説明

ドラフトローラのクリーニング装置

【課題】本発明の目的は、ドラフトローラの表面から粘着性異物や風綿等の異物を削ぎ取り、その異物を吹き飛ばすようにしたドラフトローラのクリーニング装置を提供することにある。
【解決手段】支軸8に揺動可能に支持された左右一対の揺動子4が風圧を受けて揺動するようにした。揺動子4は、その揺動子4により両端部を支持されるクリーニングブレード2が、重力を受けてトップローラ74bに当接した時の第1姿勢と、風圧を受けてトップローラ74bから離反した時の第2姿勢との間で交互に姿勢を変更する。同様に、揺動子5は、トップローラTR1に対する第1姿勢と第2姿勢との間で交互に姿勢を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフトローラのクリーニング装置に係り、詳しくは、クリーニングブレードが風圧により間欠的に揺動する揺動子に支持されたドラフトローラのクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に練条機の工程は、図9に示すように、前工程のカードやコーマで紡出されてケンスに収容されたスライバーの6〜8本を並列状態として、それらを5〜10倍に牽伸して斑を少なくし、繊維が並行に引き揃えられたスライバーを形成する。
【0003】
即ち、クリールローラ71及びリフターローラ72を介して供給されたスライバー70aを、ドラフトパート73において、5〜10倍に牽伸して繊維を真っ直ぐにしながら、ボトムローラ74a及びトップローラ74bからなる一対のフロントローラ74から送り出す。このドラフトパート73に、6〜8本が並行状態で供給されたスライバー70aは、それぞれの境界が曖昧となってフリース状態のフリース70bとなる。そのフリース70bは、ギャザラー75により両端部を内側に丸め込まれるようにされた後、コイラートランペット76及び一対のコイラーカレンダーローラ77を通されることにより、集束圧縮されて練条スライバー70cとなる。そして、コイラホイール78に設けられたスライバー導管79を介して、その練条スライバー70cをサイクロイド状に配置しながらケンス80内に収納することにより、練条機の工程は完了する。以下、練条スライバー70cを単にスライバー70と称するものとする。
【0004】
上記ドラフトパート73において、スライバー70aを牽伸するトップローラ及びボトムローラには、スライバー70aから繊維が分離した風綿や異物(ごみ、ハネデュー、油剤等)が付着するために、それらを取り除くクリーニング装置が用いられている。
【0005】
特許文献1に開示されている「ドラフトローラのクリーニング装置」は、付勢力によりクリーニング部材のクリーニングパッドをドラフトローラに圧接するようになっており、そのクリーニング部材をドラフトローラより間欠的に離反させるカムを、ドラフトローラに設けている。このカムは、ドラフトローラからのクリーニング部材の離反を、ドラフトローラの1回転毎に行うようになっている。
【0006】
特許文献2に開示されている「紡機におけるクリヤラー装置」は、ドラフト装置の最もドラフト率の高いドラフト部を中心にして、その上流側のトップローラにはクリーニングパッドを配設し、その下流側のトップローラには、無端状のクリヤラークロスを接触状態で周回走行させて清掃を行うアーメンス式クリヤラー装置を配設している。
【0007】
特許文献3に開示されている「ドラフトローラのクリーニング装置」は、ドラフトローラに対して空気を噴射する噴射装置を設け、その噴射装置の噴射口から噴射されるエアにより、スライバーから分離しトップローラに付着して巻き上がった短繊維を吹き飛ばしている。
【特許文献1】実開平7−31858号公報([要約]を参照)
【特許文献2】実開平7−33981号公報([要約]を参照)
【特許文献3】特開平7−197332号公報([要約]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているクリーニング部材においては、間欠的にドラフトローラより離反する時、クリーニング部材に溜まった風綿が一斉に振り落とされて除去されるようになっている。また、その離反はドラフトローラの1回転毎に行われる。ところが、クリーニング部材にはスライバーから分離した粘着性の異物も付着するため、その異物のために風綿がきれいに振り落とされるとは限らない。また、クリーニング部材はドラフトローラが1回転する度に離反するのみであるので、クリーニング部材には、振り落とされずに残った風綿等が徐々に堆積する虞がある。
【0009】
特許文献2に開示されているアーメンス式クリヤラー装置は、クリーニング効果は高いが、トップローラの上部が常に覆われているために熱がこもることになり、次第にトップローラが高温になったり、随伴気流の流れが阻害されるために風綿が堆積したりといった問題が懸念される。また、トップローラにクリーニングパッドが常に接している部分では、粘着性異物や風綿等の異物がパッドに付着しやすく、トップローラとパッドとの間にその異物が挟まれたままで蓄積される虞がある。
【0010】
また、特許文献3に開示されているクリーニング装置は、噴射装置から噴射されたエアにより、トップローラに付着した繊維を吹き飛ばせるようになっているが、トップローラには粘着性異物が付着するので、その粘着性異物と共にトップローラにこびりついた繊維を吹き飛ばすことは容易ではない。
【0011】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ドラフトローラの表面から粘着性異物や風綿等の異物を削ぎ取り、その異物を吹き飛ばすようにしたドラフトローラのクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために請求項1に記載のドラフトローラのクリーニング装置の発明は、トップローラ及びボトムローラが配置されたドラフトローラのクリーニング装置において、トップローラの両端位置には、風圧による揺動が可能なように揺動子を支軸により支持し、それらの揺動子にはクリーニングブレードを両端部において支持し、前記揺動子は、前記クリーニングブレードが揺動子の揺動により前記トップローラに当接している時の第1姿勢と、前記揺動子が風圧を受けて揺動することにより、前記クリーニングブレードが前記トップローラから離反した時の第2姿勢との間で交互に姿勢を変更することを特徴とするものである。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、重力を受けて揺動子が第1姿勢をとるとき、揺動子に支持されたクリーニングブレードがトップローラに当接して、トップローラの表面に付着している粘着性異物や風綿等の異物を削ぎ取ることができる。そして、その第1姿勢の揺動子に対して風圧を作用させることにより、揺動子が姿勢を変更して第2姿勢をとることができる。すると、クリーニングブレードがトップローラの表面から離反するので、クリーニングブレードとトップローラとの間にあった風綿等の異物は振り落とされる。また、風圧の作用を停止することにより、第2姿勢の揺動子は、重力を受けて姿勢を変更し、第1姿勢をとることができる。従って、間欠的な風圧の作用により、クリーニングブレードはトップローラに対する当接と離反を繰り返す。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドラフトローラのクリーニング装置において、前記揺動子は、前記支軸に外嵌される軸受孔と前記クリーニングブレードの係合部が係合される係合受部とが形成された基体部と、その基体部から前記軸受孔の軸心に直交する方向に延出した腕部とよりなり、その腕部の先端部には、前記軸受孔の軸心方向と平行な方向に開口する第1開口部と、その第1開口部の開口方向に直交する方向に開口する第2開口部とを有する風圧受凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、軸受孔から遠い位置にある腕部の先端部に風圧受凹部を形成した。そのため、風圧受凹部に対して空気が噴射され、揺動子が軸受孔を中心に回動するとき、軸受孔に近い位置に形成された係合受部に係合しているクリーニングブレードは、梃子の原理により風圧で容易に動かされる。従って、揺動子は、空気の噴射を受ける第2姿勢と、空気の噴射が止められて重力の作用で戻る第1姿勢との間の姿勢変更を容易に繰り返すことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のドラフトローラのクリーニング装置において、2本の前記トップローラに対して第1姿勢をとる左右二対の前記揺動子のうち、前記トップローラの軸方向において同一側に配置される2個の前記揺動子は、それぞれの前記風圧受凹部の第1開口部を対向させた状態で、互いの先端部を当接させることにより、それぞれの前記風圧受凹部を一体化状態として、前記第2開口部のみを有する風圧受穴部を共有し、その風圧受穴部に対して一つの噴射ノズルから空気が噴射されることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、2本のトップローラに対して第1姿勢をとる二対の揺動子のうち、トップローラの軸方向において同一側に配置される2個の揺動子が風圧受穴部を共有し、その風圧受穴部に対して一つの噴射ノズルから空気が噴射される。従って、2本のトップローラに対して第1姿勢をとる二対の揺動子における同一側の2個の揺動子を、一つの噴射ノズルから噴射される空気の風圧により、同時に作動させて、それぞれが第2姿勢をとるようにすることができる。そのため、二対の揺動子に対して一対の噴射ノズルから空気を噴射する簡単な構造により、それらの揺動子の作動を制御することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のドラフトローラのクリーニング装置において、前記揺動子が第2姿勢をとる時、前記軸受孔の軸心を通る垂直面に対して、前記揺動子の重心と係合受部とが同じ側に位置し、前記風圧受凹部の第2開口部の開口方向が前記垂直面に対して前記重心がない側に離反した方向を向いていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、揺動子が第2姿勢をとる時、軸受孔の軸心を通る垂直面に対して、揺動子の重心と係合受部とが同じ側に位置し、風圧受凹部の第2開口部の開口方向が前記垂直面に対して重心がある側を向くようにした。そのため、風圧受凹部に対する空気の噴射が停止した時、揺動子は、重心側に受ける重力により、軸受孔の軸心を中心に回動して、第2姿勢から第1姿勢へと姿勢を変更することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置において、前記揺動子の姿勢を前記第1姿勢から第2姿勢へと変更させるように、前記揺動子が空気の噴射を受けると同時に、前記クリーニングブレードと前記トップローラとに対して空気を噴射することを特徴とするものである。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、揺動子の風圧受凹部に対する空気の噴射と同時に、クリーニングブレードとトップローラとに対して空気を噴射するようにした。そのため、クリーニングブレードとトップローラとの間に挟まっていた粘着性異物や風綿等の異物が振り落とされずにトップローラの表面に残っていても、その異物を、空気の噴射により吹き飛ばすことができる。同様に、クリーニングブレードに残った異物も、空気の噴射により吹き飛ばすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、風圧を受けて揺動する揺動子に支持されたクリーニングブレードがトップローラに当接し、その表面から粘着性異物や風綿等の異物を削ぎ取り、その異物を吹き飛ばすようにしたことにより、高いクリーニング効果を得ることができるドラフトローラのクリーニング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜8を用いて説明する。なお、従来技術と同一の構成については、その説明において用いた同一の符号を用いるものとする。
【0024】
図1に示すように、練条機において、本実施形態のクリーニング装置1が装置されるドラフトパート73は、フロントローラ74を構成するトップローラ74bとその上流側に配置されたトップローラTR1〜TR4との5本でトップローラが構成されている。また、トップローラ74bと対になってフロントローラ74を構成するボトムローラ74aとその上流側に配置されたボトムローラBR1〜BR3との4本でボトムローラが構成されている。そして、この5本のトップローラと4本のボトムローラとにより、コーマスライバー70bが牽伸される。なお、ボトムローラ74aは、トップローラ74bと対になってフロントローラ74を構成するばかりでなく、トップローラTR1とも対になってコーマスライバー70bの牽伸に関わっている。フード7は、トップローラから除去された風綿等の異物を吸引するために配置されている。
【0025】
図1に示すクリーニング装置1は、ドラフトパート73において上流側に向かって左側に位置している。このクリーニング装置1は、支軸8に揺動可能に支持されてフロント側に位置する揺動子4と、その揺動子4の上流側に位置し支軸8に揺動可能に支持される揺動子5とが、それぞれのクリーニングブレード2の刃部21をトップローラ74bとトップローラTR1とに当接させた第1姿勢をとっている。本実施形態では、第1姿勢をとる揺動子4及び揺動子5は、それぞれの重心が支軸8の軸心を通る垂直面に対して図1における左側に位置している。そのため、揺動子4及び揺動子5のそれぞれに係合されたクリーニングブレード2の刃部21は、重力による反時計方向のモーメントの作用によりトップローラ74b及びトップローラTR1の表面に押し付けられる。
【0026】
なお、詳細は図示しないが、図1に一部を示すように、揺動子4を揺動可能に支持する支軸8はブロック6に固定されている。また、揺動子5を揺動可能に支持する支軸8は図示しないブロックに揺動可能に支持されている。
【0027】
図2に示すように、ポリアセタール製のクリーニングブレード2は、帯板状に成形され、トップローラ74b及びトップローラTR1の表面から風綿等の異物を取り除くための刃部21を有する。エンジニアリングプラスチックの一種であるポリアセタールは、比較的硬い合成樹脂であり、且つ自己潤滑性を有するので、回転するトップローラに当接するクリーニングブレード2を形成する材料として、好適に用いることができる合成樹脂である。クリーニングブレード2の両端には、揺動子4の係合受部44及び揺動子5の係合受部54のそれぞれに係合するための帯板状の係合部22が形成されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、揺動子4は、軸受孔43と係合受部44とが形成された基体部41と、その基体部41の外周部において、軸受孔43の軸心に直交する方向に延出して形成された腕部42とからなる。軸受孔43は支軸8に揺動可能に外嵌され、係合受部44はクリーニングブレード2の係合部22に係合される。
【0029】
腕部42の先端部には、軸受孔43の軸心に平行な方向D1に開口する第1開口部46を有し、その方向D1に直交する方向D2に開口する第2開口部45を有する風圧受凹部40が形成されている。本実施形態の第1開口部46は逆コ字状となっており、第2開口部45はコ字状となっている。第1開口部46の周囲は、後述する揺動子5の当接部57と当接可能な面としての当接部47となっている。なお、図3に示す揺動子4は、図1に示す揺動子4と同一のものであり、図2の右側に示す揺動子4rとは、軸受孔43の軸心の方向に対して、基体部41に対する腕部42の位置と、腕部42に対する風圧受凹部40の位置とが対称となっている。揺動子4と揺動子4rとは、対となって、クリーニングブレード2を支持する。
【0030】
図2及び図4に示すように、揺動子5は、軸受孔53と係合受部54とが形成された基体部51と、その基体部51の外周部において、軸受孔53の軸心に直交する方向に延出して形成された腕部52とからなる。軸受孔53は支軸8に揺動可能に外嵌され、係合受部54はクリーニングブレード2の係合部22に係合される。
【0031】
腕部52の先端部には、軸受孔53の軸心に平行な方向D1に開口する第1開口部56を有し、その方向D1に直交する方向D2に開口する第2開口部55を有する風圧受凹部50が形成されている。本実施形態の第1開口部56はコ字状となっており、第2開口部55は逆コ字状となっている。第1開口部56の周囲は、揺動子4の当接部47と当接可能な面としての当接部57となっている。なお、図4に示す揺動子5は、図1に示す揺動子5と同一のものであり、図2の右側に示す揺動子5rとは、軸受孔53の軸心の方向に対して、基体部51に対する腕部52の位置と、腕部52に対する風圧受凹部50の位置とが対称となっている。揺動子5と揺動子5rとは、対となって、クリーニングブレード2を支持する。
【0032】
図1、2、5及び6に示すように、ブロック状の噴射ノズル3の一方の端面には、図示しない空圧ホースの一端に接続されたエルボ34を連結するためのねじ孔32が形成されている。そのねじ孔32とは反対側の端面31には、風圧受凹部40及び風圧受凹部50に対して空気を噴射するための噴射口(図示せず)が形成されている。また、噴射ノズル3の右側面は、平面からなる側面38と、下方に傾斜した平面からなる傾斜側面35からなっている。傾斜側面35には、トップローラ74b及びクリーニングブレード2に空気を噴射するための噴射口30が形成されている。なお、噴射ノズル3rは、噴射ノズル3とは、噴射口30が、傾斜側面35と対称に配置されている傾斜側面36に形成されている点を除けば同一形状となっている。側面38に形成されている2個の貫通孔37には、噴射ノズル3を固定するためのボルト33が挿通される。
【0033】
次に、図5及び図6を用いて、揺動子4と揺動子5とが第1姿勢をとる状態と、噴射ノズル3の端面31の噴射口から噴射された噴射空気10の圧力を受けて、揺動子4と揺動子5とが姿勢を変更して第2姿勢をとる状態とを説明する。
【0034】
第1姿勢をとる揺動子4に支持されているクリーニングブレード2の刃部21は、上記のようにトップローラ74bに押し付けられるように当接している。同様に、第1姿勢をとる揺動子5に支持されているクリーニングブレード2の刃部21は、トップローラTR1に押し付けられるように当接している。このとき、揺動子4と揺動子5とは、それぞれの第1開口部46と第1開口部56とを対向させた状態で、当接部47と当接部57とを互いに当接し合っている。そして、それぞれの第2開口部45と第2開口部55とが開口して一体化状態となった風圧受穴部9を形成している。
【0035】
そして、図6に示すように、風圧受穴部9が噴射空気10の圧力を受けることにより、揺動子4と揺動子5とは、姿勢を変更して第2姿勢をとる。この時、噴射空気10が噴射されている間、風圧受穴部9は、それぞれの風圧受凹部40と風圧受凹部50とに分かれて噴射空気10を受けることになる。また、第2姿勢の揺動子4に支持されているクリーニングブレード2の刃部21はトップローラ74bから離反し、第2姿勢の揺動子5に支持されているクリーニングブレード2の刃部21はトップローラTR1から離反している。噴射空気10の噴射が停止されれば、揺動子4と揺動子5とは、重力の作用で、第2姿勢から第1姿勢へと姿勢を変更する。同時に、風圧受凹部40と風圧受凹部50とは一体化状態となって風圧受穴部9となり、次の噴射空気10の噴射を受けるまで、風圧受穴部9はその姿勢を維持する。
【0036】
図7に示すように、噴射空気10が噴射されると同時に、噴射ノズル3の噴射口30から噴射された噴射空気30aは、トップローラ74bと図示しないクリーニングブレード2に付着している風綿等の異物を吹き飛ばすことができる。左右の噴射ノズル3、3rは、練条機のフレーム64に固定されている左右のブロック63、63rにボルト33により固定されている。
【0037】
また、図8に示すように、噴射空気10が噴射されると同時に、揺動子4を揺動可能に支持するブロック6の噴射口61から噴射された噴射空気60は、トップローラTR1と図示しないクリーニングブレード2に付着している風綿等の異物を吹き飛ばすことができる。この噴射空気60は、図示しない空圧ホースの一端に接続されたエルボ62を介して供給される。
【0038】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、揺動子4、5の姿勢を、風圧を作用させた時の第2姿勢と、風圧の作用を停止させた時の第1姿勢との間で変更できるようにした。そのため、風圧が作用されずに重力を受けて揺動子4、5が第1姿勢をとるとき、揺動子4、5に支持されたクリーニングブレード2がトップローラ74b、TR1に当接して、トップローラ74b、TR1の表面に付着している粘着性異物や風綿等の異物を削ぎ取ることができる。そして、風圧の作用により、揺動子4、5が第2姿勢をとる時、クリーニングブレード2がトップローラ74b、TR1の表面から離反するので、クリーニングブレード2とトップローラ74b、TR1との間にあった風綿等の異物は振り落とされる。従って、間欠的な風圧の作用により、クリーニングブレード2のトップローラ74b、TR1に対する当接と離反とが容易に繰り返されるドラフトローラのクリーニング装置を提供することができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、揺動子4、5の軸受孔43、53から遠い位置にある腕部42、52の先端部に風圧受凹部40、50を形成した。そのため、風圧受凹部40、50に対して空気が噴射され、揺動子4、5が軸受孔43、53を中心に回動するとき、軸受孔43、53に近い位置に形成された係合受部44、54に係合しているクリーニングブレード2は、梃子の原理により風圧で容易に動かされる。従って、揺動子4、5は、空気の噴射を受ける第2姿勢と、空気の噴射が止められて重力の作用で戻る第1姿勢との間の姿勢変更を容易に繰り返すことができる。
【0040】
(3)上記実施形態では、2本のトップローラ74b、TR1に対して第1姿勢をとる一対の揺動子4及び一対の揺動子5のうち、トップローラ74b、TR1の軸方向において同一側に配置される2個の揺動子4、5が、それぞれの風圧受凹部40及び風圧受凹部50を一体化状態にさせて、風圧受穴部9を共有するようにした。そして、その風圧受穴部9に対して一つの噴射ノズル3から空気を噴射することにより、前記同一側の2個の揺動子4、5を同時に作動させて、それぞれが第2姿勢をとるようにすることができる。そのため、一対の揺動子4及び一対の揺動子5に対して一対の噴射ノズル3から空気を噴射する簡単な構造により、それらの揺動子4、5の作動を制御することができる。
【0041】
(4)上記実施形態では、揺動子4、5が第2姿勢をとる時、軸受孔43、53の軸心を通る垂直面に対して、揺動子4、5の重心と係合受部44、54とが同じ側に位置し、風圧受凹部40、50の第2開口部45、55が開口する方向D2が前記垂直面に対して重心がない側に離反した方向を向くようにした。そのため、風圧受凹部40、50に対する空気の噴射が停止した時、揺動子4、5は、重心側に受ける重力により、軸受孔43、53の軸心を中心に回動して、第2姿勢から第1姿勢へと姿勢を容易に変更することができる。
【0042】
(5)上記実施形態では、揺動子4、5の風圧受凹部40、50に対する空気の噴射と同時に、クリーニングブレード2とトップローラ74b、TR1とに対して空気を噴射するようにした。そのため、クリーニングブレード2とトップローラ74b、TR1との間に挟まっていた粘着性異物や風綿等の異物が振り落とされずにトップローラ74b、TR1の表面に残っていても、その異物を、空気の噴射により吹き飛ばすことができる。同様に、クリーニングブレード2に残った異物も、空気の噴射により吹き飛ばすことができる。
【0043】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 揺動子4、4r、5及び5rが風圧を受けないとき、重力のみの作用で姿勢を変更するようにしたが、ばね等の付勢手段を用いて、重力の作用と共に付勢力を受けて、それぞれの揺動子4、4r、5及び5rが姿勢を変更できるようにすること。
・ クリーニングブレード2をポリアセタール製帯板状の成形品としたが、ポリアセタールに替わり、ナイロン、超高分子ポリエチレン等の硬くて自己潤滑性があるエンジニアリングプラスチックとすること。或いは、ゴム製、軽量金属製とすること。
・ 揺動子4、4r、5及び5rをトップローラ74b、TR1の左右に配置したが、他のTR2〜TR4のいずれか、或いは全てに配置すること。
・ トップローラ74b、TR1の軸方向の同一側にある揺動子4、5の組み合わせにおいて、揺動子4の風圧受凹部40を内側に配置し、揺動子5の風圧受凹部50を外側に配置したが、揺動子4の風圧受凹部40を外側に配置し、揺動子5の風圧受凹部50を内側に配置すること。
・ トップローラ74bの左側に揺動子4を配置し右側に揺動子4rを配置し、トップローラTR1の左側に揺動子5を配置し右側に揺動子5rを配置したが、2個の揺動子4をトップローラ74bの左右に配置し、2個の揺動子5をトップローラTR1の左右に配置すること。揺動子4の係合受部44と揺動子5の係合受部54とは、それぞれが左右いずれからもクリーニングブレード2の係合部22を係合することができるので、このように、揺動子4と揺動子5との組み合わせを、トップローラ74b、TR1のそれぞれの左右に配置することが可能となる。
・ 風圧受凹部40と風圧受凹部50とを一体化状態とした風圧受穴部9に対して、一つの噴射口から空気を噴射するようにしたが、風圧受凹部40と風圧受凹部50とのそれぞれに、それぞれに対応した位置に配置された二つの噴射口から空気を噴射すること。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のクリーニング装置が配置されたドラフトパートを示す模式図。
【図2】本発明のクリーニング装置を示す分解斜視図。
【図3】実施形態の揺動子を示す斜視図。
【図4】実施形態の揺動子を示す斜視図。
【図5】揺動子が第1姿勢をとるときの状態を示す模式図。
【図6】揺動子が第2姿勢をとるときの状態を示す模式図。
【図7】フロント側のトップローラに空気が噴射される状態を示す模式図。
【図8】フロント側から2番目のトップローラに空気が噴射される状態を示す模式図。
【図9】一般的な練条工程を示す工程図。
【符号の説明】
【0045】
D1,D2…方向、TR1,TR2,TR3,TR4,74b…トップローラ、BR1,BR2,BR3,74a…ボトムローラ、1…クリーニング装置、2…クリーニングブレード、3,3r…噴射ノズル、4,4r,5,5r…揺動子、8…支軸、9…風圧受穴部、22…係合部、40,50…風圧受凹部、41,51…基体部、42,52…腕部、43,53…軸受孔、44,54…係合受部、45,55…第2開口部、46,56…第1開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップローラ及びボトムローラが配置されたドラフトローラのクリーニング装置において、トップローラの両端位置には、風圧による揺動が可能なように揺動子を支軸により支持し、それらの揺動子にはクリーニングブレードを両端部において支持し、前記揺動子は、前記クリーニングブレードが揺動子の揺動により前記トップローラに当接している時の第1姿勢と、前記揺動子が風圧を受けて揺動することにより、前記クリーニングブレードが前記トップローラから離反した時の第2姿勢との間で交互に姿勢を変更することを特徴とするドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項2】
前記揺動子は、前記支軸に外嵌される軸受孔と前記クリーニングブレードの係合部が係合される係合受部とが形成された基体部と、その基体部から前記軸受孔の軸心に直交する方向に延出した腕部とよりなり、その腕部の先端部には、前記軸受孔の軸心方向と平行な方向に開口する第1開口部と、その第1開口部の開口方向に直交する方向に開口する第2開口部とを有する風圧受凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項3】
2本の前記トップローラに対して第1姿勢をとる左右二対の前記揺動子のうち、前記トップローラの軸方向において同一側に配置される2個の前記揺動子は、それぞれの前記風圧受凹部の第1開口部を対向させた状態で、互いの先端部を当接させることにより、それぞれの前記風圧受凹部を一体化状態として、前記第2開口部のみを有する風圧受穴部を共有し、その風圧受穴部に対して一つの噴射ノズルから空気が噴射されることを特徴とする請求項2に記載のドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項4】
前記揺動子が第2姿勢をとる時、前記軸受孔の軸心を通る垂直面に対して、前記揺動子の重心と係合受部とが同じ側に位置し、前記風圧受凹部の第2開口部の開口方向が前記垂直面に対して前記重心がない側に離反した方向を向いていることを特徴とする請求項2又は3に記載のドラフトローラのクリーニング装置。
【請求項5】
前記揺動子の姿勢を前記第1姿勢から第2姿勢へと変更させるように、前記揺動子が空気の噴射を受けると同時に、前記クリーニングブレードと前記トップローラとに対して空気を噴射することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載のドラフトローラのクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−150714(P2010−150714A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331527(P2008−331527)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000142805)株式会社原織機製作所 (8)
【Fターム(参考)】