説明

ナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板

【課題】大きな面積の基板への適用が可能で、基板の材質に制約がなく、粒子を任意の配列にかつ正確に転写できるナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板を提供すること。
【解決手段】粒子2を含有する液体をホールパターンを有するナノインプリントフィルム1に塗布、乾燥させ、このナノインプリントフィルム1上に存在する余剰粒子を取り除いた後、このナノインプリントフィルム1を介して粒子2を基板3上に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス等の基板に対して各種光学的特性を持たせるために、具体的には、例えば、ガラス基板へ入射した光のガラス基板と空気との界面での反射を抑制することにより、ガラス基板の光の透過率を高めるために、ガラス基板の表面に微小な凹凸の反射防止構造を形成する試みがなされている(例えば、特許文献1−2及び非特許文献1−2参照。)。
【0003】
ところで、ガラス等の基板の表面に微小な凹凸構造を形成する方法として、特許文献1においては、成形面に微小な凹凸構造の転写構造を形成した金型を用いて、加熱軟化させた基板をプレス成形する方法が用いられているが、大きな面積の基板への適用が困難であるとともに基板の材質に制約があり、また、コストを要するという問題があった。
【0004】
また、特許文献2においては、粒子単層膜からなる2次元結晶体をエッチングマスクとしたドライエッチング法が用いられているが、大きな面積の基板への適用が困難であるとともに、形成される凹凸構造が2次元最密充填格子に限定され、また、コストを要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−72484号公報
【特許文献2】特開2009−158478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のガラス等の基板の表面に微小な凹凸構造を形成する方法の有する問題点に鑑み、大きな面積の基板への適用が可能で、基板の材質に制約がなく、粒子を任意の配列にかつ正確に転写できるナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法は、粒子を含有する液体をホールパターンを有するナノインプリントフィルムに塗布、乾燥させ、該ナノインプリントフィルム上に存在する余剰粒子を取り除いた後、該ナノインプリントフィルムを介して粒子を基板上に転写することを特徴とする。
【0008】
この場合において、ナノインプリントフィルム上に存在する余剰粒子を超音波洗浄により取り除くようにすることができる。
【0009】
また、余剰粒子を取り除いたナノインプリントフィルムを、粒子が存在する側の面が基板の表面に接するように設置し、加熱することによって粒子を基板上に転写することができる。
【0010】
また、本発明の基板は、上記ナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法によって作成された粒子が転写された基板である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板によれば、使用するナノインプリントフィルムに応じて、任意の大きさの基板への適用が可能で、基板の材質に制約がなく、粒子を任意の配列にかつ正確に基板に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法の一実施例を示す模式図である。
【図2】ナノインプリントフィルムのホールパターンのホールに入った粒子数を示すグラフ図である。
【図3】(a)は粒子を含有する液体をホールパターンを有するナノインプリントフィルムに塗布、乾燥させ、ナノインプリントフィルム上に存在する余剰粒子を取り除いた状態を撮影した写真で、(b)は粒子を基板上に転写した状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法は、図1に示すように、粒子2を含有する液体20をホールパターンを有するナノインプリントフィルム1に塗布、乾燥させ、このナノインプリントフィルム1上に存在する余剰粒子を取り除いた後、ナノインプリントフィルム1を介して粒子2を基板3上に転写するようにしたものである。
【0015】
この場合において、ホールパターンを有するナノインプリントフィルム1は、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、PET樹脂等の合成樹脂からなり、ナノインプリントフィルム1に形成されたホールパターンのホールに入り込んで配列された隣接する粒子2同士が接触し合う2次元最密充填格子のほか、隣接する粒子2同士が接触しない三角格子等の任意のホールパターンのものを用いることができる。
【0016】
ホールパターンを有するナノインプリントフィルム1の表面は、粒子2を含有する液体20との親和性を高めるために、UVオゾン処理、コロナ放電処理等の表面処理を施すようにすることが好ましい。
【0017】
ホールパターンを有するナノインプリントフィルム1に塗布する粒子2を含有する液体20は、基板3に対して各種光学的特性を持たせるためのもので、粒子2には、シリカビーズ等の無機粒子や合成樹脂製のビーズ等の有機粒子を用いることができ、粒子2を分散させる液体には、水のほか、アルコール等の有機溶媒等を用いることができる。
【0018】
粒子2を含有する液体20には、ナノインプリントフィルム1との親和性を高めるために、界面活性剤等の添加剤を添加することが好ましい。
【0019】
また、粒子2を含有する液体20をホールパターンを有するナノインプリントフィルム1に塗布、乾燥させた状態では、ナノインプリントフィルム1上に余剰粒子が残存するため、この余剰粒子を取り除く必要があるが、これには、超音波洗浄や高圧気体によるブロー洗浄により取り除くようにすることができる。
【0020】
粒子2を転写する基板3は、ガラス等の無機材料、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、PET樹脂等の合成樹脂材料を用いることができる。
【0021】
また、余剰粒子を取り除いたナノインプリントフィルム1を介して粒子2を基板3上に転写(固定)する方法としては、ナノインプリントフィルム1の粒子2が存在する側の面が基板3の表面に接するように設置し、粒子2と基板3が固着する温度まで加熱するようにしたり、少なくとも基板3又は粒子2を溶解する性質を有する溶剤や接着剤を用いることによって粒子2を基板3上に転写することができる。
【0022】
次に、より具体的な実施例を用いて、本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板を説明する。
【0023】
ホールパターンを有するナノインプリントフィルム:シクロポリオレフィン樹脂(厚さ100μm)からなり、隣接する粒子同士が接触しない三角格子のホールパターン(ホール径230nm、ホール深さ200nm、間隔230nm)、Tg温度136℃(サイヴァクス社製FLH230−4)
表面処理:UVオゾン処理(あり、なし)
粒子:シリカビーズ(直径200nm)(日産化学工業社製)
粒子を分散させる液体:水(シリカビーズ濃度1.0容積%(0.1〜5.0容積%))
粒子を分散させる液体の添加剤:界面活性剤(SDS(Sodium Dodecyl Sulphate)、添加量なし、0.005%、0.05%、0.5%)
粒子を含有する液体を塗布したナノインプリントフィルムの乾燥方法:室温での乾燥
余剰粒子を取り除く方法:超音波洗浄
基板:ガラス(軟化点740℃)
粒子を基板上に転写(固定)する方法:ナノインプリントフィルムの粒子が存在する側の面が基板の表面に接するように設置し、上から錘で押さえながら、電気炉で熱処理(500(〜750)℃、30分)することにより、粒子を基板上に転写(固定)するとともに、ナノインプリントフィルムを焼失させる。
【0024】
表1に示す条件で、ナノインプリントフィルムのホールパターンのホールに入った粒子数(粒子数/ホールパターンのホール数(以下、「定着率」という。))をグラフ図として図2に示す。
図2の結果から、以下の事項が確認できた。
・UVオゾン処理を行うことによって、定着率が向上する。
・界面活性剤(SDS)を添加するもとによって、定着率が向上する。
・UVオゾン処理及び界面活性剤(SDS)は、いずれか一方でも定着率が向上するが、両方行うことによって、定着率が一層向上する。
なお、図2に示す定着率の値は、あくまでも比較のための数値であって、これより高めることが可能である。
【0025】
【表1】

【0026】
次に、図3(a)に示す粒子(シリカビーズ)を含有する液体をホールパターンを有するナノインプリントフィルムに塗布、乾燥させ、ナノインプリントフィルム上に存在する余剰粒子を取り除いた状態を撮影した写真(SEM画像)から、ナノインプリントフィルムフィルム上に余剰粒子は存在せず、粒子がナノインプリントフィルムのホールパターンのホールに入り込んで整然と配列されていることが確認できた。
【0027】
また、図3(b)に示す粒子(シリカビーズ)を基板上に転写した状態を撮影した写真(SEM画像)からのとおり、粒子が基板上にナノインプリントフィルムのホールパターンのとおりに正確に転写(固定)されていることが確認できた。
【0028】
以上、本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法及びそれによって作成された粒子が転写された基板は、大きな面積の基板への適用が可能で、基板の材質に制約がなく、粒子を任意の配列にかつ正確に転写できることから、光の透過率の高いガラス基板の製造の用途に好適に用いることができるほか、基板に対して各種光学的特性を持たせるための用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ナノインプリントフィルム
2 粒子
20 粒子を含有する液体
3 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含有する液体をホールパターンを有するナノインプリントフィルムに塗布、乾燥させ、該ナノインプリントフィルム上に存在する余剰粒子を取り除いた後、該ナノインプリントフィルムを介して粒子を基板上に転写することを特徴とするナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法。
【請求項2】
ナノインプリントフィルム上に存在する余剰粒子を超音波洗浄により取り除くようにしたことを特徴とする請求項1記載のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法。
【請求項3】
余剰粒子を取り除いたナノインプリントフィルムを、粒子が存在する側の面が基板の表面に接するように設置し、加熱することによって粒子を基板上に転写することを特徴とする請求項1又は2記載のナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載したナノインプリントフィルムを用いた粒子の転写方法によって作成された粒子が転写された基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−54223(P2013−54223A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192736(P2011−192736)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「希少金属代替材料開発プロジェクト/蛍光体向けテルビウム・ユーロピウム使用量低減技術開発及び代替材料開発/高速合成・評価法による蛍光ランプ用蛍光体向けTb、Eu低減技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】