ナノファイバーを含む多孔質基体、製品、システム及び組成物並びにその使用及び製造方法
電気基板、半透膜及びバリア、組織培養及び複合材料用構造格子、長尺非分岐ナノファイバーの製造等の各種用途に向けたナノファイバーを担持する大表面積の多孔質及び/又は湾曲状基体材料を提供する。触媒材料を堆積したカーボンブラック粒子等の複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備する段階と、マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する段階を含むナノファイバーの製造方法を開示する。ナノワイヤーを堆積したカーボンブラック粒子を含有する組成物も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国特許出願第11/511,886号(出願日2006年8月29日、発明の名称「ナノファイバーを含む多孔質基体、製品、システム及び組成物並びにその使用及び製造方法(POROUS SUBSTRATES,ARTICLES,SYSTEMS AND COMPOSITIONS COMPRISING NANOFIBERS AND METHODS OF THEIR USE AND PRODUCTION)」、発明者Chunming Niu)の優先権と特典を主張する非仮特許出願であり、その開示内容全体を全目的で本明細書に援用する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は主にナノテクノロジーの分野に関する。より詳細には、本発明はナノファイバーに関し、ナノファイバーの合成又は安定化方法、ナノファイバーを含む製品、及び各種用途におけるナノファイバーの使用を含む。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジーは次の社会的進化の敷石となる次期技術進化として歓迎されていると同時に、技術過信者により吹聴された最新の戯言に過ぎないという批判も受けている。基本的に、どちらの側の議論にもその立場を裏付ける多数の妥当な点がある。例えば、ナノ材料がその化学的、構造的及び電気的性能において非常にユニークで極めて望ましい性質をもつことは全く明白である。しかし、ナノスケール材料を妥当な商業的方法でマクロスケールの世界に組込むため及び/又はより複雑な予想用途に適したより複雑なシステム(例えばナノコンピューター、ナノスケール機械等)にこれらのナノ材料を組立てるために利用可能な技術が現時点ではごく限られていることも明白である。多様な研究者が耳目を喚起し、分子自己集合体、電磁集合体技術等について言及することにより組込みと組立ての問題に対処するために多数の異なる方法を提案している。しかし、成功例は殆ど発表されておらず、あるいはこれらの分野における取組みも殆ど発表されていない。
【0004】
所定のケースでは、個々の集合体を必要とする個々の要素としてよりもバルク材料としてこれらの材料のユニークで興味深い性質を活用するナノ材料の使用が提案されている。例えば、Duanら,Nature 425:274−278(September 2003)はバルク加工した配向半導体ナノワイヤー膜又は層を剛性半導体ウェーハの代わりに利用する(例えばディスプレイ、アンテナ用等の)大面積電子基板用ナノワイヤートランジスターを記載している。その結果、単結晶ウェーハ基板と同等性能であるが、性能の劣る非晶質半導体製法で使用されている従来の安価な製法を使用して製造可能な電子基板が得られる。この技術によると、唯一の新規製法要件は所定軸方向に実質的に配向されたナノワイヤーの膜を提供できさえすればよい。このような配向技術は例えば(各々その開示内容全体を全目的で本明細書に援用する)国際特許出願公開WO03/085700、WO03/085701、及びWO2004/032191、並びに米国特許第7,067,328号に既に詳細に記載されており、製造方法に合わせて容易に拡張可能である。
【0005】
別の典型的なケースでは、光電素子用の可撓性で高効率の活性層用としてバルク加工ナノ結晶が記載されている。特に、(II型バンドギャップオフセットを提供するために)正孔伝導性マトリックスに量子閉じ込め型半導体結晶を配置できるため、光起電力素子又は光電検出器として利用可能な光活性層を製造することが可能になる。活性複合材料に配置する場合、これらのナノ材料は産業界で利用可能な標準皮膜法を使用して簡単に加工される。例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第6,878,871号参照。
【0006】
ナノテクノロジーが近い将来に真価を発揮するためにはこれらの材料を更にバルク又はバルク様プロセスで使用することが必要になるという予想に基づき、本発明の所定の側面ではナノ材料をナノ材料自体として使用するのではなく、根本的に新規で有用な材料、組成物及び製品を得るためにより大型の材料、組成物及び製品への応用として使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多数の側面のうちで特に、本発明は従来報告されているナノ材料に欠如している取り扱い易さ、加工し易さ及び組込み易さを付与しながら、用法及び用途を拡大できる新規形態のナノ材料に関する。ナノファイバーの新規合成方法と、関連組成物も記載する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、カーボンブラックを含み、触媒材料を堆積した複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備し、マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する。
【0009】
ナノファイバーは基本的に任意型のナノファイバーを含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はマイクロ粒子又はナノ粒子の総表面積の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含むことができる。複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料を含む。場合により、ナノファイバーはシリコン又はシリコン酸化物を含む。
【0010】
場合によりナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子の表面からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。分離は例えばナノファイバーの合成後に例えば約500℃を上回る温度までマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱することにより簡便に実施することができる。
【0011】
別の一般分類の態様は孤立ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法では、基体を準備し、基体の表面で複数のナノファイバーを合成する。その後、基体を加熱してナノファイバーから基体を分離することにより、孤立ナノファイバーを製造する。適切な基体としては炭素(例えば活性炭繊維又はカーボンブラック粒子)を含む基体又は炭素から基本的に構成される基体が挙げられる。
【0012】
例えばナノファイバーの種類、ナノファイバーの組成、基体に堆積した触媒粒子からのナノファイバーの合成等に関して、上記方法の基本的に全特徴がこれらの態様にも適宜該当する。
【0013】
更に別の一般分類の態様はナノワイヤーを堆積したカーボンブラック粒子(例えばマイクロ粒子又はナノ粒子)の集団を含有する組成物を提供する。前記組成物は場合によりカーボンブラック粒子に堆積された1種類以上の触媒粒子(例えば触媒コロイド粒子)を含む。触媒粒子は例えば金又は白金等の金属を含むことができる。例えばナノファイバーの組成に関して、上記方法の基本的に全特徴がこれらの態様にも適宜該当する。
【0014】
所定態様において、組成物は導電性である。前記組成物を含む多孔質触媒担体も本発明の特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1A及びBはナノワイヤーをその表面に結合した多孔質基体の模式図を示す。
【0016】
【図2】図2A及びBは多孔質基体材料の内壁部分に結合したナノワイヤーの模式図を示す。
【0017】
【図3】図3A及びBは濾過カートリッジに組込んだ本発明の製品の模式図を示す。
【0018】
【図4】図4A及びBは例えばアウトドア衣類用の半透性防湿バリアとして本発明の基体を組込んだ積層繊維の模式図を示す。
【0019】
【図5】図5A及びBは粘着性撥水性包帯に組込んだ本発明の製品の模式図を示す。
【0020】
【図6】図6A及びBは光起電力素子に組込んだ本発明の基体材料の模式図を示す。
【0021】
【図7】例えば誘電層用の複合マトリックスに組込むための格子として使用される本発明の製品の模式図である。
【0022】
【図8】図8A及びBはクロマトグラフィー分離を実施するためのカラム装置と共に本発明の基体を組込んだ分離媒体を模式的に示す。
【0023】
【図9A】図9Aは本発明の所定側面で使用される独立メッシュネットワークを形成する相互融着ないし架橋ナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【図9B】図9Bは本発明の所定側面で使用される独立メッシュネットワークを形成する相互融着ないし架橋ナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【0024】
【図10】下層多孔質(例えばマクロ多孔質)基体と併用又は前記基体から独立して使用するための架橋ナノワイヤーメッシュネットワークの製造方法を模式的に示す。
【0025】
【図11】マトリックス材料内に配置された本発明の多孔質基体を利用する複合材料を示す。
【0026】
【図12】図12A及びBは本発明のナノファイバーを担持する多孔質基体の1例を示す。
【0027】
【図13】例えば防護衣類又は装置用のナノファイバー強化繊維を模式的に示す。
【0028】
【図14】多孔質材料層間に配置することによるナノファイバーを担持する基体の保護を模式的に示す。
【0029】
【図15】図15Aは網目状アルミニウムの電子顕微鏡写真を示す。図15Bは網目状アルミニウム基体上に成長させたナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【0030】
【図16A】石英ファイバーフィルター上に成長させたシリコンナノワイヤー(A−B)を示す。
【図16B】石英ファイバーフィルター上に成長させたシリコンナノワイヤー(A−B)を示す。
【図16C】石英ファイバーフィルター上に成長させ、音波処理により基体から分離したシリコンナノワイヤー(C−D)を示す。
【図16D】石英ファイバーフィルター上に成長させ、音波処理により基体から分離したシリコンナノワイヤー(C−D)を示す。
【図16E】グラスファイバー上に成長させたシリコンナノワイヤー(E)を示す。
【0031】
【図17A】図17Aは直径5μmのファイバー上に成長中のナノワイヤーのシミュレーションを示す。
【図17B】図17Bはファイバー上のナノワイヤー成長シミュレーションのファイバー半径の関数としてナノワイヤー1本当たりの衝突数のグラフを示す。
【0032】
【図18A】図18Aは金コロイド粒子を堆積したカーボンブラック粉末粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図18B】図18Bは図18Aのカーボンブラックに担持した金コロイド粒子から成長させたシリコンナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【図18C】図18Cは図18Aのカーボンブラックに担持した金コロイド粒子から成長させたシリコンナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は1側面において、従来報告されているナノ材料に欠如している取り扱い易さ、加工し易さ及び組込み易さを付与しながら、用法及び用途を拡大できる新規形態のナノ材料に関する。特に、本発明の1側面は複数のナノファイバーを結合した多孔質基体を提供する。ナノファイバーは基体の任意部分又は総表面に結合してもよいし、多孔質基体に配置する細孔を規定するアパーチャの内壁表面に主に又は実質的に局在させてもよい。
【0034】
本発明の製品は気体、流体等を濾過するための濾過媒体として利用することもできるし、半透性バリア(例えばアウターウェア、包帯用等の通気性防湿バリア)として利用することもできる。本発明の製品は例えば光起電力素子等における電極及び/又は他の活性エレメントとして有用な特性を付与するナノ材料を電子素子に組込むために利用することもできるし、これらのナノ材料を物理的構造(例えば複合材料)又は生体構造(例えば組織)に組込むために使用することもできる。多孔質又は湾曲基体上でナノファイバーを合成すると、各種用途の任意のものに使用される多数及び/又は高密度の長尺非分岐型ナノファイバーを容易に製造することが可能になる。
【0035】
従って、1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、a)複数のアパーチャ、又はb)湾曲表面を含む基体を準備し、前者の場合、基体の総表面積は複数のアパーチャの内壁表面積を含む。基体上で複数のナノファイバーを合成し、得られたナノファイバーをa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に結合させる。
【0036】
基体は複数の細孔を配置した固体基体、メッシュ(例えば金属メッシュ、例えばニッケル、チタン、白金、アルミニウム、金、及び鉄から構成される群から選択される金属を含むメッシュ)、織布(例えば活性炭繊維)、又は(例えばガラス、石英、シリコン、金属、又はポリマーファイバーを含む)ファイバーマットを含むことができる。他の例として、基体は複数のマイクロスフェア(例えばガラス又は石英マイクロスフェア)、複数のファイバー(例えばガラス又は石英ファイバー、例えばマイクロファイバー、ファイバーグラス、ガラス又は石英ファイバーフィルター)、又はフォームを含むことができる。所定態様において、a)の基体の複数のアパーチャは10μm未満、1μm未満、0.5μm未満、又は0.2μm未満の有効細孔径をもつ。他の態様において、a)の基体の複数のアパーチャは少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、又はそれ以上の有効細孔径をもつ。
【0037】
ナノファイバーは基本的に任意型のナノファイバーを含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含むことかできる。複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料(例えばシリコン)を含む。
【0038】
前記方法は場合により基体とこうして結合したナノファイバーをマトリックス材料で包囲又は少なくとも部分的に封入する段階と;基体上でナノファイバーを合成後に可溶性基体を溶解させる段階と;得られたナノファイバー上に隣接ナノファイバー間で連続するようにコーティングを形成する段階と;得られたナノファイバー上に多孔質材料層を配置する(及び場合により第2の多孔質材料層上に基体を配置し、ナノファイバーを担持する基体を挿入する)段階と;及び/又は(例えば化学部分又はナノ結晶をその表面に結合することにより)ナノファイバーを官能基化する段階を含む。
【0039】
1分類の態様において、長さが10μmを上回る(例えば20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る)得られるナノファイバーの収率は実質的に同一成長法を使用して同一表面積の平坦非多孔質基体上で合成される同一長さのナノファイバーの収率よりも少なくとも10%高い。前記方法による収率は場合により平坦非多孔質基体上での成長による収率よりも少なくとも25%、50%、75%、又は100%高い。
【0040】
場合によりナノファイバーの合成後に例えば基体の音波処理によりa)の基体の表面積又はb)の湾曲基体からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。1分類の態様において、孤立ナノファイバー集団におけるナノファイバーの少なくとも10%は10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る長さであり、ナノファイバーの最大50%は10μm未満の長さである。
【0041】
1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、カーボンブラックを含み、触媒材料を堆積した複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備し、マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する。
【0042】
ナノファイバーは基本的に任意型のナノファイバーを含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はマイクロ粒子又はナノ粒子の総表面積の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含むことができる。複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料を含む。場合により、ナノファイバーはシリコン又はシリコン酸化物を含む。
【0043】
場合によりナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子の表面からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。分離は例えばナノファイバーの合成後に例えば約500℃を上回る温度までマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱することにより簡便に実施することができる。
【0044】
別の一般分類の態様は孤立ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法では、基体を準備し、基体の表面で複数のナノファイバーを合成する。その後、基体を加熱してナノファイバーから基体を分離することにより、孤立ナノファイバーを製造する。適切な基体としては炭素(例えば活性炭繊維又はカーボンブラック粒子)を含む基体又は炭素から基本的に構成される基体が挙げられる。場合により、約500℃を上回る温度まで基体を加熱することによりナノファイバーを分離する。
【0045】
前記方法により製造された製品又はナノファイバー集団は本発明の別の特徴を形成する。従って、1典型的分類の態様は湾曲表面をもつ基体と、基体の湾曲表面の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバー(例えばナノワイヤー)を含む製品を提供する。基体は例えば複数のマイクロスフェア又は1本以上のグラスファイバー、石英ファイバー、金属ファイバー、ポリマーファイバー、もしくは他のファイバーを含むことができる。
【0046】
上記態様に関して、複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料(例えばシリコン)を含む。場合により、湾曲表面に存在するナノファイバーの少なくとも10%は長さが10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回り、湾曲表面に存在するナノファイバーの最大50%は10μm未満の長さである。ナノファイバーを予め形成して基体に堆積し、製品を製造することもできるし、複数のナノファイバーを湾曲表面の一部に成長させることにより湾曲表面の一部に結合することもできる。製品は場合により湾曲表面と複数のナノファイバーの少なくとも一部を包囲するマトリックス材料を含む。前記製品を含む装置又は組成物、例えば本発明の製品を含む埋込型医療装置、例えば本発明の製品を装置の表面の少なくとも一部に結合して被覆した埋込型医療装置は本発明の別の特徴を形成する。
【0047】
別の分類の態様はナノワイヤーを堆積したカーボンブラック粒子(例えばマイクロ粒子又はナノ粒子)の集団を含有する組成物を提供する。前記組成物は場合によりカーボンブラック粒子に堆積された1種類以上の触媒粒子(例えば触媒コロイド粒子)を含む。触媒粒子は例えば金又は白金等の金属を含むことができる。例えばナノファイバーの組成に関して、上記方法の基本的に全特徴がこれらの態様にも適宜該当する。所定態様において、組成物は導電性である。前記組成物を含む多孔質触媒担体も本発明の特徴である。
【0048】
別の一般分類の態様はナノファイバー(例えばナノワイヤー)の安定化方法を提供する。前記方法では、ナノファイバー集団を準備し、ナノファイバーにコーティングを形成する。コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。ナノファイバーを含む第1の材料は場合によりコーティングを含む第2の材料と異なる。1分類の態様において、コーティングは炭化物、窒化物、又は酸化物(例えばシリコン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、タングステン、タンタル、イリジウム、もしくはルテニウム酸化物、又はナノファイバーを含む材料の酸化物)を含む。別の分類の態様において、ナノファイバーはシリコンから構成され、コーティングはポリシリコンから構成される。
【0049】
場合により基体の表面でナノファイバーを合成することによりナノファイバー集団を準備する。前記方法は化学結合部分、疎水性化学部分、親水性化学部分等でコーティングを官能基化する段階を含むことができる。
【0050】
前記方法により形成されたナノファイバー集団は本発明の別の特徴である。本発明の1つの一般分類の態様はナノファイバー(例えばナノワイヤー)とナノファイバー上のコーティングを含むナノファイバー集団を提供し、前記コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。上記方法に関して、ナノファイバーを含む第1の材料は場合によりコーティングを含む第2の材料と異なる。1分類の態様において、コーティングは炭化物、窒化物、又は酸化物(例えばシリコン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、タングステン、タンタル、イリジウム、もしくはルテニウム酸化物、又はナノファイバーを含む材料の酸化物)を含む。別の分類の態様において、ナノファイバーはシリコンから構成され、コーティングはポリシリコンから構成される。コーティングは化学結合部分、疎水性化学部分、親水性化学部分等で官能基化することができる。場合によりナノファイバーを基体に結合する。1態様では、埋込型医療装置の表面の少なくとも一部にナノファイバーを結合して被覆する。
【0051】
更に別の一般分類の態様は複数のアパーチャを配置し、複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積をもつ基体と、基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバーを含む製品を提供する。基体は例えば、固体基体(例えばシリカ系ウェーハ、金属プレート、又はセラミックシートもしくはプレート)を含むことができ、複数のアパーチャは固体基体に配置された複数の細孔を含む。別の例として、基体はメッシュ、例えばポリマーメッシュ又は(例えばニッケル、チタン、白金、アルミニウム、金、又は鉄を含む)金属メッシュを含むことができる。更に別の例として、基体は織布、例えばファイバーグラス、カーボンファイバー、又はポリマー(例えばポリイミド、ポリエーテルケトン、又はポリアラミド)を含む繊維を含むことができる。更に別の例として、基体はファイバーマット、例えばシリカ系ファイバー(例えばガラス及びシリコン)、金属ファイバー、又はポリマーファイバーを含むファイバーマットを含むことができる。
【0052】
所定態様において、複数のアパーチャは10μm未満、例えば、1μm未満、0.5μm未満、又は0.2μm未満の有効細孔径をもつ。他の態様、例えば長尺非分岐ナノファイバーの合成が所望される態様において、複数のアパーチャは少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、又はそれ以上の有効細孔径をもつ。
【0053】
ナノファイバー(例えばナノワイヤー)は基本的に任意の適切な材料を含むことができる。例えば、複数のナノファイバーはIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料(例えばシリコン)を含むことができる。ナノファイバーを予め形成して基体に堆積することもできるし、表面積の一部に成長させることにより基体の表面積の一部に結合することもできる。複数のナノファイバーは場合により基体に電気的に結合する。複数のナノファイバーは化学結合部分、例えば疎水性化学部分で官能基化することができる。
【0054】
1分類の態様では、基体と複数のナノファイバーをマトリックス材料で包囲又は少なくとも部分的に封入する。マトリックス材料はアパーチャに少なくとも部分的に挿入することができる。1態様において、マトリックス材料と複数のナノファイバーは相互にII型エネルギーバンドギャップオフセットをもつ。マトリックス材料は場合によりポリマー(例えば、ポリエステル、エポキシ、ウレタン樹脂、アクリル酸樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又はPFA)を含む。1側面において、本発明は埋込型医療装置を提供する。例えば、埋込型医療装置は埋込型医療装置の表面の少なくとも一部に結合して被覆する本発明の製品を含むことができる。
【0055】
1分類の態様において、基体は活性炭(例えば活性炭繊維)を含む。少なくとも第1のナノ結晶集団をナノファイバーに結合することができ、例えば、ナノ結晶はAg、ZnO、CuO、Cu2O、Al2O3、TiO2、MgO、FeO、及びMnO2から構成される群から選択される材料を含む。場合により少なくとも第2のナノ結晶集団もナノファイバーに結合することができ、第2の集団のナノ結晶は第1の集団のナノ結晶と異なる材料を含む。所定態様では、化学部分(例えば非有機ガスを吸収又は分解する化学部分)でナノファイバーを官能基化する。これらの態様で好ましいナノファイバーとしてはカーボンナノチューブとシリコンナノワイヤーが挙げられる。本発明のナノファイバー強化基体は衣料品に組込むことができる。
【0056】
各種技術を使用してナノファイバーを担持する基体を保護することができる。例えば、1分類の態様において、基体(例えば織布)は第1の表面を含み、製品は更に基体の第1の表面上に配置された第1の多孔質材料層を含む。場合により、基体は第2の表面を含み、製品は更に基体の第2の表面に配置された第2の多孔質材料層を含み、従って基体は第1の多孔質材料層と第2の多孔質材料層の間に挿入される。別の例として、製品はナノファイバー上にコーティングを含むことができ、前記コーティングはA隣接ナノファイバー間で連続している。
【0057】
更に別の一般分類の態様は蒸気吸収性繊維の製造方法を提供する。前記方法では、複数のアパーチャを配置した多孔質繊維基体を準備する。基体は複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積を含む。繊維基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバーも準備し、少なくとも1種類の有機ガス又は非有機ガスを吸収又は分解する部分でナノファイバーを官能基化することにより、蒸気吸収性繊維を製造する。
【0058】
前記繊維は活性炭繊維が好ましい。少なくとも1種類の非有機ガスを吸収又は分解する化学部分でナノファイバーを官能基化することができる。少なくとも第1のナノ結晶集団をナノファイバーに結合することによりナノファイバーを官能基化することが好ましく、前記第1のナノ結晶集団は少なくとも1種類の非有機ガスを吸収又は分解する第1の材料を含む。蒸気吸収性繊維は衣料品又は他の防護装置に組込むことができる。
【0059】
1関連分類の態様は更に蒸気吸収性繊維の製造方法を提供する。前記方法では、複数のアパーチャを配置した多孔質繊維基体(例えばメソ多孔質炭素繊維)を提供する。基体は複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積を含む。少なくとも1種類の非有機ガスを吸収又は分解する複数のナノ結晶を繊維基体の総表面積の少なくとも一部に結合することにより、蒸気吸収性繊維を製造する。
【0060】
I.発明の一般説明
本発明は一般に、ユニークな物理的、化学的及び電気的性質を付与するためにナノワイヤー表面又は表面部分を利用する新規製品及び組成物を特に提供する。特に、本発明は一面において、多種多様な用途に適した多様なユニークで有用な性質をもつ材料を提供するために、ナノワイヤーを多孔質基体の総表面の少なくとも一部に結合した多孔質基体に関する。
【0061】
ナノワイヤーを多孔質基体の各表面に付加すると、既に使用されている用途における多孔質基体の性能を改善するのみならず、このような多孔質基体を従来から利用可能か否かに拘わらず、多数の他の各種用途でも基体材料の性能を改善する。
【0062】
例えば、ナノワイヤーで拡大した表面を膜又は他の半透性バリアに組込むと、濾過効率を上げることができる。特に、既存の膜又は他の透過層の細孔内にナノワイヤーを配置することにより、フィルターの両端間に予想される圧力低下の増加を伴わずに濾過効率を上げることができる(Grafeら,Nanowovens in Filtration−Fifth International Conference,Stuttgart,Germany,March 2003参照)。因みに、このようなナノファイバーはこのようなバリア(例えば通気性撥水性バリア、抗菌/防腐バリア)に補助的性質を付与するために使用することができる。このようなバリアはアウトドア衣料産業で広く利用可能であるのみならず、酸素を透過するが、水分又は細菌等の粒子を透過せず、更に抗微生物ナノファイバーを使用できるため、傷包帯や外科用包帯としても特に有用である。後者用途はナノワイヤー/ナノファイバーで拡大した表面の乾燥接着性の点で特に有利である(例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第7,056,409号参照)。因みに、このようなナノファイバーで拡大した表面は化学及び/又は生物防護バリア(例えば場合により水分を透過するが、化学蒸気を吸収する衣類)の製造にも使用することができる。
【0063】
より大きな表面積を達成するためにナノファイバーを膜に堆積することは一部の研究者により提案されているが、ファイバーを表面に結合することができ、特にこのようなファイバーをin situ成長させることができるならば、単なるファイバー堆積にまさる多数の利点が得られる。特に、単にファイバーを膜に堆積するだけでは、膜の総表面積をファイバーで均一又は完全に(例えば内部まで)覆うことは困難であるが、in situ成長法は著しく良好に内面を覆うことができるので、膜又はバリアの表面積を著しく大きくすることができる。更に、このような方法はこのようなファイバーを結合する表面に対してファイバーの配向を変化させることができ、即ちファイバーを表面に平行に配置するのではなく表面から突出させることができる。
【0064】
多孔質基体の機能改善に加え、多孔質基体をナノファイバー/ナノワイヤーと併用すると、多孔質基体単独の使用では殆ど適用できないような多様な用途で使用可能なユニークな超大表面積材料が得られる。例えば、超大表面積電気コンポーネントは例えば(例えばペースメーカー内の)生体組織、組織格子としての他の生体インプラントのカバー又はカテーテル用感染防止バリア等と接続するための電極として各種用途に用いることができる。
【0065】
更に他の用途として、多孔質基体は各種用途(例えば複合フィルム用等)に用いるナノファイバー/ナノワイヤーの高密度集団を提供するためのユニークな合成用格子を提供する。このようなフィルムは一般に半導体複合材料、誘電フィルム、電子又は光電素子用活性層等として利用することができる。
【0066】
更に他の用途として、多孔質基体はナノファイバー、特に長尺非分岐型ナノワイヤーを高収率及び/又は密度で合成するためのユニークな合成用格子を提供する。
【0067】
これらの技術、材料、及び製品には広範な潜在的用途があり、このような用途は本開示を読了後に当業者に認識されよう。
【0068】
II.本発明の製品、構造及び構成
上記のように、1側面において、本発明の製品は製品の基材として多孔質基体を組込む。本発明により使用される多孔質基体としては一般に、ナノワイヤーを結合することができ且つアパーチャが存在する各種固体又は半固体材料の任意のものが挙げられる。従って、これらの基体としては可撓性でも剛性でもよく、アパーチャを配置した固体連続基体(例えばプレート、フィルム、又はウェーハ)(例えば打抜き又はエッチングした金属又は無機穿孔プレート、ウェーハ等、有孔又は穿孔フィルム)でもよいし、基体は固体又は半固体コンポーネントの凝集体、例えばファイバーマット、メッシュスクリーン、非晶質マトリックス、複合材料、織布(例えばファイバーグラス、カーボンファイバー、ポリアラミド又はポリエステル繊維等)でもよい。当然のことながら、多様な各種材料の任意のものから基体を構成することができ、有機材料(例えばポリマー、カーボンシート等)、セラミック、無機材料(例えば半導体、絶縁体、ガラス、例えばシリカ系材料(例えばシリコン、SiO2)等)、金属、半金属、並びにこれらの全材料の複合材料が挙げられる。
【0069】
更に、その有効性を更に増すため、例えばより大きな表面積を提供するため、流体又は気体を通過させるため、多孔質基体自体により提供される濾過に先立って予備濾過を提供するため等の目的でその表面に付加的形状(例えばウェル、ピラミッド、ポスト等の三次元形状)をもつように基体(例えば剛性ないし固体基体)を加工することができる。更に、多孔質基体を含むと記載するが、当然のことながら、用途によっては単一製品、装置又はシステムに複数の基体を集積することもできる。更に、主に平坦多孔質基体として記載及び例示するが、当然のことながら、用途に応じて各種形状の任意のものとして多孔質基体を作製することができ、その所望用途に組込み易い非平坦三次元形状、球状、円筒状、ディスク状、立方体、ブロック、ドーム、多面体等が挙げられる。基体(例えば平坦シート状基体)は場合により剛性又は可撓性である。
【0070】
金属基体の例としては鋼/鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、銀、金、白金、パラジウム、又は最終製品に所望性質(例えば導電性、可撓性、展性、費用、加工性等)を付与するほぼ任意の金属基体が挙げられる。所定の好ましい側面では、金属ワイヤーメッシュ又はスクリーンを基体として使用する。このようなメッシュはスクリーン/細孔及びワイヤー寸法が十分に規定された入手し易い市販フォーマットで比較的均一な表面を提供する。多様な金属メッシュがこのような各種スクリーン/細孔及びワイヤー寸法で市販品として容易に入手可能である。あるいは、穿孔プレート(例えばアパーチャを加工した固体金属シート)として金属基体を提供することもできる。金属プレートにアパーチャを加工するには、多数の手段の任意のものを利用することができる。例えば、本発明の所定側面で使用されるような比較的小さいアパーチャ(例えば直径100μm未満)はリソグラフィー、好ましくはフォトリソグラフィー技術を使用して加工することができる。同様に、このようなアパーチャはレーザー技術(例えばアブレーション、レーザー穴あけ等)を使用して加工することもできる。もっと大きいアパーチャ(例えば50〜100μmよりも大)には、より一般的な金属加工技術(例えば打ち抜き、穴あけ等)を利用することができる。
【0071】
ポリマー及び無機基体は上記金属基体と同様に構成することができ、メッシュもしくはスクリーン構造、ファイバーマットもしくは凝集体(例えばウール)、又はアパーチャを配置した固体基体が挙げられる。ポリマー基体の場合も、主要選択基準は基体が所望用途で機能することであり、例えば薬品、熱もしくは放射線又は他の暴露条件に耐性でなければならない。好ましい側面において、ポリマー基体は他の有用な特性を製品全体に付与し、このような特性としては可撓性、製造適性又は加工性、化学的適合性又は不活性、透明性、軽量、低費用、疎水性又は親水性、あるいは種々の他の有用な特性の任意のものが挙げられる。特に好ましいポリマー基体はその製造及び/又は適用で使用可能な所定の高環境条件、例えば高温(例えば300又は400℃を上回る温度)、高塩、酸性又はアルカリ性条件等に耐えられる。特に、ナノワイヤーを実際に基体の表面でin situ成長させる場合には高温合成法(例えば450℃)を利用することが多いので、高温に耐えられるポリマーが特に好ましいと思われる。このような用途にはポリイミドポリマー、ポリエーテルケトン、ポリアラミドポリマー等が特に好ましい。このような用途に特に適切な広範な他のポリマーも当業者に認識されよう。あるいは、より広範な他のポリマーでは低温ファイバー合成法も利用することができる。このような方法としてはGreeneら(“Low−temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays”,L.Greene,M.Law,J.Goldberger,F.Kim,J.Johnson,Y.Zhang,R.Saykally,P.Yang,Angew.Chem.Int.Ed.42,3031−3034,2003)により記載されている方法や、約200℃の合成温度を利用するPECVDの使用が挙げられる。既に合成されたナノファイバーを単に多孔質基体に配置する場合、例えば基体をナノワイヤーに結合する場合又はナノワイヤーのマクロ多孔質担体として利用する場合には、著しく多様な多孔質基体を利用することができ、有機材料(例えば有機ポリマー)、金属、セラミック、多孔質無機物(例えば焼結ガラス)が挙げられ、セルロース膜(例えばニトロセルロース)、ポリ二弗化ビニル膜(PVDF)、ポリスルホン膜等の従来入手可能な各種膜材料も含む。
【0072】
場合により、多孔質基体は可溶性材料(例えばセルロース等)を含むことができる。ナノファイバーの結合と場合により基体全体をその最終装置構造に配置後、担持している多孔質基体を溶解させると、編成マット又はナノファイバー集合が残る。例えば、本明細書に記載するように可溶性メッシュの総表面又は内壁表面にナノファイバーを結合することができる。その後、メッシュを円筒状に巻き、円筒状ハウジング(例えば分離用カラム)に挿入することができる。その後、担持しているメッシュを溶解させると、ナノファイバーを充填したカラムが得られる。更に、上記のように、多孔質マトリックスは多数の形状の任意のものを含むことができ、基体を溶解すると各種形状のファイバー凝集体の任意のものが得られるように可溶性にすることもできる。
【0073】
上記のように、本発明で使用する基体のアパーチャは一般にその有効細孔径又は「有効気孔率」として定義される。本明細書では複数のアパーチャ又は細孔として記載しているが、当然のことながら、基体に配置するという状況で使用する場合の「アパーチャ」又は「細孔」なる用語は単に基体材料を貫通する連続経路ないし通路を意味し、前記材料は固体単体の基体材料でもよいし、複数の基体材料部分が凝集したメッシュ又はマットでもよい。従って、このような「アパーチャ」又は細孔は単一通路である必要はなく、複数の通路を一列に並べて連続経路を形成したものでもよい。同様に、アパーチャ又は細孔は単に材料を貫通する連続経路を提供するような隣接する基体材料部分(例えばファイバー等)間のスペースを意味する場合もある。本発明の趣旨では、ナノファイバーを配置しない場合の細孔又はアパーチャ寸法は一般に材料の用途の種類により異なる。
【0074】
例えば、濾過用途では一般に濾過する粒子又は他の材料の種類により細孔径が異なり、粗大粒子濾過操作の場合の数十〜数百ミクロン以上から極微細濾過用途(例えば細菌滅菌フィルター)のサブミクロンスケールまでに及ぶ。同様に、半透性バリア用途では、このような細孔は一般に所望される許容可能な透過性の種類により異なる。例えば、通気性防湿バリアの細孔径は数十ミクロンからサブミクロン範囲(例えば0.2μm以下)とすることができる。場合により、生物剤(例えば細菌やウイルス)を通過させないように、100nm未満、更には20nm未満の有効細孔径が望ましい場合もある。
【0075】
本明細書に記載する製品及び基体は外面と細孔内の表面の両者を含む基体の実質的に全表面にナノワイヤーを含むことができる。ナノワイヤーを配置することができるこれらの表面を総称して本明細書では基体材料の「総表面」と言い、細孔の内壁に配置された壁表面を一般に本明細書では基体材料又は細孔の「内壁表面」と言う。本開示を読了した当業者に自明の通り、所定態様(例えばファイバーマット又はウール様基体の場合)では表面を内壁表面と言うが、所定基体材料は基本的に可撓性及び/又は展性であるため、基体材料の全表面の各部分は移動する可能性があるので、これはこの表面が細孔又はアパーチャの内部に存在するという永久的状態を必ずしも意味するものではない。
【0076】
上記のように、本発明の基体はその表面にナノファイバー又はナノワイヤーを組込むことにより顕著なユニークな性質を獲得する。大半の用途では、「ナノワイヤー」及び「ナノファイバー」なる用語は交換可能に使用する。しかし、例えばナノファイバーの導電性又は半導体性が問題となる導電用途では、「ナノワイヤー」なる用語が一般に好ましい。いずれの場合も、ナノワイヤー又はナノファイバーは一般に縦横比(縦対横)が>10、好ましくは>100、多くの場合には1000以上の細長型構造を意味する。これらのナノファイバーは一般に横断面寸法(例えば直径)が500nm未満、好ましくは100nm未満、多くの場合には50nm又は20nm未満である。
【0077】
本発明で利用するナノファイバーの組成は一般に得られる基体材料の用途により大幅に異なる。例えば、ナノファイバーは有機ポリマー、セラミック、無機半導体及び酸化物、カーボンナノチューブ、生体由来化合物(例えば線維蛋白質等)又は同等物から構成することができる。例えば、所定態様では、半導体ナノファイバー等の無機ナノファイバーを利用する。半導体ナノファイバーは多数のIV族、III−V族もしくはII−VI族半導体又はその酸化物から構成することができる。特に好ましいナノファイバーとしては半導体ナノワイヤー又は半導体酸化物ナノファイバーが挙げられる。
【0078】
一般に、利用するナノファイバー又はナノワイヤーはこれらの細長型構造を基体表面上で成長又は合成することにより製造される。例えば、米国特許出願公開第US−2003−0089899−A1号は各種蒸気相エピタキシーを使用して固体基体に付着した金コロイドから均一な半導体ナノワイヤー集団を成長させる方法を開示している。Greeneら(“Low−temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays”,L.Greene,M.Law,J.Goldberger,F.Kim,J.Johnson,Y.Zhang,R.Saykally,P.Yang,Angew.Chem.Int.Ed.42,3031−3034,2003)は溶液系低温ワイヤー成長法を使用してナノワイヤーを合成する代替方法を開示している。他の細長型ナノ材料を合成するために他の各種方法が使用されており、短尺ナノ材料の製造方法として米国特許第5,505,928号、6,225,198号及び6,306,736号に開示されている界面活性剤系合成法や、カーボンナノチューブの公知製造方法(例えばUS−2002/0179434(Daiら)参照)が挙げられる。本明細書に記載するように、本発明で使用するナノファイバーの製造にはこれらの各種材料の全てを使用することができる。所定用途では、製造した基体又は製品の最終用途に応じて多様なIII−V族、II−VI族及びIV族半導体を利用することができる。一般に、このような半導体ナノワイヤーは例えば上記に援用したUS−2003−0089899−A1に記載されている。所定の好ましい態様において、ナノワイヤーはSi、Ge、Sn、Se、Te、B、ダイアモンド、P、B−C、B−P(BP6)、B−Si、Si−C、Si−Ge、Si−Sn、Ge−Sn、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、AgF、AgCl、AgBr、AgI、BeSiN2、CaCN2、ZnGeP2、CdSnAs2、ZnSnSb2、CuGeP3、CuSi2P3、(Cu,Ag)(Al,Ga,In,Tl,Fe)(S,Se,Te)2、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、(Al,Ga,In)2(S,Se,Te)3、Al2CO、及びこのような半導体の2種類以上の適当な組み合わせから構成される群から選択される。ナノファイバーは場合により金チップを含む。
【0079】
半導体ナノファイバーの場合、特に電気又は電子用途に用いる半導体ナノファイバーの場合、ナノファイバーは場合により周期表のIII族に由来するp型ドーパント;周期表のV族に由来するn型ドーパント;B、Al及びInから構成される群から選択されるp型ドーパント;P、As及びSbから構成される群から選択されるn型ドーパント;周期表のII族に由来するp型ドーパント;Mg、Zn、Cd及びHgから構成される群から選択される型ドーパント;周期表のIV族に由来するp型ドーパント;C及びSiから構成される群から選択されるp型ドーパント;又はSi、Ge、Sn、S、Se及びTeから構成される群から選択されるn型ドーパントから構成される群から選択されるドーパントを含むことができる。
【0080】
場合により、例えば半透性包帯、衣類、濾過又は他の用途では自己滅菌能をもつナノファイバーを利用することが望ましい場合がある。このような場合には、紫外線を受けると有機材料を酸化して自己洗浄機能を発揮する例えばTiO2からナノファイバーを製造することができる(例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許出願公開第20060159916号参照)。
【0081】
更に、このようなナノファイバーは単結晶構造のようにその組成が均一でもよいし、異なる材料のヘテロ構造(例えばその長さ方向に組成が変化する縦方向ヘテロ構造、又はその横断面もしくは直径方向に組成が変化する同軸ヘテロ構造)から構成してもよい。このような同軸及び縦方向ヘテロ構造ナノワイヤーは例えば全目的で本明細書に援用する公開国際特許出願第WO02/080280号に記載されている。
【0082】
本発明の製品のナノワイヤー部分は例えば多孔質基体の所望表面でin situ合成することが好ましい。例えば、好ましい側面では、上記方法等のコロイド触媒VLS(蒸気−液体−固体)合成法を使用して無機半導体又は半導体酸化物ナノファイバーを多孔質基体の表面に直接成長させる。この合成技術によると、(場合により多孔質基体の総表面を含む)多孔質基体の所望表面にコロイド触媒を堆積する。コロイド触媒を含む多孔質基体を次に合成工程に付し、多孔質基体の表面に結合したナノファイバーを製造する。他の合成法としては多孔質基体の表面に堆積した例えば50nmの触媒薄膜の使用が挙げられる。その場合には、VLS法の熱が膜を融かし、ナノファイバーを形成する触媒小液滴を形成する。一般に、この方法はファイバー直径均一性が最終用途にさほど重要でない場合に使用することができる。一般に、触媒は金属(例えば金)を含み、基体の表面に電着又は蒸着してもよいし、多数の他の周知金属堆積技術の任意のもの(例えばスパッタリング等)で堆積してもよい。コロイド堆積の場合には、一般にコロイドが表面に付着するようにまず基体の表面を処理することによりコロイドを堆積する。このような処理としては従来詳細に記載されているもの(例えばポリリジン処理等)が挙げられる。その後、表面処理した基体をコロイド懸濁液に浸漬する。
【0083】
あるいは、別の場所でナノファイバーを合成し、従来記載されている堆積法を使用して多孔質基体の所望表面に堆積してもよい。例えば、公知方法(例えば上記方法)のいずれかを使用してナノファイバーを製造し、その合成場所から回収することができる。その後、遊離状態のナノファイバーを多孔質基体の該当表面に堆積する。このような堆積は単に多孔質基体をこのようなナノファイバーの懸濁液に浸漬すればよく、あるいは更に多孔質基体の全部又は一部を前処理し、ファイバー結合のために表面又は表面部分を官能基化してもよい。例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第7,067,328号及び6,962,823号に記載されているような他の各種堆積方法も公知である。
【0084】
ナノファイバーを主に多孔質基体の表面の内壁部分に結合することが所望される場合には、このような堆積はこのような場所にナノファイバーを成長させるか又はこのような場所に選択的にナノファイバーを堆積することにより実施することができる。ナノファイバーをin situ成長させる場合には、これはコロイドを堆積する前に基体の全外面に別の材料(例えばレジスト)の層を堆積することにより実施することができる。コロイドに浸漬後、レジスト層を現像し、除去すると、実質的に基体の内壁表面のみにコロイドを堆積した基体が得られる。
【0085】
図1及び2は本発明の基体を模式的に示す。特に、図1は本発明のナノワイヤーを担持する多孔質基体の模式図を示す。図1A及び1Bに示すように、多孔質基体102を準備する。例示の目的で、メッシュ又はスクリーンを多孔質基体として利用するが、この用途にはファイバーマットも有用である。図1Bに示すように、アパーチャ又は細孔の内壁部分106に少なくとも部分的に配置され、細孔の間隙領域108内に延びるナノファイバー104を配置し、下層基体自体により提供されるよりも多少制限的ないし幅狭で材料全体を貫通する開口ないし通路を形成する。図1に示すように、ナノファイバー104はメッシュの他の表面部分にも配置する(総表面)。
【0086】
図2A及び2Bは主に細孔を規定するアパーチャの内壁部分のみにナノファイバーを配置する場合を模式的に示す。図例のように、穿孔基体202が下層多孔質基体を形成する。例えば穴あけ、エッチング又は他の公知加工法により、基体202に複数のアパーチャ208を加工する。図2Bに示すように、アパーチャ208の拡大図により、アパーチャの内壁部分206に結合したナノファイバー204の存在を詳細に示す。図例のように、ナノファイバーは一般に内壁表面206から突出している。これは一般に触媒成長CVD法を使用してナノファイバーをin situ成長させることにより実施され、こうしてファイバーは触媒を最初に堆積した表面から成長する。ファイバーをアパーチャの空隙スペースに突出させるか否かに拘わらず、他の方法を利用してこれらの内壁部分にナノファイバーを堆積してもよく、このような方法としては該当表面に化学的に結合することが可能なナノファイバーの懸濁液に多孔質基体を浸漬する方法が挙げられる。
【0087】
図12は細孔又はアパーチャを配置したシリコン基体の写真を示す。細孔の内側を含めて基体の表面全体にシリコンナノファイバーを成長させた。基体は厚さ0.1mmのシリコンウェーハとし、100μmの穴を均等間隔で配置した。図12Aは基体の広い領域の図を示し、図12Bは細孔及び基体表面と、前記表面上のナノファイバーの拡大図を示す。
【0088】
代替構成では、合成工程とは別個の段階で多孔質基体をナノファイバーの固定表面として利用することができる。特に、遊離状態のナノファイバーの懸濁液又は集合体もしくは集団(例えば別個の独立したメンバーの集団)としてナノファイバーを製造することができる。このような遊離状態のナノファイバーは一般に、ナノファイバーを成長基体から分離し、懸濁流体もしくは他の媒体に堆積するか又は受容基体上に堆積するか又は他の方法で成長もしくは合成環境から操作可能な環境(例えば流体懸濁液)中に移動させる回収段階を合成後に含む以外は上記方法の任意のものから製造される。その後、ナノワイヤー集団を多孔質基体上に堆積し、マイクロ又はナノ多孔質ネットワークを下層多孔質基体上に形成する堆積ナノファイバーのマットを得る。本発明のこの側面によると、多孔質基体の細孔は一般に堆積するナノファイバーの最大寸法(例えばナノファイバーの長さ)よりも小さくなるように選択される。例えば、特定集団のナノファイバーが約10μmの平均長さである場合には、基体の細孔は一般に10μm未満、例えば5μm未満、2μm未満、又はそれ以下の横断面となる。ナノファイバーの十分な固定を確保するためには、多孔質基体の細孔の最大横断面は一般にナノファイバー集団の平均最大寸法、一般には長さの50%未満、場合によりこのような寸法の20%未満、多くの場合にはこのような寸法の10%未満となる。
【0089】
その後、各ファイバーが相互に接触する点で場合によりナノファイバーマットを融着又は架橋し、より安定で頑丈で潜在的に剛性のファイバー膜を形成する。相互に結合されたナノファイバー間の空隙スペースはナノファイバーマットの多孔質ネットワークを形成する。マットの有効細孔径は一般に堆積されるナノファイバー集団の堆積密度と、この層の厚さ、更に多少程度までは使用するナノファイバーの幅により異なる。これらの全パラメーターを容易に変化させ、所望有効気孔率のマットを得る。
【0090】
図9A及び9Bは本発明の所定側面を例証する架橋ナノファイバーマットの電子顕微鏡写真を示す。図9Aは無機材料(例えばシリコン)の蒸着により架橋された半導体ナノファイバー集団を示す。特に、従来の合成スキームによりシリコンナノワイヤー集団を製造し、例えばSiH4分圧1トール、全圧30トール下に40分間、480℃で金コロイド触媒からシリコンナノワイヤーを成長させた。プロセスガスをポンプ排出することにより成長を終了した後、30トールHe下に基体の温度を520℃まで勾配上昇させた。この温度に達したら、再びプロセスガス(SiH4)に切替え、その結果としてシリコン蒸着により相互に隣接又は接触するナノワイヤーを架橋させた。蒸着時間は10分間とした。当然のことながら、別々に回収及び堆積したナノファイバーを同様にこの方法により架橋させてもよい。
【0091】
他方、図9Bのナノファイバーはナノファイバーを少なくとも部分的に被覆又は封入して相互に結合するポリマー堆積法を使用して結合した。特に、PVDFポリマーをナノワイヤーと共にアセトンに懸濁し、音波処理した。その後、アセトンを蒸発させ、封入又は架橋ナノワイヤー又はナノファイバーマットを得た。各場合に認められるように、シリコンナノファイバー又はナノワイヤーのネットワークは各ナノファイバーの交点に架橋を示す。また、編成されたナノファイバーにより形成される細孔はナノファイバー間の空隙スペースにより規定される。
【0092】
上記のように、本発明の代替側面はナノファイバーが相互に重なり合ってマット、好ましくは高密度ナノファイバーマットを形成するように受容又は支持基体にナノワイヤーを単に堆積することにより実施することができる。一般に、この方法は、ナノファイバーを最初に配置した媒体に細孔を通過させながらナノファイバーを多孔質支持基体の上面に固定できるような多孔質支持基体を使用し、ナノファイバーを基体で実質的に濾過し、ナノファイバーを基体の表面に高密度に堆積することにより簡略化される。その後、相互に接触する点又は相互に十分に近接する点でファイバーを架橋させるように、得られたファイバーマットを処理する。
【0093】
このようなマット形成方法を図10に模式的に示す、特に、ナノファイバー集団1000を懸濁液1002として準備し、ナノファイバーを液体、気体に懸濁してもよいし、単に自由流動集団又は粉末として準備してもよい。次にナノファイバー集団を多孔質基体1004上に堆積又は注下する。次にナノファイバー集団1000を多孔質基体1004の上面1006に保持し、この点でナノファイバー集団は基体1004により担持されたナノファイバーの上層マット1008を形成する。付加的ナノファイバーを基体に堆積することによりマット1008を増大する。上記のように、ナノファイバーを懸濁した任意媒体は多孔質基体1004の細孔1010を自由に通過するので、ナノファイバーを多孔質基体1004の上面1006に高密度に充填することができる。
【0094】
ナノファイバーマット1008が所望厚さ及びファイバー密度になったら、これを担持するマクロ多孔質基体上で例えば濾過膜又は他の半透性層として容易に利用することができる。しかし、好ましい側面では、拡大図に示すように、ナノファイバーを夫々の接点で架橋させてマットのナノファイバー間にカップリング1012を形成するようにナノファイバーマットを(矢印1014により示すように)処理させる。架橋ナノファイバーの使用は超大表面積用途について記載されている(例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する同一名義の米国特許出願公開第20060159916号参照)。上記のような架橋は熱融着、化学的表面改質/架橋、封入又はコーティング等の多数の手段により実施することができる。熱融着法はナノファイバーの構成により異なり、ポリマーナノファイバーは金属又は無機半導体ナノファイバーよりも実質的に低温で融着させる。
【0095】
ナノファイバーは下層ナノファイバーを架橋させるために化学架橋を形成することが可能な表面化学基を更に含むことができる。例えば、ポリアクリルアミド又はポリエチレングリコール基等のポリマー材料を例えば周知のシラン及び/又はペグ化化学によりナノファイバーの表面に容易に結合することができる。その後、周知のポリマー架橋法を使用してナノファイバーを架橋させる。同様に、エポキシド、アクリレート又は他の容易に利用可能な反応基をナノファイバーの表面に配置し、熱カール、光カール(例えば紫外線)、又は隣接接触ナノファイバー間の他の化学的相互作用と結合により架橋させてもよい。
【0096】
別の側面では、各ナノファイバーを固定するポリマーコーティング又は封入技術を使用してナノファイバーマットを相互に架橋させることができる。例えば、蒸着技術を利用してマットのナノファイバー部分にポリマー薄層を蒸着し、ナノファイバーを有効に固定することができる。このようなポリマーの例としては例えばPTFE、PVDF、パリレン等が挙げられる。例えば上記のような液体堆積又はin situ重合及び/又は架橋技術を使用して多様な他のポリマー材料を場合により利用することができる。当然のことながら、ポリマー架橋法では得られる材料マットの柔軟性の点で熱及び/又は化学的架橋法にまさる所定の利点が得られる。
【0097】
ナノファイバーマットを架橋させたら、下層マクロ多孔質基体と共に例えば裏材として利用することもできるし、基体から分離し、独立したナノファイバー膜(例えば膜1016)とすることもできる。容易に認識されるように、慣用方法を使用して大面積ナノファイバー層を製造することができ、ドラム又はベルトフィルター技術では、例えばベルトやドラムの表面として大面積連続マクロ多孔質基体層を使用してナノファイバー層を保持し、これらの層を本明細書に記載するように架橋又は他の方法で処理する。このような方法は例えば衣類、アウトドア繊維製品(例えばテント)、及び他の高体積用途で使用する非常に大量のファイバー層材料を提供するために連続又は大面積バッチモード操作で構成することができる。
【0098】
1態様において、本発明の製品は複数の重なり合ったナノファイバーを含むナノファイバーマットを含み、前記複数のナノファイバーはこのようなナノファイバーが相互に接触又は近接する点で相互に架橋され、半透性層を形成する。ナノファイバーマットは場合により多孔質基体上に堆積され、多孔質基体とナノファイバーマットとで半透性層を形成する。ナノファイバーの少なくとも一部には場合により疎水性部分が結合している。
【0099】
1態様では、連続ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法では、総表面積をもつ多孔質基体と、多孔質基体の総表面積に結合した複数のナノファイバーを準備する。1関連態様も連続ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法は上面と、多孔質基体を貫通するように配置され、各々有効細孔径をもつ複数の細孔を有する多孔質基体を準備する段階と;ナノファイバーをナノファイバーマットとして上面に保持するように、有効細孔径よりも大きい少なくとも1個の寸法をもつ複数のナノファイバーを多孔質基体の上面に配置する段階と;複数のナノファイバーの個々のナノファイバーを複数のナノファイバーの他の個々のナノファイバーと架橋させ、連続ナノファイバー集団を製造する段階を含む。
【0100】
III.用途
本明細書中に示唆するように、その表面の部分にナノファイバーを結合した本発明の多孔質基体はこのような材料の特に有利な多様な性質を活用する無数の用途に利用される。所定用途では、ナノワイヤーの存在により特性を強化した多孔質材料が得られる。他の用途では、多孔質基体とナノワイヤーの併用により実質的に新規な性質と有用性をもつ材料が得られる。
【0101】
A.半透性バリア
第1の特に好ましい用途では、本発明の多孔質基体は半透性バリアとして有用である。半透性バリア全般もその透過性レベル、コスト等に応じて多種多様な用途に利用される。例えば、このようなバリアは気体を透過し、液体を透過しないものでもよいし、空気又は気体を透過し、粒状物質を透過しないものでもよい。更に、このような半透性バリアはその用途に防腐性又は抗菌性を提供することができる。
【0102】
1側面において、本発明は複数のアパーチャを配置し、アパーチャの内壁表面を含む総表面をもつ多孔質基体と、多孔質基体の総表面の少なくとも一部に堆積又は結合した複数のナノファイバーを含む半透膜を提供し、ナノファイバーとアパーチャは共働して半透膜の細孔を規定し、前記細孔は1種類以上の材料を透過し、1種類以上の別の材料を透過しない。ナノファイバーは多孔質基体の総表面の少なくとも一部に結合又は堆積することができる。個々のナノファイバーを他の個々のナノファイバーと架橋させ、多孔質基体の表面に架橋ナノファイバーマットを提供することができる。ナノファイバーには場合により疎水性部分が結合しており、細孔に気体を透過させ、液体水を透過させないようにする。細孔は第1の粒径よりも小さい第2の粒径の粒子を通過させながら第1の粒径の粒子を排除する有効細孔径をもつことができる。有効細孔径は例えば10μm未満、1μm未満、0.2μm未満、100nm、又は20nm未満とすることができる。前記膜は各種製品に組込むことができる。例えば、半透膜の第1の側と流体連通する入口通路と半透膜の第2の側と流体連通する出口側をもつハウジング内に本発明の半透膜を配置し、フィルターカートリッジに組込むことができる。1態様では、呼気を濾過するためにハウジングを呼吸マスクに結合する。別の例として、本発明の半透膜を例えば少なくとも第2の繊維層と積層して衣料品に組込むことができる。
【0103】
1.濾過
その最も単純な側面において、半透性バリアは気体又は液体を粒状物質から分離するための濾過媒体として使用される。例えば、多種多様な濾過選択肢が例えば空気濾過に利用可能であり、例えば家庭用暖炉、エアコン、空気清浄器等の単純な消費者濾過ニーズから例えば産業用HEPA濾過、防護服用有害物質濾過、クリーンルーム用途、自動車用途等のより高度なニーズに至る多様な用途がある。液体用途では、このようなフィルターは水精製、産業用又は消費者用機械(例えば自動車)用燃料及び潤滑油の粒状物質分離等を実施することができる。
【0104】
本発明の濾過用途によると、製造する濾過媒体の基材として多孔質基体を使用する。その場合には下層多孔質基材の濾過性能を更に強化するために表面全体又は実質的に内壁のみにナノファイバーを配置する。特に、濾過媒体で改良を求められる主要な側面の1つは濾過効率の増加であり、例えば圧力低下の実質的増加により早期フィルター故障/目詰まり、高エネルギー需要等を伴うことなしに細孔径を減少できること又はフィルターの総容量/寿命を増加できることである。
【0105】
本発明によりもたらされる強化としては、フィルターの両端間の圧力低下を実質的に増加せずにフィルターの細孔径を有効に減少することが挙げられる。特に、本発明は有効細孔径を調整することにより付加的な濾過を実施するためにナノファイバーを基体の細孔内に配置した多孔質基体を提供する。ナノファイバーは寸法が非常に小さいため、細孔内に配置された材料の体積を実質的に増加せずに細孔内の表面積を実質的に増加することができ、従って、濾過媒体の流量を減らさずに濾過効率を増加するので、これらの用途に特に有用である。そこで、流体又は気体を多孔質基体に流し、粒状物質をキャリア液体又は気体から分離する。
【0106】
例えばフィルターマスク、ガス配管用等の濾過カートリッジの1例を図3A及び3Bに示す。図3Aに示すように、フィルターカートリッジ300は主ハウジング302を含み、ハウジング内にはフィルター層304が配置されている。フィルター層に構造支持体を提供するために一般にフィルター層の低圧側にフィルター支持体306も配置されている。フィルター層は一般に入口ないし高圧側308と低圧ないし出口側310を含む。フィルターの高圧ないし入口側から低圧ないし出口側に向かって流すことにより気体又は液体をカートリッジで濾過する。従って、フィルターカートリッジは濾過する気体又は流体をフィルター層の入口側に向かって流すための1又は複数の入口通路312と、フィルター層304で濾過された気体又は流体を流すための1又は複数の入口通路314を含む。図3Bは図3Aに示した特定フィルターカートリッジの出口側の端面図を示す。
【0107】
上記のように、濾過カートリッジは最終用途に応じて大型のシステムに組込むことができる。例えば、暖房及び空調システム又は例えば商業もしくは産業(即ちクリーンルーム)用の清浄空気を提供するための他の環境調節システムにエアフィルターを組込むことができる。本発明の濾過カートリッジは場合により水、燃料又は薬品濾過用の流体濾過システムにも組込むことができる。
【0108】
濾過用途によると、例えば有効細孔径1ミクロン、10ミクロン以上の例えば粗大粒子濾過から例えば有効細孔径0.2μm以下、例えば20nm以下の抗細菌濾過に至るまでの用途に応じて濾過媒体の有効細孔径を変動させることができる。本明細書の他の欄に示唆するように、「有効細孔径」なる用語は必ずしも基体を貫通する個々の経路の寸法を意味するものではなく、流体、気体又は粒子が通過可能又は通過不能な連続経路の横断面寸法を意味する場合もある。更に、所定通路の「有効細孔径」とは必ずしも連続通路の絶対寸法を表すものではなく、通路の通過を有効に阻止される粒子の寸法を表す。一般に、このような各種細孔径は下層基体に存在するこれよりも大きいアパーチャ内に配置されたナノワイヤー密度、ナノファイバーの直径と長さ、更に多少程度まではこのようなアパーチャの当初の寸法の結果に依存する。
【0109】
同様に、ナノファイバーと下層基体の両者に関して濾過媒体の組成ないし構成は材料の用途に依存する場合もあり、材料は一般にその暴露条件に耐えるように選択される。このような条件としては極端な温度、アルカリ度又は酸性度、高塩濃度等が挙げられる。
【0110】
1側面において、本発明は流体又は気体の濾過方法を含む。前記方法では、多孔質基体を準備し、気体又は液体を多孔質基体に通して前記気体又は液体を濾過する。基体には複数のアパーチャが配置され、アパーチャの内壁面積を含む総表面積をもつ多孔質基体を提供し、基体は多孔質基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノワイヤーを含む。
【0111】
2.通気性防湿バリア
1関連側面において、基体は液体不透過性を維持しながら気体(例えば空気)を透過するように構成される。例えば、このようなバリアは水蒸気、酸素及び他の気体を自由にバリアに透過させるが、液体を透過させない衣類及び医療用通気性防湿バリアとして特に有用である。本発明によると、これは多孔質基体を貫通するように配置されたアパーチャの内側にナノファイバーを配置することにより達成される。しかし、本発明の他の側面とは異なり、防湿バリア用ナノファイバーは疎水性を増すように選択又は処理される。疎水性を増すためのナノファイバー表面の処理はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許出願公開第20050181195号に詳細に記載されている。特に、疎水性化学部分をその表面に結合して材料の疎水性を増すようにナノファイバー及び/又は基体表面を誘導体化することができる。疎水性化学部分を基体に結合することは当業者に周知であり、例えばシラン系基体を処理するためのシラン化学等が挙げられる。下層多孔質基体上にこのような超疎水性ナノファイバー表面を配置することにより、空気、水蒸気又は他の気体を透過させながら液体(例えば液体水又は他の水溶液)の透過を防止することができる。一般に、このようなバリアは実質的に水分を透過せず、例えば周囲条件下で表面と接触する水分の実質的に大半の透過を防止する。
【0112】
このような通気性防湿バリアは液体水を侵入させずに内側から発生した水分を排除することが望ましい衣類、テント等のアウトドア用具で特に有用である。図4A及び4Bは積層繊維製品402(図4Bに拡大図で示す)から構成される積層繊維製品(例えばコート400)を示す。図例のように、他の材料層(例えばナイロン外層404と綿又はポリプロピレン繊維基層406)の間にナノファイバーを担持する多孔質基体材料層408が配置され、外部の風や冷気から防護すると共に、内部の着用者の皮膚又は衣類を快適にする。
【0113】
1側面において、本発明は通気性防湿バリアの製造方法を含む。前記方法では、複数のアパーチャと多孔質基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバーを含む多孔質基体を準備する。多孔質基体とナノファイバーは共働して通気性バリアを構成する。多孔質基体の総表面に結合したナノファイバーの疎水性を増すように少なくともナノファイバーを処理し、通気性防湿バリアを得る。
【0114】
3.包帯
別の好ましい態様において、これらの通気性防湿バリアは液体水や他の有害物質/摩耗等を創傷部に接触させずに酸素を創傷部に到達させ、創傷部からガスや蒸気を逃がすことができるので、包帯又は創傷包帯剤として有用である。半透性バリアとしての利点に加え、ナノファイバーを被覆した表面は包帯を固定するための接着性も提供することができ、例えば包帯を創傷部自体又はその周囲の皮膚に接着させることができる。乾燥接着剤又は高摩擦材料としてのナノファイバー表面の使用はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第7,056,409号に詳細に記載されている。更に、このようなナノファイバーコーティングは創傷部の感染予防を助長するために抗微生物材料(例えばZnO等)を含むことができる。
【0115】
図5は上記のような粘着性半透性撥水性包帯を示す。図例のように、包帯500は疎水性バリア、例えば防湿バリア(ストリップ502上に網掛けにより示す)を提供するように適切に処理されたナノファイバーを担持する本発明の可撓性多孔質基体ストリップ502(例えば織布又は軟質メッシュ材料、即ちポリマー又は布製メッシュ)を含む。基体ストリップ502は通気性不透湿性カバーと接着剤ストリップを兼用する。包帯により覆われる創傷を保護するように、基体ストリップ502の片側の一部には保護パッド504が配置されている。創傷に当てると、保護パッドは創傷を覆い、摩擦又は他の接触から保護すると同時に、ストリップの部分506及び508は創傷部に隣接する表面組織に接着する(又は創傷部周辺に完全に巻き付けると、基体ストリップの他端の対向表面に接着し、例えば領域506は領域508の裏側に接着する)。
【0116】
B.蒸気バリア
1関連側面において、本発明の多孔質基体は各種有機又は無機蒸気を吸収又は分解するために、通気性化学/生物防護衣類及び装置で有用である。本発明の蒸気バリア用途によると、多孔質基体(例えば布製又は可撓性メッシュ)を基材として使用する。活性炭繊維を使用することが好ましい。活性炭繊維は有機蒸気を吸収し、支持構造として機能する。活性炭繊維は例えばSpectracorpから市販されている。
【0117】
活性炭繊維又は他の基体上にナノファイバー(例えばシリコンナノワイヤー、カーボンナノチューブ、又はポリマーナノファイバー)を埋込むか、配置するか、又はin situ成長させる。ナノファイバーは活性炭繊維の透過性を低下させ、蒸気吸着の効率を上げるので、層を薄くすることができる。空気透過性の低下にも拘わらず層に高度の水蒸気透過率を維持できるように、(例えばナノファイバー組成を調節又はナノファイバーを親水性材料で表面処理することにより)場合によりナノファイバーに親水性表面を配置する。
【0118】
蒸気と結合する部分又は蒸気を分解する部分でナノファイバーを官能基化する。例えば、活性炭により吸収されないホスゲン等の非有機ガスと結合又はこれを分解する部分でナノファイバーを官能基化することができる。ナノファイバーは化学部分(例えば非有機ガスを吸収又は分解する化学部分、例えばアンモニアと結合するカルボン酸部分又は表1から選択される部分)で官能基化することができる。好ましい1側面では、ナノ結晶をナノファイバーに結合することによりナノファイバーを官能基化する。ナノ結晶はAg、ZnO、CuO、Cu2O、Al2O3、TiO2、MgO、FeO、MnO2、Zn、又は例えば表1から選択される材料等の材料を含むことができる。異なる組成のナノ結晶を使用し、異なるガスと吸着又は結合する異なる材料を含むナノ結晶又は他のナノ構造の2個以上の集団(例えば2個、3個、4個、5個、6個、又はそれ以上の集団)をナノファイバーに結合することにより、多官能性を簡便に付与することができる。1関連側面では、ナノファイバーの2個以上のバッチを化学的に誘導体化し、混合し、繊維に組込むことができる。同様に、例えば表1から選択される異なる材料から2個以上のナノファイバー集団を合成し、混合し、(付加的な官能基化の存在下又は不在下で)繊維に組込むことができ、あるいは(1本のナノファイバーが2種類以上の材料を含む)ナノファイバー縦方向ヘテロ構造も使用することができる。1関連側面では、ナノファイバーの不在下でもメソ多孔質炭素繊維又は他の繊維、特に別の大表面積繊維にナノ結晶又は他のナノ構造を結合することができる。
【0119】
ナノ結晶とは一般に実質的に単結晶(又はそのコアが実質的に単結晶)の構造を意味する。ナノ結晶は一般に直径500nm未満、好ましくは100nm又は50nm未満、多くの場合には20nm又は15nm未満である。ナノ結晶は場合により縦横比10未満、例えば5又は2未満、場合によっては約0.1〜約1.5である。典型的なナノ結晶としては限定されないが、実質的に球状のナノ結晶(例えば直径1nm〜6nmの球状ナノ結晶)、ロッド形結晶(例えば約5×50nmのロッド)、及びテトラポッド(中心コアから延びる4本のロッド様アームをもつもの、別称ナノテトラポッド)が挙げられる。ナノファイバーを化学的に修飾及び/又はナノ結晶をナノファイバーに結合するための技術は当分野で周知であり、例えば、ナノファイバーにポリリジンやポリマーをコーティングする方法が挙げられる。結合は共有的でも非共有的でもよい。
【0120】
図13は上記のようなナノ構造強化繊維を模式的に示す。図例のように、織布1301はアパーチャ1302を含む。繊維の表面にはナノファイバー1304が結合しており、ナノファイバーにはナノ結晶1303が結合している。
【0121】
前記繊維又は他の基体は衣料品(例えば防護スーツ)、又は他の防護装置に組込むことができる。ナノファイバー強化繊維は場合により多孔質繊維又は他の多孔質材料を片面又は両面に付加することにより保護される。
【0122】
本発明の蒸気吸収性繊維は現状の保護層にまさる多数の利点を提供する。例えば、米軍用化学/バイオハザード防護スーツは現状では活性炭ペレットをウレタンポリマーに埋込んだものを使用している。このペレットは多くの有害蒸気を吸収するが、スーツは水蒸気透過率が低く、多くの非有機ガスに感受性である。活性炭布は非常に大面積で有機物に対する結合親和性が高いため、有害物質防護スーツで商業的に使用されてきた。しかし、これらの繊維には非有機分子を吸収できないという弱点がある。非有機蒸気を分解又は吸収するように官能基化したナノファイバーを繊維の間隙に充填することにより、上記のような単層繊維は良好な水蒸気透過を維持しながら完全な機能性を提供することができる。
【表1】
【0123】
C.例えば電気接続用の大接触表面
上記に示唆したように、上記用途は多孔質基体の特性を強化するため、例えば濾過気孔率、撥水性等を強化するために多孔質基体に配置したナノファイバーを一般に利用する。しかし、多数の用途では、ナノファイバーを多孔質基体に付加することにより、単にその多孔性により利用されるのではなく、下層大表面積基体に結合した小寸法の材料の相乗的構造特性により強化される他の性質により利用されるユニークな材料が得られる。
【0124】
特に、ナノファイバーを多孔質基体に付加することにより、その表面積増加の結果として、投影面積1平方cm当たりのナノファイバー充填度が増加する。特に、多孔質基体上に集合したナノファイバーの高密度マットが得られ、このような密度レベルは平坦表面では容易に達成できなかった。ナノファイバーの大表面積は更に下層基体のアパーチャ又は細孔を通して容易に接近可能である。
【0125】
ナノファイバー密度の増加及び/又は表面積増大に加え、多孔質基体(例えばメッシュやファイバーマット)は剛性度の高い固体基体(例えばシリコンウェーハ、金属プレート等)に比較して可撓性の傾向がある。更に、基体の相対気孔率に応じて製品全体を例えば窓スクリーンのように部分的又は実質的に半透明又は透明にすることができる。
【0126】
D.大表面積/高密度ファイバー用途
上記性質以外に、多孔質基体はナノファイバーを維持、操作、保存及び他の方法で使用するための軽量で高密度の格子として利用することもできる。ナノファイバーをこの格子から回収することもできるし、例えば半導体素子、構造又は電気強化用複合充填材、例えば分離用の大表面積マトリックス等としてよりナノファイバーに特異的な用途で格子の部分をそのまま利用することもできる。
【0127】
更に他の用途では、ナノワイヤーを配置した多孔質基体はこれに結合したナノファイバー(この場合には特にナノワイヤー)に対して電気的一体性を提供することができる。具体的には、導電性多孔質基体を使用すると、所定用途に必要なナノワイヤーとの電気接続の少なくとも一部を提供することができる。例えば、金属又は他の導電性又は半導体メッシュに結合した半導体ナノワイヤーは既に部分的に電気回路に組込まれており、例えば前記メッシュはデバイス全体における電極(例えばソース又はドレイン)になる。
【0128】
以下、上記性質を利用する多数のこのような特定適用例を単に例証の目的で記載する。しかし、上記利点を認識した当業者には本発明の基体及び製品の更に多数の特定用法及び用途が容易に理解され、以下の記載は限定的であるとみなすべきではなく、このような用途を排除するものではない。
【0129】
第1の典型的用途では、本発明の基体をダイオード構成で一方の電極として使用する。特に、ナノワイヤーをその表面(例えば総表面)に結合した下層多孔質基体として導電性メッシュを使用する。メッシュの組成はナノワイヤー部分における主キャリアの伝導を促進する動作機能をもつように選択する。その一部に関して、ナノワイヤー部分はダイオード回路の半分を提供するように選択され、例えばpドープナノワイヤーが挙げられる。このアーキテクチャによると、ナノワイヤーを被覆した多孔質基体はダイオード回路の一部として機能する。ダイオード回路の残りの部分は、例えばnドープナノワイヤーと下層基体に適した電極組成物を提供することにより、他方のキャリア(例えば正孔)を伝導するように材料を選択する点以外は、従来の半導体基板又は第1の部分の鏡像として提供することができる。次に2個の基体を結合し、ナノワイヤーを表面に接続し、機能性ダイオードを得る。ナノワイヤー間の適正な接触を確保するために導電素子、アニール段階等の付加要素も加えることができる。
【0130】
別の典型的用途では、ナノワイヤーを被覆した大表面積基体を例えば電気的又は非電気的な他の要素(例えば組織の電気刺激用ヒト組織)との接続用電極として使用することができる。例えば、ペースメーカー用電極は一般に大表面積の利点を利用できるため、電極が刺激している組織とより完全に接触させることができる。因みに、例えば生体埋込みを容易にするためにナノファイバー被覆製品を組織格子として使用している場合には、表面積を増加し、気孔率を上げると、栄養素等がこのような組織に接近するのを妨げずに接着点を提供するのに非常に有益である。具体的には、米国特許出願公開第20060159916号に記載されているように、医療インプラントのナノファイバー被覆表面は組織接着性と生体埋込みを強化することが可能な「非蛇行路」で増大した表面積を提供する。下層多孔質基体上にこのようなナノファイバー表面を配置することにより、これらの性質は更に強化されると予想される。
【0131】
特定用途では、このようなダイオード構成を光活性素子、例えば光起電力素子又はフォトダイオード素子として利用する。部分的又は実質的に半透明の多孔質基体を使用すると、光は電極コンポーネントを透過して半導体ナノワイヤーに入射し、対向するナノワイヤーのヘテロ接合部に電荷分離を生じるのでこの用途に有利である。対向する下層基体材料の選択は従来の光起電力素子で使用されている基準と同一基準に従うことができる。例えば、一方の下層基体メッシュをアルミニウムから構成し、他方を別の動作機能をもつ別の金属(例えばITO)又は同様の導電性材料から構成することができる。
【0132】
従来記載されているナノ複合光起電力素子は電極として機能する2層の導電層の間に挿入されたナノ複合材料の活性層を利用していた。上部電極は一般に活性層上に透明導電性コーティング、例えばイリジウム・錫酸化物(ITO)を含む。これらのナノ複合光起電力素子は初期電荷分離が生じる第1のコンポーネントを利用していた。これは一般に光に当たるとエキシトンが形成されるナノ結晶を利用していた。このナノ結晶コンポーネントは一般に一方の電荷キャリアを他方のキャリア(例えば電子)よりも良好に伝導する。ナノ結晶は一般に他方の電荷キャリア(例えば正孔)をナノ結晶コンポーネントから伝導する別の材料のマトリックスに配置される。両者キャリアを対向電極に伝導することにより、電位を発生する。一般に、正孔伝導コンポーネントは有機半導体ポリマー、例えばポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)を含むが、正孔伝導コンポーネントは異なる組成の別のナノ結晶でもよい。ナノ複合光起電力素子の全体的アーキテクチャは例えば米国特許第6,878,871号に詳細に記載されている。
【0133】
本発明によると、光起電力素子600は全体で半導体ナノワイヤーが堆積された1個(図6A参照)、又は2個(図6B参照)の多孔質基体602及び604を含む。第1の多孔質基体602は一般にシステムの一方の電極(例えば下部電極)として機能する(上記のような)第1の導電性メッシュ602a又は他の多孔質材料を含み、その総表面に結合した第1の組成の第1のナノワイヤー集団606を含む。図6Aに示す第1の態様では、ナノワイヤー集団606に対してII型バンドギャップオフセットをもつ導電性マトリックス材料608を第1の多孔質基体602とこれに結合したナノファイバーに被覆し、電荷分離を行う。次にマトリックス層608の上に透明電極610を配置する。
【0134】
第2の典型的態様では、図6Aの上部透明電極610の代わりに、同様に導電性メッシュ604aから作製されるが、第1の多孔質基体602と異なる動作機能を含む第2の多孔質基体604を使用し、電荷分離を助長する。第2の多孔質基体604に結合した第2のナノワイヤー集団612を配置する。夫々第1及び第2のナノワイヤー集団606及び612の組成は同様に電荷分離と差別的伝導を助長するためにII型バンドギャップエネルギーオフセットを提供するように選択される。次に夫々のナノワイヤー集団606及び612が夫々電気的に接続して2層間の電荷分離を可能にするように第1及び第2の多孔質基体(602及び604)を結合する。本明細書の他の欄に記載するように、場合によりこのような電気接続を可能にするように、相対向するナノワイヤー集団を例えば熱アニール等で更に処理してもよい。例えば図6Bに示すようなデュアル半導体システムを使用すると、活性層内に有機種(例えば導電性ポリマー等)を不要にすることができるので、夫々の電極への夫々のキャリアの伝導を加速することにより電荷分離効率を改善し、従って活性層内の電荷再結合を防止できると予想される。
【0135】
1態様において、本発明の電気素子は、複数のアパーチャを配置し、複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積をもつ多孔質基体と、多孔質基体に付加し、電気的に結合した複数の導電性又は半導体ナノワイヤーを含む。典型的な光起電力素子の1例は複数のナノワイヤーが第1のエネルギーバンドギャップを含む第1のこのような電気素子と、複数のナノワイヤーが第2のエネルギーバンドギャップを含む第2のこのような電気素子を含む。第1及び第2のエネルギーバンドギャップは相互にII型バンドギャップオフセットを示し、第1の電気素子のナノワイヤーは光に暴露すると第1の電気素子と第2の電気素子間に電荷分離を生じるように第2の電気素子のナノワイヤーと電気的に接続している。
【0136】
容易に認識される通り、上記光起電力素子は主に本発明の基体を所定の電子又は光電用途に利用できるということを例証するために記載した。このような基体が有用となる広範な他の電子素子も当業者に認識されよう。
【0137】
更に別の典型的な用途では、下層メッシュを含む複合マトリックス用のマトリックスコンポーネント(例えばポリマーマトリックス)にナノファイバー又はナノワイヤーを被覆した多孔質基体を封入する。このような用途は複合マトリックスの機能性を強化するためにナノファイバーをバルク材料として利用している場合に特に有用である。このような強化としては電気的強化(例えばコンポーネントを誘電材料として使用している場合)や、光電用途でナノファイバーを部分的に配向する場合(例えば光電池)、ナノファイバーの存在によりユニークな構造特性(例えば引っ張り強度、弾性等)をマトリックスに付与する構造的強化が挙げられる。
【0138】
図7は本発明の材料を組込んだ複合マトリックスを模式的に示す。図例のように、複合材料フィルム702は細孔又はアパーチャ710内を含むその表面710に配置されたナノファイバー708を含む多孔質基体706をマトリックス材料(例えばポリマー、セラミック、ガラス等)内に含む。多孔質基体は一般にマトリックス材料704に浸漬又は含浸され、フィルム702を形成する。上記のように、これらの複合フィルムはその後、各種用途で例えば導電フィルム、誘電フィルム等として利用される。
【0139】
図8A及び8Bは分離用途(例えばクロマトグラフィー)用の大表面積マトリックスを提供するための多孔質基体の使用を模式的に示す。特に、図8Aに示すように、その表面にナノファイバーを結合した多孔質基体802を準備する。上記のように、この多孔質基体は多数の異なる形態で準備することができる。例えば、基体802はメッシュ又はスクリーンから構成し、ファイバーを結合又は成長させる前後のいずれかに円筒状に巻いたものを利用できる。あるいは、基体は固体であるが、焼結ないしフリット材料(例えば金属又はガラス)から構成してもよい。更に別の側面では、基体は繊維状材料(例えばグラスウール、織布等)から構成し、材料をそのまま成形するか又は材料を円筒形(又は他の形状の)ハウジングに充填することにより、所望形状(例えば図例のような円筒形802)に成形したものでもよい。この場合も、このような成形はナノファイバーを成長又は他の方法で多孔質材料に結合させる前後のいずれに実施してもよい。
【0140】
次に、分離操作中に流体をカラムに流出入させる入口806と出口808を含むカラム804内に基体802を配置する。図8Bに示すように、次にクロマトグラフィー分離を実施するための適当な液体操作機器(例えば勾配マーカー810、ポンプ812、検出器814、フラクションコレクター816等)に基体804を連結する。
【0141】
当然のことながら、本発明の基体材料を組込んだ分離マトリックスは本明細書の他の欄に記載するように、各種基体構造及び構成の任意のものを含むことができ、任意数の各種ナノファイバーを利用することができる。このような構造、構成及び組成は当業者に一般に認識されるそれらの特定用途に応じて一般に選択される。
【0142】
E.複合材料用強化用格子
本発明の更に別の側面において、本発明のナノファイバーを担持する多孔質基体は複合材料の格子を形成し、格子の組込みを強化すると共に複合材料全体の構造特性を改善する。特に、多くの複合材料は付加的材料(例えばエポキシドや他のポリマー、セラミック、ガラス等)を支持する下層構造一体性を提供する格子を含む。例えば、エポキシ樹脂又は他のポリマーに封入したファイバーグラスクロスの複合材料は例えば家具、サーフボード及び他のスポーツ用品、車体修理等の各種用途で日常的に使用されている。同様に、カーボンファイバークロス又は基体も所望形状に成形する前に一般にポリマー又はエポキシ樹脂に封入される。最終的に、これらの複合材料は一般に大半の他の材料よりも良好な構造特性(例えば強度対重量比)をもつ。特定作用理論に結び付けるものではないが、封入材料と格子材料の相互作用がこれらの構造特性において非常に重要であると考えられる。具体的には、複合材料の2成分の相互作用を強化(例えば相互組込みを改善)することにより最終複合材料の強度が改善されると考えられる。本発明のナノファイバーを担持する多孔質基体は多孔質基体単体に比較して表面積が非常に大きいので、周囲の封入材(例えばエポキシ)との相互反応性が実質的に増加すると予想される。従って、本発明の別の側面は複合材料用格子材料としての、ナノファイバーを堆積した多孔質基体の使用を含む。
【0143】
本発明のこの側面の一般例を図11に示す。図例のように、ナノファイバー1102を含む表面をもつ多孔質基体1100をマトリックス材料(例えば硬化ポリマー1104)に浸漬し、各種材料又は製品に加工可能な複合材料1106を得る。
【0144】
上記のように、各種繊維が一般に最終材料の支持格子として複合マトリックスに組込まれる。例えば、カーボンファイバー複合材料は一般に織布カーボンファイバー材料を利用し、樹脂(例えばエポキシ又は他のポリマー材料)とインターカレートさせる。その後、複合材料を所望形状に成形し、硬化させる。あるいは、例えば硬化材料を研磨又は他の方法で造形することにより、硬化後に所望形状に成形することもできる。同様に、織布グラスファイバーを適当なマトリックス(例えばエポキシ等)とインターカレートさせることによりファイバーグラス複合材料で使用する。
【0145】
本発明の関連では、ナノファイバーをその表面に堆積又は結合した多孔質基体を得られる複合材料の格子材料として使用する。材料内の空隙を実質的又は少なくとも部分的に充填するマトリックス材料とナノファイバー材料をインターカレートさせる。マトリックスは表面積が非常に大きいため、格子材料と非常によく結合してこれを組込むため、例えばナノファイバー表面の不在下で単に多孔質基体単体を利用した材料よりも強度の高い複合材料が得られる。このような複合材料は軽量工業部品(例えば自転車、テニスラケット、自動車部品、航空機部品、衛星及び他の宇宙施設及び部品等)のような高い強度対重量比が所望される多数の用途で一般に使用することができる。
【0146】
例えば本明細書の他の欄に記載するようなほぼ任意の多孔質基体材料を多数の用途の支持格子として利用することができるが、可撓性格子材料は特定用途に所望される形状に後から調整する(例えば成形又は造形する)ことができるのでより望ましい。少なくとも第1の好ましい側面では、可撓性メッシュ材料を支持格子として使用する。このような材料としては多孔質ポリマーシート、多孔質金属シート、可撓性多孔質ガラスシート(例えば焼結ガラスシート)等が挙げられる。他の好ましい側面では、例えばポリマー織布(例えばポリエステル、ナイロン、ポリエーテルケトン、ポリアラミド等)、ガラス織布(例えばファイバーグラス繊維、グラスウール等)、炭素又はグラファイトファイバー繊維、防弾繊維、及び金属ファイバー繊維(例えばチタン、ステンレス鋼、ニッケル、白金、金等)等の多孔質織布様材料を格子として利用する。格子材料用として多種多様な多孔質可撓性基体が一般に当業者に認識され、最終用途のニーズ(例えば軽量及び/又は高強度、材料適合性等)に合わせて一般に選択することができる。
【0147】
格子材料と同様に、格子のインターカレーション用マトリックスとして使用する材料の種類は一般に材料の用途の性質により異なる。例えば、ガラス、セラミック等の無機材料をマトリックスとして利用することができる。あるいは、好ましい構成では、熱硬化性ポリマー(例えばポリエステル、エポキシ、ウレタン及びアクリル酸樹脂等)、熱可塑性ポリマー及び/又は熱可塑性エラストマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PFA等)を含むポリマーマトリックスを利用する。一般に、これらのマトリックス材料の任意のものをポリマーとして格子基体上に堆積し、ナノファイバーメッシュ全体にインターカレートさせる。次に、マトリックス材料をin situ硬化させる。あるいは、ポリマーマトリックスをモノマー溶液としてインターカレートさせ、in situ重合してマトリックスを「硬化」させてもよい。更に別の代替側面では、例えばナノファイバーマットの架橋について上述したような蒸気相又は溶媒堆積法を使用してナノファイバーを担持する多孔質基体上にポリマーマトリックスを堆積することもできる。全ての各種ポリマーと多種多様な用途におけるその有用性が当業者に容易に理解されよう。
【0148】
F.保護ナノファイバー表面
上記のように、ナノファイバー強化表面をもつ製品には各種の用途があり、例えば、埋込型医療装置(例えばステント)、ナノファイバー強化繊維、ナノファイバーアレイ、膜等が挙げられる。しかし、このようなナノファイバー装置はナノファイバー表面が比較的脆弱であることが多く、他の物体(例えば包装材料、皮膚等)と軽く接触しただけでもナノファイバー破損、マット化、及び剥離を生じる場合がある。従って、ナノファイバー表面を強化及び/又は保護する技術が望ましい。
【0149】
上記のように、ナノファイバーマットをナノファイバー接点で融着、被覆又は架橋することができる。基体上にin situ成長させるか又は堆積するかに関係なく、摩耗、破損等から保護することが有利な基本的に任意のナノファイバー集団を保護するために同様の技術を使用することができる。
【0150】
1側面において、本発明はナノファイバー(例えばナノワイヤー)の安定化方法を提供する。前記方法では、ナノファイバー集団を準備し、ナノファイバーにコーティングを形成する。コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。
【0151】
1分類の態様では、ナノファイバーを含む第1の材料はコーティングを含む第2の材料と異なる。第1の材料と第2の材料は場合により無関係であるか又は同類である。従って、所定態様において、第2の材料は第1の材料の酸化物である。例えば、ナノファイバーはシリコンを含み、コーティングはシリコン酸化物を含むことができ、ナノファイバーはチタンを含み、コーティングはチタン酸化物を含むことができる。一般に、ナノファイバーの組成に関係なく、コーティングは場合により酸化物(例えばシリコン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、タングステン、タンタル、イリジウム、又はルテニウム酸化物)を含む。例えば、チタンナノワイヤーを酸化させ、チタン酸化物コーティングを形成することができ、又は他のナノワイヤーにチタンを被覆した後に酸化させ、コーティングを形成することができる。例えばナノファイバーを結合する任意基体がRTOに必要な高温に適合可能である態様では、場合により合成中、又は合成及び/又は堆積後に急速熱酸化(RTO)技術によりナノファイバーをin situ焼結又は酸化させる。別の例として、上記のように、シリコンナノワイヤー(ナノファイバー)を(例えば約480℃で)合成した後に、ポリシリコンを(例えば約600℃で)被覆し、ナノワイヤーを太くして強化し、ワイヤー間の接合部でワイヤーを相互に融着させることができる。
【0152】
当然のことながら、コーティングは酸化物又はポリシリコンに限定されず、得られる被覆ナノファイバー集団に望ましい性質(例えば安定性又は望ましい電気化学的性質もしくは誘電性)を付与する基本的に任意材料が挙げられる。付加的な典型的コーティングとしてはポリマー、炭素、炭化物、及び窒化物が挙げられる。例えば、シリコンナノワイヤーを合成後、炭素と(例えばシリコンナノワイヤーの一部の変換から得られる)シリコン炭化物又は(例えば原子層堆積により)TaNを被覆するこができる。
【0153】
1側面において、ナノファイバー集団は基体の表面でナノファイバーを合成することにより提供される。典型的基体は本明細書に記載した通りであり、例えば多孔質、湾曲、織布及び/又は可撓性基体が挙げられるが、当然のことながら前記方法はこのような基体上で合成されるナノファイバー又はこのような基体に結合したナノファイバーに限定されない。ナノファイバーは予め形成し、基体に堆積することができる。基体は場合により非多孔質である。基体は場合により埋込型医療装置の表面の少なくとも一部を含むか又はこれを覆う。
【0154】
被覆ナノファイバー集団は元のナノファイバー集団のあらゆる望ましい表面性質(例えば物体との接触面積が最小であること、高度に多孔質の三次元構造、超疎水性、生物増殖性及び付着性が低い等)を維持することが好ましい。因みに、コーティングは望ましい表面特性を提供し、例えば、コーティングは容易に官能基化される材料(例えばシリコン酸化物)を含むことができる。1分類の態様において、前記方法はコーティングを化学結合部分、疎水性化学部分、(例えば細胞又は細菌増殖を抑制するための)薬剤等で官能基化する段階を含む。
【0155】
前記方法により形成されたナノファイバー(例えばナノワイヤー)集団は本発明の別の特徴である。本発明の1つの一般分類の態様はナノファイバーとナノファイバー上のコーティングを含むナノファイバー集団を提供し、前記コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。このような集団を担持する装置(例えば埋込型医療装置)も本発明の特徴である。
【0156】
1関連側面では、多孔質(あるいは非多孔質)材料層によりナノファイバー表面を保護する。ナノファイバーを担持する基体はその表面に第1の多孔質材料層を配置することができる。例えば、ナノワイヤーを被覆した繊維、可撓性メッシュ、又は他の可撓性及び/又は多孔質基体は基体の表面に例えば熱シール又は超音波溶着することが可能な多孔質材料層で基体の片面又は両面を保護することができる。こうして蒸気及び/又は液体を基体に透過させながら、ナノファイバーを担持する基体を摩耗等の損傷から保護する。典型的な多孔質材料としては限定されないが、(例えば、Celgard(登録商標)ラミネート,Hoechst Celaneseで使用されているものと同等の)不織ポリプロピレン多孔質材料が挙げられる。他の溶着可能な材料としてはポリエチレン、ポリスチレン、アセテート、及び前処理Teflon(登録商標)薄層が挙げられる。保護層は場合により可撓性又は非可撓性である。
【0157】
基体は場合により2層の多孔質又は非多孔質材料層の間、例えば、2層の多孔質材料層の間、又は一方の側の多孔質層と他方の側の非多孔質層の間に挿入する。当然のことながら、保護層の選択は所望用途により変えることができる。例えば、可撓性繊維基体を所定用途では可撓性多孔質層間に挿入することもできるし、他の用途では多孔質層と非可撓性非多孔質層の間に挿入することもできる。上記のように、保護層を基体に熱シール又は溶着することもできる。同様に、縫合又は接着剤の使用により保護層を基体に結合することもできる。
【0158】
図14はナノファイバーを担持する基体の多孔質層による保護を模式的に示す。図14に示すように、ナノファイバー1403を担持する基体1402を準備する。基体は一般には可撓性多孔質基体であるが、必ずしもそうでなくてもよく、所定態様では、剛性及び/又は非多孔質基体である。第1の多孔質材料層1404を基体の第1の表面に配置し、第2の多孔質材料層1405を基体の第2の表面に配置し、製品1401を得る。多孔質材料層間に挿入することにより、ナノファイバー1403を摩耗、マット化、剥離、破損等から保護する。
【0159】
G.ナノファイバー合成
1側面において、本発明の多孔質基体は大量及び/又は高密度の長尺非分岐型ナノファイバー、特にナノワイヤーの合成用格子として有用である。シリコンナノワイヤーは例えば特に各種マクロ電子用途に望ましい材料である。このようなナノワイヤーは一般に、特に各種マクロ電子用に望ましい材料である。このようなナノワイヤーは一般に長尺(例えば少なくとも約40、50、又は60μmの長さ)、直線状、及び非分岐であることが必要とされる。しかし、現在の合成技術では大量のこのような長尺非分岐型ナノワイヤーは容易に得られない。
【0160】
現在、ナノワイヤーは一般に平坦ウェーハ基体上で成長させている。配向成長法よりも簡単で安価に実施される非配向ワイヤー成長法(例えばSiH4)を使用してナノワイヤーを製造すると、成長中のワイヤー間の衝突により成長が停止し、分岐型ワイヤー形成等を生じる。ナノワイヤー間の衝突は(例えば金コロイド粒子密度を低下させることにより)ナノワイヤー密度及び/又は長さを減らすことにより制限できるが、これらの方法では大量のナノワイヤー及び/又は長尺ナノワイヤーを廉価で簡単に製造できないことは明白である。例えば、平坦基体上の非配向成長では、ワイヤー1本当たりの衝突を10%に制限して長さ40μmのナノワイヤーを得るためには、理論的予測と実験結果の両者によると、金コロイド粒子密度を最大0.01個/μm2にすることができる。ナノワイヤーを大表面積多孔質基体又は湾曲基体上で成長させることにより、非配向成長技術でも長尺で直線状の非分岐型ナノワイヤーの収率を改善することができる。
【0161】
他の態様では、例えば上記半透膜及び他の製品を提供するためにナノファイバーを多孔質表面上で成長させるが、この場合にはナノファイバーは長尺、直線状、及び/又は非分岐型である必要はない。
【0162】
従って、1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、a)複数のアパーチャ、又はb)湾曲表面を含む基体を準備し、前者の場合、基体の総表面積は複数のアパーチャの内壁表面積を含む。基体上で複数のナノファイバーを合成し、得られたナノファイバーをa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に結合させる。湾曲表面は長尺非分岐型ナノファイバーの成長用に使用する場合には凸状が好ましいが、代替構成又は付加構成として凹状でもよい。湾曲表面は場合により基体の表面の有意部分(例えば円筒状ファイバー形基体)又はその表面全体(例えばマイクロスフェア又は同等の基体)にわたってゼロ以外の平均曲率半径をもつ。当然のことながら、多くの基体は多孔質及び/又は湾曲状の一方又は両方であると言うことができ、例えば、ファイバーマットは全体として多孔質基体と言うこともできるし、個々の成分ファイバーのレベルでは湾曲基体と言うこともできる。
【0163】
多数の代表的基体を上記に記載した。例えば、基体は複数の細孔を配置した固体基体、メッシュ、織布、又はファイバーマットを含むことができる。他の例として、基体は複数のマイクロスフェア又は他のマイクロ粒子もしくはナノ粒子(例えばガラス又は石英マイクロスフェア又はナノスフェア)、粉末(例えばカーボンブラック粉末)、複数のガラス又は石英ファイバー(例えばマイクロファイバー、ファイバーグラス、ガラス又は石英ファイバーフィルター)、あるいはフォーム(例えば網目状アルミニウム等のポリマー又は金属フォーム)を含むことができる。図15Aは網目状アルミニウムを示し、図15Bは網目状アルミニウム基体上に成長させたナノワイヤーを示す。図18Aは金触媒コロイド粒子を堆積したカーボンブラック粉末粒子の電子顕微鏡写真を示す。図18B及びCは図18Aのカーボンブラックに担持した金触媒コロイドから成長させたシリコンナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。シリコンナノワイヤーのこの特定成長方法では、上記方法等のコロイド触媒VLS(蒸気−液体−固体)合成法を使用してカーボンブラック粉末に担持した触媒からナノワイヤーを直接成長させる。この合成技術によると、まずカーボンブラック粉末の表面にコロイド状触媒(例えば金)を堆積する。コロイド状触媒を含むカーボンブラックを次にカーボンブラック粒子の表面に結合したナノファイバー(例えばナノワイヤー)を製造する合成法に付す。一般に触媒は金属(例えば金、白金等)を含み、触媒コロイドがカーボンブラック粉末の表面に接着するように処理(例えば酸化)したカーボンブラック粉末の表面に溶液から堆積することができる。他の表面処理としては、従来詳細に記載されている方法(例えばポリリジン処理等)が挙げられる。触媒コロイドは多数の他の周知金属堆積技術の任意のもの(例えばスパッタリング等)により堆積してもよい。その後、約480℃の縦型管状反応器に重力又は(例えば不活性ガスを使用する)ガス注入によりコロイド含有カーボンブラック粒子とシラン(SiH4)等の反応ガスを供給することによりナノワイヤーを製造する。反応器は石英管を含み、カーボンブラック粒子を受容するための内側石英ウールプラグと、反応器温度をモニターするための熱電対を取付ける。触媒、反応ガス、及びパージガス(例えばアルゴン)を添加する入口と、反応器を通気するための出口も配置する。カーボンブラックに担持した金属コロイドからナノワイヤーの成長後、ナノワイヤーを場合により石英反応器で約500℃を上回る温度(例えば約500〜700℃)まで加熱し、カーボンブラック粉末を蒸発させると、遊離状態の孤立ナノワイヤーが残る。次にナノワイヤーを管から回収し、低品質のワイヤーを除去するためにフィルターにかけ、その後の操作及び加工(例えば燃料電池の膜電極アセンブリ等の機能的装置への組込みや他の触媒用途)に備える。
【0164】
基本的に他の任意多孔質又は湾曲基体も前記方法で利用することができ、好ましい基体はナノファイバーを合成するために使用される任意薬剤に対して化学的に適合可能であり(例えば低マグネシウム濃度)、合成温度に耐えることができ、(必要に応じて)触媒を分散することができ、(所望に応じて)基体からナノファイバーのクリーンな回収を助長する。所定態様(例えば上記の各種濾過用途)では、多孔質基体は好ましくは10μm未満、1μm未満、0.5μm未満、又は0.2μm未満の有効細孔径をもつ。他の態様(例えば長尺ナノワイヤーの合成)では、多孔質基体は所望のナノワイヤー長さに応じて好ましくは少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm又はそれ以上の有効細孔径をもつ(例えば、ナノワイヤー合成に使用されるメッシュのアパーチャの幅はナノワイヤーの所望長さの少なくとも約2倍とする)。
【0165】
ナノファイバーは基本的に任意種類のナノファイバー(例えばシリコンナノワイヤー、カーボンナノチューブ、又は上記他のナノファイバーの任意のもの)を含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含む。
【0166】
前記方法は上記のように、場合により基体とこうして結合したナノファイバーをマトリックス材料で包囲又は少なくとも部分的に封入する段階と;基体上でナノファイバーを合成後に可溶性基体を溶解させる段階と;得られたナノファイバー上に隣接ナノファイバー間で連続するようにコーティングを形成する段階と;得られたナノファイバー上に多孔質材料層を配置する(及び場合により第2の多孔質材料層上に基体を配置し、ナノファイバーを担持する基体を挿入する)段階と;及び/又は(例えば化学部分又はナノ結晶を結合することにより)ナノファイバーを官能基化する段階を含む。
【0167】
図16は本発明の所定側面を例証する電子及び光学顕微鏡写真を示す。図16Eはシリコンナノワイヤーを被覆したグラスファイバー1本を示す。グラスファイバー基体はポリリジン溶液に20分間浸漬して金コロイドをその表面に吸着させることにより化学的に処理した。化学蒸着(CVD)法を使用して基体上に金コロイドからシリコンナノワイヤーを成長させ、適度な低温(バルク単結晶シリコンを成長させるために産業界で使用されている約900℃以上の高温よりも著しく低い480℃)のシラン反応により単結晶シリコンナノワイヤーを得た。石英ファイバーフィルターもシリコンナノワイヤーの成長用基体として使用されている。2種類の石英ファイバーフィルター(Millipore社のAQFA04700とF&J Specialty Products社のQF−200)を使用してシリコンナノワイヤーを成長させた。グラスファイバー基体上での成長について記載したように、石英ファイバーフィルター上で480℃にて90分間ナノワイヤーを成長させた(図16A−B)。フィルターから音波処理によりシリコンナノワイヤーを分離した(例えば得られた孤立ナノワイヤーを示す図16C−D参照)。
【0168】
メッシュ、マイクロファイバー、マイクロビーズ、又はマイクロ多孔質ガラスもしくは石英材料等の多孔質又は湾曲基体上でナノワイヤーを成長させると、平坦基体上での成長にまさる多数の利点が得られる。例えば、平坦ウェーハ表面に比較して、マイクロファイバー、マイクロビーズ又はマイクロ多孔質表面は基体の表面湾曲により、同一ワイヤー長さ及び触媒粒子密度でワイヤー1本当たりの衝突を少なくしてナノワイヤーを成長させることができる。従って、湾曲又は多孔質基体では平坦表面上よりも高収率で分岐のない直線状の長尺なワイヤーを得ることが可能である。マイクロ基体の総表面積は例えばマイクロ材料の直径と体積(例えばファイバー膜の厚みと細孔径、又はビーズの直径)を変えることにより容易に制御することができる。マイクロ基体からのナノワイヤーの収率が高いため、ナノワイヤー製造費用を有意に低減することができる。シラン法又は他の非配向ナノワイヤー成長法を使用してマイクロ基体上で分岐のない直線状のシリコンナノワイヤーを製造することができる。基体材料は可撓性及び/又は小寸法であるため、所望により、得られたナノワイヤーを合成後に音波処理により容易に分離することができる。更に、多孔質基体を利用する場合には、基体に堆積した実質的に全触媒粒子に反応ガスを容易に到達させることができる。
【0169】
ナノワイヤー成長のシミュレーションにより、ナノワイヤー成長用格子として湾曲基体により提供される利点を更に例証する。図17Aは直径5μmのファイバー上にナノワイヤー0.5本/μm2の密度で成長中のランダムに配向した長さ10μmのナノワイヤーのシミュレーションを示す。白の正方形はワイヤー間の衝突を表す。図17Bはナノワイヤー0.05本/μm2とナノワイヤー0.5本/μm2の2種類の異なるナノワイヤー密度でファイバーの半径の関数としてナノワイヤー1本当たりの衝突数を示したグラフである。ファイバーの半径が増加するにつれて(従って、ファイバーの表面の曲率が減少するにつれて)ワイヤー1本当たりの衝突数は平坦表面で観測される値に近づく。グラフから明らかなように、ワイヤー1本当たりの衝突数はワイヤー密度とファイバーの直径により変化する。平坦な表面よりも湾曲表面のほうが高密度で高品質のナノワイヤー(ワイヤー1本当たりの衝突数が少ない長尺非分岐型ナノワイヤー)を得ることができる。更に、ナノワイヤー密度(ワイヤー/面積)が一定のとき、ワイヤー1本当たりの衝突数はファイバー半径の減少と共に減少する。
【0170】
従って、前記方法により製造される長尺及び/又は非分岐型ナノファイバーの収率は場合により平坦基体上での合成により製造される同等ナノファイバーの収率よりも高い。1分類の態様において、長さが10μmを上回る(例えば20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る)得られるナノファイバーの収率は実質的に同一成長法を使用して同一表面積の平坦非多孔質基体(即ちアパーチャ又は細孔のない固体平坦基体)上で合成される同一長さのナノファイバーの収率よりも少なくとも10%高い。前記方法による収率は場合により平坦非多孔質基体上での成長による収率よりも少なくとも25%、50%、75%、又は100%高い。例えば、非配向合成技術(例えば金コロイドからのVLS成長)を使用してナノワイヤーを成長させると、実質的に同一成長法(例えば同一温度、コロイド堆積密度、成長時間、プロセスガス等)を使用して同等表面積の平坦非多孔質基体上で得られるよりも長いナノファイバーをa)又はb)の基体上に製造することができる。
【0171】
1分類の態様において、b)の湾曲基体はナノファイバーの平均横断面直径の1000倍未満、500倍未満、100倍未満、又は50倍未満の少なくとも1個の寸法(一般に横断面直径)をもつ。基体の前記少なくとも1個の寸法は場合によりナノファイバーの平均横断面直径の2倍を上回り、5倍を上回り、10倍を上回り、又は20倍を上回る。基体は場合によりナノファイバーと異なる材料を含む。
【0172】
上記例と同様に、場合によりナノファイバーの合成後に例えば基体の音波処理によりナノファイバーをa)の基体の表面又はb)の湾曲表面から分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。上記のように、本方法は長尺ナノワイヤーを製造することができる。従って、1分類の態様において、孤立ナノファイバー集団におけるナノファイバーの少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%)は10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る長さであり、ナノファイバーの最大50%(例えば最大40%、30%、20%、又は10%)は10μmの長さである。場合により、孤立ナノファイバー集団におけるナノファイバーの少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%は非分岐型であり、ナノファイバーの最大50%、40%、30%、20%、又は10%は分岐型である。ナノファイバーは基体に結合したときに同等の長さ及び分岐型/非分岐型分布をもつことができる。
【0173】
前記方法は場合によりその長さ、直径、分岐型/非分岐型百分率、ナノワイヤー1本当たり又はナノワイヤーの単位長さ当たりの他のナノワイヤーとの衝突数等の1種類以上をナノワイヤー1本毎又は平均もしくは分布として測定することにより、基体に結合したナノファイバー及び/又は基体から分離後のナノファイバーを特性決定する段階を含む。
【0174】
前記方法により製造された製品又はナノファイバー集団は本発明の別の特徴を形成する。従って、前記方法により製造された製品又はナノファイバー集団は本発明の別の特徴を形成する。従って、1典型的分類の態様は湾曲表面をもつ基体と、基体の湾曲表面の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバー(例えばナノワイヤー)を含む製品を提供する。基体は例えば複数のマイクロスフェア又は1本以上のグラスファイバー、石英ファイバー、金属ファイバー、もしくはポリマーファイバーを含むことができる。本発明の製品を含む埋込型医療装置、例えば本発明の製品を装置の表面の少なくとも一部に結合して被覆した埋込型医療装置も本発明の特徴である。
【0175】
本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用し、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で援用すると個々に記載していると同等にみなす。以上、明確に理解できるように例証と実施例により本発明を多少詳細に記載したが、当然のことながら、特許請求の範囲内で所定の変更及び変形を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0176】
【特許文献1】米国特許出願第11/511,886号
【特許文献2】国際特許出願公開WO03/085700
【特許文献3】国際特許出願公開WO03/085701
【特許文献4】国際特許出願公開WO2004/032191
【特許文献5】米国特許第7,067,328号
【特許文献6】米国特許第6,878,871号
【特許文献7】米国特許第7,056,409号
【特許文献8】米国特許出願公開第US−2003−0089899−A1号
【特許文献9】米国特許第5,505,928号
【特許文献10】米国特許第6,225,198号
【特許文献11】米国特許第6,306,736号
【特許文献12】US−2002/0179434
【特許文献13】米国特許出願公開第20060159916号
【特許文献14】公開国際特許出願WO02/080280
【特許文献15】米国特許第6,962,823号
【特許文献16】米国特許出願公開第20050181195号
【非特許文献】
【0177】
【非特許文献1】Duanら,Nature 425:274−278(September 2003)
【非特許文献2】Grafeら,Nanowovens in Filtration−Fifth International Conference,Stuttgart,Germany,March 2003
【非特許文献3】“Low−temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays”,L.Greene,M.Law,J.Goldberger,F.Kim,J.Johnson,Y.Zhang,R.Saykally,P.Yang,Angew.Chem.Int.Ed.42,3031−3034,2003
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国特許出願第11/511,886号(出願日2006年8月29日、発明の名称「ナノファイバーを含む多孔質基体、製品、システム及び組成物並びにその使用及び製造方法(POROUS SUBSTRATES,ARTICLES,SYSTEMS AND COMPOSITIONS COMPRISING NANOFIBERS AND METHODS OF THEIR USE AND PRODUCTION)」、発明者Chunming Niu)の優先権と特典を主張する非仮特許出願であり、その開示内容全体を全目的で本明細書に援用する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は主にナノテクノロジーの分野に関する。より詳細には、本発明はナノファイバーに関し、ナノファイバーの合成又は安定化方法、ナノファイバーを含む製品、及び各種用途におけるナノファイバーの使用を含む。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジーは次の社会的進化の敷石となる次期技術進化として歓迎されていると同時に、技術過信者により吹聴された最新の戯言に過ぎないという批判も受けている。基本的に、どちらの側の議論にもその立場を裏付ける多数の妥当な点がある。例えば、ナノ材料がその化学的、構造的及び電気的性能において非常にユニークで極めて望ましい性質をもつことは全く明白である。しかし、ナノスケール材料を妥当な商業的方法でマクロスケールの世界に組込むため及び/又はより複雑な予想用途に適したより複雑なシステム(例えばナノコンピューター、ナノスケール機械等)にこれらのナノ材料を組立てるために利用可能な技術が現時点ではごく限られていることも明白である。多様な研究者が耳目を喚起し、分子自己集合体、電磁集合体技術等について言及することにより組込みと組立ての問題に対処するために多数の異なる方法を提案している。しかし、成功例は殆ど発表されておらず、あるいはこれらの分野における取組みも殆ど発表されていない。
【0004】
所定のケースでは、個々の集合体を必要とする個々の要素としてよりもバルク材料としてこれらの材料のユニークで興味深い性質を活用するナノ材料の使用が提案されている。例えば、Duanら,Nature 425:274−278(September 2003)はバルク加工した配向半導体ナノワイヤー膜又は層を剛性半導体ウェーハの代わりに利用する(例えばディスプレイ、アンテナ用等の)大面積電子基板用ナノワイヤートランジスターを記載している。その結果、単結晶ウェーハ基板と同等性能であるが、性能の劣る非晶質半導体製法で使用されている従来の安価な製法を使用して製造可能な電子基板が得られる。この技術によると、唯一の新規製法要件は所定軸方向に実質的に配向されたナノワイヤーの膜を提供できさえすればよい。このような配向技術は例えば(各々その開示内容全体を全目的で本明細書に援用する)国際特許出願公開WO03/085700、WO03/085701、及びWO2004/032191、並びに米国特許第7,067,328号に既に詳細に記載されており、製造方法に合わせて容易に拡張可能である。
【0005】
別の典型的なケースでは、光電素子用の可撓性で高効率の活性層用としてバルク加工ナノ結晶が記載されている。特に、(II型バンドギャップオフセットを提供するために)正孔伝導性マトリックスに量子閉じ込め型半導体結晶を配置できるため、光起電力素子又は光電検出器として利用可能な光活性層を製造することが可能になる。活性複合材料に配置する場合、これらのナノ材料は産業界で利用可能な標準皮膜法を使用して簡単に加工される。例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第6,878,871号参照。
【0006】
ナノテクノロジーが近い将来に真価を発揮するためにはこれらの材料を更にバルク又はバルク様プロセスで使用することが必要になるという予想に基づき、本発明の所定の側面ではナノ材料をナノ材料自体として使用するのではなく、根本的に新規で有用な材料、組成物及び製品を得るためにより大型の材料、組成物及び製品への応用として使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多数の側面のうちで特に、本発明は従来報告されているナノ材料に欠如している取り扱い易さ、加工し易さ及び組込み易さを付与しながら、用法及び用途を拡大できる新規形態のナノ材料に関する。ナノファイバーの新規合成方法と、関連組成物も記載する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、カーボンブラックを含み、触媒材料を堆積した複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備し、マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する。
【0009】
ナノファイバーは基本的に任意型のナノファイバーを含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はマイクロ粒子又はナノ粒子の総表面積の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含むことができる。複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料を含む。場合により、ナノファイバーはシリコン又はシリコン酸化物を含む。
【0010】
場合によりナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子の表面からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。分離は例えばナノファイバーの合成後に例えば約500℃を上回る温度までマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱することにより簡便に実施することができる。
【0011】
別の一般分類の態様は孤立ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法では、基体を準備し、基体の表面で複数のナノファイバーを合成する。その後、基体を加熱してナノファイバーから基体を分離することにより、孤立ナノファイバーを製造する。適切な基体としては炭素(例えば活性炭繊維又はカーボンブラック粒子)を含む基体又は炭素から基本的に構成される基体が挙げられる。
【0012】
例えばナノファイバーの種類、ナノファイバーの組成、基体に堆積した触媒粒子からのナノファイバーの合成等に関して、上記方法の基本的に全特徴がこれらの態様にも適宜該当する。
【0013】
更に別の一般分類の態様はナノワイヤーを堆積したカーボンブラック粒子(例えばマイクロ粒子又はナノ粒子)の集団を含有する組成物を提供する。前記組成物は場合によりカーボンブラック粒子に堆積された1種類以上の触媒粒子(例えば触媒コロイド粒子)を含む。触媒粒子は例えば金又は白金等の金属を含むことができる。例えばナノファイバーの組成に関して、上記方法の基本的に全特徴がこれらの態様にも適宜該当する。
【0014】
所定態様において、組成物は導電性である。前記組成物を含む多孔質触媒担体も本発明の特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1A及びBはナノワイヤーをその表面に結合した多孔質基体の模式図を示す。
【0016】
【図2】図2A及びBは多孔質基体材料の内壁部分に結合したナノワイヤーの模式図を示す。
【0017】
【図3】図3A及びBは濾過カートリッジに組込んだ本発明の製品の模式図を示す。
【0018】
【図4】図4A及びBは例えばアウトドア衣類用の半透性防湿バリアとして本発明の基体を組込んだ積層繊維の模式図を示す。
【0019】
【図5】図5A及びBは粘着性撥水性包帯に組込んだ本発明の製品の模式図を示す。
【0020】
【図6】図6A及びBは光起電力素子に組込んだ本発明の基体材料の模式図を示す。
【0021】
【図7】例えば誘電層用の複合マトリックスに組込むための格子として使用される本発明の製品の模式図である。
【0022】
【図8】図8A及びBはクロマトグラフィー分離を実施するためのカラム装置と共に本発明の基体を組込んだ分離媒体を模式的に示す。
【0023】
【図9A】図9Aは本発明の所定側面で使用される独立メッシュネットワークを形成する相互融着ないし架橋ナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【図9B】図9Bは本発明の所定側面で使用される独立メッシュネットワークを形成する相互融着ないし架橋ナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【0024】
【図10】下層多孔質(例えばマクロ多孔質)基体と併用又は前記基体から独立して使用するための架橋ナノワイヤーメッシュネットワークの製造方法を模式的に示す。
【0025】
【図11】マトリックス材料内に配置された本発明の多孔質基体を利用する複合材料を示す。
【0026】
【図12】図12A及びBは本発明のナノファイバーを担持する多孔質基体の1例を示す。
【0027】
【図13】例えば防護衣類又は装置用のナノファイバー強化繊維を模式的に示す。
【0028】
【図14】多孔質材料層間に配置することによるナノファイバーを担持する基体の保護を模式的に示す。
【0029】
【図15】図15Aは網目状アルミニウムの電子顕微鏡写真を示す。図15Bは網目状アルミニウム基体上に成長させたナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【0030】
【図16A】石英ファイバーフィルター上に成長させたシリコンナノワイヤー(A−B)を示す。
【図16B】石英ファイバーフィルター上に成長させたシリコンナノワイヤー(A−B)を示す。
【図16C】石英ファイバーフィルター上に成長させ、音波処理により基体から分離したシリコンナノワイヤー(C−D)を示す。
【図16D】石英ファイバーフィルター上に成長させ、音波処理により基体から分離したシリコンナノワイヤー(C−D)を示す。
【図16E】グラスファイバー上に成長させたシリコンナノワイヤー(E)を示す。
【0031】
【図17A】図17Aは直径5μmのファイバー上に成長中のナノワイヤーのシミュレーションを示す。
【図17B】図17Bはファイバー上のナノワイヤー成長シミュレーションのファイバー半径の関数としてナノワイヤー1本当たりの衝突数のグラフを示す。
【0032】
【図18A】図18Aは金コロイド粒子を堆積したカーボンブラック粉末粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図18B】図18Bは図18Aのカーボンブラックに担持した金コロイド粒子から成長させたシリコンナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【図18C】図18Cは図18Aのカーボンブラックに担持した金コロイド粒子から成長させたシリコンナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は1側面において、従来報告されているナノ材料に欠如している取り扱い易さ、加工し易さ及び組込み易さを付与しながら、用法及び用途を拡大できる新規形態のナノ材料に関する。特に、本発明の1側面は複数のナノファイバーを結合した多孔質基体を提供する。ナノファイバーは基体の任意部分又は総表面に結合してもよいし、多孔質基体に配置する細孔を規定するアパーチャの内壁表面に主に又は実質的に局在させてもよい。
【0034】
本発明の製品は気体、流体等を濾過するための濾過媒体として利用することもできるし、半透性バリア(例えばアウターウェア、包帯用等の通気性防湿バリア)として利用することもできる。本発明の製品は例えば光起電力素子等における電極及び/又は他の活性エレメントとして有用な特性を付与するナノ材料を電子素子に組込むために利用することもできるし、これらのナノ材料を物理的構造(例えば複合材料)又は生体構造(例えば組織)に組込むために使用することもできる。多孔質又は湾曲基体上でナノファイバーを合成すると、各種用途の任意のものに使用される多数及び/又は高密度の長尺非分岐型ナノファイバーを容易に製造することが可能になる。
【0035】
従って、1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、a)複数のアパーチャ、又はb)湾曲表面を含む基体を準備し、前者の場合、基体の総表面積は複数のアパーチャの内壁表面積を含む。基体上で複数のナノファイバーを合成し、得られたナノファイバーをa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に結合させる。
【0036】
基体は複数の細孔を配置した固体基体、メッシュ(例えば金属メッシュ、例えばニッケル、チタン、白金、アルミニウム、金、及び鉄から構成される群から選択される金属を含むメッシュ)、織布(例えば活性炭繊維)、又は(例えばガラス、石英、シリコン、金属、又はポリマーファイバーを含む)ファイバーマットを含むことができる。他の例として、基体は複数のマイクロスフェア(例えばガラス又は石英マイクロスフェア)、複数のファイバー(例えばガラス又は石英ファイバー、例えばマイクロファイバー、ファイバーグラス、ガラス又は石英ファイバーフィルター)、又はフォームを含むことができる。所定態様において、a)の基体の複数のアパーチャは10μm未満、1μm未満、0.5μm未満、又は0.2μm未満の有効細孔径をもつ。他の態様において、a)の基体の複数のアパーチャは少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、又はそれ以上の有効細孔径をもつ。
【0037】
ナノファイバーは基本的に任意型のナノファイバーを含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含むことかできる。複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料(例えばシリコン)を含む。
【0038】
前記方法は場合により基体とこうして結合したナノファイバーをマトリックス材料で包囲又は少なくとも部分的に封入する段階と;基体上でナノファイバーを合成後に可溶性基体を溶解させる段階と;得られたナノファイバー上に隣接ナノファイバー間で連続するようにコーティングを形成する段階と;得られたナノファイバー上に多孔質材料層を配置する(及び場合により第2の多孔質材料層上に基体を配置し、ナノファイバーを担持する基体を挿入する)段階と;及び/又は(例えば化学部分又はナノ結晶をその表面に結合することにより)ナノファイバーを官能基化する段階を含む。
【0039】
1分類の態様において、長さが10μmを上回る(例えば20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る)得られるナノファイバーの収率は実質的に同一成長法を使用して同一表面積の平坦非多孔質基体上で合成される同一長さのナノファイバーの収率よりも少なくとも10%高い。前記方法による収率は場合により平坦非多孔質基体上での成長による収率よりも少なくとも25%、50%、75%、又は100%高い。
【0040】
場合によりナノファイバーの合成後に例えば基体の音波処理によりa)の基体の表面積又はb)の湾曲基体からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。1分類の態様において、孤立ナノファイバー集団におけるナノファイバーの少なくとも10%は10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る長さであり、ナノファイバーの最大50%は10μm未満の長さである。
【0041】
1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、カーボンブラックを含み、触媒材料を堆積した複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備し、マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する。
【0042】
ナノファイバーは基本的に任意型のナノファイバーを含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はマイクロ粒子又はナノ粒子の総表面積の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含むことができる。複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料を含む。場合により、ナノファイバーはシリコン又はシリコン酸化物を含む。
【0043】
場合によりナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子の表面からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。分離は例えばナノファイバーの合成後に例えば約500℃を上回る温度までマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱することにより簡便に実施することができる。
【0044】
別の一般分類の態様は孤立ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法では、基体を準備し、基体の表面で複数のナノファイバーを合成する。その後、基体を加熱してナノファイバーから基体を分離することにより、孤立ナノファイバーを製造する。適切な基体としては炭素(例えば活性炭繊維又はカーボンブラック粒子)を含む基体又は炭素から基本的に構成される基体が挙げられる。場合により、約500℃を上回る温度まで基体を加熱することによりナノファイバーを分離する。
【0045】
前記方法により製造された製品又はナノファイバー集団は本発明の別の特徴を形成する。従って、1典型的分類の態様は湾曲表面をもつ基体と、基体の湾曲表面の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバー(例えばナノワイヤー)を含む製品を提供する。基体は例えば複数のマイクロスフェア又は1本以上のグラスファイバー、石英ファイバー、金属ファイバー、ポリマーファイバー、もしくは他のファイバーを含むことができる。
【0046】
上記態様に関して、複数のナノファイバーは場合によりIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料(例えばシリコン)を含む。場合により、湾曲表面に存在するナノファイバーの少なくとも10%は長さが10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回り、湾曲表面に存在するナノファイバーの最大50%は10μm未満の長さである。ナノファイバーを予め形成して基体に堆積し、製品を製造することもできるし、複数のナノファイバーを湾曲表面の一部に成長させることにより湾曲表面の一部に結合することもできる。製品は場合により湾曲表面と複数のナノファイバーの少なくとも一部を包囲するマトリックス材料を含む。前記製品を含む装置又は組成物、例えば本発明の製品を含む埋込型医療装置、例えば本発明の製品を装置の表面の少なくとも一部に結合して被覆した埋込型医療装置は本発明の別の特徴を形成する。
【0047】
別の分類の態様はナノワイヤーを堆積したカーボンブラック粒子(例えばマイクロ粒子又はナノ粒子)の集団を含有する組成物を提供する。前記組成物は場合によりカーボンブラック粒子に堆積された1種類以上の触媒粒子(例えば触媒コロイド粒子)を含む。触媒粒子は例えば金又は白金等の金属を含むことができる。例えばナノファイバーの組成に関して、上記方法の基本的に全特徴がこれらの態様にも適宜該当する。所定態様において、組成物は導電性である。前記組成物を含む多孔質触媒担体も本発明の特徴である。
【0048】
別の一般分類の態様はナノファイバー(例えばナノワイヤー)の安定化方法を提供する。前記方法では、ナノファイバー集団を準備し、ナノファイバーにコーティングを形成する。コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。ナノファイバーを含む第1の材料は場合によりコーティングを含む第2の材料と異なる。1分類の態様において、コーティングは炭化物、窒化物、又は酸化物(例えばシリコン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、タングステン、タンタル、イリジウム、もしくはルテニウム酸化物、又はナノファイバーを含む材料の酸化物)を含む。別の分類の態様において、ナノファイバーはシリコンから構成され、コーティングはポリシリコンから構成される。
【0049】
場合により基体の表面でナノファイバーを合成することによりナノファイバー集団を準備する。前記方法は化学結合部分、疎水性化学部分、親水性化学部分等でコーティングを官能基化する段階を含むことができる。
【0050】
前記方法により形成されたナノファイバー集団は本発明の別の特徴である。本発明の1つの一般分類の態様はナノファイバー(例えばナノワイヤー)とナノファイバー上のコーティングを含むナノファイバー集団を提供し、前記コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。上記方法に関して、ナノファイバーを含む第1の材料は場合によりコーティングを含む第2の材料と異なる。1分類の態様において、コーティングは炭化物、窒化物、又は酸化物(例えばシリコン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、タングステン、タンタル、イリジウム、もしくはルテニウム酸化物、又はナノファイバーを含む材料の酸化物)を含む。別の分類の態様において、ナノファイバーはシリコンから構成され、コーティングはポリシリコンから構成される。コーティングは化学結合部分、疎水性化学部分、親水性化学部分等で官能基化することができる。場合によりナノファイバーを基体に結合する。1態様では、埋込型医療装置の表面の少なくとも一部にナノファイバーを結合して被覆する。
【0051】
更に別の一般分類の態様は複数のアパーチャを配置し、複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積をもつ基体と、基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバーを含む製品を提供する。基体は例えば、固体基体(例えばシリカ系ウェーハ、金属プレート、又はセラミックシートもしくはプレート)を含むことができ、複数のアパーチャは固体基体に配置された複数の細孔を含む。別の例として、基体はメッシュ、例えばポリマーメッシュ又は(例えばニッケル、チタン、白金、アルミニウム、金、又は鉄を含む)金属メッシュを含むことができる。更に別の例として、基体は織布、例えばファイバーグラス、カーボンファイバー、又はポリマー(例えばポリイミド、ポリエーテルケトン、又はポリアラミド)を含む繊維を含むことができる。更に別の例として、基体はファイバーマット、例えばシリカ系ファイバー(例えばガラス及びシリコン)、金属ファイバー、又はポリマーファイバーを含むファイバーマットを含むことができる。
【0052】
所定態様において、複数のアパーチャは10μm未満、例えば、1μm未満、0.5μm未満、又は0.2μm未満の有効細孔径をもつ。他の態様、例えば長尺非分岐ナノファイバーの合成が所望される態様において、複数のアパーチャは少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、又はそれ以上の有効細孔径をもつ。
【0053】
ナノファイバー(例えばナノワイヤー)は基本的に任意の適切な材料を含むことができる。例えば、複数のナノファイバーはIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料(例えばシリコン)を含むことができる。ナノファイバーを予め形成して基体に堆積することもできるし、表面積の一部に成長させることにより基体の表面積の一部に結合することもできる。複数のナノファイバーは場合により基体に電気的に結合する。複数のナノファイバーは化学結合部分、例えば疎水性化学部分で官能基化することができる。
【0054】
1分類の態様では、基体と複数のナノファイバーをマトリックス材料で包囲又は少なくとも部分的に封入する。マトリックス材料はアパーチャに少なくとも部分的に挿入することができる。1態様において、マトリックス材料と複数のナノファイバーは相互にII型エネルギーバンドギャップオフセットをもつ。マトリックス材料は場合によりポリマー(例えば、ポリエステル、エポキシ、ウレタン樹脂、アクリル酸樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又はPFA)を含む。1側面において、本発明は埋込型医療装置を提供する。例えば、埋込型医療装置は埋込型医療装置の表面の少なくとも一部に結合して被覆する本発明の製品を含むことができる。
【0055】
1分類の態様において、基体は活性炭(例えば活性炭繊維)を含む。少なくとも第1のナノ結晶集団をナノファイバーに結合することができ、例えば、ナノ結晶はAg、ZnO、CuO、Cu2O、Al2O3、TiO2、MgO、FeO、及びMnO2から構成される群から選択される材料を含む。場合により少なくとも第2のナノ結晶集団もナノファイバーに結合することができ、第2の集団のナノ結晶は第1の集団のナノ結晶と異なる材料を含む。所定態様では、化学部分(例えば非有機ガスを吸収又は分解する化学部分)でナノファイバーを官能基化する。これらの態様で好ましいナノファイバーとしてはカーボンナノチューブとシリコンナノワイヤーが挙げられる。本発明のナノファイバー強化基体は衣料品に組込むことができる。
【0056】
各種技術を使用してナノファイバーを担持する基体を保護することができる。例えば、1分類の態様において、基体(例えば織布)は第1の表面を含み、製品は更に基体の第1の表面上に配置された第1の多孔質材料層を含む。場合により、基体は第2の表面を含み、製品は更に基体の第2の表面に配置された第2の多孔質材料層を含み、従って基体は第1の多孔質材料層と第2の多孔質材料層の間に挿入される。別の例として、製品はナノファイバー上にコーティングを含むことができ、前記コーティングはA隣接ナノファイバー間で連続している。
【0057】
更に別の一般分類の態様は蒸気吸収性繊維の製造方法を提供する。前記方法では、複数のアパーチャを配置した多孔質繊維基体を準備する。基体は複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積を含む。繊維基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバーも準備し、少なくとも1種類の有機ガス又は非有機ガスを吸収又は分解する部分でナノファイバーを官能基化することにより、蒸気吸収性繊維を製造する。
【0058】
前記繊維は活性炭繊維が好ましい。少なくとも1種類の非有機ガスを吸収又は分解する化学部分でナノファイバーを官能基化することができる。少なくとも第1のナノ結晶集団をナノファイバーに結合することによりナノファイバーを官能基化することが好ましく、前記第1のナノ結晶集団は少なくとも1種類の非有機ガスを吸収又は分解する第1の材料を含む。蒸気吸収性繊維は衣料品又は他の防護装置に組込むことができる。
【0059】
1関連分類の態様は更に蒸気吸収性繊維の製造方法を提供する。前記方法では、複数のアパーチャを配置した多孔質繊維基体(例えばメソ多孔質炭素繊維)を提供する。基体は複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積を含む。少なくとも1種類の非有機ガスを吸収又は分解する複数のナノ結晶を繊維基体の総表面積の少なくとも一部に結合することにより、蒸気吸収性繊維を製造する。
【0060】
I.発明の一般説明
本発明は一般に、ユニークな物理的、化学的及び電気的性質を付与するためにナノワイヤー表面又は表面部分を利用する新規製品及び組成物を特に提供する。特に、本発明は一面において、多種多様な用途に適した多様なユニークで有用な性質をもつ材料を提供するために、ナノワイヤーを多孔質基体の総表面の少なくとも一部に結合した多孔質基体に関する。
【0061】
ナノワイヤーを多孔質基体の各表面に付加すると、既に使用されている用途における多孔質基体の性能を改善するのみならず、このような多孔質基体を従来から利用可能か否かに拘わらず、多数の他の各種用途でも基体材料の性能を改善する。
【0062】
例えば、ナノワイヤーで拡大した表面を膜又は他の半透性バリアに組込むと、濾過効率を上げることができる。特に、既存の膜又は他の透過層の細孔内にナノワイヤーを配置することにより、フィルターの両端間に予想される圧力低下の増加を伴わずに濾過効率を上げることができる(Grafeら,Nanowovens in Filtration−Fifth International Conference,Stuttgart,Germany,March 2003参照)。因みに、このようなナノファイバーはこのようなバリア(例えば通気性撥水性バリア、抗菌/防腐バリア)に補助的性質を付与するために使用することができる。このようなバリアはアウトドア衣料産業で広く利用可能であるのみならず、酸素を透過するが、水分又は細菌等の粒子を透過せず、更に抗微生物ナノファイバーを使用できるため、傷包帯や外科用包帯としても特に有用である。後者用途はナノワイヤー/ナノファイバーで拡大した表面の乾燥接着性の点で特に有利である(例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第7,056,409号参照)。因みに、このようなナノファイバーで拡大した表面は化学及び/又は生物防護バリア(例えば場合により水分を透過するが、化学蒸気を吸収する衣類)の製造にも使用することができる。
【0063】
より大きな表面積を達成するためにナノファイバーを膜に堆積することは一部の研究者により提案されているが、ファイバーを表面に結合することができ、特にこのようなファイバーをin situ成長させることができるならば、単なるファイバー堆積にまさる多数の利点が得られる。特に、単にファイバーを膜に堆積するだけでは、膜の総表面積をファイバーで均一又は完全に(例えば内部まで)覆うことは困難であるが、in situ成長法は著しく良好に内面を覆うことができるので、膜又はバリアの表面積を著しく大きくすることができる。更に、このような方法はこのようなファイバーを結合する表面に対してファイバーの配向を変化させることができ、即ちファイバーを表面に平行に配置するのではなく表面から突出させることができる。
【0064】
多孔質基体の機能改善に加え、多孔質基体をナノファイバー/ナノワイヤーと併用すると、多孔質基体単独の使用では殆ど適用できないような多様な用途で使用可能なユニークな超大表面積材料が得られる。例えば、超大表面積電気コンポーネントは例えば(例えばペースメーカー内の)生体組織、組織格子としての他の生体インプラントのカバー又はカテーテル用感染防止バリア等と接続するための電極として各種用途に用いることができる。
【0065】
更に他の用途として、多孔質基体は各種用途(例えば複合フィルム用等)に用いるナノファイバー/ナノワイヤーの高密度集団を提供するためのユニークな合成用格子を提供する。このようなフィルムは一般に半導体複合材料、誘電フィルム、電子又は光電素子用活性層等として利用することができる。
【0066】
更に他の用途として、多孔質基体はナノファイバー、特に長尺非分岐型ナノワイヤーを高収率及び/又は密度で合成するためのユニークな合成用格子を提供する。
【0067】
これらの技術、材料、及び製品には広範な潜在的用途があり、このような用途は本開示を読了後に当業者に認識されよう。
【0068】
II.本発明の製品、構造及び構成
上記のように、1側面において、本発明の製品は製品の基材として多孔質基体を組込む。本発明により使用される多孔質基体としては一般に、ナノワイヤーを結合することができ且つアパーチャが存在する各種固体又は半固体材料の任意のものが挙げられる。従って、これらの基体としては可撓性でも剛性でもよく、アパーチャを配置した固体連続基体(例えばプレート、フィルム、又はウェーハ)(例えば打抜き又はエッチングした金属又は無機穿孔プレート、ウェーハ等、有孔又は穿孔フィルム)でもよいし、基体は固体又は半固体コンポーネントの凝集体、例えばファイバーマット、メッシュスクリーン、非晶質マトリックス、複合材料、織布(例えばファイバーグラス、カーボンファイバー、ポリアラミド又はポリエステル繊維等)でもよい。当然のことながら、多様な各種材料の任意のものから基体を構成することができ、有機材料(例えばポリマー、カーボンシート等)、セラミック、無機材料(例えば半導体、絶縁体、ガラス、例えばシリカ系材料(例えばシリコン、SiO2)等)、金属、半金属、並びにこれらの全材料の複合材料が挙げられる。
【0069】
更に、その有効性を更に増すため、例えばより大きな表面積を提供するため、流体又は気体を通過させるため、多孔質基体自体により提供される濾過に先立って予備濾過を提供するため等の目的でその表面に付加的形状(例えばウェル、ピラミッド、ポスト等の三次元形状)をもつように基体(例えば剛性ないし固体基体)を加工することができる。更に、多孔質基体を含むと記載するが、当然のことながら、用途によっては単一製品、装置又はシステムに複数の基体を集積することもできる。更に、主に平坦多孔質基体として記載及び例示するが、当然のことながら、用途に応じて各種形状の任意のものとして多孔質基体を作製することができ、その所望用途に組込み易い非平坦三次元形状、球状、円筒状、ディスク状、立方体、ブロック、ドーム、多面体等が挙げられる。基体(例えば平坦シート状基体)は場合により剛性又は可撓性である。
【0070】
金属基体の例としては鋼/鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、銀、金、白金、パラジウム、又は最終製品に所望性質(例えば導電性、可撓性、展性、費用、加工性等)を付与するほぼ任意の金属基体が挙げられる。所定の好ましい側面では、金属ワイヤーメッシュ又はスクリーンを基体として使用する。このようなメッシュはスクリーン/細孔及びワイヤー寸法が十分に規定された入手し易い市販フォーマットで比較的均一な表面を提供する。多様な金属メッシュがこのような各種スクリーン/細孔及びワイヤー寸法で市販品として容易に入手可能である。あるいは、穿孔プレート(例えばアパーチャを加工した固体金属シート)として金属基体を提供することもできる。金属プレートにアパーチャを加工するには、多数の手段の任意のものを利用することができる。例えば、本発明の所定側面で使用されるような比較的小さいアパーチャ(例えば直径100μm未満)はリソグラフィー、好ましくはフォトリソグラフィー技術を使用して加工することができる。同様に、このようなアパーチャはレーザー技術(例えばアブレーション、レーザー穴あけ等)を使用して加工することもできる。もっと大きいアパーチャ(例えば50〜100μmよりも大)には、より一般的な金属加工技術(例えば打ち抜き、穴あけ等)を利用することができる。
【0071】
ポリマー及び無機基体は上記金属基体と同様に構成することができ、メッシュもしくはスクリーン構造、ファイバーマットもしくは凝集体(例えばウール)、又はアパーチャを配置した固体基体が挙げられる。ポリマー基体の場合も、主要選択基準は基体が所望用途で機能することであり、例えば薬品、熱もしくは放射線又は他の暴露条件に耐性でなければならない。好ましい側面において、ポリマー基体は他の有用な特性を製品全体に付与し、このような特性としては可撓性、製造適性又は加工性、化学的適合性又は不活性、透明性、軽量、低費用、疎水性又は親水性、あるいは種々の他の有用な特性の任意のものが挙げられる。特に好ましいポリマー基体はその製造及び/又は適用で使用可能な所定の高環境条件、例えば高温(例えば300又は400℃を上回る温度)、高塩、酸性又はアルカリ性条件等に耐えられる。特に、ナノワイヤーを実際に基体の表面でin situ成長させる場合には高温合成法(例えば450℃)を利用することが多いので、高温に耐えられるポリマーが特に好ましいと思われる。このような用途にはポリイミドポリマー、ポリエーテルケトン、ポリアラミドポリマー等が特に好ましい。このような用途に特に適切な広範な他のポリマーも当業者に認識されよう。あるいは、より広範な他のポリマーでは低温ファイバー合成法も利用することができる。このような方法としてはGreeneら(“Low−temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays”,L.Greene,M.Law,J.Goldberger,F.Kim,J.Johnson,Y.Zhang,R.Saykally,P.Yang,Angew.Chem.Int.Ed.42,3031−3034,2003)により記載されている方法や、約200℃の合成温度を利用するPECVDの使用が挙げられる。既に合成されたナノファイバーを単に多孔質基体に配置する場合、例えば基体をナノワイヤーに結合する場合又はナノワイヤーのマクロ多孔質担体として利用する場合には、著しく多様な多孔質基体を利用することができ、有機材料(例えば有機ポリマー)、金属、セラミック、多孔質無機物(例えば焼結ガラス)が挙げられ、セルロース膜(例えばニトロセルロース)、ポリ二弗化ビニル膜(PVDF)、ポリスルホン膜等の従来入手可能な各種膜材料も含む。
【0072】
場合により、多孔質基体は可溶性材料(例えばセルロース等)を含むことができる。ナノファイバーの結合と場合により基体全体をその最終装置構造に配置後、担持している多孔質基体を溶解させると、編成マット又はナノファイバー集合が残る。例えば、本明細書に記載するように可溶性メッシュの総表面又は内壁表面にナノファイバーを結合することができる。その後、メッシュを円筒状に巻き、円筒状ハウジング(例えば分離用カラム)に挿入することができる。その後、担持しているメッシュを溶解させると、ナノファイバーを充填したカラムが得られる。更に、上記のように、多孔質マトリックスは多数の形状の任意のものを含むことができ、基体を溶解すると各種形状のファイバー凝集体の任意のものが得られるように可溶性にすることもできる。
【0073】
上記のように、本発明で使用する基体のアパーチャは一般にその有効細孔径又は「有効気孔率」として定義される。本明細書では複数のアパーチャ又は細孔として記載しているが、当然のことながら、基体に配置するという状況で使用する場合の「アパーチャ」又は「細孔」なる用語は単に基体材料を貫通する連続経路ないし通路を意味し、前記材料は固体単体の基体材料でもよいし、複数の基体材料部分が凝集したメッシュ又はマットでもよい。従って、このような「アパーチャ」又は細孔は単一通路である必要はなく、複数の通路を一列に並べて連続経路を形成したものでもよい。同様に、アパーチャ又は細孔は単に材料を貫通する連続経路を提供するような隣接する基体材料部分(例えばファイバー等)間のスペースを意味する場合もある。本発明の趣旨では、ナノファイバーを配置しない場合の細孔又はアパーチャ寸法は一般に材料の用途の種類により異なる。
【0074】
例えば、濾過用途では一般に濾過する粒子又は他の材料の種類により細孔径が異なり、粗大粒子濾過操作の場合の数十〜数百ミクロン以上から極微細濾過用途(例えば細菌滅菌フィルター)のサブミクロンスケールまでに及ぶ。同様に、半透性バリア用途では、このような細孔は一般に所望される許容可能な透過性の種類により異なる。例えば、通気性防湿バリアの細孔径は数十ミクロンからサブミクロン範囲(例えば0.2μm以下)とすることができる。場合により、生物剤(例えば細菌やウイルス)を通過させないように、100nm未満、更には20nm未満の有効細孔径が望ましい場合もある。
【0075】
本明細書に記載する製品及び基体は外面と細孔内の表面の両者を含む基体の実質的に全表面にナノワイヤーを含むことができる。ナノワイヤーを配置することができるこれらの表面を総称して本明細書では基体材料の「総表面」と言い、細孔の内壁に配置された壁表面を一般に本明細書では基体材料又は細孔の「内壁表面」と言う。本開示を読了した当業者に自明の通り、所定態様(例えばファイバーマット又はウール様基体の場合)では表面を内壁表面と言うが、所定基体材料は基本的に可撓性及び/又は展性であるため、基体材料の全表面の各部分は移動する可能性があるので、これはこの表面が細孔又はアパーチャの内部に存在するという永久的状態を必ずしも意味するものではない。
【0076】
上記のように、本発明の基体はその表面にナノファイバー又はナノワイヤーを組込むことにより顕著なユニークな性質を獲得する。大半の用途では、「ナノワイヤー」及び「ナノファイバー」なる用語は交換可能に使用する。しかし、例えばナノファイバーの導電性又は半導体性が問題となる導電用途では、「ナノワイヤー」なる用語が一般に好ましい。いずれの場合も、ナノワイヤー又はナノファイバーは一般に縦横比(縦対横)が>10、好ましくは>100、多くの場合には1000以上の細長型構造を意味する。これらのナノファイバーは一般に横断面寸法(例えば直径)が500nm未満、好ましくは100nm未満、多くの場合には50nm又は20nm未満である。
【0077】
本発明で利用するナノファイバーの組成は一般に得られる基体材料の用途により大幅に異なる。例えば、ナノファイバーは有機ポリマー、セラミック、無機半導体及び酸化物、カーボンナノチューブ、生体由来化合物(例えば線維蛋白質等)又は同等物から構成することができる。例えば、所定態様では、半導体ナノファイバー等の無機ナノファイバーを利用する。半導体ナノファイバーは多数のIV族、III−V族もしくはII−VI族半導体又はその酸化物から構成することができる。特に好ましいナノファイバーとしては半導体ナノワイヤー又は半導体酸化物ナノファイバーが挙げられる。
【0078】
一般に、利用するナノファイバー又はナノワイヤーはこれらの細長型構造を基体表面上で成長又は合成することにより製造される。例えば、米国特許出願公開第US−2003−0089899−A1号は各種蒸気相エピタキシーを使用して固体基体に付着した金コロイドから均一な半導体ナノワイヤー集団を成長させる方法を開示している。Greeneら(“Low−temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays”,L.Greene,M.Law,J.Goldberger,F.Kim,J.Johnson,Y.Zhang,R.Saykally,P.Yang,Angew.Chem.Int.Ed.42,3031−3034,2003)は溶液系低温ワイヤー成長法を使用してナノワイヤーを合成する代替方法を開示している。他の細長型ナノ材料を合成するために他の各種方法が使用されており、短尺ナノ材料の製造方法として米国特許第5,505,928号、6,225,198号及び6,306,736号に開示されている界面活性剤系合成法や、カーボンナノチューブの公知製造方法(例えばUS−2002/0179434(Daiら)参照)が挙げられる。本明細書に記載するように、本発明で使用するナノファイバーの製造にはこれらの各種材料の全てを使用することができる。所定用途では、製造した基体又は製品の最終用途に応じて多様なIII−V族、II−VI族及びIV族半導体を利用することができる。一般に、このような半導体ナノワイヤーは例えば上記に援用したUS−2003−0089899−A1に記載されている。所定の好ましい態様において、ナノワイヤーはSi、Ge、Sn、Se、Te、B、ダイアモンド、P、B−C、B−P(BP6)、B−Si、Si−C、Si−Ge、Si−Sn、Ge−Sn、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、AgF、AgCl、AgBr、AgI、BeSiN2、CaCN2、ZnGeP2、CdSnAs2、ZnSnSb2、CuGeP3、CuSi2P3、(Cu,Ag)(Al,Ga,In,Tl,Fe)(S,Se,Te)2、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、(Al,Ga,In)2(S,Se,Te)3、Al2CO、及びこのような半導体の2種類以上の適当な組み合わせから構成される群から選択される。ナノファイバーは場合により金チップを含む。
【0079】
半導体ナノファイバーの場合、特に電気又は電子用途に用いる半導体ナノファイバーの場合、ナノファイバーは場合により周期表のIII族に由来するp型ドーパント;周期表のV族に由来するn型ドーパント;B、Al及びInから構成される群から選択されるp型ドーパント;P、As及びSbから構成される群から選択されるn型ドーパント;周期表のII族に由来するp型ドーパント;Mg、Zn、Cd及びHgから構成される群から選択される型ドーパント;周期表のIV族に由来するp型ドーパント;C及びSiから構成される群から選択されるp型ドーパント;又はSi、Ge、Sn、S、Se及びTeから構成される群から選択されるn型ドーパントから構成される群から選択されるドーパントを含むことができる。
【0080】
場合により、例えば半透性包帯、衣類、濾過又は他の用途では自己滅菌能をもつナノファイバーを利用することが望ましい場合がある。このような場合には、紫外線を受けると有機材料を酸化して自己洗浄機能を発揮する例えばTiO2からナノファイバーを製造することができる(例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許出願公開第20060159916号参照)。
【0081】
更に、このようなナノファイバーは単結晶構造のようにその組成が均一でもよいし、異なる材料のヘテロ構造(例えばその長さ方向に組成が変化する縦方向ヘテロ構造、又はその横断面もしくは直径方向に組成が変化する同軸ヘテロ構造)から構成してもよい。このような同軸及び縦方向ヘテロ構造ナノワイヤーは例えば全目的で本明細書に援用する公開国際特許出願第WO02/080280号に記載されている。
【0082】
本発明の製品のナノワイヤー部分は例えば多孔質基体の所望表面でin situ合成することが好ましい。例えば、好ましい側面では、上記方法等のコロイド触媒VLS(蒸気−液体−固体)合成法を使用して無機半導体又は半導体酸化物ナノファイバーを多孔質基体の表面に直接成長させる。この合成技術によると、(場合により多孔質基体の総表面を含む)多孔質基体の所望表面にコロイド触媒を堆積する。コロイド触媒を含む多孔質基体を次に合成工程に付し、多孔質基体の表面に結合したナノファイバーを製造する。他の合成法としては多孔質基体の表面に堆積した例えば50nmの触媒薄膜の使用が挙げられる。その場合には、VLS法の熱が膜を融かし、ナノファイバーを形成する触媒小液滴を形成する。一般に、この方法はファイバー直径均一性が最終用途にさほど重要でない場合に使用することができる。一般に、触媒は金属(例えば金)を含み、基体の表面に電着又は蒸着してもよいし、多数の他の周知金属堆積技術の任意のもの(例えばスパッタリング等)で堆積してもよい。コロイド堆積の場合には、一般にコロイドが表面に付着するようにまず基体の表面を処理することによりコロイドを堆積する。このような処理としては従来詳細に記載されているもの(例えばポリリジン処理等)が挙げられる。その後、表面処理した基体をコロイド懸濁液に浸漬する。
【0083】
あるいは、別の場所でナノファイバーを合成し、従来記載されている堆積法を使用して多孔質基体の所望表面に堆積してもよい。例えば、公知方法(例えば上記方法)のいずれかを使用してナノファイバーを製造し、その合成場所から回収することができる。その後、遊離状態のナノファイバーを多孔質基体の該当表面に堆積する。このような堆積は単に多孔質基体をこのようなナノファイバーの懸濁液に浸漬すればよく、あるいは更に多孔質基体の全部又は一部を前処理し、ファイバー結合のために表面又は表面部分を官能基化してもよい。例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第7,067,328号及び6,962,823号に記載されているような他の各種堆積方法も公知である。
【0084】
ナノファイバーを主に多孔質基体の表面の内壁部分に結合することが所望される場合には、このような堆積はこのような場所にナノファイバーを成長させるか又はこのような場所に選択的にナノファイバーを堆積することにより実施することができる。ナノファイバーをin situ成長させる場合には、これはコロイドを堆積する前に基体の全外面に別の材料(例えばレジスト)の層を堆積することにより実施することができる。コロイドに浸漬後、レジスト層を現像し、除去すると、実質的に基体の内壁表面のみにコロイドを堆積した基体が得られる。
【0085】
図1及び2は本発明の基体を模式的に示す。特に、図1は本発明のナノワイヤーを担持する多孔質基体の模式図を示す。図1A及び1Bに示すように、多孔質基体102を準備する。例示の目的で、メッシュ又はスクリーンを多孔質基体として利用するが、この用途にはファイバーマットも有用である。図1Bに示すように、アパーチャ又は細孔の内壁部分106に少なくとも部分的に配置され、細孔の間隙領域108内に延びるナノファイバー104を配置し、下層基体自体により提供されるよりも多少制限的ないし幅狭で材料全体を貫通する開口ないし通路を形成する。図1に示すように、ナノファイバー104はメッシュの他の表面部分にも配置する(総表面)。
【0086】
図2A及び2Bは主に細孔を規定するアパーチャの内壁部分のみにナノファイバーを配置する場合を模式的に示す。図例のように、穿孔基体202が下層多孔質基体を形成する。例えば穴あけ、エッチング又は他の公知加工法により、基体202に複数のアパーチャ208を加工する。図2Bに示すように、アパーチャ208の拡大図により、アパーチャの内壁部分206に結合したナノファイバー204の存在を詳細に示す。図例のように、ナノファイバーは一般に内壁表面206から突出している。これは一般に触媒成長CVD法を使用してナノファイバーをin situ成長させることにより実施され、こうしてファイバーは触媒を最初に堆積した表面から成長する。ファイバーをアパーチャの空隙スペースに突出させるか否かに拘わらず、他の方法を利用してこれらの内壁部分にナノファイバーを堆積してもよく、このような方法としては該当表面に化学的に結合することが可能なナノファイバーの懸濁液に多孔質基体を浸漬する方法が挙げられる。
【0087】
図12は細孔又はアパーチャを配置したシリコン基体の写真を示す。細孔の内側を含めて基体の表面全体にシリコンナノファイバーを成長させた。基体は厚さ0.1mmのシリコンウェーハとし、100μmの穴を均等間隔で配置した。図12Aは基体の広い領域の図を示し、図12Bは細孔及び基体表面と、前記表面上のナノファイバーの拡大図を示す。
【0088】
代替構成では、合成工程とは別個の段階で多孔質基体をナノファイバーの固定表面として利用することができる。特に、遊離状態のナノファイバーの懸濁液又は集合体もしくは集団(例えば別個の独立したメンバーの集団)としてナノファイバーを製造することができる。このような遊離状態のナノファイバーは一般に、ナノファイバーを成長基体から分離し、懸濁流体もしくは他の媒体に堆積するか又は受容基体上に堆積するか又は他の方法で成長もしくは合成環境から操作可能な環境(例えば流体懸濁液)中に移動させる回収段階を合成後に含む以外は上記方法の任意のものから製造される。その後、ナノワイヤー集団を多孔質基体上に堆積し、マイクロ又はナノ多孔質ネットワークを下層多孔質基体上に形成する堆積ナノファイバーのマットを得る。本発明のこの側面によると、多孔質基体の細孔は一般に堆積するナノファイバーの最大寸法(例えばナノファイバーの長さ)よりも小さくなるように選択される。例えば、特定集団のナノファイバーが約10μmの平均長さである場合には、基体の細孔は一般に10μm未満、例えば5μm未満、2μm未満、又はそれ以下の横断面となる。ナノファイバーの十分な固定を確保するためには、多孔質基体の細孔の最大横断面は一般にナノファイバー集団の平均最大寸法、一般には長さの50%未満、場合によりこのような寸法の20%未満、多くの場合にはこのような寸法の10%未満となる。
【0089】
その後、各ファイバーが相互に接触する点で場合によりナノファイバーマットを融着又は架橋し、より安定で頑丈で潜在的に剛性のファイバー膜を形成する。相互に結合されたナノファイバー間の空隙スペースはナノファイバーマットの多孔質ネットワークを形成する。マットの有効細孔径は一般に堆積されるナノファイバー集団の堆積密度と、この層の厚さ、更に多少程度までは使用するナノファイバーの幅により異なる。これらの全パラメーターを容易に変化させ、所望有効気孔率のマットを得る。
【0090】
図9A及び9Bは本発明の所定側面を例証する架橋ナノファイバーマットの電子顕微鏡写真を示す。図9Aは無機材料(例えばシリコン)の蒸着により架橋された半導体ナノファイバー集団を示す。特に、従来の合成スキームによりシリコンナノワイヤー集団を製造し、例えばSiH4分圧1トール、全圧30トール下に40分間、480℃で金コロイド触媒からシリコンナノワイヤーを成長させた。プロセスガスをポンプ排出することにより成長を終了した後、30トールHe下に基体の温度を520℃まで勾配上昇させた。この温度に達したら、再びプロセスガス(SiH4)に切替え、その結果としてシリコン蒸着により相互に隣接又は接触するナノワイヤーを架橋させた。蒸着時間は10分間とした。当然のことながら、別々に回収及び堆積したナノファイバーを同様にこの方法により架橋させてもよい。
【0091】
他方、図9Bのナノファイバーはナノファイバーを少なくとも部分的に被覆又は封入して相互に結合するポリマー堆積法を使用して結合した。特に、PVDFポリマーをナノワイヤーと共にアセトンに懸濁し、音波処理した。その後、アセトンを蒸発させ、封入又は架橋ナノワイヤー又はナノファイバーマットを得た。各場合に認められるように、シリコンナノファイバー又はナノワイヤーのネットワークは各ナノファイバーの交点に架橋を示す。また、編成されたナノファイバーにより形成される細孔はナノファイバー間の空隙スペースにより規定される。
【0092】
上記のように、本発明の代替側面はナノファイバーが相互に重なり合ってマット、好ましくは高密度ナノファイバーマットを形成するように受容又は支持基体にナノワイヤーを単に堆積することにより実施することができる。一般に、この方法は、ナノファイバーを最初に配置した媒体に細孔を通過させながらナノファイバーを多孔質支持基体の上面に固定できるような多孔質支持基体を使用し、ナノファイバーを基体で実質的に濾過し、ナノファイバーを基体の表面に高密度に堆積することにより簡略化される。その後、相互に接触する点又は相互に十分に近接する点でファイバーを架橋させるように、得られたファイバーマットを処理する。
【0093】
このようなマット形成方法を図10に模式的に示す、特に、ナノファイバー集団1000を懸濁液1002として準備し、ナノファイバーを液体、気体に懸濁してもよいし、単に自由流動集団又は粉末として準備してもよい。次にナノファイバー集団を多孔質基体1004上に堆積又は注下する。次にナノファイバー集団1000を多孔質基体1004の上面1006に保持し、この点でナノファイバー集団は基体1004により担持されたナノファイバーの上層マット1008を形成する。付加的ナノファイバーを基体に堆積することによりマット1008を増大する。上記のように、ナノファイバーを懸濁した任意媒体は多孔質基体1004の細孔1010を自由に通過するので、ナノファイバーを多孔質基体1004の上面1006に高密度に充填することができる。
【0094】
ナノファイバーマット1008が所望厚さ及びファイバー密度になったら、これを担持するマクロ多孔質基体上で例えば濾過膜又は他の半透性層として容易に利用することができる。しかし、好ましい側面では、拡大図に示すように、ナノファイバーを夫々の接点で架橋させてマットのナノファイバー間にカップリング1012を形成するようにナノファイバーマットを(矢印1014により示すように)処理させる。架橋ナノファイバーの使用は超大表面積用途について記載されている(例えばその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する同一名義の米国特許出願公開第20060159916号参照)。上記のような架橋は熱融着、化学的表面改質/架橋、封入又はコーティング等の多数の手段により実施することができる。熱融着法はナノファイバーの構成により異なり、ポリマーナノファイバーは金属又は無機半導体ナノファイバーよりも実質的に低温で融着させる。
【0095】
ナノファイバーは下層ナノファイバーを架橋させるために化学架橋を形成することが可能な表面化学基を更に含むことができる。例えば、ポリアクリルアミド又はポリエチレングリコール基等のポリマー材料を例えば周知のシラン及び/又はペグ化化学によりナノファイバーの表面に容易に結合することができる。その後、周知のポリマー架橋法を使用してナノファイバーを架橋させる。同様に、エポキシド、アクリレート又は他の容易に利用可能な反応基をナノファイバーの表面に配置し、熱カール、光カール(例えば紫外線)、又は隣接接触ナノファイバー間の他の化学的相互作用と結合により架橋させてもよい。
【0096】
別の側面では、各ナノファイバーを固定するポリマーコーティング又は封入技術を使用してナノファイバーマットを相互に架橋させることができる。例えば、蒸着技術を利用してマットのナノファイバー部分にポリマー薄層を蒸着し、ナノファイバーを有効に固定することができる。このようなポリマーの例としては例えばPTFE、PVDF、パリレン等が挙げられる。例えば上記のような液体堆積又はin situ重合及び/又は架橋技術を使用して多様な他のポリマー材料を場合により利用することができる。当然のことながら、ポリマー架橋法では得られる材料マットの柔軟性の点で熱及び/又は化学的架橋法にまさる所定の利点が得られる。
【0097】
ナノファイバーマットを架橋させたら、下層マクロ多孔質基体と共に例えば裏材として利用することもできるし、基体から分離し、独立したナノファイバー膜(例えば膜1016)とすることもできる。容易に認識されるように、慣用方法を使用して大面積ナノファイバー層を製造することができ、ドラム又はベルトフィルター技術では、例えばベルトやドラムの表面として大面積連続マクロ多孔質基体層を使用してナノファイバー層を保持し、これらの層を本明細書に記載するように架橋又は他の方法で処理する。このような方法は例えば衣類、アウトドア繊維製品(例えばテント)、及び他の高体積用途で使用する非常に大量のファイバー層材料を提供するために連続又は大面積バッチモード操作で構成することができる。
【0098】
1態様において、本発明の製品は複数の重なり合ったナノファイバーを含むナノファイバーマットを含み、前記複数のナノファイバーはこのようなナノファイバーが相互に接触又は近接する点で相互に架橋され、半透性層を形成する。ナノファイバーマットは場合により多孔質基体上に堆積され、多孔質基体とナノファイバーマットとで半透性層を形成する。ナノファイバーの少なくとも一部には場合により疎水性部分が結合している。
【0099】
1態様では、連続ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法では、総表面積をもつ多孔質基体と、多孔質基体の総表面積に結合した複数のナノファイバーを準備する。1関連態様も連続ナノファイバー集団の製造方法を提供する。前記方法は上面と、多孔質基体を貫通するように配置され、各々有効細孔径をもつ複数の細孔を有する多孔質基体を準備する段階と;ナノファイバーをナノファイバーマットとして上面に保持するように、有効細孔径よりも大きい少なくとも1個の寸法をもつ複数のナノファイバーを多孔質基体の上面に配置する段階と;複数のナノファイバーの個々のナノファイバーを複数のナノファイバーの他の個々のナノファイバーと架橋させ、連続ナノファイバー集団を製造する段階を含む。
【0100】
III.用途
本明細書中に示唆するように、その表面の部分にナノファイバーを結合した本発明の多孔質基体はこのような材料の特に有利な多様な性質を活用する無数の用途に利用される。所定用途では、ナノワイヤーの存在により特性を強化した多孔質材料が得られる。他の用途では、多孔質基体とナノワイヤーの併用により実質的に新規な性質と有用性をもつ材料が得られる。
【0101】
A.半透性バリア
第1の特に好ましい用途では、本発明の多孔質基体は半透性バリアとして有用である。半透性バリア全般もその透過性レベル、コスト等に応じて多種多様な用途に利用される。例えば、このようなバリアは気体を透過し、液体を透過しないものでもよいし、空気又は気体を透過し、粒状物質を透過しないものでもよい。更に、このような半透性バリアはその用途に防腐性又は抗菌性を提供することができる。
【0102】
1側面において、本発明は複数のアパーチャを配置し、アパーチャの内壁表面を含む総表面をもつ多孔質基体と、多孔質基体の総表面の少なくとも一部に堆積又は結合した複数のナノファイバーを含む半透膜を提供し、ナノファイバーとアパーチャは共働して半透膜の細孔を規定し、前記細孔は1種類以上の材料を透過し、1種類以上の別の材料を透過しない。ナノファイバーは多孔質基体の総表面の少なくとも一部に結合又は堆積することができる。個々のナノファイバーを他の個々のナノファイバーと架橋させ、多孔質基体の表面に架橋ナノファイバーマットを提供することができる。ナノファイバーには場合により疎水性部分が結合しており、細孔に気体を透過させ、液体水を透過させないようにする。細孔は第1の粒径よりも小さい第2の粒径の粒子を通過させながら第1の粒径の粒子を排除する有効細孔径をもつことができる。有効細孔径は例えば10μm未満、1μm未満、0.2μm未満、100nm、又は20nm未満とすることができる。前記膜は各種製品に組込むことができる。例えば、半透膜の第1の側と流体連通する入口通路と半透膜の第2の側と流体連通する出口側をもつハウジング内に本発明の半透膜を配置し、フィルターカートリッジに組込むことができる。1態様では、呼気を濾過するためにハウジングを呼吸マスクに結合する。別の例として、本発明の半透膜を例えば少なくとも第2の繊維層と積層して衣料品に組込むことができる。
【0103】
1.濾過
その最も単純な側面において、半透性バリアは気体又は液体を粒状物質から分離するための濾過媒体として使用される。例えば、多種多様な濾過選択肢が例えば空気濾過に利用可能であり、例えば家庭用暖炉、エアコン、空気清浄器等の単純な消費者濾過ニーズから例えば産業用HEPA濾過、防護服用有害物質濾過、クリーンルーム用途、自動車用途等のより高度なニーズに至る多様な用途がある。液体用途では、このようなフィルターは水精製、産業用又は消費者用機械(例えば自動車)用燃料及び潤滑油の粒状物質分離等を実施することができる。
【0104】
本発明の濾過用途によると、製造する濾過媒体の基材として多孔質基体を使用する。その場合には下層多孔質基材の濾過性能を更に強化するために表面全体又は実質的に内壁のみにナノファイバーを配置する。特に、濾過媒体で改良を求められる主要な側面の1つは濾過効率の増加であり、例えば圧力低下の実質的増加により早期フィルター故障/目詰まり、高エネルギー需要等を伴うことなしに細孔径を減少できること又はフィルターの総容量/寿命を増加できることである。
【0105】
本発明によりもたらされる強化としては、フィルターの両端間の圧力低下を実質的に増加せずにフィルターの細孔径を有効に減少することが挙げられる。特に、本発明は有効細孔径を調整することにより付加的な濾過を実施するためにナノファイバーを基体の細孔内に配置した多孔質基体を提供する。ナノファイバーは寸法が非常に小さいため、細孔内に配置された材料の体積を実質的に増加せずに細孔内の表面積を実質的に増加することができ、従って、濾過媒体の流量を減らさずに濾過効率を増加するので、これらの用途に特に有用である。そこで、流体又は気体を多孔質基体に流し、粒状物質をキャリア液体又は気体から分離する。
【0106】
例えばフィルターマスク、ガス配管用等の濾過カートリッジの1例を図3A及び3Bに示す。図3Aに示すように、フィルターカートリッジ300は主ハウジング302を含み、ハウジング内にはフィルター層304が配置されている。フィルター層に構造支持体を提供するために一般にフィルター層の低圧側にフィルター支持体306も配置されている。フィルター層は一般に入口ないし高圧側308と低圧ないし出口側310を含む。フィルターの高圧ないし入口側から低圧ないし出口側に向かって流すことにより気体又は液体をカートリッジで濾過する。従って、フィルターカートリッジは濾過する気体又は流体をフィルター層の入口側に向かって流すための1又は複数の入口通路312と、フィルター層304で濾過された気体又は流体を流すための1又は複数の入口通路314を含む。図3Bは図3Aに示した特定フィルターカートリッジの出口側の端面図を示す。
【0107】
上記のように、濾過カートリッジは最終用途に応じて大型のシステムに組込むことができる。例えば、暖房及び空調システム又は例えば商業もしくは産業(即ちクリーンルーム)用の清浄空気を提供するための他の環境調節システムにエアフィルターを組込むことができる。本発明の濾過カートリッジは場合により水、燃料又は薬品濾過用の流体濾過システムにも組込むことができる。
【0108】
濾過用途によると、例えば有効細孔径1ミクロン、10ミクロン以上の例えば粗大粒子濾過から例えば有効細孔径0.2μm以下、例えば20nm以下の抗細菌濾過に至るまでの用途に応じて濾過媒体の有効細孔径を変動させることができる。本明細書の他の欄に示唆するように、「有効細孔径」なる用語は必ずしも基体を貫通する個々の経路の寸法を意味するものではなく、流体、気体又は粒子が通過可能又は通過不能な連続経路の横断面寸法を意味する場合もある。更に、所定通路の「有効細孔径」とは必ずしも連続通路の絶対寸法を表すものではなく、通路の通過を有効に阻止される粒子の寸法を表す。一般に、このような各種細孔径は下層基体に存在するこれよりも大きいアパーチャ内に配置されたナノワイヤー密度、ナノファイバーの直径と長さ、更に多少程度まではこのようなアパーチャの当初の寸法の結果に依存する。
【0109】
同様に、ナノファイバーと下層基体の両者に関して濾過媒体の組成ないし構成は材料の用途に依存する場合もあり、材料は一般にその暴露条件に耐えるように選択される。このような条件としては極端な温度、アルカリ度又は酸性度、高塩濃度等が挙げられる。
【0110】
1側面において、本発明は流体又は気体の濾過方法を含む。前記方法では、多孔質基体を準備し、気体又は液体を多孔質基体に通して前記気体又は液体を濾過する。基体には複数のアパーチャが配置され、アパーチャの内壁面積を含む総表面積をもつ多孔質基体を提供し、基体は多孔質基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノワイヤーを含む。
【0111】
2.通気性防湿バリア
1関連側面において、基体は液体不透過性を維持しながら気体(例えば空気)を透過するように構成される。例えば、このようなバリアは水蒸気、酸素及び他の気体を自由にバリアに透過させるが、液体を透過させない衣類及び医療用通気性防湿バリアとして特に有用である。本発明によると、これは多孔質基体を貫通するように配置されたアパーチャの内側にナノファイバーを配置することにより達成される。しかし、本発明の他の側面とは異なり、防湿バリア用ナノファイバーは疎水性を増すように選択又は処理される。疎水性を増すためのナノファイバー表面の処理はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許出願公開第20050181195号に詳細に記載されている。特に、疎水性化学部分をその表面に結合して材料の疎水性を増すようにナノファイバー及び/又は基体表面を誘導体化することができる。疎水性化学部分を基体に結合することは当業者に周知であり、例えばシラン系基体を処理するためのシラン化学等が挙げられる。下層多孔質基体上にこのような超疎水性ナノファイバー表面を配置することにより、空気、水蒸気又は他の気体を透過させながら液体(例えば液体水又は他の水溶液)の透過を防止することができる。一般に、このようなバリアは実質的に水分を透過せず、例えば周囲条件下で表面と接触する水分の実質的に大半の透過を防止する。
【0112】
このような通気性防湿バリアは液体水を侵入させずに内側から発生した水分を排除することが望ましい衣類、テント等のアウトドア用具で特に有用である。図4A及び4Bは積層繊維製品402(図4Bに拡大図で示す)から構成される積層繊維製品(例えばコート400)を示す。図例のように、他の材料層(例えばナイロン外層404と綿又はポリプロピレン繊維基層406)の間にナノファイバーを担持する多孔質基体材料層408が配置され、外部の風や冷気から防護すると共に、内部の着用者の皮膚又は衣類を快適にする。
【0113】
1側面において、本発明は通気性防湿バリアの製造方法を含む。前記方法では、複数のアパーチャと多孔質基体の総表面積の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバーを含む多孔質基体を準備する。多孔質基体とナノファイバーは共働して通気性バリアを構成する。多孔質基体の総表面に結合したナノファイバーの疎水性を増すように少なくともナノファイバーを処理し、通気性防湿バリアを得る。
【0114】
3.包帯
別の好ましい態様において、これらの通気性防湿バリアは液体水や他の有害物質/摩耗等を創傷部に接触させずに酸素を創傷部に到達させ、創傷部からガスや蒸気を逃がすことができるので、包帯又は創傷包帯剤として有用である。半透性バリアとしての利点に加え、ナノファイバーを被覆した表面は包帯を固定するための接着性も提供することができ、例えば包帯を創傷部自体又はその周囲の皮膚に接着させることができる。乾燥接着剤又は高摩擦材料としてのナノファイバー表面の使用はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する米国特許第7,056,409号に詳細に記載されている。更に、このようなナノファイバーコーティングは創傷部の感染予防を助長するために抗微生物材料(例えばZnO等)を含むことができる。
【0115】
図5は上記のような粘着性半透性撥水性包帯を示す。図例のように、包帯500は疎水性バリア、例えば防湿バリア(ストリップ502上に網掛けにより示す)を提供するように適切に処理されたナノファイバーを担持する本発明の可撓性多孔質基体ストリップ502(例えば織布又は軟質メッシュ材料、即ちポリマー又は布製メッシュ)を含む。基体ストリップ502は通気性不透湿性カバーと接着剤ストリップを兼用する。包帯により覆われる創傷を保護するように、基体ストリップ502の片側の一部には保護パッド504が配置されている。創傷に当てると、保護パッドは創傷を覆い、摩擦又は他の接触から保護すると同時に、ストリップの部分506及び508は創傷部に隣接する表面組織に接着する(又は創傷部周辺に完全に巻き付けると、基体ストリップの他端の対向表面に接着し、例えば領域506は領域508の裏側に接着する)。
【0116】
B.蒸気バリア
1関連側面において、本発明の多孔質基体は各種有機又は無機蒸気を吸収又は分解するために、通気性化学/生物防護衣類及び装置で有用である。本発明の蒸気バリア用途によると、多孔質基体(例えば布製又は可撓性メッシュ)を基材として使用する。活性炭繊維を使用することが好ましい。活性炭繊維は有機蒸気を吸収し、支持構造として機能する。活性炭繊維は例えばSpectracorpから市販されている。
【0117】
活性炭繊維又は他の基体上にナノファイバー(例えばシリコンナノワイヤー、カーボンナノチューブ、又はポリマーナノファイバー)を埋込むか、配置するか、又はin situ成長させる。ナノファイバーは活性炭繊維の透過性を低下させ、蒸気吸着の効率を上げるので、層を薄くすることができる。空気透過性の低下にも拘わらず層に高度の水蒸気透過率を維持できるように、(例えばナノファイバー組成を調節又はナノファイバーを親水性材料で表面処理することにより)場合によりナノファイバーに親水性表面を配置する。
【0118】
蒸気と結合する部分又は蒸気を分解する部分でナノファイバーを官能基化する。例えば、活性炭により吸収されないホスゲン等の非有機ガスと結合又はこれを分解する部分でナノファイバーを官能基化することができる。ナノファイバーは化学部分(例えば非有機ガスを吸収又は分解する化学部分、例えばアンモニアと結合するカルボン酸部分又は表1から選択される部分)で官能基化することができる。好ましい1側面では、ナノ結晶をナノファイバーに結合することによりナノファイバーを官能基化する。ナノ結晶はAg、ZnO、CuO、Cu2O、Al2O3、TiO2、MgO、FeO、MnO2、Zn、又は例えば表1から選択される材料等の材料を含むことができる。異なる組成のナノ結晶を使用し、異なるガスと吸着又は結合する異なる材料を含むナノ結晶又は他のナノ構造の2個以上の集団(例えば2個、3個、4個、5個、6個、又はそれ以上の集団)をナノファイバーに結合することにより、多官能性を簡便に付与することができる。1関連側面では、ナノファイバーの2個以上のバッチを化学的に誘導体化し、混合し、繊維に組込むことができる。同様に、例えば表1から選択される異なる材料から2個以上のナノファイバー集団を合成し、混合し、(付加的な官能基化の存在下又は不在下で)繊維に組込むことができ、あるいは(1本のナノファイバーが2種類以上の材料を含む)ナノファイバー縦方向ヘテロ構造も使用することができる。1関連側面では、ナノファイバーの不在下でもメソ多孔質炭素繊維又は他の繊維、特に別の大表面積繊維にナノ結晶又は他のナノ構造を結合することができる。
【0119】
ナノ結晶とは一般に実質的に単結晶(又はそのコアが実質的に単結晶)の構造を意味する。ナノ結晶は一般に直径500nm未満、好ましくは100nm又は50nm未満、多くの場合には20nm又は15nm未満である。ナノ結晶は場合により縦横比10未満、例えば5又は2未満、場合によっては約0.1〜約1.5である。典型的なナノ結晶としては限定されないが、実質的に球状のナノ結晶(例えば直径1nm〜6nmの球状ナノ結晶)、ロッド形結晶(例えば約5×50nmのロッド)、及びテトラポッド(中心コアから延びる4本のロッド様アームをもつもの、別称ナノテトラポッド)が挙げられる。ナノファイバーを化学的に修飾及び/又はナノ結晶をナノファイバーに結合するための技術は当分野で周知であり、例えば、ナノファイバーにポリリジンやポリマーをコーティングする方法が挙げられる。結合は共有的でも非共有的でもよい。
【0120】
図13は上記のようなナノ構造強化繊維を模式的に示す。図例のように、織布1301はアパーチャ1302を含む。繊維の表面にはナノファイバー1304が結合しており、ナノファイバーにはナノ結晶1303が結合している。
【0121】
前記繊維又は他の基体は衣料品(例えば防護スーツ)、又は他の防護装置に組込むことができる。ナノファイバー強化繊維は場合により多孔質繊維又は他の多孔質材料を片面又は両面に付加することにより保護される。
【0122】
本発明の蒸気吸収性繊維は現状の保護層にまさる多数の利点を提供する。例えば、米軍用化学/バイオハザード防護スーツは現状では活性炭ペレットをウレタンポリマーに埋込んだものを使用している。このペレットは多くの有害蒸気を吸収するが、スーツは水蒸気透過率が低く、多くの非有機ガスに感受性である。活性炭布は非常に大面積で有機物に対する結合親和性が高いため、有害物質防護スーツで商業的に使用されてきた。しかし、これらの繊維には非有機分子を吸収できないという弱点がある。非有機蒸気を分解又は吸収するように官能基化したナノファイバーを繊維の間隙に充填することにより、上記のような単層繊維は良好な水蒸気透過を維持しながら完全な機能性を提供することができる。
【表1】
【0123】
C.例えば電気接続用の大接触表面
上記に示唆したように、上記用途は多孔質基体の特性を強化するため、例えば濾過気孔率、撥水性等を強化するために多孔質基体に配置したナノファイバーを一般に利用する。しかし、多数の用途では、ナノファイバーを多孔質基体に付加することにより、単にその多孔性により利用されるのではなく、下層大表面積基体に結合した小寸法の材料の相乗的構造特性により強化される他の性質により利用されるユニークな材料が得られる。
【0124】
特に、ナノファイバーを多孔質基体に付加することにより、その表面積増加の結果として、投影面積1平方cm当たりのナノファイバー充填度が増加する。特に、多孔質基体上に集合したナノファイバーの高密度マットが得られ、このような密度レベルは平坦表面では容易に達成できなかった。ナノファイバーの大表面積は更に下層基体のアパーチャ又は細孔を通して容易に接近可能である。
【0125】
ナノファイバー密度の増加及び/又は表面積増大に加え、多孔質基体(例えばメッシュやファイバーマット)は剛性度の高い固体基体(例えばシリコンウェーハ、金属プレート等)に比較して可撓性の傾向がある。更に、基体の相対気孔率に応じて製品全体を例えば窓スクリーンのように部分的又は実質的に半透明又は透明にすることができる。
【0126】
D.大表面積/高密度ファイバー用途
上記性質以外に、多孔質基体はナノファイバーを維持、操作、保存及び他の方法で使用するための軽量で高密度の格子として利用することもできる。ナノファイバーをこの格子から回収することもできるし、例えば半導体素子、構造又は電気強化用複合充填材、例えば分離用の大表面積マトリックス等としてよりナノファイバーに特異的な用途で格子の部分をそのまま利用することもできる。
【0127】
更に他の用途では、ナノワイヤーを配置した多孔質基体はこれに結合したナノファイバー(この場合には特にナノワイヤー)に対して電気的一体性を提供することができる。具体的には、導電性多孔質基体を使用すると、所定用途に必要なナノワイヤーとの電気接続の少なくとも一部を提供することができる。例えば、金属又は他の導電性又は半導体メッシュに結合した半導体ナノワイヤーは既に部分的に電気回路に組込まれており、例えば前記メッシュはデバイス全体における電極(例えばソース又はドレイン)になる。
【0128】
以下、上記性質を利用する多数のこのような特定適用例を単に例証の目的で記載する。しかし、上記利点を認識した当業者には本発明の基体及び製品の更に多数の特定用法及び用途が容易に理解され、以下の記載は限定的であるとみなすべきではなく、このような用途を排除するものではない。
【0129】
第1の典型的用途では、本発明の基体をダイオード構成で一方の電極として使用する。特に、ナノワイヤーをその表面(例えば総表面)に結合した下層多孔質基体として導電性メッシュを使用する。メッシュの組成はナノワイヤー部分における主キャリアの伝導を促進する動作機能をもつように選択する。その一部に関して、ナノワイヤー部分はダイオード回路の半分を提供するように選択され、例えばpドープナノワイヤーが挙げられる。このアーキテクチャによると、ナノワイヤーを被覆した多孔質基体はダイオード回路の一部として機能する。ダイオード回路の残りの部分は、例えばnドープナノワイヤーと下層基体に適した電極組成物を提供することにより、他方のキャリア(例えば正孔)を伝導するように材料を選択する点以外は、従来の半導体基板又は第1の部分の鏡像として提供することができる。次に2個の基体を結合し、ナノワイヤーを表面に接続し、機能性ダイオードを得る。ナノワイヤー間の適正な接触を確保するために導電素子、アニール段階等の付加要素も加えることができる。
【0130】
別の典型的用途では、ナノワイヤーを被覆した大表面積基体を例えば電気的又は非電気的な他の要素(例えば組織の電気刺激用ヒト組織)との接続用電極として使用することができる。例えば、ペースメーカー用電極は一般に大表面積の利点を利用できるため、電極が刺激している組織とより完全に接触させることができる。因みに、例えば生体埋込みを容易にするためにナノファイバー被覆製品を組織格子として使用している場合には、表面積を増加し、気孔率を上げると、栄養素等がこのような組織に接近するのを妨げずに接着点を提供するのに非常に有益である。具体的には、米国特許出願公開第20060159916号に記載されているように、医療インプラントのナノファイバー被覆表面は組織接着性と生体埋込みを強化することが可能な「非蛇行路」で増大した表面積を提供する。下層多孔質基体上にこのようなナノファイバー表面を配置することにより、これらの性質は更に強化されると予想される。
【0131】
特定用途では、このようなダイオード構成を光活性素子、例えば光起電力素子又はフォトダイオード素子として利用する。部分的又は実質的に半透明の多孔質基体を使用すると、光は電極コンポーネントを透過して半導体ナノワイヤーに入射し、対向するナノワイヤーのヘテロ接合部に電荷分離を生じるのでこの用途に有利である。対向する下層基体材料の選択は従来の光起電力素子で使用されている基準と同一基準に従うことができる。例えば、一方の下層基体メッシュをアルミニウムから構成し、他方を別の動作機能をもつ別の金属(例えばITO)又は同様の導電性材料から構成することができる。
【0132】
従来記載されているナノ複合光起電力素子は電極として機能する2層の導電層の間に挿入されたナノ複合材料の活性層を利用していた。上部電極は一般に活性層上に透明導電性コーティング、例えばイリジウム・錫酸化物(ITO)を含む。これらのナノ複合光起電力素子は初期電荷分離が生じる第1のコンポーネントを利用していた。これは一般に光に当たるとエキシトンが形成されるナノ結晶を利用していた。このナノ結晶コンポーネントは一般に一方の電荷キャリアを他方のキャリア(例えば電子)よりも良好に伝導する。ナノ結晶は一般に他方の電荷キャリア(例えば正孔)をナノ結晶コンポーネントから伝導する別の材料のマトリックスに配置される。両者キャリアを対向電極に伝導することにより、電位を発生する。一般に、正孔伝導コンポーネントは有機半導体ポリマー、例えばポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)を含むが、正孔伝導コンポーネントは異なる組成の別のナノ結晶でもよい。ナノ複合光起電力素子の全体的アーキテクチャは例えば米国特許第6,878,871号に詳細に記載されている。
【0133】
本発明によると、光起電力素子600は全体で半導体ナノワイヤーが堆積された1個(図6A参照)、又は2個(図6B参照)の多孔質基体602及び604を含む。第1の多孔質基体602は一般にシステムの一方の電極(例えば下部電極)として機能する(上記のような)第1の導電性メッシュ602a又は他の多孔質材料を含み、その総表面に結合した第1の組成の第1のナノワイヤー集団606を含む。図6Aに示す第1の態様では、ナノワイヤー集団606に対してII型バンドギャップオフセットをもつ導電性マトリックス材料608を第1の多孔質基体602とこれに結合したナノファイバーに被覆し、電荷分離を行う。次にマトリックス層608の上に透明電極610を配置する。
【0134】
第2の典型的態様では、図6Aの上部透明電極610の代わりに、同様に導電性メッシュ604aから作製されるが、第1の多孔質基体602と異なる動作機能を含む第2の多孔質基体604を使用し、電荷分離を助長する。第2の多孔質基体604に結合した第2のナノワイヤー集団612を配置する。夫々第1及び第2のナノワイヤー集団606及び612の組成は同様に電荷分離と差別的伝導を助長するためにII型バンドギャップエネルギーオフセットを提供するように選択される。次に夫々のナノワイヤー集団606及び612が夫々電気的に接続して2層間の電荷分離を可能にするように第1及び第2の多孔質基体(602及び604)を結合する。本明細書の他の欄に記載するように、場合によりこのような電気接続を可能にするように、相対向するナノワイヤー集団を例えば熱アニール等で更に処理してもよい。例えば図6Bに示すようなデュアル半導体システムを使用すると、活性層内に有機種(例えば導電性ポリマー等)を不要にすることができるので、夫々の電極への夫々のキャリアの伝導を加速することにより電荷分離効率を改善し、従って活性層内の電荷再結合を防止できると予想される。
【0135】
1態様において、本発明の電気素子は、複数のアパーチャを配置し、複数のアパーチャの内壁表面積を含む総表面積をもつ多孔質基体と、多孔質基体に付加し、電気的に結合した複数の導電性又は半導体ナノワイヤーを含む。典型的な光起電力素子の1例は複数のナノワイヤーが第1のエネルギーバンドギャップを含む第1のこのような電気素子と、複数のナノワイヤーが第2のエネルギーバンドギャップを含む第2のこのような電気素子を含む。第1及び第2のエネルギーバンドギャップは相互にII型バンドギャップオフセットを示し、第1の電気素子のナノワイヤーは光に暴露すると第1の電気素子と第2の電気素子間に電荷分離を生じるように第2の電気素子のナノワイヤーと電気的に接続している。
【0136】
容易に認識される通り、上記光起電力素子は主に本発明の基体を所定の電子又は光電用途に利用できるということを例証するために記載した。このような基体が有用となる広範な他の電子素子も当業者に認識されよう。
【0137】
更に別の典型的な用途では、下層メッシュを含む複合マトリックス用のマトリックスコンポーネント(例えばポリマーマトリックス)にナノファイバー又はナノワイヤーを被覆した多孔質基体を封入する。このような用途は複合マトリックスの機能性を強化するためにナノファイバーをバルク材料として利用している場合に特に有用である。このような強化としては電気的強化(例えばコンポーネントを誘電材料として使用している場合)や、光電用途でナノファイバーを部分的に配向する場合(例えば光電池)、ナノファイバーの存在によりユニークな構造特性(例えば引っ張り強度、弾性等)をマトリックスに付与する構造的強化が挙げられる。
【0138】
図7は本発明の材料を組込んだ複合マトリックスを模式的に示す。図例のように、複合材料フィルム702は細孔又はアパーチャ710内を含むその表面710に配置されたナノファイバー708を含む多孔質基体706をマトリックス材料(例えばポリマー、セラミック、ガラス等)内に含む。多孔質基体は一般にマトリックス材料704に浸漬又は含浸され、フィルム702を形成する。上記のように、これらの複合フィルムはその後、各種用途で例えば導電フィルム、誘電フィルム等として利用される。
【0139】
図8A及び8Bは分離用途(例えばクロマトグラフィー)用の大表面積マトリックスを提供するための多孔質基体の使用を模式的に示す。特に、図8Aに示すように、その表面にナノファイバーを結合した多孔質基体802を準備する。上記のように、この多孔質基体は多数の異なる形態で準備することができる。例えば、基体802はメッシュ又はスクリーンから構成し、ファイバーを結合又は成長させる前後のいずれかに円筒状に巻いたものを利用できる。あるいは、基体は固体であるが、焼結ないしフリット材料(例えば金属又はガラス)から構成してもよい。更に別の側面では、基体は繊維状材料(例えばグラスウール、織布等)から構成し、材料をそのまま成形するか又は材料を円筒形(又は他の形状の)ハウジングに充填することにより、所望形状(例えば図例のような円筒形802)に成形したものでもよい。この場合も、このような成形はナノファイバーを成長又は他の方法で多孔質材料に結合させる前後のいずれに実施してもよい。
【0140】
次に、分離操作中に流体をカラムに流出入させる入口806と出口808を含むカラム804内に基体802を配置する。図8Bに示すように、次にクロマトグラフィー分離を実施するための適当な液体操作機器(例えば勾配マーカー810、ポンプ812、検出器814、フラクションコレクター816等)に基体804を連結する。
【0141】
当然のことながら、本発明の基体材料を組込んだ分離マトリックスは本明細書の他の欄に記載するように、各種基体構造及び構成の任意のものを含むことができ、任意数の各種ナノファイバーを利用することができる。このような構造、構成及び組成は当業者に一般に認識されるそれらの特定用途に応じて一般に選択される。
【0142】
E.複合材料用強化用格子
本発明の更に別の側面において、本発明のナノファイバーを担持する多孔質基体は複合材料の格子を形成し、格子の組込みを強化すると共に複合材料全体の構造特性を改善する。特に、多くの複合材料は付加的材料(例えばエポキシドや他のポリマー、セラミック、ガラス等)を支持する下層構造一体性を提供する格子を含む。例えば、エポキシ樹脂又は他のポリマーに封入したファイバーグラスクロスの複合材料は例えば家具、サーフボード及び他のスポーツ用品、車体修理等の各種用途で日常的に使用されている。同様に、カーボンファイバークロス又は基体も所望形状に成形する前に一般にポリマー又はエポキシ樹脂に封入される。最終的に、これらの複合材料は一般に大半の他の材料よりも良好な構造特性(例えば強度対重量比)をもつ。特定作用理論に結び付けるものではないが、封入材料と格子材料の相互作用がこれらの構造特性において非常に重要であると考えられる。具体的には、複合材料の2成分の相互作用を強化(例えば相互組込みを改善)することにより最終複合材料の強度が改善されると考えられる。本発明のナノファイバーを担持する多孔質基体は多孔質基体単体に比較して表面積が非常に大きいので、周囲の封入材(例えばエポキシ)との相互反応性が実質的に増加すると予想される。従って、本発明の別の側面は複合材料用格子材料としての、ナノファイバーを堆積した多孔質基体の使用を含む。
【0143】
本発明のこの側面の一般例を図11に示す。図例のように、ナノファイバー1102を含む表面をもつ多孔質基体1100をマトリックス材料(例えば硬化ポリマー1104)に浸漬し、各種材料又は製品に加工可能な複合材料1106を得る。
【0144】
上記のように、各種繊維が一般に最終材料の支持格子として複合マトリックスに組込まれる。例えば、カーボンファイバー複合材料は一般に織布カーボンファイバー材料を利用し、樹脂(例えばエポキシ又は他のポリマー材料)とインターカレートさせる。その後、複合材料を所望形状に成形し、硬化させる。あるいは、例えば硬化材料を研磨又は他の方法で造形することにより、硬化後に所望形状に成形することもできる。同様に、織布グラスファイバーを適当なマトリックス(例えばエポキシ等)とインターカレートさせることによりファイバーグラス複合材料で使用する。
【0145】
本発明の関連では、ナノファイバーをその表面に堆積又は結合した多孔質基体を得られる複合材料の格子材料として使用する。材料内の空隙を実質的又は少なくとも部分的に充填するマトリックス材料とナノファイバー材料をインターカレートさせる。マトリックスは表面積が非常に大きいため、格子材料と非常によく結合してこれを組込むため、例えばナノファイバー表面の不在下で単に多孔質基体単体を利用した材料よりも強度の高い複合材料が得られる。このような複合材料は軽量工業部品(例えば自転車、テニスラケット、自動車部品、航空機部品、衛星及び他の宇宙施設及び部品等)のような高い強度対重量比が所望される多数の用途で一般に使用することができる。
【0146】
例えば本明細書の他の欄に記載するようなほぼ任意の多孔質基体材料を多数の用途の支持格子として利用することができるが、可撓性格子材料は特定用途に所望される形状に後から調整する(例えば成形又は造形する)ことができるのでより望ましい。少なくとも第1の好ましい側面では、可撓性メッシュ材料を支持格子として使用する。このような材料としては多孔質ポリマーシート、多孔質金属シート、可撓性多孔質ガラスシート(例えば焼結ガラスシート)等が挙げられる。他の好ましい側面では、例えばポリマー織布(例えばポリエステル、ナイロン、ポリエーテルケトン、ポリアラミド等)、ガラス織布(例えばファイバーグラス繊維、グラスウール等)、炭素又はグラファイトファイバー繊維、防弾繊維、及び金属ファイバー繊維(例えばチタン、ステンレス鋼、ニッケル、白金、金等)等の多孔質織布様材料を格子として利用する。格子材料用として多種多様な多孔質可撓性基体が一般に当業者に認識され、最終用途のニーズ(例えば軽量及び/又は高強度、材料適合性等)に合わせて一般に選択することができる。
【0147】
格子材料と同様に、格子のインターカレーション用マトリックスとして使用する材料の種類は一般に材料の用途の性質により異なる。例えば、ガラス、セラミック等の無機材料をマトリックスとして利用することができる。あるいは、好ましい構成では、熱硬化性ポリマー(例えばポリエステル、エポキシ、ウレタン及びアクリル酸樹脂等)、熱可塑性ポリマー及び/又は熱可塑性エラストマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PFA等)を含むポリマーマトリックスを利用する。一般に、これらのマトリックス材料の任意のものをポリマーとして格子基体上に堆積し、ナノファイバーメッシュ全体にインターカレートさせる。次に、マトリックス材料をin situ硬化させる。あるいは、ポリマーマトリックスをモノマー溶液としてインターカレートさせ、in situ重合してマトリックスを「硬化」させてもよい。更に別の代替側面では、例えばナノファイバーマットの架橋について上述したような蒸気相又は溶媒堆積法を使用してナノファイバーを担持する多孔質基体上にポリマーマトリックスを堆積することもできる。全ての各種ポリマーと多種多様な用途におけるその有用性が当業者に容易に理解されよう。
【0148】
F.保護ナノファイバー表面
上記のように、ナノファイバー強化表面をもつ製品には各種の用途があり、例えば、埋込型医療装置(例えばステント)、ナノファイバー強化繊維、ナノファイバーアレイ、膜等が挙げられる。しかし、このようなナノファイバー装置はナノファイバー表面が比較的脆弱であることが多く、他の物体(例えば包装材料、皮膚等)と軽く接触しただけでもナノファイバー破損、マット化、及び剥離を生じる場合がある。従って、ナノファイバー表面を強化及び/又は保護する技術が望ましい。
【0149】
上記のように、ナノファイバーマットをナノファイバー接点で融着、被覆又は架橋することができる。基体上にin situ成長させるか又は堆積するかに関係なく、摩耗、破損等から保護することが有利な基本的に任意のナノファイバー集団を保護するために同様の技術を使用することができる。
【0150】
1側面において、本発明はナノファイバー(例えばナノワイヤー)の安定化方法を提供する。前記方法では、ナノファイバー集団を準備し、ナノファイバーにコーティングを形成する。コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。
【0151】
1分類の態様では、ナノファイバーを含む第1の材料はコーティングを含む第2の材料と異なる。第1の材料と第2の材料は場合により無関係であるか又は同類である。従って、所定態様において、第2の材料は第1の材料の酸化物である。例えば、ナノファイバーはシリコンを含み、コーティングはシリコン酸化物を含むことができ、ナノファイバーはチタンを含み、コーティングはチタン酸化物を含むことができる。一般に、ナノファイバーの組成に関係なく、コーティングは場合により酸化物(例えばシリコン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、タングステン、タンタル、イリジウム、又はルテニウム酸化物)を含む。例えば、チタンナノワイヤーを酸化させ、チタン酸化物コーティングを形成することができ、又は他のナノワイヤーにチタンを被覆した後に酸化させ、コーティングを形成することができる。例えばナノファイバーを結合する任意基体がRTOに必要な高温に適合可能である態様では、場合により合成中、又は合成及び/又は堆積後に急速熱酸化(RTO)技術によりナノファイバーをin situ焼結又は酸化させる。別の例として、上記のように、シリコンナノワイヤー(ナノファイバー)を(例えば約480℃で)合成した後に、ポリシリコンを(例えば約600℃で)被覆し、ナノワイヤーを太くして強化し、ワイヤー間の接合部でワイヤーを相互に融着させることができる。
【0152】
当然のことながら、コーティングは酸化物又はポリシリコンに限定されず、得られる被覆ナノファイバー集団に望ましい性質(例えば安定性又は望ましい電気化学的性質もしくは誘電性)を付与する基本的に任意材料が挙げられる。付加的な典型的コーティングとしてはポリマー、炭素、炭化物、及び窒化物が挙げられる。例えば、シリコンナノワイヤーを合成後、炭素と(例えばシリコンナノワイヤーの一部の変換から得られる)シリコン炭化物又は(例えば原子層堆積により)TaNを被覆するこができる。
【0153】
1側面において、ナノファイバー集団は基体の表面でナノファイバーを合成することにより提供される。典型的基体は本明細書に記載した通りであり、例えば多孔質、湾曲、織布及び/又は可撓性基体が挙げられるが、当然のことながら前記方法はこのような基体上で合成されるナノファイバー又はこのような基体に結合したナノファイバーに限定されない。ナノファイバーは予め形成し、基体に堆積することができる。基体は場合により非多孔質である。基体は場合により埋込型医療装置の表面の少なくとも一部を含むか又はこれを覆う。
【0154】
被覆ナノファイバー集団は元のナノファイバー集団のあらゆる望ましい表面性質(例えば物体との接触面積が最小であること、高度に多孔質の三次元構造、超疎水性、生物増殖性及び付着性が低い等)を維持することが好ましい。因みに、コーティングは望ましい表面特性を提供し、例えば、コーティングは容易に官能基化される材料(例えばシリコン酸化物)を含むことができる。1分類の態様において、前記方法はコーティングを化学結合部分、疎水性化学部分、(例えば細胞又は細菌増殖を抑制するための)薬剤等で官能基化する段階を含む。
【0155】
前記方法により形成されたナノファイバー(例えばナノワイヤー)集団は本発明の別の特徴である。本発明の1つの一般分類の態様はナノファイバーとナノファイバー上のコーティングを含むナノファイバー集団を提供し、前記コーティングは集団の隣接ナノファイバー間で連続している。このような集団を担持する装置(例えば埋込型医療装置)も本発明の特徴である。
【0156】
1関連側面では、多孔質(あるいは非多孔質)材料層によりナノファイバー表面を保護する。ナノファイバーを担持する基体はその表面に第1の多孔質材料層を配置することができる。例えば、ナノワイヤーを被覆した繊維、可撓性メッシュ、又は他の可撓性及び/又は多孔質基体は基体の表面に例えば熱シール又は超音波溶着することが可能な多孔質材料層で基体の片面又は両面を保護することができる。こうして蒸気及び/又は液体を基体に透過させながら、ナノファイバーを担持する基体を摩耗等の損傷から保護する。典型的な多孔質材料としては限定されないが、(例えば、Celgard(登録商標)ラミネート,Hoechst Celaneseで使用されているものと同等の)不織ポリプロピレン多孔質材料が挙げられる。他の溶着可能な材料としてはポリエチレン、ポリスチレン、アセテート、及び前処理Teflon(登録商標)薄層が挙げられる。保護層は場合により可撓性又は非可撓性である。
【0157】
基体は場合により2層の多孔質又は非多孔質材料層の間、例えば、2層の多孔質材料層の間、又は一方の側の多孔質層と他方の側の非多孔質層の間に挿入する。当然のことながら、保護層の選択は所望用途により変えることができる。例えば、可撓性繊維基体を所定用途では可撓性多孔質層間に挿入することもできるし、他の用途では多孔質層と非可撓性非多孔質層の間に挿入することもできる。上記のように、保護層を基体に熱シール又は溶着することもできる。同様に、縫合又は接着剤の使用により保護層を基体に結合することもできる。
【0158】
図14はナノファイバーを担持する基体の多孔質層による保護を模式的に示す。図14に示すように、ナノファイバー1403を担持する基体1402を準備する。基体は一般には可撓性多孔質基体であるが、必ずしもそうでなくてもよく、所定態様では、剛性及び/又は非多孔質基体である。第1の多孔質材料層1404を基体の第1の表面に配置し、第2の多孔質材料層1405を基体の第2の表面に配置し、製品1401を得る。多孔質材料層間に挿入することにより、ナノファイバー1403を摩耗、マット化、剥離、破損等から保護する。
【0159】
G.ナノファイバー合成
1側面において、本発明の多孔質基体は大量及び/又は高密度の長尺非分岐型ナノファイバー、特にナノワイヤーの合成用格子として有用である。シリコンナノワイヤーは例えば特に各種マクロ電子用途に望ましい材料である。このようなナノワイヤーは一般に、特に各種マクロ電子用に望ましい材料である。このようなナノワイヤーは一般に長尺(例えば少なくとも約40、50、又は60μmの長さ)、直線状、及び非分岐であることが必要とされる。しかし、現在の合成技術では大量のこのような長尺非分岐型ナノワイヤーは容易に得られない。
【0160】
現在、ナノワイヤーは一般に平坦ウェーハ基体上で成長させている。配向成長法よりも簡単で安価に実施される非配向ワイヤー成長法(例えばSiH4)を使用してナノワイヤーを製造すると、成長中のワイヤー間の衝突により成長が停止し、分岐型ワイヤー形成等を生じる。ナノワイヤー間の衝突は(例えば金コロイド粒子密度を低下させることにより)ナノワイヤー密度及び/又は長さを減らすことにより制限できるが、これらの方法では大量のナノワイヤー及び/又は長尺ナノワイヤーを廉価で簡単に製造できないことは明白である。例えば、平坦基体上の非配向成長では、ワイヤー1本当たりの衝突を10%に制限して長さ40μmのナノワイヤーを得るためには、理論的予測と実験結果の両者によると、金コロイド粒子密度を最大0.01個/μm2にすることができる。ナノワイヤーを大表面積多孔質基体又は湾曲基体上で成長させることにより、非配向成長技術でも長尺で直線状の非分岐型ナノワイヤーの収率を改善することができる。
【0161】
他の態様では、例えば上記半透膜及び他の製品を提供するためにナノファイバーを多孔質表面上で成長させるが、この場合にはナノファイバーは長尺、直線状、及び/又は非分岐型である必要はない。
【0162】
従って、1つの一般分類の態様はナノファイバーの製造方法を提供する。前記方法では、a)複数のアパーチャ、又はb)湾曲表面を含む基体を準備し、前者の場合、基体の総表面積は複数のアパーチャの内壁表面積を含む。基体上で複数のナノファイバーを合成し、得られたナノファイバーをa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に結合させる。湾曲表面は長尺非分岐型ナノファイバーの成長用に使用する場合には凸状が好ましいが、代替構成又は付加構成として凹状でもよい。湾曲表面は場合により基体の表面の有意部分(例えば円筒状ファイバー形基体)又はその表面全体(例えばマイクロスフェア又は同等の基体)にわたってゼロ以外の平均曲率半径をもつ。当然のことながら、多くの基体は多孔質及び/又は湾曲状の一方又は両方であると言うことができ、例えば、ファイバーマットは全体として多孔質基体と言うこともできるし、個々の成分ファイバーのレベルでは湾曲基体と言うこともできる。
【0163】
多数の代表的基体を上記に記載した。例えば、基体は複数の細孔を配置した固体基体、メッシュ、織布、又はファイバーマットを含むことができる。他の例として、基体は複数のマイクロスフェア又は他のマイクロ粒子もしくはナノ粒子(例えばガラス又は石英マイクロスフェア又はナノスフェア)、粉末(例えばカーボンブラック粉末)、複数のガラス又は石英ファイバー(例えばマイクロファイバー、ファイバーグラス、ガラス又は石英ファイバーフィルター)、あるいはフォーム(例えば網目状アルミニウム等のポリマー又は金属フォーム)を含むことができる。図15Aは網目状アルミニウムを示し、図15Bは網目状アルミニウム基体上に成長させたナノワイヤーを示す。図18Aは金触媒コロイド粒子を堆積したカーボンブラック粉末粒子の電子顕微鏡写真を示す。図18B及びCは図18Aのカーボンブラックに担持した金触媒コロイドから成長させたシリコンナノワイヤーの電子顕微鏡写真を示す。シリコンナノワイヤーのこの特定成長方法では、上記方法等のコロイド触媒VLS(蒸気−液体−固体)合成法を使用してカーボンブラック粉末に担持した触媒からナノワイヤーを直接成長させる。この合成技術によると、まずカーボンブラック粉末の表面にコロイド状触媒(例えば金)を堆積する。コロイド状触媒を含むカーボンブラックを次にカーボンブラック粒子の表面に結合したナノファイバー(例えばナノワイヤー)を製造する合成法に付す。一般に触媒は金属(例えば金、白金等)を含み、触媒コロイドがカーボンブラック粉末の表面に接着するように処理(例えば酸化)したカーボンブラック粉末の表面に溶液から堆積することができる。他の表面処理としては、従来詳細に記載されている方法(例えばポリリジン処理等)が挙げられる。触媒コロイドは多数の他の周知金属堆積技術の任意のもの(例えばスパッタリング等)により堆積してもよい。その後、約480℃の縦型管状反応器に重力又は(例えば不活性ガスを使用する)ガス注入によりコロイド含有カーボンブラック粒子とシラン(SiH4)等の反応ガスを供給することによりナノワイヤーを製造する。反応器は石英管を含み、カーボンブラック粒子を受容するための内側石英ウールプラグと、反応器温度をモニターするための熱電対を取付ける。触媒、反応ガス、及びパージガス(例えばアルゴン)を添加する入口と、反応器を通気するための出口も配置する。カーボンブラックに担持した金属コロイドからナノワイヤーの成長後、ナノワイヤーを場合により石英反応器で約500℃を上回る温度(例えば約500〜700℃)まで加熱し、カーボンブラック粉末を蒸発させると、遊離状態の孤立ナノワイヤーが残る。次にナノワイヤーを管から回収し、低品質のワイヤーを除去するためにフィルターにかけ、その後の操作及び加工(例えば燃料電池の膜電極アセンブリ等の機能的装置への組込みや他の触媒用途)に備える。
【0164】
基本的に他の任意多孔質又は湾曲基体も前記方法で利用することができ、好ましい基体はナノファイバーを合成するために使用される任意薬剤に対して化学的に適合可能であり(例えば低マグネシウム濃度)、合成温度に耐えることができ、(必要に応じて)触媒を分散することができ、(所望に応じて)基体からナノファイバーのクリーンな回収を助長する。所定態様(例えば上記の各種濾過用途)では、多孔質基体は好ましくは10μm未満、1μm未満、0.5μm未満、又は0.2μm未満の有効細孔径をもつ。他の態様(例えば長尺ナノワイヤーの合成)では、多孔質基体は所望のナノワイヤー長さに応じて好ましくは少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm又はそれ以上の有効細孔径をもつ(例えば、ナノワイヤー合成に使用されるメッシュのアパーチャの幅はナノワイヤーの所望長さの少なくとも約2倍とする)。
【0165】
ナノファイバーは基本的に任意種類のナノファイバー(例えばシリコンナノワイヤー、カーボンナノチューブ、又は上記他のナノファイバーの任意のもの)を含むことができる。所定態様では、ナノファイバーはナノワイヤーを含み、前記方法はa)の基体の総表面積の少なくとも一部又はb)の湾曲表面の少なくとも一部に金コロイドを堆積し、例えばVLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させることにより、複数のナノワイヤーを合成する段階を含む。
【0166】
前記方法は上記のように、場合により基体とこうして結合したナノファイバーをマトリックス材料で包囲又は少なくとも部分的に封入する段階と;基体上でナノファイバーを合成後に可溶性基体を溶解させる段階と;得られたナノファイバー上に隣接ナノファイバー間で連続するようにコーティングを形成する段階と;得られたナノファイバー上に多孔質材料層を配置する(及び場合により第2の多孔質材料層上に基体を配置し、ナノファイバーを担持する基体を挿入する)段階と;及び/又は(例えば化学部分又はナノ結晶を結合することにより)ナノファイバーを官能基化する段階を含む。
【0167】
図16は本発明の所定側面を例証する電子及び光学顕微鏡写真を示す。図16Eはシリコンナノワイヤーを被覆したグラスファイバー1本を示す。グラスファイバー基体はポリリジン溶液に20分間浸漬して金コロイドをその表面に吸着させることにより化学的に処理した。化学蒸着(CVD)法を使用して基体上に金コロイドからシリコンナノワイヤーを成長させ、適度な低温(バルク単結晶シリコンを成長させるために産業界で使用されている約900℃以上の高温よりも著しく低い480℃)のシラン反応により単結晶シリコンナノワイヤーを得た。石英ファイバーフィルターもシリコンナノワイヤーの成長用基体として使用されている。2種類の石英ファイバーフィルター(Millipore社のAQFA04700とF&J Specialty Products社のQF−200)を使用してシリコンナノワイヤーを成長させた。グラスファイバー基体上での成長について記載したように、石英ファイバーフィルター上で480℃にて90分間ナノワイヤーを成長させた(図16A−B)。フィルターから音波処理によりシリコンナノワイヤーを分離した(例えば得られた孤立ナノワイヤーを示す図16C−D参照)。
【0168】
メッシュ、マイクロファイバー、マイクロビーズ、又はマイクロ多孔質ガラスもしくは石英材料等の多孔質又は湾曲基体上でナノワイヤーを成長させると、平坦基体上での成長にまさる多数の利点が得られる。例えば、平坦ウェーハ表面に比較して、マイクロファイバー、マイクロビーズ又はマイクロ多孔質表面は基体の表面湾曲により、同一ワイヤー長さ及び触媒粒子密度でワイヤー1本当たりの衝突を少なくしてナノワイヤーを成長させることができる。従って、湾曲又は多孔質基体では平坦表面上よりも高収率で分岐のない直線状の長尺なワイヤーを得ることが可能である。マイクロ基体の総表面積は例えばマイクロ材料の直径と体積(例えばファイバー膜の厚みと細孔径、又はビーズの直径)を変えることにより容易に制御することができる。マイクロ基体からのナノワイヤーの収率が高いため、ナノワイヤー製造費用を有意に低減することができる。シラン法又は他の非配向ナノワイヤー成長法を使用してマイクロ基体上で分岐のない直線状のシリコンナノワイヤーを製造することができる。基体材料は可撓性及び/又は小寸法であるため、所望により、得られたナノワイヤーを合成後に音波処理により容易に分離することができる。更に、多孔質基体を利用する場合には、基体に堆積した実質的に全触媒粒子に反応ガスを容易に到達させることができる。
【0169】
ナノワイヤー成長のシミュレーションにより、ナノワイヤー成長用格子として湾曲基体により提供される利点を更に例証する。図17Aは直径5μmのファイバー上にナノワイヤー0.5本/μm2の密度で成長中のランダムに配向した長さ10μmのナノワイヤーのシミュレーションを示す。白の正方形はワイヤー間の衝突を表す。図17Bはナノワイヤー0.05本/μm2とナノワイヤー0.5本/μm2の2種類の異なるナノワイヤー密度でファイバーの半径の関数としてナノワイヤー1本当たりの衝突数を示したグラフである。ファイバーの半径が増加するにつれて(従って、ファイバーの表面の曲率が減少するにつれて)ワイヤー1本当たりの衝突数は平坦表面で観測される値に近づく。グラフから明らかなように、ワイヤー1本当たりの衝突数はワイヤー密度とファイバーの直径により変化する。平坦な表面よりも湾曲表面のほうが高密度で高品質のナノワイヤー(ワイヤー1本当たりの衝突数が少ない長尺非分岐型ナノワイヤー)を得ることができる。更に、ナノワイヤー密度(ワイヤー/面積)が一定のとき、ワイヤー1本当たりの衝突数はファイバー半径の減少と共に減少する。
【0170】
従って、前記方法により製造される長尺及び/又は非分岐型ナノファイバーの収率は場合により平坦基体上での合成により製造される同等ナノファイバーの収率よりも高い。1分類の態様において、長さが10μmを上回る(例えば20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る)得られるナノファイバーの収率は実質的に同一成長法を使用して同一表面積の平坦非多孔質基体(即ちアパーチャ又は細孔のない固体平坦基体)上で合成される同一長さのナノファイバーの収率よりも少なくとも10%高い。前記方法による収率は場合により平坦非多孔質基体上での成長による収率よりも少なくとも25%、50%、75%、又は100%高い。例えば、非配向合成技術(例えば金コロイドからのVLS成長)を使用してナノワイヤーを成長させると、実質的に同一成長法(例えば同一温度、コロイド堆積密度、成長時間、プロセスガス等)を使用して同等表面積の平坦非多孔質基体上で得られるよりも長いナノファイバーをa)又はb)の基体上に製造することができる。
【0171】
1分類の態様において、b)の湾曲基体はナノファイバーの平均横断面直径の1000倍未満、500倍未満、100倍未満、又は50倍未満の少なくとも1個の寸法(一般に横断面直径)をもつ。基体の前記少なくとも1個の寸法は場合によりナノファイバーの平均横断面直径の2倍を上回り、5倍を上回り、10倍を上回り、又は20倍を上回る。基体は場合によりナノファイバーと異なる材料を含む。
【0172】
上記例と同様に、場合によりナノファイバーの合成後に例えば基体の音波処理によりナノファイバーをa)の基体の表面又はb)の湾曲表面から分離し、孤立ナノファイバーの集団を製造する。上記のように、本方法は長尺ナノワイヤーを製造することができる。従って、1分類の態様において、孤立ナノファイバー集団におけるナノファイバーの少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%)は10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、又は60μmを上回る長さであり、ナノファイバーの最大50%(例えば最大40%、30%、20%、又は10%)は10μmの長さである。場合により、孤立ナノファイバー集団におけるナノファイバーの少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%は非分岐型であり、ナノファイバーの最大50%、40%、30%、20%、又は10%は分岐型である。ナノファイバーは基体に結合したときに同等の長さ及び分岐型/非分岐型分布をもつことができる。
【0173】
前記方法は場合によりその長さ、直径、分岐型/非分岐型百分率、ナノワイヤー1本当たり又はナノワイヤーの単位長さ当たりの他のナノワイヤーとの衝突数等の1種類以上をナノワイヤー1本毎又は平均もしくは分布として測定することにより、基体に結合したナノファイバー及び/又は基体から分離後のナノファイバーを特性決定する段階を含む。
【0174】
前記方法により製造された製品又はナノファイバー集団は本発明の別の特徴を形成する。従って、前記方法により製造された製品又はナノファイバー集団は本発明の別の特徴を形成する。従って、1典型的分類の態様は湾曲表面をもつ基体と、基体の湾曲表面の少なくとも一部に結合した複数のナノファイバー(例えばナノワイヤー)を含む製品を提供する。基体は例えば複数のマイクロスフェア又は1本以上のグラスファイバー、石英ファイバー、金属ファイバー、もしくはポリマーファイバーを含むことができる。本発明の製品を含む埋込型医療装置、例えば本発明の製品を装置の表面の少なくとも一部に結合して被覆した埋込型医療装置も本発明の特徴である。
【0175】
本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用し、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で援用すると個々に記載していると同等にみなす。以上、明確に理解できるように例証と実施例により本発明を多少詳細に記載したが、当然のことながら、特許請求の範囲内で所定の変更及び変形を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0176】
【特許文献1】米国特許出願第11/511,886号
【特許文献2】国際特許出願公開WO03/085700
【特許文献3】国際特許出願公開WO03/085701
【特許文献4】国際特許出願公開WO2004/032191
【特許文献5】米国特許第7,067,328号
【特許文献6】米国特許第6,878,871号
【特許文献7】米国特許第7,056,409号
【特許文献8】米国特許出願公開第US−2003−0089899−A1号
【特許文献9】米国特許第5,505,928号
【特許文献10】米国特許第6,225,198号
【特許文献11】米国特許第6,306,736号
【特許文献12】US−2002/0179434
【特許文献13】米国特許出願公開第20060159916号
【特許文献14】公開国際特許出願WO02/080280
【特許文献15】米国特許第6,962,823号
【特許文献16】米国特許出願公開第20050181195号
【非特許文献】
【0177】
【非特許文献1】Duanら,Nature 425:274−278(September 2003)
【非特許文献2】Grafeら,Nanowovens in Filtration−Fifth International Conference,Stuttgart,Germany,March 2003
【非特許文献3】“Low−temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays”,L.Greene,M.Law,J.Goldberger,F.Kim,J.Johnson,Y.Zhang,R.Saykally,P.Yang,Angew.Chem.Int.Ed.42,3031−3034,2003
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒材料を堆積したカーボンブラック粒子を含む複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備する段階と;
マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する段階を含むナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
ナノファイバーがナノワイヤーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のナノワイヤーを合成する段階が、
マイクロ粒子又はナノ粒子の総表面積の少なくとも一部に金コロイドを堆積する段階と;
VLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させる段階を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数のナノファイバーがIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のナノファイバーがシリコン又はシリコン酸化物から構成される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子の表面からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバー集団を製造する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分離段階がマイクロ粒子又はナノ粒子上でナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱し、ナノファイバーからマイクロ粒子又はナノ粒子を分離する段階を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱段階が約500℃を上回る温度までマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱する段階を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ナノワイヤーを堆積したカーボンブラック集団を含む組成物。
【請求項10】
組成物が導電性である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ナノワイヤーがシリコン又はシリコン酸化物から構成される請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の組成物を含む多孔質触媒担体。
【請求項13】
カーボンブラック粒子に堆積された1種類以上の触媒粒子を更に含む請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
1種類以上の触媒粒子が金属を含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
金属が金又は白金を含む請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
基体を準備する段階と;
基体の表面で複数のナノファイバーを合成する段階と;
ナノファイバーの合成後に基体を加熱してナノファイバーから基体を分離することにより、孤立ナノファイバーを製造する段階を含む孤立ナノファイバー集団の製造方法。
【請求項17】
前記加熱段階が約500℃を上回る温度まで基体を加熱する段階を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基体が炭素を含む請求項16に記載の方法。
【請求項1】
触媒材料を堆積したカーボンブラック粒子を含む複数のマイクロ粒子又はナノ粒子を準備する段階と;
マイクロ粒子又はナノ粒子上で触媒材料から複数のナノファイバーを合成する段階を含むナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
ナノファイバーがナノワイヤーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のナノワイヤーを合成する段階が、
マイクロ粒子又はナノ粒子の総表面積の少なくとも一部に金コロイドを堆積する段階と;
VLS合成技術により金コロイドからナノワイヤーを成長させる段階を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数のナノファイバーがIV族、II−VI族及びIII−V族半導体から選択される半導体材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のナノファイバーがシリコン又はシリコン酸化物から構成される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子の表面からナノファイバーを分離し、孤立ナノファイバー集団を製造する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分離段階がマイクロ粒子又はナノ粒子上でナノファイバーの合成後にマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱し、ナノファイバーからマイクロ粒子又はナノ粒子を分離する段階を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱段階が約500℃を上回る温度までマイクロ粒子又はナノ粒子を加熱する段階を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ナノワイヤーを堆積したカーボンブラック集団を含む組成物。
【請求項10】
組成物が導電性である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ナノワイヤーがシリコン又はシリコン酸化物から構成される請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の組成物を含む多孔質触媒担体。
【請求項13】
カーボンブラック粒子に堆積された1種類以上の触媒粒子を更に含む請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
1種類以上の触媒粒子が金属を含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
金属が金又は白金を含む請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
基体を準備する段階と;
基体の表面で複数のナノファイバーを合成する段階と;
ナノファイバーの合成後に基体を加熱してナノファイバーから基体を分離することにより、孤立ナノファイバーを製造する段階を含む孤立ナノファイバー集団の製造方法。
【請求項17】
前記加熱段階が約500℃を上回る温度まで基体を加熱する段階を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基体が炭素を含む請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【公表番号】特表2010−511794(P2010−511794A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526640(P2009−526640)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/018605
【国際公開番号】WO2008/027265
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/018605
【国際公開番号】WO2008/027265
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】
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