説明

ナテグリニドの塩

【課題】 有機酸の塩、特にナテグリニドの塩、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩および、所望により1種またはそれ以上の追加的成分を含んでなる組合せ調製物、ならびに糖尿病、心血管疾患またはそれらに伴う病状を予防または処置するための医薬組成物におけるそれらの使用を提供すること。
【解決手段】 有機酸の塩、特にナテグリニドの塩、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩および、所望により1種またはそれ以上の追加的成分を含んでなる組合せ調製物、ならびに糖尿病、心血管疾患またはそれらに伴う病状を予防または処置するための医薬組成物におけるそれらの使用を見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ナテグリニドの塩、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩および、所望により、1種またはそれ以上の追加的成分を含んでなる組合せ調製物(combined preparation)、ならびに糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状を予防または処置するための医薬組成物におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ナテグリニドとしても知られている、N−(トランス−4−イソプロピルシクロヘキシルカルボニル)−D−フェニルアラニンは、式(I):
【化1】

を有する。
【0003】
ナテグリニドは、米国特許第4,816,484号および欧州特許第0 196 222号において開示されている。ナテグリニドは、いくつかの結晶形、たとえばB型およびH型結晶を有することが知られている。H型結晶およびそれらの製造方法は、米国特許第5,463,116号および欧州特許第EP 0 526 171号に記載されている。ナテグリニドを含有する組成物は、たとえばノバルティス(Novartis)からSTARLIX(登録商標)の商標名で商品として入手可能である。ナテグリニドは、膵臓からのインスリン分泌を刺激することにより血中グルコースレベルを低下させることにおいて治療的有用性を有し、したがって、糖尿病の処置において使用されてきた。
【0004】
しかしながら、水系(aqueous system)におけるナテグリニドの溶解度を改善し、ナテグリニドの吸収を増加させ、そしてガレヌス製剤におけるナテグリニドの安定性を増大させるという要求が残っている。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
本発明は、ナテグリニドの塩、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩および、所望により、1種またはそれ以上の追加的成分を含んでなる組合せ調製物、ならびに糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状を予防または処置するための医薬組成物におけるそれらの使用に関する。特に、本発明は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンおよびリジンからなる群から選択される適当なカチオンを有するナテグリニドのアニオンの塩に関する。
【0006】
1つの態様にしたがって、50〜300℃の範囲の融点を有するナテグリニドの塩が提供される。1つの好適な態様において、本発明のナテグリニドの塩の融点は、150〜300℃の範囲の融点を有する。別の好適な態様において、本発明のナテグリニドの塩は、55〜125℃の範囲の融点を有する。
【0007】
本発明の別の態様において、少なくとも0.18mg/mlの水溶性を有するナテグリニドの塩が提供される。さらに好適な態様において、本発明のナテグリニドの塩は、少なくとも0.4mg/mlの水溶性を有し、そして最も好適な態様において、本発明のナテグリニドの塩は、少なくとも40mg/mlの水溶性を有する。
【0008】
本発明のナテグリニドの塩は、一般に、水中で比較的高い解離度を、したがって、実質的に改善された水溶性を有する。さらに、より高い水溶性は、一定の条件下で、固体投与形態の場合において塩、塩水和物または塩アニオン(salt anion)の生物学的利用能の増大をもたらす。このことは患者にとって有益である。さらに、本発明の塩のいくつか、特にアルカリ土類塩は、非常に物理的に安定であることが証明された。室温、およびまたやや高温での異なる相対湿度に関して、本発明の塩(塩水和物を含む)は、カリウムおよびカルシウム塩を除いて、広範囲の湿度で、数時間、たとえば4時間、水の吸着または水の喪失を示さない。また、たとえば、本発明の塩の融点は、吸湿性または中程度に吸湿性である塩の融点を除いて、異なる相対湿度下での貯蔵により変化しない。
【0009】
本発明の別の態様は、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩を含んでなる組成物に関する。好適な態様において、かかる組成物は、組合せ調製物または医薬組成物である。さらに好適には、かかる医薬組成物は、糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状を処置するためのものである。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状の処置用薬物の製造のための、本発明のナテグリニドの塩の使用に関する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状の処置方法であって、かかる処置を必要としている哺乳類への、有効量の本発明のナテグリニドの塩、またはそれを含む組合せ剤または医薬組成物の投与を含んでなる方法に関する。
【0012】
本明細書において使用されるように、「ナテグリニドの塩を含む組合せ剤」および「ナテグリニドの塩を含む医薬組成物」なる用語は、1より多いナテグリニドの塩、たとえば2つの異なるナテグリニドの塩を含有する組合せ剤または医薬組成物を含むことを意味する。
【0013】
さらに、本発明は、ナテグリニドの溶液を適当な塩基性反応剤(base reactant)で処理することによる、ナテグリニドの塩の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明の態様は、適当な溶媒中での、ナテグリニドのナトリウムまたはカリウム塩の溶液への、カルシウムの塩またはマグネシウムの塩の溶液の添加を含んでなるナテグリニドの塩の製造方法に関する。
【0015】
発明の詳細な記載
本発明のナテグリニドの塩を製造する反応において使用される、いわゆるナテグリニドのH型は、示差熱分析(DTA)により測定されるように140℃の融点を有し、そして、当業者に既知の方法にしたがって製造され得、これらはまた、過去に、たとえばEP 0 526 171において開示された。
【0016】
本発明のナテグリニドの塩としては、結晶、半結晶、およびアモルファスのナテグリニドの塩が挙げられる。本明細書において使用されるように、「半結晶(semi-crystalline)」なる用語は、さまざまな比率の本発明のナテグリニドの塩のアモルファスおよび結晶部分をそれぞれ明示的に含む。医薬上許容される溶媒から形成された溶媒和物、たとえば水和物、およびナテグリニド塩の多形も、本明細書において使用される「ナテグリニドの塩(salt of nateglinide)」または「ナテグリニドの塩(salts of nateglinide)」なる用語の範囲内である。ナテグリニド塩の溶媒和物およびとりわけ水和物は、それぞれ、たとえば、ヘミ−、モノ−、セスキ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−溶媒和物または水和物として存在し得る。結晶化のために使用された溶媒、たとえばアルコール、とりわけエタノール、ケトン、とりわけアセトン、エステル、たとえば酢酸エチルが結晶格子に組み込まれてもよい。
【0017】
本発明の1つの実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのナトリウム塩である。当該ナトリウム塩は、4つの異なる水和物形態、すなわちヘミ水和物、水和物、セスキ水和物および三水和物の形態で製造される。これらの形態はすべて結晶である。当該ナトリウム塩は、それらの水溶性を考慮すると非常に有利である。ナテグリニドのナトリウム塩の水溶性は、40mg/mlを超える。このことは、特に、所望のプロフィールの効果または作用を有する製剤を確立するために、ナテグリニドおよび1種またはそれ以上の異なる溶解度を有するその塩の組合せ剤を含有する組合せ調製物または医薬組成物において、該物質のより大きいそしてより速いバイオアベイラビリティーを提供し得る。
【0018】
本発明の別の実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのカリウム塩である。4つの異なる塩の形態、すなわち1つの無水和物形態および3つの水和物形態のナテグリニドのカリウム塩が製造され、そして特徴づけられている。1つの水和物形態は、非常に吸湿性であり、そして84%の相対湿度の雰囲気において二水和物を形成する。本発明のカリウム塩は、また、40mg/mlを超えるそれらの高い水溶性ゆえに非常に有利である。
【0019】
本発明の別の実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのカルシウム塩である。本発明者らは、ナテグリニドのカルシウム塩の2つの多型性水和物形態を製造し、これらの1つはやや吸湿性であるが、他の方は全く吸湿性でない。カルシウム塩の容積密度は、たとえばナトリウム塩より高く、それゆえ改善されている。ナテグリニドのカルシウム塩の水溶性は、ナテグリニドの遊離酸のそれよりもずっと高い。
【0020】
ナテグリニドのマグネシウム塩も製造された。製造された塩は、そのカルシウムアナログと比べて、有利なバルク密度および水溶性を有する非吸湿性一水和物として結晶化する。
【0021】
本発明のさらに別の実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのアンモニウム塩である。この塩は、さまざまな無水物形態へと結晶化する。
【0022】
本発明のさらなる実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのN−メチル−D−グルカミン塩である。ナテグリニドのN−メチル−D−グルカミン塩は、ナテグリニドのアルカリ金属塩に匹敵するバルク密度を有する、非吸湿性、無水物の物質である。この塩の水溶性は、ナテグリニドのアルカリ金属塩の水溶性よりも低いが、それでも、ナテグリニドのアルカリ土類金属塩の水溶性よりも群を抜いて高い。
【0023】
本発明のさらに別の実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンの塩である。この塩は、明確な桿状体(rod)として存在する。しかしながら、この塩がヘミ水和物であるのかまたは二水和物であるのかについては現在のところ明らかではない。脱水により、この塩はアモルファスになった。
【0024】
驚くべきことに、この塩のバルク密度も比較的高い。それは、ナテグリニドのリジン塩のバルク密度とほとんど同じであり、したがって、たとえば遊離酸のバルク密度よりもかなりの改善を提供する。ナテグリニドのトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンの塩は、また、40mg/mlを超える高い水溶性を有する。
【0025】
本発明のさらに別の実施態様において、ナテグリニドの塩は、ナテグリニドのリジン塩である。この塩の3つの異なる形態、すなわち、1つの無水和物形態、セスキ水和物形態および二水和物形態が製造された。セスキ水和物は中程度に吸湿性であることが判明した。さらに、ナテグリニドのリジン塩のバルク密度が、遊離酸および本明細書において前記した他のナテグリニドの塩のバルク密度と比べて顕著に改善されていることを見いだしたことは、全く予期せぬことであった。そのリジン塩の水溶性は、ナテグリニドのN−メチル−D−グルカミン塩の水溶性に匹敵し、したがって、遊離酸の水溶性よりもかなり高い。
【0026】
ナテグリニドの塩は、ナテグリニドが周囲温度で溶解する溶媒中でナテグリニドの溶液を形成させることにより、そして同じまたは異なる溶媒中で塩基性反応剤の溶液を添加することにより製造される。所望により、溶液の冷却、または、別の溶媒、たとえば得られるナテグリニドの塩に関してより低い溶解性を有する溶媒の添加により、ナテグリニドの塩の沈澱が促進され得る。次いで、沈澱したナテグリニドの塩を、たとえば濾過により単離し、そして乾燥する。
【0027】
溶媒、好ましくは医薬上許容される溶媒の例は、アセトニトリル、エステル、たとえば酢酸メチル、酢酸エチルおよび水、ならびにトルエンなどである。アセトニトリルおよび酢酸エチルが特に有効である。好適な混合溶媒としては、極性溶媒、たとえばアセトニトリル、アセトンおよび低級アルコール、たとえばエタノールおよびイソプロパノールと水との混合物が挙げられる。周囲温度、すなわち溶解の温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点付近、そしてさらに好ましくは室温から80℃の範囲である。溶媒中のナテグリニドの量は、好ましくは、得られる混合物の1〜50重量%の範囲である。他方、それは、1重量%未満のナテグリニドを使用することは、必要とされる溶媒の量の点で効率的ではない。製造されたナテグリニド塩の溶液が冷却されて、所望のナテグリニドの結晶形態の沈澱を誘導または促進することができる低温の範囲は、好ましくは室温から約−15℃、およびさらに好ましくは約5〜約0℃である。さらに結晶化を促進するために、溶液に種晶(seed crystal)を添加することも有益であり得る。次いで、得られる混合物は、当該低温で、ナテグリニドの塩の所望の形態の完全な沈澱形成を保証するのに十分な時間維持され得る。
【0028】
本発明の1つの実施態様において、カルシウムまたはマグネシウム塩は、それぞれ、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムの溶液の添加により、ナテグリニドのナトリウム塩の溶液から沈澱する。
【0029】
結晶塩の形状に関して、得られるナテグリニドの塩のより高いバルク密度をもたらす形状が一般に好適である。かくして、桿状は、たとえば針状よりも好ましい。というのは、針状体は桿状体よりも低いバルク密度を有することが決定されたからである。
【0030】
本発明のナテグリニドの塩は、好ましくは本質的に純粋な形態、たとえば>95%、さらに好ましくは>98%、最も好ましくは>99%の純度で存在する。
【0031】
本発明のナテグリニドの塩は、好ましくは、追加的成分を含んでなる組合せ調製物または医薬組成物の形態で投与される。追加的成分としては、天然および/または人工成分が挙げられ、これらは、通常、医薬組成物を製造するために使用されるものである。かかる成分は、当業者に既知である。好ましくは、追加的成分は、本発明の組成物において、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)、環境保護庁(Environmental Protection Agency)、米国農務省(United States Department of Agriculture)または他の同様の規制当局により安全かつ有効として一般に認められた量に相当する量で使用される。規制当局の認可が得られていない追加的成分に関しては、当分野において安全かつ有効と一般に受け入れられている量が好適である。
【0032】
さらに、1種またはそれ以上の本発明のナテグリニドの塩は、1種またはそれ以上の追加的な医薬活性物質を含んでなる、本明細書において前記した組合せ調製物または医薬組成物の形態で投与される。
【0033】
特に好適な実施態様において、追加的な医薬活性物質は、抗糖尿病薬である。この成分がインスリン分泌促進剤(insulin secretion enhancer)またはインスリン増感剤(insulin sensitizer)であることは、さらに好適である。別の実施態様において、少なくとも1つのさらなる活性成分は、非糖尿病状態の処置において使用される物質からなる群から選択される。
【0034】
別の特に好適な実施態様において、追加的医薬活性物質は、レニンインヒビター、ACEインヒビターまたはアンギオテンシンIIインヒビターであり、後者は、また、AT−レセプターアンタゴニストとも命名される。
【0035】
「抗糖尿病」なる用語は、一般に、1型および2型糖尿病の処置において使用される通常の技量を有するものに既知の化合物、物質および組成物を含んでなる。この用語は、特に、インスリン分泌促進剤およびインスリン増感剤、ならびにジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)アンタゴニストを含んでなる。
【0036】
インスリン分泌促進剤は、膵臓β細胞からのインスリン分泌を促進する特性を有する薬理活性化合物である。インスリン分泌促進剤の例としては、ナテグリニド、レパグリニド(repaglinide)、グルカゴンレセプターアンタゴニスト、スルホニルウレア誘導体、インクレチンホルモン、とりわけグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)またはGLP−1アゴニスト、β細胞イミダゾリンレセプターアンタゴニスト、およびT. Pageらにより、Br. J. Pharmacol. 1997, 122, 1464-1468.において記載されたBTS 67582が挙げられる。
【0037】
レパグリニドは、たとえばNovoNorm(商標)の商標で市販されている形態で投与され得る。
【0038】
本明細書で使用されている「グルカゴンレセプターアンタゴニスト」の語は、特に、国際公開第WO 98/04528号に記載された化合物、とりわけBAY27−9955、およびBioorg Med. Chem. Lett 1992, 2, 915-918に開示されたもの、とりわけCP−99,711、J. Med. Chem. 1998, 41, 5150-5157に開示されたもの、とりわけNNC 92−1687、およびJ. Biol Chem.1999, 274;8694-8697に開示されたもの、とりわけL−168,049および米国特許第5,880,139号、国際公開第WO 99/01423号、米国特許第5,776,954号、国際公開第WO 98/22109号、国際公開第WO 98/22108号、国際公開第WO 98/21957号および国際公開第WO 97/16442号に開示された化合物に関する。
【0039】
スルホニルウレア誘導体は、たとえば、グリソキセピド(glisoxepid)、グリブリド(glyburide)、グリベンクラミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリボンウリド(glibornuride)、トルブタミド、トラザミド、グリピジド、カルブタミド(carbutamide)、グリキドン(gliquidone)、グリヘキサミド(glyhexamide)、フェンブタミド(phenbutamide)またはトルシクラミド(tolcyclamide);および好ましくは、グリメピリドまたはグリクラジドである。トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリボンウリド、グリキドン、グリソキセピドおよびグリメピリドは、たとえば、それぞれ、RASTINON HOECHST(商標)、AZUGLUCON(商標)、DIAMICRON(商標)、GLUBORID(商標)、GLURENORM(商標)、PRO−DIABAN(商標)AMARYL(商標)の商標で市販されている形態で投与され得る。
【0040】
GLP−1は、たとえば W.E. Schmidtらにより、Diabetologia 28, 1985, 704-707において、および米国特許第5,705,483号に記載されたインシュリン分泌性のタンパク質である。本明細書で用いられる「GLP−1アゴニスト」なる用語は、特に米国特許第5,120,712号、米国特許第5,118,666号、米国特許第5,512,549号、国際公開第WO 91/11457号およびC. OrskovらによりJ. Biol. Chem. 264(1989)12826において開示されたGLP−1(7−36)NHのバリアントおよびアナログを意味する。
【0041】
「GLP−1アゴニスト」なる用語には、とりわけ、化合物中、Arg36のカルボキシ末端アミド官能基が、GLP−1(7−36)NH分子の37位でGlyに置換されたGLP−1(7−37)様の化合物、およびそのバリアントおよびアナログ(GLN−GLP−1(7−37)、D−GLN−GLP−1(7−37)、アセチルLYS−GLP−1(7−37)、LYS18−GLP−1(7−37)、および特にGLP−1(7−37)OH、VAL−GLP−1(7−37)、GLY−GLP−1(7−37)、THR−GLP−1(7−37)、MET−GLP−1(7−37)および4−イミダゾプロピオニル−GLP−1を含む)が含まれる。特に好ましくは、グレイグら(Greig et al)によりDiabetologia 1999, 42, 45-50において記載されたGLPアゴニストアナログであるエキセンジン−4(exendin-4)もまた挙げられる。
【0042】
本明細書において使用される「β細胞イミダゾリンレセプターアンタゴニスト」なる用語は、国際公開第WO 00/78726号およびワンら(Wang et al)によりJ. Pharmacol. Exp. Ther. 1996; 278; 82-89において記載された化合物、たとえばPMS 812を意味する。
【0043】
本明細書において使用される「インスリン増感剤」なる用語は、インスリンに対する組織感受性を増大させる任意かつすべての薬理活性化合物を意味する。インスリン感受性エンハンサーとしては、たとえば、GSK−3のインヒビター、レチノイドXレセプター(RXR)アゴニスト、ベータ−3 ARのアゴニスト、UCPのアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン型PPARγアゴニスト、デュアルPPARγ/PPARαアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアニド、たとえばメトホルミンが挙げられる。
【0044】
インスリン感受性エンハンサーは、好ましくは、抗糖尿病性チアゾリジンジオン、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびメトホルミンよりなる群から選択される。
【0045】
「GSK−3のインヒビター」の例としては、国際公開第WO 00/21927号および国際公開第WO 97/41854号において開示されたものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
「RXRアゴニスト」は、RXRホモ二量体またはヘテロ二量体と組み合わせた場合に、RXRの転写調節活性を増大させる化合物または組成物を意味する。この活性は、米国特許第4,981,784、5,071,773、5,298,429、5,506,102号、国際公開第WO 89/05355号、国際公開第WO 91/06677号、国際公開第WO 92/05447号、国際公開第WO 93/11235号、国際公開第WO 95/18380号、PCT/US93/04399、PCT/US94/03795、CA 2,034,220(これらを、出典明示により本明細書の一部とする。)に記載または開示された「共トランスフェクション」または「シス−トランス」アッセイを含むが、これらに限定されるわけではない、当業者に既知のアッセイにより測定される。これは、RARよりもRXRを優先的に活性化する化合物(すなわち、RXR特異的アゴニスト)、ならびにRXRおよびRARの両者を活性化する化合物(すなわち、汎アゴニスト)を含むが、これらに限定されるわけではない。これは、また、ある種の細胞内容でのみRXRを活性化する化合物(すなわち、部分的アゴニスト)を含む。
【0047】
下記の文献、特許、特許出願に開示または記載された、RXRアゴニスト活性を有する化合物を、出典明示により本明細書に組み込む:米国特許第5,399,586および5,466,861号、国際公開第WO 96/05165号、PCT/US95/16842、PCT/US95/16695、PCT/US93/10094、国際公開第WO 94/15901号、PCT/US92/11214、国際公開第WO 93/11755号、PCT/US93/10166、PCT/US93/10204、国際公開第WO 94/15902号、PCT/US93/03944、国際公開第WO 93/21146号、仮出願 60,004,897および60,009,884、Boehm, et al. J. Med. Chem. 38(16): 3146-3155, 1994, Boehm, et al. J. Med. Chem. 37(18): 2930-2941, 1994, Antras et al., J. Biol. Chem. 266: 1157-1161 (1991), Salazar-Olivo et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 204: 157-263 (1994)およびSafanova, Mol. Cell. Endocrin. 104: 201-211 (1994)。RXR特異的アゴニストは、LG 100268(すなわち、2−[1−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−シクロプロピル]−ピリジン−5−カルボン酸)、LGD 1069(すなわち、4−[(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−2−カルボニル]−安息香酸)、およびそれらのアナログ、誘導体、医薬上許容される塩を含むが、これらに限定されるわけではない。LG 100268およびLGD 1069の構造および合成は、Boehm, et al. J. Med. Chem. 38(16): 3146-3155, 1994 (この文献を、出典明示により本明細書の一部とする。)において開示されている。汎アゴニストは、ALRT 1057(すなわち、9−cis レチノン酸)およびそのアナログ、誘導体、医薬上許容される塩を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
「ベータ−3 ARのアゴニスト」の例としては、CL−316,243(Lederle Laboratories)、ならびに国際公開第WO 99/29672号、国際公開第WO 98/32753号、国際公開第WO 98/20005号、国際公開第WO 98/09625号、国際公開第WO 97/46556号、国際公開第WO 97/37646号および米国特許第5,705,515号において開示されたものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
本明細書において使用される「UCPのアゴニスト」なる語は、UCP−1、好ましくはUCP−2およびいっそうさらに好ましくはUCP−3のアゴニストを意味する。UCPは、Vidal-Puig et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol. 235(1) pp. 79-82 (1997) において開示されている。かかるアゴニストは、UCPの活性を増大させる化合物または組成物である。
【0050】
抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)は、たとえば、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン(englitazone))、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン(darglitazone))、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン(ciglitazone))、5−{[4−(2−(1−インドリル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF2189)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637)、ビス{4−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)−メチル]フェニル}メタン(YM268)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]−ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(AD−5075)、5−[4−(1−フェニル−1−シクロプロパンカルボニルアミノ)−ベンジル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(DN−108)、5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニル−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロ−フェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−(4−フルオロフェニル−スルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン(rosiglitazone))、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン(pioglitazone))、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン(troglitazone))、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555)、5−{[2−(2−ナフチル)−ベンゾキサゾール−5−イル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(T−174)および5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297)である。
【0051】
さらに好ましくは、チアゾリジンジオンは、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン)、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン)および5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン)、MCC555、T−174およびKRP297、とりわけロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよびトログリタゾン、または医薬上許容されるそれらの塩からなる群から選択される。
【0052】
グリタゾン 5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン、EP 0 193 256 A1)、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン、EP 0 306 228 A1)、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン、EP 0 139 421)、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン、EP 0 207 605 B1)、5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297、JP 10087641−A)、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555、EP 0 604 983 B1)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン、EP 0 332 332)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637、US 4,997,948)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン、US 4,287,200)は、それぞれの場合において、各物質についてカッコ内に示した文献において、特に、それぞれの場合において、化合物クレームおよび作業実施例の最終生成物において包括的かつ具体的に開示されており、最終生成物、医薬調製物およびクレームの内容を、これらの文献の出典明示により本願の一部とする。DRF2189および5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオンの製造は、B.B. Lohray et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 1619-1630;1627および1628頁の実施例2dおよび3gに記載されている。5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン、および本明細書において記載したAがフェニルエチニルである他の化合物の製造は、J. Wrobel et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 1084-1091.において記載された方法にしたがって行われ得る。
【0053】
特に、MCC555は、EP 0 604 983 B1の49頁、30〜45行に開示されたように製剤化され得;エングリタゾンは、EP 0 207 605 B1の6頁52行から7頁6行に開示されたように、あるいは24頁の実施例27または28と同様に製剤化され得;そしてダルグリタゾンおよび5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)は、EP 0 332 332 B1の8頁42〜54行に開示されたように製剤化され得る。AY−31637は、US 4,997,948の第4欄、32〜51行に開示されたように投与され得、そしてロシグリタゾンは、EP 0 306 228 A1の9頁の32〜40行に開示されたように投与され得、後者は、好ましくはそのマレイン酸塩として投与される。ロシグリタゾンは、たとえばAVANDIA(商標)の商標で市販されている形態で投与され得る。トログリタゾンは、たとえばReZulin(商標)、PRELAY(商標)、ROMOZIN(商標)(英国内)またはNOSCAL(商標)(日本国内)の商標で市販されている形態で投与され得る。ピオグリタゾンは、EP 0 193 256 A1の実施例2において開示されているように、好ましくはモノ塩酸塩の形態で投与され得る。個々の患者の要求に対応して、たとえばACTOS(商標)の商標で市販されている形態のピオグリタゾンを投与することも可能であり得る。シグリタゾンは、たとえば、US 4,287,200の実施例13において開示されたように製剤化され得る。
【0054】
非グリタゾン型PPARγアゴニストは、とりわけN−(2−ベンゾイルフェニル)−L−チロシンアナログ、たとえばGI−262570、およびJTT501である。
【0055】
本明細書において使用される「デュアルPPARγ/PPARαアゴニスト」なる用語は、同時にPPARγおよびPPARαアゴニストである化合物を意味する。好適なデュアルPPARγ/PPARαアゴニストは、とりわけω−[(オキソキナゾリニルアルコキシ)フェニル]アルカノエートおよびそれらのアナログであるか、またはさらにとりわけ国際公開第WO 99/20614号において記載された式(II):
【化2】

で示される化合物、および、フクイ(Fukui)によりDiabetes 2000, 49(5), 759-767において記載された化合物NC−2100である。
【0056】
好ましくは、「抗糖尿病性バナジウム含有化合物」は、二座配位モノプロトンキレート体(chelant)の生理学的に認容されるバナジウム錯体であり、当該キレート体は、α−ヒドロキシピロンまたはα−ヒドロキシピリジノン、とりわけ米国特許第5,866,563号(その作業実施例を、出典明示により本明細書の一部とする。)の実施例において開示されたもの、または医薬上許容されるそれらの塩である。
【0057】
さらに好適な実施態様において、インスリン増感剤はメトホルミンである。
【0058】
メトホルミン(ジメチルジグアニド)およびその塩酸塩の製造は、従来技術であり、そして、Emil A. Werner and James Bell, J. Chem. Soc. 121, 1922, 1790-1794により最初に開示された。メトホルミンは、たとえばGLUCOPHAGE(商標)の商標で市販されている形態で投与され得る。メトホルミンは、遊離の形態または医薬上許容される塩の形態で存在し得、そして対応する立体異性体ならびに対応する結晶変形(crystal modification)、たとえば溶媒和物および結晶多形を含む。好ましくは、メトホルミンは塩酸メトホルミンである。
【0059】
「ジペプチジルペプチダーゼIVアンタゴニスト」または「DPP IVアンタゴニスト」なる用語は、国際公開第WO 97/40832号において定義されそして具体的に命名された酵素ジペプチジルペプチダーゼIVのすべての活性を減少させるエフェクター、たとえばイソロイシル−チアゾリジド(thiazolidid)、およびまた、下記の式(III)および(IV):
【化3】

で示される化合物またはこれらの化合物の医薬上許容される塩、特に式(IV)の化合物のジ塩酸塩を含む。式(III)の化合物およびその製造は、国際公開第WO 00/34241号において記載されているが、式(IV)の化合物、そのジ塩酸塩およびその製造は、国際公開第WO 98/19998号において記載されている。これらの文献の内容を、出典明示により本明細書の一部とする。
【0060】
本発明において好適に使用されるレニンインヒビターは、式(V):
【化4】

で示される化合物または医薬上許容されるその塩である。2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドと化学的に定義される式(I)のレニンインヒビターは、EP 678503 Aにおいて具体的に開示されている。そのヘミフマル酸塩が特に好適である。
【0061】
ACEインヒビターのクラスには、異なる構造的特徴を有する化合物が含まれる。たとえば、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル(ceronapril)、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート(enaprilat)、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル(moveltopril)、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル(spirapril)、テモカプリル、およびトランドラプリル、または、それぞれの場合において、医薬上許容されるそれらの塩からなる群から選択される化合物を言及し得る。
【0062】
好適なACEインヒビターは、市販されている薬剤であり、ベナゼプリルおよびエナラプリルが最も好適である。
【0063】
AT−レセプターアンタゴニスト(アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニストまたはアンギオテンシンインヒビターとも呼ばれる)は、アンギオテンシンIIレセプターのAT−レセプターサブタイプに結合するが、当該レセプターの活性化をもたらさない活性成分であると理解される。AT−レセプターの阻害と結果として、これらのアンタゴニストは、たとえば抗高血圧薬として使用されるか、または、鬱血性心不全を処置するために使用され得る。
【0064】
ATレセプターアンタゴニストのクラスには、異なる構造的特徴を有する化合物が含まれ、非ペプチド性の化合物が本質的に好適である。たとえば、バルサルタン(EP 443983と比較せよ)、ロサルタン(EP253310と比較せよ)、カンデサルタン(459136と比較せよ)、エプロサルタン(EP 403159と比較せよ)、イルベサルタン(EP454511と比較せよ)、オルメサルタン(EP 503785と比較せよ)、タソサルタン(EP539086と比較せよ)、テルミサルタン(EP 522314と比較せよ)、下記の式(VI):
【化5】

で示されるE−1477なる名称を有する化合物、下記の式(VII):
【化6】

で示されるSC−52458なる名称を有する化合物、および下記の式(VIII):
【化7】

で示されるZD−8731なる名称を有する化合物、
またはそれぞれの場合において、医薬上許容されるそれらの塩からなる群から選択される化合物を言及し得る。
【0065】
好適なAT−レセプターアンタゴニストは、市販されている薬剤であり、バルサルタンまたは医薬上許容されるその塩が最も好適である。
【0066】
同時的、個別的または逐次的に使用するための、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩および少なくとも1種の他の成分および所望により少なくとも1種、すなわち、1種またはそれ以上、たとえば2種の、医薬上許容される担体を含んでなる医薬調製物は、とりわけナテグリニドの塩またはナテグリニドの塩の組合せおよび1種またはそれ以上のさらなる医薬活性成分が、独立して投与され得る、あるいは異なる時点または同時的に個別量の成分を含む異なる所定の組合せ剤の使用により投与され得るという意味で「パーツのキット(kit of parts)」である。そして「パーツのキット」のパーツは、たとえば、同時的に、または時間をずらして、つまり「パーツのキット」のいずれかのパーツについて異なる時点で、等しいまたは異なる時間間隔で投与され得る。好ましくは、この時間間隔は、各パーツの組合せ使用において処置される疾患または病状に対する効果がこれらの成分のいずれか1つのみを用いる場合に得られる効果よりも大きくなるように選択される。好ましくは、少なくとも1つの有利な効果、たとえばナテグリニドの1種またはそれ以上の塩および少なくとも1つのさらなる医薬活性成分の効果の相互増強、付加的な有利な効果、副作用の減少、別の方法、たとえば単剤療法においては非有効用量の1つまたはそれぞれの成分の併用治療効果、とりわけ当該物質と、組合せに関して本明細書において開示した化合物との間の相乗効果、たとえば相加効果を超える効果が存在する。
【0067】
本発明は、また、同時的、個別的または逐次的使用のための指示書とともに、所望により1種またはそれ以上の異なるナテグリニドの塩または本明細書において前記した他の化合物もしくは物質と組み合わせて、本発明のナテグリニドの塩を含んでなる市販用パッケージ(commercial package)に関する。
【0068】
本発明にしたがって、1種またはそれ以上のナテグリニドの塩および、所望により、ナテグリニド、レパグリニド、メトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン誘導体、またはそれぞれの場合において、医薬上許容されるそれらの塩、または組合せ剤のために本明細書において前記した他の化合物の少なくとも1つを含んでなる群から選択される、少なくとも1種またはそれ以上の医薬活性成分の組合せ剤が本明細書において前記した疾患および病状のさらに有効な処置をもたらすことが、確立された試験モデル、およびとりわけ本明細書において記載した試験モデルにより示され得る。
【0069】
組合せ処置に由来するさらなる利点は、驚くべき効果の延長、治療効果の多様化、および副作用の減少である。
【0070】
また、ヒト患者に関して、2つの錠剤を同時に、たとえば食前に服用することを思い出すことは、時間をずらして、すなわちさらに複雑な処置スケジュールにしたがうことよりも簡便および容易である。さらに好ましくは、活性成分は、本明細書において記載したすべての場合において、固定された組合せ剤として、すなわち単一の錠剤として投与される。単一の錠剤を服用することは、2個またはそれ以上の錠剤を同時に服用することよりも処置がさらに容易である。さらに、パッケージングを、より少ない労力で達成し得る。
【0071】
このことは、一般に、単独で投与される場合の当該成分の投与量に比べて、比較的少量の少なくとも1つのさらなる活性成分を有する医薬組成物の投与を可能にする。それにもかかわらず、効果をかなり促進するために、成分が単独で投与される量で、少なくとも1つの医薬活性成分を用いることが望ましいこともあり得る。
【0072】
しかしながら、一般に、可能な限り少量の、すなわち1種またはそれ以上のナテグリニドの塩と組み合わせて、所望の治療効果を引き出す量の、少なくとも1つの追加的医薬活性成分を使用することが好適である。このことは、当該少なくとも1つのさらなる活性成分のあり得る副作用を最小に、したがって、少なくともさらに許容される範囲に維持するという利点をもたらす。他方、当該少なくとも1つのさらなる活性成分の効力を増大させ、そしてそれにより、処置の成功に必要な期間を短縮することも可能である。
【0073】
当業者は、本明細書において前記および後記した治療適応および有利な効果を証明するために、適当な動物試験モデルを選択することが十分に可能である。薬理活性は、たとえば、後記のようなマウスまたは臨床試験におけるインビボ試験手順に本質的にしたがって実証され得る。
【0074】
血中グルコース制御についてのマウスにおけるインビボ試験
ICR−CDIマウス(雌性、5週齢、体重:約20g)を18時間絶食させ、次いで試験対象として使用する。本発明の組成物、たとえば組合せ調製物または医薬組成物を、0.5%CMC−0.14M塩化ナトリウムバッファー溶液(pH7.4)中に懸濁させるか、または0.5重量パーセントで懸濁させる。かくして得られた溶液または懸濁液を、固定された用量で、試験対象に経口投与する。予め決めた時間の後、コントロール群に対する血中グルコースの減少のパーセンテージを測定する。
【0075】
HbA1cについてのインビボ試験
たとえば、血液試料を採取するために、以下の手順にしたがい得る:対象に、試験医薬の朝の用量を服用せず、そして予定された試験訪問日に朝食を摂らないように知らせる。朝の用量を、すべての空腹時検査試料の収集およびすべての試験手順の完了後に、現場の職員(site personnel)により投与する。訪問は、期間I(Period I)の間は2週間の間隔、そして期間II(Period II)の間は4〜8週間の間隔で行われるように計画される。対象を、それぞれの訪問時に少なくとも7時間絶食させた。検査評価のためのすべての血液試料を、午前7:00〜午前10:00の間に採取する。すべての試験を、当分野において既知の手順にしたがうGLP(Good Laboratory Practice)の指針にしたがって行う。
【0076】
HbA1cを、Bio−Rad Diamatアナライザーでのイオン交換法を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。ヘモグロビンバリアントまたはヘモグロビン分解ピークが観察される場合、バックアップアフィニティー法(back-up affinity method)が使用される。
測定されるべきさらなるパラメーターは、空腹時血漿グルコース(FPG)、空腹時脂質(総合、HDL(高密度リポプロテイン)−およびLDL(低密度リポプロテイン)−コレステロール、およびトリグリセライド)ならびに体重である。FPGはヘキソキナーゼ法を用いて測定され、そしてLDL−コレステロールは、トリグリセライドが<400mg/dL(4.5mmol/l)である場合に、フリーデバルド(Friedewald)式を用いて計算される。
【0077】
ヘマトクリットおよびヘモグロビン、血小板数、赤血球数、総および差白血球数(好塩基球、好酸球、リンパ球、単球、分節核球および総好中球);アルブミン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)、血中尿素窒素または尿素、重炭酸塩、カルシウム、塩素、総クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、クレアチンホスホキナーゼ筋−脳フラクションイソ酵素(CPKが上昇している場合)、直接ビリルビン、クレアチニン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カリウム、ナトリウム、総ビリルビン、総タンパク質および血中尿酸;およびビリルビン、グルコース、ケトン、pH、タンパク質、および対象の尿の比重を、検査分析により測定する。さらに、体重、血圧(収縮期および拡張期、着席3分後)および橈骨動脈拍動(着席3分後)を訪問中に測定する。
【0078】
これらの結果は、明らかに、本発明のナテグリニドの塩が代謝障害、および特に、糖尿病、心血管障害、またはそれらに伴う病状の処置に使用され得ることを示す。
【0079】
1種またはそれ以上のナテグリニドの塩、ならびに、所望により、ナテグリニド、レパグリニド、メトホルミン、スルホニルウレア、およびチアゾリジンジオンを含んでなる群から選択される少なくとも1つのさらなる医薬活性成分の投与は、本明細書において開示された組合せ剤において使用される医薬活性化合物の1種のみを適用する単剤療法と比べて、とりわけ2型糖尿病に対する、有利かつ相加以上の、とりわけ相乗または増強的治療効果を、そしてまた、驚くべき薬物の効果の延長、治療的処置の多様化、追加的な利点、たとえば患者における良好な初期血中グルコース制御、空腹時血漿グルコースレベルの中程度の変化、およびたとえば体重減少、胃腸管の副作用の減少または改善された安全性プロフィールを含むさらなる驚くべき有利な効果の提供をもたらす。特に、さらなる驚くべき有利な効果は、糖尿病、心血管疾患の処置の間およびそれらに伴う病状の処置の間に観察され得る。さらなる利点は、本発明にしたがって組み合わせられるべき個々の薬物のより少ない用量(たとえば、当該用量は、少量ですむことが多いだけでなく、適用頻度も少なくてすむこと、または副作用(たとえば貧血、浮腫、頭痛)の発生を減らし得る)が、用量を減らすために使用され得る。
【0080】
さらに、本明細書において開示された数多くの組合せ剤において、成分の1つで観察された副作用が組合せ剤の適用で蓄積しない。
【0081】
有利な治療効果、追加的効果およびとりわけ驚くべき有利な効果は、特にナテグリニドで観察される。非常によい結果が、ナテグリニドの塩およびメトホルミンまたは塩酸メトホルミンの組合せで得られた。
【0082】
上記の試験モデルを用いて、糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状に関する独創的な(inventive)組合せ調製物または医薬組成物の適用を評価することもできる。
【0083】
さらなる剤は、当分野において周知の、本明細書において前記した組合せ調製物または医薬組成物の形成において使用され得る。
【0084】
本発明の医薬組成物における追加的成分の総量は、好ましくは組成物の総重量に基づいて、約30〜約75重量パーセントである。さらに好ましくは、追加的成分の総量は、医薬組成物の総重量に基づいて、約50〜約70重量パーセント、最も好ましくは約53〜約67重量パーセントである。
【0085】
本発明の医薬組成物は、散剤、顆粒剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、カプセル剤、サシェ剤、錠剤およびそれらの組合せであり得る。組成物は、好ましくは食事の約1〜約60分前に投与される。さらに好ましくは、組成物は、食事の約1〜約30分前に投与される。最も好ましくは、組成物は、食事の約1〜約5分前に投与される。
【0086】
本発明の組成物の有効な投与単位は、ナテグリニド塩の濃度、投与様式、処置される病状および処置される病状の重度に依存して変動し得る。好適な投与単位は、それぞれ、40、60、120および180mgのナテグリニドの遊離酸に相当するナテグリニドの塩の量を含有する。
【0087】
さらに、さまざまな要因、たとえば人種、年齢、体重および性別が処置される患者に特異的なものである。本発明の好適な実施態様において、組成物は、約50〜約1200mg/日、さらに好ましくは約90〜約540mg/日の範囲の、ナテグリニドの遊離酸に相当する用量で、成人患者に投与される。
【0088】
本発明の1つの実施態様において、少なくとも1つの本発明のナテグリニドの塩を含んでなる医薬組成物は、水の存在下で造粒して顆粒を形成させ、顆粒を乾燥させ、そして所望により、顆粒を、たとえばワイヤーメッシュのふるいにかけることを含む方法により製造される。組成物のすべての成分を、造粒前または造粒中に添加してもよい。あるいは、1種またはそれ以上の成分の全部または一部は、造粒工程の終了後に添加されてもよい。たとえば、抗付着剤(たとえば、シリカ)の全部または一部、滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム)の全部または一部、および/または崩壊剤(たとえば、クロスカルメロースまたは任意のその塩)の全部または一部を、造粒後に添加してもよい。
【0089】
本発明の医薬組成物は、糖尿病、とりわけ2型糖尿病、心血管疾患およびそれらに伴う病状を予防または処置するために使用され得る。明細書全体および特許請求の範囲を通して使用されているように、「心血管疾患およびそれに伴う病状」なる用語は、高血糖、高インスリン血症、高脂血症、インスリン抵抗症(insulin resistance)、グルコース代謝障害、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、糖尿病性ニューロパシー、勃起障害、月経前症候群、血管再狭窄、潰瘍性大腸炎、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、皮膚および結合組織障害、下肢潰瘍(foot ulceration)、代謝性アシドーシス、関節炎、骨粗鬆症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)および耐糖能異常を含んでなる。本明細書において使用されるように、「予防(preventing)」は、本明細書においてに記載した疾患および病状の発生を予防するために、健常者または糖尿状の前段階の患者への、当該組成物の予防的投与(prophylactic administration)を意味する。
【0090】
本発明の医薬組成物は、また、患者の体重を減少させることによる肥満の処置のために使用され得る。それ故に、本発明は、また、哺乳類の身体的外観(bodily appearance)の改善方法であって、当該哺乳類に本明細書において開示したナテグリニドの塩を経口投与することを含んでなる方法に関する。
【0091】
本発明の別の実施態様は、糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状の処置方法に関する。かかる処置方法は、かかる処置を必要としている哺乳類、とりわけヒトへの、本発明のナテグリニドの塩、または前記の他の物質または化合物との組合せ剤の有効量の投与を含んでなる。
以下の非限定的実施例は、本発明のさらなる態様を説明する。
【実施例】
【0092】
実施例1:ナテグリニドのナトリウム塩の製造
化合物1
700mlのイソプロピルアルコール中の23.81gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして12.5mlの6N水酸化ナトリウムの水溶液を添加する。混合物を、室温にて1.5〜2時間撹拌する。得られる固体を、吸引濾過により単離し、そして50mlのイソプロピルアルコールで洗浄する。次いで、固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。カール・フィッシャー(Karl Fischer)にしたがって測定される、得られた固体の含水率は、2.67%である。
【0093】
化合物2
35mlのイソプロピルアルコール中の3.17gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして、1.7mlの6N水酸化ナトリウムの滴下により処理する。混合物を1時間撹拌し、そして固体が現れた後に、さらに、35mlのイソプロピルアルコールを室温にて添加する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そしてIPAで洗浄する。固体を、55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。
【0094】
化合物3
1mlのエタノールあたり0.0651mmolのナテグリニドを有する溶液を与える、50mlのエタノール中の1033mgのナテグリニドのストック溶液を製造する。
10.678mgの酢酸ナトリウムを2mlの上記ストック溶液に添加し、そして40℃にて30分間撹拌する。溶液を蒸発乾固させ、そして固体の残渣を回収する。
【0095】
化合物4
1mlのエタノール中の317.4mgのナテグリニドの溶液を製造する。この溶液に、1mlの1N NaOHを、0.5mlずつ2回添加する。沈澱を、ワットマン濾紙(whatman filter paper)を用いて濾取する。残った固体を真空中(27mmHg)で50℃にて16時間乾燥する。
【0096】
実施例2:ナテグリニドのカリウム塩の製造
化合物5
700mlのイソプロピルアルコール中の23.81gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして12.6mlの6N水酸化カリウムの滴下により処理する。混合物を室温にて1時間撹拌する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そして150mlの2:1のイソ−プロピルアルコール/酢酸エチルで洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。カール・フィッシャーにしたがって測定される、得られる固体の含水率は、2.12%である。
【0097】
化合物6
50mlのイソプロピルアルコール中の3.17gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして2.0mlの5N水酸化カリウムの滴下により処理する。混合物を室温にて1.5時間撹拌する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そしてイソプロピルアルコールで2回洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。
【0098】
化合物7
化合物5を、84%相対湿度の恒湿チャンバー(humidity chamber)で維持すると、化合物7を得る。
【0099】
化合物8
1.5mlのエタノール中の309.17mgのナテグリニドの溶液に、1.5mlの1N水酸化カリウムを添加する。溶液を16時間撹拌し、得られるスラリーを4℃に冷却し、そしてワットマン濾紙を用いて濾過する。残った固体を、真空オーブン(vacuum oven)中で50℃にて16時間乾燥する。
【0100】
実施例3:ナテグリニドのカルシウム塩の製造
化合物9
1000mlの脱イオン水中の23.81gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして75.0mlの1N水酸化ナトリウムの添加により処理する。混合物を60〜65℃に25分間加熱すると溶液を得る。溶液を50℃に冷却し、そして濾過する。100mlの脱イオン水中の11.03gの塩化カルシウム二水和物の溶液を1.5時間かけて滴下する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そして250〜300mlの脱イオン水で洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。
【0101】
化合物10
700mlのイソプロピルアルコール中の23.81gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして77.5mlの1N水酸化ナトリウムの滴下により処理する。混合物を55〜60℃に15分間加熱すると溶液を得る。溶液を25℃に冷却し、そして50mlの水中の6.06gの塩化カルシウム二水和物の溶液を滴下する。添加後、250mlの水を添加し、そしてスラリーを室温にて18時間撹拌する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そして水で洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。カール・フィッシャーにしたがって測定される、得られる固体の含水率は、0.58%である。
【0102】
実施例4:ナテグリニドのマグネシウム塩の製造
化合物11
150mlの脱イオン水および4〜5mlのイソプロピルアルコール中の3.17gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして10.5mlの1N水酸化ナトリウムの滴下により処理する。混合物を80℃に加熱すると溶液を得る。溶液を28℃以下に冷却する。15mlの脱イオン水中の2.03gの塩化マグネシウム六水和物の溶液を滴下する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そして脱イオン水で洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。
【0103】
実施例5:ナテグリニドのN−メチル−D−グルカミン塩の製造
化合物12
350mlのメタノール中の23.81gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして75mlの1:1のメタノール/水中の14.79gのN−メチル D−グルカミンの溶液の滴下により処理する。混合物を室温にて35分間撹拌し、次いで、一夜放置する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そしてメタノールで洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。カール・フィッシャーにしたがって測定される、得られる固体の含水率は、<0.1%である。
【0104】
実施例6:ナテグリニドのトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンの塩の製造
化合物13
40mlのイソプロピルアルコール中の6.00gのナテグリニドの溶液を製造する。この溶液に、2.28gのトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンを添加する。得られる溶液を40℃にて数時間撹拌する。次いで、温度を撹拌しながら55℃に上げて、過剰の溶媒を蒸発させる。残渣を風乾し、残った物質をヘプタンでトリチュレートし、次いで濾過する。固体を風乾により乾燥する。
【0105】
実施例7:ナテグリニドのリジン塩の製造
化合物14
6.00gのナテグリニドを21mlのイソプロピルアルコールに溶かす。それに、12mlの水中の2.76gのリジンの溶液を添加する。得られる溶液を数分間撹拌し、そして氷浴に入れる。固体が形成されるまで撹拌を継続する。
【0106】
化合物15
3mlのアセトン(93%;残り:水)および3mlの水の混合物を40℃に加熱し、そして1.34gのナテグリニドをその中に溶かす。この溶液に、0.62gのリジンを添加し、そして溶かす。種晶を、0.53gのナテグリニドをアセトン(97%;残り:水)に溶かすこと、および0.25gのリジンの添加により製造する。約30〜50mgの種晶を溶液に添加する。ゲル様の物質を風乾により乾燥する。
【0107】
化合物16
ナテグリニドのストック溶液を、1mlのエタノールあたりに0.0651mmolのナテグリニドを有する溶液を与える、50mlのエタノール中の1033mgのナテグリニドを溶かすことにより製造する。5mlのストック溶液に、47.5mgのリジンを添加し、そしてスラリーを40℃にて数分間撹拌し、リジンを溶かす。同じ温度にて撹拌を16時間継続する。溶液を冷蔵庫中で4℃に数週間冷却する。その後、風乾により乾燥させる。5mlのイソプロピルアルコールを残りの残渣に添加する。過剰の溶媒を風乾により蒸発させる。得られる固体を回収する。
【0108】
実施例8:ナテグリニドのアンモニウム塩の製造
化合物17
700mlのイソプロピルアルコール中の23.81gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして10.5mlの濃水酸化アンモニウムの滴下により処理する。20分後、150mlの酢酸エチルを添加する。混合物を室温にて1.75時間撹拌する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そして150mlの2:1のイソプロピルアルコール/酢酸エチルで洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。収率は、8.94gである。カール・フィッシャーにしたがって測定される含水率は、<0.1%である。
【0109】
化合物18
50mlのイソプロピルアルコール中の3.17gのナテグリニドの溶液を撹拌し、そして1.4mlの濃水酸化アンモニウムの滴下により処理する。次いで、40mlの酢酸エチルを添加する。混合物を室温にて1時間撹拌する。得られる固体を吸引濾過により単離し、そして酢酸エチルで洗浄する。固体を55℃にて真空下(20mmHg)で一夜乾燥する。
【0110】
化合物19
20mlのエタノール中の10.02gのナテグリニドの溶液に、1.1mlの濃水酸化アンモニウムを添加する。溶液を35℃にて撹拌し、そして100mlのアセトニトリルを添加する。撹拌を数分間継続する。固体を、ワットマン濾紙を用いる濾過により回収し、そして風乾によりさらに乾燥する。
【0111】
実施例9
実施例1〜8において製造されたナテグリニドの塩を含んでなる医薬組成物
【表1】

【0112】
微晶性セルロース、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ナテグリニドの塩、たとえばナテグリニドのナトリウム塩、およびラクトースを高度剪断ミキサー中で混合し、その後、精製水を用いて造粒した。湿った顆粒を流動床乾燥機中で乾燥し、そしてスクリーンを通過させた。コロイド状二酸化ケイ素を混合し、スクリーンを通過させ、そしてV型ブレンダー中で乾燥顆粒と混和した。ステアリン酸マグネシウムを、スクリーンを通過させ、V型ブレンダーからの混和物と混和し、その後、総混合物を錠剤に圧縮した。オパドライイエロー(Opadry yellow)を精製水中で懸濁させ、そして錠剤をコーティング懸濁液で被覆した。
【0113】
本発明のナテグリニドの塩は、水中で高い解離度、したがって、実質的に改善された水溶性を有する。これらの特性は有利である。というのは、溶解プロセスがより迅速となり、そしてより少量の水が、かかる塩を含有する溶液を製造するのに必要とされるからである。さらに、一定の条件下でのより高い水溶性は、患者に有益な固体投与形態の場合において当該塩または塩水和物の生物学的利用の増大をもたらし得る。
【0114】
以下において、表I〜IVの選択された分析データが示される。表IVは、本発明のナテグリニドの塩のXRPDパターンの反射極大値の選択された特徴的ピークを表す。これらの表において、それぞれ、化合物番号1〜4はナテグリニドのナトリウム塩であり、化合物5〜8はカリウム塩であり、化合物9および10はカルシウム塩であり、化合物11はマグネシウム塩であり、化合物12はN−メチル−D−グルカミン塩であり、化合物13はトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン塩であり、化合物14〜16はリジン塩であり、そして化合物17〜19はナテグリニドのアンモニウム塩である。
【0115】
【表2】

【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
表IIのデータは、ミネラル、N−メチルグルカミンおよびトリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)塩についての理論値および実験値が一致していることを示す。このデータは、また、アンモニウムおよびリジン塩で不一致が存在することも示す。
【0118】
アンモニウム塩の酸塩基比は確立されていない。元素分析は、4:1の比の可能性を示唆している;しかしながら、固体は、分析前に一定重量まで加熱(約100℃)される。乾燥手順において、ある程度のアンモニウムの喪失はあり得るが、110℃までは有意な喪失は起こらない(図10)。
【0119】
【表5】

【0120】
【表6】

【0121】
以下の表において、X線粉末回折測定において得られたそれらの対応する相対強度とともに、反射極大値(度数表記)は、化合物1〜19に関して与えられる。
【表7】

【0122】
【表8】

【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【表11】

【表12】

【0125】
【表13】

【0126】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜300℃の範囲の融点を有するナテグリニドの塩。
【請求項2】
請求項1に記載のナテグリニドの塩を含んでなる、組成物。
【請求項3】
糖尿病、心血管疾患、またはそれらに伴う病状の処置方法であって、かかる処置を必要とする哺乳類への、有効量の請求項1に記載のナテグリニドの塩の投与を含んでなる方法。

【公開番号】特開2011−6476(P2011−6476A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214827(P2010−214827)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2003−574615(P2003−574615)の分割
【原出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】