説明

ドリップ用バッグ

【課題】 レギュラーコーヒー粉、紅茶や緑茶の葉等の被抽出成分を有する内容物を一体的に収納すると共に、容易に開封でき、フィルターカップに載置して簡単なドリップ操作で抽出することができるドリップ用バッグを提供することである。
【解決手段】 濾過機能を有するフィルター材からなる袋体に注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグであって、フィルター材を重ね合わせて周縁を接着することにより形成された底縁熱接着部と、当該底縁熱接着部に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部と、前記底縁熱接着部と対向するようにして形成された上縁熱接着部とにより袋体を形成し、該袋体の中に内容物を封入した構成とされ、且つ、上縁熱接着部が、複数の独立した微小熱接着部から構成され剥離可能に熱接着されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に向かって朝顔形に開いた漏斗状の空間を形成するフィルターカップ内に収納し、上部から熱湯を供給することにより、例えばコーヒーを抽出することができるドリップ用バッグに関し、さらに詳しくはレギュラーコーヒー粉、紅茶や緑茶の葉等の被抽出成分を有する内容物を一体的に収納したドリップ用バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば家庭用として広く用いられているコーヒーメーカーにおいては、上方に向かって朝顔形に開いた漏斗状の空間を形成するフィルターカップが用いられている。そして、このフィルターカップ内に、フィルターカップと同様な漏斗状に形成されたコーヒーフィルター(例えば、特許文献1参照)を装着した後に、このコーヒーフィルター内に適量のコーヒー粉末を入れ、その上部から熱湯を供給することにより、コーヒーフィルターで濾過されてコーヒーが抽出されている。
【0003】
前記したコーヒーメーカーにおけるフィルターカップの構成によると、漏斗状に形成されたコーヒーフィルターを用いて、上部から熱湯を供給することで、コーヒーフィルター内のコーヒー粉末に対してほぼ均一に熱湯を通すことができ、これにより均質なコーヒー液が抽出される。
【0004】
しかしながら、前記したコーヒーメーカーを利用する際には、常にコーヒーフィルターを用意しておかなければならず、ドリップ操作に際しては、フィルターカップ内に、まず、コーヒーフィルターを装着し、次にコーヒーフィルター内に適量のコーヒー粉末を入れるという操作が必要となり、コーヒーフィルターの管理やドリップ操作が煩わしいものである。そこで、このような煩わしさを排除し、独立した表裏一対の濾紙を用い、飲料抽出用の原料を封入して偏平状に形成されたドリップ式飲料用パックが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
上記ドリップ式飲料用パックは、表裏一対の濾紙を互いに接合させた底辺シール部と、側辺シール部と、側辺シール部の上端部間を結ぶようにして剥離可能となるように形成された上辺シール部とにより袋体を形成し、その内部に飲料抽出用の原料を封入した構成とされることにより、コーヒーフィルターの管理やドリップ操作などの煩わしさが排除されたが、上辺シール部のシール強度が弱いと内容物が上辺シール部より零れる恐れがあるためにシール強度が強くなる方向でシールされることが多く、シール強度が強くなると上辺シール部が剥離しにくく、時たま、剥離する勢いで内容物が零れ周囲に散乱するという問題がある。
【特許文献1】実公平4−18521号公報
【特許文献2】特開2003−95330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、レギュラーコーヒー粉、紅茶や緑茶の葉等の被抽出成分を有する内容物を一体的に収納すると共に、容易に開封でき、フィルターカップに載置して簡単なドリップ操作で抽出することができるドリップ用バッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明は、濾過機能を有するフィルター材からなる袋体に注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグであって、前記フィルター材を重ね合わせて周縁を接着することにより形成された底縁熱接着部と、当該底縁熱接着部に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部と、前記底縁熱接着部と対向するようにして形成された上縁熱接着部とにより袋体を形成し、該袋体の中に内容物を封入した構成とされ、且つ、前記上縁熱接着部が、複数の独立した微小熱接着部から構成され剥離可能に熱接着されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のドリップ用バッグにおいて、前記上縁熱接着部の熱接着強度が1.0〜3.0N/15mm幅であることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1または2に記載のドリップ用バッグにおいて、前記上縁熱接着部を構成する複数の独立した微小熱接着部の全面積が前記上縁熱接着部の面積に対して1〜25%の面積比率であることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4記載の本発明は、請求項1乃至3に記載のドリップ用バッグにおいて、前記上縁熱接着部を構成する前記微小熱接着部が碁盤目状に形成され、前記微小熱接着部が矩形状で一辺の長さが0.2mm〜1.0mmとされ、隣接する微小熱接着部との間隔が1.0mm〜1.8mmであることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5記載の本発明は、請求項4に記載のドリップ用バッグにおいて、前記上縁熱接着部を構成する前記微小熱接着部が千鳥状に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6記載の本発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のドリップ用バッグにおいて、前記上縁熱接着部が、前記底縁熱接着部側を中心とする円弧状に形成され、前記フィルター材を前記上縁熱接着部で剥離することにより形成される開口縁が、略円形形状を構成できるようになされていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7記載の本発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のドリップ用バッグにおいて、前記上縁熱接着部の長手方向の略中央の外側には、前記フィルター材から外方に延設され相互に非接着とされた摘み片が、設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明にかかるドリップ用バッグは、濾過機能を有するフィルター材からなる袋体に注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグであって、フィルター材を重ね合わせて周縁を接着することにより形成された底縁熱接着部と、当該底縁熱接着部に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部と、底縁熱接着部と対向するようにして形成された上縁熱接着部とにより袋体を形成し、該袋体の中に内容物を封入した構成とされ、且つ、上縁熱接着部が、複数の独立した微小熱接着部から構成され剥離可能に熱接着されている構成とすることにより、内容物を準備する手間や内容物をドリッパー内に充填する手間を省き、上縁熱接着部を容易に剥離して開口でき、漏斗状に展開させることができ、フィルターカップ内に安定して載置でき、その後に袋体の開口部に熱湯を供給するだけでフィルター材で濾過されて容器内に抽出された飲料を得ることができるという優れた効果を奏するものである。
【0015】
また、請求項2記載の本発明は、上縁熱接着部の熱接着強度を1.0〜3.0N/15mm幅とすることにより、上縁熱接着部の易剥離性(イージーピール性)と内容物の零れ防止とを両立する熱接着強度とすることができる。
【0016】
また、請求項3記載の本発明は、上縁熱接着部を構成する複数の独立した微小熱接着部の全面積を上縁熱接着部の面積に対して1〜25%の面積比率とすることにより、内容物が上縁熱接着部より零れることを防止するとともに、上縁熱接着部を手指で剥離した際、重ね合わせて接着されたフィルター材が破れることなく、フィルター材を剥離でき優れたイージーピール性が得られる。
【0017】
また、請求項4記載の本発明は、上縁熱接着部を構成する微小熱接着部が碁盤目状に形成され、微小熱接着部が矩形状で一辺の長さが0.2mm〜1.0mmとされ、隣接する微小熱接着部との間隔が1.0mm〜1.8mmである構成とすることにより、上縁熱接着部がより剥離しやすく優れたイージーピール性が得られ、且つ、内容物が零れ防止が図れるものである。
【0018】
さらに、請求項5記載の本発明は、上縁熱接着部を構成する微小熱接着部を千鳥状に配置する構成とすることにより、上縁熱接着部において、微小熱接着部以外の非熱接着部が迷路となるのでドリップ用バッグに振動や衝撃などの外力が加わったとしても上縁熱接着部より、内容物が零れることがないという効果を奏する。
【0019】
また、請求項6記載の本発明は、上縁熱接着部が、底縁熱接着部側を中心とする円弧状に形成され、フィルター材を上縁熱接着部で剥離することにより形成される開口縁が、略円形形状を構成できるようにすることにより、フィルターカップの内面形状に沿って、上縁熱接着部が剥離して開口されたドリップ用バッグを安定して載置することができる。
【0020】
また、請求項7記載の本発明は、上縁熱接着部の長手方向の略中央の外側には、フィルター材から外方に延設され相互に非接着とされた摘み片を設ける構成とすることにより、上縁熱接着部が摘み片を摘み、簡単に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に説明する。
図1は本発明にかかるドリップ用バッグを用いて好適に利用されるコーヒーメーカーの抽出部の構成の一例を示す分解図である。図2はコーヒーメーカーの抽出部のフィルターカップの断面図、図3は本発明にかかるドリップ用バッグの一実施形態を示す正面図、図4は図3のZ−Z線断面図、図5は本発明にかかるドリップ用バッグの上縁熱接着部を部分拡大した正面図、図6は図3に示すドリップ用バッグの上縁熱接着部を剥離し、漏斗状に展開した状態を示す斜視図であり、図中の符号1はコーヒーメーカーの抽出部、2はコーヒー容器、3はフィルターカップ、3aは漏斗状の空間、3bは滴下孔、4は蓋、4aは熱湯注入口、5、5’はドリップ用バッグ、6はフィルター材、7は袋体、8はコーヒー粉末、70は底縁熱接着部、71は側縁熱接着部、72は上縁熱接着部、72aは微小熱接着部、73は摘み片、L、L1、L2は一辺の長さ、D、D1、D2は隣接する微小熱接着部との間隔をそれぞれ示す。
【0022】
図1は、本発明にかかるドリップ用バッグを用いて好適に利用される例えばコーヒーメーカーの抽出部のみをとりだしてその構成を分解的に例示した斜視図である。コーヒーメーカーの抽出部1は、コーヒーメーカー本体のプレート上に載置される上部に開口部を備えたコーヒー容器2と、コーヒー容器2の開口部に載置されるフィルターカップ3と、フィルターカップ3の上部開口を閉塞する蓋4とから構成されている。
【0023】
また、蓋4の中央部にはコーヒーメーカー本体で加熱された熱湯が上方から吐出されて注入される円環状の熱湯注入口4aが形成されている。そして、コーヒー容器2の上にフィルターカップ3、およびその上に蓋4を重合させた状態で、コーヒー容器2をコーヒーメーカー本体のプレート上に載置することにより、蓋4の熱湯注入口4aに熱湯が注入されるようにセットされる。
【0024】
図2は、コーヒーメーカーの抽出部を構成するフィルターカップの断面図であって、図2の(イ)は図1のX−X線断面図、(ロ)は図1のY−Y線断面図を示す。図2に示すようにフィルターカップ3内には、上方に向かって朝顔形に開いた漏斗状の空間3aが形成され、底部には、抽出されたコーヒー液をコーヒー容器2に滴下させることができる滴下孔3bが形成されている。
【0025】
図3は、漏斗状の空間3aを有するフィルターカップ3を備えたコーヒーメーカーに好適に使用することができる本発明にかかるドリップ用バッグの一実施形態を示す正面図である。図4は図3のZ−Z線断面図でドリップ用バッグの略中央の断面を示すものである。図3に示すように、一実施形態のドリップ用バッグ5は濾過機能を有するフィルター材6からなる袋体7に注出成分を有する内容物、例えばコーヒー粉末8を封入した形態である。
袋体7は、2枚のフィルター材6を重ね合わせて周縁を熱接着することにより形成された底縁熱接着部70と、当該底縁熱接着部70に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部71、71と、底縁熱接着部70と対向するように側縁熱接着部71、71の上端部間を連結して形成された上縁熱接着部72とにより上縁側が外方に円弧状に膨出した略台形状に形成されている。
【0026】
また、上縁熱接着部72は、底縁熱接着部70側を中心とする円弧状に形成されると共に上縁熱接着部72の長手方向の略中央の外側には、フィルター材6から外方に延設され相互に非接着とされた摘み片73が設けられている。なお、上縁熱接着部72は直線としてもよいが、円弧状にしたほうが、摘み片73を摘みフィルター材6、6を相反する方向に引張り上縁熱接着部72を剥離することにより形成される開口縁が、略円形形状を構成でき、また、袋体7の内容積が大きくなり、コーヒー粉末8が封入された後、袋体7をより扁平状に形成することができるので嵩張らず好ましい。
【0027】
コーヒー粉末8の袋体7への充填は、例えば、袋体7の側縁熱接着部71、71と上縁熱接着部72とを熱接着し、底縁熱接着部70を未接着とした状態で、該未接着の底縁熱接着部70を開口させてコーヒー粉末8を充填し、その後、底縁熱接着部70を熱接着して充填封入される。上縁熱接着部72は、コーヒー粉末8の充填される前に熱接着する理由は、コーヒー粉末8が上縁熱接着部72に付着して夾雑物シールされることがないので上縁熱接着部72の接着力をコントロールしやすいためである。
【0028】
図5は、上縁熱接着部72の部分拡大図で本発明のドリップ用バッグ5の要部を示す。図5に示すように、上縁熱接着部72は複数の独立した微小熱接着部72aから構成されフィルター材6、6間で剥離可能に熱接着されている。上縁熱接着部72の熱接着強度は1.0〜3.0N/15mm幅であることが好ましい。熱接着強度は1.0N/15mm幅未満では、内容物が零れる恐れがあり、3.0N/15mm幅を超えると、接着強度が強くフィルター材6、6間で剥離することが難しい。
また、上縁熱接着部72を構成する微小熱接着部72aは一辺の長さLが0.2mm〜1.0mmの矩形状とされ、碁盤目状に配設して形成されている。一辺の長さLが0.2mm未満では十分な接着強度が得られずに内容物が零れる恐れがある。1.0mmを超えると接着強度が強くなりフィルター材6、6間で剥離した際に、フィルター材6が破れたり、あるいは、剥離した勢いで内容物が零れ周囲に散乱するということがある。また、隣接する微小熱接着部との間隔Dは1.0mm〜1.8mmであることが好ましい。さらに、上縁熱接着部72を構成する微小熱接着部72aは千鳥状に配置されていることが好ましく、微小熱接着部72a以外の非熱接着部が迷路となりドリップ用バッグに振動や衝撃などの外力が加わったとしても上縁熱接着部72より、内容物が零れることがないという効果がある。
【0029】
また、上縁熱接着部72を構成する複数の独立した微小熱接着部の全面積が上縁熱接着部72の面積に対して1〜25%の面積比率であることが好ましい。図5を用いて具体的に示すと微小熱接着部の全面積と上縁熱接着部の面積との面積比率は、微小熱接着部72aの一辺の長さをL1(図5の左右方向)、他の一辺の長さをL2(図5の上下方向)、隣接する微小熱接着部の左右方向の間隔をD1、上下方向の間隔をD2とすると次式で表される。
面積比率(%)=〔(L1×L2)/(L1+D1)×(L2+D2)〕×100
なお、袋体7は2枚のフィルター材6、6で形成した例を示したが、1枚のフィルター材6を折畳み重ねて袋体7を形成してもよい。この場合、折畳む位置を側縁とすれば、一方の側縁熱接着部を省略してもよい。
【0030】
ドリップ用バッグ5を前記構成とすることにより、ドリップ用バッグ5の摘み片73、73を指で摘み、相反する方向に引張り、上縁熱接着部72をフィルター材6、6間で剥離すると、図6示すように、袋体7を漏斗状に展開することができ、ドリップ用バッグ5内に封入されていたコーヒー粉末8は、漏斗状に展開された袋体7の底縁熱接着部70側に移動する。そして、上縁側は円弧状とされているので開口縁が、略円形状となり、フィルターカップ3の漏斗状の空間3a内の内面形状に沿って、開口されたドリップ用バッグ5’を安定してフィルターカップ3に載置できる。
【0031】
而して、図1に示すように、フィルターカップ3をコーヒー容器2上に載置し、次にフィルターカップ3の上部開口を閉塞する蓋4を重合させて、コーヒーメーカーの本体にセットされる。コーヒーメーカーで加熱された熱湯が熱湯注入口4aを介して注入されることにより、ドリップ用バッグ5内のコーヒー粉末8に熱湯を通すことができ、コーヒー容器2にコーヒー液を抽出することが可能となるものである。
【0032】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0033】
フィルター材に目付10g/m2 のポリプロピレンを混抄した不織布(三木特殊製紙株式会社製、品名DM−835)を用いて、コーヒー粉末を封入し図3に示すドリップ用バッグ5を作製した。なお、上縁熱接着部は、微小熱接着部を正方形とし、隣接する微小熱接着部の上下方向と左右方向の間隔を同一とし、表1に示す寸法で碁盤目状に形成した。なお、熱接着条件は、圧力:20N/cm2 、時間1秒とし、温度は160℃〜210℃とした。
袋体外寸:左右160mm×天地100mm
左右は対向する側縁熱接着部の方向、天地は上縁熱接着部と底縁熱接着の方
向をいう。摘み片は天地寸法から上縁熱接着部の中央に外方に10mm延出
させて直径50mmの円弧状に設けた。
熱接着幅 :上縁熱接着部、側縁熱接着部、底縁熱接着部いずれも5mm
上縁熱接着部は半径50cmの円弧状に形成した。
コーヒー粉末充填量:20g
【0034】
[比較例]
実施例と同じドリップ用バッグを作製した。なお、上縁熱接着部は、微小熱接着部および隣接する微小熱接着部との間隔を表1に示す通りの碁盤目状に形成した。
【0035】
これらの実施例1〜4及び比較例1〜2で作製したドリップ用バッグについて、上縁熱接着部の剥離状態、剥離強度、漏れテストの項目に関して評価を行った。上縁熱接着部の剥離状態の評価方法と評価基準を次に示す。
<評価方法>
摘み部より上縁熱接着部を剥離し、剥離した状態と開口縁の状態を観察した。
<評価基準>
○:フィルター材が破れることなく容易に剥離でき、開口縁が略円形形状になった。
×:フィルター材の一部に破れが発生し、開口縁が円形とならず変形した。
【0036】
剥離強度は、底縁熱接着部と摘み片を結び上縁熱接着部に直交するように15mm幅の短冊状に熱接着されたフィルター材を切り取って各々のフィルター材を相反する方向に引張って剥離するときの強度を引張り試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG−ISMO型)で測定した。測定値は微小熱接着部を剥離するときに強度が高くなり、微小熱接着部を通過すると強度が低くなり、測定強度を示すチャートにはピーク値とボトム値を交互に繰返すパルス状となって表れることとなるが、ピーク値を読み取り、その平均値を求めて剥離強度とした。
【0037】
零れテストはドリップ用バッグの底縁熱接着部を指で摘み、上縁熱接着部が下側となるようにして、約20cmの振幅で上下方向に30回振り下げ、振り上げを繰返して評価した。評価基準を次に示す。
<評価基準>
○:コーヒー粉末が零れなかった。
×:コーヒー粉末が零れた。
【0038】
表1に結果を示す。表1から明らかなように、実施例1〜4は、剥離状態は良好で容易に剥離でき、剥離強度は1.39〜2.9N/15mm幅で良好であった。また、零れテストも良好であった。なお、実施例4は、熱接着温度200℃では、剥離状態に一部破れが見られたが、170℃以下にすると良好な剥離状態が得られた。なお、表1に示す実施例4及び比較例2の結果は、熱接着温度が170℃であり、実施例1〜3、比較例1は熱接着温度200℃ある。一方、比較例1は剥離状態は良好であったが、零れテストを行うと、コーヒー粉末が一部零れる傾向が認められた。また、比較例2は零れテストは良好であったが、剥離状態は、フィルター材の一部に破れが見られた。
【0039】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかるドリップ用バッグを用いて好適に利用されるコーヒーメーカーの抽出部の構成の一例を示す分解図である。
【図2】コーヒーメーカーの抽出部のフィルターカップの断面図である。
【図3】本発明にかかるドリップ用バッグの一実施形態を示す正面図である。
【図4】図3のZ−Z線断面図である。
【図5】本発明にかかるドリップ用バッグの上縁熱接着部を部分拡大した正面図である。
【図6】図3に示すドリップ用バッグの上縁熱接着部を剥離し、漏斗状に展開した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 コーヒーメーカーの抽出部
2 コーヒー容器
3 フィルターカップ
3a 漏斗状の空間
3b 滴下孔
4 蓋
4a 熱湯注入口
5、5’ ドリップ用バッグ
6 フィルター材
7 袋体
8 コーヒー粉末
70 底縁熱接着部
71 側縁熱接着部
72 上縁熱接着部
72a 微小熱接着部
73 摘み片
L、L1、L2 一辺の長さ
D、D1、D2 隣接する微小熱接着部との間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過機能を有するフィルター材からなる袋体に注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグであって、前記フィルター材を重ね合わせて周縁を接着することにより形成された底縁熱接着部と、当該底縁熱接着部に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部と、前記底縁熱接着部と対向するようにして形成された上縁熱接着部とにより袋体を形成し、該袋体の中に内容物を封入した構成とされ、且つ、前記上縁熱接着部が、複数の独立した微小熱接着部から構成され剥離可能に熱接着されていることを特徴とするドリップ用バッグ。
【請求項2】
前記上縁熱接着部の熱接着強度が1.0〜3.0N/15mm幅であることを特徴とする請求項1に記載のドリップ用バッグ。
【請求項3】
前記上縁熱接着部を構成する複数の独立した微小熱接着部の全面積が前記上縁熱接着部の面積に対して1〜25%の面積比率であることを特徴とする請求項1または2に記載のドリップ用バッグ。
【請求項4】
前記上縁熱接着部を構成する前記微小熱接着部が碁盤目状に形成され、前記微小熱接着部が矩形状で一辺の長さが0.2mm〜1.0mmとされ、隣接する微小熱接着部との間隔が1.0mm〜1.8mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のドリップ用バッグ。
【請求項5】
前記上縁熱接着部を構成する前記微小熱接着部が千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項4記載のドリップ用バッグ。
【請求項6】
前記上縁熱接着部が、前記底縁熱接着部側を中心とする円弧状に形成され、前記フィルター材を前記上縁熱接着部で剥離することにより形成される開口縁が、略円形形状を構成できるようになされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のドリップ用バッグ。
【請求項7】
前記上縁熱接着部の長手方向の略中央の外側には、前記フィルター材から外方に延設され相互に非接着とされた摘み片が、設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のドリップ用バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−29484(P2010−29484A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195574(P2008−195574)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】