説明

ナトリウム漏洩検出システム

【課題】連続的に検査でき、しかも、イオン化部の劣化が起こりにくく、レーザや放射線源を用いることなく、管理が容易で誤動作の少ないナトリウム漏洩検出システムを提供する。
【解決手段】被検査対象の周囲の気体を吸引してサンプリングし、被検査対象からのナトリウムの漏洩を検出するナトリウム漏洩検出システムにおいて、サンプリングガス1の流路を形成するサンプリング配管2と、サンプリング配管2の側部に配置され、放電装置7により気体をイオン化するイオン発生室6と、サンプリングガス1と混合されたイオンのイオン量を計測するイオンセンサ8と、イオンセンサ8の出力からナトリウムの漏洩量を求める信号処理装置9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムを冷却材とする高速増殖炉などの施設において、ナトリウムの漏洩を早期に検出するナトリウム漏洩検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウムを取扱う施設において、漏洩ナトリウムは、施設内の機器に損害を与えるため早期に検出する必要がある。ナトリウムの漏洩を早期に検出するために、従来、次のような気体中の微量のナトリウムを検出する装置が知られている。(i)高温に熱したフイラメントにより漏洩ナトリウムをイオン化して検出するイオン化検出器を用いるナトリウムイオン化検出器(SID:Sodium Ionization Detector、特許文献1)、(ii)レーザを照射した際に発光する蛍光を監視するレーザブレークダウン法による液体金属の漏洩検出器(LLD: Laser Leak Detector、特許文献2)、及び(iii)放射線により気体がイオン化する量がナトリウムなどのエアロゾルによって変化することを利用した放射線イオン化検出器(RID:Radioactive Ionization Detector、特許文献3)などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−68331号公報
【特許文献2】特許第3510561号公報
【特許文献3】特公昭63−22252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(i)のSIDは、気体中のナトリウムを高温に熱したフイラメントでイオン化し収集電極でイオンを集め電流として検出するため、感度が高く、応答性も早い。しかし、気体中のナトリウム濃度が高くなるとフイラメント表面がナトリウムによって感度が低下する問題がある。また、高温フイラメントを使用するために、空気中での使用は耐久性の面で困難であり、また出力が不安定で調整が難しいという問題があった。
【0005】
(ii)のLLDは、ナトリウムに応じた発光を捕らえることで、ナトリウムのみをしかも微量分検出できる特徴がある。ナトリウムのみを検出できるが、レーザを用いており、装置の現場での耐久性等の観点から、配管個々に装置を設けることは不適切であり、サンプリングを行った場合、すべての配管で連続検査することは難しい。
【0006】
(iii)のRIDは、高温フイラメントの代りに微量の放射線を用いたものであるが、直接ナトリウムをイオン化するのではなく、放射線により生成したイオンが、ナトリウムを含有するエアロゾルに付着することで、イオンが減少する効果を測定するものである。ナトリウムをイオン化するのではなく、エアロゾルによるイオンの減少量を測定することから、ナトリウムによって、放射線源が覆われる影響は少ない。これは、SIDと同様に現場に設置可能であるが、放射線源が必要であり、また、SIDほどの微量信号ではないが、信号量も少ないことから改善が望まれていた。
【0007】
以上から、連続的に検査でき、しかも、SIDのようにイオン化部の劣化の起こりにくく、しかも、LLD でのレーザやRIDでの放射線源を用いない、誤動作の少ないナトリウム漏洩検出システムが望まれている。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、連続的に検査でき、しかも、イオン化部の劣化が起こりにくく、レーザや放射線源を用いることなく、管理が容易で誤動作の少ないナトリウム漏洩検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のナトリウム漏洩検出システムは、被検査対象の周囲の気体を吸引してサンプリングし、被検査対象からのナトリウムの漏洩を検出するナトリウム漏洩検出システムにおいて、
サンプリングガスの流路を形成するサンプリング配管と、前記サンプリング配管の側部に配置され、放電装置により気体をイオン化するイオン発生室と、サンプリングガスと混合されたイオンのイオン量を計測するイオンセンサと、前記イオンセンサの出力からナトリウムの漏洩量を求める信号処理装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他のナトリウム漏洩検出システムは、被検査対象の周囲の気体を吸引してサンプリングし、被検査対象からのナトリウムの漏洩を検出するナトリウム漏洩検出システムにおいて、
サンプリングガスの流路を形成するサンプリング配管と、前記サンプリング配管の側部に配置され、放電装置により気体をイオン化するイオン発生室と、サンプリングガスと混合されたイオンのイオン量を計測する、第1のイオンセンサ及び前記第1のイオンセンサの上流に配置された第2のイオンセンサと、前記両イオンセンサの出力の差によりナトリウムの漏洩量を求める信号処理装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、連続的に検査でき、しかも、イオン化部の劣化が起こりにくく、レーザや放射線源を用いないため、管理が容易で誤動作が少ないナトリウム漏洩検出システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態2に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態3に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態4に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図5】本発明の実施形態5に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図6】本発明の実施形態5に係るナトリウム漏洩検出システムにおける他の例の構成を示す図。
【図7】本発明の実施形態6に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図8】本発明の実施形態7に係るイオンセンサの内部構成及び電流計測部を示す図。
【図9】本発明の実施形態8に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図。
【図10】本発明の実施形態8に係るナトリウム漏洩検出システムにおける他の例の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るナトリウム漏洩検出システムに関する各実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図である。
【0014】
本実施形態は、被検査対象の周囲の気体(ガス)をサンプリングするためのサンプリング配管2は、一端に気体吸引口3と他端に気体放出口4を有する。サンプリング配管2の側部に放電装置7により気体をイオン化するイオン発生室6が接続される。サンプリング配管2には、途中に気体中のイオン量を計測するイオンセンサ8が、気体放出口4にサンプリングガス1を吸引するポンプ5が配置される。信号処理装置9は、放電装置7を制御しイオンセンサ8の信号を監視する。なお、イオンセンサ8の詳細な内部構成は、実施形態7の図8により説明する。
【0015】
このように構成された本実施形態において、被検査対象の周囲の気体は、サンプリングガス1の気体吸引口3から吸引されて、放電装置7から放出されるイオンと、サンプリング配管2内で混合される。混合時に、サンプリングガス中のナトリウムエアロゾル量に応じて、放電装置7で発生したイオンがナトリウムエアロゾルに吸着され減少する。この結果、イオン量は変化するが、そのイオン量をイオンセンサ8で計測する。信号処理装置9は、放電装置7の放電の制御と、イオンセンサ8の計測を行い、サンプリングガス中のナトリウムエアロゾルの量に応じて変化するイオンセンサ8の出力信号により、ナトリウムの漏洩量を求める。信号処理装置9は、放電装置7の制御信号を監視し、イオンセンサ8の出力信号を補正してもよい。
【0016】
図1に示すように、放電装置7からイオンセンサ8を見込む方向は、イオン発生室6の上部により遮られ、放電によって発せられる電磁ノイズのイオンセンサ8への伝播が軽減され、ノイズの小さい信号が得られる。
【0017】
放電装置7としては、放射線源で生成されるイオンと同様の10〜30個の分子がクーロン力で結合しているような粒径の小さな(10−3μm以下)小イオンが生成できる。これによりイオンは、イオンの移動度が大きくエアロゾルに付着しやすくなり、検出感度を向上できる。そのことから、サンプリング配管2と放電装置7は近接させ、サンプリングガス1と放電によりイオンを速やかに混合できるように配置する。
【0018】
一方、ナトリウムエアロゾルの粒径は、1μmを中心に、0.5μm〜30μmであり、サンプリング配管2の気体吸引口3に、この粒径のみのエアロゾルを選択し通過するフィルタ(不図示)を設けることでナトリウムのみに反応しやすい感度特性を得ることが可能となる。
【0019】
また、イオンセンサ8は、最もエアロゾルにより吸着されやすい粒径の小さな(10−3μm以下)小イオンから最大1μmの粒径まで計測できるように、イオンセンサ8の電極の間隔及びサンプリングガス1の吸引流速に応じて、電圧印加手段により印加する電圧を調整でしてもよい。これにより、ナトリウムエアロゾルに最もよく反応するイオンを選択的に計測可能となる。
【0020】
その際、サンプリング配管2の気体吸引口3の上記フィルタ部で放電等によりエアロゾルを細断化し、イオンセンサ8で計測可能なイオン移動度を有する粒径1μm以下のエアロゾルに分解するエアロゾル分解装置を設けることができる。これによって、エアロゾル自体もイオンセンサ8で検出可能となり、イオン電流を増加させることが可能となる。
【0021】
また、放電装置7で生成されるイオンは、正負両イオンが生成できるように調整してもよい。つまり、放電装置7への印加電圧は交流にすることで、正負両イオンを発生できる。このようにすることにより、エアロゾルが片方の極性に帯電し、イオンと同極性になり、イオンの吸着量が低下することを防ぐ。また、この放電装置7への電圧の印加タイミング(印加周期)に応じて、放電装置7からのノイズが発生することから、そのタイミングに応じてイオンセンサ8のイオン電流を計測するタイミングを調整することで、ノイズの電流の影響を受けずに微小なイオン電流を計測することが可能となる。
【0022】
さらに、イオン発生室6の放電装置7に、間欠的に電圧を印加してもよい。印加される電圧は、交互に印加される正負両極性の電圧としてもよい。放電装置7にてイオンの発生していない時間のイオンセンサ8の測定データを用いて、イオンセンサ8の絶縁材の表面での汚れによるイオン電流の増加成分として評価できる。このリーク電流成分を補正することで、長期間にわたり、絶縁材の表面の汚れに影響されない測定が可能となる。
【0023】
本実施形態によれば、イオン発生用に従来の放射線の代わりに放電装置7を用いることで、管理が必要となる放射線源を使用しないナトリウム漏洩検出システムを実現できる。また、放電装置7を有するイオン発生室6をサンプリング配管2の側部に設けるとともに、放電装置7からの発生イオンを両極性のイオンが混在するように発生させることで、エアロゾルによるイオンの変化量を多く確保でき、感度の良好なナトリウム漏洩検出システムを構築できる。
【0024】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図である。
本実施形態は、図1のイオン発生室6の出口に、電磁遮蔽体10を設けている。この電磁遮蔽体10は、イオンは透過するが、電磁波は遮蔽できるようにメッシュ状の穴が開いており、システム本体と同じ電位とする。
【0025】
このように構成された本実施形態において、放電装置7から発生する電磁波がサンプリング配管2内を伝播し、直接イオンセンサ8で受信されることがない。
【0026】
本実施形態によれば、微小なイオン電流を測定するイオンセンサ8へ、放電装置7からの電磁ノイズの影響を低減し、エアロゾルによるイオン電流の微小な変化量を正確に測定できる、感度の良好なナトリウム漏洩検出システムを構築できる。
【0027】
(実施形態3)
図3は、本発明の実施形態3に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図である。
本実施形態は、サンプリング配管2の気体放出口4付近とイオン発生室6を配管13により連結し、気体を還流させる。配管13は、気体放出口4側に、ファン12と、イオン放出用気流11内のイオン及びごみ成分を吸着するイオンフィルタ14を有する。
【0028】
このように構成により、イオンフィルタ14で清浄化されたイオン放出用気流11をイオン発生室6に送り込むことで、サンプリング配管2に速やかにイオンを供給できる。また、気体放出口4付近から配管13を接続しているが、イオンフィルタ14の性能に応じて、開放された外気から直接気体を取り込むことも可能である。さらに、このイオン放出用気流11は、気流の速度、さらに、温度や湿度を制御できるように構成することで、イオン発生室6内の放電によるイオン発生量を一定化できる。
【0029】
本実施形態によれば、イオン発生室6の放電装置7で発生するイオンを速やかにサンプリングされたエアロゾルと混合でき、エアロゾルによるイオン電流の変化量を確保できる。また、サンプリングガス1の影響を低減し、放電装置7からのイオン発生量を一定にすることが可能となり、サンプリングガス1の条件により出力が変動しにくい漏洩検出システムを構築できる。
【0030】
(実施形態4)
図4は、本発明の実施形態4に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図である。
本実施形態は、図1のサンプリング配管2内でイオンセンサ8の上流に温度センサ15を設ける。
【0031】
このような構成では、温度センサ15の指示値に基づいて、イオンセンサ8の出力を補正できる。その際にイオンセンサ8の応答時間は、温度センサ15よりも早いため、その応答時間の差に相当する遅延時間をあらかじめ評価し、その遅延時間分をイオンセンサ8の出力にかけた後に、温度センサ15の指示値で、イオンセンサ8の出力を補正する。
【0032】
本実施形態によれば、温度の影響の低減が可能となり、信頼性の高いナトリウムエアロゾルに最も影響されるイオン移動度を有するイオンを収集でき、誤動作が少ないナトリウム漏洩検出システムを実現できる。
【0033】
(実施形態5)
図5は、本発明の実施形態5に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図であり、図6は、本実施形態に係るナトリウム漏洩検出システムにおける他の例の構成を示す図である。
【0034】
図5において、イオンセンサ8を第1のイオンセンサとして、その上流に第2のイオンセンサ16を設け直列に接続したものである。両イオンセンサは、図8に示すように、中心電極と、その周囲の円筒状の陰極から構成した正又は負の電圧を印加できる2つの電極を有し、両電極に電圧を印加することで、その間のイオンを収集し、イオン量に応じた電流を計測する。第1のイオンセンサ8は、円筒の長さを実施形態1のイオンセンサ8よりも長くし、第2のイオンセンサ16は、円筒の長さを短くしてもよい。
【0035】
円筒状の陰極の一端から流したガスは、両電極の間を移動した後に、円筒の他端から外に出る。印加された電極の中を横切る場合、イオン移動度の早いガスは、横切る時間が短くても直ぐに電極にイオンが収集されるが、イオン移動度の遅いものは、長い時間電極間に滞在しないと電極には収集されず、電極の外に流れていく。よって、2つのイオンセンサを配置した場合、上流の第2のイオンセンサ16では移動度の早いイオンが収集され、一方、第1のイオンセンサ8では、第2のイオンセンサ16で収集されないイオン移動度の遅い成分が計測される。
【0036】
このような構成では、放電装置7で発生したイオンのイオン移動度の違いで、第2のイオンセンサ15と第1のイオンセンサ8の信号の比率が決まる。この比率を、ナトリウムエアロゾルによって変化しやすい比率に選定することで、他のごみなどの成分による影響を低減することが可能となる。信号処理装置9は、両イオンセンサの出力の差によりナトリウムの漏洩量を求める。
【0037】
図6においては、イオン発生室6の出口に補正用イオンセンサ17を配置したものである。この構成では、放電装置7で発生するイオン量の変動を監視することができる。イオンセンサ8の出力を補正用イオンセンサ17の出力により補正してナトリウムの漏洩量を求めることで、放電装置7の性能変化の影響を低減できる。
【0038】
なお、図5に示す例は、実施形態3の図3のイオン放出用気流11がある場合にも適用され、図6に示す例は、実施形態1の図1のイオン放出用気流11がない場合にも適用される。
【0039】
本実施形態によれば、ナトリウムエアロゾルに最も影響されるイオン移動度を有するイオンを収集でき、誤動作が少ない信頼性の高いナトリウム漏洩検出システムを実現できる。また、放電装置7のイオン発生量を監視することで、放電装置7の劣化などによる影響を低減できる。
【0040】
(実施形態6)
図7は、本発明の実施形態6に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図である。
イオンセンサ8は、円筒状の陰極26の中心軸にイオン収集電極25が配置され、両電極の間に絶縁材18を設けている。絶縁材18は、図8の第1の絶縁材28、第2の絶縁材29に相当する。
【0041】
本実施形態は、イオンセンサ8の絶縁材18に付着した汚れによる劣化を低減するために、表面に酸化チタン膜を塗布して、その表面をイオンセンサ8の近傍に設けた光源18で照射する。その酸化チタン膜の紫外線照射による活性化作用により絶縁材表面の汚れによる影響を低減する。これによって、長期にわたり安定した指示値を得ることが可能となる。
【0042】
本実施形態によれば、イオンセンサ8の絶縁材18の汚れによる性能低下を防止することが可能となり、信頼性の高いナトリウムエアロゾルに最も影響されるイオン移動度を有するイオンを収集でき、誤動作が少ないナトリウム漏洩検出システムを実現できる。
【0043】
(実施形態7)
図8は、本発明の実施形態7に係るイオンセンサの内部構成及び電流計測部を示す図である。
イオンセンサ8の内部は、円筒状の陰極26の中心軸にイオン収集電極25が配置され、両電極の間にガード電極27を設けている。イオン収集電極25とガード電極27の間は、第1の絶縁材28により絶縁し、陰極26とガード電極27の間は、第2の絶縁材29により絶縁する。陰極26は、グランド電位としてアース30に接続されるグランド電極である。ガード電極27とイオン収集電極25は、高圧電源31を介して高圧を印加する。この高圧によって、イオン収集電極25と陰極26の間のイオンを収集し、その収集に伴う電流をイオン電流として電流計32で計測する。
【0044】
第1の絶縁材28は、ガード電極27とイオン収集電極25に挟まれており、この間を流れる電流は電流計32で計測されるが、両電極は同一電位になっていることからほとんど電流が流れない。よって、電流計32を流れる電流は、第1の電流経路33が主体となり、イオン収集電極25と陰極26の間のイオンによる電流を計測することとなる。
【0045】
一方、第2の絶縁材29は、陰極26とガード電極27で挟まれているが、両者は高圧電源31により高圧が印加されており、リーク電流が第2の電流経路34のように流れ、第2の電流計35によって監視する。
【0046】
このような構成においては、一般にイオン収集電極25とガード電極27間の電圧はほとんどないことから、第1の絶縁材28の表面の汚れによる電流はほとんどなく、電流計32への影響はない。しかし、サンプリングガス1中の汚れにより長期的に第1の絶縁材28表面が著しく汚れた場合、セラミックスと金属の接触に伴う電位差などの微弱な電圧によるリーク電流も無視できなくなる。
【0047】
本実施形態では、このリーク電流の増加を監視し、セラミックス表面の汚れを検知することで、イオン電流の計測への影響を評価できる。つまり、第1の絶縁材28も、第2の絶縁材29とほぼ同等に汚れていると考えられる。このことから、第2の絶縁材29の表面の汚れから第1の絶縁材28の表面の汚れを判定できるので、第2の絶縁材29を通る第2の電流経路34を電流計35で監視することで、イオンセンサ8内部の汚れを検知することが可能となる。
【0048】
本実施形態によれば、サンプリングガス1によりイオンセンサ8内部の絶縁材の汚れ等によるリーク電流の増加割合が監視可能となり、その値を用いて計測値を補正することで、信頼性の高いナトリウム漏洩検出システムを実現できる。
【0049】
(実施形態8)
従来技術においてレーザブレークダウン法によるレーザ式ナトリウム漏洩検出器(以下、「レーザ式漏洩検出器」という)があるが、本実施形態は、実施形態1ないし7に記載した放電式のナトリウム漏洩検出システムによりナトリウムの漏洩を検出したとき、さらにレーザ式漏洩検出器により確認する。
【0050】
図9は、本実施形態に係るナトリウム漏洩検出システムの構成を示す図であり、図10は、本実施形態に係るナトリウム漏洩検出システムにおける他の例の構成を示す図である。
【0051】
図9において、被検査対象のナトリウム配管からサンプリング配管20を介して、サンプリングガスが、実施形態1ないし7のナトリウム漏洩検出システム21と、レーザ式漏洩検出器22に導入される。ナトリウム漏洩検出システム21は、サンプリング配管20を連続的に検査するように接続されるが、レーザ式漏洩検出器22については、サンプリング配管20を順次スキャンすることで、各配管をサンプリングし漏洩を検出する。または、直接配管を引くのではなく、サンプリングした気体を分析する構成とする。
【0052】
このような構成においては、連続検査するナトリウム漏洩検出システム21にて、漏洩が検出された場合は、レーザ式漏洩検出器22にて、漏洩が検出された配管について漏洩を確認する。両者にて漏洩が検出された場合に、警報判定装置23にて警報24を発する。これにより、ナトリウム漏洩検出システム21にて連続的に漏洩を検出するとともに、ナトリウム以外による誤動作の低減のために、レーザ式漏洩検出器22にてナトリウム成分であることを確認する。
【0053】
また、間欠的な漏洩の場合、図10に示すようにナトリウム漏洩検出システム21でサンプリングされた気体を再度レーザ式漏洩検出器22で分析できる構成とすることで、確実に漏洩を検出できる。
【0054】
本実施形態によれば、連続検査を放電式のナトリウム漏洩検出システム21で行い、一方、詳細な分析をレーザ式漏洩検出器22で行うことで、誤動作が少ないナトリウム漏洩検出システムを実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1…サンプリングガス、2…サンプリング配管、3…気体吸引口、4…気体放出口、5…ポンプ、6…イオン発生室、7…放電装置、8…イオンセンサ、9…信号処理装置、10…電磁遮蔽体、11…イオン放出用気流、12…ファン、13…配管、14…イオンフィルタ、15…温度センサ、16…第2のイオンセンサ、17…補正用イオンセンサ、18,28,29…絶縁材、19…光源、21…ナトリウム漏洩検出システム、22…レーザ式漏洩検出器、25…イオン収集電極、26…陰極、27…ガード電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象の周囲の気体を吸引してサンプリングし、被検査対象からのナトリウムの漏洩を検出するナトリウム漏洩検出システムにおいて、
サンプリングガスの流路を形成するサンプリング配管と、前記サンプリング配管の側部に配置され、放電装置により気体をイオン化するイオン発生室と、サンプリングガスと混合されたイオンのイオン量を計測するイオンセンサと、前記イオンセンサの出力からナトリウムの漏洩量を求める信号処理装置とを備えることを特徴とするナトリウム漏洩検出システム。
【請求項2】
前記信号処理装置は、前記放電装置への制御信号を監視し、前記イオンセンサの出力を補正することを特徴とする請求項1記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項3】
前記放電装置は、10−3μm以下の粒径のイオンを生成するように電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は2記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項4】
前記サンプリング配管の気体吸引口に、サンプリングガス中のエアロゾルの粒径を0.5μm〜30μmに選別するフィルタを設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項5】
前記サンプリング配管の気体吸引口に、1μm以下の粒径のエアロゾルに細断化するエアロゾル分解装置を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項6】
前記放電装置は、交流電圧又は間欠的な電圧が印加されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項7】
前記イオン発生室の出口に、メッシュ状の電磁遮蔽体を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項8】
前記サンプリング配管の気体放出口付近と前記イオン発生室を配管により連結し、気体を還流させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項9】
サンプリングガスの流路において前記イオンセンサの上流にサンプリングガスの温度を計測する温度センサを設置し、前記信号処理装置は、前記温度センサの応答時間に応じて遅延させた前記イオンセンサの出力を前記温度センサの出力により補正することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項10】
被検査対象の周囲の気体を吸引してサンプリングし、被検査対象からのナトリウムの漏洩を検出するナトリウム漏洩検出システムにおいて、
サンプリングガスの流路を形成するサンプリング配管と、前記サンプリング配管の側部に配置され、放電装置により気体をイオン化するイオン発生室と、サンプリングガスと混合されたイオンのイオン量を計測する、第1のイオンセンサ及び前記第1のイオンセンサの上流に配置された第2のイオンセンサと、前記両イオンセンサの出力の差によりナトリウムの漏洩量を求める信号処理装置とを備えることを特徴とするナトリウム漏洩検出システム。
【請求項11】
前記イオン発生室の出口に補正用イオンセンサを配置し、前記信号処理装置は、前記イオンセンサの出力を前記補正用イオンセンサの出力により補正することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項12】
前記イオンセンサ内の絶縁材の表面に酸化チタン膜を形成し、前記絶縁材の表面に光を照射する光源を設けたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項13】
前記イオンセンサは、イオン収集電極、陰極、及び前記両電極間に前記イオン収集電極と同じ電圧を印加するガード電極を有し、前記イオン収集電極と前記ガード電極間、及び前記陰極電極と前記ガード電極間に絶縁材が配置され、
前記ガード電極と前記陰極間のリーク電流を測定し、
前記信号処理装置は、前記イオン収集電極と前記陰極との間に流れる電流信号を前記リーク電流により補正することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システム。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載のナトリウム漏洩検出システムによりナトリウムの漏洩を検出したとき、さらにレーザブレークダウン法によるレーザ式ナトリウム漏洩検出器により確認することを特徴とするナトリウム漏洩検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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