説明

ナイフエッジおよびこれを含む液晶表示装置の製造システム

【課題】フィルム屑などの異物が発生し難いナイフエッジを提供し、生産歩留まりを向上させる。
【解決手段】本発明に係るナイフエッジ7は、剥離フィルムを備えた積層フィルムから、剥離フィルムを剥離するナイフエッジであり、搬送されている積層フィルムのうち剥離フィルム2bが押圧される下面22と、下面22に繋がる先端部21とを備え、先端部21において、下面22から先端部21に向かう方向に対して平行に、凹部25a・25bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイフエッジおよびこれを含む液晶表示装置の製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器に使用される液晶表示装置(LCD:liquid crystal display)は、近年、その需要が益々高まっている。液晶表示装置の製造工程では、光の透過または遮断を制御するために、液晶パネルの両面に偏光フィルムが貼合される。
【0003】
液晶パネルに偏光フィルムを貼合する方法としては、偏光フィルムを液晶パネルに応じたサイズにカットした後に貼合する所謂 Chip to panel 方式が挙げられる。しかしなが
ら、この方式では、液晶パネルに対して、一枚ずつ偏光フィルムを貼合するため、生産効率が低いという欠点がある。一方、他の方式として、偏光フィルムをガイドローラに供給し、連続的に液晶パネルに貼合する所謂 Roll to panel 方式がある。当該方法によれば
、高い生産効率にて貼合が可能となる。
【0004】
Roll to panel 方式では、液晶パネルとの貼合箇所まで偏光フィルムが搬送されるが、偏光フィルムの貼合面に埃などの異物が付着しないように、偏光フィルムの貼合面は、
粘着層を介して剥離フィルム(保護フィルム)によって保護されている。すなわち、偏光フィルムは剥離フィルムを備えた積層フィルムの状態で搬送される。
【0005】
このため、偏光フィルムを液晶パネルに貼合する前に、積層パネルから剥離フィルムを剥離する必要がある。このための部材として、ナイフエッジが用いられており、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1には、ナイフエッジに離型フィルムを巻き掛けて反転移送することにより、離型フィルムを剥離することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4307510号明細書(平成21年8月5日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のナイフエッジで離型フィルム(剥離フィルム)を剥離すると、フィルム屑などの異物が発生するという問題があった。異物発生により、偏光フィルムと液晶パネルとの貼合面に上記異物が混入すると、液晶表示装置の品質が損なわれる虞があり、液晶表示装置の歩留まりが低下し得る。
【0008】
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、フィルム屑などの異物が発生し難いナイフエッジを提供し、生産歩留まりを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発明者は、ナイフエッジを使用した場合に異物が発生する原因を鋭意検討したところ、剥離フィルムの端面とナイフエッジとの接触に原因があることを見出した。すなわち、剥離フィルムは偏光フィルムの幅に合わせてスリットされており、剥離フィルムの端面は滑らかな断面ではなく、変形している。この端面と、湾曲したナイフエッジの先端部とが接触することによって、接触面に摩擦が生じ、変形した端面からフィルム屑などの異物が発生することが明らかとなった。当該知見に基づき発明者らは本発明を完成さ
せるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るナイフエッジは、上記課題を解決するために、剥離フィルムを備えた積層フィルムから、剥離フィルムを剥離するナイフエッジにおいて、搬送されている積層フィルムのうち剥離フィルムが押圧される押圧面と、上記押圧面に繋がる先端部とを備え、上記先端部において、上記押圧面から先端部に向かう方向に対して平行に、少なくとも2つの凹部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
当該ナイフエッジによれば、上記押圧面から先端部に向かって少なくとも2つの凹部が形成されている。そのため、上記少なくとも2つの凹部に剥離フィルムの両端面が配置されるように、剥離フィルムを搬送することができる。剥離フィルムの剥離は、剥離フィルムが押圧面に押圧されながら先端部に搬送されることにより、剥離フィルムが積層フィルムから剥離される。この際、先端部には上記凹部が形成されており、剥離フィルムの両端部が先端部と接触しない。このため、従来、先端部にて生じ易かったフィルム屑など異物の発生量を低減させることができるため、粘着層に異物が付着し難くなる。その結果、最終製品である、液晶表示装置の品質を低下し難くし、生産歩留まりを向上できる。
【0012】
また、本発明に係るナイフエッジは、上記先端部において、上記方向に対して平行に、凹部が3つ以上形成されていることが好ましい。
【0013】
凹部が3つ以上形成されていることにより、異なる幅の剥離フィルムに適合できるナイフエッジを提供することができる。
【0014】
また、本発明に係るナイフエッジは、上記押圧面において、上記方向に対して平行に、凹部が形成されていることが好ましい。
【0015】
剥離フィルムの端面とナイフエッジとが接触することにより、フィルム屑などの異物が主に生じる箇所はナイフエッジの先端部である。しかし、先端部に加えて、押圧面にも凹部が形成されていることにより、押圧面において、剥離フィルムの端面と押圧面とが接触しないように剥離フィルムを搬送することができる。その結果、フィルム屑などの異物をさらに生じ難くすることができる。
【0016】
また、本発明に係るナイフエッジでは、上記先端部が円弧形状を有しており、上記押圧面から先端部の円弧形状の部分へ向かっていることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るナイフエッジは、上記先端部において、上記凹部と繋がる開口部が形成されており、上記開口部に、異物を吸引する吸引機構を備えることが好ましい。
【0018】
当該構成によれば、先端部に到達する前の剥離フィルムの搬送時に発生した異物を、先端部周辺にて吸引し、先端部周辺での異物の飛散が抑制される。これにより、偏光フィルムの粘着層に異物が付着することをさらに抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造システムは、液晶パネルに偏光フィルムを貼合する液晶表示装置の製造システムにおいて、液晶パネルを搬送する液晶パネル搬送部と、液晶パネルの搬送方向へ剥離フィルムを備えた積層フィルムを巻き出す巻出部とを含む貼合機構を備え、上記貼合機構は、上記ナイフエッジを含むものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のナイフエッジは、以上のように、搬送されている積層フィルムのうち剥離フィルムが押圧される押圧面と、上記押圧面に繋がる先端部とを備え、上記先端部において、
上記押圧面から先端部に向かう方向に対して平行に、少なくとも2つの凹部が形成されているものである。
【0021】
それゆえ、先端部には上記凹部が形成されており、先端部での剥離フィルムの剥離の際、剥離フィルムの両端部が先端部と接触しない。このため、従来、先端部にて生じ易かったフィルム屑など異物の発生量を低減させることができるため、粘着層に異物が付着し難くなる。その結果、最終製品である、液晶表示装置の品質を低下し難くし、生産歩留まりを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の製造システムを示す側面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係るナイフエッジを示す側面図であり、(b)は、上記ナイフエッジの先端部の角度を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るナイフエッジを上面側から示す端面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るナイフエッジを上面側から示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るナイフエッジを下面側から示す端面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るナイフエッジを下面側から示す斜視図である。
【図7】剥離フィルムが本発明の実施形態に係るナイフエッジに沿って搬送された状態を示す平面図である。
【図8】(a)は、本発明の実施形態に係るナイフエッジを上面側から示す斜視図であり、(b)は、本発明の実施形態に係るナイフエッジを先端部側から示す平面図である。
【図9】剥離フィルムが本発明の実施形態の変形例に係るナイフエッジに沿って搬送された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について図1〜図9に基づいて説明すれば、以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る製造システム(液晶表示装置の製造システム)100を示す側面図である。製造システム100は、液晶パネル1の両面に偏光フィルム2aを貼合するものである。図1における搬送方向D1は、製造システム100における液晶パネル1の搬送方向を示している。
【0025】
次に、製造システム100が備える各部材について説明する。製造システム100は、巻出部3、ガイドローラ4、ハーフカッター5、支持台6、ナイフエッジ7、ニップローラ8a・8bおよび巻取部9を備えている(「ニップローラ8a・8b」は「ニップローラ8aおよびニップローラ8b」を示している。他の部材の場合も同様である)。さらに、搬送ローラ(液晶パネル搬送部)10および反転部11を備えており、巻出部13、ガイドローラ14、ハーフカッター15、支持台16、ナイフエッジ17、ニップローラ18a・18bおよび巻取部19を備えている。
【0026】
巻出部3は、液晶パネル1の搬送方向へ偏光フィルムを巻き出すものであり、図1では、巻出部3が、偏光フィルム2aに剥離フィルム2bが積層された積層フィルム2を巻き出す構成となっている。製造システム100では、巻出部3は、積層フィルム2の原反ロールの軸に対して水平な方向に移動する構造となっている。移動は巻出部3の下部に設置されたスライド機構によってなされる。なお、巻出部3として、従来公知のターレット形式の巻出部を用いてもよい。
【0027】
積層フィルム2は、ガイドローラ4を介して送り出される。本実施の形態において、積
層フィルム2を巻き出す速度、張力等は適宜調整すればよい。巻出部3のサイズは、使用する積層フィルム2のサイズによって適宜変更すればよく、特に限定されるものではない。例えば、フィルム幅が300mm以上、1200mm以下の積層フィルム2を設置可能なサイズの巻出部3を使用すればよい。
【0028】
積層フィルム2は3層構造になっており、公知の構造を採用できる。積層フィルム2は、偏光フィルム2a、図示しない粘着層および剥離フィルム2bから構成されている。
【0029】
具体的な偏光フィルム2aの構成の一例として、以下の構成が挙げられる。すなわち、偏光子フィルムの両面に保護フィルムとしてTAC(トリアセチルセルロース)フィルム等が貼合されており、一方または両方のTACフィルムに粘着層が塗布(積層)されており、粘着層に剥離フィルム2bが積層された構成が挙げられる。
【0030】
上記偏光子フィルムとしては、ポリビニルアルコールフィルムがヨウ素等によって染色されており、1軸方向に延伸されたフィルムを用いることができる。また、上記フィルムに代えて、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等を使用することもできる。
【0031】
偏光フィルム2a粘着層および剥離フィルム2bの総厚さは、特に限定されないが、一例として、100μm以上、500μm以下とすることができる。なお、偏光フィルム2aのうち偏光子フィルムの厚さは、概して10μm以上、50μm以下である。さらに、積層フィルム2の実用上、問題ない範囲にて上記3層以外にさらに他の層を含んでいてもよい。
【0032】
粘着層は、剥離フィルム2bが除去された後に、偏光フィルム2aと液晶パネル1とを貼合するために用いられる。粘着層に用いられる粘着剤としては、特に限定されるものではなく、アクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系などの粘着剤を用いることができるが、剥離フィルム2bから剥離し易い必要がある。このため、剥離フィルム2bに応じて粘着剤の種類が選択される。なお、粘着剤層の厚さは適宜変更すればよく、例えば、0.5μm以上、75μm以下とすることができる。
【0033】
剥離フィルム2bとしては公知の剥離フィルムを用いればよい。具体的には、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルムなどを用いることができる。上記剥離フィルムの厚さとしては、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下の剥離フィルムを好ましく用いることができる。また、剥離フィルムの幅は、300mm以上、1200mm以下とすることができる。なお、剥離フィルム2bは、一般的に保護フィルム、セパレータなどと称されることもある。
【0034】
積層フィルム2は各ガイドローラ4を介して搬送されるが、液晶パネル1は枚葉状であるため、貼合前に長尺の偏光フィルム2aおよび粘着層を切断する必要がある。すなわち、積層フィルム2をハーフカットする必要がある。ハーフカットを行うための部材が、ハーフカッター5および支持台6である。支持台6は、剥離フィルム2bに接触する位置に配置されており、積層フィルム2にぶれを生じ難するために設置されている。剥離フィルム2b側が支持された状態にて、偏光フィルム2aおよび接着層はハーフカッター5によって切断される。このとき剥離フィルム2bは切断されない。すなわち、積層フィルム2がハーフカットされる。
【0035】
ナイフエッジ7は、積層フィルム2から剥離フィルム2bを除去するための部材である
。ナイフエッジ7を構成する材料としては、金属材料、樹脂材料等が適用可能であり、特に制限されないが、ステンレス、アルミニウム、樹脂材料などが耐蝕性の点から推奨される。なお、ナイフエッジ7については図2〜図9を用いて後述する。
【0036】
図示しないが、製造システム100には、偏光フィルム2の幅方向における搬送位置を調整する位置調整装置が備えられており、ナイフエッジ7・17に沿って搬送される積層フィルム2・12(剥離フィルム2b)の搬送位置を調整することができる。上記位置調整装置により、積層フィルム2の端面が蛇行していたとしても、積層フィルム2の位置を適切な搬送位置に調整できる。位置調整装置を設置する理由は、積層フィルム2は短い幅にスリットされていることが通常であり、積層フィルム2の端面は、スリット過程において平面でない(蛇行している)ことが通常だからである。上記位置調整装置は、積層フィルム2および剥離フィルム2bの端面の位置を確認するカメラおよびガイドローラ4の位置を調整するガイドローラ調整装置によって構成されている。
【0037】
次に、製造システム100の上部に備えられた搬送ローラ10について説明する。液晶パネル1は偏光フィルム2aとの貼合のためにニップローラ8a・8b間へと搬送される。
【0038】
液晶パネル1としては、公知の液晶パネルを用いることができ、例えば、ガラス基板などの基板と液晶層との間に配向膜が配置された液晶パネルを使用可能である。
【0039】
搬送ローラ10は、液晶パネル1を搬送する部材である。搬送ローラ10は、液晶パネルを搬送することができればよく、搬送ローラ10に代えてロボットアームなどの他の構成を用いてもよい。
【0040】
ニップローラ8a・8bは、偏光フィルム2aおよび液晶パネル1を貼合する部材である。ニップローラ8a・8bのうち、下方のニップローラ8bは、搬送ローラ10と同じ高さに配置されている。一方、ニップローラ8aは、ニップローラ8bの上方に配置されており、ニップローラ8a・8bにて偏光フィルム2aが図示しない粘着層を介して液晶パネル1の下面に貼合される。
【0041】
ニップローラ8a・8bは互いの間の距離を変更可能であり、偏光フィルム2aの粘着層面および液晶パネル1を圧着することによって貼合を行う。貼合時におけるニップローラ8a・8bの圧力および温度(ニップロール内のヒーター温度)は、粘着剤の種類、偏光フィルム2aの厚さなどに応じて適宜調整すればよい。
【0042】
下面に偏光フィルム2aが貼合された液晶パネル1は、反転部11によって表裏が変更されると共に、搬送方向に沿った短辺が長辺となるように反転される。図1では、反転部11によって反転された液晶パネルを液晶パネル1aとして示している。製造システム100では、反転部11としてロボットアームを採用しているが、液晶パネル1の表裏および搬送方向に沿った辺を変更できるものであれば特に限定されない。この反転部11により液晶パネル1を反転させることにより、液晶パネル1の下面(偏光フィルムが未貼合)に、偏光フィルム12aの吸収軸が偏光フィルム2aの吸収軸と直交するように偏光フィルム12aを貼合することができる。
【0043】
なお、液晶パネル1は、その長辺が搬送方向に沿って搬送されてもよく、その場合、反転部11によって、反転された後の液晶パネル1aは、その短辺が搬送方向に沿って搬送されることとなる。
【0044】
反転され、搬送方向D1に長辺が沿う状態となった液晶パネル1aは、搬送方向D1に
さらに搬送され、ニップローラ18a・18bへ到達する。ニップロール18bの下方では、巻出部3と同様に、巻出部13から積層フィルム12が巻き出され、この積層フィルム12のうち偏光フィルム12aおよび粘着層がハーフカッター15によってハーフカットされる。その後、ナイフエッジ17によって積層フィルム12から剥離フィルム12bが剥離され、偏光フィルム12aが粘着層を介して液晶パネル1aの下面に貼合される。両面に偏光フィルムが貼合された液晶パネル1aは液晶表示装置に該当し、製造システム100によって液晶表示装置が製造されることとなる。
【0045】
ナイフエッジ7についてさらに説明する。なお、ナイフエッジ17についても同様である。図2(a)は、ナイフエッジ7に係る側面図である。また、図3は、上面20に向かって、先端部21付近のナイフエッジ7を示す端面図である。図2および図3に示すように、ナイフエッジ7は、上面20、先端部21、下面(押圧面)22、後端23、側面24aおよび図示しない側面24bを含んでいる。
【0046】
剥離フィルム2bは、下面22、先端部21および上面20に沿って剥離されるため、下面22、先端部21および上面20は、滑らかな形状となっている。すなわち、上面20および下面22は平面形状となっており、先端部21は湾曲した形状となっている。
【0047】
図2(b)は、ナイフエッジ7の先端部の角度を示す側面図である。図2(b)に示すように、先端部21は円弧形状を有している。このため、先端部21の側面(または断面)は扇形となっており、先端部21では上記断面の中心角Aは155°となっている。上面20および下面22は先端部21の法線に沿って形成されるため、上面20および下面22は互いに水平でなく、傾きを有している。
【0048】
先端部21の円弧形状(側面または断面)は上記角度に限定されるものではなく、例えば、中心角Aが30°以上、180°以下の扇形とすることができる。好ましくは、先端部21の円弧形状は、中心角Aが45°以上、180°以下の扇形であり、さらに好ましくは、中心角Aが90°以上、180°以下の扇形、特に好ましくは、中心角が120°以上、180°以下の扇形である。中心角Aが30°未満の場合、剥離した剥離フィルム2bと偏光フィルム2aとの距離が近く、これらの搬送を行い難くなる。中心角Aが45°以上、さらには120°以上である場合、剥離フィルム2bと偏光フィルム2aとをより異なる搬送方向に向けて搬送でき、剥離フィルム2bを回収し易い製造システム100を提供でき好ましい。一方、中心角Aが180°を超える場合、先端部21の法線に沿って上面20を形成することができず、先端部21と上面20とを滑らかな構造に設計することが困難となる。
【0049】
ナイフエッジ7では、方向D2は、下面22から先端部21の円弧形状の部分へ向かっている。このため、先端部21の円弧形状は、方向D2に対して平行な面または同一な面上に位置している。積層フィルム2は、先端部21の円弧形状の部分に向かって搬送され、先端部21の円弧形状に沿って剥離フィルム2bが剥離される。これにより、滑らかに剥離フィルムが剥離される。
【0050】
先端部21の半径は剥離フィルム2bの厚さおよび硬度などに応じて適宜変更されるため、一義的に規定することは困難であるが、一例として、先端部21の扇形断面の半径を1mm以上、10mm以下とでき、好ましくは、2mm以上、5mm以下とすることができる。上記の半径とすることにより、剥離フィルム2bの剥離が好適になされ得る。
【0051】
また、剥離フィルム2bを損傷させないために、下面22および先端部21は滑らかに繋がっており、角が形成されていない。また、先端部21および上面20も滑らかに繋がっており、角が形成されていない。剥離フィルム2bに損傷を及ぼさなければ問題ないた
め、下面22、先端部21および上面20は、剥離フィルム2bが接触する箇所が滑らかな形状であればよく、剥離フィルム2bが接触しない箇所は、滑らかな形状でなくともよい。例えば、下面22と側面24aとは滑らかに繋がっておらず、角が形成されているが、これにより剥離フィルム2bは損傷しない。なお、ここで、滑らかな形状とは平面および曲面の少なくとも一方にて形成された形状をいうものとする。
【0052】
側面24a・24bは、上面20、先端部21、下面22および後端23を繋いでいればよく、側面24a・24bの形状は特に限定されず、平面、曲面などであってもよい。また、ナイフエッジ7の変形例として、側面24a・24bに代えて、先端部21および下面22を支持する支持部材を備える構造が挙げられる。支持部材によって先端部21および下面22が支持され、ナイフエッジの構造が維持されていれば、本発明に係るナイフエッジを構成することができる。
【0053】
上記後端23は、上面20、下面22および側面24a・24bを繋いでいればよく、後端23の形状は特に限定されるものではない。側面24a・24bと同様に、平面または曲面などの形状であってもよいし、後端23に代えて、上面20および下面22を支持する支持部材とすることもできる。また、後端23が存在せずとも、先端部21および下面22を含むナイフエッジ7の構造を維持できるのであれば、後端23はなくともよい。
【0054】
図3に示すように、先端部21には、凹部25a・25b・25c・25dが形成されている。また、図4は、上面20側から先端部21付近のナイフエッジ7を示す斜視図である。さらに、ナイフエッジ7の下面22からの形状を図5に示す。図5は、下面22に向かって、先端部21付近のナイフエッジ7を示す端面図である。また、図6は、下面22側から先端部21付近のナイフエッジ7を示す斜視図である。
【0055】
本発明に係るナイフエッジは少なくとも2つの凹部が形成されているものであり、図3〜図6にナイフエッジ7では、好ましい形態として、4つの凹部25a・25b・25c・25dが形成されている。
【0056】
上述したように、積層フィルム2に備えられた剥離フィルム2bは、下面22に沿って搬送される。ここで上記積層フィルム2の剥離フィルム2bは、下面22に押圧されながら搬送される。このように、剥離フィルム2bを下面22に押圧しながらの搬送は、ガイドローラ4、ナイフエッジ7およびニップロール8の位置を調整することによって行うことができる。
【0057】
図示しない粘着層と剥離フィルム2bとは接着力が小さいため、下面22に押圧されながら搬送された剥離フィルム2bは、粘着層から離れ、先端部21に沿って搬送される。この際、剥離フィルム2bの両端面が通る軌道が、凹部と重なるように予め積層フィルム2が配置されている。
【0058】
ここで、長尺の剥離フィルム2bの端面は、必ずしも、剥離フィルム2bの流れ方向(ライン方向)に沿っているわけではなく、蛇行していることが通常である。しかし、図示しない位置調整装置によって、剥離フィルム2bの両端面は、凹部25a〜25dの何れかを通るように調整される。このため、凹部25a〜25dの幅W1は小さくともよく、2mm以上、20mm以下、好ましくは、5mm以上、15mm以下とすることができる。幅W1が小さいことにより、剥離フィルム2bの剥離および搬送を妨げ難いナイフエッジ7・17を提供できる。
【0059】
上記凹部は、2つの凹部の中心同士を結ぶ長さが剥離フィルム2bの幅となるように形成されている。ナイフエッジ7では、狭い幅の剥離フィルム2bを搬送する場合、剥離フ
ィルム2bの両端面が通る軌道が、凹部25b・25cと重なるように偏光フィルム2aの搬送位置が設定される。一方、より幅広の剥離フィルム2bを搬送する場合、剥離フィルム2bの両端面が通る軌道が、凹部25a・25dと重なるように積層フィルム2の搬送位置が設定される。このように、凹部は最低2つ形成されていればよいが、3つ以上形成されていることによって、異なる剥離フィルム2bの幅に適合できるナイフエッジ7を提供することができる。
【0060】
ここで、剥離フィルム2bの幅方向における(剥離フィルム2bの搬送方向に直交する方向における、または、先端部21の幅方向における、と換言できる)、凹部の中心同士を結ぶ距離は、剥離フィルムの幅と一致していることが好ましいため、幅W2・W3を300mm以上、1200mm以下とすることができる。ナイフエッジ7では、幅W2が1200mmに設定されており、幅W3が700mmに設定されている。
【0061】
ナイフエッジ7には、凹部が4つ形成されているため、剥離フィルム2bの両端面が凹部25a・25bを通るように、積層フィルム2の搬送位置が設定されていてもよい。なお、剥離フィルム2bの幅方向における、凹部25a・25bの中心同士の距離は、300mmに設定されている。また、剥離フィルム2bの両端面が凹部25a・25cを通るように、積層フィルム2の搬送位置が設定されていてもかまわない。
【0062】
図7は、剥離された剥離フィルム2bがナイフエッジ7に沿って搬送された状態を示す平面図である。図7に示すように、先端部21にて剥離された剥離フィルム2bの端面(エッジ)は、凹部25a・25dが形成されていることにより、先端部21と接触しない。このため、従来、先端部にて生じ易かったフィルム屑など異物の発生量を低減させることができるため、粘着層に異物が付着し難くなる。その結果、最終製品である液晶表示装置の品質を低下し難くし、生産歩留まりを向上できる。
【0063】
好ましい形態として、上記図5の端面図に示されるように、ナイフエッジ7には先端部21だけでなく、下面22においても、下面22から先端部21に向かう方向D2に対して平行に凹部25a〜25dが形成されている。先端部21における凹部25a〜25dおよび下面22における凹部25a〜25dは連結して形成されており、下面22から先端部21にかけて一連の凹部25a〜25dが形成されている。
【0064】
剥離フィルム2bの端面とナイフエッジ7とが接触することにより、フィルム屑などの異物が主に生じる箇所は先端部21である。先端部21に加えて、下面22にも凹部25a〜25dが形成されていることにより、下面22において、剥離フィルム2bの端面と下面22とが接触しないように剥離フィルム2bを搬送することができる。その結果、フィルム屑などの異物をさらに生じ難くすることができる。
【0065】
次に、本発明に係るナイフエッジの変形例であるナイフエッジ7aについて、図8を用いて説明する。図8(a)は、ナイフエッジ7aを上面20側から示す斜視図であり、図8(b)は、ナイフエッジ7aを先端部21側から示す平面図である。
【0066】
ナイフエッジ7aには、凹部25a〜25dのぞれぞれと繋がる開口部が4箇所形成されており、上記4箇所の開口部には、それぞれ吸引機構26a〜26dが備えられている。上記開口部は、先端部21を通る剥離フィルム2bと対向するように形成されている。ナイフエッジ7aでは、開口部の形成領域と吸引機構26a〜26dの大きさは同じとなっているが、上記開口部のそれぞれは吸引機構26a〜26dを配置可能であればよく、開口部の形成領域を吸引機構26a〜26dの大きさより大きく設計してもよい。
【0067】
開口部は、剥離フィルム2bの搬送を妨げなければよいため、ナイフエッジ7aと異な
り、開口部は、先端部21に形成されていてもよく、凹部の側面(上記側面は、剥離フィルム2bの搬送方向に沿って配置されている)に形成されていてもよい。この場合、吸引機構は、剥離フィルム2bの搬送方向に対して垂直に配置される。
【0068】
吸引機構26a〜26dは、空気を吸引することによって、フィルム屑などの異物を吸引するものである。吸引機構26a〜26dとしては、公知の吸引機構を用いることができ、例えば、真空吸引式などの吸引機構を用いることができる。ナイフエッジ7aでは、吸引機構は4箇所に設置されているが、全ての凹部に対して設置されていなくともよく、少なくとも1箇所に設置されていてもよい。
【0069】
図9は、剥離された剥離フィルム2bがナイフエッジ7aに沿って搬送された状態を示す平面図である。図9に示すように、ナイフエッジ7aでは、凹部25a・25dが形成されていることにより、剥離フィルム2bの端面と先端部21とは接触しない。しかしながら、下面22またはガイドローラ4との接触にてすでにフィルム屑などの異物が剥離フィルム2bに付着しているおそれがある。このような異物は、先端部21で剥離フィルム2bの搬送方向が大きく湾曲することにより、飛散し得る。
【0070】
ナイフエッジ7aによれば、吸引機構26a〜26dが備えられていることによって、先端部21に到達する前に発生した異物を吸引し、先端部21周辺での異物の飛散が抑制される。これにより、偏光フィルムの粘着層に異物が付着することをさらに抑制することができる。その結果、液晶表示装置の歩留まりを向上できる。
【0071】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係るナイフエッジは、光学フィルムを液晶パネルに貼合する分野にて利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1・1a 液晶パネル
2・12 積層フィルム
2a・12a 偏光フィルム
2b・12b 剥離フィルム
3・13 巻取部
4・14 ガイドローラ
5・15 ハーフカッター
6・16 支持台
7・7a・17 ナイフエッジ
8a・8b・18a・18a ニップロール
9・19 巻取部
10 搬送ローラ
11 反転部
20 上面
21 先端部
22 下面(押圧面)
23 後端
24a・24b 側面
25a・25b・25c・25d 凹部
26a・26d 吸引機構
100 製造システム
A 中心角
D1 搬送方向
D2 方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルムを備えた積層フィルムから、剥離フィルムを剥離するナイフエッジにおいて、
搬送されている積層フィルムのうち剥離フィルムが押圧される押圧面と、
上記押圧面に繋がる先端部とを備え、
上記先端部において、上記押圧面から先端部に向かう方向に対して平行に、少なくとも2つの凹部が形成されていることを特徴とするナイフエッジ。
【請求項2】
上記先端部において、上記方向に対して平行に、凹部が3つ以上形成されていることを特徴とする請求項1に記載のナイフエッジ。
【請求項3】
上記押圧面において、上記方向に対して平行に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のナイフエッジ。
【請求項4】
上記先端部において、上記凹部と繋がる開口部が形成されており、
上記開口部に、異物を吸引する吸引機構を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のナイフエッジ。
【請求項5】
上記先端部が円弧形状を有しており、
上記方向は、上記押圧面から先端部の円弧形状の部分へ向かっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のナイフエッジ。
【請求項6】
液晶パネルに偏光フィルムを貼合する液晶表示装置の製造システムにおいて、
液晶パネルを搬送する液晶パネル搬送部と、液晶パネルの搬送方向へ剥離フィルムを備えた積層フィルムを巻き出す巻出部とを含む貼合機構を備え、
上記貼合機構は、請求項1〜5の何れか1項に記載のナイフエッジを含むことを特徴とする液晶表示装置の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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