説明

ナノファイバー製造方法

【課題】
1つのノズルからの紡(吐)出量を大幅に大きく増やして大量生産するナノファイバーの製造方法を提供しようとするものである。
【解決手段】
高分子材料を溶媒により溶融し加圧して金属製の紡出ノズルから紡出する紡出ノズルを設け、金属球と紡出ノズル開口との間に高電圧を印加し、金属球と紡出ノズル開口との経路に直交するように高速気流を噴出する高速気流噴射ノズルを設け、紡出ノズルから紡出するナノファイバーを高速気流噴射ノズルにより飛散させるナノファイバー生成部を構成し、ナノファイバー生成部からの飛散するナノファイバーを捕集するナノファイバー捕集部を構成し、ナノファイバー生成部の紡出ノズル開口からの金属球に向かって紡出されるナノファイバーを、高速気流噴射ノズルの高速気流によって進路を変更してナノファイバー捕集部に向けて飛散させて、捕集部の捕集面で捕集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバー製造方法に関し、特に、ナノファイバーを大量生産することができるナノファイバー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、一般的に直径が1ミクロン(=1,000nm)以下の太さの繊維であると定義されるナノファイバーが開発され、ナノファイバーの製造法としては、ESD(Electro−Spray Deposition)法、或いは、エレクトロ・スピンニング法と呼ばれる技法が最も注目され、その技術が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
このESD法によるナノファイバーの製造は、先ず溶剤で溶解し、または溶融した各種生体高分子やポリマー(以下、単に「高分子」ということもある。)溶液をシリンジに充填し、シリンジに装着されているニードル型電極と、ナノ繊維を堆積させるコレクター電極との間に、高圧直流電源から数kV〜数十kVの直流高電圧を印加して、ニードル型電極とコレクター電極との間に強い電界場を発生させる。
この環境下で、ニードル型電極から紡糸溶液をコレクター電極に向けて放出すると、高分子を溶解していた溶剤等は電界場中で瞬間的に蒸発し、高分子は凝固しながらクーロン力で延伸され、ナノオーダーのファイバーが、室温、大気圧下というおだやかな条件で形成される。
【0003】
このとき、高分子溶液の場合、スプレーがノズルから直進するストレートジェットと呼ばれる部分とスプレーが広がるブレイクポイントと呼ばれる部分が存在するが、ストレートジェットが長いほど繊維構造が形成されやすい。繊維構造が形成されるときはブレイクポイントから液滴が広がるのではなく、繊維が螺旋を描くように基板上にデポジットされる報告もなされている。こうして形成されたナノファイバーは、コレクター電極上にランダムに繊維が交錯した状態で堆積され、不織布状のウェブが得られる。
エレクトロスプレーの際のスプレー条件を変えることにより、ナノ〜ミクロンスケールのファイバーやナノ粒子が形成される。さらに、紡糸溶液も高分子(合成高分子ポリマー)担体溶液に限られず、高分子で長分子配列を有する生体高分子、有機高分子、長分子配列が可能な無機物質などの材料のブレンド溶液も用いることができるため、マテリアルのハイブリッド化はもちろんのこと、ナノパーティクル/ナノファイバーコンポジットのように薄膜の積層構造制御も可能となる。
【0004】
ナノファイバーにおいては、ナノ構造による特異な機能発現が期待でき、例えば、ナノファイバーは、同一体積での表面積が通常の繊維に比べ非常に大きいことから、従来の繊維が持つポリマー固有の性質の他に、吸着特性や接着特性などの新機能が発現し、従来にない新素材の開発が期待できる。警察官、消防士、医師、看護師が着用する多機能な特殊な防護服の研究が始められており、軍需用途は、従来より軽量で従来にない機能を持つ軍服、ナノメートル単位の集まりで、異なる機能をもつ積層新素材の開発が進んでいる。さらに、ナノファイバーで作った高性能エアフィルターがエンジンフィルターに実用化され、また、ナノファイバーを応用したバイオケミカルハザード防御用超軽量高機能防御服やナノファイバーを培地にした再生医療の開発も活発に行なわれている。
そのほか、可視光に対して透明であること、ナノオーダーで空孔サイズを制御できること、高度な分子組織化が可能なこと、生体がナノファイバーを異物として感じず生体適合性が良いこと等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−249966
【特許文献2】特開2004−68161
【特許文献3】特開2008−274487
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ESD法でのナノファイバーの製造方法或いは装置は、1本のノズルからのスプレー量が非常に少ないため、大量生産に向かないという欠点がある。ESD法では、化合物やスプレー条件によって異なるが、通常1本のノズルからのスプレー速度は、約毎分数μρ1程度であるので、大量生産をする場合には、ノズルを多数配置して、この多数のノズルから静電噴霧するという方法が採用されている。このような多数のノズルを使用するESDのナノファイバーの製造方法は、ノズルの数が多数必要とすることから、品質的に不十分であり、保守も困難であり、製造コストが高いものであった。
本発明の第1の課題は、このような問題点に鑑みてなされたもので、1つのノズルからの紡(吐)出量を大幅に大きく増やして大量生産するナノファイバーの製造方法を提供しようとするものである。
また、本発明の第2の課題は、ナノファイバーの生成部と捕集部を分離することができ、装置が簡単で、保守が容易であり、ランニングコストの安価なナノファイバーの製造方法を提供しようとするものである。
更に、本発明の第3の課題は、従来、ポリマー等を溶融して供給する際に引火性有機溶媒を使用するが、この溶媒による爆発や火災の危険性があったが、この有機溶媒を使用することないナノファイバーの製造方法、或いは、有機溶媒を使用するにしてもノズル噴出した直後に希釈するナノファイバーの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ナノファイバー製造方法において、長分子配列を有する高分子材料を溶媒により溶融し加圧して金属製の紡出ノズルから紡出する紡出ノズルを設け、該紡出ノズルと該紡出ノズル開口方向に対向して金属球とを所定間隔を隔てて配置し、前記金属球と前記紡出ノズル開口との間に高電圧を印加し、該金属球と紡出ノズル開口との経路に直交するように高速気流を噴出する高速気流噴射ノズルを設け、該紡出ノズルから紡出するナノファイバーを前記高速気流噴射ノズルにより飛散させるナノファイバー生成部を構成し、該ナノファイバー生成部からの飛散するナノファイバーを捕集するナノファイバー捕集部を構成し、前記ナノファイバー捕集部は前記ナノファイバー生成部から分離して所定距離を隔てて配置し、ナノファイバー生成部の紡出ノズル開口からの金属球に向かって紡出されるナノファイバーを、高速気流噴射ノズルの高速気流によって進路を変更してナノファイバー捕集部に向けて飛散させて、捕集部の捕集面で捕集するようにしたことを特徴する。
請求項2の発明は、請求項1のナノファイバー製造方法において、前記ナノファイバー捕集部はドラム状又は板状であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1のナノファイバー製造方法において、前記高速気流噴射ノズルからの気流を包含するように、該気流速度よりは遅い気流を広範囲に噴射する二次高速気流噴射ノズルを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1及び2のナノファイバー製造方法によれば、1つのノズルからのナノファイバーを紡出量を大幅に増やして大量生産が可能となり、ナノファイバーの生成部と捕集部を分離することができ、装置が簡単で、保守が容易であり、温度・湿度の管理が簡単でランニングコストの安価なナノファイバーの製造方法である。
請求項3のナノファイバー製造方法によれば、二次高速気流噴射ノズルの大量の気流で引火性有機溶媒を希釈することができるので爆発、火災の危険性がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例のナノファイバー製造方法の概念概略図、
【図2】本発明の金属球と紡出ノズルとの電気力線を説明する説明図、
【図3】図3(a)は図1での一次高速気流がマイナーループが生じることを説明する説明図、図3(b)は二次高速気流がマイナーループを解消することを説明する説明図、
【図4】実施例1で製造したポリウレタン(PU)のナノファイバーの5千倍率の顕微鏡写真の図、
【図5】実施例1で製造したポリウレタン(PU)のナノファイバーの千倍率の顕微鏡写真の図、
【図6】実施例2で製造したポリフッ化ビニリデン(PVDF)の5千倍率のナノファイバーの顕微鏡写真の図、
【図7】実施例2で製造したポリフッ化ビニリデン(PVDF)のナノファイバーの千万倍率の顕微鏡写真の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のナノファイバー製造方法の好適な実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1のナノファイバー製造方法を説明するが、図1の概略を示した概念説明図に示すように、基本的にはESD(Electro−Spray Deposition)と高速噴出気流(ジェット)を組み合わせたジェットESD法を採用したものであり、ナノファイバー生成部Aとナノファイバー捕集部Bとから構成されている。
本発明の長分子配列を有する高分子材料としては、たんぱく質などの生体高分子溶液・有機高分子溶液あるいはポリマー溶液などであるが、本実施例1のナノファイバー製造装置(製造方法)では高分子材料としてポリウレタン(PU)を用いている。
図1の材料容器のシリンジ1には、材料であるポリウレタンを引火性有機溶媒であるDMAc(ジメチルアセトアミド)で溶かして液状した高分子溶液M1を収納している。
このシリンジ1内の高分子溶液M1はプランジャー(吐出手段)11で押し出しの圧力を受けている。押し出しの圧力は、例えば、ステッピング・モータとネジ送り機構(図示せず)によって、所定量を押し出すように構成されてもよい。押し出し圧力を受けた高分子溶液M1は、シリンジ1内で内圧が増加し、配管12によって金属製の紡出ノズル部2に導入し、紡出ノズル部2には紡出ノズル21の先端の開口211から紡出される。ここで、高分子溶液M1を紡出する速度を調整する前述の調整手段(ステッピング・モータとネジ送り機構等)によって、適切な吐出速度に調整することが可能となる。
【0012】
ところで、ESD法の原理は、ポリウレタン等の長分子配列を有する高分子材料が引火性有機溶媒で膨潤状態になってバラバラ状態に存在し、この状態で紡出ノズルから紡出されると、比表面積が大きいため溶媒が急速に蒸発して、横方向に縮み高分子の長手方向に整列していく。そして、溶媒の蒸発とそれに伴うクーロン力の増加により高分子が伸びることになる。これを繰り返すことにより徐々に伸長してナノファイバーに成長していくのである。高分子が伸長するにしたがってバラバラであった高分子は絡み合いながら整列していくものと考えられる。なお、材料が低分子の場合は、分子長自体が短いため、絡み合うことがなく、ナノ粒子が生成される。
したがって、高分子溶液M1の吐出速度の調整によって、過剰な速度で形成されるウェットなデポジットではなく、乾燥したデポジットを得ることが可能となる。即ち、ウェットなデポジットが生じないような、限界の吐出速度に調整することが必要である。また、高分子溶液M1は図1のようなシリンジ1ではなく、材料タンク、キャピラリー、箱形容器のいずれの形状でも良いことは勿論である。
【0013】
紡出ノズル21と紡出ノズルの開口211の開口方向に対向して直径が約3cm程度の電極部3を形成する金属製の金属球31と配置し、開口211と金属球31の最短表面距離とは所定間隔を隔てて設置される。
そして、紡出ノズル21も導電性の金属製として、この紡出ノズル21と前記金属球31とには高電圧電源41が印加され、金属球31には高電圧電源41のマイナス側の電圧がリード線を介して供給され、プラス側はリード線を介して接地Gされている。
高電圧電源41により−30KV程度の高電圧を印加することで、紡出ノズル21を経由して高分子溶液M1にはプラスの電圧が印加され、紡出される高分子溶液M1中の高分子はプラスに帯電される。なお、このプラス及びマイナスは上記の実施例1に限定されることはなく、高分子材料に電荷を付与すればよく、逆に、高分子溶液M1に与える電圧の極性はマイナスであってもよい。
【0014】
上記プラス側の電極を金属球31としたのは、図2に示すように、電気力線Eが紡出ノズル31の先端部の開口211に最大に集中するからであり、帯電した高分子溶液中の高分子材料M1は金属球31に向かって直線的に飛び出すことになる。 したがって、金属球31の直径は、最も効率よく電気力線Eが紡出ノズル21に集中するようにすればよく、前記の紡出ノズル21と金属球31の間隔も、高圧電源の電圧等によっても異なるが、効率良く帯電するような距離にすればよい。ここで、電荷を有するナノファイバーが紡出ノズル21から浮遊する途中で静電誘導され、紡出ノズル21の開口211の+電荷の量が中和されていくので、付与する電荷が不十分な場合は液滴のまま浮遊することになるが、後述する高速気流噴射ノズル5(図1参照)によって、紡出するナノファイバーの進路を変更して紡出ノズル21と金属球31の間から除去することで、両者が依然としてコンデンサー結合を保つことができ、かつ、生産量が増大することができ、これが本発明の重要な特徴の1つでもある。
また、本実施例1では、金属球31と紡出ノズル21の間を高電圧電源41で印加し、紡出ノズル21を接地Gとしているので、金属球31の印加によって紡出ノズル21(接地G)からの電荷が静電誘導されナノファイバーの高分子に電荷が供給されているが、基本的には金属球31は静電誘導しているだけで、電流は接地側から供給され消費電力は零である。このことも本発明の重要な特徴の1つで、紡出ノズル21のノズルユニットを複数で、いくら数を並列にしても小型の高電圧電源だけで十分である。
【0015】
次に、前記金属球31と紡出ノズル開口211との経路に、この経路に直交するように高速気流を噴出する一次高速気流噴射ノズル部5が配置される。この一次高速気流噴射ノズル部5の噴射ノズル51からの一次高速気流Xは、紡出ノズル開口211において低気圧を発生させ、高分子溶液M1を開口211から吸い上げる力を発生させる。したがって、一次高速気流Xは金属球31と紡出ノズル開口211とを結ぶ線上(経路)である必要がある。なお、噴射ノズル51の配置位置が重要となるので、噴射ノズル51の位置調整手段52が設けられている。
また、この一次高速気流Xは、本実施例1ではドライヤーによって湿度30%以下に乾燥させた空気で、かつ、ナノファイバーの状態が一定に維持されるように温度が一定に保たれ、風速が200m/sec以上として、ナノファイバーのアスペクト比が大きい状態にすることで溶媒の蒸発を促進させ、その結果、高分子材料が硬化するが、硬化するまでにクーロン力で引き伸ばすことができなくなるまで最大限伸びることになる。
したがって、ノズル開口211から捕集部Bの捕集面までの距離もナノファイバーが伸びきってナノ単位の径しるための距離が必要であり、実施例1では装置内の温度等にもよるが、その距離は1m程度である。
また、本発明の重要な特徴の1つは、金属球31からのクーロン力と、前記一次高速気流噴射ノズル部5と噴射ノズル51より開口211で発生する低気圧で電荷を有する高分子を直線的に飛び出させ、ナノファイバー生成に必要な一定温度の乾燥した200m/sec以上の高速気流Xを付与することである。
以上の説明から判るように、本発明のナノファイバーの製造方法の特徴は、1つの紡出ノズル21から生成されるナノファイバーは、生成される量に拘わらず、1本のナノファイバーである。ただし、高速空気で移送される際には、ランダムな綾振り作用により、捕集面には不織布状に集積される。
【0016】
ところで、上述したように、ナノファイバーは基本的に一次高速気流噴射ノズル部5の噴射ノズル51により生成されるが、図3(a)に示すように、この一次高速気流Xは渦状に逆流するマイナーループ気流X1が発生し、生成されたナノファイバーの一部がクーロン力により金属球31に付着して捕集機能が著しく損なうことが判った。
また、生産力を多くするために、紡出ノズル21の数を多くすると、一次高速気流Xで後述するナノファイバー捕集部Bに届く距離では、溶媒の乾燥が不完全でナノファイバー捕集部Bで溶媒の凝集が発生し、ナノファイバーを再度溶解することがある。
更に、本実施例1の場合にはDMAcで高分子であるポリウレタンを溶かして溶液を使用しているが、一次高速気流Xだけの気流量では、引火性有機溶媒であるDMAc等を希釈するには不十分となる場合に、爆発、火災の危険性がある。
そこで、本実施例1では、図3(b)に示すように、噴射ノズル51からの一次高速気流Xを包含するように、この一次高速気流の速度よりは遅い気流を広範囲に噴射する二次高速気流Yを噴射する噴射ノズル6を設け、大量の空気を供給して、前述したマイナーループX1を直進する気流X2とするようにして、上記の問題点を解決している。なお、この二次高速気流Yは大量でありナノファイバーの生成には関与しないので、本実施例1では外気を用いている。
以上がナノファイバーの生成部で、シリンジ(材料容器)1、紡出ノズル部2、金属球31、高電圧電源41、一次高速気流噴射ノズル部5、二次高速気流の噴射ノズル6等から構成される、これを生成部装置枠体Cにまとめてユニット化している。
【0017】
次に、ナノファイバーの捕集部Bを説明する。
ナノファイバー捕集部Bは、図1に示すように、アルミ箔等の金属板71で表面を覆った回転ドラム7を設けて金属板71を接地Gし、回転ドラム7の一次高速気流Xの上流側を前方として、その前方上下側に一対の電極81,82を配置し、第2の高電圧電源42のプラス側を接続し、高電圧電源42のマイナス側を接地して回転ドラム7の金属(電極)71と上下電極81,82との間でコンデンサー結合を構成して電界を発生させ、回転ドラム7の前方の上流に電荷を発生させる。また、図示しないが、捕集部Bの捕集部装置枠体Dの内部を負圧にして、回転ドラム7の左右、上下から常に溶媒を希釈した気流をスクラバに回収して、DMAc等の引火性有機溶媒を装置の外部に漏れないようにしている。なお、この場合も、静電誘導で電荷を発生しているため、高電圧電源の消費電力は基本的には零であり、小型の高電圧電源だけで十分である。
このように、ナノファイバー捕集部Bは、回転ドラム7、金属板71、電極81,82、高電圧電源42から構成されるが、従来の捕集網とシートの摩擦と静電気によってシート走行が困難になることを防ぎ、ナノファイバー捕集部Bで捕集するナノファイバーが厚くなっても対処可能となり、捕集したナノファイバーの電荷がスムーズに放電させることができ、ナノファイバーの電荷によって、浮遊している電荷を除き、捕集効率の低下を防ぐことができる。
【0018】
以上説明した実施例1のナノファイバー製造方法により、図4、図5の写真に示すような、ナノファイバーが得られた。
この場合の製造条件は次のようなものである。
[実施例1のジェットESD法の条件]
基材:アルミ箔
材料:ポリウレタンペレット
溶媒:DMAc(ジメチルアセトアミド)
ナノファイバー生成部電圧:−30KV
一次高速気流の圧力:0.3MPa
二次高速気流の圧力:0.1MPa
紡出量(吐出量):2mL/min
ノズル開口から捕集面までの距離:1m
ナノファイバー捕集部電圧:20KV
上記の図4、図5は、実施例1(図1で上記の条件)で製造したポリウレタンのナノファイバーの5千倍率の図4、千倍率の顕微鏡写真であるが、図1の紡出ノズル31からは1本のナノファイバーだけしか紡出されないが、ランダムな綾振り作用等によって、特に、図5ではナノファイバーが不織布(ウェブ)状に積層する状態が判る。
【0019】
ところで、実施例1では、ポリウレタン(PU)の溶剤としては、DMAcの他にジメチルホルムアミド(DMF)でも同様の結果が得られる。
また、他の高分子と溶媒との組み合わせとしては、ポリビニールアルコール(polyvinyl alcohol, PVA)と水、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride; PVDF)やポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile,PAN) やポリエーテルサルフォン(Poly Ether Sulphone、PES)とジメチルアセトアミド(DMAc)、ナイロン(Nylon)と蟻酸、キトサンと酢酸もしくはクエン酸等の弱酸、アクリル(polymethyl methacrylate, PMMA)とメタノール、ポリ乳酸とテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran,THF)もしくはジメチルホルムアミド(DMF)の組み合わせナノファイバーの製造として可能である。
【実施例2】
【0020】
前記の組み合わせうち、高分子がポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride; PVDF)で溶媒をDMAc(ジメチルアセトアミド)とし、実施例1の製造装置で製造条件を次のようにして製造したポリフッ化ビニリデンのナノファイバーの5千倍率の顕微鏡写真を図6に、千倍率の顕微鏡写真を図7に示す。
[実施例2のジェットESD法の条件]
基材:アルミ箔
材料:ポリフッ化ビニリデンペレット
溶媒:DMAc(ジメチルアセトアミド)
ナノファイバー生成部電圧:−30KV
一次高速気流の圧力:0.3MPa
二次高速気流の圧力:0.1MPa
紡出量(吐出量):2mL/min
ノズル開口から捕集面までの距離:1m
ナノファイバー捕集部電圧:20KV
この図6、図7においても、1本のナノファイバーだけしか紡出されないが、ランダムな綾振り作用等によって、特に、図7ではナノファイバーが不織布(ウェブ)状に積層する状態が判る。
【0021】
以上説明したように、本発明の実施例1及び実施例2のナノファイバー製造方法は、静電誘導のESD法と高速気流との組み合わせの構成により、次のような作用・効果を有するものである。
1.紡出ノズル1本当たりの生産量は、従来の高速気流を用いない紡出ノズルの1000本から3000本相当の生産能力を有する。
2.ナノファイバー生成部と捕集部とが分離可能であり、装置が簡単で、メンテナンスも簡単となり、拡張性も高い。
3.温度・湿度の管理が簡単で、ナノファイバー繊維径の変動を30%以内とすることが可能であり、ランニングコストが極めて安価である。
4.二次高速気流噴射ノズルの大量の気流で引火性有機溶媒を2000ppm以下に希釈することができるので爆発、火災の危険性がない。
5.捕集部8の装置内部を負圧にして、希釈した引火性有機溶媒をスクラバに回収し外部に漏れないようにしている。
6.ナノファイバー生成部及び捕集部では、静電誘導を応用することで、高電圧電源の消費電力は極めて少なくなる。
【0022】
以上のように、本発明の実施例では、1つのノズルからのナノファイバーを紡出量を大幅に増やして大量生産が可能となり、ナノファイバーの生成部と捕集部を分離することができ、装置が簡単で、保守が容易であり、温度・湿度の管理が簡単でランニングコストの安価なナノファイバーの製造方法である。
なお、本発明の特徴を損うものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。例えば、ナノファイバー捕集部を回転ドラムとしたが、板状の組み合わせやベルト状でも良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
A・・ナノファイバー生成部、 B・・ナノファイバー捕集部、
C・・生成部装置枠体、D・・捕集部装置枠体
E・・電気力線、G・・接地、
M1・・高分子溶液、
X・・ (一次)高速気流、Y・・二次高速気流
1・・シリンジ(材料容器)、11・・プランジャー(吐出手段)、
12・・ 配管、
2・・ 紡出ノズル部、21・・紡出ノズル 、211開口
3・・電極部、31・・金属球、
41・・高電圧電源、
5・・(一次)高速気流噴射ノズル部、51・・噴射ノズル、
52・・位置調整手段、
6・・二次高速気流の噴射ノズル、
7・・回転ドラム、71・・金属板
81,82・・電極、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長分子配列を有する高分子材料を溶媒により溶融し加圧して金属製の紡出ノズルから紡出する紡出ノズルを設け、該紡出ノズルと該紡出ノズル開口方向に対向して金属球とを所定間隔を隔てて配置し、前記金属球と前記紡出ノズル開口との間に高電圧を印加し、該金属球と紡出ノズル開口との経路に直交するように高速気流を噴出する高速気流噴射ノズルを設け、該紡出ノズルから紡出するナノファイバーを前記高速気流噴射ノズルにより飛散させるナノファイバー生成部を構成し、
該ナノファイバー生成部からの飛散するナノファイバーを捕集するナノファイバー捕集部を構成し、
前記ナノファイバー捕集部は前記ナノファイバー生成部から分離して所定距離を隔てて配置し、ナノファイバー生成部の紡出ノズル開口からの金属球に向かって紡出されるナノファイバーを、高速気流噴射ノズルの高速気流によって進路を変更し、ナノファイバー捕集部に向けて飛散させ、捕集部の捕集面で捕集するようにしてナノファイバーを製造することを特徴とするナノファイバー製造方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載のナノファイバー製造方法において、前記ナノファイバー捕集部はドラム状又は板状であることを特徴とするナノファイバー製造方法。
【請求項3】
前記請求項1に記載のナノファイバー製造方法において、前記高速気流噴射ノズルからの気流を包含するように、該気流速度よりは遅い気流を広範囲に噴射する二次高速気流噴射ノズルを設けたことを特徴とするナノファイバー製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−127234(P2011−127234A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284595(P2009−284595)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(509345567)ナノファクトリージャパン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】