説明

ドラム式乾燥装置

【課題】加熱部を容易に着脱することができるドラム式乾燥装置を提供する。
【解決手段】ドラム式乾燥装置1は、回転可能に支持され、基材Wを巻き掛けることで回転する円筒状のドラム部20と、ドラム部20の内腔S1に配置された係合部45と、係合部45に着脱可能に係合する被係合部51aを有する加熱部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を乾燥させるドラム式乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷インクや塗料などの液状の塗布材が塗布された基材を乾燥させるためにドラム式乾燥装置が用いられている。ドラム式乾燥装置として、たとえば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
このドラム式乾燥装置は、自身の軸線回りに回転可能に支持された乾燥ドラム(ドラム部)と、乾燥ドラムの内側に配置され支軸に固着された固定ドラムとを備えている。固定ドラムの外周面には薄板状のヒータ(加熱部)が固着されている。
乾燥ドラムの外周の一部は対流ユニットに囲繞されている。
対流ユニットにおける乾燥ドラムの外周面に対向する面には、噴気用カバーと排気用カバーとが乾燥ドラムの円周方向に交互に設けられている。噴気用カバーには送風機と噴気用ヒータからなる熱風送風装置がホースを介して接続されている。また、排気用カバーには、排気装置がホースを介して接続されている。
【0004】
乾燥ドラムの外周面に基材を巻き掛け、基材を長手方向に送ることで基材と乾燥ドラムとの摩擦力により乾燥ドラムが回転する。この状態で、固定ドラムのヒータにより乾燥ドラムを加熱させると同時に、熱風送風装置により基材に熱風を吹きつけることで乾燥ドラムの外周面上の基材を乾燥させ、基材から出てくるガスなどを排気装置により排出する。
以上のような構成のドラム式乾燥装置によれば、ヒータを固定ドラムに固着させるので、基材との摩擦により回転する乾燥ドラムを備えていても、スリップリングなどのような回転接触器が必要ではなくなり、電気配線構造が簡単になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−141364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたドラム式乾燥装置では、ヒータを交換するときには、固定ドラムを装置外に取出し、さらに固定ドラムに固着されたヒータを取外す必要があるなど、ヒータの交換作業に多大な労力を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、加熱部を容易に着脱することができるドラム式乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のドラム式乾燥装置は、回転可能に支持され、基材を巻き掛けることで回転する円筒状のドラム部と、前記ドラム部の内腔に配置された係合部と、前記係合部に着脱可能に係合する被係合部を有する加熱部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記係合部は一対備えられて互いに対向するように配置され、前記加熱部は前記被係合部を一対有し、前記加熱部が一対の前記係合部の間に挿通されることで、前記被係合部が前記係合部にそれぞれ係合するように構成されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記係合部は、前記ドラム部の軸線に平行に延びるように配置されていることがより好ましい。
【0011】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記加熱部を前記ドラム部の軸線方向に位置決めして固定する位置決め部を備えることがより好ましい。
【0012】
また、上記のドラム式乾燥装置において、一対の前記係合部は一対の溝部であり、前記加熱部は、両端部が前記被係合部となって前記一対の係合部にそれぞれ係合する板状部材を有することがより好ましい。
【0013】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記加熱部に電力を供給する電力供給部と、前記加熱部と前記電力供給部とを着脱可能に電気的に接続する接続機構と、を備えることがより好ましい。
【0014】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記ドラム部における軸線方向側の面の少なくとも一方には、前記ドラム部の内腔に連通する貫通孔が形成されていることがより好ましい。
【0015】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記ドラム部を前記ドラム部の軸線回りに回転可能に支持する管状部材と、前記接続機構と前記電力供給部とを電気的に接続する電力供給線と、を備え、前記電力供給線は、前記ドラム部の内腔から前記管状部材の内腔を通して前記ドラム部の外部に導かれていることがより好ましい。
【0016】
また、上記のドラム式乾燥装置において、前記加熱部は近赤外線ヒータを有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドラム式乾燥装置によれば、加熱部を容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態のドラム式乾燥装置の正面図である。
【図2】図1中の切断線A1−A1の断面図である。
【図3】図2中の切断線A2−A2の断面図である。
【図4】同ドラム式乾燥装置の取り付けユニットの斜視図である。
【図5】同ドラム式乾燥装置のヒータユニットの斜視図である。
【図6】同ドラム式乾燥装置におけるヒータユニットの交換方法を説明する図である。
【図7】本発明の第2実施形態のドラム式乾燥装置における要部断面図である。
【図8】本発明の変形例のドラム式乾燥装置における接続機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るドラム式乾燥装置の実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。このドラム式乾燥装置は、印刷インク、塗料、シーラントなどの水性であって液状の塗布材が塗布された長尺の基材を乾燥させるためのものである。本ドラム式乾燥装置は、たとえば、インクジェット印刷機、電子写真印刷機、オフセット印刷機、そしてインクジェット水性糊塗工機などに好適に用いることができる。
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態のドラム式乾燥装置1は、管状に形成されたドラム軸(管状部材)10と、ドラム軸10に回転可能に支持された略円筒状の乾燥ドラム(ドラム部)20と、乾燥ドラム20の内腔S1においてドラム軸10に固定された支持部30と、支持部30に着脱可能に取り付けられるヒータユニット(加熱部)50とを備えている。
【0021】
ドラム軸10はほぼ水平面に平行に配置されていて、両端部を機台11に支持されている。ドラム軸10の外周面には、後述する電力供給線64を挿通する通し孔12が形成されている。一方の機台11には、ヒータユニット50に電力を供給する電力供給部13が取り付けられている。
【0022】
乾燥ドラム20は、管状のドラム本体21と、ドラム本体21の両端部の開口を塞ぐように配置された円板状の一対の蓋体22とを有している。それぞれの蓋体22の中央部に形成された開口には、ベアリング23が接続されていて、ベアリング23はドラム軸10に取り付けられている。
このように構成された乾燥ドラム20は、ドラム軸10およびベアリング23によりドラム本体21の軸線C1回りに回転可能に支持されている。
ドラム本体21の外周面には、印刷インクが塗布された紙などの基材Wが巻き掛けられる。基材Wは、不図示の搬送手段により引っ張られていて、ドラム本体21の外周面に一定の力で押し当てられている。そして、搬送手段により、基材Wを基材Wの長手方向に搬送させると、基材Wとドラム本体21との間に作用する摩擦力により乾燥ドラム20が軸線C1回りに回転する。
【0023】
図1に示すように、それぞれの蓋体22の外面(軸線方向側の面)には、軸線C1回りに等距離ごとに4つの大径孔(貫通孔)24が形成されている。蓋体22の外面における隣り合う大径孔24の間であって蓋体22の縁部側には、大径孔24より小径の小径孔(貫通孔)25がそれぞれ形成されている。
大径孔24および小径孔25は、乾燥ドラム20の内腔S1に連通していて、作業者は、乾燥ドラム20の外部から大径孔24または小径孔25を通して内腔S1に手などを挿入することができる。
【0024】
図2および図3に示すように、支持部30は、円板状に形成され、蓋体22と平行となるように互いに離間して配置された一対のヒータ支持円板31と、一対のヒータ支持円板31の縁部に複数固定された取り付けユニット32と、ヒータ支持円板31の縁部に径方向外側に延びるように取り付けられた遮蔽板33とを有している。
それぞれのヒータ支持円板31は、ドラム軸10に固定部材34により固定されている。ヒータ支持円板31の縁部には、不図示のネジ孔が周方向に複数形成されている。
電力供給部13が配置されている側(以下、乾燥ドラム20の軸線方向Dにおいて、「一方D1側」と称する。)のヒータ支持円板31の径方向の中間部には、取り付けユニット32に対応する数の電源側コネクタ61が、周方向に並べて取り付けられている。各コネクタ61には、接点61a、61bが内蔵されている。
また、ヒータ支持円板31において、電源側コネクタ61の軸線C1側に複数の支持具62が取り付けられている。それぞれの電源側コネクタ61に電気的に接続されたリード線63は支持具62において何本かずつまとめられ、電力供給線64に接続されている。
【0025】
図2に示すように、電力供給線64は、乾燥ドラム20の内腔S1からドラム軸10の通し孔12およびドラム軸10の内腔S2を通して乾燥ドラム20の外部に導かれ、電力供給部13に電気的に接続されている。
【0026】
図4に示すように、取り付けユニット32は、ほぼ矩形の板状に形成されたヒータガイド36と、ヒータガイド36上に取り付けられた一対の差し込み溝金具37と、ヒータガイド36に接続された位置決め部38とを有している。
【0027】
ヒータガイド36には、軸線方向Dの両端に軸線C1側に延びる帯状の折り返し部39がそれぞれ設けられている。ヒータガイド36には軸線方向Dに延びる挿入孔36aが形成され、折り返し部39のヒータガイド36側には、正面視で矩形状の切欠き39aが形成されている。挿入孔36aと一対の切欠き39aとは連通している。
前述の差し込み溝金具37は、ヒータガイド36における挿入孔36aの幅方向の両縁部において、軸線方向Dに平行に延びるとともに互いに対向するように配置されている。
図3および図4に示すように、差し込み溝金具37は、ヒータガイド36上に挿入孔36aの縁部から一定距離外側に離間して配置された基部40と、基部40の上端からヒータガイド36に対してほぼ平行に挿入孔36aの縁部まで突出するように形成された受け部41とを有している。基部40および受け部41は一体に形成され、軸線方向Dに平行に延びている。
なお、差し込み溝金具37とヒータガイド36の縁部とにより、本発明の溝部(係合部)45が形成されている。そして、一対の溝部45は、互いに対向するように配置されている。
軸線方向Dの一方D1側の折り返し部39において、切欠き39aの側方には不図示のネジ孔が形成されている。
【0028】
図4に示すように、位置決め部38は、平板状のヒータユニット押え42と、ヒータユニット押え42に形成された長孔42aに挿通され一方D1側の折り返し部39のネジ孔に螺合するネジ部材43と、軸線方向Dにおいて一方D1側とは反対となる他方D2側の折り返し部39に固定された平板状のヒータユニット押え44とを有している。
ヒータユニット押え42は、長孔42aの長軸がヒータガイド36の厚さ方向に平行になるように折り返し部39上に取り付けられている。
ネジ部材43の螺合を緩めた状態では、ヒータユニット押え42を長孔42aの長軸に沿って移動させることで、ヒータユニット押え42は、ヒータユニット押え42の一端部がヒータガイド36の上面より差し込み溝金具37側に突出した係止位置と、ヒータユニット押え42の一端部がヒータガイド36の上面より切欠き39a側に退避した退避位置との間で移動することができる。
ヒータユニット押え42が係止位置にあるときには、ヒータユニット押え42の一端部側は、溝部45を軸線方向Dに投影した範囲を遮るように配置される。
【0029】
ヒータユニット押え44は、係止位置に移動したときのヒータユニット押え42に対向する位置に固定されている。
それぞれの折り返し部39の軸線C1側の端部には、幅方向に一対の取り付け孔39bが形成されている。
本実施形態では、ヒータガイド36、折り返し部39、差し込み溝金具37、およびヒータユニット押え42、44は、NiやCrによるメッキ鋼板などといった反射率の大きな金属板により形成されている。
【0030】
図3に示すように、遮蔽板33は軸線C1回りに複数配置されている。遮蔽板33は、平坦な板状に形成されるとともに、板厚方向から見たときに、所定の方向に湾曲した形状に形成されている。遮蔽板33の湾曲の内側となる部分の縁部において、ヒータ支持円板31のネジ孔に対応する位置には、複数の不図示の取り付け孔が形成されている。
図2および図3に示すように、遮蔽板33および取り付けユニット32は、遮蔽板33の取り付け孔および取り付けユニット32の取り付け孔39bを挿通させたネジ部材46をヒータ支持円板31のネジ孔に螺合させることにより、軸線C1回りに複数取り付けられている。
遮蔽板33には、軸線方向Dから見たときに遮蔽板33がヒータユニット50に重ならないように、切り欠き33a〜33cが形成されている(図3参照)。
【0031】
図5に示すように、ヒータユニット50は、略矩形の板状に形成されたヒータ支持板(板状部材)51と、ヒータ支持板51上にヒータ支持板51から所定離間して配置された近赤外線ヒータ52と、ヒータ支持板51において近赤外線ヒータ52とは反対側に固定された樋状のリード線支持部材53とを有している。
ヒータ支持板51は、軸線C1に平行に延びるように形成されている。なお、ヒータ支持板51の軸線方向Dに直交する方向側の両端部51aは、本発明の被係合部に相当する。
ヒータ支持板51における軸線方向D側の両端部には、両端の中央部から軸線方向Dに延びる通し溝54がそれぞれ形成されている。また、ヒータ支持板51における軸線方向Dの一方D1側の端部には、近赤外線ヒータ52側に突出する摘み55が設けられている。
【0032】
ヒータ支持板51の厚さは、ヒータガイド36と受け部41との距離よりわずかに薄くなるように設定され、ヒータ支持板51の幅は、一対の差し込み溝金具37の基部40間の距離よりもわずかに小さくなるように設定されている。さらに、ヒータ支持板51の軸線方向Dの長さは、ヒータユニット押え42とヒータユニット押え44との距離よりもわずかに短くなるように設定されている。
【0033】
リード線支持部材53は、一端がヒータ支持板51に固定され他端がヒータ支持板51から離間する方向に延びる第一のガイド部材53aと、第一のガイド部材53aの先端からヒータ支持板51に対してほぼ平行に延びる支持部材53bと、支持部材53bの先端からヒータ支持板51側に延びる第二のガイド部材53cとを有している。第二のガイド部材53cとヒータ支持板51との間には、軸線方向Dに延びる隙間S3が形成されている。
このように構成されたリード線支持部材53の外形は、軸線C1に平行に見たときに、取り付けユニット32の切欠き39aの内形より小さくなるように構成されている。リード線支持部材53は、自身の内腔に後述するリード線58を挿通させる配線ダクトとしても機能している。
ヒータ支持板51およびリード線支持部材53は、NiやCrによるメッキ鋼板などといった反射率の大きな金属板により形成されている。
【0034】
近赤外線ヒータ52は、波長が約0.7μm〜2.5μmの近赤外線を発するヒータである。近赤外線ヒータ52は、軸線方向Dに平行に延びる棒状に形成され、両端部において支持部材56を介してヒータ支持板51に取り付けられている。なお、近赤外線ヒータ52は公知の機構により、支持部材56に着脱可能となっている。
近赤外線ヒータ52の両端部には、リード線57、58の一方の端部がそれぞれ電気的に接続されている。
近赤外線ヒータ52の一方D1側の端部に接続されたリード線57は、ヒータ支持板51の一方D1側の通し溝54に挿通され、他方の端部がヒータ側コネクタ59に接続されている。一方で、近赤外線ヒータ52の他方D2側の端部に接続されたリード線58は、ヒータ支持板51の他方D2側の通し溝54に挿通されるとともにリード線支持部材53内を挿通され、他方の端部がヒータ側コネクタ59に接続されている。ヒータ側コネクタ59には、接点59a、59bが突出した状態に設けられていて、接点59a、59bはリード線57、58にそれぞれ電気的に接続されている。
図3に示すように、ヒータ側コネクタ59は、接点59a、59bを接点61a、61bに接続したり、この接続を解除したりすることで、電源側コネクタ61に着脱可能に接続することができる。
なお、電源側コネクタ61およびヒータ側コネクタ59で、本発明の接続機構を構成する。
【0035】
このように構成されたヒータユニット50は、ヒータ支持板51の両端部51aを取り付けユニット32の溝部45に係合させるようにして一対の溝部45の間に挿通することで、乾燥ドラム20の径方向および周方向に位置決めされている。そして、ヒータ支持板51の軸線方向Dの両側をヒータユニット押え42、44により挟まれることで、ヒータユニット50は、取り付けユニット32に軸線方向Dに位置決めされた状態で固定されている。
一対のヒータ支持円板31の縁部に固定された複数の取り付けユニット32に対して、ヒータユニット50がそれぞれ固定されている。
【0036】
次に、以上のように構成されたドラム式乾燥装置1の動作について説明する。
まず、作業者は、乾燥ドラム20の外周面に基材Wを巻き掛け、電力供給部13により近赤外線ヒータ52に電力を供給して近赤外線ヒータ52を所定の温度まで加熱する。そして、不図示の搬送手段により基材Wを長手方向に搬送させる。
すると、基材Wの摩擦力により乾燥ドラム20が軸線C1回りに回転する。このとき、ヒータユニット50や電力供給線64などは軸線C1回りに回転しない。
このように、基材Wを搬送させながら近赤外線ヒータ52の熱で乾燥させることで、印刷インクなどが塗布された基材Wが乾燥される。
【0037】
次に、近赤外線ヒータ52などが故障した場合などに行われる、ドラム式乾燥装置1におけるヒータユニット50の交換方法について説明する。なお、以下の例では、近赤外線ヒータ52は、リード線57、58およびヒータ側コネクタ59と一体となって交換されるものとする。
まず、電源側コネクタ61からヒータ側コネクタ59を取り外す。乾燥ドラム20の大径孔24または小径孔25を通して内腔S1に手を挿入し、ネジ部材43の螺合を緩め、ヒータユニット押え42を係止位置から軸線C1寄りの退避位置まで移動させる。そして、摘み55を持ってヒータユニット50を軸線方向Dの一方D1側に引いて、図6に示すように、ヒータユニット50を取り付けユニット32から取り外す。なお、ヒータユニット押え42を係止位置から退避位置まで移動させることは、予めヒータユニット押え42が退避位置に配置されている場合や、ヒータユニット押え42が備えられていない場合には必須ではない。
【0038】
作業者は、ドラム式乾燥装置1の外部で、リード線58を隙間S3を通してリード線支持部材53から取り外し、近赤外線ヒータ52をリード線57、58およびヒータ側コネクタ59と一体にして、故障のない新品のものと交換する。このとき、新品の近赤外線ヒータ52に接続されたリード線58を隙間S3を通してリード線支持部材53の内腔に配置しておく。
続いて、摘み55が手前(一方D1側)になるようにして、ヒータ支持板51の両端部51aを取り付けユニット32の溝部45に係合させるようにし、ヒータ支持板51を一対の溝部45の間にヒータユニット押え44に当接するまで挿通する。そして、ヒータユニット押え42を退避位置から軸線C1に対して離間する側に係止位置まで移動させ、ネジ部材43をきつく締めて、ヒータユニット50を取り付けユニット32に位置決めした状態で固定する。さらに、ヒータ側コネクタ59を電源側コネクタ61に接続させる。
【0039】
なお、上記ヒータユニット50において、近赤外線ヒータ52がリード線57、58と着脱可能に電気的に接続されている場合がある。この場合には、上記ヒータユニット50の交換方法において、リード線57、58およびヒータ側コネクタ59を交換することなく、近赤外線ヒータ52のみを交換するようにしてもよい。
すなわち、ヒータユニット50をドラム式乾燥装置1の外部に取り出した後で、故障した近赤外線ヒータ52からリード線57、58を取り外し、支持部材56から近赤外線ヒータ52を取り外す。そして、支持部材56に故障のない新品の近赤外線ヒータ52を取り付けるとともに、この近赤外線ヒータ52にリード線57、58を接続する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のドラム式乾燥装置1によれば、ヒータ支持板51を端部51aが取り付けユニット32の溝部45に係合するように移動させることで、ヒータユニット50が取り付けユニット32に取り付けられる。また、ヒータ支持板51を係合させたときと逆方向に移動させることで、取り付けユニット32からヒータ支持板51が取り外される。
このように、乾燥ドラム20の内腔S1に配置された取り付けユニット32に、ヒータユニット50を容易に着脱し、ヒータユニット50を交換することができる。
【0041】
係合部である一対の溝部45は互いに対向するように配置され、ヒータユニット50のヒータ支持板51の両端部51aが被係合部となっている。このため、ヒータユニット50のヒータ支持板51を取り付けユニット32の一対の溝部45の間に挿通させることで、一対の溝部45の間にヒータユニット50を容易かつ確実に取り付けることができる。
また、溝部45は軸線方向Dに平行に延びるように配置されている。基材Wは乾燥ドラム20の外周面に巻き掛けられるので、基材Wが支障とならない軸線方向Dからヒータユニット50を容易に着脱することができる。
取り付けユニット32は位置決め部38を備えるため、一対の溝部45により軸線方向Dに案内されるヒータユニット50を軸線方向Dに位置決めして固定することで、一対の溝部45の間にヒータユニット50を確実に保持することができる。
【0042】
本実施形態のドラム式乾燥装置1は係合部として溝部45を有し、ヒータユニット50のヒータ支持板51の両端部51aが被係合部となっている。したがって、ヒータ支持板51と一対の溝部45という簡単な構成で、ヒータユニット50を取り付けユニット32に容易に着脱することができる。
そして、ドラム式乾燥装置1は、電源側コネクタ61およびヒータ側コネクタ59で構成される接続機構と、電力供給部13とを備えている。これにより、取り付けユニット32に着脱するヒータユニット50に、接続機構を介して電力供給部13から電力を供給したり、電力供給部13からヒータユニット50を電気的に切り離したりと、容易に切り替えることができる。
一対の蓋体22には、それぞれ大径孔24および小径孔25が形成されているため、大径孔24および小径孔25を通して、ヒータユニット50を取り付けユニット32に容易に着脱することができる。
【0043】
また、ドラム式乾燥装置1は、管状に形成されたドラム軸10と、乾燥ドラム20の内腔S1からドラム軸10の内腔S2を通して乾燥ドラム20の外部に導かれる電力供給線64とを備えている。したがって、軸線C1回りに回転する乾燥ドラム20からドラム軸10により電力供給線64を保護することができる。
ヒータユニット50は、近赤外線ヒータ52を有している。近赤外線ヒータ52から発せられた熱は、乾燥ドラム20のドラム本体21の内周面を透過してドラム本体21の厚さ方向の中間部やドラム本体21の外周面などにも達しやすいため、ドラム本体21の外周面に巻き掛けられる基材Wを効果的に加熱し、乾燥させることができる。
そして、ドラム式乾燥装置1には遮蔽板33および反射率の大きなヒータ支持板51などが備えられているため、近赤外線ヒータ52から発せられた熱で乾燥ドラム20の内周面を効果的に加熱することができる。
【0044】
乾燥ドラム20の内周面を加熱する加熱源が複数のヒータユニット50で構成されているので、一部のヒータユニット50が故障したときには、そのヒータユニット50だけを交換すればよく、ドラム式乾燥装置1の保守に必要な費用を抑えることができる。
ヒータユニット50のリード線支持部材53には、軸線方向Dに延びる隙間S3が形成されている。したがって、近赤外線ヒータ52に接続されたリード線58を隙間S3を通してリード線支持部材53の内腔に配置し、リード線57およびリード線58の端部をヒータユニット50の軸線方向Dの一方D1側にまとめることで、ヒータユニット50の交換を容易に行うことができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態のドラム式乾燥装置2は、第1実施形態のドラム式乾燥装置1の取り付けユニット32に代えて取り付けユニット70を、ヒータユニット50に代えてヒータユニット80をそれぞれ備えている。
【0046】
取り付けユニット70は、取り付けユニット32の一対の差し込み溝金具37に代えて差し込み溝金具71を有している。差し込み溝金具71は、ヒータガイド36において、挿入孔36aの幅方向の一方の縁部だけに配置されている。
差し込み溝金具71は、ヒータガイド36上に挿入孔36aの縁部から一定距離離間して配置された柱状の基部72と、基部72の先端における挿入孔36a側の面からヒータガイド36とほぼ平行に突出する第1の受け部73と、基部72に対して一定の間隔をおいて第1の受け部73の先端から基部72とほぼ平行に突出する第2の受け部74とを有している。
第2の受け部74の先端とヒータガイド36との間には隙間が形成されている。基部72、第1の受け部73および第2の受け部74は一体となって、軸線方向Dに平行に延びるように形成されている。
なお、差し込み溝金具71とヒータガイド36の縁部とにより、本発明の溝部75が形成されている。
【0047】
ヒータユニット80は、ヒータユニット50のヒータ支持板51に代えてヒータ支持板81を備えている。ヒータ支持板81は、ほぼ矩形の板状に形成され、差し込み溝金具71が配置された側の端部に、軸線C1側から離間する方向に延びる折り返し部(被係合部)82が設けられている。
ヒータ支持板81の厚さは、第2の受け部74の先端とヒータガイド36との間の隙間よりわずかに薄くなるように設定され、折り返し部82の厚さは、基部72と第2の受け部74との間隔よりわずかに薄くなるように設定されている。
このように構成されたヒータユニット80は、ヒータ支持板81の折り返し部82を取り付けユニット70の溝部75に係合させるようにして挿通することで、乾燥ドラム20の径方向および周方向に位置決めされる。
【0048】
以上のように構成された本実施形態のドラム式乾燥装置2によれば、ヒータユニット80を容易に着脱することができる。
さらに、取り付けユニット70に1つの差し込み溝金具71を設け、ヒータユニット80に1つの折り返し部82を設ければよいので、たとえば、ヒータガイド36の幅方向の一方の縁部に別の要素が配されている場合であっても、本実施形態の構成を用いることができる。
【0049】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、接続機構を電源側コネクタ61およびヒータ側コネクタ59で構成した。しかし、図8に示す接続機構85のように、接続機構85を、Y型やO型などの一対の接続端子86、87と、端子86、87同士を接続した状態に保持する不図示のネジ部材とで構成してもよい。
このように構成することで、接続機構をより簡単に構成することができる。
【0050】
また、被係合部として、前記第1実施形態ではヒータユニット50に2つの端部51aを、前記第2実施形態ではヒータユニット70に1つの折り返し部82を備え、取り付けユニットに被係合部に対応する数の係合部を備えた。しかし、ヒータユニットに備える被係合部の数に制限はなく、1つ以上であればいくつでもよい。
前記実施形態では、一対の蓋体22の両方に大径孔24および小径孔25を形成したが、大径孔24および小径孔25は、一対の蓋体22の少なくとも一方に形成されていればよい。蓋体22に形成する大径孔24などの貫通孔の数や大きさは、作業性に応じて適宜設定されてよい。
【0051】
前記第1実施形態および第2実施形態では、取り付けユニットの溝部が軸線方向Dに平行に延びるように形成されていた。しかし、ヒータユニットの着脱作業に支障のない範囲内であれば、溝部は軸線方向Dに対して鋭角をなすように傾いて延びるように形成されていてもよい。
また、第1実施形態および第2実施形態では、位置決め部38は必須の構成要素ではない。ただし、取り付けユニットの係合部内でヒータユニットの被係合部が軸線方向Dに移動しやすい場合などには、位置決め部38を備えることが好ましい。
前記第1実施形態および第2実施形態では、ヒータユニットは近赤外線ヒータ52を備えた。しかし、ヒータユニットに用いられるヒータは近赤外線ヒータに限ることなく、遠赤外線ヒータなどの赤外線ヒータや、シートヒータなどの面状発熱体を適宜用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1、2 ドラム式乾燥装置
10 ドラム軸(管状部材)
13 電力供給部
20 乾燥ドラム(ドラム部)
24 大径孔(貫通孔)
25 小径孔(貫通孔)
38 位置決め部
45、75 溝部(係合部)
50、80 ヒータユニット(加熱部)
51 ヒータ支持板(板状部材)
51a 端部(被係合部)
52 近赤外線ヒータ
64 電力供給線
82 折り返し部(被係合部)
85 接続機構
C1 軸線
D 軸線方向
S1、S2 内腔
W 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持され、基材を巻き掛けることで回転する円筒状のドラム部と、
前記ドラム部の内腔に配置された係合部と、
前記係合部に着脱可能に係合する被係合部を有する加熱部と、
を備えることを特徴とするドラム式乾燥装置。
【請求項2】
前記係合部は一対備えられて互いに対向するように配置され、
前記加熱部は前記被係合部を一対有し、
前記加熱部が一対の前記係合部の間に挿通されることで、前記被係合部が前記係合部にそれぞれ係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記ドラム部の軸線に平行に延びるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項4】
前記加熱部を前記ドラム部の軸線方向に位置決めして固定する位置決め部を備えることを特徴とする請求項3に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項5】
一対の前記係合部は一対の溝部であり、
前記加熱部は、両端部が前記被係合部となって前記一対の係合部にそれぞれ係合する板状部材を有することを特徴とする請求項2に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項6】
前記加熱部に電力を供給する電力供給部と、
前記加熱部と前記電力供給部とを着脱可能に電気的に接続する接続機構と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項7】
前記ドラム部における軸線方向側の面の少なくとも一方には、前記ドラム部の内腔に連通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項8】
前記ドラム部を前記ドラム部の軸線回りに回転可能に支持する管状部材と、
前記接続機構と前記電力供給部とを電気的に接続する電力供給線と、
を備え、
前記電力供給線は、前記ドラム部の内腔から前記管状部材の内腔を通して前記ドラム部の外部に導かれていることを特徴とする請求項6に記載のドラム式乾燥装置。
【請求項9】
前記加熱部は近赤外線ヒータを有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のドラム式乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−7827(P2012−7827A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145069(P2010−145069)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】