説明

ドリッパー

【課題】カフェラテ等、2種類の材料を要する飲料であっても、これを手軽にドリップできるドリッパーを提供する。
【解決手段】カップ5の開口周縁部5aに載せて使用するドリッパー。ドリッパーは、中間濾過シート40を介して上下に連通接続された上方部屋20と下方部屋30を備える。下方部屋の底壁部31は、除去可能なフィルム材36で覆われた開口35を有する。上方部屋20の天面が上方透過シート50で覆われており、その周囲には、周壁25が立設されている。ドリップするとき、まず、下方部屋の底壁部に設けた開口35を塞ぐフィルム材36を剥がして、粉ミルクをカップ内に落下させる。次に、上方部屋の上部において、周壁25で囲まれた“湯だまり”に湯を注ぎ込む。ドリップされたコーヒーがカップ5内の粉ミルクと混ざるので、これをかき混ぜるとカフェラテが出来上がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーカップ等の上部に載せて、カフェラテ等、2種類の材料を要する飲料をドリップするのに使用するドリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
粉コーヒーを収容した状態でコーヒーカップの上に載せて、カップ内にコーヒーをドリップする簡易ドリッパーは、例えば、特許文献1、2に示されるもの等、従来から数多く市販されている。
【0003】
しかしながら、いずれのコーヒードリッパーも、コーヒー粉末を単独で収容するに過ぎない。このため、泡だったクリームを含む飲料(例えば、カフェラテ)の場合には、別途、ミルク入りの袋を用意して、これとドリッパーとがセットにして販売されている。
すなわち、消費者は、通常通りコーヒーをドリップした後、ミルク入り袋を破ってミルクを投入し、スプーン等で泡立ててカフェラテを喫茶する。
【0004】
このように、コーヒーのドリップとミルクの投入を別々に行うのでは、簡易飲料としての利便性に欠け、消費者にとっては煩わしい。また、ミルク入り袋を無くしてしまうということも考えられるので、改善の余地がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002-306344号公報
【特許文献2】特開平9-206216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、上記カフェラテ等、2種類の材料を要する飲料であっても、これを手軽にドリップできるドリッパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、次の特徴を備えたドリッパーが提供される。本発明のドリッパーは、カップの開口周縁部に載せて使用するドリッパーであって、中間濾過シートを介して上下に連通接続された上方部屋と下方部屋とを備える。
下方部屋の底壁部は、除去可能な蓋材で覆われた開口を有する。
上方部屋の天面は上方透過シートで覆われていて、その周囲に周壁が立設されている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を備えた本発明のドリッパーによれば、飲料を構成する2種類の材料につき、一方を上方部屋に、他方を下方部屋に収容することができる。2種類の材料を上下の部屋に個別に収容することができるので、カフェラテの場合であれば、ミルク入り袋を別途用意する必要がなくなる。つまり、2種類の材料を要する飲料であっても、別の収容袋等を準備する必要はなく、ドリッパー単体で足りる。
本発明のドリッパーにおいては、下方部屋の底壁部に設けた開口を塞ぐ蓋材を剥がし、内容物をカップ内に落下させた後、ドリッパーをカップの開口周縁部に載せ、上方部屋の上部において、周壁で囲まれた空間(“湯だまり”)に湯を注ぎ込むと、ドリップされた飲料がカップ内に落ちた内容物と混ざる。このように、ドリップ作業は簡単で、消費者は、これをスプーン等でかき混ぜるだけでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。ここでは、コーヒー粉末および粉ミルクの2種類の材料を収容し、カフェラテをドリップする例を説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るドリッパー10の上方斜視図である。図2は、下方側から見た斜視図を示している。
また、図3の側方断面図には、ドリッパー10をコーヒーカップ5の開口周縁部5aに載せた状態を示している。
【0011】
本発明のドリッパー10は、内容物を収容する部屋を上下2つ備える点に特徴がある。図示した例では、上方部屋20にコーヒー粉末が収容され、下方部屋30に粉ミルクが収容される(図3(a))。
【0012】
≪上方部屋20≫
上方部屋20は、底壁21および周壁22で囲まれる収容空間内にコーヒー粉末を収容し、その上から上方透過シート50(図3(b))で封止される。周壁22の上端からは、フランジ部23が外方に向かって拡がっており、このフランジ部23に上方透過シート50が固定される。固定は、熱シールまたは接着剤を利用する等して行う。
フランジ部23の外周縁からは、周壁25が全周に渡って立設されており、この周壁25で囲まれる空間が、ドリップ時の“湯だまり”として機能する。
【0013】
≪下方部屋30≫
上方部屋20の底壁21には、下方部屋30が連設されている。下方部屋30は、底壁31および周壁32で囲まれる収容空間に粉ミルクを収容する。下方部屋30は、その上部全体が上方部屋20の底壁21上に開口しているが、当該開口は、中間濾過シート40で塞がれている。中間濾過シート40も、熱シールまたは接着剤を利用して、底壁21に固定される。
下方部屋30の底壁31は開口35を有するが、この開口35は、フィルム材36等の除去可能な蓋材で塞がれる。
【0014】
開口35を覆う除去可能な蓋材としては、フィルム以外に、アルミ箔などを使用してもよい。これらは、熱シールあるいは接着剤を用いて、開口35を除去可能に覆う。また、内容物の種類に応じて、ガスバリア性を付与する等、適宜の材質を採用できる。取外し可能なキャップを採用してもよい。
【0015】
≪ドリップ方法≫
図3(a)は、本発明のドリッパー10を使って、カフェラテをドリップする代表的な手順を例示的に示している。なお、図3(b)は、ドリッパー10を、内容物を省略した状態で示している。
(1)下方部屋30の底部開口35を塞ぐフィルム材36を剥がして、コーヒーカップ5内に粉ミルクを落下させる。
(2)ドリッパー10をカップ5の開口周縁部5aに載せた後、上方部屋20の上部において、周壁25で囲まれた空間(“湯だまり”)に湯を注ぎ込む。
“湯だまり”の底面は上方透過シート50で構成されているので、注いだ湯は、上方透過シート50を通過して、上方部屋20内のコーヒー粉末を蒸らす。
(3)中間濾過シート40を通過して注出されたコーヒーは、下方部屋30内へと侵入する(下方部屋30内の粉ミルクは既に落下した後であるため、下方部屋30は空となっている)。
(4)注出されたコーヒーは、空になった下方部屋30を通過して、下方部屋底壁31に設けた開口35からカップ5内へ落下し、粉ミルクと混ざる。消費者は、これをスプーン等でかき混ぜて泡立て、カフェラテができあがる。
【0016】
≪変形例≫
図示したドリッパー10においては、上方部屋20が、その底壁面21においてカップ5の開口周縁部5aに載せられ、そのとき、下方部屋30がカップ5内に位置している。このような形態にすると、ドリッパー10をカップ5上に載せたときに、全体の収まりが良く、見た目がスマートである。また、カップ内に突出する下方部屋30の存在により、ドリッパー10のズレ落ちを有効に防止することができる。
しかし、本発明において、ドリッパー10の全体的な形態は、図示したものに限られない。例えば、一定横断面形状の筒状体を上下の部屋に分けて、上方部屋と下方部屋を構成し、下方部屋の底壁においてカップ5の開口周縁部5aに載せてもよい。その場合、ドリッパー全体をカップ5に対して固定する適宜の手段を設ける。
【0017】
≪ドリッパーの製造方法≫
本発明のドリッパー10は、種々の製造方法で作ることができるが、シート成形による場合を一例として簡単に説明する。
(1)プラスチックからなるシート状の原材料を加熱し、型材で上下から挟み込んで、ドリッパー本体部を成形する。
(2)このドリッパー本体部に対して、底部開口35をフィルム材36で塞いだ後、下方部屋30内に粉ミルクを収容し、その上部を中間濾過シート40で封止する。
(3)中間濾過シート40で底壁面が封止された上方部屋20内にコーヒー粉末を収容した後、上方透過シート50で封止する。
【0018】
ドリッパー本体部は、シート成形以外にも、射出成形で作ることができるが、コスト面ではシート成形の方が有利である。
また、原材料として紙を使用し、深絞り加工によりドリッパー本体部を作ってもよい。紙を用いた深絞り加工によれば、上方部屋および下方部屋を備えた2段構造を簡単に作ることができる。その場合、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層した上で、当該熱可塑性樹脂層が内面側に位置するように、加熱プレスにより深絞り成形する。内面を熱可塑性樹脂層とすることで、注いだ湯が紙基材に浸透するのを防ぐことができる。
【0019】
≪中間濾過シート40および上方透過シート50≫
中間濾過シート40は、濾過機能を有する素材であれば、本発明において特に限定されるものではないが、加工性を考慮すると、素材そのもの自体が熱接着性を有するもの、あるいは、最内層が熱接着性を有するものが好ましい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系等の透水性を有する不織布や、あるいは、最内層にポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系やポリエステル系等の熱可塑性樹脂を含有した層を有する2〜3層構成の濾紙を例示することができる。
なお、上方透過シート50は、湯が通過できるものであれば足り、必ずしも濾過機能を備える必要はない。
【0020】
≪第2実施形態:図4≫
図4は、本発明の第2実施形態に係るドリッパー11を示す上方斜視図である。このドリッパー11にも、第1実施形態の場合と同様に、上方部屋の底壁21に中間濾過シート40が、フランジ部23に上方濾過シート50が、それぞれ固定される。図4では、ドリッパー11の構造を明示するために、これらのシート40、50の図示は省略している。
【0021】
第2実施形態のドリッパー11が第1実施形態と異なる点は、フランジ部23にエア流路23を設けている点と、上方部屋20を構成する周壁(部屋周壁)22に傾斜壁22aを設けている点である。以下に、これらの点について説明する。
【0022】
≪エア流路23a≫
上方部屋20は、フランジ部23に上方濾過シート50を固定することで、その上面が塞がれる。また、上方部屋20は、その底壁21に中間濾過シート40を固定することで底面が塞がれる。このように、上方部屋20は、上下を封止された部屋であるため、ドリップ時の湯が抜け難いという問題がある。
この問題を解決するために、フランジ部23にエア流路23aを形成している。エア流路23aは、凹状の溝で構成されていて、一端が周壁22上に開口し、他端は周壁25にまで延在している。その結果、フランジ部23に上方透過シート50が固定された後においても、上方部屋20は、外気と連通することとなる。
【0023】
図示の例では、内容物である粉コーヒーが洩れないように、エア流路23aは、細長くて複雑な形状に構成している。ただし、本発明において、エア流路23aの具体的な形状や数は、特定のものに限定されることはなく、上方透過シート50がフランジ部23に固定された後において、上方部屋20内と外気とを連通させることができればよい。
【0024】
≪傾斜壁22a≫
上方部屋20を構成する周壁(部屋周壁)22を、対向する2箇所において突出させ、傾斜壁22aを構成している。これにより、上方部屋20に収容される粉コーヒーが、当該上方部屋20内において中央領域に寄せられ、無駄なく、かつ効率的にドリップすることができる。
傾斜壁22aに関しても、その具体的な形状や数は、特定のものに限定されることはなく、内容物を中央領域に寄せることができる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るドリッパーを示す上方斜視図。
【図2】図1のドリッパーの下方斜視図。
【図3】図1のドリッパーの使用方法を説明する側方断面図。
【図4】本発明の第2実施形態に係るドリッパーを示す上方斜視図。
【符号の説明】
【0026】
5 コーヒーカップ
5a コーヒーカップの開口周縁部
10、11 ドリッパー
20 上方部屋
21 底壁
22 周壁(部屋周壁)
22a 傾斜壁
23 フランジ部
23a エア流路
25 周壁
30 下方部屋
31 底壁
32 周壁
35 開口
36 フィルム材(蓋)
40 中間濾過シート
50 上方透過シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ(5)の開口周縁部(5a)に載せて使用するドリッパーであって、
中間濾過シート(40)を介して上下に連通接続された上方部屋(20)と下方部屋(30)とを備え、
下方部屋の底壁部(31)は、除去可能な蓋材で覆われた開口(35)を有し、
上方部屋(20)の天面を上方透過シート(50)で覆うとともに、その周囲に立設する周壁(25)を備えてなる、ドリッパー。
【請求項2】
上記上方部屋(20)が、その底壁面(21)において上記カップ(5)の開口周縁部(5a)に載せられ、そのとき、下方部屋(30)がカップ(5)内に位置する、請求項1記載のドリッパー。
【請求項3】
上記上方部屋(20)の部屋周壁(22)上端から外方に向かって拡がるフランジ部(23)に、上方透過シート(50)が固定されており、
当該フランジ部(23)に、凹溝で構成されるエア流路(23a)が形成されていて、当該エア流路(23a)により、フランジ部(23)に上方透過シート(50)が固定された後においても、上方部屋(20)が外気と連通する、請求項1または2記載のドリッパー。
【請求項4】
上記上方部屋(20)の部屋周壁(22)に、収容物を当該上方部屋内の中央領域に寄せる傾斜壁(22a)を設けた、請求項1〜3のいずれか1つに記載のドリッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233310(P2009−233310A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250889(P2008−250889)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】