ドレーン材打設装置
【課題】ケーシングの打ち込み時にアンカーの変形や破損等を防止すると共に、ケーシングを引き抜く際に、地盤中に留める力が効果的にアンカーに働くように構成されたドレーン材打設装置を提供する。
【解決手段】ドレーン材打設装置は、ケーシング4の下端部に設けられて、ドレーン材7の共上りを防止する共上り防止機構10とを備えている。共上り防止機構10は、中空筒状の内側部材21と、内側部材21が嵌通すると共に、内側部材21に対して摺動可能な外側部材41とを備えている。内側部材21に対して外側部材41が第1移動限界位置にある場合に、外側部材41の下端部は、内側部材21の下端部と共にアンカー11の上面と当接するように構成されている。ケーシング4が地盤から引き抜かれる際に、内側部材21の上昇により、外側部材41が第1移動限界位置から第2移動限界位置に至ると、内側部材21と共に外側部材41が上昇する。
【解決手段】ドレーン材打設装置は、ケーシング4の下端部に設けられて、ドレーン材7の共上りを防止する共上り防止機構10とを備えている。共上り防止機構10は、中空筒状の内側部材21と、内側部材21が嵌通すると共に、内側部材21に対して摺動可能な外側部材41とを備えている。内側部材21に対して外側部材41が第1移動限界位置にある場合に、外側部材41の下端部は、内側部材21の下端部と共にアンカー11の上面と当接するように構成されている。ケーシング4が地盤から引き抜かれる際に、内側部材21の上昇により、外側部材41が第1移動限界位置から第2移動限界位置に至ると、内側部材21と共に外側部材41が上昇する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤改良用のドレーン材を地盤に打設するドレーン材打設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
改良しようとする地盤にドレーン材を打設して土層中の水を排出するドレーン工法は、軟弱地盤の改良に広く使用されている。ドレーン工法の一種であるプラスチックボードドレーン(PBD)工法は、例えば、長手方向に沿って溝が形成されたブラスチック樹脂製芯体と、該芯体を囲うフィルタとを備える帯状のドレーン材を、鉛直方向に沿って地盤に打設することを特徴とする。
【0003】
PBD工法では、ドレーン材が挿入された長尺で中空筒状のケーシングを所定の深さまで鉛直に地盤に打ち込んだ後、ケーシングを地盤から引き抜くことで、ドレーン材の打設が行われる。通常、ケーシング下端から引き出されたドレーン材の端部にはアンカーが装着される。ケーシングの打ち込み中にアンカーがケーシング下端を塞ぐことで、ケーシング内への泥の流入が妨げられる。これによって、所謂共上り現象、つまり、ケーシングが泥で閉塞状態になってドレーン材がケーシングに拘束されて、ケーシングを地盤から引き抜く際にケーシングと共にドレーン材が上昇する現象が抑制される。
【0004】
実際の施工においては、アンカーを使用しても共上りを完全に防止することが困難である。その原因としては、ケーシングの打込み中にアンカーが変形又は破損することで、ケーシング下端にアンカーが固定されること(所謂、アンカーのくい込み現象)、また、アンカーが変形、破損又は位置ずれすることでケーシング内に泥が流入することなどがある。さらに、ケーシングが打止めされた地層が非常に軟弱な場合には、アンカーに十分な反力が加わらないために、より強度が高い地層にアンカーが移動するまで共上りが生じる。
【0005】
ケーシング下端部の構造に関して、ドレーン材の共上りを防止するための種々の提案がなされている。その一つとして、ドレーン材の共上りを防止するために、ケーシング下端部にアンカーを下方に付勢するバネをケーシングに設けることが提案されている(実開平5−10526号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−10526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実開平5−10526号公報に記載のケーシングは、アンカーをバネで付勢することで、ケーシングを引き抜く際に地盤中の打止め位置にアンカーを留める点で効果的である。しかしながら、このようなケーシングでは、ケーシングの打込み中におけるアンカーの変形、破損又は位置ずれに起因したドレーン材の共上りを十分に抑制できない。
【0008】
本発明は、この問題を解決するものであり、ケーシングの打ち込み時にアンカーの変形、破損又は位置ずれを防止すると共に、ケーシングを引き抜く際に打止め位置に留める力が効果的にアンカーに働くように構成されたドレーン材打設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のドレーン材打設装置は、ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結されると共に前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記内側部材が嵌通すると共に、前記内側部材に対して摺動可能な外側部材と、前記内側部材の上端側への前記外側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記内側部材の下端側への前記外側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、前記内側部材に対して前記外側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記外側部材の下端部は、前記内側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記内側部材の上昇により、前記外側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記内側部材と共に前記外側部材が上昇することを特徴とする。
【0010】
本発明のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着されるのが好ましい。また、本発明のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記内側部材の下端側に向かって前記外側部材を付勢する付勢手段を備えるのが好ましい。
【0011】
本発明のドレーン材打設装置では、前記外側部材は、中空筒状に形成された筒状部を有しており、前記内側部材の側部には、1又は複数の孔が形成されており、前記1又は複数の孔は、前記内側部材の内部空間と、前記内側部材と前記外側部材の間の空間とを繋ぐのが好ましい。また、本発明のドレーン材打設装置では、前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられているのが好ましい。
【0012】
本発明のドレーン材打設装置では、前記外側部材の下端部には、1又は複数の平面部が形成されており、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記内側部材の下端部の端面と前記1又は複数の平面部とは、全体として略ロ字状に配置されて、前記アンカーの中央部を除いて前記アンカーと当接するのが好ましい。または、本発明のドレーン材打設装置では、前記内側部材の下端部と前記外側部材の下端部とは、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記アンカーが当接する略V字状の面を形成するように構成されているのが好ましい。
【0013】
本発明の第2のドレーン材打設装置は、ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結される中空筒状の外側部材と、前記外側部材に嵌挿され、前記外側部材に対して摺動可能であり、前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記外側部材の上端側への前記内側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記外側部材の下端側への前記内側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、前記外側部材に対して前記内側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記内側部材の下端部は、前記外側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記外側部材の上昇により、前記内側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記外側部材と共に前記内側部材が上昇することを特徴とする。
【0014】
本発明の第2のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着されるのが好ましい。また、本発明の第2のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記外側部材の下端側に向かって前記内側部材を付勢する付勢手段を備えるのが好ましい。さらに、本発明の第2のドレーン材打設装置では、前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドレーン材打設装置では、共上り防止機構が内側部材と外側部材とを備えており、ケーシングの打ち込み中に、アンカーの上面は、その中央部を除いて、外側部材の下端部と内側部材の下端部と当接するので、ケーシングの打ち込み中におけるアンカーの変形や破損が防止される。ケーシングが地盤から引き抜かれる際に、内側部材の上昇により、内側部材の下端部がアンカーから離間することで、アンカー上面における内側部材の下端部で覆われていた部分に地盤の泥が堆積する。このように、アンカー上面に下向きの土圧が加わった後に、内側部材と共に外側部材が上昇することで、ドレーン材の共上りが抑制される。
【0016】
本発明の第2ドレーン材打設装置では、共上り防止機構が内側部材と外側部材とを備えており、ケーシングの打ち込み中に、アンカーの上面は、その中央部を除いて、外側部材の下端部と内側部材の下端部と当接するので、ケーシングの打ち込み中におけるアンカーの変形や破損が防止される。ケーシングが地盤から引き抜かれる際に、外側部材の上昇により、外側部材の下端部がアンカーから離間することで、アンカー上面における外側部材の下端部で覆われていた部分に地盤の泥が堆積する。このように、アンカー上面に下向きの土圧が加わった後に、外側部材と共に内側部材が上昇することで、ドレーン材の共上りが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)乃至(d)は、本発明のドレーン材打設装置の概要を模式的に示す説明図である
【図2】本発明の第1実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す正面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図3】図2に示すA−A線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図4】図2に示すB−B線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図5】図2に示すC−C線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図6】本発明の第1実施例の共上り防止機構における第2内側筒部を下側からみた斜視図である。
【図7】本発明の第1実施例の共上り防止機構における第2外側筒部を下側からみた斜視図である。
【図8】本発明で使用されるアンカーの斜視図である。
【図9】本発明の第1実施例の共上り防止機構について、外側部材の下端部と内側部材の下端部とで構成されるアンカー当接面を説明する説明図である。
【図10】本発明の第1実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図11】本発明の第2実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図12】本発明の第2実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図13】本発明の第3実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図14】本発明の第3実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図15】本発明の第4実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図16】本発明の第4実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、内外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図17】本発明の第4実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図18】本発明の第5実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す正面図であって、内側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図19】図18に示すD−D線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図20】図18に示すE−E線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図21】本発明の第5実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、内側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について、図を用いて説明する。図1(a)乃至(d)は、本発明のドレーン材打設装置(1)の概要を模式的に示す説明図である。ドレーン材打設装置(1)は、クローラーなどの移動手段と、ドレーン材打設装置(1)に含まれる各種の機構や手段を制御する制御手段とを有する移動台車(2)と、前記移動台車(2)に設けられたリーダ(3)に支持された長尺のケーシング(4)と、ケーシング(4)を上下に駆動する駆動手段であるフリクションローラ群(5)と、地盤(6)に打設される帯状のドレーン材(7)が巻回されたリール(8)と、リール(8)から引き出されたドレーン材(7)をガイドするガイド機構(9)と、ケーシング(4)の下端部に設けられた尖筒状の共上り防止機構(10)と、ケーシング(4)を通って共上り防止機構(10)の下端から引き出されたドレーン材(7)の端部に装着されるアンカー(11)とを備えている。
【0019】
ドレーン材打設装置(1)によるドレーン材(7)の打設は、以下の様に行われる。まず、図1(a)に示すように、ドレーン材(7)が打設される所望の場所にドレーン材打設装置(1)を配置して、共上り防止機構(10)の下端から、ケーシング(4)及び共上り防止機構(10)に挿入されたドレーン材(7)の端部を引き出してアンカー(11)を装着する。次に、図1(b)に示すように、フリクションローラ群(5)を駆動して、所望の深さまでケーシング(4)を地盤(6)に打ち込む。その後、図1(c)に示すように、フリクションローラ群(5)を逆向きに駆動して、ケーシング(4)を地盤(6)から引き抜く。この際、ドレーン材(7)及びアンカー(11)を地中に残したまま、ケーシング(4)と共上り防止機構(10)が引き抜かれる。図1(d)に示すように、ケーシング(4)と共上り防止機構(10)が完全に抜き出された後、ドレーン材(7)が切断される。所望の本数のドレーン材(7)が地盤(6)に打設されるまで、図1(a)乃至(d)の処理が繰り返される。
【0020】
図2は、ドレーン材打設装置(1)のケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す正面図である。図3は、図2に示すA−A線で破断して矢視方向に見た断面図である。図4は、図2に示すB−B線で破断して矢視方向に見た断面図である(内側部材(21)の内部やアンカー(11)等については図示せず)。図5は、図2に示すC−C線で破断して矢視方向に見た断面図である(ドレーン材(7)は図示せず)。
【0021】
本実施例のドレーン材打設装置(1)では、ドレーン材(7)保護用の管(12)が内部に配置された方形筒状のケーシング(4)が使用されている。管(12)は、共上り防止機構(10)と干渉しないように、ケーシング(4)の下端まで至らないように配置され、その断面は楕円状に形成されている。共上り防止機構(10)は、2本のピン(13a)(13b)を介してケーシング(4)の下端部に着脱自在に装着されており、破損や故障した場合に容易に交換可能となっている。
【0022】
共上り防止機構(10)は、中空筒状の、つまり、両端が開放した筒状の内側部材(21)と、内側部材(21)が嵌挿されると共に、内側部材(21)に対して摺動自在に移動する外側部材(41)とを備えている。共上り防止機構(10)には、内側部材(21)の上端側への外側部材(41)の移動を規制する第1規制手段と、内側部材(21)の下端側への外側部材(41)の移動を規制する第2規制手段とが設けられており、図2及び図3では、内側部材(21)に対して、外側部材(41)が第1規制手段が定める移動限界位置にある状態が示されている。例えば、図1(b)に示すように、ケーシング(4)が地盤(6)に打ち込まれてる場合に、共上り防止機構(10)は、図2及び図3に示す状態になる。第1規制手段及び第2規制手段の詳細については後述する。
【0023】
内側部材(21)は、略方形筒状の第1内側筒部(22)と、その端面がアンカー(11)の上面と当接する第2内側筒部(23)と、第1内側筒部(22)と第2内側筒部(23)を連結する内側テーパー筒部(24)とを有している。また、外側部材(41)は、中空筒状の第1外側筒部(42)と、第2内側筒部(23)が嵌まる中空筒状の第2外側筒部(43)と、第1外側筒部(42)と第2外側筒部(43)を連結する外側テーパー筒部(44)とを有している。第1外側筒部(42)は、略正形筒状に形成されている。図2に示す状態では、第1内側筒部(22)を囲うように第1外側筒部(42)が配置され、内側テーパー筒部(24)を囲うように外側テーパー筒部(44)が配置され、第2内側筒部(23)の上側略半分が第2外側筒部(43)内に配置されている。
【0024】
第1内側筒部(22)の上部は、ケーシング(4)の下端部に嵌入される。第1内側筒部(22)の側面には、外方に突出するフランジ部(25)が設けられており、ケーシング(4)の下端面は、フランジ部(25)に当接している。第1内側筒部(22)とケーシング(4)には夫々4つの孔が形成されており、これらの孔は、ケーシング(4)の端面がフランジ部(25)に当接した状態にて、2本のピン(13a)(13b)を挿入可能に位置決めされる。本実施例では、第1内側筒部(22)の上端部が、ケーシング(4)の下端部に嵌められるが、例えば、ケーシング(4)の下端部が第1内側筒部(22)の上端部に嵌入されるように構成されてもよい。
【0025】
第1外側筒部(42)の上端面には、第1内側筒部(22)が嵌通すると共に、第1外側筒部(42)の上端を塞ぐ蓋部(45)が接合されている。蓋部(45)は、例えば、第1内側筒部(22)の形状に合わせて略方形筒状の開口が中央に開設された略正方形の厚板が用いられる。蓋部(45)は、共上り防止機構(10)内、つまり第1外側筒部(42)内への泥の流入を防止すると共に、フランジ部(25)と共に第1規制手段を構成している。図2及び図3に示すように、蓋部(45)がフランジ部(25)に当接することで、内側部材(21)に沿った上方への外側部材(41)の移動、つまり、内側部材(21)の先端側、或いはケーシング(4)側に向かう外側部材(41)の移動が規制されている。蓋部(45)がフランジ部(25)に当接した状態にて、外側部材(41)は、内側部材(21)に対して、第1移動規制手段が定める移動限界位置にある。
【0026】
図6は、第2内側筒部(23)を下から見た斜視図である。第2内側筒部(23)は、略矩形筒状に形成されているが、第2内側筒部(23)の断面の短手方向に沿った筒壁の厚さが外向きに増すように、第2内側筒部(23)には、一対の段部(26a)(26b)が形成されている。第2内側筒部(23)の両側面には、第2内側筒部(23)の長さ方向に沿った一対の凸条(27a)(27b)が設けられている。第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とは同一平面上に配置される。
【0027】
図7は、第2外側筒部(43)を下から見た斜視図である。第2外側筒部(43)の内壁の4隅の各々には、第2外側筒部(43)の下端面から下方に突出する矩形柱状の当接部(46a)(46b)(46c)(46d)が接合されている。これら当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)は、同一平面上に配置される。近接して対向する当接部(27a)(27c)の間には、第2内側筒部(23)の凸条(27a)が摺動自在に挿入され、近接して対向する当接部(27b)(27d)の間には、第2内側筒部(23)の凸条(27b)が摺動自在に挿入される。当接部(46a)(46b)(46c)(46d)と凸条(27a)(27b)とは、内側部材(21)に対する外側部材(41)の上下動をガイドするガイド手段として機能する。なお、第2内側筒部(23)に凸条(27a)(27b)を削除して、当接部(27a)(27c)を一体化し、当接部(27b)(27b)を一体化することで、第2内側筒部(23)と第2外側筒部(43)が、後述する第5実施例の第2外側筒部(83)と内側部材(61)の下端部のように構成されてもよい。
【0028】
図3に示すように、蓋部(45)がフランジ部(25)に当接した状態、つまり、外側部材(41)が第1規制手段が定める移動限界位置にある状態で、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とは、同一平面上に配置されて、図9に示すように、全体としてロ字状の面を構成して、アンカー(11)の上面と当接する。ロ字状の面の外周を規定する四角形は、装着されたアンカー(11)を囲い、第2内側筒部(23)の下端の開口を除いて、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とで、アンカー(11)の上面が覆われる。このように、ケーシング(4)の打ち込み時に、アンカー(11)の上面が(その中心部分を除いて)ほぼ全体的に共上り防止機構(10)と当接するので、ケーシング(4)の打ち込み時におけるアンカー(11)の変形や破損が防止される。
【0029】
図8は、アンカー(11)の斜視図である。アンカー(11)には、2本のスリット(14a)(14b)が長手方向に沿って平行に開設された矩形の厚板が使用される。図8にて一点鎖線で示すように、ドレーン材(7)が、一方のスリット(14a)に挿入された後に折り返されて、他方のスリット(14b)に挿入されることで、アンカー(11)はドレーン材(7)の端部に装着される。本発明の目的が達成される限りにおいて、アンカー(11)の形状は制限されない。例えば、PBD工法で使用されている櫛形やコ字状のアンカー、又は鍋蓋タイプのアンカーなども使用されてよい。
【0030】
図7等に示すように、各当接部(46a)(46b)(46c)(46d)における2つの外向き面の各々には、矩形柱状の位置決め部材(48)が設けられている。位置決め部材(48)は、各当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)から下方に突出しており、これら位置決め部材(48)の側面と当接することで、共上り防止機構(10)から、又は上述したロ字状面からアンカー(11)がはみ出る事態が防止される。また、これら位置決め部材(48)により、共上り防止機構(10)へのアンカー(11)の装着が容易にされている。位置決め部材(48)の下端部は面取りされて、アンカー(11)の装着をさらに容易にすると共に、ケーシング(4)の打ち込み時の抵抗が緩和されるのが好ましい。
【0031】
図1(c)に示すように、ケーシング(4)が地盤(6)から引き抜かれる場合、ケーシング(4)の上昇と共に、それに連結された内側部材(21)も上昇する。しかしながら、地中における外側部材(41)の位置は、地盤(6)との摩擦抵抗や土圧の働きによって保持されて、外側部材(41)は、内側部材(21)の下端側に向かって相対的に移動する。また、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)は引き続きアンカー(11)と当接するが、内側部材(21)の第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とが、アンカー(11)から離間することで、アンカー(11)の上面に地盤(6)中の泥が堆積して、アンカー(11)に土圧が加えられる。
【0032】
図3等に示すように、第2外側筒部(43)の上端部の内面には、内向きに突出した凸部(49a)(49b)が形成されている。これら凸部(49a)(49b)と、第2内側筒部(23)の段部(26a)(26b)とは、内側部材(21)の下端側に向かう外側部材(41)の移動を規制する第2規制手段を構成する。ケーシング(4)の上昇と共に内側部材(21)も上昇すると、図10に示すように、第2内側筒部(23)の段部(26a)(26b)は、第2外側筒部(43)の凸部(49a)(49b)と当接して、外側部材(41)は、内側部材(21)に対して、第2移動規制手段が定める移動限界位置に配置される。段部(26a)(26b)が凸部(49a)(49b)と当接することで、ケーシング(4)の上昇と共に外側部材(41)も上昇し、最終的に、図1(d)に示すように、アンカー(11)とドレーン材(7)を地中に残したまま、ケーシング(4)及び共上り防止機構(10)が地盤(6)から抜き出される。このように、アンカー(11)に十分な土圧が加わった後に、外側部材(41)の当接部(46a)(46b)(46c)(46d)がアンカー(11)から離間するので、ケーシング(4)の上昇と共にアンカー(11)が共上りをする事態が防止される。
【0033】
図1(a)に示すように、ケーシング(4)の打ち込み前にてケーシング(4)と共上り防止機構(10)とが地上にある場合、外側部材(41)は、その自重によって、図10に示すように第2移動規制手段が定める移動限界位置に配置される。アンカー(11)を共上り防止機構(10)に装着する場合、図10に示すように(ドレーン材(7)に装着された)アンカー(11)は、まず、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と当接するように設置される。その後、ケーシング(4)を下方に駆動すると、外側部材(41)が地表に押されて、図3に示すように第1移動規制手段が定める移動限界位置に配置される。なお、ドレーン材(7)を上方に引っ張る又は巻き戻すことにより、地上にて、外側部材(41)を第1移動規制手段が定める移動限界位置に配置してもよい。
【0034】
図11は、本発明の第2実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図3に対応している。図12は、本発明の第2実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図10に対応している。第2実施例は、内側部材(21)の第1内側筒部(22)の筒壁に孔(31)が形成されている点を除いて、第1実施例と同じ構成を有している。第1内側筒部(22)の筒壁の孔(31)は、内側部材(21)の内部空間と、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間とを繋げており、この孔(31)は、図11及び図12から理解できるように、内側部材(21)に対して外側部材(41)がどの位置にあっても、共上り防止機構(10)の外部に(例えば、地盤中に)露出しない位置に設けられている。第2内側筒部(23)や内側テーパー筒部(24)の筒壁に孔(31)が開けられてもよく、また、複数の孔(31)が内側部材(21)の筒壁に開けられてもよい。
【0035】
第1実施例では、内側部材(21)が内側テーパー筒部(24)を、外側部材(41)が外側テーパー筒部(44)を有しており、共上り防止機構(10)が図3に示す状態から図10に示す状態に移行するにつれて、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間が大きくなる。これに伴って、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間の圧力(気圧)が低下するので、内側部材(21)と外側部材(41)の間の隙間に泥が進入して、共上り防止機構(10)の正常な動作が妨げられる恐れがある。内側部材(21)の筒壁に孔(31)を形成することで、内側部材(21)の内部空間の圧力(例えば、大気圧)と、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間の圧力とが、常に同じにされるので、圧力低下による泥の進入が抑制される。ケーシング(4)内に水や圧縮空気を供給する手段をドレーン材打設装置(1)の移動台車(2)に設けて、内側部材(21)の内部空間、さらには、孔(31)を介して内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間が、水や圧縮空気で加圧されてもよい。
【0036】
図13は、本発明の第3実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図3に相当している。図14は、本発明の第2実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図10に相当している。第3実施例は、内側部材(21)の下端側に向かって外側部材(41)を付勢する付勢手段が、共上り防止機構(10)に設けられている点を除いて、第1実施例と同じ構成を有している。
【0037】
付勢手段は、第2内側筒部(23)と第2外側筒部(43)の間に配置された一対のバネ(32a)(32b)である。これらのバネ(32a)(32b)は、垂直方向以外の力が外側部材(41)に加わらないように対称性を考慮して配置されるのが好ましい。図13では、一対のバネ(32a)(32b)は、第2内側筒部(23)(又は第2外側筒部(43))の中心軸に対して対称に配置されており、その一端は、第2外側筒部(43)の凸部(49a)(49b)に、その他端は、第2内側筒部(23)に設けられた延出部(33a)(33b)の端面と当接している。図14に示す状態(外側部材(41)が第2移動規制手段が定める移動限界位置にある状態)でも、バネ(32a)(32b)は、内側部材(21)の下端側に向かって外側部材(41)を付勢する力を加えている。図13に示す状態(外側部材(41)が第1移動規制手段が定める移動限界位置にある状態)から、ケーシング(4)が上昇すると、外側部材(41)は、内側部材(21)の下端側に向かって相対的に移動するが、外側部材(41)と内側部材(21)の間の隙間に入り込んだ泥が、この移動を妨げる抵抗となる恐れがある。付勢手段により、内側部材(21)の先端側に向かって外側部材(41)を付勢することで、このような場合でも、隙間に入り込んだ泥による抵抗に抗じて外側部材(41)が移動して、共上り防止機構(10)が正常に動作する。第3実施例では、付勢手段としてバネ(32a)(32b)が用いられているが、バネ(32a)(32b)での代わりに、油圧シリンダや空圧シリンダなどが使用されてよい。
【0038】
図15は、本発明の第4実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図3に相当している。第4実施例は、第1規制手段が定める移動限界位置に外側部材(41)がある状態にて、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とが、下方に突出する(断面)略V字状の面上に配置されるように構成されている点を除いて、第1実施例と同じ構成を有している(第4実施例では、図9に示すロ字状の面が、長手方向の中心線が稜線となるようにV字状に屈曲している)。
【0039】
図15は、ケーシング(4)の打ち込み前にて、アンカー(11)が共上り防止機構(10)に沿装着されると共に、外側部材(41)が第1移動規制手段が定める移動限界位置にある状態を示している。ケーシング(4)が地盤(6)に打ち込まれると、図16に示すように、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とで構成される略V字状の面に沿って、アンカー(11)が屈曲する。このように、アンカー(11)がV字状に屈曲することで、ケーシング(4)の打ち込み時の抵抗が低下する。図17は、本発明の第4実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図10に相当している。図17は、第2規制手段が定める移動限界位置に外側部材(41)がある状態にて、当接部(46a)(46b)の傾斜した下端面にV字状に屈曲したアンカー(11)が当接している模様を示している。当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とは、アンカー(11)が30度程度屈曲するように構成されるのが好ましい。
【0040】
図18は、ケーシング(4)の打ち込み時における本発明の第5実施例のドレーン材打設装置(1)のケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す正面図である。図19は、図18に示すD−D線で破断して矢視方向に見た断面図である。図20は、図18に示すE−E線で破断して矢視方向に見た断面図である(ドレーン材(7)は図示せず)。
【0041】
他の実施例と同様に第5実施例の共上り防止機構(10)も内側部材(61)と外側部材(81)を備えているが、ケーシング(4)は中空筒状の外側部材(81)に連結されており、内側部材(61)が外側部材(81)に摺動自在に嵌挿されている。外側部材(81)は、方形筒状の第1外側筒部(82)と、矩形筒状の第2外側筒部(83)と、それらを連結する外側テーパー筒部(84)とを有している。第1外側筒部(82)の上端部は、ケーシング(4)の下端部に嵌入されて、第1実施例と同様に一対のピン(13a)(13b)を用いて、ケーシング(4)と外側部材(81)とが連結されている。
【0042】
内側部材(61)は、矩形筒状に形成されており、その下部は、外側部材(81)の第2外側筒部(83)に嵌まっている。第2外側筒部(83)は、内側部材(61)の上下動のガイド手段として機能している。内側部材(61)の上端には、外方に突出するフランジ部(62)が設けられている。外側部材(81)には、フランジ部(62)の上方にて、第1外側筒部(82)の内面から内側に突出する第1凸部(85a)(85b)が設けられており、各第1凸部(85a)(85b)とフランジ部(62)の間には、外側部材(81)の下端側に向かって内側部材(61)を付勢する付勢手段が、設けられている。第5実施例では、付勢手段としてバネ(71a)(71b)が用いられている。これらのバネ(71a)(71b)は、垂直方向以外の力が内側部材(61)に加わらないように対称性を考慮して配置されるのが好ましい。
【0043】
外側部材(81)には、フランジ部(62)の下方にて、第1外側筒部(42)の内面から内側に突出する第2凸部(86a)(86b)が設けられている。フランジ部(62)と第2凸部(86a)(86b)は、外側部材(81)の下端側への内側部材(61)の移動を規制する第2規制手段を構成している。また、外側部材(81)には、第1凸部(85a)(85b)と第2凸部(86a)(86b)の間にて、第1外側筒部(42)の内面から内側に突出する第3凸部(87a)(87b)が設けられている。フランジ部(62)と第3凸部(87a)(87b)は、外側部材(81)の上端側への内側部材(61)の移動を規制する第1規制手段を構成している。図21は、第2規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)がある状態を示す断面図である。例えば、図1(a)に示すように、ケーシング(4)を地盤(6)に打ち込む前には、自重によって、フランジ部(62)が第2凸部(86a)(86b)と当接する位置に、つまり第2規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)が配置される。この状態にて、内側部材(61)の下端の開口から引き出されたドレーン材(7)の端部にアンカー(11)が配置される。ケーシング(4)が地盤(6)に打ち込まれると、内側部材(61)が地盤(6)で押されて、ケーシング側に移動するので、図19に示すように、第1規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)が移動すると共に、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とが共にアンカー(11)の上面に当接した状態になる。なお、ドレーン材(7)を上方に引っ張る又は巻き戻すことによっても、地上にて、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とが共にアンカー(11)の上面に当接した状態(第1規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)がある状態)になる。
【0044】
第1規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)がある場合、図20から理解できるように、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とは全体としてロ字状の面を構成してアンカー(11)を覆うように構成される。アンカー(11)が(その中心部分を除いて)ほぼ全体的に押圧されるので、ケーシング(4)の打ち込み時におけるアンカー(11)の変形や破損が防止される。内側部材(61)の下端部は、第1実施例のような第2内側筒部(23)のように構成され、第2外側筒部(83)は、第2外側筒部(43)のように当接部(46a)(46b)(46c)(46d)を有するように構成されてもよい。なお、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とは、第4実施例に示すように略V字状の面を構成してもよい。また、第1実施例のように、(図19に示す状態にて)アンカー(11)を位置決めする位置決め部材(48)が外側部材(81)に設けられてもよい。
【0045】
図1(c)に示すように、ケーシング(4)が引き抜かれる場合、ケーシング(4)の上昇と共に、それに連結した外側部材(81)も上昇する。しかしながら、地中における内側部材(61)の位置は、重力の作用により(さらには、バネ(71a)(71b)で付勢されることで)保持されて、内側部材(61)は、第1規制手段が定める移動限界位置から第2規制手段が定める移動限界位置に向かって相対的に移動する。また、内側部材(61)の下端面は引き続きアンカー(11)の上面と当接するが、外側部材(81)の第2外側筒部(83)の下端面が、アンカー(11)から離間することで、アンカー(11)の上面に地盤(6)中の泥が堆積して、土圧が加えられる。
【0046】
ケーシング(4)の上昇と共に外側部材(81)も上昇すると、第2外側筒部(43)の第2凸部(86a)(86b)が、内側部材(61)のフランジ部(62)と当接し、内側部材(61)は第2規制手段が定める移動限界位置に至る。これにより、ケーシング(4)の上昇と共に内側部材(61)も上昇し、最終的に、図1(d)に示すように、アンカー(11)とドレーン材(7)を地中に残したまま、ケーシング(4)と共上り防止機構(10)とが地盤(6)から抜き出される。このように、アンカー(11)に十分な土圧が加わった後に、内側部材(61)がアンカー(11)から離間するように動くするので、ケーシング(4)の上昇と共にアンカー(11)が共上りをする事態が抑制されている。
【0047】
第5実施例から付勢手段が削除されてもよいが、付勢手段、具体的にはバネ(71a)(71b)が設けられることで、第3実施例と同様に、外側部材(81)と内側部材(61)の間の隙間に泥が入り込んだ場合でも、共上り防止機構(10)が正常に動作する。第5実施例では、付勢手段としてバネ(71a)(71b)が用いられているが、バネ(71a)(71b)の代わりに、油圧シリンダや空圧シリンダなどが使用されてよい。
【0048】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
(1) ドレーン材打設装置
(4) ケーシング
(6) 地盤
(7) ドレーン材
(10) 共上り防止機構
(11) アンカー
(21) 内側部材
(25) フランジ部
(26a)(26b) 段部
(31) 孔
(32a)(32b) バネ
(41) 外側部材
(45) 蓋部
(46a)(46b)(46c)(46d) 当接部
(49a)(49b) 凸部
(61) 内側部材
(62) フランジ部
(81) 内側部材
(71a)(71b) バネ
(86a)(86b) 第2凸部
(87a)(87b) 第3凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤改良用のドレーン材を地盤に打設するドレーン材打設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
改良しようとする地盤にドレーン材を打設して土層中の水を排出するドレーン工法は、軟弱地盤の改良に広く使用されている。ドレーン工法の一種であるプラスチックボードドレーン(PBD)工法は、例えば、長手方向に沿って溝が形成されたブラスチック樹脂製芯体と、該芯体を囲うフィルタとを備える帯状のドレーン材を、鉛直方向に沿って地盤に打設することを特徴とする。
【0003】
PBD工法では、ドレーン材が挿入された長尺で中空筒状のケーシングを所定の深さまで鉛直に地盤に打ち込んだ後、ケーシングを地盤から引き抜くことで、ドレーン材の打設が行われる。通常、ケーシング下端から引き出されたドレーン材の端部にはアンカーが装着される。ケーシングの打ち込み中にアンカーがケーシング下端を塞ぐことで、ケーシング内への泥の流入が妨げられる。これによって、所謂共上り現象、つまり、ケーシングが泥で閉塞状態になってドレーン材がケーシングに拘束されて、ケーシングを地盤から引き抜く際にケーシングと共にドレーン材が上昇する現象が抑制される。
【0004】
実際の施工においては、アンカーを使用しても共上りを完全に防止することが困難である。その原因としては、ケーシングの打込み中にアンカーが変形又は破損することで、ケーシング下端にアンカーが固定されること(所謂、アンカーのくい込み現象)、また、アンカーが変形、破損又は位置ずれすることでケーシング内に泥が流入することなどがある。さらに、ケーシングが打止めされた地層が非常に軟弱な場合には、アンカーに十分な反力が加わらないために、より強度が高い地層にアンカーが移動するまで共上りが生じる。
【0005】
ケーシング下端部の構造に関して、ドレーン材の共上りを防止するための種々の提案がなされている。その一つとして、ドレーン材の共上りを防止するために、ケーシング下端部にアンカーを下方に付勢するバネをケーシングに設けることが提案されている(実開平5−10526号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−10526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実開平5−10526号公報に記載のケーシングは、アンカーをバネで付勢することで、ケーシングを引き抜く際に地盤中の打止め位置にアンカーを留める点で効果的である。しかしながら、このようなケーシングでは、ケーシングの打込み中におけるアンカーの変形、破損又は位置ずれに起因したドレーン材の共上りを十分に抑制できない。
【0008】
本発明は、この問題を解決するものであり、ケーシングの打ち込み時にアンカーの変形、破損又は位置ずれを防止すると共に、ケーシングを引き抜く際に打止め位置に留める力が効果的にアンカーに働くように構成されたドレーン材打設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のドレーン材打設装置は、ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結されると共に前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記内側部材が嵌通すると共に、前記内側部材に対して摺動可能な外側部材と、前記内側部材の上端側への前記外側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記内側部材の下端側への前記外側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、前記内側部材に対して前記外側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記外側部材の下端部は、前記内側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記内側部材の上昇により、前記外側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記内側部材と共に前記外側部材が上昇することを特徴とする。
【0010】
本発明のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着されるのが好ましい。また、本発明のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記内側部材の下端側に向かって前記外側部材を付勢する付勢手段を備えるのが好ましい。
【0011】
本発明のドレーン材打設装置では、前記外側部材は、中空筒状に形成された筒状部を有しており、前記内側部材の側部には、1又は複数の孔が形成されており、前記1又は複数の孔は、前記内側部材の内部空間と、前記内側部材と前記外側部材の間の空間とを繋ぐのが好ましい。また、本発明のドレーン材打設装置では、前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられているのが好ましい。
【0012】
本発明のドレーン材打設装置では、前記外側部材の下端部には、1又は複数の平面部が形成されており、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記内側部材の下端部の端面と前記1又は複数の平面部とは、全体として略ロ字状に配置されて、前記アンカーの中央部を除いて前記アンカーと当接するのが好ましい。または、本発明のドレーン材打設装置では、前記内側部材の下端部と前記外側部材の下端部とは、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記アンカーが当接する略V字状の面を形成するように構成されているのが好ましい。
【0013】
本発明の第2のドレーン材打設装置は、ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結される中空筒状の外側部材と、前記外側部材に嵌挿され、前記外側部材に対して摺動可能であり、前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記外側部材の上端側への前記内側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記外側部材の下端側への前記内側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、前記外側部材に対して前記内側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記内側部材の下端部は、前記外側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記外側部材の上昇により、前記内側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記外側部材と共に前記内側部材が上昇することを特徴とする。
【0014】
本発明の第2のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着されるのが好ましい。また、本発明の第2のドレーン材打設装置では、前記共上り防止機構は、前記外側部材の下端側に向かって前記内側部材を付勢する付勢手段を備えるのが好ましい。さらに、本発明の第2のドレーン材打設装置では、前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドレーン材打設装置では、共上り防止機構が内側部材と外側部材とを備えており、ケーシングの打ち込み中に、アンカーの上面は、その中央部を除いて、外側部材の下端部と内側部材の下端部と当接するので、ケーシングの打ち込み中におけるアンカーの変形や破損が防止される。ケーシングが地盤から引き抜かれる際に、内側部材の上昇により、内側部材の下端部がアンカーから離間することで、アンカー上面における内側部材の下端部で覆われていた部分に地盤の泥が堆積する。このように、アンカー上面に下向きの土圧が加わった後に、内側部材と共に外側部材が上昇することで、ドレーン材の共上りが抑制される。
【0016】
本発明の第2ドレーン材打設装置では、共上り防止機構が内側部材と外側部材とを備えており、ケーシングの打ち込み中に、アンカーの上面は、その中央部を除いて、外側部材の下端部と内側部材の下端部と当接するので、ケーシングの打ち込み中におけるアンカーの変形や破損が防止される。ケーシングが地盤から引き抜かれる際に、外側部材の上昇により、外側部材の下端部がアンカーから離間することで、アンカー上面における外側部材の下端部で覆われていた部分に地盤の泥が堆積する。このように、アンカー上面に下向きの土圧が加わった後に、外側部材と共に内側部材が上昇することで、ドレーン材の共上りが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)乃至(d)は、本発明のドレーン材打設装置の概要を模式的に示す説明図である
【図2】本発明の第1実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す正面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図3】図2に示すA−A線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図4】図2に示すB−B線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図5】図2に示すC−C線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図6】本発明の第1実施例の共上り防止機構における第2内側筒部を下側からみた斜視図である。
【図7】本発明の第1実施例の共上り防止機構における第2外側筒部を下側からみた斜視図である。
【図8】本発明で使用されるアンカーの斜視図である。
【図9】本発明の第1実施例の共上り防止機構について、外側部材の下端部と内側部材の下端部とで構成されるアンカー当接面を説明する説明図である。
【図10】本発明の第1実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図11】本発明の第2実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図12】本発明の第2実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図13】本発明の第3実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図14】本発明の第3実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図15】本発明の第4実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図16】本発明の第4実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、内外側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図17】本発明の第4実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、外側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図18】本発明の第5実施例のドレーン材打設装置におけるケーシング及び共上り防止機構を示す正面図であって、内側部材が第1規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【図19】図18に示すD−D線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図20】図18に示すE−E線で破断して矢視方向に見た断面図である。
【図21】本発明の第5実施例のケーシング及び共上り防止機構を示す断面図であって、内側部材が第2規制手段が定める移動限界位置にある場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について、図を用いて説明する。図1(a)乃至(d)は、本発明のドレーン材打設装置(1)の概要を模式的に示す説明図である。ドレーン材打設装置(1)は、クローラーなどの移動手段と、ドレーン材打設装置(1)に含まれる各種の機構や手段を制御する制御手段とを有する移動台車(2)と、前記移動台車(2)に設けられたリーダ(3)に支持された長尺のケーシング(4)と、ケーシング(4)を上下に駆動する駆動手段であるフリクションローラ群(5)と、地盤(6)に打設される帯状のドレーン材(7)が巻回されたリール(8)と、リール(8)から引き出されたドレーン材(7)をガイドするガイド機構(9)と、ケーシング(4)の下端部に設けられた尖筒状の共上り防止機構(10)と、ケーシング(4)を通って共上り防止機構(10)の下端から引き出されたドレーン材(7)の端部に装着されるアンカー(11)とを備えている。
【0019】
ドレーン材打設装置(1)によるドレーン材(7)の打設は、以下の様に行われる。まず、図1(a)に示すように、ドレーン材(7)が打設される所望の場所にドレーン材打設装置(1)を配置して、共上り防止機構(10)の下端から、ケーシング(4)及び共上り防止機構(10)に挿入されたドレーン材(7)の端部を引き出してアンカー(11)を装着する。次に、図1(b)に示すように、フリクションローラ群(5)を駆動して、所望の深さまでケーシング(4)を地盤(6)に打ち込む。その後、図1(c)に示すように、フリクションローラ群(5)を逆向きに駆動して、ケーシング(4)を地盤(6)から引き抜く。この際、ドレーン材(7)及びアンカー(11)を地中に残したまま、ケーシング(4)と共上り防止機構(10)が引き抜かれる。図1(d)に示すように、ケーシング(4)と共上り防止機構(10)が完全に抜き出された後、ドレーン材(7)が切断される。所望の本数のドレーン材(7)が地盤(6)に打設されるまで、図1(a)乃至(d)の処理が繰り返される。
【0020】
図2は、ドレーン材打設装置(1)のケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す正面図である。図3は、図2に示すA−A線で破断して矢視方向に見た断面図である。図4は、図2に示すB−B線で破断して矢視方向に見た断面図である(内側部材(21)の内部やアンカー(11)等については図示せず)。図5は、図2に示すC−C線で破断して矢視方向に見た断面図である(ドレーン材(7)は図示せず)。
【0021】
本実施例のドレーン材打設装置(1)では、ドレーン材(7)保護用の管(12)が内部に配置された方形筒状のケーシング(4)が使用されている。管(12)は、共上り防止機構(10)と干渉しないように、ケーシング(4)の下端まで至らないように配置され、その断面は楕円状に形成されている。共上り防止機構(10)は、2本のピン(13a)(13b)を介してケーシング(4)の下端部に着脱自在に装着されており、破損や故障した場合に容易に交換可能となっている。
【0022】
共上り防止機構(10)は、中空筒状の、つまり、両端が開放した筒状の内側部材(21)と、内側部材(21)が嵌挿されると共に、内側部材(21)に対して摺動自在に移動する外側部材(41)とを備えている。共上り防止機構(10)には、内側部材(21)の上端側への外側部材(41)の移動を規制する第1規制手段と、内側部材(21)の下端側への外側部材(41)の移動を規制する第2規制手段とが設けられており、図2及び図3では、内側部材(21)に対して、外側部材(41)が第1規制手段が定める移動限界位置にある状態が示されている。例えば、図1(b)に示すように、ケーシング(4)が地盤(6)に打ち込まれてる場合に、共上り防止機構(10)は、図2及び図3に示す状態になる。第1規制手段及び第2規制手段の詳細については後述する。
【0023】
内側部材(21)は、略方形筒状の第1内側筒部(22)と、その端面がアンカー(11)の上面と当接する第2内側筒部(23)と、第1内側筒部(22)と第2内側筒部(23)を連結する内側テーパー筒部(24)とを有している。また、外側部材(41)は、中空筒状の第1外側筒部(42)と、第2内側筒部(23)が嵌まる中空筒状の第2外側筒部(43)と、第1外側筒部(42)と第2外側筒部(43)を連結する外側テーパー筒部(44)とを有している。第1外側筒部(42)は、略正形筒状に形成されている。図2に示す状態では、第1内側筒部(22)を囲うように第1外側筒部(42)が配置され、内側テーパー筒部(24)を囲うように外側テーパー筒部(44)が配置され、第2内側筒部(23)の上側略半分が第2外側筒部(43)内に配置されている。
【0024】
第1内側筒部(22)の上部は、ケーシング(4)の下端部に嵌入される。第1内側筒部(22)の側面には、外方に突出するフランジ部(25)が設けられており、ケーシング(4)の下端面は、フランジ部(25)に当接している。第1内側筒部(22)とケーシング(4)には夫々4つの孔が形成されており、これらの孔は、ケーシング(4)の端面がフランジ部(25)に当接した状態にて、2本のピン(13a)(13b)を挿入可能に位置決めされる。本実施例では、第1内側筒部(22)の上端部が、ケーシング(4)の下端部に嵌められるが、例えば、ケーシング(4)の下端部が第1内側筒部(22)の上端部に嵌入されるように構成されてもよい。
【0025】
第1外側筒部(42)の上端面には、第1内側筒部(22)が嵌通すると共に、第1外側筒部(42)の上端を塞ぐ蓋部(45)が接合されている。蓋部(45)は、例えば、第1内側筒部(22)の形状に合わせて略方形筒状の開口が中央に開設された略正方形の厚板が用いられる。蓋部(45)は、共上り防止機構(10)内、つまり第1外側筒部(42)内への泥の流入を防止すると共に、フランジ部(25)と共に第1規制手段を構成している。図2及び図3に示すように、蓋部(45)がフランジ部(25)に当接することで、内側部材(21)に沿った上方への外側部材(41)の移動、つまり、内側部材(21)の先端側、或いはケーシング(4)側に向かう外側部材(41)の移動が規制されている。蓋部(45)がフランジ部(25)に当接した状態にて、外側部材(41)は、内側部材(21)に対して、第1移動規制手段が定める移動限界位置にある。
【0026】
図6は、第2内側筒部(23)を下から見た斜視図である。第2内側筒部(23)は、略矩形筒状に形成されているが、第2内側筒部(23)の断面の短手方向に沿った筒壁の厚さが外向きに増すように、第2内側筒部(23)には、一対の段部(26a)(26b)が形成されている。第2内側筒部(23)の両側面には、第2内側筒部(23)の長さ方向に沿った一対の凸条(27a)(27b)が設けられている。第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とは同一平面上に配置される。
【0027】
図7は、第2外側筒部(43)を下から見た斜視図である。第2外側筒部(43)の内壁の4隅の各々には、第2外側筒部(43)の下端面から下方に突出する矩形柱状の当接部(46a)(46b)(46c)(46d)が接合されている。これら当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)は、同一平面上に配置される。近接して対向する当接部(27a)(27c)の間には、第2内側筒部(23)の凸条(27a)が摺動自在に挿入され、近接して対向する当接部(27b)(27d)の間には、第2内側筒部(23)の凸条(27b)が摺動自在に挿入される。当接部(46a)(46b)(46c)(46d)と凸条(27a)(27b)とは、内側部材(21)に対する外側部材(41)の上下動をガイドするガイド手段として機能する。なお、第2内側筒部(23)に凸条(27a)(27b)を削除して、当接部(27a)(27c)を一体化し、当接部(27b)(27b)を一体化することで、第2内側筒部(23)と第2外側筒部(43)が、後述する第5実施例の第2外側筒部(83)と内側部材(61)の下端部のように構成されてもよい。
【0028】
図3に示すように、蓋部(45)がフランジ部(25)に当接した状態、つまり、外側部材(41)が第1規制手段が定める移動限界位置にある状態で、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とは、同一平面上に配置されて、図9に示すように、全体としてロ字状の面を構成して、アンカー(11)の上面と当接する。ロ字状の面の外周を規定する四角形は、装着されたアンカー(11)を囲い、第2内側筒部(23)の下端の開口を除いて、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とで、アンカー(11)の上面が覆われる。このように、ケーシング(4)の打ち込み時に、アンカー(11)の上面が(その中心部分を除いて)ほぼ全体的に共上り防止機構(10)と当接するので、ケーシング(4)の打ち込み時におけるアンカー(11)の変形や破損が防止される。
【0029】
図8は、アンカー(11)の斜視図である。アンカー(11)には、2本のスリット(14a)(14b)が長手方向に沿って平行に開設された矩形の厚板が使用される。図8にて一点鎖線で示すように、ドレーン材(7)が、一方のスリット(14a)に挿入された後に折り返されて、他方のスリット(14b)に挿入されることで、アンカー(11)はドレーン材(7)の端部に装着される。本発明の目的が達成される限りにおいて、アンカー(11)の形状は制限されない。例えば、PBD工法で使用されている櫛形やコ字状のアンカー、又は鍋蓋タイプのアンカーなども使用されてよい。
【0030】
図7等に示すように、各当接部(46a)(46b)(46c)(46d)における2つの外向き面の各々には、矩形柱状の位置決め部材(48)が設けられている。位置決め部材(48)は、各当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)から下方に突出しており、これら位置決め部材(48)の側面と当接することで、共上り防止機構(10)から、又は上述したロ字状面からアンカー(11)がはみ出る事態が防止される。また、これら位置決め部材(48)により、共上り防止機構(10)へのアンカー(11)の装着が容易にされている。位置決め部材(48)の下端部は面取りされて、アンカー(11)の装着をさらに容易にすると共に、ケーシング(4)の打ち込み時の抵抗が緩和されるのが好ましい。
【0031】
図1(c)に示すように、ケーシング(4)が地盤(6)から引き抜かれる場合、ケーシング(4)の上昇と共に、それに連結された内側部材(21)も上昇する。しかしながら、地中における外側部材(41)の位置は、地盤(6)との摩擦抵抗や土圧の働きによって保持されて、外側部材(41)は、内側部材(21)の下端側に向かって相対的に移動する。また、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)は引き続きアンカー(11)と当接するが、内側部材(21)の第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とが、アンカー(11)から離間することで、アンカー(11)の上面に地盤(6)中の泥が堆積して、アンカー(11)に土圧が加えられる。
【0032】
図3等に示すように、第2外側筒部(43)の上端部の内面には、内向きに突出した凸部(49a)(49b)が形成されている。これら凸部(49a)(49b)と、第2内側筒部(23)の段部(26a)(26b)とは、内側部材(21)の下端側に向かう外側部材(41)の移動を規制する第2規制手段を構成する。ケーシング(4)の上昇と共に内側部材(21)も上昇すると、図10に示すように、第2内側筒部(23)の段部(26a)(26b)は、第2外側筒部(43)の凸部(49a)(49b)と当接して、外側部材(41)は、内側部材(21)に対して、第2移動規制手段が定める移動限界位置に配置される。段部(26a)(26b)が凸部(49a)(49b)と当接することで、ケーシング(4)の上昇と共に外側部材(41)も上昇し、最終的に、図1(d)に示すように、アンカー(11)とドレーン材(7)を地中に残したまま、ケーシング(4)及び共上り防止機構(10)が地盤(6)から抜き出される。このように、アンカー(11)に十分な土圧が加わった後に、外側部材(41)の当接部(46a)(46b)(46c)(46d)がアンカー(11)から離間するので、ケーシング(4)の上昇と共にアンカー(11)が共上りをする事態が防止される。
【0033】
図1(a)に示すように、ケーシング(4)の打ち込み前にてケーシング(4)と共上り防止機構(10)とが地上にある場合、外側部材(41)は、その自重によって、図10に示すように第2移動規制手段が定める移動限界位置に配置される。アンカー(11)を共上り防止機構(10)に装着する場合、図10に示すように(ドレーン材(7)に装着された)アンカー(11)は、まず、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と当接するように設置される。その後、ケーシング(4)を下方に駆動すると、外側部材(41)が地表に押されて、図3に示すように第1移動規制手段が定める移動限界位置に配置される。なお、ドレーン材(7)を上方に引っ張る又は巻き戻すことにより、地上にて、外側部材(41)を第1移動規制手段が定める移動限界位置に配置してもよい。
【0034】
図11は、本発明の第2実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図3に対応している。図12は、本発明の第2実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図10に対応している。第2実施例は、内側部材(21)の第1内側筒部(22)の筒壁に孔(31)が形成されている点を除いて、第1実施例と同じ構成を有している。第1内側筒部(22)の筒壁の孔(31)は、内側部材(21)の内部空間と、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間とを繋げており、この孔(31)は、図11及び図12から理解できるように、内側部材(21)に対して外側部材(41)がどの位置にあっても、共上り防止機構(10)の外部に(例えば、地盤中に)露出しない位置に設けられている。第2内側筒部(23)や内側テーパー筒部(24)の筒壁に孔(31)が開けられてもよく、また、複数の孔(31)が内側部材(21)の筒壁に開けられてもよい。
【0035】
第1実施例では、内側部材(21)が内側テーパー筒部(24)を、外側部材(41)が外側テーパー筒部(44)を有しており、共上り防止機構(10)が図3に示す状態から図10に示す状態に移行するにつれて、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間が大きくなる。これに伴って、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間の圧力(気圧)が低下するので、内側部材(21)と外側部材(41)の間の隙間に泥が進入して、共上り防止機構(10)の正常な動作が妨げられる恐れがある。内側部材(21)の筒壁に孔(31)を形成することで、内側部材(21)の内部空間の圧力(例えば、大気圧)と、内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間の圧力とが、常に同じにされるので、圧力低下による泥の進入が抑制される。ケーシング(4)内に水や圧縮空気を供給する手段をドレーン材打設装置(1)の移動台車(2)に設けて、内側部材(21)の内部空間、さらには、孔(31)を介して内側部材(21)と外側部材(41)の間の空間が、水や圧縮空気で加圧されてもよい。
【0036】
図13は、本発明の第3実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図3に相当している。図14は、本発明の第2実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図10に相当している。第3実施例は、内側部材(21)の下端側に向かって外側部材(41)を付勢する付勢手段が、共上り防止機構(10)に設けられている点を除いて、第1実施例と同じ構成を有している。
【0037】
付勢手段は、第2内側筒部(23)と第2外側筒部(43)の間に配置された一対のバネ(32a)(32b)である。これらのバネ(32a)(32b)は、垂直方向以外の力が外側部材(41)に加わらないように対称性を考慮して配置されるのが好ましい。図13では、一対のバネ(32a)(32b)は、第2内側筒部(23)(又は第2外側筒部(43))の中心軸に対して対称に配置されており、その一端は、第2外側筒部(43)の凸部(49a)(49b)に、その他端は、第2内側筒部(23)に設けられた延出部(33a)(33b)の端面と当接している。図14に示す状態(外側部材(41)が第2移動規制手段が定める移動限界位置にある状態)でも、バネ(32a)(32b)は、内側部材(21)の下端側に向かって外側部材(41)を付勢する力を加えている。図13に示す状態(外側部材(41)が第1移動規制手段が定める移動限界位置にある状態)から、ケーシング(4)が上昇すると、外側部材(41)は、内側部材(21)の下端側に向かって相対的に移動するが、外側部材(41)と内側部材(21)の間の隙間に入り込んだ泥が、この移動を妨げる抵抗となる恐れがある。付勢手段により、内側部材(21)の先端側に向かって外側部材(41)を付勢することで、このような場合でも、隙間に入り込んだ泥による抵抗に抗じて外側部材(41)が移動して、共上り防止機構(10)が正常に動作する。第3実施例では、付勢手段としてバネ(32a)(32b)が用いられているが、バネ(32a)(32b)での代わりに、油圧シリンダや空圧シリンダなどが使用されてよい。
【0038】
図15は、本発明の第4実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図3に相当している。第4実施例は、第1規制手段が定める移動限界位置に外側部材(41)がある状態にて、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とが、下方に突出する(断面)略V字状の面上に配置されるように構成されている点を除いて、第1実施例と同じ構成を有している(第4実施例では、図9に示すロ字状の面が、長手方向の中心線が稜線となるようにV字状に屈曲している)。
【0039】
図15は、ケーシング(4)の打ち込み前にて、アンカー(11)が共上り防止機構(10)に沿装着されると共に、外側部材(41)が第1移動規制手段が定める移動限界位置にある状態を示している。ケーシング(4)が地盤(6)に打ち込まれると、図16に示すように、当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とで構成される略V字状の面に沿って、アンカー(11)が屈曲する。このように、アンカー(11)がV字状に屈曲することで、ケーシング(4)の打ち込み時の抵抗が低下する。図17は、本発明の第4実施例のドレーン材打設装置(1)におけるケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す断面図であって、第1実施例に係る図10に相当している。図17は、第2規制手段が定める移動限界位置に外側部材(41)がある状態にて、当接部(46a)(46b)の傾斜した下端面にV字状に屈曲したアンカー(11)が当接している模様を示している。当接部(46a)(46b)(46c)(46d)の下端面(47a)(47b)(47c)(47d)と、第2内側筒部(23)の下端面(28)と、凸条(27a)(27b)の下端面(29a)(29b)とは、アンカー(11)が30度程度屈曲するように構成されるのが好ましい。
【0040】
図18は、ケーシング(4)の打ち込み時における本発明の第5実施例のドレーン材打設装置(1)のケーシング(4)及び共上り防止機構(10)を示す正面図である。図19は、図18に示すD−D線で破断して矢視方向に見た断面図である。図20は、図18に示すE−E線で破断して矢視方向に見た断面図である(ドレーン材(7)は図示せず)。
【0041】
他の実施例と同様に第5実施例の共上り防止機構(10)も内側部材(61)と外側部材(81)を備えているが、ケーシング(4)は中空筒状の外側部材(81)に連結されており、内側部材(61)が外側部材(81)に摺動自在に嵌挿されている。外側部材(81)は、方形筒状の第1外側筒部(82)と、矩形筒状の第2外側筒部(83)と、それらを連結する外側テーパー筒部(84)とを有している。第1外側筒部(82)の上端部は、ケーシング(4)の下端部に嵌入されて、第1実施例と同様に一対のピン(13a)(13b)を用いて、ケーシング(4)と外側部材(81)とが連結されている。
【0042】
内側部材(61)は、矩形筒状に形成されており、その下部は、外側部材(81)の第2外側筒部(83)に嵌まっている。第2外側筒部(83)は、内側部材(61)の上下動のガイド手段として機能している。内側部材(61)の上端には、外方に突出するフランジ部(62)が設けられている。外側部材(81)には、フランジ部(62)の上方にて、第1外側筒部(82)の内面から内側に突出する第1凸部(85a)(85b)が設けられており、各第1凸部(85a)(85b)とフランジ部(62)の間には、外側部材(81)の下端側に向かって内側部材(61)を付勢する付勢手段が、設けられている。第5実施例では、付勢手段としてバネ(71a)(71b)が用いられている。これらのバネ(71a)(71b)は、垂直方向以外の力が内側部材(61)に加わらないように対称性を考慮して配置されるのが好ましい。
【0043】
外側部材(81)には、フランジ部(62)の下方にて、第1外側筒部(42)の内面から内側に突出する第2凸部(86a)(86b)が設けられている。フランジ部(62)と第2凸部(86a)(86b)は、外側部材(81)の下端側への内側部材(61)の移動を規制する第2規制手段を構成している。また、外側部材(81)には、第1凸部(85a)(85b)と第2凸部(86a)(86b)の間にて、第1外側筒部(42)の内面から内側に突出する第3凸部(87a)(87b)が設けられている。フランジ部(62)と第3凸部(87a)(87b)は、外側部材(81)の上端側への内側部材(61)の移動を規制する第1規制手段を構成している。図21は、第2規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)がある状態を示す断面図である。例えば、図1(a)に示すように、ケーシング(4)を地盤(6)に打ち込む前には、自重によって、フランジ部(62)が第2凸部(86a)(86b)と当接する位置に、つまり第2規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)が配置される。この状態にて、内側部材(61)の下端の開口から引き出されたドレーン材(7)の端部にアンカー(11)が配置される。ケーシング(4)が地盤(6)に打ち込まれると、内側部材(61)が地盤(6)で押されて、ケーシング側に移動するので、図19に示すように、第1規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)が移動すると共に、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とが共にアンカー(11)の上面に当接した状態になる。なお、ドレーン材(7)を上方に引っ張る又は巻き戻すことによっても、地上にて、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とが共にアンカー(11)の上面に当接した状態(第1規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)がある状態)になる。
【0044】
第1規制手段が定める移動限界位置に内側部材(61)がある場合、図20から理解できるように、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とは全体としてロ字状の面を構成してアンカー(11)を覆うように構成される。アンカー(11)が(その中心部分を除いて)ほぼ全体的に押圧されるので、ケーシング(4)の打ち込み時におけるアンカー(11)の変形や破損が防止される。内側部材(61)の下端部は、第1実施例のような第2内側筒部(23)のように構成され、第2外側筒部(83)は、第2外側筒部(43)のように当接部(46a)(46b)(46c)(46d)を有するように構成されてもよい。なお、第2外側筒部(83)の下端面と内側部材(61)の下端面とは、第4実施例に示すように略V字状の面を構成してもよい。また、第1実施例のように、(図19に示す状態にて)アンカー(11)を位置決めする位置決め部材(48)が外側部材(81)に設けられてもよい。
【0045】
図1(c)に示すように、ケーシング(4)が引き抜かれる場合、ケーシング(4)の上昇と共に、それに連結した外側部材(81)も上昇する。しかしながら、地中における内側部材(61)の位置は、重力の作用により(さらには、バネ(71a)(71b)で付勢されることで)保持されて、内側部材(61)は、第1規制手段が定める移動限界位置から第2規制手段が定める移動限界位置に向かって相対的に移動する。また、内側部材(61)の下端面は引き続きアンカー(11)の上面と当接するが、外側部材(81)の第2外側筒部(83)の下端面が、アンカー(11)から離間することで、アンカー(11)の上面に地盤(6)中の泥が堆積して、土圧が加えられる。
【0046】
ケーシング(4)の上昇と共に外側部材(81)も上昇すると、第2外側筒部(43)の第2凸部(86a)(86b)が、内側部材(61)のフランジ部(62)と当接し、内側部材(61)は第2規制手段が定める移動限界位置に至る。これにより、ケーシング(4)の上昇と共に内側部材(61)も上昇し、最終的に、図1(d)に示すように、アンカー(11)とドレーン材(7)を地中に残したまま、ケーシング(4)と共上り防止機構(10)とが地盤(6)から抜き出される。このように、アンカー(11)に十分な土圧が加わった後に、内側部材(61)がアンカー(11)から離間するように動くするので、ケーシング(4)の上昇と共にアンカー(11)が共上りをする事態が抑制されている。
【0047】
第5実施例から付勢手段が削除されてもよいが、付勢手段、具体的にはバネ(71a)(71b)が設けられることで、第3実施例と同様に、外側部材(81)と内側部材(61)の間の隙間に泥が入り込んだ場合でも、共上り防止機構(10)が正常に動作する。第5実施例では、付勢手段としてバネ(71a)(71b)が用いられているが、バネ(71a)(71b)の代わりに、油圧シリンダや空圧シリンダなどが使用されてよい。
【0048】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
(1) ドレーン材打設装置
(4) ケーシング
(6) 地盤
(7) ドレーン材
(10) 共上り防止機構
(11) アンカー
(21) 内側部材
(25) フランジ部
(26a)(26b) 段部
(31) 孔
(32a)(32b) バネ
(41) 外側部材
(45) 蓋部
(46a)(46b)(46c)(46d) 当接部
(49a)(49b) 凸部
(61) 内側部材
(62) フランジ部
(81) 内側部材
(71a)(71b) バネ
(86a)(86b) 第2凸部
(87a)(87b) 第3凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結されると共に前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記内側部材が嵌通すると共に、前記内側部材に対して摺動可能な外側部材と、前記内側部材の上端側への前記外側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記内側部材の下端側への前記外側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、
前記内側部材に対して前記外側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記外側部材の下端部は、前記内側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、
前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、
前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記内側部材の上昇により、前記外側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記内側部材と共に前記外側部材が上昇することを特徴とするドレーン材打設装置。
【請求項2】
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着される、請求項1に記載のドレーン材打設装置。
【請求項3】
前記共上り防止機構は、前記内側部材の下端側に向かって前記外側部材を付勢する付勢手段を備える、請求項1又は請求項2に記載のドレーン材打設装置。
【請求項4】
前記外側部材は、中空筒状に形成された筒状部を有しており、前記内側部材の側部には、1又は複数の孔が形成されており、前記1又は複数の孔は、前記内側部材の内部空間と、前記内側部材と前記外側部材の間の空間とを繋ぐ、請求項1乃至3の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項5】
前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられている、請求項1乃至4の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項6】
前記外側部材の下端部には、1又は複数の平面部が形成されており、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記内側部材の下端部の端面と前記1又は複数の平面部とは、全体として略ロ字状に配置されて、前記アンカーの中央部を除いて前記アンカーと当接する、請求項1乃至5の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項7】
前記内側部材の下端部と前記外側部材の下端部とは、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記アンカーが当接する略V字状の面を形成するように構成されている、請求項1乃至5の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項8】
ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結される中空筒状の外側部材と、前記外側部材に嵌挿され、前記外側部材に対して摺動可能であり、前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記外側部材の上端側への前記内側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記外側部材の下端側への前記内側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、
前記外側部材に対して前記内側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記内側部材の下端部は、前記外側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、
前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、
前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記外側部材の上昇により、前記内側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記外側部材と共に前記内側部材が上昇することを特徴とするドレーン材打設装置。
【請求項9】
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着される、請求項8に記載のドレーン材打設装置。
【請求項10】
前記共上り防止機構は、前記外側部材の下端側に向かって前記内側部材を付勢する付勢手段を備える、請求項8又は請求項9に記載のドレーン材打設装置。
【請求項11】
前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられている、請求項8乃至10の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項1】
ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結されると共に前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記内側部材が嵌通すると共に、前記内側部材に対して摺動可能な外側部材と、前記内側部材の上端側への前記外側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記内側部材の下端側への前記外側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、
前記内側部材に対して前記外側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記外側部材の下端部は、前記内側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、
前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、
前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記内側部材の上昇により、前記外側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記内側部材と共に前記外側部材が上昇することを特徴とするドレーン材打設装置。
【請求項2】
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着される、請求項1に記載のドレーン材打設装置。
【請求項3】
前記共上り防止機構は、前記内側部材の下端側に向かって前記外側部材を付勢する付勢手段を備える、請求項1又は請求項2に記載のドレーン材打設装置。
【請求項4】
前記外側部材は、中空筒状に形成された筒状部を有しており、前記内側部材の側部には、1又は複数の孔が形成されており、前記1又は複数の孔は、前記内側部材の内部空間と、前記内側部材と前記外側部材の間の空間とを繋ぐ、請求項1乃至3の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項5】
前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられている、請求項1乃至4の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項6】
前記外側部材の下端部には、1又は複数の平面部が形成されており、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記内側部材の下端部の端面と前記1又は複数の平面部とは、全体として略ロ字状に配置されて、前記アンカーの中央部を除いて前記アンカーと当接する、請求項1乃至5の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項7】
前記内側部材の下端部と前記外側部材の下端部とは、前記外側部材が前記第1移動限界位置にある場合に、前記アンカーが当接する略V字状の面を形成するように構成されている、請求項1乃至5の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【請求項8】
ドレーン材が挿入された状態で、鉛直方向に沿って地盤に打ち込まれる長尺で中空筒状のケーシングと、前記ケーシングの下端部に設けられて、前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に前記ドレーン材の共上りを防止する共上り防止機構とを備えており、前記共上り防止機構の下側に、前記ドレーン材の端部に装着された板状のアンカーが配置されるドレーン材打設装置において、
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに連結される中空筒状の外側部材と、前記外側部材に嵌挿され、前記外側部材に対して摺動可能であり、前記ドレーン材が挿入される中空筒状の内側部材と、前記外側部材の上端側への前記内側部材の移動を規制する第1規制手段と、前記外側部材の下端側への前記内側部材の移動を規制する第2規制手段とを備えており、
前記外側部材に対して前記内側部材が前記第1規制手段が定める第1移動限界位置にある場合、前記内側部材の下端部は、前記外側部材の下端部と共に前記アンカーの上面と当接するように構成されており、
前記アンカーの上面は、その中央部分を除いて、前記外側部材の下端部と前記内側部材の下端部と当接し、
前記ケーシングが前記地盤から引き抜かれる際に、前記外側部材の上昇により、前記内側部材が前記第1移動限界位置から前記第2規制手段が定める第2移動限界位置に至ると、前記外側部材と共に前記内側部材が上昇することを特徴とするドレーン材打設装置。
【請求項9】
前記共上り防止機構は、前記ケーシングに着脱自在に装着される、請求項8に記載のドレーン材打設装置。
【請求項10】
前記共上り防止機構は、前記外側部材の下端側に向かって前記内側部材を付勢する付勢手段を備える、請求項8又は請求項9に記載のドレーン材打設装置。
【請求項11】
前記外側部材には、前記アンカーの位置決め手段が設けられている、請求項8乃至10の何れかに記載のドレーン材打設装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−92596(P2012−92596A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241782(P2010−241782)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591159675)錦城護謨株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591159675)錦城護謨株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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