説明

ドレッシング装置

【課題】軸線方向に並ぶ複数のテーパ状の砥石面のドレッシングをより適切に行う。
【解決手段】軸方向に砥石面が対称に並ぶようにテーパ状の砥石車26,27が砥石軸20に装着された研削装置の前記砥石車26,27をドレッシングする装置。この装置は、ドレッシングヘッド40を有する。ドレッシングヘッド40は、ドレッサ43を具備するヘッド本体42と、このヘッド本体42を回転させることによりドレッサ43の姿勢を、回転軸に対して対称な第1姿勢と第2姿勢とに切換える切換機構とを備え、ドレッサ43を第1姿勢に保持すると、一方側の砥石車26の砥石面に対してドレスポイントが所定の接触角度をなして対向し、ドレッサ43を第2姿勢に保持すると、他方側の砥石車27の砥石面に対してドレスポイントが前記接触角度をなして対向し得るように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングの内輪や外輪等を研削する研削装置に組み込まれるドレッシング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砥石車によりワークを研削する研削装置では、砥石車の砥石面の摩耗や目詰まりが進行して劣化するため、良好な加工が継続されるように、当該装置に組み込まれるドレッシング装置により定期的に砥石車をドレッシングすることが行われる。
【0003】
ドレッシングは、ドレッシングヘッドに対して砥石車を近づけ、ドレッシングヘッド先端に組み付けられるドレッサ(ドレッシング工具)を回転駆動中の砥石車の砥石面に当接させ、当該砥石面に沿ってドレッサを相対移動させることにより行う。ドレッサは、その先端に設けられるドレス部が、砥石面に対して所定の接触角度、具体的には90°又はそれに近い角度で当接するようにドレッシングヘッドに対して組付けられている。
【0004】
ところで、ワークには、例えば傾き角度や傾き方向が異なる複数のテーパ面(被研削面)が軸線方向に並ぶものがあり、この種のワークを研削する場合には、各テーパ面に対応するテーパ状の砥石面をそれぞれ有する複数の砥石車が砥石軸に固定されて(又は、各テーパ面に対応するテーパ状の砥石面を有する単一の砥石車が砥石軸に固定されて)ワークの研削が行われる。このような砥石車をドレッシングする場合には、各テーパ状の砥石面に対してそれぞれ上記所定の接触角度でドレッサを当接させる必要がある。そのため、従来のドレッシング装置では、各砥石面をドレッシングするためのドレッサを個別に設け、これらドレッサをそれぞれ上記接触角度が得られるようにドレッシングヘッドに組付けておき、各テーパ状の砥石面を順次、対応するドレッサを使ってドレッシングすることが行われている(例えば特許文献1の図7)。
【特許文献1】特開平6−143137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように複数のドレッサをドレッシングヘッドに組付ける従来のドレッシング装置では、ドレッサ同士に位置ずれが生じると、ドレッシングにより各砥石車の砥石面の位置関係にずれが生じる等、研削精度を阻害する要因の一つとなる。そのため、このような不都合を回避する必要がある。また、各ドレッサが精度良く組付けられている場合でも、ドレッサ間にドレス部の偏摩耗が生じると、ドレッサ同士の位置にずれが生じた場合と同様に、ドレッシング後の研削精度に影響を与える結果となる。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、砥石軸の軸方向にテーパ状の砥石面が並ぶように砥石車が設けられている場合に、それら砥石面のドレッシングをより適切に行うことによって砥石車による研削精度を良好、かつ継続的に保つことができるドレッシング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
出願人は、例えば複列式円錐コロベアリングの内輪や外輪のコロ受け面を研削するような研削装置では、各コロ受け面を研削する砥石車の砥石面が軸方向に対称であることに着目し、上記課題を解決する一つの手段として以下のようなドレッシング装置を考えた。
【0008】
すなわち、本発明に係るドレッシング装置は、砥石軸の軸方向に互いに対称な一対のテーパ状の砥石面が並ぶように砥石車が設けられている研削装置に搭載される前記砥石車のドレッシング装置であって、前記砥石車に対して相対的に移動可能なドレッシングヘッドと、前記砥石軸と直交する軸回りに回転可能な状態で前記ドレッシングヘッドに保持されるヘッド本体と、前記砥石面をドレッシングするためのドレス部を有し、このドレス部がヘッド本体の回転軸方向に対して傾いた方向を向くように当該ヘッド本体の先端部分に組付けられるドレッシング工具と、前記ヘッド本体を180°回転させることにより、前記ドレス部が砥石軸と平行な軸線上に位置する姿勢であって、かつ回転軸に対して互いに対称な姿勢である第1の姿勢と第2の姿勢とに前記ドレッシング工具の姿勢を切換える切換手段と、を備え、前記ドレッシング工具を前記第1の姿勢に保持することにより前記一対のテーパ状の砥石面のうち一方側の砥石面に対して前記ドレス部が直角又はこれに近い所定の接触角度をなして対向し、ドレッシング工具を前記第2の姿勢に保持することにより他方側の砥石面に対して前記ドレス部が前記接触角度をなして対向し得るように構成されているものである。
【0009】
この構成によれば、ドレッシング工具を第1の姿勢にセットすれば、一対のテーパ状の砥石面のうち一方側の砥石面に対して所定の接触角度でドレッシング工具を接触させることができ、また、第2の姿勢にセットすれば、他方側の砥石面に対してもドレッシング工具を所定の接触角度で接触させることができる。従って、一対のテーパ状の砥石面を、共通のドレッシング工具を用いてドレッシングすることが可能となる。
【0010】
なお、請求項1の記載において、「砥石軸の軸方向に互いに対称な一対のテーパ状の砥石面が並ぶように砥石車が設けられている」とは、テーパ状の砥石面をそれぞれ有する複数の砥石車が砥石軸に固定されることにより軸方向に互いに対称な一対のテーパ状の砥石面が並んでいる場合の他、互いに対称な一対のテーパ状の砥石面を有する単一の砥石車が砥石軸に固定されている場合も含む意味である。
【0011】
上記のような装置においては、前記砥石車に対して前記ドレッシングヘッドを相対的に移動させるための駆動手段と、この駆動手段および前記切換手段を制御する制御手段と、をさらに備え、この制御手段は、前記第1の姿勢にドレッシング工具を保持して前記ドレス部を前記一方側の砥石面に当接させ、当該砥石面にドレス部が沿うようにドレッシングヘッドと砥石車とを砥石軸の軸方向に相対移動させることにより当該一方側の砥石面のドレッシングを行った後、ドレッシング工具の姿勢を前記第2の姿勢に切換えて前記ドレス部を他方側の砥石面に当接させ、当該砥石面にドレス部が沿うようにドレッシングヘッドと砥石車とを前記軸方向に相対移動させることにより当該他方側の砥石面のドレッシングを行うように前記駆動手段および切換手段を制御するように構成される。
【0012】
この構成によると、前記一対のテーパ状の砥石面のドレッシング動作が自動化され、各砥石面のドレッシングを効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドレッシング装置によれば、砥石軸の軸方向に並ぶ互いに対称なテーパ状の砥石面を共通のドレッシング工具を用いてドレッシングすることが可能となる。そのため、個別に設けたドレッシング工具で各砥石面をドレッシングする従来装置のように工具間の位置ずれという問題が生じる余地がなく、各砥石面の位置関係等を損なうことなく適切に各砥石面をドレッシングすることができる。従って、上記の砥石車による研削精度をより良好、かつ継続的に保つことが可能となる。また、複数のドレッシング工具の位置関係を精密に調整等する必要が無くなるため、その分、組立性やメンテナンス性が向上するという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2は、本発明に係るドレッシング装置が搭載される研削装置の構成を概略的に示しており、図1は正面図で、図2は側面図で研削装置をそれぞれ示している。
【0015】
この研削装置は、軸線方向に互いに対称なテーパ状の被研削面が並ぶ中空状のワークを研削するものであり、例えば複列円錐コロベアリング等のベアリングレース(内輪、外輪)の内周面および外周面を研削するものである。当実施形態では、鉄道用の複列式円錐コロベアリングの外輪をワークとする場合について説明する。
【0016】
各図に示すように、研削装置の基台10上にはコラム11が設けられ、このコラム11に研削ヘッド12が設けられている。また、基台10上であって、前記研削ヘッド12の下方にはワークW(ベアリングの外輪)を保持するワーク保持機構14が設けられ、さらにこのワーク保持機構14の側方にはドレッシング装置16が設けられている。
【0017】
前記研削ヘッド12は、鉛直方向(以下、Z軸方向という)に延びる砥石軸20と、この砥石軸20を回転可能に保持するホイールヘッド22と、前記砥石軸20を回転駆動する駆動モータ24を含む駆動機構等とから構成されている。
【0018】
研削ヘッド12は、Z軸方向および水平方向(図1では左右方向;以下、X軸方向という)に移動可能に構成されている。すなわち、前記コラム11には、X軸方向に延びる固定レール32が固定され、これら固定レール32にテーブル30が移動可能に装着されるとともに、このテーブル30がX軸駆動モータ34を駆動源とするX軸移動機構に連結されている。また、このテーブル30に、Z軸方向に延びる図外の固定レールが固定され、この固定レールに前記研削ヘッド12が移動可能に装着されるとともに、この研削ヘッド12がZ軸駆動モータ28を駆動源とするZ軸移動機構に連結されている。この構成により、モータ28,34の駆動により研削ヘッド12がX軸およびZ軸方向に移動するようになっている。なお、当実施形態では、これらモータ28,34等を含む研削ヘッド12の移動機構が本発明に係る駆動手段に相当する。
【0019】
前記砥石軸20には、ワークWの内面を研削するための砥石車が固定されている。
【0020】
ここで、ワークWは、上記の通り複列式円錐コロベアリングの外輪である。図5に示すように、ワークW(外輪)の内周面は、その軸線方向に対称な内面形状を有している。具体的には、軸線方向に、その中間部を境にしてテーパ状の一対のコロ受け面F1,F2と、これらコロ受け面F1,F2の外側に位置する円筒状の一対のシール面F3,F4と、が並んでいる。従って、前記砥石軸20には、これら各面F1〜F4を同時に研削するために、前記コロ受け面F1,F2を研削するための同一形状の一対のテーパ型の砥石車26,27が固定され、さらにこれら砥石車26,27の上下両側に、シール面F3,F4を研削するための同一形状の一対の平型(又はリング型)の砥石車28,29が固定されている。なお、テーパ型の砥石車26,27は、コロ受け面F1,F2に対応するように各砥石面が軸方向に互いに対称になる状態で砥石軸20に固定されている。
【0021】
ワーク保持機構14は、図1,図2に示すように、チャック機構を有するテーブル36と、このテーブルをZ軸回りに回転駆動する駆動機構と、テーブル36上に支持されたワークWをその径方向外側から支持する支持部材38等とを有している。前記駆動機構は、図示を省略しているが、テーブル36に固定されるZ軸方向の駆動軸と、減速機構を介してこの駆動軸を回転駆動する電動モータ等の駆動源とから構成されている。
【0022】
前記ドレッシング装置16は、図1〜図4に示すように、ドレッシングヘッド40と、このドレッシングヘッド40を所定の作業位置と退避位置とに変位させる移動機構等を有している。
【0023】
ドレッシングヘッド40は、図3に示すように、水平方向に延びる主軸41と、ベアリング48を介して前記主軸41を回転可能に保持するホルダ44と、ドレッサ43(ドレッシング工具)を具備し、前記主軸41の先端に固定されるヘッド本体42と、前記ヘッド本体42を主軸41と共に回転させることによってドレッサ43の姿勢を切換える切換機構等と、を含んだ構成とされる。
【0024】
前記ヘッド本体42には、その回転軸の方向に対して傾いたドレッサ取付面42aが形成されており、この取付面42aに前記ドレッサ43が固定されている。
【0025】
ドレッサ43は、シャンクの先端部分に、例えば円錐形あるいは四角錘形(30°〜120°;当実施形態では概ね60°)に研磨したダイヤモンドをマウントした単石型のドレッサであり、図6(a)に示すように、ドレッサ取付面42aに穿設された取付孔45に挿入され、ドレスポイント(ドレッサ先端;本発明に係るドレス部に相当する)をドレッサ取付面42aから所定寸法だけ突出させた状態で固定されている。
【0026】
ドレッサ43は、ドレスポイントがヘッド本体42の回転軸に対して傾いた方向を向き、かつヘッド本体42の中心から偏心するように当該ヘッド本体42に組付けられている。
【0027】
ヘッド本体42に対するドレッサ43の組付け角度は、テーパ型の各砥石車26,27の砥石面に対してドレスポイントが直角又はこれに近い所定の接触角度(以下、ドレス角度という)を成して対向し得るように設定されている。具体的には、図3の実線に示すように、ヘッド本体42を回転させ、Z軸と平行な軸線上であってヘッド本体42の回転中心よりも上側にドレスポイントが位置するようにドレッサ43を配置したときに(第1姿勢という)、研削ヘッド12の上側のテーパ型砥石車26の砥石面に対してドレッサ43が所定のドレス角度θを成すようにヘッド本体42に対するドレッサ43の組付け角度が設定されている。従って、この状態からヘッド本体42を180°だけ回転させると、つまりZ軸と平行な軸線上であってヘッド本体42の回転中心よりも下側にドレスポイントが位置するようにドレッサ43を配置すると、ドレッサ43はドレッシングヘッド40の回転軸に対して前記第1姿勢とは対称な姿勢(図3の二点鎖線に示す状態;第2姿勢という)となるため、研削ヘッド12の下側のテーパ型砥石車27の砥石面に対してもドレッサ43が所定のドレス角度θを成して対向し得ることとなる。
【0028】
ドレス角度θは、砥石車26,27のドレッシングに適した角度であって90°又はこれに近い角度に設定されており、ドレッサ43の種類や砥石面の組成により決定されている。また、当実施形態では、ドレス角度θは、平型の砥石車26,27のドレッシングを行い得る角度範囲内で設定されており、これによって、後述するように、上記第1姿勢にドレッサ43を保持した状態のままで上側のテーパ型の砥石車26と平型の砥石車26をドレッシングでき、又第2姿勢にドレッサ43を保持した状態のままで下側のテーパ型の砥石車27と平型の砥石車29をドレッシングできるようになっている。
【0029】
ヘッド本体42に対するドレッサ43の具体的な組付け構造は、種々の構造が採用可能であるが、当実施形態では、以下の構造によりドレッサ43がヘッド本体42に組付けられている。
【0030】
すなわち、図6(b)に示すように、ヘッド本体42には、前記取付孔45に対してこれに直交する方向から連通し、かつ取付孔45の軸線方向に沿って開口部側から順に並ぶ2つのねじ孔52,53(第1ねじ孔52、第2ねじ孔53)が形成されており、第1ねじ孔52に固定用ねじ54が、第2ねじ孔53に、先端にテーパ部55aをもつ調整用ねじ55が螺合挿入されている。そして、調整ねじ55の前記テーパ部55aに末端部分が当接するようドレッサ43が取付孔45に挿入されている。つまり、この調整ねじ55の挿入に伴い前記テーパ部55aに沿ってドレッサ43を軸方向に移動させることによりドレスポイントの前記突出寸法を調整した上で、固定用ねじ54によりドレッサ43を固定するようになっている。なお、ドレッサ取付面42aには、図6(a)に示すように、取付孔45と平行なねじ孔46が形成されており、ドレッサ43の組付けの際には、このねじ孔46を使って同図(c)に示すように治具58がドレッサ取付面42aに固定されるようになっている。この治具58には、ドレスポイントの当り面58aが形成されており、従って、この当り面58aにドレスポイントが当接するように前記調整用ねじ55によりドレッサ43の位置を調整することで、一定の突出寸法が得られるようになっている。
【0031】
ドレッサ43の姿勢を切換える切換機構は、図示を省略しているが、前記ホルダ44内に内蔵される主軸駆動用の油圧モータ(例えばベーンモータ)と、当該モータによる前記主軸41の回転を規制する規制部材等とを有しており、油圧モータの駆動により主軸41を正逆回転駆動することによって、ドレッサ43の姿勢を上記第1姿勢と第2姿勢とに切換えるように構成されている。
【0032】
ドレッシングヘッド40の移動機構は、Z軸方向の駆動軸50と、減速機構を介してこの駆動軸50を駆動する図外の電動モータ等とから構成されており、当該モータによりドレッシングヘッド40をZ軸回りに旋回駆動することによって、ワーク保持機構14上方の作業位置(図2に示す位置)とワーク保持機構14側方の退避位置とに亘って前記ドレッシングヘッド40を水平方向に移動させるように構成されている。
【0033】
なお、図示を省略するが、上記研削装置は、CPU等を構成要素とする図外のコントローラ(本発明に係る制御手段に相当する)を備えており、研削ヘッド12によるワークWの研削動作やドレッシング装置16による砥石車26〜29のドレッシング動作等はすべてこのコントローラにより統括的に制御されるようになっている。
【0034】
以下、このコントローラの制御に基づく砥石車26〜29のドレッシング動作について図7を参照しながら説明する。
【0035】
砥石車26〜29のドレッシングは、予め設定された設定数のワークWの研削作業が終了した後に、所定のプログラムに従って実行される。
【0036】
このプログラムがスタートすると、まず、退避位置にセットされているドレッシングヘッド40が作業位置にセットされ、さらに切換機構の作動によりドレッサ43が第1姿勢にセットされる。これにより、図7(a)に示すように、研削ヘッド12の上側のテーパ型砥石車26の砥石面に対してドレッサ43が所定のドレス角度θを成すようにセットされる。この際、研削ヘッド12は、所定のホームポジションにリセットされており、前記作業位置にドレッシングヘッド40がセットされた状態では、研削ヘッド12の側方であって砥石軸20の中心軸とドレスポイントとがX軸方向に並ぶようにドレッサ43が配置される。
【0037】
次いで、砥石車26〜29が所定の回転速度で駆動され、研削ヘッド12がX軸およびZ軸方向に移動することにより、まず、上側のテーパ型砥石車26の小径側末端部分においてその砥石面にドレッサ43が押し当てられる。そしてこの状態で、砥石車26の小径側から大径側に向かって砥石面にドレッサ43が沿うように研削ヘッド12が移動することにより(図7(a)中の矢印参照)、当該砥石車26の砥石面がドレッサ43によりドレッシングされる。テーパ型砥石車26のドレッシングが完了すると、研削ヘッド12が一旦ドレッシングヘッド40から引き離される。その後、研削ヘッド12の移動に伴い上側の平型砥石車28の砥石面にドレッサ43が押し当てられ、この状態で、砥石車28の一端側から他端側にドレッサ43が砥石面に沿って移動するように研削ヘッド12が駆動される。これにより、当該砥石車28の砥石面がドレッサ43によりドレッシングされる。
【0038】
平型の砥石車28のドレッシングが終了すると、研削ヘッド12の移動により当該砥石車28がドレッサ43から引き離される。そして、切換機構の作動によりドレッサ43が図7(b)に示すように第1姿勢から第2姿勢に切換えられ、これによって研削ヘッド12のうち下側のテーパ型砥石車26の砥石面に対してドレッサ43が所定のドレス角度θを成すように配置される。
【0039】
そして、以後、上側のテーパ型砥石車26および平型砥石車28のドレッシングと同様に、研削ヘッド12の移動に伴い、前記ドレッサ43による下側のテーパ型砥石車27および平型砥石車29のドレッシングが行われる。
【0040】
こうして全ての砥石車26〜29のドレッシング作業が終了すると、ドレッシングヘッド40が退避位置に、研削ヘッド12がホームポジションにそれぞれリセットされ、砥石車26〜29の駆動が停止されることにより一連のドレッシング動作が終了することとなる。
【0041】
以上のように、この研削装置に組み込まれているドレッシング装置16によると、砥石軸20の軸方向に並ぶ互いに対称なテーパ型の砥石車26,27を共通のドレッサ43を用いてドレッシングすることができる。そのため、テーパ状の砥石面をもつ砥石車毎に個別にドレッサを設けてドレッシングを行う従来のドレッシング装置のような問題、つまりドレッサ間の位置ずれや偏摩耗によりドレッシング後の砥石面の位置関係が損なわれるといった問題が生じる余地がない。従って、各テーパ型の砥石車26,27の砥石面の位置関係を良好に保った状態で各砥石車26,27をドレッシングすることができ、その結果、各テーパ型の砥石車26,27による研削精度をより良好に、かつ継続的に保つことができるようになるという効果がある。
【0042】
また、従来のドレッシング装置のように、複数のドレッサの位置関係を確保するために高度な組付け調整が要求されることも無いため、その分、ドレッシングヘッド40に対するドレッサ43の組付け作業も容易なものとなる。従って、ドレッシング装置16の組立性やメンテナンス性が向上するという利点もある。
【0043】
なお、上述したドレッシング装置16および研削装置は、本発明に係るドレッシング装置およびこのドレッシング装置が搭載される研削装置の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0044】
例えば、実施形態では、ドレッサ43としてシャンク(軸状部材)の先端部分に円錐形あるいは四角錘形に研磨したダイヤモンドをマウントした単石型のドレッサを適用しているが、これ以外のドレッサを適用することも可能である。例えば、シャンクの先端部分に、その軸心を中心とした円周線上及び/又は直線上にやや小粒の同じ大きさのダイヤモンド複数個を配列した多石型のドレッサを適用することもできる。
【0045】
また、実施形態では、砥石軸20に装着された同一形状のテーパ型の砥石軸26,27の各砥石面をドレッシングする場合について説明したが、例えば軸方向に互いに対称な一対のテーパ状の砥石面が並ぶように形成された単一の砥石車をドレッシングする場合にも、勿論、本発明のドレッシング装置16は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るドレッシング装置が搭載される研削装置の一例を示す正面概略図である。
【図2】研削装置の側面概略図である。
【図3】ドレッシング装置(ドレッシングヘッド)の構成を示す要部側面略図である。
【図4】ドレッシング装置(ドレッシングヘッド)の構成を示す要部平面略図(図3のA矢視図)である。
【図5】ワーク(ベアリングの外輪)およびその内周面を研削する砥石車の形状を説明する概略図(一部断面図)である。
【図6】ドレッシングヘッドの構成を示す断面図である((a)は縦断面図、(b)は図(a)のB−B線断面図、(c)は治具装着時の縦断面図である)。
【図7】コントローラの制御に基づくドレッシング動作を説明する図である((a)は上側のテーパ型砥石車のドレッシング状態を、(b)は下側のテーパ型砥石車のドレッシング状態をそれぞれ示している)。
【符号の説明】
【0047】
10 コラム
12 研削用ヘッド
16 ドレッシング装置
20 砥石軸
26〜29 砥石車
40 ドレッシングヘッド
43 ドレッサ(ドレッシング工具)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石軸の軸方向に互いに対称な一対のテーパ状の砥石面が並ぶように砥石車が設けられている研削装置に搭載される前記砥石車のドレッシング装置であって、
前記砥石車に対して相対的に移動可能なドレッシングヘッドと、
前記砥石軸と直交する軸回りに回転可能な状態で前記ドレッシングヘッドに保持されるヘッド本体と、
前記砥石面をドレッシングするためのドレス部を有し、このドレス部が前記ヘッド本体の回転軸方向に対して傾いた方向を向くように当該ヘッド本体の先端部分に組付けられるドレッシング工具と、
前記ヘッド本体を180°回転させることにより、前記ドレス部が砥石軸と平行な軸線上に位置する姿勢であって、かつ回転軸に対して互いに対称な姿勢である第1の姿勢と第2の姿勢とに前記ドレッシング工具の姿勢を切換える切換手段と、を備え、
前記ドレッシング工具を前記第1の姿勢に保持することにより前記一対のテーパ状の砥石面のうち一方側の砥石面に対して前記ドレス部が直角又はこれに近い所定の接触角度をなして対向し、ドレッシング工具を前記第2の姿勢に保持することにより他方側の砥石面に対して前記ドレス部が前記接触角度をなして対向し得るように構成されていることを特徴とするドレッシング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドレッシング装置において、
前記砥石車に対して前記ドレッシングヘッドを相対的に移動させるための駆動手段と、この駆動手段および前記切換手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
この制御手段は、前記第1の姿勢にドレッシング工具を保持して前記ドレス部を前記一方側の砥石面に当接させ、当該砥石面にドレス部が沿うようにドレッシングヘッドと砥石車とを砥石軸の軸方向に相対移動させることにより当該一方側の砥石面のドレッシングを行った後、ドレッシング工具の姿勢を前記第2の姿勢に切換えて前記ドレス部を他方側の砥石面に当接させ、当該砥石面にドレス部が沿うようにドレッシングヘッドと砥石車とを前記軸方向に相対移動させることにより当該他方側の砥石面のドレッシングを行うように前記駆動手段および切換手段を制御することを特徴とするドレッシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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