドラフトローラの対の間に繊維束をニップしながら互いに速度を異ならせて回転させることで、繊維束を延伸させ、下流の紡績ノズルへ送る構成となっている。
【0003】
また、特許文献1は、前述の構成のドラフト装置において、回転中のドラフトローラの外周面にパッド体を接触させてドラフトローラの外周面をクリーニングするクリーニング装置を開示する。このパッド体は長方形の板状となっており、その幅寸法は、ドラフトローラ上におけるファイバの糸道幅より大きく構成されている。
【0004】
また、特許文献1で開示されるクリーニング装置は、紡績機の機体の一部に対して直接的に取り付けられるクリップ部材と、このクリップ部材の一端に設けてある枢支連結部を介して揺動自在に支持されている揺動部材と、を含んでいる。この構成で、紡糸運転中に糸切れ等が生じたときは、紡績ノズルが定位置から退避して作業空間を作るのに連動して前記揺動部材が回動し、パッド体がドラフトローラの外周面から離れるように構成されている。
【0005】
更に、特許文献1のクリーニング装置は、パッド体がドラフトローラの外周面から離れた位置にあるときに、ドラフトローラとパッド体との間の付着堆積物を回収するための吸引コレクタを備えている。特許文献1は、この構成により、パッドとローラ表面間に付着堆積するファイバ等を省力的かつ確実に取り除くことができるとする。
【特許文献1】特開2006−188786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の構成は、ドラフト装置の駆動時に発生する風綿のファイバが前記長方形状のパッド体に巻き付き、容易に除去できずに堆積することが多かった。そして、この堆積する風綿が何かの拍子でパッド体から外れてドラフトローラに回り込み、糸のスラブ発生の原因となってしまっていた。また、紡績ノズルの移動と連動してパッド体をドラフトローラから離間させる機構が複雑であり、部材同士の隙間等に風面が堆積し易く、これが上記と同様に糸の品質低下の原因となってしまっていた。
【0007】
本発明は以上の目的に鑑みてされたものであって、その目的は、パッド体からの風綿等の除去が容易で、風綿等が堆積しにくい構成のドラフトローラのクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の、ドラフトローラのクリーニング装置が提供される。即ち、このクリーニング装置は、ドラフトローラの外周面に接触可能に設けられたパッド体と、前記ドラフトローラの外周面に対面するように備えられる吸引コレクタと、を備える。また、前記パッド体の幅は、ドラフトされるファイバの平均繊維長の1/2以上かつ前記吸引コレクタの吸引口の幅以下である。
【0010】
この構成により、ドラフト中に離脱するファイバがドラフトローラに付着したとしても、当該ファイバはパッド体の幅方向に巻き付いて絡むことがない。また、パッド体の幅方向両端部に位置するファイバも、吸引口から容易に吸引して除去することができる。これにより、パッド体へのファイバの堆積量を減少させることができるので、ファイバが下流工程に与える悪影響を低減できるとともに、メンテナンスの手間も軽減される。
【0011】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、前記パッド体の幅がファイバの最大繊維長の1/2以上であることが好ましい。
【0012】
この構成により、ドラフト中にどのような長さのファイバが離脱しても、当該ファイバがパッド体の幅方向に巻き付いて堆積することを防止できることになる。従って、ファイバによる下流工程への悪影響を一層確実に防止できる。
【0013】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、前記パッド体は長方形状に形成され、その角部が曲線状に形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成により、ドラフトローラの外周面を長方形のパッド体により効率良く清掃できる。また、パッド体の角部にファイバが巻き付いたり絡んだりしにくいので、ファイバのパッド体への堆積を一層抑制することができる。
【0015】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このクリーニング装置は、前記パッド体を支持する弾性体からなるパッド支持部材を備える。このパッド支持部材は、前記パッド体が取り付けられるパッド支持部と、固定部材に固定される固定部と、前記パッド体を前記ドラフトローラから離間させるために押動される被動部と、を一体形成して構成される。前記パッド体は、弾性変形されている前記パッド支持部材の復元力によって、前記ドラフトローラの外周面に押圧される。
【0016】
この構成により、ドラフト時にはパッド体をドラフトローラの外周面に押圧し、必要時には当該押圧を解除してパッド体をドラフトローラから離間させるパッド支持部材を、単一の部材で構成できる。従って、部品点数が少なくなるので、部材の隙間等にファイバが堆積し、その堆積物がドラフト部に突発的に入り込み糸欠点を作る等の悪影響を防止できる。また、簡素な構成により、コンパクト化及び低コスト化を実現できる。
【0017】
前記のドラフトローラのクリーニング装置においては、前記ドラフトローラと前記パッド体を挟んで反対側に位置する空間に対面して吸引部材が備えられていることが好ましい。
【0018】
この構成により、パッド体の周囲に堆積するファイバを吸引部材で除去でき、ファイバの堆積量を一層低減できる。
【0019】
本発明の他の観点によれば、前記クリーニング装置を備えるドラフト装置、及び、このドラフト装置を備える繊維機械が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2を備えた、繊維機械としての紡績機1を示している。
【0021】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として備えている。
【0022】
ドラフト装置7は紡績機1本体のケーシング6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11により下方へ送られ、糸の欠陥を検出して糸切断を行って糸欠陥部分を除去するためのクリアラー(糸欠陥検出器)52を通過する。その後、紡績糸10は巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ45を形成する。
【0023】
この紡績機1は、ブロアボックス80と、原動機ボックス81と、を備える。また、図では省略したが、紡績機1は、紡績ユニット2が並べられる方向に走行自在に設けられた糸継台車と、この糸継台車とは独立に走行自在に設けられた玉揚台車を備える。
【0024】
図2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11の拡大側面図である。図2に示すように、ドラフト装置7は、スライバ13を延伸して繊維束8にするための複数のドラフトローラを備える。前記ドラフトローラは、互いに対向して配置されるトップローラとボトムローラにより構成されている。
【0025】
前記トップローラは、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト17を装架したミドルローラ16及びフロントローラ18の4つのドラフトローラから構成されている。一方、ボトムローラは、バックボトムローラ24、サードボトムローラ25、エプロンベルト27を装架したミドルボトムローラ26、フロントボトムローラ28の4つのドラフトローラから構成されている。それぞれのボトムローラ24,25,26,28は、前記トップローラ14,15,16,18に対向するように配置されている。
【0026】
以上の構成で、ドラフト装置7に送られたスライバ13は、ドラフトローラによって延伸されて繊維束8となり、紡績装置9へと送られる。紡績装置9は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績する。空気紡績された繊維束8は、紡績糸10となって糸送り装置11に送られる。
【0027】
糸送り装置11は、紡績機1本体のケーシングに支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に対向して配置されるニップローラ40と、を備えている。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10は、デリベリローラ39とニップローラ40との間にニップされ、デリベリローラ39の回転駆動により巻取装置12へ送られる。
【0028】
次に、前記フロントボトムローラ28を清掃するために前記ドラフト装置7に備えられるクリーニング装置61について、図3及び図4を参照して説明する。
【0029】
図3及び図4に示すように、クリーニング装置61は、前記フロントボトムローラ28の外周面に接触可能なパッド体62と、このパッド体62を前記フロントボトムローラ28に押圧するパッド支持部材63と、前記フロントボトムローラ28の下方に配置される吸引コレクタ64と、を備えている。
【0030】
このパッド体62は軟質樹脂により構成されており、図4に示すように所定の厚みの板状に成形されている。このパッド体62は長方形状に形成されており、その幅W(フロントボトムローラ28の軸線に平行な向きの長さ)は、ドラフトされる繊維束8の平均繊維長Lavgの1/2以上となっている(W≧Lavg/2)。更に言えば、前記パッド体62の幅Wは、繊維束8の最大繊維長Lmaxの1/2以上となっている(W≧Lmax/2)。また、長方形のパッド体62の角部は円状(滑らかな曲線状)に形成されている。
【0031】
前記ドラフト装置7より下流側(繊維束8の搬送方向下流側)の位置において、紡績機1の機体には支持アーム29が支持されている。図3に示すように、この支持アーム29はほぼ上下方向に配置され、その下端部に配置される支軸30を中心として回動可能に構成されている。また、支持アーム29の上部には前記紡績装置9が固定されている。
【0032】
前記支持アーム29には、前記吸引コレクタ64が固定されている。この吸引コレクタ64は上方を開放したカップ状に形成され、その開口端には吸引口65が構成されている。この吸引口65は、前記フロントボトムローラ28の下部の外周面に対面している。
【0033】
吸引コレクタ64の下端部には吸引パイプ66が接続されて、この吸引パイプ66が負圧源としての前記ブロアボックス80に接続されている。これにより、吸引口65の周囲に吸引流を形成することができる。
【0034】
そして図4に示すように、前記パッド体62の幅Wは、吸引口65の幅V以下となるように設定されている(W≦V)。
【0035】
パッド体62を支持する前記パッド支持部材63は、紡績機1の機体(前記ケーシング6)が有する角棒状の固定フレーム(固定部材)67に取り付けられている。固定フレーム67は細長く形成され、ミドルボトムローラ26とフロントボトムローラ28の間のやや下方の位置に水平に配置されている。
【0036】
パッド支持部材63は、ステンレス鋼等のバネ鋼からなる薄板を略フォーク状に打ち抜いた後、折曲げ加工して構成されている。従って、このパッド支持部材63は容易に弾性変形することができる。
【0037】
このパッド支持部材63は、幅広部68と、この幅広部68の上部から折返し状に延びる2本の固定アーム69,69と、前記幅広部68の上部からクランク状に延びるパッド支持アーム70と、前記幅広部68から下方へ延びる被動アーム71と、を一体的に備えている。
【0038】
幅広部68は、フロントボトムローラ28(吸引コレクタ64)と固定フレーム67を挟んで反対側に配置されている。2本の前記固定アーム69,69は、幅広部68の幅方向両端部から平行に上方へ向かって延びた後、固定フレーム67の上側を迂回するように折り曲げられる。各固定アーム69の先端は、前記固定フレーム67の吸引コレクタ64側(フロントボトムローラ28側)を向く面に、固定ネジ72によって固定される。
【0039】
パッド支持アーム70は、幅広部68の幅方向中央部から上方へ向かって延びた後、固定フレーム67の上側を通過するように折り曲げられる。パッド支持アーム70は更に折り曲げられて上方へ向かって延び、その先端に前記パッド体62がクリップ73を介して固定されている。
【0040】
このクリップ73は、前記パッド支持アーム70の先端部を挟み込むようにして固定されるとともに、当該クリップ73に前記パッド体62を挟持できるように構成されている。パッド体62はクリップ73に対して着脱可能に構成されており、パッド体62がフロントボトムローラ28の外周面と擦れて摩耗したときは、容易に新品のパッド体と交換できるようになっている。
【0041】
なお、パッド支持部材63を固定フレーム67に取り付けたときに、パッド体62がフロントボトムローラ28の外周面に押されることによって、前記パッド支持アーム70を弾性変形させるように構成されている。従って、前記パッド支持アーム70の部分の復元力によって、前記パッド体62がフロントボトムローラ28の外周面に押し付けられ、これによりフロントボトムローラ28を清掃できるようになっている。
【0042】
被動アーム71は、幅広部68の幅方向中央部から下方へ向かって延びた後、吸引コレクタ64へ近づくように斜めに折り曲げられている。一方、紡績装置9を支持する前記支持アーム29には、押動アーム31が固定されている。この押動アーム31は吸引コレクタ64の側部を迂回するように延びて、その先端を、前記被動アーム71の折曲げ部に近接させている。
【0043】
パッド支持部材63は、前記幅広部68、前記固定アーム69の中途部、及びパッド支持アーム70の中途部が、前記固定フレーム67との間に所定の隙間を形成するように取り付けられる。従って、パッド支持部材63に外力が加えられた場合には、幅広部68や固定アーム69、前記パッド支持アーム70等は、必要に応じて弾性変形したり、その姿勢を変更したりすることができる。
【0044】
以上の構成で、通常運転時の状態が図3及び図4に示される。図3等に示すように、紡績機1の紡糸運転中は、フロントボトムローラ28を含む複数のドラフトローラがそれぞれ回転駆動され、前記スライバ13を延伸して繊維束8としつつ紡績装置9へ送るようになっている。
【0045】
この通常運転時において、フロントボトムローラ28の下面には吸引コレクタ64の吸引口65が対面するとともに、パッド体62がフロントボトムローラ28の外周面に接触している。従って、スライバ13から発生する等してフロントボトムローラ28に付着する綿糖、風綿又はゴミ等の異物は、吸引コレクタ64により吸引除去されるとともに、パッド体62によって掻き取られる。
【0046】
なお、前述したように、前記パッド体62の幅Wが、ファイバの最大繊維長Lmaxの1/2以上となるように構成されている(Lmax/2≦W≦V)。従って、繊維束8からファイバが離脱して、フロントボトムローラ28からパッド体62に掻き取られたとしても、当該ファイバがパッド体62の幅方向に巻き付くことは繊維長が足りないため不可能である。また、パッド体62は角丸長方形状に形成されており、角部が尖っていないので、当該角部にファイバが引っ掛かって絡むことも防止される。
【0047】
そして、紡績機1の運転中に糸切れ等が発生すると、紡績装置9による紡糸が停止され、ドラフト装置7によるドラフトも停止される。そして、糸切れ信号によって、当該紡績ユニット2に設けられる支持アーム29の作動用アクチュエータが作動して、支持アーム29が支軸30を中心として図5のように回動し、紡績装置9はフロントローラ18及びフロントボトムローラ28から離れた位置に移動する。これにより、フロントローラ18及びフロントボトムローラ28と紡績装置9との間に適宜の空間が形成され、ファイバの除去等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0048】
また、上述した支持アーム29の回動に連動して、前記押動アーム31の先端は図5に示すように、パッド支持部材63の被動アーム71を紡績装置9に近づく向きに押動する。これにより前記固定アーム69の中途部が弾性変形し、幅広部68は、その下部を紡績装置9側に近づけるように姿勢を若干傾ける。この結果、パッド支持アーム70の姿勢も傾き、その先端に取り付けられるパッド体62が、フロントボトムローラ28から離間する。
【0049】
なお、前述したパッド体62の形状的特徴により、パッド体62にファイバが絡み付くことは防止されている。また、パッド体62の幅Wは吸引コレクタ64の吸引口65の幅V以下に設定されているので、パッド体62の幅方向両端部に堆積するファイバに対しても、吸引口65からの吸引流を確実に作用させることができる。
【0050】
従って、フロントボトムローラ28の外周面からパッド体62に掻き取られ、パッド体62の部分に堆積しているファイバは、パッド体62がフロントボトムローラ28から離間することで、吸引口65から容易かつ確実に吸引される。これにより、堆積ファイバが下流側の紡績装置9に送られてスラブ等の糸品質低下の原因となることを防止できる。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態のドラフト装置7は、フロントボトムローラ28を清掃するためのクリーニング装置61を備えている。そして、このクリーニング装置61は、フロントボトムローラ28の外周面に接触可能に設けられたパッド体62と、フロントボトムローラ28の外周面に対面するように備えられる吸引コレクタ64と、を備えている。また、前記パッド体62の幅Wが、繊維束8の平均繊維長Lavg以上であり、かつ、前記吸引コレクタ64が備える吸引口65の幅V以下に設定されている。
【0052】
これにより、ドラフト中に繊維束8からファイバが離脱してフロントボトムローラ28に付着したとしても、当該ファイバはパッド体62の幅方向に巻き付いて絡むことなく、容易に吸引口65から吸引されて除去される。また、ファイバがパッド体62の幅方向両端部に位置していても、吸引口65から容易に吸引できる。従って、パッド体62へのファイバの堆積量を減少させることができ、ファイバが下流の紡績装置9に送られてスラブ等の糸品質低下の原因となることを防止できる。
【0053】
また、前記パッド体62の幅Wは、繊維束8の最大繊維長Lmaxの1/2以上に設定されている。
【0054】
これにより、ファイバがパッド体62の幅方向に巻き付いて堆積することを一層確実に防止できる。これにより、糸品質が一層向上する。
【0055】
更に、前記パッド体62は長方形状に形成され、その角部が円状に形成されている。
【0056】
これにより、パッド体62の角部にファイバが巻き付いたり絡んだりしにくくなる。従って、パッド体62へのファイバの堆積を一層確実に防止することができる。
【0057】
また、本実施形態のクリーニング装置61は、前記パッド体62を支持するパッド支持部材63を備える。そして、このパッド支持部材63は、弾性を有するステンレスの薄板によりなり、前記パッド体62が取り付けられるパッド支持部材63と、固定フレーム67に固定される固定アーム69と、前記パッド体62を前記フロントボトムローラ28から離間させるために押動される被動アーム71と、を一体形成して構成される。また、前記パッド体62は、弾性変形されている前記パッド支持部材63の復元力によって、前記フロントボトムローラ28の外周面に押圧される。
【0058】
これにより、紡績機1の運転時(図3)にはパッド体62をフロントボトムローラ28の外周面に押圧し、運転停止時(図5)においてはパッド体62をフロントボトムローラ28から離間させることが可能なパッド支持部材63を、単一の部材で構成できる。従って、部品点数が少なくなり、部材の隙間にファイバが堆積することを防止できるので、堆積物が突発的にフロントボトムローラ28に回り込んで糸欠点を作る等の悪影響を防止できる。また、簡素な構成により、コンパクト化及び低コスト化を実現できる。
【0059】
次に、前記吸引コレクタ64とは別に吸引ノズルを備えた変形例について、図6を参照して説明する。なお、この変形例においては、前記実施形態と同一又は類似する部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
この図6の構成では、前記パッド支持部材63のパッド支持アーム70の上側に、吸引ノズル(吸引部材)75が固定されている。この吸引ノズル75の先端には吸引口が備えられており、この吸引口は、前記フロントボトムローラ28と前記パッド体62を挟んで反対側の空間に対面している。
【0061】
この吸引ノズル75は、前記ブロアボックス80と、第2吸引パイプ76を介して接続されている。従って、パッド体62の裏側に回り込んだファイバを、吸引ノズル75を介して容易に除去することができる。
【0062】
以上に示すように、図6の構成においてはクリーニング装置61に吸引ノズル75が備えられて、この吸引ノズル75は、前記フロントボトムローラ28と前記パッド体62を挟んで反対側に位置する空間に対面している。
【0063】
この構成により、パッド体62の周囲にファイバが堆積するのを更に抑制することができる。
【0064】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は例えば以下のように変更することができる。
【0065】
パッド体62の材質は、軟質樹脂とすることに代えて、例えばゴム又は不織布等を採用することができる。
【0066】
パッド支持部材63の形状は、略フォーク状とすることに代えて、他の様々な形状に変更することができる。
【0067】
図6の変形例において、吸引ノズル75を、ミドルボトムローラ26に装架されるエプロンベルト27の外周面を清掃するための吸引手段と兼用することができる。
【0068】
クリーニング装置61は、フロントボトムローラ28を清掃する場合に限らず、他のドラフトローラを清掃するための構成として採用することができる。
【0069】
上記実施形態のドラフト装置7は、紡績機1に限らず、例えば粗紡機、連条機等の繊維機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】ドラフト装置の様子を示す側面図。
【図3】クリーニング装置の構成を示す拡大側面図。
【図4】クリーニング装置の構成を示す拡大斜視図。
【図5】糸切れ発生時等において、パッド体がフロントボトムローラから離間した様子を示す拡大側面図。
【図6】吸引ノズルを備えた変形例のクリーニング装置を示す拡大斜視図。
【符号の説明】
【0071】
1 紡績機(繊維機械)
7 ドラフト装置
28 フロントボトムローラ(ドラフトローラ)
61 クリーニング装置
62 パッド体
63 パッド支持部材
64 吸引コレクタ
65 吸引口
V 吸引口の幅
W パッド体の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトローラの外周面に接触可能に設けられたパッド体と、
前記ドラフトローラの外周面に対面するように備えられる吸引コレクタと、
を備え、
前記パッド体の幅が、ドラフトされるファイバの平均繊維長の1/2以上かつ前記吸引コレクタの吸引口の幅以下であることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記パッド体の幅がファイバの最大繊維長の1/2以上であることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記パッド体は長方形状に形成され、その角部が曲線状に形成されていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記パッド体を支持する弾性体からなるパッド支持部材を備え、
このパッド支持部材は、
前記パッド体が取り付けられるパッド支持部と、
固定部材に固定される固定部と、
前記パッド体を前記ドラフトローラから離間させるために押動される被動部と、
を一体形成して構成され、
前記パッド体は、弾性変形されている前記パッド支持部材の復元力によって、前記ドラフトローラの外周面に押圧されることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置であって、
前記ドラフトローラと前記パッド体を挟んで反対側に位置する空間に対面して吸引部材が備えられていることを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置を備えることを特徴とするドラフト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のドラフト装置を備えることを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−68126(P2009−68126A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235159(P2007−235159)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】