説明

ドレッシングの素、ドレッシング及びドレッシングの素の製造方法

【課題】穀粉、果実、ホップ等に付着した乳酸菌及び酵母を共培養させて得られるパン種を用いたドレッシングの素、ドレッシング及びドレッシングの素の製造方法を提供する。
【解決手段】ライ麦等の第1の穀粉等を含む生地に、この穀粉に付着している乳酸菌及び酵母を共培養させて得られたパン種を用いて、米粉等の第2の穀粉等を発酵させてドレッシングの素を製造することができる。この方法で得られたドレッシングの素を配合したドレッシングは、乳酸菌の発酵過程において産生された乳酸等の物質により、深みのある酸味や旨味等を付与するだけでなく、穀粉等に付着している有害な微生物の増殖を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレッシングの素、ドレッシング及びドレッシングの素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パンの製造に用いられるパン種において、小麦粉やライ麦粉等の穀粉に付着した乳酸菌や酵母を共培養させて得られたもの(サワードウ)が知られている。また、当該穀粉の代わりにブドウやリンゴ等の果実を用いたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。これらのパン種は、パンの材料として使用されるだけでなく、例えば、洋菓子、饅頭、漬け床、あられ、濡れせんべい等の食品の製造にも用いられている(例えば、非特許文献1〜6参照)。
【特許文献1】特開2006−325562号公報
【非特許文献1】井上和春、他、「多水分系穀類食品の製品開発(第2報)」、埼玉県食品工業試験場業務報告、埼玉県食品工業試験場、1997年、p.21−24
【非特許文献2】井上和春、他、「微生物機能を利用した米の新規用途開発」、埼玉県産業技術総合センター研究報告、埼玉県産業技術総合センター、2003年、第1巻、p.103−106
【非特許文献3】井上和春、他、「乳酸菌・酵母を利用した新規穀類加工食品の開発」、埼玉県産業技術総合センター研究報告、埼玉県産業技術総合センター、2004年、第2巻、p.92−96
【非特許文献4】井上和春、他、「乳酸菌・酵母を利用した新規穀類加工食品の開発(第2報)」、埼玉県産業技術総合センター研究報告、埼玉県産業技術総合センター、2005年、第3巻、p.66−68
【非特許文献5】井上和春、他、「乳酸菌・酵母を利用した新規穀類加工食品の開発(第3報)」、埼玉県産業技術総合センター研究報告、埼玉県産業技術総合センター、2005年、第3巻、p.69−72
【非特許文献6】井上和春、他、「微生物利用技術に関する研究(1)」、埼玉県産業技術総合センター研究報告、埼玉県産業技術総合センター、2006年、第4巻、p.55−58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したパン種を材料としたドレッシングの素や、このドレッシングの素を配合したドレッシングは知られていない。
【0004】
本発明の目的とするところは、穀粉や果実等に付着した乳酸菌及び酵母を共培養させて得られるパン種を用いたドレッシングの素、ドレッシング及びドレッシングの素の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
(1)すなわち、本発明は、第1の穀粉、果実又はホップに付着している乳酸菌及び酵母を共培養させて得られるパン種を用いて、第2の穀粉又はイモ粉を発酵させて得られることを特徴とする、ドレッシングの素である。
(2)本発明はまた、前記パン種は、前記第1の穀粉に付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、前記第1の穀粉、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させて得られることを特徴とする、(1)に記載のドレッシングの素である。
(3)本発明はまた、前記パン種は、前記果実又は前記ホップに付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させて得られることを特徴とする、(1)に記載のドレッシングの素。
(4)本発明はまた、前記第1の穀粉、前記第2の穀粉及び前記第3の穀粉は、それぞれ独立して米粉、大豆粉、小麦粉、玄米粉、ライ麦粉、ソバ粉、モチ粉、大麦粉、トウモロコシ粉及びエンバク粉からなる群より選択される少なくとも1つである、(1)〜(3)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(5)本発明はまた、前記イモ粉は、ジャガイモ粉又はサツマイモ粉である、(1)〜(4)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(6)本発明はまた、前記果実は、ブドウ、リンゴ、イチゴ、梨、柿、バナナ、桃、梅又はイチジクである、(1)〜(5)の何れか1項に記載のドレッシングの素。
(7)本発明はまた、前記乳酸菌は、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)又はリューコノストック属(Leuconostoc)である、(1)〜(6)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(8)本発明はまた、前記酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スキゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ハンゼヌラ属(Hansenula)である、(1)〜(7)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(9)本発明はまた、前記パン種は、発酵温度25〜30℃で6〜48時間発酵させて得られることを特徴とする、(1)〜(8)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(10)本発明はまた、前記パン種は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌を含むことを特徴とする、(1)〜(9)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(11)本発明はまた、前記パン種は、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母を含むことを特徴とする、(1)〜(10)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(12)本発明はまた、発酵温度25〜30℃で6〜48時間前記第2の穀粉又はイモ粉を発酵させて得られることを特徴とする、(1)〜(11)の何れか1項に記載のドレッシングの素である。
(13)また、本発明は、(1)〜(12)の何れか1項に記載のドレッシングの素が配合されてなる、ドレッシングである。
(14)更に、本発明は、第1の穀粉、果実又はホップに付着している乳酸菌及び酵母を共培養させてパン種を製造する第1の工程と、前記パン種を用いて第2の穀粉又はイモ粉を発酵させる第2の工程と、を有することを特徴とする、ドレッシングの素の製造方法である。
(15)本発明はまた、前記第1の工程は、前記第1の穀粉に付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、前記第1の穀粉、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させることを特徴とする、(14)に記載のドレッシングの素の製造方法である。
(16)本発明はまた、前記第1の工程は、前記果実又は前記ホップに付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させることを特徴とする、(13)に記載のドレッシングの素の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、穀粉、果実、ホップ等に付着した乳酸菌及び酵母を共培養させて得られるパン種を用いて、第2の穀粉、イモ粉等を発酵させて得られるので、乳酸菌の発酵過程において乳酸等の物質が産生され、深みのある酸味や旨味等が付与されたドレッシングの素及びこれが配合されてなるドレッシングを提供することができる。
【0007】
また、産生された乳酸等の物質により、穀粉に付着しているバチルス芽胞菌や大腸菌等の食品を変敗させる恐れのある有害微生物の増殖を抑制することができるので、防腐剤等の食品添加物の使用量を低減することができ、安全性の高いドレッシングの素等を提供することができる。
【0008】
更に、防腐剤等の食品添加物の使用量を低減することにより、ドレッシングの素等の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るドレッシングの素は、第1の穀粉、果実又はホップに付着している乳酸菌及び酵母を共培養させてパン種を製造する第1の工程と、前記パン種を用いて第2の穀粉又はイモ粉を発酵させる第2の工程と、によって得られるものである。
【0010】
第1の工程は、以下の何れかの方法を採用することができる。
(i)第1の穀粉に付着している乳酸菌及び酵母を、第1の穀粉を用いて共培養させてパン種を得る。
(ii)第1の穀粉に付着している乳酸菌及び酵母を、第3の穀粉又はイモ粉を用いて共培養させてパン種を得る。
(iii)果実又はホップに付着している乳酸菌及び酵母を、第3の穀粉又はイモ粉を用いて共培養させてパン種を得る。
【0011】
つまり、(i)の方法は、第1の穀粉を乳酸菌及び酵母の供給源(以下、単に「供給源」という)として用いるだけでなく、その後もこれらの微生物を増殖させるための栄養源(以下、単に「栄養源」という)として用いる方法であり、また、(ii)の方法は、第1の穀粉を供給源としてのみ用い、栄養源として第3の穀粉又はイモ粉を用いる方法であり、更に、(iii)の方法は、果実又はホップを供給源として、第3の穀粉又はイモ粉を栄養源として用いる方法である。
【0012】
ここで、供給源又は栄養源として用いる第1の穀粉としては、例えば、米粉、大豆粉、小麦粉、玄米粉、ライ麦粉、ソバ粉、モチ粉、大麦粉、トウモロコシ粉、エンバク粉等が挙げられ、栄養源として用いる第3の穀粉としては、第1の穀粉と同様のものを用いることができ、栄養源として用いるイモ粉としては、ジャガイモ粉、サツマイモ粉等が挙げられ、更に、供給源として用いる果実としては、例えば、ブドウ、リンゴ、イチゴ、梨、柿、バナナ、桃、梅,イチジク等が挙げられる。
【0013】
また、これらの穀粉、果実及びホップに付着している乳酸菌としては、酵母と共培養することが可能であれば特に限定されず、例えば、サンフランシスセンシス(L. sanfranciscensis)、デルブルエッキ(L. delbrueckii)、アシドフィルス(L. acidophilus)、カゼイ(L. casei)、フルクチボランス(L. fructivorans)、ヒルガルデイ(L. hilgardii)、パラカセイイ(L. paracasei)、ラムノサス(L. rhamnosus)、ヘルベチカス(L. helveticus)、ブルガリカス(L. bulgaricus)、ラクチス(L. lactis)、ブレビス(L. brevis)、フェルメンタム(L. fermentum)等のラクトバシルス属(Lactobacillus)、ビフィダム(B. bifidum)やビフィズス菌(B. adolescentis)等のビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、フェカリス(E. faecalis)、フェシウム(E. faecium)等のエンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)等が挙げられ、酵母としては、乳酸菌と共培養することが可能であれば特に限定されず、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロミセス属(Saccharomyces)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)等のスキゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ハンゼヌラ属(Hansenula)等が挙げられる。
【0014】
これらの乳酸菌及び酵母は、上述した通り第1の穀粉、果実又はホップに付着しているものを共培養により増殖させたものであることが好ましい。菌株を入手して純粋培養することにより得られた乳酸菌及び酵母では、パン種を製造する際の他の材料に付着した有害な微生物の増殖を確実に抑制することができないので好ましくない。
【0015】
第1の工程について具体的に述べれば、まず、(株)愛工舎製作所製の『ルバン30』等のパン種製造機等の装置を用い、所定量の供給源、栄養源及び水を容器に入れ、必要によりモルト(麦芽エキス)等の栄養源や、その他の添加物等を添加し、好ましくは20〜35℃の温度で、特に好ましくは25〜30℃の温度で、好ましくは4〜50時間、特に好ましくは6〜48時間発酵させて発酵生成物を得る。得られた発酵生成物は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1011CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましい。また、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの酵母が含まれていることが好ましい。上記条件を満たさずに発酵させた発酵生成物には、所定数の乳酸菌及び酵母が含まれておらず乳酸等の物質が産生されないので、穀粉に付着しているバチルス芽胞菌や大腸菌等の食品を変敗させる恐れのある有害微生物の増殖を抑制することができないので好ましくないからである。
【0016】
次いで、得られた発酵生成物を濾過してろ液のみを回収し、更に、所定量の得られたろ液、栄養源及び水を容器に入れ、好ましくは20〜35℃の温度で、特に好ましくは25〜30℃の温度で、好ましくは4〜50時間、特に好ましくは6〜48時間、好ましくは1〜10回、特に好ましくは2〜5回発酵させて発酵生成物を得る。得られた発酵生成物は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1011CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましい。また、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの酵母が含まれていることが好ましい。上記条件を満たさずに発酵させた発酵生成物には、所定数の乳酸菌及び酵母が含まれておらず乳酸等の物質が産生されないので、穀粉に付着しているバチルス芽胞菌や大腸菌等の食品を変敗させる恐れのある有害微生物の増殖を抑制することができないので好ましくないからである。
【0017】
次いで、得られた発酵生成物を濾過してろ液のみを回収し、更に、所定量の得られたろ液、栄養源及び水を容器に入れ、好ましくは20〜35℃の温度で、特に好ましくは25〜30℃の温度で、好ましくは4〜50時間、特に好ましくは6〜48時間発酵させて本発明のパン種を得る。得られたパン種は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1011CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましい。また、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの酵母が含まれていることが好ましい。上記条件を満たさずに発酵させたパン種には、所定数の乳酸菌及び酵母が含まれておらず乳酸等の物質が産生されないので、穀粉に付着しているバチルス芽胞菌や大腸菌等の食品を変敗させる恐れのある有害微生物の増殖を抑制することができないので好ましくないからである。
【0018】
第2の工程は、第1の工程で製造されたパン種を用いて、パン種に含まれる乳酸菌及び酵母の栄養源である第2の穀粉又はイモ粉を発酵させることによってドレッシングの素を製造するものである。なお、ここで用いられる第2の穀粉としては、上述した第1の穀粉と同様のものを用いることができる。
【0019】
第2の工程について具体的に述べれば、まず、第1の工程で用いたパン種製造機等を用い、所定量のパン種、栄養源及び水を容器に入れ、必要により第1の工程と同様にして他の栄養源等を添加し、好ましくは20〜35℃の温度で、特に好ましくは25〜30℃の温度で、好ましくは4〜50時間、特に好ましくは6〜48時間発酵させて発酵生成物を得る。得られた発酵生成物は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1011CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましい。また、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの酵母が含まれていることが好ましい。上記条件を満たさずに発酵させた発酵生成物には、所定数の乳酸菌及び酵母が含まれておらず乳酸等の物質が産生されないので、ドレッシングに不可欠な酸味や風味を付与することができないので好ましくないからである。
【0020】
次いで、得られた発酵生成物を濾過してろ液のみを回収し、更に、所定量の得られたろ液、栄養源及び水を容器に入れ、好ましくは20〜35℃の温度で、特に好ましくは25〜30℃の温度で、好ましくは4〜50時間、特に好ましくは6〜48時間、好ましくは1〜10回、特に好ましくは2〜5回発酵させて発酵生成物を得る。得られた発酵生成物は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1011CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましい。また、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの酵母が含まれていることが好ましい。上記条件を満たさずに発酵させた発酵生成物には、所定数の乳酸菌及び酵母が含まれておらず乳酸等の物質が産生されないので、ドレッシングに不可欠な酸味や風味を付与することができないので好ましくないからである。
【0021】
次いで、得られた発酵生成物を濾過してろ液のみを回収し、更に、所定量の得られたろ液、栄養源及び水を容器に入れ、好ましくは20〜35℃の温度で、特に好ましくは25〜30℃の温度で、好ましくは4〜50時間、特に好ましくは6〜48時間発酵させて本発明のドレッシングの素を得る。得られたドレッシングの素は、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの乳酸菌が含まれていることが好ましい。また、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母が含まれていることが好ましく、特に1.0×10〜1.0×1010CFU/gの酵母が含まれていることが好ましい。上記条件を満たさずに発酵させたドレッシングの素には、所定数の乳酸菌及び酵母が含まれておらず乳酸等の物質が産生されないので、ドレッシングに不可欠な酸味や風味を付与することができないので好ましくないからである。
【0022】
本発明のドレッシングの素は、所定の調味料等と混合することによってドレッシングに加工して利用できる。なお、調味料等は、以下の具体例に示す通り、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、上記の方法で製造されたドレッシングの素と、黒胡椒や食塩等の調味料を所定時間混合して、ノンオイルドレッシングに加工することができ、また、ドレッシングの素と、黒胡椒や食塩に加えて唐辛子やコンソメの素等の調味料とを所定時間混合して、コンソメ風味のドレッシングに加工することができ、ドレッシングの素と、醤油や唐辛子或いは昆布や日本酒等の調味料とを所定時間混合して、和風のノンオイルドレッシングに加工することができる。
【実施例】
【0023】
なお、本発明のドレッシングは、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0024】
[実施例1]
パン種の作製
【0025】
まず、表1に示した各原材料を容器に入れて混合した後に、表1に示した発酵条件下で1次発酵を行った。次に、1次発酵によって得られた組成物をろ過してろ液を回収し、このろ液(1次発酵生成物)を用いて表1に示した原材料と一緒に容器に入れて混合した後に、表1に示した条件下で2次発酵を行った。次に、2次発酵によって得られた生成物をろ過してろ液を回収し、このろ液(2次発酵生成物)を用いて表1に示した原材料と一緒に容器にいれて混合した後に、表1に示した条件下で3次発酵を行った。次に、3次発酵によって得られた生成物をろ過してろ液を回収し、このろ液(3次発酵生成物)を用いて表1に示した原材料を一緒に容器に入れて混合した後、表1に示した条件下で最終発酵を行い、パン種を得た。得られたパン種の外観を示す写真を図1に、また、得られたパン種をマイクロスコープ((株)キーエンス、『デジタルマイクロスコープVHX‐900』)で観察した結果を図2に示した。
【表1】

パン種中の乳酸菌及び酵母の同定試験
【0026】
得られたパン種から乳酸菌及び酵母を11コロニーずつ分離し、それぞれのDNAをTAKARA Dr.Gen TLETM for Yeastを用いて抽出した。次いで、乳酸菌の16SrRNA(約1500塩基)及び酵母の26rRNA(約600塩基(D1D2領域を含む))をPCR(Polymerase Chain Reaction)法で増幅させた。更に、増幅させた部位の配列を、シーケンサーで遺伝子解析し、データバンク(BLAST)で相同性検索を行った。なお、乳酸菌のみ、増幅させた部位をpCR2.1 Vectorに組み込み、大腸菌(K12)で形質転換させたものをシーケンサーで遺伝子解析した。また、分離した乳酸菌をBD BBLCRYSTAL GP同定検査薬及びMRS液体培地培養によるガス発生の有無(ダーラム管使用)により調べた。更に、MRS寒天培地を用いて30℃、48時間嫌気培養(BBL GasPak法)した後、乳酸菌数を算定した。また、クロラムフェニコール50μg/mlを添加したポテトデキストロース寒天培地を用い、28℃、48時間培養した後、酵母数を算定した。
【0027】
相同性検索の結果、分離した11コロニーとも、サンフランシスセンシス(L. sanfranciscensis)(相同性96〜99%)、酵母は出芽酵母(S. cerevisise)(相同性99〜100%)であった。また、同定検査薬により、アラビノース、エスクリン、フルクトース、ラクトース、マンニトール及びトレハロースに陰性であり、グルコースからのガス発生が陽性であることからも、乳酸菌はサンフランシスコであることがわかった。
パン種の抗菌性試験
【0028】
バチルス芽胞菌(B. subtilis JCM 1465)を普通ブイヨン培地で35℃、96時間培養し、これを8000rpm/10minで遠沈させた。また、大腸菌(E. coli JCM1649)を普通ブイヨン培地で35℃、48時間培養し、これをバチルス芽胞菌と同様にして遠沈させた。更に、カビ(日本醸造工業(株)、『吟醸用麹カビ』)をツィーン80加滅菌水に溶解させた。これらの微生物を、表1に示す1次発酵前の各原材料の混合物中にそれぞれ添加し、このときの微生物数を初発(0日目)とした。各微生物数の経時変化を示した結果を表2に示した。
【表2】

【0029】
表2から明らかなように、パン種中のバチルス芽胞菌数は、初発が9.0×10CFU/gであったのに対し、1日目には6.5×10CFU/gに減少し、2日目以降は検出されなかった。また、大腸菌数は、初発が2.3×10CFU/gであったのに対し、1日目には6.0×10CFU/gに減少し、2日目以降は検出されなかった。ただし、カビ数は、初発が7.0×10CFU/gであり、6日目は6.0×10CFU/gであったので、他の微生物のように数が減少することはなかった。
【0030】
以上の結果より、このパン種は抗菌性を有することが確認できた。
【0031】
[実施例2]
発酵米粉の作製
【0032】
実施例1と同様にして、表3に示す各条件で1次発酵から最終発酵までを順次行い、発酵米粉を得た。得られた発酵穀粉の外観を示す写真を図3に示した。
【表3】

発酵米粉の微生物数の測定
【0033】
得られた発酵米粉から乳酸菌及び酵母を7コロニーずつ分離して用いた以外は実施例1と同様にして各微生物数を測定し、その結果を表4に示した。
【表4】

【0034】
[実施例3]
発酵α化米粉の作製
【0035】
実施例1と同様にして、表5に示す各条件で1次発酵から最終発酵までを順次行い、発酵α化米粉を得た。得られた発酵α化穀粉の外観を示す写真を図4に示した。
【表5】

発酵α化米粉の微生物数の測定
【0036】
得られた発酵α化米粉から乳酸菌及び酵母を10コロニーずつ分離して用いた以外は実施例1と同様にして各微生物数を測定し、その結果を表6に示した。
【表6】

【0037】
[実施例4]
ノンオイルドレッシングの作製
【0038】
実施例3で得られた発酵α化米粉100ml、黒胡椒1.0g及び食塩2.0gを容器に入れてこれらを攪拌しながら100℃で15分間加熱し、ノンオイルドレッシングを得た。得られたノンオイルドレッシングの外観を示す写真を図3に示した。
【0039】
[実施例5]
ノンオイルドレッシング(コンソメ風味)の作製
【0040】
実施例3で得られた発酵α化米粉100ml、黒胡椒1.0g、食塩2.0g、輪切り唐辛子0.5g及びコンソメの素3.0gを容器に入れてこれらを攪拌しながら100℃で15分間加熱し、コンソメ風味のノンオイルドレッシングを得た。得られたコンソメ風味のノンオイルドレッシングの外観を示す写真を図3に示した。
【0041】
[実施例6]
和風ノンオイルドレッシングの作製
【0042】
実施例3で得られた発酵α化米粉50ml、醤油50ml、輪切り唐辛子0.5g、こんぶ3.0g及び日本酒1/2杯(大さじ)を容器に入れてこれらを攪拌しながら100℃で15分間加熱し、和風ノンオイルドレッシングを得た。得られた和風ノンオイルドレッシングの外観を示す写真を図3に示した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述したように、本発明は、穀粉、果実、ホップ等に付着した乳酸菌及び酵母を共培養させて得られるパン種を用いて、第2の穀粉、イモ粉等を発酵させて得られるので、乳酸菌の発酵過程において乳酸等の物質が産生され、深みのある酸味や旨味等を付与することができ、産生された乳酸等の物質により、穀粉に付着しているバチルス芽胞菌や大腸菌等の食品を変敗させる恐れのある有害微生物の増殖を抑制することができるので、防腐剤等の食品添加物の使用量を低減して安全性を確保することができ、防腐剤等の食品添加物の使用量を低減して製造コストを低減することができるので、ドレッシングの素及びドレッシングとして用いた場合に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1で得られたパン種の外観を写真に示した図である。
【図2】実施例1で得られたパン種をマイクロスコープで観察した結果を写真に示した図である。
【図3】実施例2で得られた発酵穀粉及び実施例4〜6で得られた各ドレッシングの外観を写真に示した図である。
【図4】実施例3で得られた発酵α化穀粉の外観を写真に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の穀粉、果実又はホップに付着している乳酸菌及び酵母を共培養させて得られるパン種を用いて、第2の穀粉又はイモ粉を発酵させて得られることを特徴とする、ドレッシングの素。
【請求項2】
前記パン種は、前記第1の穀粉に付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、前記第1の穀粉、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させて得られることを特徴とする、請求項1に記載のドレッシングの素。
【請求項3】
前記パン種は、前記果実又は前記ホップに付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させて得られることを特徴とする、請求項1に記載のドレッシングの素。
【請求項4】
前記第1の穀粉、前記第2の穀粉及び前記第3の穀粉は、それぞれ独立して米粉、大豆粉、小麦粉、玄米粉、ライ麦粉、ソバ粉、モチ粉、大麦粉、トウモロコシ粉及びエンバク粉からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1〜3の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項5】
前記イモ粉は、ジャガイモ粉又はサツマイモ粉である、請求項1〜4の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項6】
前記果実は、ブドウ、リンゴ、イチゴ、梨、柿、バナナ、桃、梅又はイチジクである、請求項1〜5の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項7】
前記乳酸菌は、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)又はリューコノストック属(Leuconostoc)である、請求項1〜6の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項8】
前記酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スキゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ハンゼヌラ属(Hansenula)である、請求項1〜7の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項9】
前記パン種は、発酵温度25〜30℃で6〜48時間発酵させて得られることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項10】
前記パン種は、1.0×10〜1.0×1012CFU/gの乳酸菌を含むことを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項11】
前記パン種は、1.0×10〜1.0×1011CFU/gの酵母を含むことを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項12】
発酵温度25〜30℃で6〜48時間前記第2の穀粉又はイモ粉を発酵させて得られることを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載のドレッシングの素。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載のドレッシングの素が配合されてなる、ドレッシング。
【請求項14】
第1の穀粉、果実又はホップに付着している乳酸菌及び酵母を共培養させてパン種を製造する第1の工程と、前記パン種を用いて第2の穀粉又はイモ粉を発酵させる第2の工程と、を有することを特徴とする、ドレッシングの素の製造方法。
【請求項15】
前記第1の工程は、前記第1の穀粉に付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、前記第1の穀粉、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させることを特徴とする、請求項14に記載のドレッシングの素の製造方法。
【請求項16】
前記第1の工程は、前記果実又は前記ホップに付着している前記乳酸菌及び前記酵母を、第3の穀粉又は前記イモ粉を用いて共培養させることを特徴とする、請求項13に記載のドレッシングの素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−148468(P2010−148468A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331697(P2008−331697)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 埼玉県産業技術総合センター、平成19年度埼玉県産業技術総合センター研究報告第6巻、平成20年7月3日発行 平成20年度埼玉県産業技術総合センター北部研究所研究発表会、埼玉県産業技術総合センター北部研究所、平成20年7月17日 第6回SAITEC技術フェア研究発表会、埼玉県産業技術総合センター、平成20年7月3日
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【出願人】(300090178)みたけ食品工業株式会社 (3)
【出願人】(591150052)株式会社愛工舎製作所 (5)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】