説明

ナノキャリアに基づいたトランスフェクション及び形質導入植物

本発明は植物細胞の形質導入及び/又はトランスフェクションのための新規方法を提供する。細胞透過性ペプチド(CPP)は多細胞接合胚と同様に単一植物細胞小胞子へたんぱく質及びオリゴヌクレオチドの送達するためのナノキャリアとして使用するのに成功した。CPP内在化の効果及びたんぱく質及び/又はオリゴヌクレオチドを含む高分子カーゴのさらなる送達は接合胚の透過化によって高めるることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞透過性ペプチドを使用した植物の形質転換のための新規方法及び新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特有の形質を示す植物の新種を開発するための従来の植物育成戦略は多大な時間がかかり、そして時々予測し得ない。近年、植物遺伝子形質転換のための方法の開発並びに有用な遺伝子及びそれら生成物の同定及び入手可能性の増化は、それら生成物の望まれる形質を発現させる植物の急速な開発を可能にしている。しかしながら、改良された方法の必要性が未だ残っている。アグロバクテリア媒介形質転換及び粒子衝突のような現在の戦略は、細胞組織及び遺伝子型に大きく依存している。細胞透過性ペプチド(CPP)は新規であり、並びに哺乳類及びヒトの細胞株中の生体膜を越えてたんぱく質及びDNAを含むカーゴ複合体の幅広い範囲の輸送における重要な役割として働くことが知られている短ペプチドの分野で急速に成長している(シュバルツ及びチャン、2000;ランゲル、2002;ビベス、2002)。
【0003】
HIV−1 TATたんぱく質形質導入領域(PTD)は最もよく研究されている輸送ペプチドの1つである。最近の報告には、哺乳類の細胞における負帯電DNAとの複合体形成によるプラスミド配送のためのTAT−PTD及びそのオリゴマーの可能性を示している(イグナトビッチら、2003;ルドルフら、2003;シプラシビリら、2003;ヘルグレンら、2004)。輸送特性を有することを示している他のペプチドはpVEC、トランスポータン、ペネトラチン、pep−1ペプチド及びそれらの断片を含む。
【0004】
CPPに仲介された輸送に関する先行技術のいくつかは以下に議論される。米国特許出願公開2004/0121325号明細書は、組み替え植物、又はキシロシルトランスフェラーゼ活性を有する若しくはそれに補完するたんぱく質のためのコードの配列を発現する植物細胞の生産方法が記載されている。
【0005】
PCT国際公開WO2005117992号パンフレットには、標的細胞への化合物の送達を制御するための組成物が開示されている。前記組成物は細胞透過性ペプチド、細胞透過性ペプチド抑制剤、複合物、及びペプチド抑制剤が細胞透過性ペプチドの輸送活性を阻害する切断部位が含まれる。切断剤による切断部位の切断は細胞透過性ペプチドを脱抑制し、及び脱抑制された細胞透過性ペプチドは目標細胞へ化合物を輸送することを可能にする。しかしながら。この適用は植物細胞の形質転換を開示していない。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0260756号明細書は、細胞への二重螺旋RNA分子の送達を促進するための膜透過性複合体を開示しいている。前記複合体は、二重螺旋RNAと細胞透過性ペプチドとを結合している共有結合を有する、二重螺旋RAN分子及び細胞透過性ペプチドを含む。この開示は神経細胞の形質転換に限られている。
【0007】
アンナマライら(FEBS レターズ 566(2004)307)は、転写後遺伝子抑制のためのdsRNAの送達のためのカチオン性オリゴペプチドポリアルギニンの使用を開示している。
【0008】
CPPは哺乳類細胞におけるカーゴ送達を促進することを示している一方、トランスフェクション研究のための植物細胞におけるCPPの使用はいくつかの要因によって制限される。植物にこの技術を適応するための主となる障害は、動物細胞と異なり、植物細胞は
CPP及びそれらカーゴの内在化のための二重障害システム(細胞壁及び細胞膜)を示すことである。従って、CPPは、有効な転座のためにこれら二つの障害に打ち勝たなければならない。
【0009】
植物ゲノムシークエンシング計画からのますます増加する情報とともに、遺伝子の幅広い配列の機能性ゲノム研究ための、及び望まれる形質を発現する遺伝子組み換え植物の開発のため植物における、素早く、普遍的な方法(組織/遺伝子型と独立した)の開発の緊急な要求がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は遺伝子及び/又はたんぱく質を植物細胞へ送達する新規方法のための要求に取り組んでいる。細胞透過性ペプチドは植物細胞の内部へ所望のカーゴを送達するために使用されていた。
【0011】
本発明の一態様において、植物細胞へのカーゴ部分の送達のための方法を提供する。この方法は、植物細胞をキャリア部分と結合している少なくとも1つのカーゴ部分を含む複
合体に露出させることを含む。前記植物細胞は好ましくは体細胞又は配偶体細胞である。
【0012】
好ましい一つの態様において、キャリア部分は、細胞透過性及び核酸結合性を有するポリペプチドである。さらに好ましい態様は、キャリア部分が核局在化シグナルを含有する。
【0013】
前記キャリア部分はHIV tat、pVEC、トランスポータン、ペネトラチン、Pep−1ペプチド、及びそれらの断片からなる群から選択され得る。細胞透過性を有する他のキャリアはまた、本発明の方法に使用され得る。好ましい態様は、キャリア部分がtat又はその断片のたんぱく質形質導入領域(PTD)、好ましくはHIV tatのアミノ酸49乃至57を含む。
【0014】
本発明の一態様において、カーゴ部分は核酸を含む。前記核酸は、mRAN、tmRNA、tRNA、rRNA、siRNA、shRNA、PNA、ssRNA、dsRNA、ssDNA、dsDNA、DNA:RNAハイブリッド;プラスミド、人工染色体、遺伝子治療構築体、cDNA、PCR生成物、制限断片、リボザイム、アンチセンス構築体、又はそれらの組み合わせを含み得る。好ましい一態様において、核酸はDNAである。他の好ましい態様において、核酸はRNAである。
【0015】
本発明の他の態様において、カーゴ部分はポリペプチドである。好ましい一態様において、ポリペプチドは細胞代謝を変えるたんぱく質をコードする。たんぱく質はたんぱく質又はその活性領域に関連した胚形成をなし得る。たんぱく質は相同組み換え遺伝子又はその活性領域と関連するポリペプチドであり得る。
【0016】
本発明の別の態様において、カーゴ部分はまた、さらなるポリペプチド及び/又は核酸の組み合わせを含む。
【0017】
本発明の好ましい態様において、体細胞性植物細胞(asomatic plant cell)は複合体の内在化を促進するために細胞透過化剤で前処理される。好ましい透過化剤はトルエンである。
【0018】
本発明の前記方法に加えて、本発明はまた、植物細胞への活性物質の輸送を仲介するための複合体を提供する。複合体はキャリア部分に結合したカーゴ部分を含むものであって、キャリア部分は植物細胞中へ複合体を送達することができる。
【0019】
好ましい態様において、カーゴ部分は核酸であり及びキャリア部分は核内在化シグナルを包含する。他の態様において、複合体はカーゴ部分及びキャリア部分からなる融合たんぱく質を含む。標識たんぱく質が複合体の内在化を追跡するために含まれ得る。様々な他種のたんぱく質、例えば部位特異的組込みと関連するたんぱく質もしくは胚形成たんぱく質又はそれらの活性領域は、複合体中に含み得る。
【0020】
他の好ましい態様において、上記方法はトランスフェクト剤、例えばリポフェクタミン、の添加を含む。
【0021】
本発明はまた、本発明の方法及び構築体を使用して生産された組み換え遺伝子植物種及び単一の植物細胞を提供する。
【0022】
本発明のこれら及び他の特徴は添付した図面を参照する下記説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の態様に従うフルオレセイン化された複合体の転座に関する透過性の効果を示す。
【図2】図2は小胞子における摂取Tatを実証する。
【図3】図3は透過化胚における様々なCPPの効果を実証する。
【図4】図4は透過化胚におけるTat−GUS複合体摂取を図解する。
【図5】図5は透過化胚におけるTat2−GUS複合体摂取を図解する。
【図6】図6は透過化胚におけるPep−1−GUS複合体摂取を図解する。
【図7】図7は小胞子におけるPep−1−GUS複合体摂取を図解する。
【図8】図8は透過化胚におけるgus遺伝子発現を実証する。
【図9】図9はTat−DNA複合体で処理された小胞子からの植物を示す。
【図10】図10はgus遺伝子発現に関するリポフェクタミンの効果を図解する。
【図11A】図11AはCPP及びDNAの異なる処理の効果を示す。
【図11B】図11BはDNA及びRecAの種々の組み合わせの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
植物細胞の細胞進入障壁を越えて外来核酸又はポリペプチドの送達は困難である。成功する機会は植物組織をトルエンのような細胞の透過化剤で処理することにより改善されるが、しかしその形質転換の割合は未だに低いままである(マハラクシュミら、2000)。
【0025】
本発明は植物細胞へのカーゴの送達のための新規方法を提供する。カーゴは標的細胞において発現する核酸分子であり得、及びポリペプチドであり得る。カーゴは植物細胞への送達を追跡するための標識を含み得る。
【0026】
本発明の方法において、カーゴは細胞透過性ペプチド(CPP)と結合し、また本明細書において「キャリア」又は「キャリア部分」として呼ばれる。キャリアはカーゴと複合体を形成し、そしてカーゴを細胞中へ運ぶ。
【0027】
つまり、キャリア部分及びカーゴ部分を含む複合体は作りだされた。キャリア部分は植物細胞膜及び/又は細胞壁を横断することができる作用物質である。
【0028】
本発明に使用される好ましいキャリアは細胞透過性ペプチド(CPP)である。本発明の方法及び複合体に使用されるCPPは、HIV tat、pVEC、トランスポータン、ペネトラチン、Pep−1、及びそれらの断片が含まれるがこれらに制限されない。
【0029】
カーゴ部分は核酸又はポリペプチドであり得る。キャリアと結合し得る核酸の例は、mRNA、tmRNA、tRNA、rRNA、siRNA、shRNA、PNA、ssRNA、dsRNA、ssDNA、dsDNA、DNA:RNAハイブリッド;プラスミド、人工染色体、遺伝子治療構築体、cDNA、PCR生成物、制限断片、リボザイム、アンチセンス構築体、又はそれらの組み合わせを含む。好ましい一態様において、核酸はDNAである。他の好ましい一態様において、核酸はRNAである。キャリアと複合体を形成し得るポリペプチドの例としては、どのたんぱく質又はそのポリペプチド断片を含み得る。例えば、たんぱく質は植物又は植物細胞の表現型を修飾する作用物質であり得る。それはある種のペスト又は除草剤に対する耐性を与えるたんぱく質であり得る。前記ポリペプチドは細胞代謝を変えるたんぱく質、例えばたんぱく質に関する胚形成、部位特異的組込みを含むたんぱく質をコード化しえる。
【0030】
本発明のキャリア−カーゴ複合体は共有結合及び/又は静電的結合によって種々の方法において形成されることができる。また、複合体はCPP及びカーゴ、例えばPep−1と複合体を形成したRecAで被覆されたDNA、の組合せで作りだされ得る。
【0031】
本発明の好ましい方法において、細胞はまずは透過化剤で処理される。移送の驚くほど高い割合がCPPの使用を伴う透過化技術と組み合わせることによって達成できる。透過化処理は、CPP単独の輸送に役立たることが可能な、又は細胞壁及び細胞膜によるサイズ制限を克服することによるキャリア−カーゴ複合体として、原形質膜の一時的なポア形成を生じる。又一方で、透過化剤での前処理は全種類の植物細胞に要求されないことは明らか理解される。例えば、小胞子はいずれの全透過化段階なしにキャリア−カーゴ複合体を使用した形質転換を効果的にできる。
【0032】
種々の透過化剤がキャリア−カーゴ複合体の輸送を増進するために使用されることができる。トルエン及びエタノールを含む透過化溶液は、特に効果的であることを示されている。
【0033】
いくつかの典型的な実験結果は、本発明の方法及び組成物の効果を実証するために添付した図面に示された。
【0034】
ここで図1を参照することで、透過化の効果を実証した一連の顕微鏡写真を示す。ライ小麦 cv AC Altaの未成熟の胚中の蛍光標識化されたTAT−PTDの輸送は蛍光顕微鏡によって可視化された。この結果は透過化緩衝液(A)のみで培養化された対照胚及びトルエン透過化緩衝液(B)で処理した胚は蛍光発色しなかったことを実証した。FITC−標識化デキストラン硫酸塩(C)のみで処理した胚は標識化デキストラン硫酸塩のいずれの顕著な取り込みも実証されなかった。一方で、細胞の透過化剤(D)の存在下においてFITC−標識化デキストランで処理した胚は確かに、蛍光標識化TAT−PTDのみの(E)で処理された胚のように、いくらかの蛍光発色を実証した。しかしながら、最も顕著な取り込みは、細胞の透過化剤の存在下で蛍光標識化TAT−PTDで処理した胚で観察された。このことは、細胞透過化がTAT−PTDのような細胞透過性ペプチドの使用を伴う場合、移送の高い効果を実証する。この図1に示した結果は、未成熟の胚の透過化が細胞透過性ペプチドの効果的な輸送を促進することの実証する。
【0035】
しかしながら、透過化は総ての細胞種にとって必須というわけではない。図2は単一の小胞子による蛍光標識化Tatの取り込みを図示する。これらの結果はTat CPPが細胞中へ透過することができることを示唆する。
【0036】
種々異なる型の細胞透過性ペプチドが本発明の方法に有用であった。表1は研究された
いくつかのCPPを示す。
【0037】
【表1】

【0038】
これらペプチドに関して、N末端基は“FI”で示されたように蛍光標識化された。トランスポータンペプチドは、13番リシンとつながるN末端における神経ペプチドガラニンからC末端にハチ毒マストパランからの14番アミノ酸へとつながる12アミノ酸を含むキメラペプチドである。pVECペプチドはマウス血管内皮カドヘリン(アミノ酸615−632)から送達された。TAT−PTDペプチドはHIV−1 TATたんぱく質形質導入領域を含む。
【0039】
【表2】

【0040】
表2は、未成熟の及び成熟胚が種々の細胞透過性ペプチドに露出された場合に観察された相対的な蛍光発色を示す。
【0041】
同様の結果が図3にグラフで表されている。この結果は、成熟及び未成熟の胚の両方に生じる種々のペプチドの輸送を示す。輸送の効率は、細胞がトルエンのような透過化剤に露出されたときに、向上する。トルエンは透過化の効果を示す典型的な物質として使用されているが、他の透過化剤も同効果を達成するために使用されることができることは明らかである。3つの異なるCPPを使用している表2及び図3の結果は、他のCPPもまた本発明の方法に有益であるという妥当な予測を示す。
【0042】
研究された3種のペプチド全ての輸送における顕著な増加が生じたことから、接合体胚
によって生じた細胞障壁はトルエンで組織を透過化させることによって超えられることができることを、この結果は示す。FITC標識化デキストラン硫酸塩は、それが細胞透過化能を有さないので、陰性対照としての機能を果たす。他の陰性対照としては、M−tatもまた、CPPによる透過化は配列依存性の高いことを示唆している著しく減少した蛍光を示す。
【0043】
GUSレポーターシステム(GUS:β−グルクロニダーゼ)は植物分子生物学の技術分野においてよく知られているレポーターシステムである。このレポーターシステムは細胞透過化の効果、並びにたんぱく質形質導入及び遺伝子トランスフェクションの効率を高めるのためにCPPの使用を実証するために使用された。
【0044】
図4は透過化された胚におけるTat−GUS酵素複合体の取り込みを図示している。この顕微鏡写真はたんぱく質形質導入の高効率な方法を明らかに実証している。取り込みをさらに高めるために、Tat2 CPPは特注で合成され、Tat2はHIV TatのPTDの18アミノ酸ダイマーである。CPPとしてのTat2を使用したこの結果は図5に示されている。本発明の方法に使用することができる他のCPPを再度実証するために、Pep−1−GUS酵素複合体は調製された。図6に示されている顕微鏡写真は、この複合体を使用している透過化された未成熟の胚における効果的なたんぱく質形質導入があることを図示している。図6Aは対照の胚であり、及び図6BはPep−1による仲介されたGUS酵素送達を図示している。たんぱく質カーゴの送達のためのCPPとしてのPep−1の効率をさらに実証するために、小胞体は同じ複合体で取り扱われ、そして結果は図7に示される。
【0045】
上記のように、試験されたCPPの輸送は透過化された成熟及び未成熟の胚においてより良好であった。TAT−PTDは未成熟胚の胚域に明らかに蓄積し、そしてTAT−PTDの取り込みは未成熟胚における透過処理の後に最高水準(4.7倍)まで増加した。さらに、TAT−PTDは、植物細胞/組織における遺伝子送達のための適したキャリアを形成するためにDNAと結合するための可能性を伴うアルギニンリッチである。
【0046】
さらなる研究において、TAT−PTD−プラスミドDNA複合体は透過化された胚におけるプラスミドによってコード化されたgus遺伝子発現を誘導するためのその能力を評価された。その結果は図8に示され、及びCPP−プラスミドDNA複合体が植物細胞において発現のための遺伝子を送達するために使用されることができることを明らかに示唆している。透過化胚におけるGUSトランス遺伝子発現は非透過化胚における発現よりも著しく高い。このことは、細胞の透過化がCPPに仲介されたカーゴ複合体の輸送における重要な役割を果たすことを、強く示唆する。この結果はまた、複合体形成及び透過化が輸送されたカーゴ成分の生物学的活性を危険にさらさないことを示唆する。
【0047】
遺伝子トランスフェクションのための本発明の方法の効率はTat/Tat2−DNA複合体を使用してさらに実証された。DNAは除草剤耐性遺伝子を運ぶ。小胞子はトランスフェクトされ、及び植物が生み出された。図9は、トランス遺伝子植物が本発明の方法
を使用して生み出されることができることを図示している。
【0048】
植物遺伝子トランスフェクションの効率は、リポフェクタミンのような他の知られているトランスフェクション促進剤を含むことによってさらに高めることができる。リポフェクタミンがCPP−DNA複合体で処理された透過化細胞に加えられた場合、その効率はなお一層向上した。図10に示された結果は、Tat:DNA複合体を形成することにより、トランスフェクション割合はリポフェクタミン担体がトランスフェクト剤として使用された場合より高くなる。また一方で、リポフェクタミンとCPP−DNA複合体との組み合わせは最も効果的であった。
【0049】
gus遺伝子及びたんぱく質リポートシステムがこのシステムの効果を実証するために使用されてきているが、GUSのような大きな分子が移送可能であり、及び複合体遺伝子生成物が本発明の方法を使用して発現可能ならば、他のたんぱく質は移送可能で、及び他の遺伝子もトランスフェクト可能である、ということは明らかである。
【0050】
本発明の方法はまた、たんぱく質と植物細胞とを関連付けられた胚形成の形質導入のために使用されている。このことは、胚形成を誘発し及び標識として作用できる。このことはまた、植物細胞へ送達するたんぱく質の新規及び一般的な方法を提供する。興味のあるたんぱく質及び遺伝子に関連する胚形成の共送達は植物遺伝子工学の新規方法を提供する。
【0051】
詳細に説明された方法の変化もまた包含される。例えば、ペプチドと核酸又は他のオルガネラ局在領域はCPP−カーゴ複合体に組み込まれ得る。
【0052】
現在、一種以上の好ましい態様が実施例の方法によって記載されている。いくつもの変化及び修飾が特許請求の範囲に定義された発明の範囲から逸脱しないで行うことができるのは、当業者に明らかであろう。
【0053】
上記の公開は本発明を一般的に説明する。先の説明を用いて、当業者は、本発明の組成物を作成及び使用し、並びに本発明の方法を実施することができることが確信される。さらに完全に理解することは、下記の詳細な実施例を参照することによって得られえる。これら実施例は単に本発明の好ましい態様を説明するために記載され、及び本発明の範囲を制限することを目的としているものではない。形態及び相当物の置換基の変化は、詳細が方法を提案又は表し得るように、考慮される。他の一般的な形態は当業者にとって明らかである。本明細書で参照される特許又は特許出願等の文献は参照されることによって本明細書に組み込まれた。
【0054】
専門用語がこれら実施例において使用されるが、そのような用語は記述的な趣旨において意図されており、限定の目的のためではない。微生物学及び物理学の手法は本公開に明白に記載されていないことに言及し、及びこれらの実施例は科学文献に報告され、及び当技術者には周知である。
【実施例1】
【0055】
実施例1.植物細胞の調製
成熟胚
成熟胚(小麦cv AC スパーブ)を単離し、及び表面をマハラクシミら(2000)による記載のように滅菌した。この滅菌した胚を使用前に1時間、層流フード中で風乾した。
【0056】
未成熟胚
胚を開花後2週間の穂(胚盤径1−2mm)から単離した。未成熟種の表面を70%エタノールで30秒間殺菌し、続いて、10%次亜塩素酸塩(クロレックス)と1滴のツイーン20(Tween 20)で3分間処理した。滅菌水で各1分間の洗浄を4回した。胚を殺菌下で手で切開した。単離された胚をCPP輸送研究前に、室温で暗室中に24時間、GEM培地(ユードら、2003)に置いた。単離された小胞子をアムンセン及びユード、2005の記載どおり準備した。
【0057】
実施例2.細胞透過化剤を使用した接合胚における蛍光標識された細胞透過性ペプチドの輸送
ペプチドを特注で合成し、及びN末端アミノ基を蛍光標識した(アルバータペプチド機関、カナダ)(表1)。FITC−デキストラン硫酸塩(4,000kDa、シグマアルドリッチ社)及び変異Tatを陰性対照として使用した。
【0058】
単離及び殺菌した胚(20−25)に、細胞透過化剤トルエン/エタノール(1:4)を透過化緩衝液に対して1:20の割合で含む透過化緩衝液(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリウム、pH7.1)全量420μLを吸収させた。これに、1mMの蛍光標識されたCPP2.1μLを加え、5μMの最終濃度とした。陰性対照にお
いては、胚をFITCデキストラン硫酸塩又はM−Tatで処理した。胚を1時間の間、暗所中室温で透過化緩衝液中で混合しながら培養し、続いて透過化緩衝溶液で2回洗浄した。次に、フリーペプチド分子を除去するために、5分間室温で透過化緩衝液に対して1:2の割合でトリプシン:EDTA(0.25%溶液、シグマ−アルドリッチ社)で胚を処理した。胚を透過化緩衝液で2回洗浄し、そして蛍光顕微鏡検査法か又は蛍光分光分析の対象とした。
【0059】
蛍光顕微鏡検査法
細胞透過性ペプチドでの処理及び遊離した、細胞外ペプチドの酵素分解後の胚は蛍光顕微鏡検査法に従って可視蛍光が観察された(GFPフィルタ;励起光470nm/蛍光525nm;ライカ社製、ドイツ国)
【0060】
蛍光標識されたペプチドの輸送は蛍光顕微鏡検査法に従う観察されたような成熟及び未成熟の胚の両方における透過化剤(トルエン)の存在下において著しく増加する(図1及び表2)。FITC−デキストラン硫酸塩及びM−Tatで処理されることを含む陰性対照は全くないかとても弱い蛍光発光を示した(図1A−D)。一般的に、未成熟胚の蛍光強度は透過化及び非透過化条件の両条件下において成熟胚よりも優れていた(表2;図3)。3種のペプチド研究のうち、pVECは細胞透過化剤で処理された胚でさえ、最小の取り込みを示した。興味深いことに、他の2つのペプチドによる透過化胚の処理は蛍光発色の均一な分布を示したけれども、TAT−PTDで処理された透過化未成熟胚は胚盤における異なる層の蓄積、及び胚の胚芽域における局所的な蓄積を示した(図1F)。
【0061】
蛍光光度分析法
蛍光分析のために、胚を1%トリトンX−100(透過化緩衝液で調製)500μL、30分、4℃で処理した。その上清を新しいチューブに集め、そして異なるCPPで胚による相対蛍光摂取を蛍光光度計(バイオラッド、バーサフルーア(Versafluor)、アメリカ国、励起光490/蛍光520)によって評価した。
【0062】
蛍光分析はまた細胞透過化剤、トルエンで処理された胚における細胞透過性ペプチドの輸送において著しい増大を示した(図3A、B)。未成熟胚は透過化及び非透過化の未成熟胚において総てのペプチドに関して相関蛍光摂取の高い水準を示した。特に、未成熟胚中のTAT−PTDは非透過化の胚と比較して透過化された胚において4.7倍の高い相対蛍光を示した。トランスポータン及びpVEC転座はまた、透過化未成熟胚において1
.8倍及び1.7倍の増加であった(図3B)。しかしながら、蛍光分析は、透過化の及び非透過化の胚中のTAT−PTDに関する目視観測と比較したとおりに、トランスポータンの相対的に優れた輸送を明らかにした。
【0063】
実施例3.透過化未成熟胚によるCPP−プラスミドDNA複合体摂取
CPP−DNA複合体研究のために、非蛍光標識化TAT−PTDをDNA(pAct−1GUS)と複合体を形成するために用いた。プラスミドDNA及びTAT−PTDは、透過化緩衝液で100μLまで全量をあわせながら、1:10の比率(5μgDNA:50μgTAT−PTD、両者とも最適水中に保存)で共に混合された。混合液を添加する前に、透過化緩衝液を吸収した胚を室温で1時間培養した。緩衝液に対して1:20の比率の透過化剤(トルエン)を胚へ複合体を添加する直前に添加した。胚を1時間の間、透過化剤の存在下においてTAT−PTD及びDNA複合体と共に培養し、続いて透過化緩衝液で2回洗浄した。胚をセフォタキシムを250μg/mL含むGEM上に、25度暗所中で3日培養器で培養した。
【0064】
未成熟胚を、いずれの内因性GUS発現を避けるために20%メタノールを添加したGUSヒストケミカル緩衝溶液(ジェファーソン,1987)中、37度で一晩の間培養した。GUS発現%は(GUS発現している処理した胚の数/処理した胚の全数)×100として計算した。
【0065】
細胞透過化剤の存在下においてTAT−PTD−プラスミドDNA複合体と培養した未成熟胚は、非処理の陰性対照がいずれのGUS発現を示さなかったのに対して、一時的なGUS発現(12%、図8)を示した。透過化剤の添加なしに、単にTAT−PTD−DNA複合体のみで処理した胚は、未成熟胚においてTAT−PTD−DNA複合体の取り込みの促進において透過化剤の役割を示すいずれのGUS発現を示さなかった。
【0066】
実施例4.種々の植物組織によるCPP摂取
ライ小麦種を洗浄剤で洗浄し、そして湿綿上で1週間成長させた。根端、葉頂、葉脚及び子葉鞘を切断し、そして5μLの蛍光標識化されたpVEC、スクランブルpVEC、及びトランスポータンとともに培養した。根端及び葉客が最大の摂取を示し、続いて子葉鞘及び葉頂であった。トランスポータンは最大の蛍光発光を示し、続いてpVEC、スクランブルpVECであり、そしてCPPを添加しなかった対照であった。
【0067】
実施例5.未成熟胚におけるGUS酵素のCPP媒介送達
トルエンで透過化したライ小麦未成熟胚を、透過化緩衝液中で1時間の間CPP(Tat又はTat2又はR9)−GUS酵素混合物(4:1 w/w)で処理した。Pep−1に対して、哺乳類動物細胞株中へのたんぱく質形質導入のために計画されたアクティブモチーフ製(Active Motif)のチャリオットキット(Chariot kit)に従って行った。CPP−GUS酵素複合体を各々4:1の割合で調製し、そして室温で1時間培養した。処理した胚は、過剰の及び非内在のCPP−GUS酵素複合体の分解のために、5分間室温でトリプシン消化(1:1 トリプシン:透過化緩衝液)した。透過化緩衝液で3回洗浄した後、胚を、処理された未成熟胚に青色の出現のために、20%メタノール含有GUSヒストケミカル緩衝液(コスギら、1990)中37度で3時間乃至一晩培養した。
【0068】
実施例6.小胞市中のGUS酵素のCPP−仲介送達
ライ小麦小胞子を、NPB−99培地中1時間の間CPP(Pep−1、Tat、Tat2、R9)及びGUS酵素複合体(4:1)で処理した。CPP−GUS酵素複合体は先の実施例の記載のように調製した。2回洗浄した後、トリプシン(1:1 NPB−99培地を用いて)消化を5分間室温で行った。小胞子を、小胞子における青色の発現のた
めに37度で3時間から一晩の間20%メタノール含有GUSヒストケミカル緩衝液(コスギら、1990)中で培養した。陽性の小胞子は主として小胞中にGUSの蓄積が示された。
【0069】
実施例7.オニオン表皮細胞におけるGUS酵素のCPP−仲介送達
CPP R9による機能的に活性なGUS酵素の送達のための能力を、玉葱表皮細胞においても研究した。R9の複合体及びGUSは1乃至4:1の範囲の割合で、先の実施例に従い調製した。玉葱表皮細胞を1時間の間複合体と培養し、pH7.2のリン酸生理食塩水で3回洗浄した。複合体で処理された細胞は37℃で3時間GUSヒストケミカル緩衝液で培養条件で青色の発現した。4:1の割合が最大の青色を示した。
【0070】
実施例8.胚発生小胞子中のbar遺伝子のCPP−仲介送達
ライ小麦小胞子を、室温で1乃至2時間、CPP(Tat/Tat2)と、‘tap’プロモーター及びnosターミネーターによって誘導された断片をコード化する除草剤(ber)遺伝子との複合体で処理した。複合体をtat/tat2及びDNAの4:1(w/w)の割合で調製し、1時間培養し、続いてリポフェクタミン2000試薬を5−10μg添加した。細胞をNPB−99培地で2回洗浄しそしてさらに、子房の存在下NPB−99培地と10%のフィコール(Ficoll)中で胚発生のために培養した(ユード及びアムンセン、2005)。
【0071】
Tat/tat2 DNA複合体+リポフェクタミンで処理したPCR陽性カルス(calli)が下記表3中に示された通りに得られた。
【表3】

【0072】
実施例9.ライ小麦中のPHB遺伝子
小胞子単離のためのライ小麦腋芽はそれら根元を蒸留水中に及びそれら頭頂部をアルミホイルでつつみ、3週間冷蔵庫(4℃)で保存した。3週±3日の後、単一核小胞子期の半ばから後半を、以前に採取したアセトカルミン染色剤を使用したメジアンフローレットから検証した。NPB99培地の1mLあたり2.5×105の細胞となるように調製された精
製小胞子懸濁液を得るためにユード及びアムンセン(2005)に刊行された様にライ小麦へ、小胞子を運んだ。
【0073】
葉緑体又はミトコンドリアのための2種の輸送ペプチドをPHB代謝経路の酵素をコードする3種の遺伝子とともにフレーム単位でクローンした。同一の輸送ペプチドを含む等モル量の3種の遺伝子のカセットを同時トランスフェクションに使用した。滅菌水100μLに希釈された全DNAの1μgを100μLに希釈されたTat2 4μgに添加し
、そして穏やかに攪拌し、結果として混合液中のDNAと細胞透過性ペプチド(CPP)
の1:4の割合を生じた。複合体を室温で30分間培養した後に、続いてリポフェクタミン5μLを加え、室温で5分間培養した。2mL微小遠心管中の上清を除いた混合物を小胞子に加えた。小胞子を15分間の間キャリア−カーゴ複合体とともに培養し、そしてNPB−99の100μLを添加し、続いて室温以上で45分間培養した。トランスフェクトされた小胞子をNPB−99で洗浄し、次いで遠心分離しそして上清を除去した。1000μLのNPB−99を2mL微小遠心管に加え、穏やかに攪拌し続いて500mLを、セフォタキシム含有のNPB−99+10%フィコール(シグマ社 F4375)(NPB−99−10F)3mLを含む35mmのペトリ皿中にピペットでとった。
【0074】
植物から直接採取した同様に滅菌した穂からの4個又は5個の子房を小胞子を含む各々の皿に加えた。皿をパラフィルムで封止し、そして150mmペトリ皿中の滅菌蒸留水を含む蓋のない50mmペトリ皿のまわりにおいた。次いで150mm皿もパラフィルムで封止し、そして暗所中、28℃で20乃至30日間培養した。小胞子培養、胚培養及び植物培養の間、一切抽出を使用しなかった。
【0075】
再生植物を3種のトランス遺伝子の存在に関してPCRによってスクリーニングした。RNAは、興味ある3種の遺伝子に関してPCRで陽性であった植物から抽出した。cDNAは、この選択された植物から成長し、そしてPCRは3種のトランス遺伝子の発現の確認のために実施した。結果は表4に示した。
【表4】

【0076】
実施例10.ライ小麦小胞子におけるDNA−たんぱく質の共輸送
小胞子単離のためのライ小麦腋芽を、それら根元を蒸留水中にいれ及びそれら頭頂部をアルミホイルでつつみ、3週間冷蔵庫(4℃)で保存した。3週±3日の後、単一核小胞子期の半ばから後半を、以前に採取したアセトカルミン染色剤を使用したメジアンフローレットから検証した。NPB99培地の1mLあたり2.5×105の細胞となるように
調製された精製小胞子けん濁液を得るためにユード及びアムンセン(2005)に刊行されたライ小麦へ、単離した小胞子を運んだ。
【0077】
プラスミド(pAct−1 GUS、〜7.2kb)をPstl制限酵素を用いて線形化し、そしてDNAをPCR生成物精製キット(キアクイック(QIAquick)、キアゲン社(Qiagen)、米国)によって精製した。GUS DNAを下記7つの異なる処理(T)に従い得た。これら実験を5回繰り返した。
T1)対照:対照処理は滅菌水200μLである。
T2)GUS DNAのみ:200μLの滅菌水で希釈したGUS DNA(シグマアルドリッチ)1μg。
T3)GUS DNA−RecA:滅菌水100μLに希釈したDNA1μgを、100μLに希釈したRecA4μgへ添加し、そして穏やかに攪拌し、混合物中1:4の割合のたんぱく質とDNAを得た。
T4)DNA−Tat2:滅菌水100μLに希釈したDNA1μgを100μLに希
釈したTat2 4μgに加え、そして穏やかに攪拌し、結果として、混合物中1:4の割合のDNAと細胞透過性ペプチド(CPP)をもたらした。
T5)DNA−チャリオットキット:チャリオットたんぱく質形質導入キットを用いたGUS DNAを操作手順(アクティブ モチーフ社、米国)により形質転換した。GUS DNA1μgを滅菌水100μL中に希釈し、そしてチャリオットの6μLを滅菌水100μLに希釈した。GUS DNA溶液を2mLの微小遠心管中のチャリオット溶液に加え、最終容量を200μLにした。
T6)DNA−RecA−チャリオットキット:GUS DNA−RecA溶液をチャリオットたんぱく質形質導入キットを使用して小胞子中に送達し、操作手順は以下に従った。RecA4μgを滅菌水50μLに希釈し、及びGUS DNA1μgを滅菌水50μLに希釈した。RecA溶液をDNA溶液に加え、そして15分間培養した。チャリオット6μLを滅菌水100μLに希釈した。チャリオット溶液を、2mL微小遠心管中に最終体積が200μLになるようにDNA−RecA容器にピペットで加えた。
T7)DNA−RecA−Tat2:GUS DNA−RecAをTat2によって小胞子中に送達した。RecA4μgを滅菌水50μLに希釈し、そしてGUS DNA1μgを滅菌水50μL中に希釈した。RecA溶液をDNA溶液に加え、そして15分間培養した。Tat2 4μgを滅菌水100μLに希釈した。そしてTat2溶液をDNA−RecA溶液中へ加え、2mL微小遠心管中、最終体積を200μLとした。
【0078】
複合体を15分間室温で培養し、続いてリポフェクタミン5μLを添加し5分間室温で
培養した。混合物を2mLの微小遠心管中の上清を除いて小胞子のみへ添加した。小胞子
をキャリア−カーゴ複合体と15分間培養し、NPB−99 100μLを添加し、さらに45分以上室温で培養した。トランスフェクトされた小胞子をNPB−99で洗浄し、遠心分離し、そして上清を除去した。NPB−99 1000μLを2mL微小遠心管に加え、穏やかに混合した。500mLを、セフォタキシム含有のNPB−99+10%フィコール(シグマ社 F4375)(NPB−99−10F)3mLを含む35mmのペ
トリ皿中にピペットでとった。
【0079】
植物から直接採取した同様に滅菌した穂からの4個又は5個の子房を、小胞子を含む各々の皿に加えた。皿をパラフィルムで封止し、そして150mmペトリ皿中の滅菌蒸留水を含む蓋のない50mmペトリ皿のまわりにおいた。次いで150mm皿もパラフィルムで封止し、そして暗所中、28℃で20乃至30日間培養した。
【0080】
0.5mmより大きい胚をペトリ皿から取り除き、そしてGEM培地(10cmのペトリ皿に20mL:ユードら、2003)上で培養した。ペトリ皿をパラフィルムで封止し、16℃の室温で80μMm-2-1を送達しているシルバニアグロ−ラックス(Sylv
ania Gro−lux)広帯域電球(40ワット)(16時間で点灯終了)の30cm下に設置した。胚が緑色に変化した時点で、同じ条件で、マジェンダ容器中の根付け培地50mL上に無菌で移した。植物が2乃至3枚葉段階に達し、及び根が充分な根が生長した時点で、植物を4×8スペンサー−ルーメル育苗箱(スペンサー−ルーメル インダストリー リミテッド、エドモントン)に移し、母植物のように同じ条件で育成棚に置いた。開花後2週間に、倍数性を結実の状態を調べることによって推定した。
【0081】
4〜5週間で、胚をGUS組織化学分析を行った。分析は200mLのGUS組織化学的緩衝液(500mM NaH2PO4、100mM EDTA、0.3M マンニトール、2mM X−gluc、pH7.0)を小胞子に添加し、続いて37℃、暗所、一晩で培養することによって実施された。染色剤溶液は除去され、そして胚はPBSによって除去した。青色を示す小胞子はCPPによってGUS酵素を外生的な取り込みの活性を示唆する。各々の処理における青染色胚の割合は立体顕微鏡を使用して算定した。
【0082】
胚におけるTat2及びチャリオットの明らかな転座はトランスフェクションの2ヵ月後に観察された(表5)。GUSは陰性対照、未処理の小胞子中には観察されなかった。Tat2及びチャリオットでの処理でGUSを示した最も高い数の胚は各々25.8及び26.4%であった(表5)。2番目の頻度の青染色胚はDNA−RecA−チャリオット及びDNA−RecA−Tat2を用いた処理で観察された。リポフェクタミンを用いた、DNA及びDNA−RecA処理は低頻度で小胞子へのトランスフェクト可能である。これらの研究は、異なるDNAとたんぱく質との複合体がライ小麦小胞子中に内在化されたことを示している。
【0083】
表5.トランスフェクション後2ヶ月の遺伝子形質転換のための7種の異なる処理により作り出された胚を発現したGUSの総数。
T1)対照、未処理の胚;T2)DNA;3)DNA−RecA;T4)DNA−TAt2;T5)DNA−チャリオット;T6)DNA−RecA−チャリオット;T7)DNA−RecA−Tat2
【表5】

【0084】
実施例11:DNアーゼI保護アッセイ及び遅延度アッセイ
CPP−GUS DNA複合体を、ライ小麦小胞子DNA(T2)及びDNA−RecA(T3)中のDNA及びCPP複合体の実施例10における送達のために記述される通りに調製した。リポフェタミンなしであるが、DNアーゼI保護アッセイは、ライ小麦小胞子中にDNAとCPPの複合体のDNA(T2)及びDNA−RecA(T3)送達のために記述される通りに機能した。20分間のペプチド−DNAの培養後直ちに、DNアーゼI(RNアーゼ−フリーDNアーゼセット、キアゲン、米国)4μLを混合物容積(200μL)へ添加し、そして室温で15分間培養し、続いて氷上で5分間培養した。ペプチド−プラスミド解離及びプラスミド精製はDNA精製キット(クイアクイック PCR精製キット)を使用して行った。
【0085】
DNAに対応するバンド(7.2kb)は明らかに可視化されたので、リポフェクタミン
を伴う、DNA,DNA−RecA、DNA−Tat2、DNA−チャリオット、DNA−RecA−チャリオット、及びDNA−RecA−Tat2は感知できるほど保護されており、一方、リポフェクタミンを伴わないDNA及びDNA−RecA複合体はヌクレアーゼで処理されたDNAの分解のもたらしたことを、DNアーゼI保護アッセイは示した(図11A)。
【0086】
RecA−GUS DNA複合体はライ小麦小胞体中へDNA及びCPP複合体の送達のために記述されたとおりに調製された。GUS DNA 1μLを1:0、1:4、1:8、1:12、1:16、1:20及び1:24の比率になるように異なる濃度のRe
cAたんぱく質に混合した。リポフェクタミンなしに20分間培養した後、複合体20μLを1%アガロースゲルに塗布した。
【0087】
DNA−RecA複合体のためのゲル遅延度アッセイは、スメアーな蛍光発色が1:8及びその高い割合並びにGUS DNAで観察されることを示し、線形プラスミドDNAの減少した移動度に関してRecAの高濃度の影響を示唆する(図11B)。RedA1:8及び高い比率でdsDNAに結合した。
【0088】
図11AはCPP−DNA複合体構造を示す。(A)CPP及びDNAの組み合わせの異なる処理はDNアーゼ保護アッセイのために試験された。T1)対照、T2)DNA、及びT3)リポフェクタミンなしのDNA−RecA;T4)DNA、T5)DNA−RecA、T6)DNA−Tat2、T7)DNA−チャリオット、T8)DNA−RecA−チャリオット、及びT9)リポフェクタミンとDNA−RecA−Tat2。図11BはDNA及びRecAの種々の濃度の効果を示す。
【0089】
実施例12.小麦小胞子ヘトランスフェクトされたアピンループ遺伝子構造
TaAOS遺伝子(AY196004)はヘアピンループ技術を使用した小麦中のサイレンシングジャスモン酸(JA)経路として考えられる。27merシークエンスggccatccgcgaccgcctcgacttctaはセンス鎖として選択された。アクチンプロモータ及びNOSターミネータ間の複製された完全遺伝子シークエンスはTCTCGGCCATCCGCGACCGCCTCGACTTCTACTTCCTGTCATAGAAGTCGAGGCGGTCGCGGATGGCCCTであった。
【0090】
滅菌水100μLに希釈された総DNA1μgを100μLに希釈したTat2 4μgに添加し、そして穏やかに混合し、混合物中、1:4の割合のDNA及び細胞透過性ペプチド(CPP)を結果として得た。30分間室温で複合体培養に続いて、リポフェクタミン5μLを湿塩で5分間かけて加えた。混合物は2mLの微小遠心管に上清を除いて小胞子にだけ加えた。
【0091】
小麦栽培品種(フィールダ社)からの小胞子は前の実施例を示されたように集められ、15分間キャリア−カーゴ複合体とともに培養された。100μLのNPB−99を添加し、そして混合物を45分間以上室温で培養した。トランスフェクト化した小胞子をNPB−99で洗浄し、遠心分離し、そして上清を除去した。1000μLのNPB−99を2mL微小遠心管に加え、そして穏やかに攪拌した。500μLをセフォタキシムを含む3mLのNPB−99+10%フィコール(シグマF4375)(NPB−99−10F)を含む35mmペトリ皿へピペットで取った。小胞子及び胚は上記実施例の記載通りに培養した。
【0092】
全90の小植物を小胞子の2つの抽出からの培養から生産した。土壌に適用させた初日の間に、55の植物が死んだ。一度、土壌と中空の不純物に露出された小植物死亡の非常に高い割合は、JAサイレンシングの発現に関連している。再生植物(35)をトランス遺伝子の存在のためにPCRによって検査した。これら植物の3つがトランス遺伝子に対してPCR陽性であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0121325号明細書
【特許文献2】国際公開2005117992号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0260756号明細書
【非特許文献】
【0094】
【非特許文献1】FEBS レターズ、2004年、566号、p307

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーゴ部分を植物組織、植物器官、又は植物細胞へ送達するための方法であって、前記方法は植物細胞をキャリア部分と結合している少なくとも1つのカーゴ部分を含む複合体に露出させることを含む方法。
【請求項2】
前記植物細胞が配偶体植物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリア部分が細胞透過性及び核酸結合性を有しているポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリア部分中に細胞小器官局在化シグナルを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア部分中に核局在化シグナルを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア部分はHIV tat、pVEC、トランスポータン、ペネトラチン、Pep−1ペプチド及びそれらの断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリア部分はtatのたんぱく形質導入領域(PTD)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア部分はHIV tatのアミノ酸49乃至57を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カーゴ部分は核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸は、mRAN、tmRNA、tRNA、rRNA、siRNA、shRNA、PNA、ssRNA、dsRNA、ssDNA、dsDNA、DNA:RNAハイブリッド;プラスミド、人工染色体、遺伝子治療構築体、cDNA、PCR生成物、制限断片、リボザイム、アンチセンス構築体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸がDNAである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸がRNAである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記カーゴ部分がポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが細胞代謝を変えるたんぱく質をコードする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記たんぱく質が胚形成関連たんぱく質又はその活性領域である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記たんぱく質が相同たんぱく質又はその活性領域と結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記カーゴ部分がまた、追加のポリペプチド及び/又は核酸の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法
【請求項18】
体細胞性植物細胞(somatic plant cell)が細胞透過化剤で前処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記透過化剤がトルエンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに前記細胞をリポフェクタミンに露出することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
植物細胞中への活性物質の輸送を仲介するための複合体であって、該複合体は植物細胞へ複合体を導入することが可能なキャリア部分と結合したカーゴ部分を含む複合体。
【請求項22】
前記カーゴ部分が核酸である、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
前記キャリア部分が核局在化シグナルを含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項24】
カーゴ部分及びキャリア部分からなる融合たんぱく質を含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項25】
マーカーたんぱく質を含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項26】
部位特異的組込みと関連するたんぱく質を含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項27】
胚形成たんぱく質又はその活性領域を含む、請求項25に記載の複合体。
【請求項28】
請求項22乃至請求項27において定義された複合体又は一連の複合体を用いて植物細胞をトランスフェクションすること及びトランスフェクションされた植物細胞から植物を生成することを含む、遺伝子組み換え植物の生産方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法に従って生産された遺伝子組み換え植物。
【請求項30】
請求項21で定義された複合体で形質転換された遺伝子組み換え種子。
【請求項31】
請求項21で定義された複合体で形質転換された全能植物細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2010−532159(P2010−532159A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510629(P2010−510629)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001112
【国際公開番号】WO2008/148223
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509336989)
【氏名又は名称原語表記】AGRI−CULTURE AND AGRI−FOOD CANADA
【Fターム(参考)】