説明

ドラム缶の処理方法

【課題】重厚な設備を必要とせずにドラム缶を処理できる方法を提供する。
【解決手段】産業廃棄物を排出したドラム缶1内部の付着物の有無を調べ,付着物無しとされたドラム缶1はそのまま回収し,付着物有りとされたドラム缶1は,更に付着物が洗浄で除去できるか判定し,付着物が洗浄で除去できると判定されたドラム缶1は付着物を洗浄してから回収し,付着物が洗浄で除去できないと判定されたドラム缶1は付着物を研磨または切削してから回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,産業廃棄物を排出したドラム缶の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,各種産業で発生した産業廃棄物の多くは,ドラム缶に充填されて産業廃棄物処理業者へ運搬される。その後,産業廃棄物処理業者では,ドラム缶を開けて内容物である産業廃棄物を焼却炉内に排出し,焼却処理している。また,産業廃棄物を排出して空となったドラム缶は,ドラム缶内部に付着した付着物の状態に応じて,洗浄工程や焼却工程などに送られ,更に,再生ドラムとして利用されたり,鉄スクラップとして利用される。
【0003】
ドラム缶を洗浄する工程では,ドラム缶内部の付着物を除去するために,酸,アルカリ,有機化合物などの薬剤が用いられている。例えば特許文献1では,ドラム缶内部の付着物をシンナーで洗浄して除去している。また,焼却工程では,ドラム缶を高温で焼却し,その後,鉄スクラップとして回収している。
【0004】
【特許文献1】特許公開2000−055334
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上記特許文献1の方法によると,少量の付着物を洗浄するために,洗浄工程の他に熱媒体加熱工程や,蒸留工程,燃焼工程といった数多くの工程が必要となり,そのための設備が必要となる。また,ドラム缶の焼却処理として,産業廃棄物の入ったドラム缶をそのまま焼却する方法もあるが,その場合も,膨大な容積を持つ焼却炉が必要となる。また,ドラム缶を破砕して焼却する方法もあるが,破砕機が必要になる。このため,従来はドラム缶の付着物を取り除くために,いずれの場合においても,重厚な設備が必要となっていた。
【0006】
本発明の目的は,重厚な設備を必要とせずにドラム缶を処理できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,本発明によれば,産業廃棄物を排出したドラム缶内部の付着物の有無を調べ,付着物無しとされたドラム缶はそのまま回収し,付着物有りとされたドラム缶は,更に付着物が洗浄で除去できるか判定し,付着物が洗浄で除去できると判定されたドラム缶は付着物を洗浄してから回収し,付着物が洗浄で除去できないと判定されたドラム缶は付着物を研磨または切削してから回収することを特徴とする,ドラム缶の処理方法が提供される。
【0008】
この処理方法において,付着物が洗浄で除去できると判定されたドラム缶を70〜80℃の温水で洗浄しても良い。なお,洗浄された付着物および/または研磨または切削された付着物を焼却しても良い。また,回収したドラム缶を産業廃棄物の運搬用ドラム缶として再利用することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては,ドラム缶内部の付着物の度合いにより,適宜洗浄等の処理を行う。洗浄する場合,シンナーではなく例えば70〜80℃の温水を用いることにより,作業雰囲気は良好となり,また,熱媒体加熱工程や蒸留工程などを行う設備も不要である。また,膨大な容積を持つ焼却炉や破砕機なども不要である。なお,洗浄で発生した産業廃棄物を含む水や,研磨,切削でドラム缶から分離した付着物だけを焼却処理すれば良いので,重厚な設備を必要とせずになるべく簡単な設備でドラム缶を処理できるようになる。なお,処理したドラム缶は,産業廃棄物の運搬用ドラム缶として再利用でき,また,スクラップとして回収することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下,本発明の好ましい実施の形態を図面を参照に説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかる処理方法で行われる処理フローの説明図である。
【0011】
先ず,各種産業で発生した産業廃棄物が充填されたドラム缶が,産業廃棄物処理業者へ運搬されてくる(S1)。産業廃棄物処理業者では,
上蓋を切り取ってドラム缶を開け,内容物である産業廃棄物を焼却炉内に排出し,焼却処理する(S2)。
【0012】
一方,空となったドラム缶(空ドラム)については,ドラム缶内部の付着物の有無を調べることにより,性状検査を行う(S3)。そして,ドラム缶内部の付着物が実質的に無しとされたものはそのまま回収して,再生ドラムとして再利用することができる。また一方,ドラム缶内部に付着物があり,それを除去する必要があるものは,処理用ドラムとして分別する。
【0013】
次に,付着物有りとされたドラム缶(処理用ドラム)については,更に付着物が洗浄で除去できるかどうかを目視で判定する。この場合,例えば70〜80℃の温水で付着物の除去が可能であると判定されたドラム缶は洗浄工程(S4)に送り,付着物の除去が洗浄では不可能であると判定されたドラム缶は,研磨・切削工程(S5)に送る。
【0014】
洗浄工程(S4)では,図2に示すように,開口部2を下にしてドラム缶1を逆さまに設置し,下からドラム缶1の内部にノズル10を挿入する。そして,ノズル10先端(上端)から例えば70〜80℃の温水を噴霧しながら,ノズル10を上下左右に動作させ,ドラム缶1内部の付着物を温水で洗浄して除去する。こうして洗浄したドラム缶1は,十分に乾燥させた後,再生ドラムとして再利用することができる。
【0015】
なお,温水で洗浄された付着物は,焼却炉内に投入し,焼却処理する(S2)。
【0016】
また,研磨・切削工程(S5)では,図3に示すように,開口部2を斜め上に向けるようにドラム缶1をほぼ横向きに設置し,開口部2からドラム缶1の内部に工具11を挿入する。そして,工具11先端の刃12をドラム缶1の内部に押し付けながら工具11を回転させることにより,ドラム缶1の内部に付着した付着物を研磨または切削により除去する。
【0017】
この場合,ドラム缶1内部の付着物の厚さがほぼ均等であるものは研磨によって付着物を除去し,ドラム缶1内部の付着物の厚さが不均一であるものは切削によって付着物を除去する。また,必要に応じて,研磨または切削して除去した付着物をドラム缶1の内部から抜き出す。
【0018】
なお,この研磨・切削工程(S5)において,付着物の除去に伴って粉塵の発生や,摩擦による発熱が懸念される場合は,適宜散水を行うことも可能である。この場合,散水は刃12とドラム缶1内部の当接部に行えばよい。
【0019】
また,特にドラム缶1下部の付着物が多いような場合は,図4に示すように,予めドラム缶1の下蓋を取り除いて,開口2’させ,付着物をドラム缶1の下部(開口2’)から落下させる。この場合,研磨または切削しながら,除去した付着物をドラム缶1の下部(開口2’)から落下させても良い。また,予め付着物をドラム缶1の下部(開口2’)から落下させた後,ドラム缶1内部に付着して残った付着物を研磨または切削で除去しても良い。
【0020】
また,この研磨・切削工程(S5)では,付着物の性状に合わせて,工具11先端に取り付けた刃12を,金属製またはゴム製ブラシなどに変え,付着物の除去を行うこともできる。また,活性炭,大鋸屑などの付着物を吸収できるものを予めドラム缶1の内部に散布してから,研磨または切削を行えば,効率的に付着物を除去できる。
【0021】
こうして,研磨または切削によって付着物を除去したドラム缶1は,例えばスクラップとして資源回収することができる。また,性状の良いドラム缶は,産業廃棄物の運搬用ドラム缶として再利用することもできる。
【0022】
なお,研磨または切削された付着物は,焼却炉内に投入し,焼却処理する(S2)。産業廃棄物を焼却処理する際に,研磨または切削された付着物の焼却も一緒に行えば,より効果的に焼却処理でき,環境負荷を低減することができる。
【0023】
以上の処理方法によれば,ドラム缶1内部の付着物の度合いにより,適宜洗浄工程(S4),研磨・切削工程(S5)等の処理を行うことにより,産業廃棄物を排出したドラム缶1の状態に応じて適切な処理を行うことができる。洗浄する場合,シンナーではなく例えば70〜80℃の温水を用いることにより,作業雰囲気は良好となり,また,熱媒体加熱工程や蒸留工程などを行う設備も不要である。また,膨大な容積を持つ焼却炉や破砕機なども不要である。そのため,重厚な設備を必要とせず,簡単な設備でドラム缶1を処理できるようになる。
【0024】
以上,本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば,洗浄工程(S4)と研磨・切削工程(S5)を適宜組み合わせることによって,より効率的にドラム缶1の付着物を除去することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は,各種産業で発生した産業廃棄物運搬用のドラム缶の処理に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態にかかる処理方法で行われる処理フローの説明図である。
【図2】洗浄工程の説明図である。
【図3】研磨・切削工程の説明図である。
【図4】ドラム缶の下蓋を取り除いた研磨・切削工程の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ドラム缶
2 開口部
10 ノズル
11 工具
12 刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物を排出したドラム缶内部の付着物の有無を調べ,付着物無しとされたドラム缶はそのまま回収し,付着物有りとされたドラム缶は,更に付着物が洗浄で除去できるか判定し,付着物が洗浄で除去できると判定されたドラム缶は付着物を洗浄してから回収し,付着物が洗浄で除去できないと判定されたドラム缶は付着物を研磨または切削してから回収することを特徴とする,ドラム缶の処理方法。
【請求項2】
付着物が洗浄で除去できると判定されたドラム缶を70〜80℃の温水で洗浄することを特徴とする,請求項1に記載のドラム缶の処理方法。
【請求項3】
洗浄された付着物および/または研磨または切削された付着物を焼却することを特徴とする,請求項1または2に記載のドラム缶の処理方法。
【請求項4】
回収したドラム缶を産業廃棄物の運搬用ドラム缶として再利用することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のドラム缶の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−268418(P2007−268418A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97419(P2006−97419)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】