説明

ナイロン12球状粒子粉末の製造方法

【課題】 溶媒法を用いてナイロン12の球状粉末粒子を簡便に再現性良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】 ナイロン12をジプロピレングリコールに混ぜ合わせ、その混合物を加熱することにより、ナイロン12をジプロピレングリコールに溶解させ均一溶液を生成し、この均一溶液を冷却することによって、ナイロン12の球状粒子を析出させる、ナイロン12球状粒子粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイロン12球状粒子粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特公昭45−29832号公報
【特許文献2】特開2002−97282号公報
【特許文献3】特開平8−12765号公報
【特許文献4】米国特許2639278
【特許文献5】特開昭52−107047号公報
【0003】
従来、ナイロン12粉末の製造方法として、ナイロン12をボールミル等により物理的に破砕する方法と、ナイロン12の製造工程でのラウリルラクタムの重合工程で製造する方法と、ナイロン12を溶媒に溶かし、その溶液に非溶剤を加えるまたはその溶液を冷却することによりナイロン12の単結晶状粒子を析出させる溶媒法とが知られている。ナイロン12の重合工程で製造する方法または溶媒から析出させる溶媒法を用いる場合、溶液内で粒子を生成または析出させるため、それらの粒子には表面張力が働き、球体を形成する。しかし、ナイロン12をボールミル等により物理的に破砕する場合、粉末化してもその粒子は球状にならない。そのため、その化粧品などに用いるには肌触りが悪くなるなど、その使用用途が限られる。
【0004】
特許文献1には、ナイロン12の製造工程でのラウリルラクタムの重合工程で製造する方法であって、ラウリルラクタムをパラフィン中に加熱溶解し、触媒、助触媒、及び分散剤を添加し、130℃以上、ポリマーの融点以下の温度で重合して粉末を製造する方法が開示されている。しかし、特許文献1のようにナイロン12の重合工程で単結晶状粒子を製造する場合、生成粒子の粒径が16メッシュ(991μm)から100メッシュ(147μm)までと大きい粒子しか製造できない。
【0005】
特許文献2には、ポリアミド樹脂を溶解させた溶液に、ポリアミド樹脂の貧溶媒(非溶媒)を加えてポリアミド樹脂分散スラリーを調製し、このスラリーを非溶媒中に添加してポリアミド樹脂の微粉末を得る溶媒法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、炭素数1〜5の含水低級アルコールを溶媒とし、ポリアミド樹脂を高温高圧において溶解させ、冷却してポリアミドの微細粉末を析出させる溶媒法が開示されている。しかし、高温高圧下で製造するため、その設備投資などが問題となる。
【0007】
特許文献4には、ポリアミドに対して高温では溶媒として作用し、室温では非溶媒として作用するポリヒドロキシ化合物を用い、ポリアミドをポリヒドロキシ化合物中に高温で溶解し、冷却することによってポリアミドを析出沈殿させる溶媒法が開示されている。また、このような溶媒として、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、1,5ペンタンジオールあるいはグリセリンなどの多価アルコールが開示されている。
また、特許文献5には、特許文献4と同様にポリアミドに対して高温では均一溶液を形成し、冷却では相分離をする相分離用溶媒を用いた溶媒法が開示されている。そのような溶媒として、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール及びこれらの誘導体が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4及び5のように一度溶解したポリアミド樹脂を冷却することにより粉末粒子として析出させる溶媒法は、比較的安易に行うことができる。しかし、これらの文献ではナイロン6を対象にした方法が記載されており、ナイロン12の粉末粒子を製造できる方法を開示していない。ナイロン12に対して、高温で溶媒として作用し、室温で非溶媒として作用するものとしてプロピレングリコールが考えられる。しかし、この溶媒を用いても、製造されたナイロン12として、一部あるいは全体が塊状のものが析出され、粒径のバラツキがみられ、造粒性が悪いことがわかった。
本発明は、平均粒径が数μmから数十μmのナイロン12球状粒子粉末をバラツキなく簡便に、そして再現性良く製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のナイロン12球状粒子粉末の製造方法は、ナイロン12固体とジプロピレングリコール液体とを混合、加熱し、ナイロン12をジプロピレングリコールに溶解させ均一溶液を生成し、この均一溶液を冷却することによって、ナイロン12の球状粒子を析出させることを特徴としている。ここで、ナイロン12をジプロピレングリコールに混合し加熱しても、加熱したジプロピレングリコールにナイロン12を添加していってもよい。
【発明の効果】
【0010】
ナイロン12に対して、高温で溶媒として作用し、室温で非溶媒として作用する液体であって、その析出による造粒性が高いジプロピレングリコールを用いているため、ペレット状あるいは塊状のナイロン12から、平均粒径が数μmから数十μmのナイロン12球状粒子粉末をバラツキなく簡便に、そして、再現性良く製造することができる。
本発明の製造方法によって製造されるナイロン12の粉末粒子は、数μmから数十μmの平均粒径を有し、そのバラツキが小さいため、塗料あるいは化粧品の材料として使用ができる。また、ジプロピレングリコールは化粧品基準を満たす溶媒であるため、粒子生成後、過酷な条件における分離作業を行う必要がなく、化粧品としての使用用途が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ジプロピレングリコールにナイロン12のペレット状樹脂を混ぜて得た混合物を、二酸化炭素で置換した撹拌機がついた混合槽内で、190℃にてナイロン12が完全に溶解するまで約80分間撹拌する。ナイロン12のペレット状樹脂は、15重量%以下の濃度にすることが望ましい。得られた均一溶液を冷却した。冷却速度は5℃/分以下の速度が望ましい。この冷却過程でナイロン12が球状粒子に造粒される。この混合物を遠心分離によって溶媒を粗分離後、乾燥してナイロン12球状粒子粉末を得る。ここで造粒とは、溶液から析出させて球状粒子粉末を得ることをいう。
【0012】
このナイロン12粉末は、全て数μmから数十μmの球状粒子であり、かつ、簡便に再現性良く製造できる製造方法である。また、得られた粒子の径にバラツキが小さく、得られた粒子の60%以上、好ましくは70%以上が平均粒径に対して約±15μm、好ましくは約±10μmの粒径を有するものである。
【実施例】
【0013】
以下に本発明の実施例を説明する。しかし、これらの実施例は実施態様を例示する目的のみであり、本発明がこれらに制限されるものではない。
【0014】
[実施例1]造粒溶媒にジプロピレングリコールを用いたナイロン12粉末の製造
ジプロピレングリコールにナイロン12のペレットを5重量%混ぜて得た混合物を、二酸化炭素で置換した撹拌機がついた混合槽内で、190℃にてナイロン12が完全に溶解するまで約80分間撹拌した。得られた均一溶液を5℃/分の速度で冷却した。この冷却過程でナイロン12が球状粒子に造粒された。この混合物を遠心分離によって溶媒を粗分離後、乾燥してナイロン12球状粒子粉末を得た。得られた球状粒子粉末を顕微鏡にて観察したところ20〜30μmの球状粒子が確認された。また得られた球状粒子粉末の粒径とその分布を粒度分布測定器を用いて確認した結果、この球状粒子の平均粒径は30μmであった。このジプロピレングリコールを用いて製造したナイロン12粉末粒度分布測定結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1に示すように、粒子の粒径にバラツキがないことが確認でき、その全体の殆どが30μm〜40μmの大きさであることがわかり、粒径が平均粒径の約±10μmである粒子(約20〜40μm)の割合が、全体の75%以上も占めた。
【0017】
[比較例1]造粒溶媒にプロピレングリコールを用いたナイロン12粉末の製造
プロピレングリコールにナイロン12のペレット状樹脂を5重量%混ぜて得た混合物を、二酸化炭素で置換した撹拌機がついた混合槽内で、190℃にてナイロン12が完全に溶解するまで約30分間撹拌した。得られた均一溶液を5℃/分の速度で冷却した。この冷却過程で全体の約80%が単球状のナイロン12として造粒したが、残りの約20%が塊状となって析出していた。この混合物中の塊状の析出物を取り除き、遠心分離によって溶媒を粗分離後、乾燥してナイロン12球状粒子粉末を得た。得られた球状粒子粉末を顕微鏡にて観察したところ10μm以下の微粒子が大半を占め、他に30〜40μmの球状粒子が確認された。また得られた球状粒子粉末の粒径とその分布を粒度分布測定器を用いて確認した結果、この球状粒子の平均粒径は20μmであった。プロピレングリコールを用いて製造したナイロン12粉末粒度分布測定結果を表2に示す。
【0018】
【表2】

【0019】
表2に示すように、粒径が平均粒径の約±10μmである粒子(約10〜30μm)の割合が40〜45%であり、大きい粒子から微粒子まで広い幅の粒径を有する球状粒子粉末であることが判った。
【0020】
また、実施例1と同様の操作を、溶媒を変えて行った。そして、ナイロン12と溶媒の190℃での溶解性および溶解液を冷却後の造粒性についての結果を表3に示す。
【0021】
【表3】

溶解性 ○:溶解する
×:溶解しない
造粒性 ○:造粒する
△:一部塊、一部造粒
×:造粒しない

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン12とジプロピレングリコールとを混合、加熱し、ナイロン12をジプロピレングリコールに溶解させ均一溶液を生成し、この均一溶液を冷却することによって、ナイロン12の球状粒子を析出させる、ナイロン12球状粒子粉末の製造方法。

【公開番号】特開2006−169373(P2006−169373A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363436(P2004−363436)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(592245535)株式会社メタルカラー (14)
【Fターム(参考)】