説明

ナトリウム二次電池

【課題】より大きな放電容量を与えるナトリウム二次電池を提供する。
【解決手段】第1電極、第2電極および非水電解液を備え、第1電極がナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる以下の式(I)で表される化合物を含んでなることを特徴とするナトリウム二次電池。
34 (I)
(ここで、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、ZはIUPAC周期表の第16族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)
ZがSを含む前記のナトリウム二次電池。MがFeを含む前記のナトリウム二次電池。第2電極が、ナトリウム金属またはナトリウム合金を含む前記のナトリウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム二次電池は、正極、負極および非水電解液を有する二次電池である。二次電池としては、リチウム二次電池が代表的であり、携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。しかしながら、リチウム二次電池において、それを構成する材料の製造には、リチウム等の稀少金属元素を含有する原料を多く使用し、大型電源の需要の増大に対応するための前記原料の供給が懸念されている。
【0003】
これに対し、上記の供給懸念を解決することのできる二次電池として、ナトリウム二次電池の検討がなされている。ナトリウム二次電池において、その材料には供給量が豊富でしかも安価な原料を用いることができ、これを実用化することにより、大型電源を大量に供給可能になるものと期待されている。
【0004】
そして、従来のナトリウム二次電池としては、非特許文献1に、正極材料としてTiS2を、負極材料としてナトリウム金属を用いたナトリウム二次電池が具体的に記載されている。
【0005】
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエティ;エレクトロケミカル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Electrochemical Society; Electrochemical Science and Technology)」、米国、1980年、第127巻、第2097〜2099頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のナトリウム二次電池は、放電容量の観点で十分とはいえない。本発明の目的は、より大きな放電容量を与えるナトリウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。すなわち、本発明は、下記の発明を提供する。
<1>第1電極、第2電極および非水電解液を備え、第1電極がナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる以下の式(I)で表される化合物を含んでなることを特徴とするナトリウム二次電池。
34 (I)
(ここで、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、ZはIUPAC周期表の第16族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)
<2>ZがSを含む前記<1>記載のナトリウム二次電池。
<3>MがFeを含む前記<1>または<2>記載のナトリウム二次電池。
<4>第2電極が、ナトリウム金属またはナトリウム合金を含む前記<1>〜<3>のいずれかに記載のナトリウム二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より大きな放電容量を与えるナトリウム二次電池を提供することができ、さらには、充放電を繰り返した際の容量低下を抑制することも可能である。しかも、リチウムの使用量を減少させ、安価な材料を用いて構成することができ、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<本発明のナトリウム二次電池>
本発明のナトリウム二次電池は、第1電極、第2電極および非水電解液を備え、第1電極がナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる以下の式(I)で表される化合物を含んでなることを特徴とする。
34 (I)
(ここで、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、ZはIUPAC周期表の第16族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)
【0010】
<第1電極>
本発明において、第1電極は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができ、かつ上記式(I)で表される化合物を含んでなる。本発明のナトリウム二次電池において、該化合物は電極活物質として作用し、また、通常、第1電極は、正極として作用する。式(I)において、M:Zのモル比は3:4である。式(I)におけるMは、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、具体的には、Fe、Mn、Ni、CoおよびTiからなる群より選ばれる1種以上の元素を挙げることができる。より高い放電容量と遷移金属元素の入手容易性の観点から、Mは、Fe、MnおよびNiから選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましく、より好ましくは、Feを含むことである。また、式(I)におけるZは、IUPAC周期表の第16族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、より高い放電容量の観点から、少なくともSを含むことが好ましい。これらの中でも、特に好ましいのは、MがFeであり、かつZがSであることである。
【0011】
また、上記式(I)で表される化合物は、通常、粒状であり、粒子の形状は、球状であっても板状であってもよいが、電極の作製のしやすさの観点で、球状であることが好ましい。また、化合物粒子の粒径は、通常、10nm〜100μm程度である。
【0012】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、式(I)におけるMの一部を、Mを構成する遷移金属元素以外の金属元素で置換してもよい。
【0013】
<第1電極におけるM34の製造方法>
本発明において、M34を製造する方法として、一つの方法としては、M34の前駆体を加熱することによって製造する方法を挙げることができる。M34の前駆体としては、例えば、M含有原料とZ含有原料とを所定の組成となるように秤量し混合して得られる混合物を挙げることができる。例えば、好ましい組成の一つであるFe34で表される遷移金属カルコゲン化合物は、金属Fe粉末および硫黄粉末の各原料を、Fe:Sのモル比が3:4となるように秤量し、それらを混合し、得られた混合物を加熱することによって製造することができる。
【0014】
上述において、M含有原料としては、Mの金属や、Mの酸化物、Mの化合物(例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩等)を用いることができる。Z含有原料としては、Z単体、もしくはZ化合物を用いることができる。また、Mの硫酸塩などを、M34の前駆体として用いることもできる。また、M含有原料およびZ含有原料の混合には、ボールミル、V型混合機、攪拌機等、工業的に通常用いられている装置を用いればよく、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよい。
【0015】
上記のM34前駆体を加熱する条件としては、用いるMの種類、Zの種類にもよるが、200℃〜1500℃の温度範囲、0.5時間〜100時間を挙げることができる。また、M34前駆体について、加熱の前に、加熱の温度より低い温度で予備加熱してもよい。また、予備加熱後に粉砕を行ってもよい。
【0016】
加熱の際の雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気を用いればよい。また、ZがSである場合には、加熱雰囲気として、硫化水素、二硫化炭素を用いる場合もあり、この場合には、前駆体におけるZ含有原料を必要としないこともある。仮焼を行う雰囲気は、不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気または還元性雰囲気のいずれでもよい。また仮焼後に粉砕することもできる。
【0017】
また、M含有原料として、Mのフッ化物、塩化物等を用いて、生成するM34の結晶性を高めることおよび/または平均粒径を大きくすることができる。また、この目的に関して、前駆体に、適量のフラックスを添加してもよい。フラックスとしては、例えば前記のフッ化物、塩化物のほか、NH4Cl、NH4Iなどを挙げることもできる。
【0018】
本発明において、ZがSである場合には、M34を製造する好適な方法として、Mの塩化物およびチオ尿素を用いて、これらを所定の組成となるように秤量し、多価アルコール中で、Mの塩化物とチオ尿素とを接触させて析出物を得て、析出物を液相から分離し乾燥することによって、製造する方法を挙げることができる。この製造方法において、析出物を得るために、Mの塩化物とチオ尿素とが溶解した多価アルコール溶液を、40℃〜200℃の温度範囲、0.5時間〜100時間の条件で加熱してもよいし、攪拌を行ってもよい。この具体例として、好ましい組成の一つであるFe34で表される化合物を得る場合には、例えば、Mの塩化物としての塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O)、チオ尿素((NH22CS)の各原料を、Fe:Sのモル比が3:4となるように秤量し、これらをエチレングリコールに加え、混合して得られる溶液を、180℃で2時間保持することによって析出物を得て、ろ過、ロータリーエバポレータ等の固液分離により該析出物を回収して、製造することができる。この方法は、高温に加熱する工程も必要とせず有用である。また、上記において、塩化鉄(III)六水和物にかえて、塩化鉄(II)四水和物(FeCl2・4H2O)を用いても、Fe34を製造することができる。Mの塩化物(ここで、MはFeである。)において、Feの価数が三価(例えば、塩化鉄(III)六水和物)である場合には、得られるFe34の粒子の形状は球状になる傾向にあり、また、Feの価数が二価(塩化鉄(II)四水和物)である場合には、得られるFe34の粒子の形状は板状になる傾向にある。
【0019】
上記の多価アルコールとしては、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、2,2’−オキシジエタノール(ジエチレングリコール)などの2価アルコール(グリコール類);1,2,3,−プロパントリオールなどの3価アルコール(グリセロール類)などを挙げることができる。入手容易性の観点では、2価アルコールが好ましく、より好ましくはエチレングリコールである。
【0020】
上記、多価アルコール中で、Mの塩化物とチオ尿素とを接触させて析出物を得る際の雰囲気としては、不活性雰囲気、酸化性雰囲気または還元性雰囲気のいずれでもよい。ZがSである場合には、M34の収量を高める観点で、不活性雰囲気が好ましい。例えば、不活性雰囲気とするには、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いればよい。
【0021】
上記のM34や、M34の前駆体、M含有原料、Z含有原料について、随意にボールミルやジェットミル等を用いた粉砕、洗浄、分級等を行って、粒度、結晶純度を調節することが好ましいことがある。また、加熱を2回以上行ってもよい。また、M34の粒子表面をSi、Al、Ti、Y等を含有する無機物質で被覆する等の表面処理を施してもよい。
【0022】
<第1電極の製造方法>
本発明における第1電極は、M34、導電材およびバインダーを含む電極合剤を、集電体に担持させて製造することができる。
【0023】
導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどの炭素材料などが挙げられる。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下では「PVDF」としても言及する)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ならびにポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどを用いることができる。
【0024】
集電体に電極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、電極合剤について有機溶媒等を用いてペースト化し、集電体上に塗工し、乾燥後プレスするなどして固着する方法等が挙げられる。ペースト化する場合、M34、導電材、バインダーおよび有機溶媒からなるスラリーを作製する。有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピリアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。電極合剤を集電体へ塗工する方法としては、例えばスリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
【0025】
<非水電解液>
本発明において、非水電解液は、通常、電解質が、有機溶媒に溶解されてなる。電解質としては、NaClO4、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlCl4などが挙げられ、これらを2種以上混合して使用してもよい。これらの中でもフッ素を含むNaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3およびNaN(SO2CF32からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0026】
非水電解液における有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;または上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものを用いることができる。これらの有機溶媒を、二種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
非水電解液における電解質の濃度は、通常、0.1モル/L〜2モル/L程度であり、好ましくは、0.3モル/L〜1.5モル/L程度である。
【0028】
<第2電極>
本発明においては、第2電極も、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる。第2電極としては、ナトリウムを含有する活物質を含む電極合剤を集電体に担持したもの、ナトリウム金属またはナトリウム合金などを挙げることができる。ナトリウム合金におけるナトリウム以外の金属元素としては、例えば、Pb、Sn、Geなどを挙げることができる。第2電極としては、ナトリウム金属またはナトリウム合金が好ましく用いられ、この場合、第2電極は、ナトリウム二次電池における負極として作用する。
【0029】
<第2電極の製造方法>
第2電極は、上記の電極合剤を、集電体に担持させて製造することができる。集電体としては、Al、Cu、Ni、ステンレスなどを挙げることができる。集電体に電極合剤を担持させる方法は、第1電極の場合と同様であり、加圧成型する方法、ペースト化して集電体上に塗工し、乾燥後にプレスするなどして固着する方法等が挙げられる。また、ナトリウム金属またはナトリウム合金のシートをそのまま第2電極として用いることもできるし、該シートを該集電体に積層して用いてもよい。
【0030】
<セパレータ>
通常、本発明のナトリウム二次電池は、セパレータを更に有する。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いた単層または積層セパレータとしてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚みは一般に、5〜200μm程度が好ましく、より好ましくは5〜40μm程度である。セパレータは、イオン透過性との観点から、ガーレー法による透気度において、透気度が50〜300秒/100ccであることが好ましく、50〜200秒/100ccであることがさらに好ましい。また、セパレータの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。セパレータは空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。
【0031】
<ナトリウム二次電池の製造方法>
本発明において、ナトリウム二次電池がセパレータを有する場合には、例えば、上述の第1電極、セパレータおよび第2電極をこの順に積層および必要に応じて巻回することによって電極群を得、この電極群を電池缶等の電池ケース内に収納し、非水電解液を電極群に含浸させることによって、製造することができる。
【0032】
電極群の形状としては例えば、この電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円、楕円、長方形、角がとれたような長方形等となるような形状を挙げることができる。また、二次電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
【0033】
上述のようにして、得られる本発明のナトリウム二次電池は、より大きな放電容量を与え、さらには、充放電を繰り返した際の容量低下を抑制されたサイクル性に優れる二次電池である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものでもない。なお、特に断らない限り、充放電試験用の電極および二次電池の作製方法は、下記の手法によった。
【0035】
(1)第1電極(正極)の作製
電極活物質(M34)、導電材(アセチレンブラック、電気化学工業株式会社製)およびバインダーPVDF(株式会社クレハ製、PolyVinylideneDiFluoridePolyflon)を、M34:導電材:バインダー=89:9:2(重量比)の組成となるようにそれぞれ秤量し、まずM34と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、この混合物に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP:東京化成工業株式会社製)を適量加え、さらにバインダーを加えて引き続き均一になるように混合して、薄く延ばし、シート化した。得られたシートをコルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた後、集電体であるステンレスメッシュにハンドプレスにて十分に圧着し、さらに乾燥機に入れ、十分に乾燥することによって第1電極(正極)を得た。
【0036】
(2)ナトリウム二次電池の作製
上記の第1電極(正極)と、それ以外の部材としては、セパレータとしてポリプロピレン多孔質フィルム(厚み20μm)、第2電極(負極)として金属ナトリウム(アルドリッチ社製)、非水電解液として1MのNaClO4/プロピレンカーボネートを用いて、ナトリウム二次電池を製造した。すなわち、コインセル(宝泉株式会社製)の下側パーツの窪みに、第1電極をステンレスメッシュが下側に向くように(電極活物質が上側を向くように)置き、その上にセパレータを置き、非水電解液をピペットで0.2ミリリットル注入した。さらに、第2電極(負極)と中蓋とを組み合わせて、ガスケットを介して上側パーツで蓋をし、かしめ機でかしめてナトリウム二次電池を作製した。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0037】
比較例1(TiS2
【0038】
第1電極(正極)における電極活物質として、TiS2(Alfa Aesar社製)を用いた以外は、上記の方法により、第1電極(正極)、ナトリウム二次電池R1を作製し、以下の条件で定電流充放電試験を実施した。
【0039】
充放電条件:
まず、レストポテンシャルから1.0Vまで0.2mAcm-2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。次に、充電は、該放電速度と同じ速度で、CC充電を行い、電圧2.5Vでカットオフした。
この1サイクル目の放電容量を100とした(以下、ナトリウム二次電池における放電容量は、このナトリウム二次電池R1の1サイクル目の放電容量を100とした相対放電容量として示した。)。
【0040】
次サイクル以降の放電および充電も、上記充放電速度と同じ0.2mAcm-2で行い、1サイクル目と同様に、放電電圧1.0V、充電電圧2.5Vでカットオフした。3サイクル目の相対放電容量は67であり、1サイクル目に対する3サイクル目の放電容量維持率は67%となった。
【0041】
実施例1(Fe34
(1)Fe34の製造
金属含有化合物としての、塩化鉄(II)四水和物(FeCl2・4H2O)およびチオ尿素((NH22CS)の各原料を、Fe:Sのモル比が3:4となるように秤量し、これらをエチレングリコールに加え、混合して得られる溶液を、窒素雰囲気下において180℃で2時間保持することによって析出物を得て、ロータリーエバポレータを用いてエチレングリコールを分離することによって、電極活物質1(Fe34)を得た。電極活物質1の粉末X線回折図形を図1に示し、また、SEM写真を図2に示している。図2には、電極活物質1は板状粒子を含むことが示されている。なお、粉末X線回折測定は、粉末X線回折測定装置(株式会社パナリティカル製X‘Pert PRO MPD型)を用いて行った。測定は、活物質を専用の基板に充填し、CuKα線源を用いて、回折角2θ=10°〜90°の範囲にて行った。また、SEM観察には、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−5500型)を用いた。
【0042】
(2)ナトリウム二次電池の正極活物質としての充放電性能評価
電極活物質1(Fe34)を用いて、上記の方法により、第1電極(正極)、ナトリウム二次電池E1を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。このナトリウム二次電池E1の1サイクル目の相対放電容量は110であった。
【0043】
次サイクル以降の放電および充電も、比較例1と同様の条件で行ったところ、3サイクル目の相対放電容量は94であり、1サイクル目に対する3サイクル目の放電容量維持率は86%となった。
【0044】
実施例2(Fe34
(1)複合金属酸化物の製造
金属含有化合物としての、塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O)およびチオ尿素((NH22CS)の各原料を、Fe:Sのモル比が3:4となるように秤量し、これらをエチレングリコールに加え、混合して得られる溶液を、窒素雰囲気下において180℃で2時間保持することによって析出物を得て、ロータリーエバポレータを用いてエチレングリコールを分離することによって、電極活物質2(Fe34)を得た。電極活物質2の粉末X線回折図形を図3に示し、また、SEM写真を図4に示している。図4には、電極活物質2は球状粒子からなることが示されている。
【0045】
(2)ナトリウム二次電池の正極活物質としての充放電性能評価
電極活物質2(Fe34)を用いて、上記の方法により、第1電極(正極)、ナトリウム二次電池E2を作製し、比較例1の場合と同様の条件で、定電流充放電試験を実施した。このナトリウム二次電池E2の1サイクル目の相対放電容量は126であった。
【0046】
次サイクル以降の放電および充電も、比較例1と同様の条件で行ったところ、3サイクル目の相対放電容量は94であり、1サイクル目に対する3サイクル目の放電容量維持率は75%となった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】電極活物質1の粉末X線回折図形。
【図2】電極活物質1のSEM写真。
【図3】電極活物質2の粉末X線回折図形。
【図4】電極活物質2のSEM写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極および非水電解液を備え、第1電極がナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる以下の式(I)で表される化合物を含んでなることを特徴とするナトリウム二次電池。
34 (I)
(ここで、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、ZはIUPAC周期表の第16族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)
【請求項2】
ZがSを含む請求項1記載のナトリウム二次電池。
【請求項3】
MがFeを含む請求項1または2記載のナトリウム二次電池。
【請求項4】
第2電極が、ナトリウム金属またはナトリウム合金を含む請求項1〜3のいずれかに記載のナトリウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−102917(P2010−102917A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272783(P2008−272783)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】