説明

ナノチューブ構造の製造システムおよび方法

【解決手段】ナノスケール以上の管構造を製造することのできる、管製造システムが提供される。このシステムにより、使用される供給シート物質の構造および原子的構成が制御され、使用されているシート物質に推進力が提供されて、シート物質は種々のシステム構成材を通って連続的に前進する。管構造が形成された後、それらはマクロ物体製造用の原料物質として提供されてもよく、それにより、この製造システムおよび方法で形成される管構造の工学的特性によって、そのような物体の性能および能力レベルが向上する。本発明の方法およびシステムによってナノチューブが製造されるので、ナノチューブの製造方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブの製造に関し、さらに具体的には、ナノチューブ、およびナノチューブおよびナノチューブ構造の、形成および/または製造のためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
この出願は、2004年9月28日出願の米国特許出願第10/950,793号、2004年6月7日出願の米国暫定特許出願第60/577,678号、および2004年4月27日出願の米国暫定特許出願第60/565,610号の出願日の利益を請求し、これら全ての全体の開示は、引用によりそれらの全体がここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブは、電子、機械、および医学的応用を含む多くの分野で有用である可能性がある、機械的、電気的、および化学的特性を有する管状の炭素構造である。例えば、カーボンナノチューブは、主としてチューブを作っている炭素原子間の強固なsp結合の存在のため、非常に優れた強度を呈する。さらに、チューブの長軸に沿う炭素原子の列のため、あるチューブでは伝導度が高いこと等、興味深い電気的特性を呈する。カーボンナノチューブは、その上、コンピュータチップのためのヒートシンクにおいて等、種々の用途に魅力を与える熱的特性を示す。加えて、カーボンナノチューブは中空であるため、物質を保持し、輸送し、最終的に放出することができる。この特性により、医学的応用に極めて有用である。これらの小さな構造の、他の独特かつ有用な特性を確認するため、非常に多くの研究がなされている。
【0004】
ナノチューブは、フラーレンの基本的な格子構造を有する、円柱炭素格子である。殆どのナノチューブは、半分のフラーレン分子で、一端または両端に蓋をする。ナノチューブは、1ナノメーター(1nm)からわずか数ナノメーター(例えば、5〜10)または数十ナノメーター(例えば、50)の外径を有することを特徴とする。多くのナノチューブは幅のわずか数倍の長さであるが、幅の数百万倍の長さを有する加工されたものもある。ナノチューブは、ロープ状構造にそろえることもでき、相対的に軽いが、非常に優れた強度の長いワイヤーに加工することができる。
【0005】
ナノチューブは、二つの異なるタイプの基本構造:単一壁ナノチューブ(SWNT)および多壁ナノチューブ(MWNT)に加工されている。それらの名前が暗示する通り、SWNTは、内部体積を包む単一壁を有するチューブであり、一方MWNTは、1つの内部体積が、入れ子の円筒に配置された多層の管状の壁構造によって包まれるチューブである。それらの異なる構造のため、および、それらが製造される際の容易さの差により、SWNTおよびMWNTは、異なる目的(多くの用途が重複するが)を標的とし、使用されている。
【0006】
現在、種々のカーボンナノチューブの製造方法が知られている。これらの方法には、アーク放電、レーザー切断、および化学蒸着が挙げられる。アーク放電法では、2つの炭素電極間のアーク放電によって、炭素含有蒸気が作り出され、カーボンナノチューブが蒸気から自己組織化する。残念なことに、この方法は不純物のレベルが高く、不純物を全て除去することが可能であったとしても高価である。レーザー切断法では、高エネルギーのレーザービームが多量の炭素含有原料ガスに衝突する。レーザー切断によって製造されるナノチューブは、アーク放電によって製造されるものより不純物が少ないが、収率が著しく低い。化学蒸着法では、炭素含有ガスを加熱した反応性金属にさらし、金属の加熱された表面にナノチューブを形成する。化学蒸着は、大規模に使用することができるが、しばしば幅広い直径のSWNTとMWNTの混合物が制御できずに生産され、SWNTは常に品質が悪い。さらに、反応中に存在する煤煙および金属からナノチューブを精製することが必要である。
【0007】
米国特許第6,455,021号にはアーク放電法が開示されており、それによれば、カーボンナノチューブの製造において、前駆体ガスの流れが超高温でプラズマ放電にさらされる。しかしながら、このプロトコルで生成されるナノチューブは、高容量の不純物を含む可能性がある。
【0008】
米国特許第6,331,690号には、ナノチューブの製造に関連するレーザー切断法が開示されており、それによれば、高エネルギーのレーザーが炭素標的に集束される。この方法では、アーク放電法より、比較的不純物の少ないナノチューブを製造することができるが、収率が低い可能性がある。また、レーザー切断法は大きな資本が必要となることがある。
【0009】
米国特許第6,689,674号には、ナノチューブ製造のための化学蒸着(CVD)法が開示されており、それによれば、前駆体ガスの流れが加熱されて反応性金属表面に向けられる。カーボンナノチューブの製造におけるCVDの使用により、収率良く、比較的不純物が少ないものを生成することができる。しかしながら、製造されるカーボンナノチューブは、多くの欠点を有する可能性がある。
【0010】
フラーレン格子は複雑であり、フラーレン格子を巻いて円筒またはチューブを形成し得る種々の方法によって、異なる格子構造を有するナノチューブは異なる物理的特性を有し得る。ナノチューブ格子は3つの主要な分類として、ジグザグ、キラル、およびアームチェアが用いられる。一般に、これらの3つの分類の差は、チューブに巻かれる以前の、チューブに沿った中心軸に関するグラフィンシートの配向性に基づくと考えることができる。
【0011】
これらの現在利用可能なナノチューブ製造方法により、記載した通り、壁数、長さ、直径、および格子構造などの物理的特性について変動性が大きいナノチューブが得られる可能性がある。従って、現在の技術は、単一の壁タイプ、長さ、直径、格子構造または形態を有する、1種類だけのナノチューブを予め選択して製造することができない。このような高温成長法に関連する製造コストの大きな要因は、このようなバッチ型の方法に要するエネルギーコストおよび時間である。
【0012】
従って、他のことの中でも、長さ、直径、および格子構造についての特異性を有するナノチューブ構造を大量生産法の中で生成できるような、信頼性が高く、恒常的であり、制御可能で、かつ費用効率的なアプローチが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、所望の特徴を有するナノチューブを提供することにより、当業界における必要性に取り組むものである。また本発明は、迅速で、簡便で、信頼性が高く、かつ比較的安価なナノチューブの製造方法を提供する。加えて、その製造方法により、本発明のナノチューブは、欠陥率が非常に低く、構造の均一性が高い。さらに、本発明の方法により、均一な構造の比較的長いナノチューブの製造が可能になり、その長さは主としてナノチューブの加工に使用されるグラフェン材料の長さおよび品質に依存する。従って、本発明は、比較的長いカーボンナノチューブを提供する。上述のナノチューブおよび方法に鑑みて、本発明は、本発明のナノチューブを加工するためのシステムおよび装置を提供する。
【0014】
一般に、本発明の方法は、厚さ約1原子のグラフェン(graphene)シート等の、ナノメーターの厚さの物質を短軸に沿って曲げて、その物質から円形、好ましくは半円形の構造を形成するために、機械力の使用を含む。この方法はさらに、選択した点で、または、導入された曲線に沿った軸線に平行な選択した線に沿って、曲げた物質を裂くための、機械力または電磁放射の使用を含む。曲げた物質を裂く際に、曲げた物質には2つの縁があり、それぞれは他方に並行であり、かつ物質の湾曲軸に沿っている。従って、本発明の方法は機械合成法である。この方法の1つの様相によれば、2つの縁をそれらの全体の長さに沿って互いに接合するに充分接近させて管状構造を形成するが、それがナノチューブである。別の様相によれば、曲げて裂いた2つの異なる物質を近接させ、第一の曲げた物質の第一の縁が第二の曲げた物質の第一の縁に近接し、第一の曲げた物質の第二の縁が第二の物質の第二の縁に近接するようにする。次に、互いに近接した縁を接合し、管状構造、またはナノチューブとなる。さらに第三の様相では、2つの曲げた物質は、縁が形成される点に近接させ、その後、同時にまたは実質的に同時に、両物質において縁を形成する。これにより、裂いた直後に、互いに近接した位置に置かれた両シートから裂かれた縁が得られる。本方法の全ての様相において、接合方法は自発的であってもよく、またはエネルギーまたは機械力の適用によって媒介されてもよい。
【0015】
本発明の方法は、実質的にあらゆる長さのナノチューブの生成に適用することができ、その長さは主としてナノチューブ物質として使用される物質の長さおよび品質による。さらに、本方法は制御されるので、少なくとも部分的には、機械的、電気機械的または電磁的手段によって(即ち、化学的または生物学的合成によらず)、高レベルの再現性および正確性が達成でき、予め選択した長さ、直径、および壁構造を有する、高度に均一なナノチューブが得られる。従って、本発明は、様々な長さ、直径、および壁構造のナノチューブを提供する。
【0016】
基本的形態において、本発明のシステムは、概して、ナノチューブの形成に好適なシート物質にストレスを適用する装置;一点以上で、または、シートに沿った1本以上の線に沿って、該シート物質を裂く装置;および、該物質を供給および/または除去する装置を含む。具体的には、全てのこれらの機能は、一つの装置によって供給されるが、他ではこれらの機能を達成するために2つ以上の異なる装置を備える。好ましい具体例において、本システムはさらに、裂いた物質を概して丸いまたは管状の形状に形成することができる形状に形成する、または、多数の裂いたシートを概して丸いまたは管状の形状に形成することができる形状に形成する、1つ以上の装置をさらに含む。本システムは、出発物質にストレスを与え、及び/または、出発物質を裂く装置に出発物質をそろえおよび/または供給する、1つ以上の装置をさらに含む。加えて、本システムは、裂いた物質および/またはナノチューブを受け入れ、および/または、輸送する、1つ以上の装置を含んでいてもよい。加えて、本システムは、ナノチューブまたはナノチューブに形成されるナノファイバーの支持体を含んでいてもよい。さらに本システムは、グラファイト/グラフェン等の、ナノチューブ物質としての使用に好適な物質を加工するのに必要な、幾つかまたは全ての装置および部品を含んでいてもよい。
【0017】
ナノチューブ構造を製造するシステムおよび方法は、機械的手段または機械合成法によって達成することが可能であり、他のものの中でも、長さ、直径、および格子構造について特異性を有し制御されるナノチューブ構造が形成または製造され得る。一般に、本発明の機械合成において、工程のいくつかを実施し得る順序は入れ替えてもよい。従って、本発明のシステムにおいて、1つの具体例では、特定の装置がある他の装置に連結してもよいが、一方他の具体例では、その装置は1つ以上の他の装置に連結してもよい。種々の装置の間は、あらゆる好適な機械的コネクタによって連結することができ、その選択は、本発明の装置およびシステムの構築、または本発明の方法の実施に重要な意味を持たない。具体的には、幾つかまたは全ての装置は、1つ以上の他の装置に堅く連結される。具体的には、幾つかまたは全ての装置は、1つ以上の他の装置に可動的に連結される。連結のタイプの選択は、当業者の判断に委ねることができ、あらゆる好適な連結を用いることができる。
【0018】
本発明は、1つの具体例において、ナノチューブの製造のための機械的合成作用を使用するシステムを提供する。そのような方法の原動力となる作用は、例えば、化学的、熱的、音響的、電界および/または磁界および/または機械的トルク相互作用、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、外界のエネルギー源によって提供され得る。
【0019】
1つの具体例において、本発明のシステムは、マクロ的ローラーの使用を組み込み、製造方法の間、運転、制動、および他のシステム操作における容易性および柔軟性が向上する。ローラーは、必要とされるトルク能力の量に応じて、ナノスケールまたはあらゆるサイズスケールであってもよい。このような1つのアプローチでは、ナノスケールの表面の特徴を有する巨視的なサイズのローラーによって、寸法スケールの全域において、および、多機能性について、機械学、流体工学、電磁気学、光学、および生体測定システム等の種々のエネルギー領域全域において、一体化がなされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0020】
次に、本発明の種々の例示的具体例の詳細に言及するが、実施例は添付の図面において図示される。以下の詳細な開示は、本発明の種々の具体例を詳細に記載することを意図しており、従って、添付の特許請求の範囲を制限するために用いるべきではなく、むしろ、特許請求の範囲において充分に特許請求された通りの、本発明の種々の具体例をよりよく記述するために用いるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
カーボンナノチューブは、導電性物質における半導体表面として、およびトランジスタにおける使用がすでに認められている。さらに、ハードドライブ等のコンピュータメモリデバイスが、ナノチューブ構成材を用いて作られている。実際、カーボンナノチューブは、電球のような日常的な品目における使用が認められており、電球のフィラメントとなる。しかしながら、製造に費用がかかること、および品質、大きさ、および構造が変動することから、産業上の広範な使用は有意水準には達していない。他のものの中で、本発明は、ナノチューブの製造コストが高いこと、ナノチューブの格子構造の制御がなされていないこと、および、現在製造されているナノチューブの直径および長さについて正確な制御がなされていないことに対処するものである。
【0022】
本発明は、ナノチューブの製造方法を提供することによって、当業技術の欠点に対処するものである。ナノチューブを作るために現在使用されている方法であって、ナノチューブを化学的または電磁的技術を用いて粗出発物質から新たに製造する方法とは対照的に、本発明は、出発物質として予め成形されたグラフェン物質および機械的エネルギーを利用して、予め設定し、厳密に制御された特徴を有するナノチューブを形成した。
【0023】
本発明の方法は、ナノチューブの形成方法であって、一般に、ナノチューブの形成に好適な少なくとも1つの物質を供給すること、該物質をストレスにさらして変形すること、該物質を裂くこと、該物質を管状の形状に形成すること、および該物質をそれ自身で融合するかまたは1以上の他の物質と融合しナノチューブを形成することを含む。供給される物質の数、裂く位置の数、工程を実施する順序、およびその他の変化は、本発明の方法によって想定される。同様に、製品に意図される最終的用途に応じて、付加的な工程を実施してもよい。
【0024】
本方法は、機械力を用いて、約1原子の厚さのグラフェンシート等の、ナノメーターの厚さの物質を、1本の軸(形成されるナノチューブにつき)に沿って曲げ、物質から最終的に概して円形の構造を形成する。本方法はさらに、機械力(例えば、ダイヤモンドナイフ)または電磁放射(例えば、レーザーナイフ)の使用を含み、その使用により、曲げた物質を、局面を導入した軸に沿った線に平行な1以上の選択した線に沿って裂く。曲げた物質を裂くと、曲げた物質に2つの縁が存在し、それぞれは他方に並行であり、物質の屈曲の軸に沿っている。この点で、本方法は、ナノチューブを得る少なくとも2つの異なる方法で実施することができる。1つの方法では、2つの縁を全体の長さに沿って、互いに接合するに充分近接させて、ナノチューブである管状構造を形成する。もう1つの方法によれば、曲げて裂いた2つ異なる物質を近接させて、第1の曲げた物質の第1の縁を、第2の曲げた物質の第1の縁に近接させ、かつ第1の曲げた物質の第2の縁を第2の物質の第2の縁に近接させる。次に、互いに近接した縁を接合し、管状構造またはナノチューブを得る。さらに第3の様相では、2つの曲げた物質は、縁が形成される点に近接させ、その後、同時にまたは実質的に同時に、両物質において縁を形成する。これにより、裂いた直後に、互いに近接した位置に置かれた両シートから裂いた縁が得られる。本方法を実施する全ての方法において、接合方法は自発的であってもよく、またはエネルギーまたは機械力の適用によって媒介されてもよい。
【0025】
本発明の方法は、実質的にあらゆる長さのナノチューブを作るために適用することができ、長さは主としてナノチューブ物質として使用される物質の長さおよび品質による。さらに、本方法は、少なくとも部分的には、機械的、電気機械的、または電磁的手段によって(即ち、化学的または生物学的合成によらず)制御されるので、高レベルの再現性および正確性を達成することができ、予め選択した長さ、直径、炭素構造、および壁構造を有する、高度に均一なナノチューブが得られる。
【0026】
より具体的には、本方法は、一般に本方法に使用するのに好適な幅を有するシートの形状の、ナノチューブに形成される少なくとも1つの物質(グラフェン、金属をドープしたグラフェン等)を供給することを含む。即ち、ナノチューブが一片の出発物質から作られる場合、出発物質は、少なくともナノチューブの最終的な外周の幅であるべきである。他方では、ナノチューブが2片の出発物質から作られる場合、物質の各片はナノチューブの最終的な外周の少なくとも2分の1の幅であるべきである。同様に、ナノチューブが3片、4片等の出発物質から作られる場合、各片は最終的なナノチューブの外周の、少なくとも3分の1、4分の1等であるべきである。最終的なナノチューブの形成に使用されない過剰の出発物質は、廃棄物として捨てることができ、またはさらなる方法の実施において使用することができる。また、配向性、切削効率、または関係するあるあらゆる他のパラメータを確認するための、品質管理試験において使用することもできる。
【0027】
提供される物質は、ナノチューブにおける使用に好適なあらゆる物質であってよい。ナノチューブの製造に使用される、現在最も普及している物質は炭素であり、グラフェンのチューブと記載し得る構造に形成される。本発明は出発物質としてグラフェンの使用を意図する一方、置換グラフェンの使用も想定しており、置換グラフェンでは、1つ以上の炭素原子が別の原子、例えば金属または希土類金属と置換して、ナノチューブに優位で独特の特性を与える。品質および欠陥率がわかっているグラフェンシートが入手可能であり、これらが最も好ましい出発物質であることが想定される。特に好ましいものは、格子構造に欠陥があってもごくわずかのグラフェンシートである。具体例において、出発物質は、炭素含有物質の結晶質形態を含むもの等の、シートの物質であってもよい。例えば、ダイヤモンドシート、ダイヤモンド様非晶質物質、または格子構造中に炭素以外の元素を有するダイヤモンド状格子であり得る。
【0028】
グラフェンを出発物質として使用する場合、格子構造に関して、あらゆる可能な角度で本方法に提供することができる。従って、提供の角度(即ち、送り込みの角度)を調節することによって、異なる構造(ジグザグ、キラル、アームチェア)を有するナノチューブを製造することができる。重要なことには、現在利用可能な他の方法と異なり、本発明の方法の単一の出発物質および単回の実施から得られる全てのナノチューブは、予め規定された単一の角度で提供された、同一の出発物質シートに由来するので、同一の構造を有するであろう。従って、当業界で知られている方法に見られる不整合、および純粋で同一のナノチューブを得るためのコストは、本発明の方法を使用することによって回避される。
【0029】
本方法はまた、物質をストレスにさらし、物質の長さに沿った軸の周囲で曲げるように物質を変形させることを含む。具体例において、湾曲は円形または実質的に円形である。他の具体例において、湾曲は半円形または実質的に半円形である。一般に、湾曲は、全体の円弧長にかかわらず、完成した場合に円を形成する円弧を表すことが好ましい。ストレスはあらゆる好適な手段によって提供することができるが、機械的ストレスを使用することが好ましい。機械的ストレスは、あらゆる好適な手段によって与えることができるが、図に示したもの等、曲げた構造上で出発物質を引き伸ばすことによって与えるのが好ましい。
【0030】
また本方法は、予め選択した点で、または最終的なナノチューブの長軸に平行な予め選択した線に沿って、物質を裂くことを含む。従って、本発明によれば、裂くのは形成されるチューブの軸に平行(即ち、湾曲が形成される平面に垂直)になるであろう。一片の出発物質を使用する具体例では、1回裂くことは必要であるかもしれない。多数片の出発物質を使用する具体例では、多数回裂くことが必要であろう。加えて、多数のナノチューブが一片の出発物質から形成される場合、1回裂くことで2つの別々のナノチューブのための縁を製造することができる。
【0031】
裂くことにより、ナノチューブの形成に使用される少なくとも1つの縁が製造される。縁はバッチモード(例えば、3工程:シートをプレスまたは裂く装置に移動させ、シートを裂き、裂いた物質を装置の外に移動させる)で作ることができるが、シート物質が所与の速度で裂くことができる装置に供給され、シートがある点を通りながら裂かれる、連続的方法を使用することが好ましい。図に見られる通り、互いに向かい合って配置されるローラーは、送り込まれたシートを受け取り、それを裂く点を横切って移動させ、裂かれた(または裂かれて融合した、以下参照)物質を吐き出するために使用することができる。同様に、グラフェンシート等を裂くための、他の知られている装置を、機械的ローラーの代わりに使用することができる。例えば、物質がある点に沿って通りながら裂かれるように、レーザーエネルギーを使用することができる。
【0032】
変形することおよび裂くことをいずれの順でも実施できることに注目することは重要である。1枚の出発物質から1回で多数のナノチューブを製造するために、裂く前に出発物質を変形させることが好ましいが、それは必要ではない。さらに、他の目的のために、変形の前に裂くことが好ましいこともある。
【0033】
本発明の方法は、裂いた物質を、その縁のそれぞれが自身の物質からまたは別の出発物質シートからの別の縁に近接するような形状に変形させることをさらに含む。縁は、2つの縁の間で自発的に、または機械的圧力または電磁放射等のエネルギーの添加を通して融合が起こり得るもう1つの縁と、充分に近接するように調整すべきである。例として、ナノチューブが出発物質の別々のシート由来の2片から形成される場合、それぞれの物質は、裂いた後に一方のシートの縁と他方のシートの縁とを整列させて、2つの半円を形成する2シートの間に2つの小さなすき間を有する円形の形状になるような半円に形成されるであろう。縁は、自発的に融合して管状構造を形成するか、またはエネルギーの添加に際して管状構造を形成できるように、互いに充分近接しているべきである。この同一の一般的記述が、3シート以上の出発物質からのナノチューブの製造に適用でき、各シートが最も近接した隣のものと融合して最終的に管状構造を形成することが理解される。
【0034】
物質の好適な形状への形成には、物質が既に所望の形状であるならば、本発明によるさらなる加工のため、互いに関連する物質を単に整列させることも含まれることが理解される。この解釈では、供給工程および切断工程の結果として物質が既に好適な位置にある場合は、形成工程は単に、裂いた物質を融合が起こるようにその適切な位置に維持することを含む。
【0035】
縁で物質を融合して管状構造を形成することにより、ナノチューブが形成される。融合は、あらゆる好適な方法によって行うことができる。しかしながら、形成工程は、縁が自身の構造中に存在するエネルギーによって自発的に融合することができるように、融合される縁が充分に近接して実施されることが好ましい。勿論、縁に充分な反応性がない場合、または、縁が充分に近接していない場合は、機械力または電磁放射(例えばレーザー)等の外部エネルギーを用いて縁を融合することができる。
【0036】
図に見られる通り、具体例において、多数のナノチューブが1シートの出発物質から作られることが想定される。このような具体例において、得られるナノチューブは個々に使用することができる。あるいは、具体例において、ナノチューブの製造方法は、ナノチューブを相互作用させて多数の個々のナノチューブからなるロープまたはロープ様構造を形成できる条件に、ナノチューブを充分な時間さらすことを含む。
【0037】
1つの具体例において、本発明の方法は加圧後の方法を含む。この任意の工程は、例えばローラーまたは電磁放射によって圧力または他のエネルギーを適用し、2以上のナノチューブ(ナノチューブの束を含む)を融合させて、チューブの単一の収集物を作ることを含む。融合がナノチューブの1以上の末端で起こり得る一方、融合部位の大多数はチューブの長軸に沿っていることが想定される。融合は1以上のナノチューブの全長、実質的に全長、または1以上のナノチューブの長さの一部に沿って起こり得る。種々の束のナノチューブ間での他のものとの融合の型および程度は、他のナノチューブに関係しない。従って、束の中の1つのナノチューブは、その全長に沿って他のものと完全に融合してもよく、一方、他のナノチューブはそれらの全長未満で融合するか、他のナノチューブと融合しなくともよい。さらに、個々のナノチューブが他のものの周囲に巻かれる場合、多数のナノチューブがこの方法の間に連結されてもよい。2以上のナノチューブの融合により、ナノチューブを含む複合体の機械的性能を改善することができる。特別の分子様態の作用に制限する意図はないが、本発明のこの具体例は、本発明のナノチューブまたはナノファイバーの加圧重合と考えてもよい。
【0038】
本発明のナノチューブを作るために使用される装置の構成、物質がナノチューブに変わる速度、および使用され得る他のパラメータ(例えば圧力の量)に依存して、本発明の方法の実施中に熱が産生され得ることが認められる。ある状況では、産生される熱の一部または全てを除去することは、有益であるかまたは望ましいかもしれない。本発明の具体例によれば、少なくとも一部の熱を除去する手段は、本発明の装置および方法に含まれていてもよい。例えば、図1、4、9、10A、または11Aに関して、熱の除去方法であって、中空の領域がローラー17および18の内側に存在し、中空のチューブを形成するなどして冷媒の提供などをする方法が行われてもよい。冷媒は、ローラーの中空領域内部で流れが起きて本方法中に産生される熱の除去などが行われる、1以上の知られている熱交換液体および/または気体を含んでいてもよい液体および/または気体等の、熱を伝導するあらゆる媒体であってもよい。勿論、これは熱除去の1つの可能な方法であり、熱の除去を行う好適な手段は多数ある。例えば、エアーナイフ、または、アルゴンまたは他の不活性ガス類等の、他の気体および/または気体類を使用することができる。熱の除去方法は、熱を除去するためだけではなく、埃等の外来物質が高圧ローラー17および18の間に入るのを防ぐためにも使用することができる。従って、熱除去手段は、システムを維持し、かつ、製造システムおよび方法の高圧ローラー部分に入る外来物による不具合を防ぐために、付加的に使用してもよい。同様に、除去が必要な過剰の熱がない場合、本方法は、システムおよび方法を維持するため、および/または、システムおよび方法の不具合を防ぐために単独で使用することができる。或いは、種々の厚さを有する種々の原子の種々の層を高圧ローラーの物質構造中に組み込んで、熱除去を促進し、および/または、ホットスポットの局在化を防ぐようなローラーを構築してもよい。本方法で形成されるナノファイバーは、自身が優れた熱伝導体であるという事実によって、熱を除去するために作用し得ることが明白であろう。従って、熱管理のための付加的手段は、ある状態では必要ではない可能性があり、従って熱管理工程および要素を含めることは任意である。
【0039】
本発明の方法に照らして、本発明はナノチューブを提供する。本発明のナノチューブは、1以上の用途について有利な1つまたは多数の特性を有し得る。例えば、本発明の方法は連続法として実施することができるので、本方法は利用可能な出発物質の量および長さによってのみ制限される。従って、本発明のナノチューブは、数メートル、または数キロメートルの長さであり得る。つまり、ナノチューブは、約1マイクロメートル、100マイクロメートル、1mm、1cm、10cm、100cm、1メートル、10メートル、100メートル、1km、または1km超等の、100nmから数キロメートルの長さのいずれでもあり得る。実際に、具体例において、知られている格子配列のグラフェンシートの製造方法は、ナノチューブの製造方法に関連しており、それにより、物理的特性を制御された純粋な出発物質がナノチューブの製造方法に実質的に無制限に供給される、堅固なシステムが得られる。
【0040】
加えて、本発明のナノチューブは、1以上の所望の特性を有することができ、出発物質およびナノチューブの形成において制御が可能であるので、所与のバッチからの全てのナノチューブが同一の特性を有することが推測できる。
【0041】
本発明は、1つの具体例において、ナノチューブ構造の製造に機械的手段を使用するシステムを提供する。例えば、このシステムは、組み合わせる場合、連続的製造システムを形成して、非常に長いナノチューブ、またはあらゆる所望の長さのナノチューブの製造を可能にする、ケーシング、フィードローラー、切断ローラー、および形成ローラー等の機械機器を含んでもよい。さらに、このシステムおよびその構成機器により、製造コストを比較的低レベルで維持しながら、長さ、直径および格子構造が実質的に均一である、ナノチューブの製造が可能になる。
【0042】
今度は図1Aを参照すると、1原子厚のシート物質2から管構造1を形成する付加的工程が図示され、そこでは、3は、図1Bの製造システムおよび方法の切断ローラー部分内部で完成される、管構造の部分的形成を表す。
【0043】
今度は図1Bを参照すると、本発明の1つの具体例に従って、あらゆる決められた長さのナノチューブの製造を可能にするシステム10が図示される。システム10は、示される通り、貯蔵器11を含み、その内部では、グラファイト供給原料物質、例えば、液体のトリクロロベンゼンまたはジクロロベンゼンまたは他の好適な液体の、水性容量が供給されてもよい。グラファイト供給原料物質は、最初にタンニンでコロイド状溶液にして、水溶液、例えば、アクアダッグ、または油中分散液、例えば、オイルダッグを形成してもよい。1つの具体例において、水溶液または油中または水中分散液は、凝集を防止したグラファイトより成ってもよい。
【0044】
システム10は、貯蔵器11において、水性グラファイト供給原料物質に部分的に沈められたドラム12もまた含んでいてもよい。このようにドラム12を設置することで、実質的に均一な薄層(即ち、単原子厚)の供給原料物質が、ドラム12の外面121上に堆積され得る。ドラム12が回転するに従い、供給原料物質がドラム12に外面121上に連続的に堆積されてもよい。いくつかの例において、マイラー(登録商標)(Mylar(R))または他の好適な開始剤網目状物等の先導剤(即ち、開始剤基質)を、供給原料物質の連続的薄層の開始を容易にするために使用してもよいことに注目すべきである。先導剤(示さず)は、ドラム12の外面121上に置かれてもよく、供給原料物質は、ドラムが貯蔵器11を通って回転するに従って、ドラム外面に堆積されてもよい。部分的に沈んでいるように図示したが、ドラム12は、水性グラファイト供給原料物質に、実質的に、または完全に沈めることができることを理解すべきである。
【0045】
システム10は、1つの具体例において、ドラム12の直前に、レーザー13等の、電離放射線の発光源もまた有していてもよく、これは、ナノチューブの製造に使用するためのドラム12上の薄い液体層からの供給原料物質のシートの形成を助成する。1つの具体例に従って、ドラム12の外面121上の供給原料物質の薄層が上へ(即ち、図1Bの透視図で反時計回りに)回転するので、レーザー13は、堆積した非炭素原子を除去するために用いてもよい。具体的には、レーザー13は非炭素原子を気体中に電離するために使用してもよく、その結果、これらの非炭素原子は、次に供給原料物質の層から脱着されてもよい。供給原料物質の層上に残った炭素原子は、その後、およそ1原子厚のグラフェン物質のシート14を形成することが可能である。
【0046】
また、本発明のシステム10は、ドラム12の下流に位置するフィードローラー15を含んでいてもよい。1つの具定例において、システム10におけるフィードローラー15の存在は、シート14がドラム12から離れて、次の段階およびシステム10の残りの部分に沿って前進するのを補助することができる。シート14を先導するものが存在することによって、それは必要ではないが、その後システム10に沿って移動するための、シート14のフィードローラー15への方向付けがさらに容易になり得ること、および、そのような輸送媒体は、連続的なベルト構造または1以上の好適なベルト物質で構築され得る構造等であってもよいことに注目すべきである。
【0047】
なおも図1Bを参照するが、システム10は、フィードローラー15の下流に位置する整列ローラー16をさらに含んでもよく、これは、横方向に調節して、続くナノチューブ形成のためのシステム10内の経路に沿って、シート14の整列の調整を補助し得る。特に、整列ローラー16を含むことで、シート14が適切に整列するのを補助し、その結果、シートは整列されて、1組の切断ローラー17および18に供給され得る。排出ローラー17および18は、ナノチューブまたはナノファイバー20であり、それらを貯蔵するため、取り込みローラー19の周囲に巻くことができる。
【0048】
従って、具体例において、グラフェンシート物質は、フィードローラー手段によって整列されて、形成されるカーボンナノチューブ格子構造の軸について、六角らせん格子構造のキラル角を規定してもよい。その後、グラフェンシート物質を切断ローラーに供給して、好適な切断手段によってグラフェンシートの共有結合を切断してもよい。このようにして、形成されるカーボンナノチューブ構造の直径が規定されてもよい。
【0049】
本発明のシステム10に関連して使用される、ドラム12およびローラー15、16、17、および18は、1つの具体例において、ローラー24に関連して示されるものと類似の一般的な特徴を有するように設計されてもよい。図2Aおよび2Bで示される通り、ローラー24は、ローラー24の各末端に取り付けた軸22を収納するためのケーシング支持体21(即ち、ソケット)を含んでもよい。ケーシング支持体21は、ローラー24を支える働きをし、内部で軸22がローラー24の回転と共に回転し得る領域を提供する。代わりの具体例において、ローラー24はその末端201および202(図2B参照)が軸22の代わりに働くように設計され得ることが望まれるべきである。ケーシング支持体21内でのローラー24の回転を容易にするため、軸受23が、ケーシング支持体21の内部表面の周囲に、および/または、軸22または末端201および202に周囲に、提供されてもよい。
【0050】
本発明のローラー、および図2Aおよび2Bに記載されたもののようなそれぞれの構成材は、所望の適用および機械的トルク回転作用によって、ナノスケール以上の範囲の、あらゆる大きさ、配置または形態に設計されてもよい。また、1つ以上のローラーを設計して物質のナノチューブへ導入を可能にしてもよく、物質はナノチューブの内部または外部に結合するか、または単にナノチューブ内に取り囲まれる。
【0051】
今度は図3を参照して、グラフェンシートまたは他のシート物質14を複数の細長い一片(ストリップ)に切断する方法の最初で、ローラー17および18が接触する点の前の、1組の切断ローラー17および18の断面図が示される。本発明の1つの具体例に従って、切断ローラー17および18のうちの1つは、「オス」ローラーとして設計し、他方を「メス」ローラーとして設計してもよい。図3に示す通り、切断ローラー18は、「オス」ローラーであるよう設計され、一方切断ローラー17は「メス」ローラーとして設計されてもよい。そのように図示されているが、切断ローラー18が「メス」ローラーとして設計されてもよく、切断ローラー17が「オス」ローラーとして設計されてもよいことに注目すべきである。
【0052】
図示した通り、1つの具体例において、切断ローラー18は、ローラー18の外面の周囲に位置する少なくとも1つのトーラスまたはトロイド(即ち、ドーナッツ形状)構造31を含んでいてもよい。ある具体例において、図3に示されるもののような、複数のトロイド構造31を使用してもよく、各トロイド構造31は、ローラー18の一端32から反対の端33へ連続的に、空間的に位置する。トロイド構造31の存在により面が提供され、最初にその面上にシート14が置かれ、その面の周囲でシート14はその後のナノチューブ形成のためのストリップに切断される。トロイド構造31は、本発明の1つの具体例に従って、図3に示す通り、ローラー18の外面に同一平面状に位置してもよい。あるいは、トロイド構造31は構造34に補完的であって、形状が34等の凹状構造および補完的な凸状構造の形状であってもよい。このような具体例において、各切断ローラーの2つの凹状および凸状の形状は、互いに適合し、互いに内部ではめ込まれるようなものである。トロイド構造は、グラファイト(三方晶系)またはダイヤモンド様(四面体型)結合、グラファイト、フラーレン様構造を含む同質または異質構造であってもよい結晶性および/または非晶性原子配列のような、非常に広範な構造的多様性を有し得る種々の物質で構築されてもよく、そのような構造は、例えばダイヤモンドまたはダイヤモンド様物質、および/または、電子ビーム溶接で結合された、および/または、真空蒸着法で形成された、ダイヤモンド様物質またはカーボンナノチューブ等のフラーレン物質であり、電子ビーム溶接および真空蒸着法は、産業的方法の需要に最適に適応するための、そのような異なる原子構造の製造を可能にし、ここでそのような方法は、構造を自身の構造および図3のローラー18等の他の支持構造へ結合するために使用される。
【0053】
なおも図3を考察するが、切断ローラー17は、他方で、トロイド構造31または他の補完的な構造を切断ローラー18上で補完的に受けるような、ローラー17の表面の周囲に位置してもよい少なくとも1つの桶状溝34を含んでいてもよい。ローラー18に複数のトロイド構造31がある場合、同様の数の桶状溝34をローラー17上に備えてもよい。桶状溝34は、そのような具体例において、ローラー17の一端35から反対の端36まで、連続的に位置してもよく、その結果、桶状溝34は、相対するトロイド構造31またはローラー18上の他の補完的構造に適合してもよい。ローラー17および18のいずれかまたは両方、好ましくはこれらのローラー上の1つ以上のトロイド構造は、ナノチューブ形成の方法の間に産生された過剰の熱を除去するための放熱板として働くことができる。ローラーを作るために使用される物質は、少なくとも部分的には、熱伝導特性に基づいて選択することができる。同様に、ナノチューブを形成する物質に接触する装置の他の部品は(形成方法のあらゆる段階で)、ここに記載した通り、熱を伝導し、従って放熱板として働くことができる、1以上の物質を含んでもよい。
【0054】
今度は図4を考察するが、図1Bにおける切断ローラー17および18の断面図が、ローラー17および18間の接触点で示される。シート14が2つのローラー間の接触点に向かって移動するにつれて、シート14をトロイド構造31について徐々にカールしてもよく、その結果、図3におけるL1からL8までの負荷点でグラフェンシート14の共有結合が弱められる。ローラー17および18間の接触点に達した際に、ローラー17上の桶状溝34の間に備えられた縁L1〜L8(即ち、負荷点)は、シート物質14に対して充分な機械力を与え、シート14の共有結合を負荷点L1〜L8で切断または破壊し、その結果、グラフェンのカールしたストリップ20A、20B、20C、20D、20E、20F、および20Gを形成する。本発明の具体例において、追加のエネルギーを適用して結合の切断を容易にする。このような追加のエネルギーがグラフェンシート幅程度の追加の延伸によって供給されて、結合に追加のストレスを与えてもよい。同様に、追加のエネルギーは、例えばローラー17または18の1つから他のローラー(それぞれ17または18)にグラフェンシートを横切って流れる、電気力によって供給されてもよい。
【0055】
1つの具体例において、桶状溝34は、図3に示されるもの等の、類似の大きさの直径を有するように設計してもよく、その結果、カールしたストリップ20A〜20Gは、類似の幅のものが供給されてもよい。しかしながら、桶状溝34は、種々の幅のストリップを提供するため、直径の大きさを変えて設計することができる。さらに、上記に示される通り、ローラー17および18およびそれぞれの構成材は、例えば、ナノスケール、ミリスケール、マイクロスケールまたはマクロスケールのような、あらゆる大きさまたはスケールのものであってもよい。
【0056】
しかしながら、それらの大きさにかかわらず、ローラー17および18上にそれぞれ位置する桶状溝34およびトロイド構造31は、その後のナノチューブまたはより大きなスケールの構造の製造で、ナノスケール以上のストリップ20A〜20Gが形成できるよう、大きさがナノスケール以上であってもよいことに注目すべきである。
【0057】
今度は図5を参照するが、システム10は、さらにグラフェンのストリップ20A〜20Gをカーボンナノチューブにカールするため、さらに一組の形成ローラー(図1中に示さず)を伴ってもよい。図5に示される通り、上部形成ローラー5Aおよび下部形成ローラー5Bは、ナノコーンまたはナノらせんであっても、またはダイヤモンドまたはダイヤモンド様物質で構築されてもよく、切断ローラー17および18の下流に備えられてもよい。1つの具体例において、上部および下部形成ローラー5Aおよび5Bのそれぞれは、それぞれ図7および8の通り、円錐群または形成ローラー3を構成することができ、それらは軸1についてスペーサー(示さず)をおいて配置されてもよく、スペーサーは、図2B中のケーシング支持体構造21によって提供されるものに類似の支持体を提供するために使用し、前記円錐群または形成ローラー3が側方へ動くのを防ぐ。円錐群または形成ローラー3はそれぞれ、溝領域を含む。これらの溝は、形状について変動性を有して、図1Aの連続的な管形成方法を容易にしてもよい。加えて、ローラー1上の、図7および8における円錐群または形成ローラー3は、好ましくはもう1つのローラー1に対して、円錐群または形成ローラー3を有して相対して並べてもよく、その結果、形成される溝は経路を形成してもよく、カールされたグラフェンのストリップ20A〜20Gがローラー17および18から出るときには、その経路を通って提供されてもよい。直径が以前の段階から徐々に小さくなる溝を提供することによって、カールしたストリップ20A〜20Gのそれぞれの縁3および4は、図7および8中の形成ローラー3または図5および6中の5Aおよび5Bのそれぞれの段階で、互いに接近するように徐々に押されてもよい。
【0058】
縁3および4を互いに接近させ得るため、図7および8中の一連のローラー1および形成ローラー3、または図5および6中の5Aおよび5B、または円錐群は、互いに下流に備えられてもよく、図7および8中の形成ローラー3または図5および6中の5Aおよび5Bを有するそれぞれは、図7および8中の前記の形成ローラー3または図5および6中の5Aおよび5Bの間の経路について徐々に小さくなる溝を備える。このように、図7および8中の円錐群または形成ローラー3または図5および6中の5Aおよび5Bが相対して並ぶ場合、連続的に小さくなる経路が、カールしたストリップ20A〜20Gに提示されてもよく、その結果、縁3および4が充分接近して縁3および4からのダングリングボンドが結合し得るまで、それらを徐々に接近させ(図6参照)、それによって、カールしたグラフェンのストリップ20A〜20Cおよび図8の相当物のそれぞれから、管構造を形成する。
【0059】
あるいは、形成される溝の最も幅広い点、例えば図7および8中の形成ローラーまたは図5および6中の5Aおよび5Bの直径は、図7中の下流の一連のローラー1および形成ローラー3の至る所で同一であってもよく、または直径および/または形状が変化してもよい。ローラー1に対する、図7および8中の相対する円錐群または形成ローラー3の間、または図5および6中の5Aおよび5Bの間のスペースは、徐々に小さくなってもよい。このように、図7および8中の相対する円錐群または形成ローラー3、または図5および6中の5Aおよび5Bによって形成される経路は、徐々に小さくなって、縁3および4に至り、続いて互いに接近してもよい。図7および8中の形成ローラー3、または図5および6中の5Aおよび5Bの間に形成される溝において徐々に小さくなる直径と、図7および8中の相対する円錐群または形成ローラー3、または図5および6中の5Aおよび5B、および/または軸1の間のより小さいスペースとを組み合わせることによって、縁3および4を合わせてカールしたグラフェンのストリップ20A〜20Gのそれぞれからナノチューブを形成するのを容易にすることが望まれるべきである。
【0060】
図7は、システム10に関連して使用してもよい、もう一組の可能な形成ローラーを図示する。図5および6に示されるもの等、円錐群5Aおよび5Bを有する相対する左右の形成ローラーを有するよりも、例えば、図5および6に示されるローラー5Aおよび5Bに実質的に横断する方向で備えられてもよい、上部および下部の形成ローラー3がある。図7は、ローラー5Aおよび5Bの位置から(図5および6の透視図から)約90度回転した、一組の形成ローラーを提供する。ローラー5Aおよび5Bのように、一連の形成ローラー3は、ストリップ20A〜20Gの縁3および4の接合を容易にするため、溝の直径が徐々に小さくなるか、または相対するローラー軸1の間のスペースが徐々に小さくなるか、またはその両者を備えてもよい。
【0061】
再度、図1Bを考察するが、システム10は、切断ローラー17および18の下流に位置する取り込みローラー19、および図7および8中の形成ローラー3または図5および6中の5Aおよび5Bを備えてもよく、カールしたストリップのそれぞれの縁が合わさってナノチューブまたはナノファイバーまたはより大きな管構造の連続的ストランドを形成する時点で、管構造またはナノチューブファイバーのストランドは、取り込みローラー10に向かって、図7および8中の形成ローラー3または図5中の5Aおよび5Bから前進してもよい。特に、ローラー19は回転して、その後の貯蔵のため、糸巻と類似の方法で、その外面に、図7および8中の形成ローラー3または図5および6中の5Aおよび5Bから来るナノチューブのストランドを巻きつける。ナノチューブのストランドが近くの点で必要である場合、ストランドは取り込みローラー19に巻いたものを伸ばして、使用するための所望の長さに切断することができ、または、ストランドは多壁ナノチューブ(MWNT)を製造するためにナノチューブを供給するものとして使用してもよく、ここで、このようなナノチューブは、図10Aおよび10Bおよび11Aおよび11Bの静止したナノチューブ1A〜1Eの代わりに使用され、従って、形成されたナノチューブは使用されて、図9に示される通り、方法で新たに形成されたナノチューブに沿って移動することができ、そのナノチューブは多壁ナノチューブを製造し、そこでこの方法は、所望ならば、いくつかの類似の工程につながって、ナノチューブの追加の壁を加えることができる。
【0062】
ナノチューブのこれらのストランドが切断されて所望の長さのナノチューブを製造することが必要になり得る範囲内において、ストランドは、例えば、機械的エネルギー、化学的エネルギー、熱エネルギー、レーザーエネルギー、電子ビームエネルギー、イオンビームエネルギー、および/または他のタイプのエネルギーを単独または組み合わせて使用して、切断し、物質内の共有結合を壊してもよい。
【0063】
図1Bは図示した通りの構成材を有するシステムを提供するが、これらの構成材はあらゆる望ましい方法で編成してもよいことに注目すべきである。例えば、フィードローラー、整列ローラー、切断ローラー、および形成ローラーは、貯蔵器および取り込みローラーの間で線状に編成してもよく、その結果、シート14は切断ローラーに直接供給されて、シート14の経路を単純化してもよい。また、シート物質14からナノチューブを製造する図1Aの形成方法を達成するための、少数および/または異なる要素を含む、あらゆる装置または方法を使用してもよい。即ち、本発明の装置の部分として記載されるあらゆる要素の組み合わせが、本発明に従って使用し得る。1つのこのような非制限的な編成において、ドラムまたはローラーを伴う種々の部分が簡略化されるであろう。このような構造形では、切断ローラーが方法の第一工程で使用されるであろうが、ここで、レーザーエネルギー、または電子ビームおよび/またはイオンビーム等の他の好適なエネルギー源を用いてナノスケールのはっきりした特徴を有するグラフェンのストリップを直接的に形成する目的で、切断ローラーは、トリクロロベンゼンまたはジクロロベンゼンまたは他の好適な液体の薄膜でコートされるであろう。従って、グラフェンのストリップは、グラフェンシート物質からのグラフェンのストリップの機械的形成または機械合成とは対照的に、マクロ的ローラーのナノスケール特性の形状に従って製造されるであろう。このようなより少ない工程および/または要素の簡略化された方法において、グラフェンは、形成されるグラフェンのストリップを湾曲させ、縁の結合を完成させ得るであろうローラーのナノスケールの表面特性に直接的に相対して、ストリップに形成され、管(チューブ)を形成するであろう。場合によっては、形成されたグラフェンのストリップはさらなる加工を要して、電気および/または磁場を用いた縁の操作によって、および/または、機械合成法で、縁の結合を管構造に完成させてもよく、この操作または合成法では、縁の結合は互いに接近させて、縁の結合を連結して管構造またはナノファイバーとする。
【0064】
システム10および11に関連して使用するローラーは、熱膨張および消耗による劣化を最小限にするため、充分に硬くて強固であることが好ましいので、ローラーを作る物質は、充分に硬くて強固であることが必要であろう。従って、使用してもよい物質は、ダイヤモンドまたは、グラファイト、ガラス状炭素等ダイヤモンド様被覆固体物質、または、種々の形状のフラーレン等の、他の炭素をベースにした物質を含む。加えて、固体のダイヤモンド、石英等の他の物質、または金属、またはスズカーバイド、またはタングステンカーバイド等のあらゆる他の好適な硬い物質、または好適に硬いあらゆる組み合わせまたはマトリックス複合材料を含んでもよい。このような構造は、種々の物質で構成されてもよい。その物質は、グラファイト(三方晶系)またはダイヤモンド様(四面体)結合のように、非常に広範な構造的多様性を有し得る。その物質はまた、結晶質および/または非晶質の原子配列を有してもよく、その原子配列はグラファイト様、フラーレン様構造を含む、同質または異質構造を含んでもよい。その構造は、電子ビーム溶接で結合された、および/または、真空蒸着法で形成された、ダイヤモンドまたはカーボンナノチューブ等の、ダイヤモンドまたはダイヤモンド様物質および/またはフラーレン物質を含むことができ、電子ビーム溶接および真空蒸着法は、産業的方法の需要に最適に適応するための、そのような異なる原子構造の製造を可能にし、ここでそのような方法はシステム10および11に関連して使用する構造を形成するために使用される。
【0065】
図9を参照して、あらゆる規定された長さのナノチューブの製造に使用される、別のシステム11が示される。システム11は、1つの具体例において、2つの独立部分を提供するために、図1Bで示される必須の実質的システム10であるA部分、および追加的な実質的複製のB部分を含んでもよく、それぞれは補完的な連続的グラフェンシートを産生することができ、そのシートからは、A部分でカールしたストリップが切られ、同時にB部分でカールしたストリップが切られて、管構造のストランドまたはファイバーまたはナノファイバーを形成してもよい。
【0066】
システム11は、システム10の様に、貯蔵器11Aおよび11Bを含んで設計してもよく、それぞれの中に、グラファイト供給原料物質、例えば液体のジクロロベンゼンまたはトリクロロベンゼン、他の好適な液体の水性容量が供給されてもよい。以下で、システム11の特徴に言及する場合、A部分に備わる特徴を「A」で示し、B部分に備わる特徴を「B」で示すことを認識すべきである。
【0067】
またシステム11は、それぞれ貯蔵器11Aおよび11Bの中にドラム12Aおよび12Bを含んでもよい。ドラム12Aおよび12Bは、水性供給原料物質の実質的に均一な薄層がドラム12Aの外面121Aおよびドラム12Bの外面121B上に堆積される限り、図9に示す通り、部分的に沈められるか、または実質的に沈められるか完全に沈められてもよい。先導剤、またはマイラー(登録商標)(Mylar(R))等の開始剤基質(示さず)を、供給原料物質の連続的薄層の開始を容易にするために使用してもよい。1つの具体例において、先導剤を外面121Aおよび121B上に配置して、ドラム12Aおよび12Bがそれぞれの貯蔵器内で回転するに従って、供給原料が外面上に堆積されてもよい。
【0068】
システム11は、電離放射線の放出源、例えば、ドラム12Aおよび12Bにそれぞれ隣接するレーザー13Aおよび13Bを、さらに含んでもよい。レーザー13Aおよび13Bは、液体の供給原料物質の薄層上の、非炭素原子を気体中に電離するために使用してもよく、その結果、これらの非炭素原子はその後、供給原料物質の層から脱離し得る。供給原料物質の層上に残存する炭素原子は、その後、ナノチューブの形成に使用するための、約1原子の厚さのグラフェンのシート14Aおよび14Bを形成することができる。
【0069】
ドラム12Aおよび12Bの下流で、システム11はフィードローラー15Aおよび15Bを備えてもよい。1つの具体例において、フィードローラー15Aおよび15Bは、シート14Aおよび14Bがそれぞれドラム12Aおよび12Bから出てシステム11の残りの部分に沿って進行するのを補助するように働くことができる。シート14Aおよび14Bを先導するものの存在は、必要ではないが、フィードローラー15Aおよび15Bへのその後の方向付けの促進を助長することに注目すべきである。
【0070】
なおも図9を参照するが、システム11は、整列ローラー16Aおよび16Bをさらに含んでもよく、これらはそれぞれフィードローラー15Aおよび15Bの下流に位置する。整列ローラー16Aおよび16Bは、1つの具体例によれば、シート14Aおよび14Bを調節して適切に整列させるために使用することができるが、その結果、シートは適切に整列されて、システム11の切断ローラー17および18に送られる。取り込みローラー19は、製造されたナノチューブ20を回転して取り込み、収容するために使用する。
【0071】
今度は図10Aを考察するが、図9から取った一組の切断ローラー17および18の断面図であり、ローラー間の接触点の前で、グラフェンシート14Aおよび14Bを複数のストリップに切断する過程の最初の部分である。1つの具体例において、ローラー17および18のそれぞれは、一連の交互に位置する、相対的に浅い桶状溝901を有する歯90および相対的に深い桶状溝911を含む溝91を、ローラーの周囲に一端から反対の端まで含んで設計されてもよい。このような設計により、ローラー17および18のいずれかのそれぞれの歯90が、他方のローラーの相対する溝91と補完的に対になり、溝91内部に受け入れられる。
【0072】
この交互の溝の設計により、複数の管構造1A、1B、1C、1Dおよび1Eを有する図10B中の土台または型形成物93が、ローラー17および18間で歯90および溝91と一直線に位置することが可能になる。
【0073】
図10Bを参照すると、管1A、1B、1C、1Dおよび1Eは、型形成管93を成し、固定台または土台92に取り付けられるが、92は取り付けられた管が新たに形成された管構造とともに動くのを防ぎ、従って形成管93は適所に残り、形成方法の型として機能する。管1A〜1Eは固定的であるが、管は図11Aに示される交互の位置に在るに充分柔軟で長さがある。上記の開示に従って、形成物として使用される固定的なナノチューブは、ヒートシンク(放熱板)に取り付けて、方法過程からの、必要とされるあらゆる熱除去を促進してもよいことに注目すべきである。さらに、固定的ナノチューブは次第に細くなってもよく、その結果上述した通り、ナノコーンを使用する場合に徐々に直径が小さくなる管を形成し、かつ、例えば新たに出来たグラフェンの縁の結合を促進する効果を達成する。
【0074】
形成管93は図3のトロイド構造31と機能が類似しており、ここで31は面を提供し、その面上にシート14Aおよび14Bが最初に置かれてもよく、かつ、面の周りにシート14Aおよび14Bが形成されて、その後のナノチューブ形成のためのストリップに切断されてもよい。シート14Aおよび14Bのそれぞれは、形成物93の相対する面上に置かれ、その結果2つのシート14Aおよび14Bは形成管93が間にあって隔てられてもよいことに注目すべきである。1つの具体例において、形成管93は、管または形成管93が相対する歯90および溝91の間に実質的に適合するように、一連のナノチューブ1A、1B、1C、1D、1E等から作られてもよい。加えて、形成管93は、ナノスケール以上であってよい管の大きさによって、予め決められた大きさのあらゆる直径に作られてもよい。
【0075】
今度は図11Aを考察するが、ここでは、図9からの切断ローラー17および18の、ローラー17および18間の接触点での断面図が示される。シート14Aおよび14Bが土台93の相対する面の全域で2つのローラー間の曲線終点に向かって動かされるに伴い、シート14Aおよび14Bは土台93上のナノチューブ1A〜1Eのそれぞれについて徐々によりカールされてもよく、歯90が動いて相対する溝91に接近し溝内部に入るに伴い、結果としてグラフェンシート14Aおよび14Bの共有結合が変形する。ローラー17および18間の接触点に達する際に、歯90は、土台93のナノチューブ1A〜1E、およびその各側面上のシート14Aおよび14Bを、しっかりとかつ実質的に完全に相対する溝91の内部に押すように設計してもよい。その結果、歯90は、シート14Aおよび14Bの面に対して充分量の力を与えるために働き、シートにおける共有結合をせん断または破壊し、図11Bに示す通り、土台93の片面上で一時的にカールしたストリップ14Aが形成され、土台93のもう片方の面上で一時的にカールしたストリップ14Bが形成される。カールしたストリップ14Aおよび14Bは自己結合して、カーボンナノチューブ構造20A、20B、20C、20Dおよび20Eを作り出す。
【0076】
今度は図11Bを考察するが、ここでは、図9からの切断ローラー17および18から形成されたグラフェンのストリップの、ローラー17および18間の接触点での断面図が示される。上部のグラフェンシート14Aは、新たに作られた縁3Aおよび4Aを有するグラフェンのストリップに切断され、下部のグラフェンシート14Bもまた、新たに形成された縁3Bおよび4Bを有するグラフェンのストリップに切断される。高反応性の結合によって、縁3Aと3B、および、縁4Aと4Bは結合して、自身の完成に向かい、このようにして図11Aの完成された管構造20A〜20Eを形成する。
【0077】
代わりの具体例において、ローラー17および18のそれぞれは、ローラー17および18上の相対する溝が固定的な土台92上のナノチューブ形成物93の周囲の約半分に及ぶように、同様の深さの溝(示さず)を備えてもよい。このように、ローラー17および18がそれらの接触点に達した時に、ローラー17および18上の相対する溝は、ナノチューブ形成物93の各側面上のシート14Aおよび14Bとともに、その間にナノチューブ形成物93を実質的に包むように働いてもよい。加えて、ローラー17上の溝の間に備えられる縁(即ち、負荷点)は、ローラー18上の溝の間に備えられる縁に対して充分な機械力を与えるように働いてもよく、それによりシート14Aおよび14Bにおける共有結合がせん断または破壊され、図11Bに示す通り、ナノチューブ形成物93の一方の片面に図11Bのカールしたストリップ14Aが形成され、ナノチューブ形成物93のもう一方の面に一時的にカールしたストリップ14Bが形成される。
【0078】
今度は図11Bを参照するが、土台形成物93のナノチューブ1Aのそれぞれの側面上にストリップ14Aおよび14Bを形成するに際し、相対するストリップ対14Aおよび14Bのそれぞれ等は、土台92のナノチューブ形成物の周囲に、ナノチューブ20A〜20E等を形成するであろう。特に、それぞれの相対するストリップ対は、1つのストリップの縁3Aおよび4Aが相対するストリップの縁3Bおよび4Bに充分接近するように、ナノチューブ形成物93について位置するので、これらの縁はそれらから出るダングリング結合で結合して、ストリップ対のそれぞれから図11Aのナノチューブ20A〜20Eを形成してもよい。
【0079】
図11Aを参照して、それぞれ新たに形成されたナノチューブ20A、20B、20C、20Dおよび20Eは、その後、ローラー17および18から進んで取り込みリール19(例えば、図9参照)に貯蔵されるので、土台92の管形成物93の位置から引っ張られるか除かれてもよい。二重壁のナノチューブが形成される限り、ナノチューブ20A〜20Eは、管形成物93と共に動いてもよい。このような具体例において、管93は、貯蔵されたナノチューブのリールからローラー17および18の間に連続的に送られてもよい。ナノチューブ20A〜20Eおよび1A〜1Eから形成される二重壁ナノチューブは、ローラー17および18から進み、その後、取り込みリール19に貯蔵されてもよい。多壁ナノチューブが形成される場合、チューブ20A〜20Eおよび1A〜1Eから形成される二重壁ナノチューブを、形成物93等の、新たな形成物として使用してもよく、上述の方法を、所望の壁数のナノチューブが得られるまで繰り返してもよい。勿論、壁数が増えるに伴って、溝および/または歯の大きさも徐々に大きくする必要があるかもしれないことが理解されるべきである。これを受けて、各方法過程の終点にナノチューブの取り込みリールを動かしてもよく、または、製造されたチューブは、わずかにより大きい溝および/または歯を有する別のシステムに直接運ばれることができる。
【0080】
システム10または11が、ナノスケールの構造間、例えば、ナノスケールのローラー、ナノスケールの溝/歯、またはナノスケールのトロイド構造(即ち、稼動構造)を有するグラフェンシートおよび/またはナノチューブ(即ち、稼動/作用している構造)の間に、相互作用を伴う場合、これらのナノスケール構造間の動きは、稼動している構造と稼動されている構造との間の表面エネルギーの相互作用によって制御されてもよい。
【0081】
例えば、グラフェンシートを送る方法は、弱いpi結合による機械的手段によって達成されてもよく、この結合はグラファイトの隣接するシートまたは層を保持し、それによってグラフェン層は、機械的フィードローラーによって互いに機械的にはがすことが可能であるが、ここでフィードローラーはナノスケール以上であってもよい。このグラファイト層の放出は、フィードローラー部分で適用されるトルクによる、グラファイト結晶の活発な機械的切断であり、個々のグラフェンシートの弱いpi結合エネルギーをしのぐ。グラフェンシートが、グラファイト供給原料物質から機械的にはがされるに伴い、フィードローラーの表面エネルギーとグラフェンシートは相互作用して、グラフェンシートをフィードローラーの規定の格子構造と整列させるであろう。このグラフェンシートの開放は、フィードローラー部分を通して適用されたトルクによる、グラファイト結晶の活発な機械的解裂であり、これは個々のグラフェンシートの弱いpi結合エネルギーを打開するものである。グラフェンシートが、グラファイト供給原料物質から機械的にはがされるにつれて、フィードローラーとグラフェンシートの表面エネルギーは相互作用して、グラフェンシートを、フィードローラーの規定の格子構造と整列されるであろう。ナノチューブまたは巨大なナノチューブまたは一連のナノチューブを使用する場合、使用するナノチューブのキラリティーは、グラフェンのはがされたシートがいかに整列され、方法の次の段階に送られるかを決定するであろう。このように、2つの作業課題が達成され得る:1)グラファイト供給原料物質からの1シートのグラフェンの供給、および2)形成されるナノチューブ構造の格子構造またはキラル角を規定する、グラフェンシートの機械的整列。
【0082】
今度は図12および13を考察するが、本発明のローラーは、ナノスケールの大きさであってもそれ以上であっても、ローラーの回転を容易にする駆動機構につながってもよい。以下は、ナノスケールのローラーに関連して記述するが、勿論、必要なサイズに適宜拡大縮小することができる。駆動機構110は、1つの具体例において、複数のナノギア、例えば、管構造111、112、および113から構築されてもよい。
【0083】
図12に示した通り、管構造111は、その外面のギアの歯114を取り付けていてもよい。1つの具体例において、ギアの歯114は、図13の通り、凹状かまたは凸状の形状であってもよく、外面の周囲で一連の歯114に隣接して位置してもよい。加えて、歯114は、構造112等の、別のナノチューブ構造を補完するように位置してもよい。構造112および113は、構造111と同様に、それらの外面に複数のギアの歯115および116をそれぞれ取り付けていてもよい。1つの具体例において、ギアの歯115および116は、ナノチューブであってもよく、かつ、それぞれの管構造112および113の周囲で一連の他のナノチューブの歯に隣接して位置してもよい。図12に示す通り、ギアの歯114、115および116は、構造111上の歯114が構造112上の歯115に適合し、かつ、構造112上の歯115が構造113上の歯116に適合できるような、大きさ、形状および間隔であってもよい。ナノギア111、112、および113の大きさおよび数は変えてもよく、それらのあらゆる多様な組み合わせにおいて、他の構造に対して位置してもよい。
【0084】
図13は、本発明のシステムに関連して使用してもよい、ナノギアの別の例を示す。ナノチューブ構造121および122は、それぞれの外面でギアの歯123および124を取り付けていてもよい。1つの具体例において、ギアの歯123および124は、凹状および/または凸状の形状であってもよく、かつ、それぞれ構造121および112の周囲で一連の他のギアの歯に隣接して位置してもよい。図12のギアの歯のように、これらのギアの歯は、構造121上の歯として適当な形状、間隔およびギアの歯の数のものを用いることによって、構造122上の歯とかみあうように位置してもよい。
【0085】
ギアの歯114、115、および116は、1つの具体例に従って、ベンゼンまたはナフタレン分子、または、ナノチューブ111、112、または113につながることが可能な、あらゆる他の分子および/または原子を含んでもよい。
【0086】
ナノメカニカルシステムは、本発明の1つの具体例に従って、以下の通り要約してもよい。このシステムは、ナノベアリングを収容するローラーケーシング支持体等の、固定部分を含んでもよく、ナノベアリングの外輪に取り付けられる。このシステムは、さらに、ナノシャフト等の回転部分を含んでもよく、これはナノベアリングの内輪に取り付けることができる。1つの具体例において、ローラーは種々の構造中に組み込まれてもよい。1つのこのような可能な構造は、フィードローラーを有し、ナノスケールで構築されるローラー形成物を含む。フィードローラーは、構築されたナノチューブシャフトまたはナノシャフトを含んで作られてもよい。切断ローラーは、上部または下部切断ローラーに取り付けられた、閉じたトーラスナノチューブ、または下部または上部切断ローラーに取り付けられた、開いたトーラスナノチューブを有する、ナノチューブシャフトまたはローラーで構築されてもよい。ガイドローラーまたは形成ローラーは、ナノコーン構造で構築されてもよく、これは、該ナノコーン構造の中央を通って位置するナノチューブシャフトによって位置を保持されてもよい。このようなナノシャフトによって、ナノコーン構造が自由に回転できてもよく、ここでナノシャフト末端は、ナノコーンの間にスペーサーを有する剛体によって位置を保持される。スペーサーもまた、回転に伴って、該ナノコーンの整列を維持するように働くことができる。
【0087】
あるいは、ナノシャフトは該ナノコーンに取り付けられてもよく、その場合、ナノシャフトの末端は、ナノベアリングまたはそれ自身のケーシングの内部で自由に回転できる。この具体例におけるナノベアリングは、剛体である末端ケーシングに収容されてもよい。別の可能な構造は、顕微鏡的スケールまたはマクロスケール、および/または、表面がナノスケールの特徴および/または構造を有する巨大なナノチューブローラー構造である。さらなる可能な構造は、レーザーおよび/または電子ビームおよび/またはイオンビームからの磁場および/または電場、または、純粋にナノ機械合成法ではなく操作および形成方法においてナノスケールであろう、供給、切断および形成過程を制御する他の好適な源等の、エネルギー場の使用を組み入れる構造である。
【0088】
別の具体例において、本発明のシステムは、ローラー形成部分を用いずに実行してもよい。例えば、グラフェンシート物質の変形は、ローラーのカッター部分の内部で、グラフェンシート物質の縁のダングリング結合が合わさるに充分である場合は、ローラー形成部分はナノチューブ形成方法を完成するのに必要ではないかもしれない。1つの具体例において、ナノチューブは、ナノスケールのインプリンティングまたはスタンピング法を使って構築されてもよい。このような方法において、陽性のスタンプおよび補完的陰性のスタンプまたは金型部分を、連続法の図3および4の上部および下部ローラーと同様に、使用してもよい。
【0089】
今度は図14および15を考察するが、ポジの刻印機または上部部分1およびネガの刻印機または下部部分4は、それらが製造方法の間に物理的に接触する場合に互いに適合するように備えられてもよい。上部刻印機部分1は、上部部分1およびチップ3から延びる、少なくとも1つのアーム2を含んでいてもよく、ここでチップ3は、このページ中でまっすぐでもよいナノチューブで構築されてもよく、または、図3および4の通り、結合する2つの末端を有してトーラスの形状を形成してもよい。下部刻印機部分4は、溝6を含んでいてもよく、その内部に、上部からのチップ3が補完的に適合してもよい。下部4もまた、負荷点L1、L2、L3、およびL4を含んでいてもよく、そこにグラフェンシート物質が置かれてもよい。
【0090】
図15に示す通り、上部部分1が下部部分4と接触する場合、チップ3は、負荷点L1、L2、L3、およびL4上に位置するグラフェンシート物質5を、補完的形状の溝6に押し付けてもよい。グラフェンシート物質5が溝6内に押し込まれるに従って、シート物質は負荷点L1、L2、L3、およびL4でその共有結合をせん断または破壊されて、グラフェンシート物質が切断されてもよい。溝6は、同様の大きさの直径を有するナノチューブ構造を産生するような直径であってもよいことに注目すべきである。チップ3がまっすぐである場合、溝6の内部で、チップ3は図15の透視図から実質的に垂直に、紙の外部の面へ読者に向かって移動して、チップ3が下部刻印機部分4から引き抜かれてもよい。トーラス形状において、チップ3は下部刻印機部分4の一端から他方へ転がるであろう。チップ3が引き抜かれまたは転がり出されるに従って、下部刻印機部分4の底で6A、6B、および6C部分に切断されたグラフェンシート物質5は、それぞれの溝に残り得る。溝内部の切断シート6A〜Cの縁が近接することにより、切断シート6A〜Cのそれぞれの縁上の、ダングリング結合が合わさることができ、従ってナノチューブを産生される。1つの具体例において、グラフェンシート物質5は、刻印工程の前に変形されてもよい。あるいは、シート物質5は、刻印工程の前に変形されないままであってもよい。シート物質のこの変形もまた、上述の方法に適用してもよい。上記の方法において、電場および/または磁場を適用して、完成したチューブの金型またはインプリンティング工程からの除去を促進してもよい。
【0091】
チューブ(即ち、断面図が円)として図示するが、チップ3および補完的な溝6は、チップ3が溝6の内部で補完的に適合し得る限り、あらゆる断面の幾何学的図形であってもよいことに注目すべきである。あるいは、チップ3は、溝6の内部に適合する限り、溝6と非補完的な形状であってもよい。これは、切断したグラフェンシート5が一般に、一度切断すると、シート5の縁を合わせた後に、管形状のナノチューブを形成し得るからである。
【0092】
加えて、上部および下部刻印機部分は、種々の複雑な構造、例えば、枝状三次元パターン構造であることが可能であり、かつ、ダイヤモンドまたはダイヤモンド様または印加された構造等の物質、または他の好適な物質のエッチングまたは堆積された層を含んで、ナノチューブ形成または他の複雑な3次元構造のための機械的刻印方法を実施してもよい。また、上部刻印機部分1がローラー部分であってもよく、かつ、下部刻印機部分4が非ローラー部分であってもよいこと、または、部分1および4が連続的ローラー方法またはあらゆるそれらの組み合わせであってもよいことにも注目すべきである。
【0093】
本発明の1つの具体例に従って、刻印方法によって、使用される刻印機がナノチューブの周囲を作る炭素原子の数を決定できるように高度に制御された方法で、カーボンナノチューブ等のナノチューブを製造することができる。具体的には、上部部分1および下部部分4は予め決められた円周または直径寸法を有し、その寸法にグラフェンシート物質が切断され、ナノチューブが特定の直径で形成される。ナノチューブのキラリティーは、グラフェンシート物質または刻印方法において使用される他のシート物質の配列によって制御されてもよい。従って、形成されるナノチューブ構造のキラルベクトル(n,m)の両要素を制御する手段であって、左巻きのキラリティーおよび右巻きのキラリティーのナノチューブが形成され得る手段が提供される。
【0094】
上部および下部刻印機部分1および4の物理的寸法もまた、形成されるナノチューブの長さを決定することができる。具体的には、上部および下部刻印機部分の長さ寸法は、グラフェンシート物質5または他のシート物質を切断して、同様の長さのナノチューブ構造を形成するようなものであってもよい。
【0095】
ここで提供される刻印方法は、バッチ型または連続的工程または方法のものであってもよく、使用される物質の用途によって決定されてもよい。例えば、連続的方法は、長いナノチューブ構造の製造に使用してもよく、一方、バッチ方法は、ナノチューブ構造の長さが、エレクトロニクスおよびディスプレイ等の特定の用途に制限され得る場合に使用してもよい。本発明の刻印方法もまた、コスト効果的な方法でナノチューブを製造することができるであろう。これにより、種々の用途のためのナノチューブの大量生産が可能になるであろう。
【0096】
使用にあたり、カーボンナノチューブは、一枚のグラフェンシートで作られてもよい。このシートは、連続的方法で中空の円柱に形成された円筒状のものであってもよく、これは単一壁ナノチューブ(SWNT)構造と呼ぶことができる。また、カーボンナノチューブは、同心円状の円柱に形成された、いくつかのグラフェンシートの円筒状のもので作られてもよく、これは多壁ナノチューブ(MWNT)構造と呼ばれる。加えて、これらのナノチューブのそれぞれのタイプには、キラルベクトルと呼ばれる2桁の数字列(n,m)で特定される、多数の変化形がある。第一桁のnは、ナノチューブ外周の周りの原子数を意味し、第二桁のmは、ナノチューブ周囲の格子構造のオフセット角を指定する。第二桁が0である場合、ナノチューブは、アームチェアナノチューブと呼ばれる。両方の桁が同じ(n=m)である場合は、ナノチューブはジグザグナノチューブと呼ばれる。または、それらはキラルナノチューブと呼ばれ、キラリティーは左巻きであっても右巻きであってもよい。
【0097】
MWNTの形成または製造のためのナノメカニカル法または機械合成方法は、SWNT製造のためのものと同様であり、形成される構造の差は、同心円状に配置または形成されるシリンダーまたは管を製造する、グラフェンシートの追加の層を含む。このようなナノメカニカル法または機械合成方法では、広範な供給シート物質を使用してもよく、例えば、タンパク質、有機分子、無機分子、グラフェン、ポリマー、金属、金属酸化物、金属窒化物、セラミックス、またはあらゆる原子およびあらゆるマトリックスまたはそれらの組み合わせを使用してもよいが、これらに制限されるものではない。加えて、以下により詳細に述べるが、供給シート物質は、基礎物質(例えば、グラフェン)および、供給材料において通常見られないドーパントまたは原子を含み得る。ドーパントは基礎物質の代表的構造の1つ以上の原子を置換することができ、または供給物質の表面に共有結合でまたはイオン的に結合する原子等の、付加的要素であり得る。
【0098】
本発明の具体例に従って製造されるナノチューブは、ガラス、金属、マトリックス、または複合材料等の物質の強化を含む、多様な用途において有用であり得る。これらの強化された物質は、タイヤ、航空機支持構造体、宇宙船、船殻、構造的ビルディング、車、トラック、列車、線路、道路、および橋等のマクロ物体の製造に使用してもよい。また、本発明の具体例に従って製造されるナノチューブは、化学的、電気的、医学的および機械的システム用途におけるフィルターに使用してもよい。
【0099】
本発明の具体例に従って形成されるナノチューブ構造は、炭素で構成される必要はない。ナノチューブを形成する物質は、例えば、連続的形成方法の間、個々の原子および/または分子がナノチューブ構造の中心または外面またはナノチューブ格子構造内に所望の間隔および/位置で配置されてもよい方法で、さらに制御し、変えてもよい。そのようなナノチューブ格子構造内への配置は、関連するカム(camed)・ローラーまたは個々の原子および/または分子が、使用されるシート物質の表面および/または格子構造および/または縁の結合部位で挿入または除去される、電子および/またはイオンビーム等の他の好適な手段を使用することによって行われてもよい。ナノチューブの形成において、シート物質の縁がつながって管構造になる前に、原子および/または分子はナノチューブ構造の内面または外面上の縁および/または他の位置に配置されてもよい。このように形成されるナノチューブの格子構造は、構成する原子および/または分子に関して制御される。このような構造は、量子状態の構造を形成し得るので、多量子井戸構造(MQWS)を形成する可能性が見込まれる。そのようなもの(MQWS)は、ナノチューブ表面上の平面的sp結合が水素原子等の原子との部分的sp様結合へ変化することに起因するので、電気的および/または光子的特性について伝導帯構造に作用するが、これらの特性はすべて形成されるナノチューブ構造の長さによって変化し得る。例えば、伝導帯は散在してもよく、ナノチューブ構造上であらゆる長さまたは間隔であってもよく、または、部分的バンドから成ってもよく、それによって独特のバンドギャップエンジニアリングを実現することができる新規な量子井戸の秀逸な格子構造の形成または製造が可能になる。このような構造の例には、超極短波トランジスタ構造、固体レーザー、光学検波器、低誘電率輸送容器、場合に応じた熱および電気伝導率、導波管構造、超高エネルギー密度コンデンサおよびポリセラミック系、多色および光学検出器、生体類似合成物質、ナノ構造金属マトリックスおよびシステム、生物剤検出用蛍光コーティングフィルター、人口筋肉、太陽電池、原子層制御コーティング、ナノ光子、電池および燃料電池技術、発光素子、高度画像技術、ミクロおよびナノスケールの電気機械システム、スピントロニクス素子、および単一電子トランジスタおよびセンサー等の単一電子素子が含まれる。
【0100】
ナノ機械合成法における電動作用の方法は、例えば、機械的トルクを、ナノシャフトまたはローラー等のナノチューブ構造につながったギア歯に適用することによって、達成してもよい。あるいは、カーボンナノチューブの回転を直接的に引き起こすか、またはナノチューブギアが媒介した、レーザー電場を使用してもよい。このような運動作用は、ナノチューブ体内の自由電荷と適用されるレーザー電場間の力の相互作用によって達成されてもよい。
【0101】
1つの可能な用途は、形成される長いナノチューブ構造を材料とした導電性ケーブルを作ることである。このようなケーブル用には、導電性が銅よりも劇的に高く、約1000倍であってもよい。さらに、このような長いナノチューブ構造にドープまたは挿入されたドナー原子は、超伝導のケーブルを作ることができ、これは高温での超伝導体になり得る。
【0102】
別の可能な用途は、そのような長い導体ケーブルをマクロ機械的方法に取り入れることであり、そこで導体ケーブルは、電気出力を産生することができる。特に、該導体ケーブルの物理的屈曲または変形が起こり得るので、ピエゾフィルムを適用して現在使用されているように、機械的エネルギーから電気エネルギーへの変換が行われる。これらのピエゾフィルムは、センサーとして使用してもよく、またフィルムにナノチューブの使用を組み入れて、性能および信頼性のレベルを向上させることができる。
【0103】
別の具体例において、適切に整列された供給原料シート物質からナノチューブ構造を形成するために、ナノ構造を使用して、供給シート物質の機械的供給、回転、切断および形成を達成するような方法で、適用される力を変化させ、送り、かつ方向付けてもよい。この整列は、例えば、供給原料物質を、静電気、水素結合、共有結合、およびファンデルワールス結合の相互作用によってシート形態に編成するための界面活性剤を使用することによって達成されてもよく、ここで、適用された電場および/または磁場を使用して供給原料物質を整列および供給してもよい。この方法により、カーボンナノチューブおよび、整列された供給原料物質シートを機械的に供給、回転、切断して、ナノチューブ構造を形成する他のナノチューブ構造が製造され、形成されるナノチューブ構造における、ねじれまたはキラル角度に関しては制御される。
【0104】
種々のナノ構造は、ナノ機械系の構築において使用してもよい。例えば、カーボンナノチューブ、および/または、バッキーボール、カーボンナノらせん、ナノコイル、カーボンナノコーン、ナノインターフェイス、および他のそのようなナノ構造等の他のフラーレンを、ナノチューブおよび/または他のフラーレンの形成に使用してもよく、また、それらは、ナノスケールのギア、モーター、ローラー、カッター、レバーおよび収納容器の形成に使用してもよく、これらは全て、ナノチューブ構造のナノスケール製造のための、ナノ機械的設備に組み込んでもよい。ナノ機械は、SWNTおよび/またはMWNTで構築されてもよく、そこでは、ギアの歯が、ナノチューブ構造に結合した原子および/または分子および/または他のフラーレン構造につながり、かつ、それらを含んでいてもよい。ナノ構造がナノ接合を有するより複雑なナノデバイスの構築に物理的に加われるように、ナノ機械の製作もまたナノ接合を含んでもよい。
【0105】
窒化炭素または窒化ホウ素ナノチューブ等のナノチューブまたはあらゆる他のタイプのナノチューブ構造は、ナイロン、セルロース、タンパク質、またはヘミセルロース型物質等の有機および/または非有機分子の使用を組み入れてもよい、本発明のシステムおよび方法に従って構築されてもよい。1つの具体例において、本発明は、用途特異的な多様性が、タンパク質、有機分子、無機分子、グラフェン、ポリマー、金属、金属酸化物、金属窒化物、炭素、窒素、水素、酸素、セラミックスまたはあらゆる原子およびそのあらゆる組み合わせ等の、原子および/または分子のあらゆる組み合わせから構築され得る、ナノチューブ創出の調節可能なアプローチを提供する。そのような新しい構造により、独特の物理的、化学的および電気的特性が提供される。
【0106】
本発明の1つの具体例に従って製造されるナノチューブは、所与の用途、例えば、次世代の光源および/またはコンピュータ処理および/またはメモリシステムおよび/またはネットワーク・アーキテクチャ、および高画質ディスプレイを、加工および/または産生する、高温超伝導電気ワイヤー、電子計算および記憶システム、太陽電池、燃料電池、光子ナノチューブに有用な、特定の分子および/または原子を内包するように特注することができる、中空の導管(チャネル)を提供する。また、本発明の1つの具体例に従って作られたナノチューブは、バイオセンサーおよび薬物送達システム、腱または靭帯修復、神経修復、骨修復、眼修復、聴覚修復および総合的補綴学等の次世代の医学的用途、および、病気治療から光学式情報記憶および計算のためのプラスチック等の工業生産にわたる分野の多数の用途にも関連して使用され得る。
【0107】
本発明のシステムおよび方法は、本発明の物質の産出がナノスケール、マイクロスケール、ミリスケール、メゾスコピック、および/またはマクロ的製造方法を可能にして、ナノチューブ構造を製造される種々の目的物に組み入れることによってナノチューブの優位点およびユニークな性能を取り込む、現在の製造方法の効果を増強することも可能である。
【0108】
さらに、本発明のカーボンナノチューブはマクロ構造中に取り込まれて、構造的完全性を増し、かつマクロ構造の検出を可能にすることが発見された。例えば、これらのナノチューブが橋、ビル、船舶、航空機、線路および道路、宇宙船構造および展開物、航空電子工学および電子工学、高速惑星ネットワーク、宇宙電力および推進システム、および道路中に存在することで、構造的完全性が高められたことに加えて、ストレスや磨耗が示唆され得る。本発明のナノチューブは、車、バス、トラック、自転車、タイヤ、またはあらゆる部品または構成材、または繊維製品等のより小さいマクロ物体に適用してもよく、これらはカーボンナノチューブで強化されて構造的完全性が増強され、かつ検知能力が得られる可能性がある。
【0109】
本発明の1つの具体例において、入力トルクの適用によってナノチューブ構造の形成方法が開始かつ維持され得るような方法で構築された、複数の供給ローラー、切断ローラーおよび形成ローラーに機械類を載せてもよいことに注目すべきである。
【0110】
ナノチューブの設計についての関心事は、原子間の共有結合の破壊である。これを達成するために、機械的手段が提供されてもよく、それによって、供給シート物質の共有結合がせん断または破壊されるように、ローラーが変形して供給シート物質を挟むことが可能である。その後、切断ローラーを使用して、シートを所望の幅に切断し、図1において点3で示される通りの管の形状に部分的に形成されてもよい。
【0111】
物体を製造するために現在使用される製造システムの組み合わせに加えて、上述の具体例のあらゆる組み合わせを使用してもよく、従って、上述の具体例および要すれば具体例の組み合わせにおいて使用され得る、本発明に従って製造されるナノチューブ構造の有利な特徴によって、現在のマクロ的製造システムの効果が増し、有用性が助長され、かつ、該物体の関連する性能レベルが向上する。
【0112】
本発明の例示的具体例を述べたが、本発明はこれらの具体例に制限されない。修飾が可能であり、修飾が以下の特許請求の範囲に規定される通りの本発明の範囲内に包含され得ることは、当業者は容易に理解するであろう。手段と機能による項が用いられる特許請求の範囲において、列挙される機能と、構造的等価物だけではなく等価構造をも実施する通り、修飾がここで述べた構造的概念に及ぶことが意図される。
【0113】
好ましい具体例の文脈においてここで上述した通りの本発明の方法は、その与えられた詳細の全てに限定されると解するべきではない。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、その修飾および変形物が可能である。例えば、より広い様相における本発明の原理は、ここに述べた通り製造されたナノチューブ構造の使用を組み込むマクロ物体の製造のための、他の製造システムに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】図1Aは、本発明に従って、漸次チューブに形成される物質の、1原子の厚さのシートの図である。
【図1B】図1Bは、本発明の1つの具体例に従って、ナノチューブ構造を製造する1つの可能なシステムの全体図を示す。
【図2A】図2Aは、図1Bで示したシステムに関連して使用するローラーの例の断面図を示す。
【図2B】図2Bは、図1Bで示したシステムに関連して使用するローラーの、他の例の断面図を示す。
【図3】図3は、図1Bで示したシステムに関連して使用する一組の切断ローラーの断面図であって、ローラー間の接触点の前の図である。
【図4】図4は、図3に示す切断ローラーの断面図であって、ローラー間の接触点での図である。
【図5】図5は、ナノチューブ構造を形成する1段階の間に、図1Bのシステムに関連して使用する、一組の形成ローラーの断面図である。
【図6】図6は、ナノチューブ構造を形成する別の段階の間に使用する、別の一組の形成ローラーの断面図である。
【図7】図7は、図1Bのシステムに関連して使用する、代わりの一組の形成ローラーの断面図である。
【図8】図8は、ナノチューブ構造を形成する別の段階の間に使用する、別の一組の代わりの形成ローラーの断面図である。
【図9】図9は、本発明の1つの可能な具体例に従って、ナノチューブ構造を製造する別のシステムを示す。
【図10A】図10Aは、図9に示したシステムに関連して使用する一組の切断ローラーの断面図であって、ローラー間の接触点の前の図である。
【図10B】図10Bは、図10Aの切断ローラーに関連して使用される、モールド成形物の図である。
【図11A】図11Aは、図9に示す切断ローラーの断面図であって、ローラー間の接触点での図である。
【図11B】図11Bは、図11Aの管20A〜20Eの形成において結合されるストリップ(細長い一片)の断面図または拡大図である。
【図12】図12は、本発明のシステムに関連して使用する、種々のギアシステムの例を示す。
【図13】図13は、本発明のシステムに関連して使用する、種々のギアシステムの別の例を示す。
【図14】図14は、第1相における、本発明の1つの具体例に従った刻印装置の断面図である。
【図15】図15は、第2相における図14の装置の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチューブの製造システムであって、
ナノチューブの形成における使用に好適なシート物質に、機械的ストレスを適用する装置、
該シート物質を裂く装置、および
該シート物質を供給または除去する装置
を含むシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、該3つの装置が1つの装置を構成するシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムであって、機械的ストレスを適用する装置が互いに隣り合う2つのローラーを含み、二つの表面の間を通る物質が機械的に変形されて二つの表面の形状を模倣するように、該ローラーが概して補完的な表面形状を有するシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムであって、該シート物質を裂く装置が2つのローラーを含み、それぞれが各々の表面を含み、前記ローラーのそれぞれが、該シート物質の解裂を起こすために互いに充分近接して位置され得るように、調節できるように取り付けられるシステム。
【請求項5】
請求項1のシステムであって、該シート物質を供給または除去する装置が互いに隣り合う2つのローラーを含み、二つの表面の間を通る物質が機械的に変形されて二つの表面の形状を模倣するように、該ローラーが概して補完的な表面形状を有するシステム。
【請求項6】
請求項1のシステムであって、該シート物質を概して管状または丸い形状に形成する装置をさらに含むシステム。
【請求項7】
請求項1のシステムであって、該物質が該物質にストレスを適用する装置または該物質を裂く装置に入る前に、該物質をそろえる装置をさらに含むシステム。
【請求項8】
請求項1のシステムであって、裂かれた物質をナノチューブに融合する融合装置をさらに含むシステム。
【請求項9】
請求項1のシステムであって、裂かれた物質またはナノチューブを保管または保持する装置をさらに含むシステム。
【請求項10】
請求項1のシステムであって、グラフェンを作る装置をさらに含むシステム。
【請求項11】
ナノチューブの製造方法であって、
ナノチューブに形成するのに好適な少なくとも1つの物質を供給すること、
該物質にストレスを受けさせて変形させること、
該物質を裂くこと
該物質を概して丸いまたは管状の形状に形成すること、および
該物質をそれ自身融合するか、1つまたは2つの他の物質と融合し、ナノチューブを形成すること
を含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、該物質がグラフェンである方法。
【請求項13】
請求項11の方法であって、該ストレスが機械的ストレスである方法。
【請求項14】
請求項11の方法であって、該物質を裂くことが、充分な機械的圧力を適用してグラフェン物質中の共有結合を壊すことを含む方法。
【請求項15】
請求項11の方法であって、該物質を概して丸いまたは管状の形状に形成することが、グラフェンシートを、概して丸い形状を表す表面の少なくとも一部を有する2つのローラーの間に供給することを含み、
該ローラーのそれぞれが、ローラーに沿った1つ以上の点で他方のローラーに補完的な形状を含み、その結果、二つの表面は一致して働いて該物質を概して丸いまたは管状の形状に形成し、
裂くことおよび形成することが、同時にまたは実質的に同時に起こる、方法。
【請求項16】
請求項11の方法であって、該物質を概して丸いまたは管状の形状に形成することが、該物質を裂くことの後に実施される方法。
【請求項17】
請求項11の方法であって、融合が自然発生的に起こる方法。
【請求項18】
請求項11の方法であって、方法が連続的方法である、方法。
【請求項19】
少なくとも1mの長さを有するナノチューブ。
【請求項20】
請求項19のナノチューブであって、該ナノチューブが少なくとも10mの長さを有するナノチューブ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−224545(P2012−224545A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−179814(P2012−179814)
【出願日】平成24年8月14日(2012.8.14)
【分割の表示】特願2007−510959(P2007−510959)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(506360686)ナノソース インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】