説明

ドラム−スリーブ型インダクタ

【課題】 ドラム−スリーブ型インダクタにおいて、磁性コアに対して電極端子の埋め込みを可能にするとともに、磁性コアからの電極端子の抜け落ちを防ぎ、確実に固定する手段を提供する。
【解決手段】 スリーブ12を樹脂と軟磁性体粉末とを混合してなる樹脂成形体により構成するとともに、電極端子15の一端に抜け止め構造が形成された係止部を設け、この係止部を樹脂成形体の中に埋め込み、インサート成形することとする。係止部の抜け止め構造は、その先端がスリーブ12の内部にてテーパ状に拡大した形状や、その先端に向かって横方向の面に突出構造や波状の凹凸を設けた形状、折り曲げ形状や折り返し形状、係止部に1つ以上の貫通穴や凹部を設けた形状などとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子機器に使用されるインダクタに関し、とくに軟磁性体からなるドラム型コアと軟磁性体粉末が一体成形されてなるスリーブとからなる、ドラム−スリーブ型インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電源などに用いられるインダクタにおいては、その電力効率の改善、および小型化が要求される。インダクタのコア形状には様々な方式があるが、このうちドラム型コアとスリーブからなるドラム−スリーブ型インダクタは、内部のコイルをドラム型コアとスリーブによってほぼ完全に覆い隠して閉磁路を構成している。この構成では他のコア形状のインダクタに比べて漏洩磁束がかなり小さくなり、その結果、体積に比較して高いインダクタンスが得られるという特徴がある。従って、面実装部品のように小型化を強く要求される部品には特に適した構成である。
【0003】
従来、ドラム−スリーブ型インダクタのスリーブ部には、フェライト焼結体や金属圧粉体が用いられていた。このようなドラム−スリーブ型インダクタの従来例として、特許文献1に示されるインダクタがある。このインダクタの構成について、図5を元に説明する。
【0004】
図5(a)は特許文献1に示されるドラム−スリーブ型インダクタの斜視図、図5(b)は図5(a)のA−A’における断面図である。図5において、MnZn系フェライトからなるドラム型コア51にはコイル53が巻回されており、その外側にはNiZn系フェライトからなるスリーブ52が設けられている。スリーブ52には2ヶ所に電極端子55がそれぞれ接合固定されていて、コイル53の2ヶ所のコイル端部54は、電極端子55にそれぞれ電気的に接続されている。特許文献1では、電極端子55をスリーブ52に固定する方法についての具体的な記載がないが、両者の固定においては一般的には有機接着剤による接着、かしめによる機械的接合、およびこの2つの方法の併用が実施されている。なおドラム型コア51とスリーブ52との間には、ギャップが設けられている。
【0005】
しかしながら、上述した従来の電極端子の固定方法には以下の欠点があった。まず、かしめによる機械的接合では、インダクタの実装時や実装後に外力によって電極端子がスリーブから外れてしまう可能性があり、信頼性の面で問題があった。有機接着剤による接着や、かしめと有機接着剤による接着の併用の場合にはこの問題は生じない。しかし、一般に電極端子の表面にははんだ付け特性の向上のためにスズめっきが施されているために、電極端子とスリーブとを有機接着剤により固定する際には、電極端子のスズめっき層の表面にさらに接着剤が塗布されることになる。インダクタの実装では一般にリフローはんだ付けが用いられるが、この際には電極端子の表面のスズめっきが一時的に溶融する。そのため、有機接着剤に十分な耐熱性がある場合でも、接着剤の内側に存在するスズめっき層の領域で電極端子の固定位置がスリーブに対して相対的にずれてしまう場合がある。この問題の解決のために、スズめっきをリフローはんだ付けに必要な電極端子の片面のみに施す改善策が知られているが、この場合はスズめっき層の形成が高コストとなる問題がある。
【0006】
特許文献2に記載のインダクタにおいて、上記の問題の解決方法が提案されている。このインダクタの構成について図6に従って説明する。図6(a)は特許文献2に示されるインダクタの斜視図、図6(b)は図6(a)のA−A’における断面図である。図6(b)に示されるように、電極端子65はコア61の内部にその一端が埋め込まれ、一体成形されることで、接着剤を使用せずに固定されている。特許文献2においては、ドラム型コアとスリーブとが一体化されてコア61を構成しており、そこにコイル63が設けられている。コイル63の2ヶ所のコイル端部64は、前記のコア61に一体成形された2ヶ所の電極端子65に、溶着もしくははんだ付けによってそれぞれ電気的に接続されている。コア61はフェライト系の材質である。なお特許文献2に記載したインダクタの場合には、コイル63は空心コイルとして巻線後にコア61に挿入する必要があり、通常のドラム−スリーブ型インダクタとは異なり、巻線の容易なドラムコアのメリットはない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−6609号公報
【特許文献2】特開2004−186406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載したインダクタの電極端子の固定方法においては、使用されるコアの材質についてはとくに検討されておらず、またコア内にその一端が埋め込まれる電極端子の形状についても規定されていない。フェライト焼結体によるインダクタ用のコアを作製する場合には、必要な焼結温度は一般に1000℃前後に達することが知られている。従って、もし金属による電極端子を埋め込み、一体成形したコアをフェライト焼結体によって形成するならば、電極端子表面に形成しためっき層は通常はこの昇温に耐えることができない。また金属製の電極端子とフェライトコアとの熱膨張係数の差に起因する応力歪みが電極端子の埋め込み部分に集中的に作用するため、フェライトコアにクラックが多発することにもなる。よって、少なくとも電極端子が埋め込まれるスリーブ部分をフェライト焼結体によって形成することには技術的な困難が存在しており、高い温度への昇温を必要としない、焼結以外の方法によるコアの作製が必要である。
【0009】
また、上記の課題が解決したとしても、コアのスリーブ部分に電極端子の一端を単純に埋め込み固定する方法では、やはり電極端子の抜け落ちを防止することができないという課題がある。一般に電極端子の表面にはスズなどによるめっきが施されており、インダクタの実装時のリフローはんだ付けの際にこのめっき層が一時的に溶融することは、電極端子を接着剤により固定した場合と同様であるため、やはり実装時に電極端子が抜け落ちる課題が付き纏うことになる。従ってこの電極端子の抜け落ちを防止する手段の提供が求められる。
【0010】
従って、本発明の目的は、電極端子の埋め込みを可能にするインダクタ用のコアの製造方法と、前記コアからの電極端子の抜け落ちを防ぎ、確実に固定する手段とを同時に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明においては、ドラム型コアおよびスリーブを有するドラム−スリーブ型インダクタに関して、電極端子の一端に抜け止め構造が形成された係止部を設け、前記係止部を樹脂と軟磁性体粉末とを混合してなる樹脂成形体の中に埋め込み、インサート成形することによってスリーブを構成する。この構成ではインサート成形による一体成形により電極端子の係止部がスリーブ内に埋め込まれているために、実装時のリフローはんだ付けなどの際にも電極端子の抜け落ちを防止することができる。
【0012】
樹脂成形体のインサート成形では、室温からの必要な昇温は、一般にリフローはんだ付け時の昇温温度よりも低い、数十℃〜百数十℃に留まるので、電極端子に設けられためっき層にダメージが発生することはない。さらに焼結によって作製されたコアとは異なり、インサート成形されたスリーブには樹脂が残存していることと、成形時に必要な昇温温度が低いことにより、電極端子の係止部の埋め込みにより生じる応力歪みは周囲のスリーブの構成樹脂が十分に吸収可能であり、そのためクラックが発生する問題も生じない。なおスリーブ全体を100重量部とすると、混合する軟磁性体粉末を30重量部以内とすることが好適であり、また軟磁性体粉末としては、組成がFe−Si−Bのアモルファス粉末を用いる場合がとくに好適である。
【0013】
また、スリーブ内に含まれる軟磁性体粉末の密度を適度に調節することにより、作製されるドラム−スリーブ型インダクタのインダクタンスを制御することができ、それによって従来のフェライト焼結体や金属圧粉体により作製されたスリーブと同等の特性を得ることが可能である。ここでスリーブ内に埋め込まれている電極端子の係止部にめっきを施すかどうかは任意であり、係止部の抜け止め構造によって、めっき層が設けられている場合でも、リフローはんだ付け時などに電極端子が抜け落ちることを防止することができる。
【0014】
ここで、電極端子の係止部に設けられた前記の抜け止め構造は、スリーブ内に埋め込まれた領域が、スリーブの内部において何らかの広がりを有する構造であればどのようなものでもよい。具体的には係止部の先端に向かって横方向へのテーパ状の拡大構造、横方向への突き出し構造、1ヶ所以上の貫通穴、側面に設けた波状構造、1ヶ所もしくは複数ヶ所の折り曲げ構造、1ヶ所もしくは複数ヶ所の折り返し構造、折り曲げと折り返しの組み合わせ構造、1ヶ所以上の凹部の形成、およびこれら複数の抜け止め構造を互いに組み合わせた形状により構成されるものであればよい。
【0015】
即ち、本発明は、閉磁路構造を有するドラム−スリーブ型インダクタが、軟磁性体からなるドラム型コアと、前記ドラム型コアに巻回される巻線と、前記ドラム型コアの外側に配置され、軟磁性体粉末が一体成形されてなるスリーブとを有しており、前記スリーブが前記巻線の端部に継線された金属端子を有していて、前記金属端子は抜け止め構造が設けられた係止部を有しており、前記係止部が前記スリーブ内に埋め込まれていることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0016】
また、本発明は、前記スリーブが2個の前記金属端子を有しており、前記金属端子の各々が前記巻線の両端部にそれぞれ継線されてなることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0017】
さらに、本発明は、前記係止部が、その先端に近づくに従ってテーパ状に拡大した形状であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0018】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の突出形状がその先端に向かって横向きに設けられた構造であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0019】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の貫通穴が設けられた構造であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0020】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の波状の凹凸がその先端に向かって横方向の側面に設けられた構造であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0021】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の折り曲げ構造が設けられていることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0022】
さらに、本発明は、前記折り曲げ構造が波状の形状であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0023】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の折り返し構造が設けられていることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0024】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の折り曲げ構造および折り返し構造の組み合わせ構造が設けられていることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0025】
さらに、本発明は、前記係止部に、少なくとも1ヶ所の凹部が設けられた構造であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0026】
さらに、本発明は、前記スリーブが、30重量部以内の軟磁性体粉末と残余の樹脂とを混合して100重量部となるよう構成されていることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0027】
さらに、本発明は、前記スリーブを構成する軟磁性体粉末が、Fe−Si−Bアモルファス粉末であることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタである。
【0028】
さらに、本発明は、軟磁性体からなるドラム型コアに巻線を巻回し、軟磁性体粉末および樹脂の混合物に、各々が抜け止め構造が設けられた係止部を有する2個の金属端子の前記係止部をそれぞれ埋め込み、インサート成形することによりスリーブを形成し、前記スリーブ内に前記ドラム型コアを挿入固定し、前記巻線の各端部を前記各金属端子にそれぞれ接続固定したことを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタの製造方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、ドラム−スリーブ型インダクタにおいて、スリーブを樹脂と軟磁性体粉末とを混合してなる樹脂成形体により構成し、さらに電極端子の一端に抜け止め構造が形成された係止部を設け、その係止部をスリーブ内に埋め込み、インサート成形することによりスリーブを形成するものである。本発明の構成においては、樹脂成形体を形成する際のインサート成形での昇温温度が一般に数十℃〜百数十℃であるので、電極端子に金属めっき層が設けられていてもめっき層にダメージが生じることはない。またインサート成形されたスリーブでは、電極端子の係止部の埋め込みにより生じる応力歪みは十分に小さいため、構成樹脂によって吸収可能であり、スリーブにクラックが発生することもない。さらにスリーブと一体成形された電極端子に抜け止め構造が設けられているために、インダクタの実装時のリフローはんだ付けなどの工程によって電極端子の抜け落ちが生じることのない、ドラム−スリーブ型インダクタを提供することができる。
【0030】
また、電極端子とスリーブとを一体成形することにより、電極端子とスリーブとの接着剤による接着工程が省略されることになり、製造工程の簡略化を図りうるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態に係るドラム−スリーブ型インダクタについて、図1〜図4に基づいて以下に説明する。
【0032】
図1は、本発明におけるドラム−スリーブ型インダクタの実施の形態を示す組立斜視図である。図1において、ドラム型コア11にはコイル13が巻回されており、前記コイル13からは2本のコイル端部14が伸びている。一方、樹脂と軟磁性体粉末とを混合してなる樹脂成形体からなるスリーブ12は、中央に穴部を有する形状であり、2個の電極端子15の一端に設けられた係止部が、スリーブ12内にそれぞれ埋め込まれてインサート成形により一体成形されている。ドラム型コア11は図の矢印に示すようにスリーブ12の穴部に挿入されて固定され、2本のコイル端部14はそれぞれ2個の電極端子15に接続固定される。ドラム型コア11とスリーブ12とは接着剤による接合とすることが好適であり、またコイル端部14の電極端子15への接続固定では両者が電気的に接続される必要があるため、リフロー時に溶融しない高融点はんだによるはんだ付け接合、アーク溶接、超音波溶接、電気抵抗溶接などにより実施することが適当である。
【0033】
前記の電極端子の一端には抜け止め構造を有する係止部が設けられており、その具体的な形状の例について図2および図3に基づき説明する。このうち図2(a)〜図2(o)は電極端子の形状の例を列記した斜視図であり、電極端子25の一端に設けられた係止部26の抜け止め構造の形状が互いに異なっている。
【0034】
ここで、図2(a)は係止部の先端がスリーブの内部にてテーパ状に拡大して樹脂成形体に食い込む形状である。また図2(b)〜図2(d)は係止部に、その先端に向かって横向きに突出形状を設けたものであり、図2(b)は互いに逆向きの2方向に、図2(c)はその先端に向かって1方向のみに、図2(d)は図2(c)とは逆向きの1方向のみにそれぞれ突出形状を設けている。さらに図2(e)は係止部に少なくとも1つの貫通穴を設けた形状であり、この貫通穴は円形、長円形、楕円形、多角形などどのような形状でもよく、またこの貫通穴を複数個設けても構わない。さらに図2(f)〜図2(h)は、係止部の、その先端に向かって横方向の面に波状の凹凸形状を設けたものであり、図2(f)は異なる2側面に、図2(g)は1つの側面のみに、図2(h)は図2(g)とは異なる1つの側面のみにそれぞれ波状の凹凸形状を設けている。
【0035】
一方、図2(i)〜図2(k)は係止部に折り曲げ構造を設けたものであり、図2(i)は図の上方に向かって約90度の折り曲げ構造を設けた場合、図2(j)は図2(i)とは逆に図の下方に向かって約90度の折り曲げ構造を設けた場合、また図2(k)は係止部の先端部を2つに分割することで、上向きおよび下向きの両方向の折り曲げ構造を設けた場合を示したものである。さらに図2(l)および図2(m)は係止部に折り返し構造を設けたものであり、図2(l)は折り返し構造が1回の場合、図2(m)は折り返し構造が2回の場合を示したものである。また図2(n)は前記の折り曲げ構造と折り返し構造の両方を設けたものである。さらに図2(o)は係止部に図の上下方向に繰り返す、波状の凹凸を設けた形状である。
【0036】
また図3は前記図2(a)〜図2(o)とは異なる電極端子の係止部の抜け止め構造の例について図示したものであり、図3(a)はその斜視図、図3(b)は図3(a)のA−A’における断面図である。図3は抜け止め構造として、電極端子35の一端に設けられた係止部36に対して抜け止め構造として、図において下に凸の少なくとも1つの凹部を設けた形状を示したものであるが、この凹部は上に凸であってもよいし、また円形、長円形、楕円形、多角形などどのような形状でもよく、さらにこの凹部を複数個設けても構わない。さらに、図2および図3に記したこれら電極端子の係止部の抜け止め構造どうしを互いに組み合わせた形状として用いても構わない。
【実施例】
【0037】
本発明の効果を確認するために、実際にドラム−スリーブ型インダクタを作製し、またその電気的特性である直流重畳特性を測定した。まず樹脂に対してFe−Si−Bアモルファスフェライト粉末を30重量部の割合で混合して100重量部とした樹脂成形体に、インサート品である2個の電極端子の係止部を、前記樹脂成形体の内部に挿入してインサート成形してスリーブを作製した。なお前記電極端子の本体は、銅を加工してプレス曲げによってU字状として表面にスズめっきを施したものであり、係止部の抜け止め構造は、図2(a)に示したスリーブ内部に向けてテーパ状に拡大した形状のものである。作製したスリーブは縦3.0mm×横3.0mm×高さ1.0mmの直方体であり、3.0mm×3.0mmの面の中心に、ドラム型コアを収めるための内径2.2mmの貫通穴を設けてある。
【0038】
一方ドラム型コアは外径2.0mm、高さ1.0mmのつばのある円筒形状である。このドラム型コアに、直径0.10mmの銅の被覆導線を計11ターン巻回してコイルを形成した。このドラム型コアの材質としては、電気絶縁性に優れたNiZn系フェライトを採用している。これは、コイルとして絶縁皮膜のかなり薄い銅の細線が用いられていることから、コイルにおける短絡をできるだけ防ぎたいという理由に基づく。次いでこのドラム型コアを前記スリーブに設けられた貫通穴に挿入して、エポキシ系接着剤により接着固定し、最後に前記コイルの両端部を各々スリーブから突出した電極端子に高融点はんだ付けによって接続して、ドラム−スリーブ型インダクタを形成した。その外形は前記スリーブの外形と同一で、縦3.0mm×横3.0mm×高さ1.0mmの直方体である。
【0039】
以上作製したドラム−スリーブ型インダクタに、実装基板にはんだ付け固定するためのリフローはんだ付けを施して電極端子の抜け落ちが生じないか確認したところ、全く問題のない強度ではんだ付け固定が行われていることを確認した。
【0040】
また実装基板にはんだ付け固定を行ったドラム−スリーブ型インダクタに直流電流を印加して、電流値を増大させた場合のインダクタンスの変化である、直流重畳特性を測定した。その結果を図4に示す。直流電流が0A(ゼロアンペア)の場合のインダクタンスは3.4μHであり、印加する直流電流を増加させるとインダクタンスは徐々に低下して行き、0.7A付近から次第にインダクタンスの低下の割合が大きくなる。これは例えばフェライトコアのみで閉磁路を形成した、他の一般的なインダクタの直流重畳特性と同じ傾向を示しており、作製したドラム−スリーブ型インダクタが、リフローはんだ付けを経ても基板実装用のチョークコイルなどの用途に問題なく使用できることを示している。
【0041】
なお、上記実施例の説明は、本発明の実施の形態に係るドラム−スリーブ型インダクタにおいて、インダクタを構成するスリーブに対して電極端子の埋め込みを可能にするとともに、前記スリーブからの電極端子の抜け落ちを防ぎ、確実に固定する手段について説明したものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のドラム−スリーブ型インダクタに関する組立斜視図。
【図2】本発明のドラム−スリーブ型インダクタに関する電極端子の図。図2(a)〜図2(o)は各々係止部の形状が異なる電極端子を示す斜視図。
【図3】本発明のドラム−スリーブ型インダクタに関する電極端子の図。図3(a)は図2(a)〜図2(o)とは係止部の形状が異なる電極端子を示す斜視図。図3(b)は図3(a)のA−A’における断面図。
【図4】本発明のドラム−スリーブ型インダクタに関する直流重畳特性を示すグラフ。
【図5】従来のドラム−スリーブ型インダクタに関する図。図5(a)は斜視図、図5(b)は図5(a)のA−A’における断面図。
【図6】従来のインダクタに関する図。図6(a)は斜視図、図6(b)は図6(a)のA−A’における断面図。
【符号の説明】
【0043】
11,51 ドラム型コア
61 コア
12,52 スリーブ
13,53,63 コイル
14,54,64 コイル端部
15,25,35,55,65 電極端子
26,36 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉磁路構造を有するドラム−スリーブ型インダクタが、軟磁性体からなるドラム型コアと、前記ドラム型コアに巻回される巻線と、前記ドラム型コアの外側に配置され、軟磁性体粉末が一体成形されてなるスリーブとを有しており、
前記スリーブが前記巻線の端部に継線された金属端子を有していて、前記金属端子は抜け止め構造が設けられた係止部を有しており、前記係止部が前記スリーブ内に埋め込まれていることを特徴とする、ドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項2】
前記スリーブが2個の前記金属端子を有しており、前記金属端子の各々が前記巻線の両端部にそれぞれ継線されてなることを特徴とする、請求項1に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項3】
前記係止部が、その先端に近づくに従ってテーパ状に拡大した形状であることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項4】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の突出形状がその先端に向かって横向きに設けられた構造であることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項5】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の貫通穴が設けられた構造であることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項6】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の波状の凹凸がその先端に向かって横方向の側面に設けられた構造であることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項7】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の折り曲げ構造が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項8】
前記折り曲げ構造が波状の形状であることを特徴とする、請求項7に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項9】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の折り返し構造が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項10】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の折り曲げ構造および折り返し構造の組み合わせ構造が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項11】
前記係止部に、少なくとも1ヶ所の凹部が設けられた構造であることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項12】
前記スリーブが、30重量部以内の軟磁性体粉末と残余の樹脂とを混合して100重量部となるよう構成されていることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項13】
前記スリーブを構成する軟磁性体粉末が、Fe−Si−Bアモルファス粉末であることを特徴とする、請求項12に記載のドラム−スリーブ型インダクタ。
【請求項14】
軟磁性体からなるドラム型コアに巻線を巻回し、
軟磁性体粉末および樹脂の混合物に、抜け止め構造が設けられた係止部を有する金属端子の前記係止部を埋め込み、インサート成形することによりスリーブを形成し、
前記スリーブ内に前記ドラム型コアを挿入固定し、
前記巻線の端部を前記金属端子に接続固定したことを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか1項に記載のドラム−スリーブ型インダクタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate