説明

ナノファイバ製造装置

【課題】ナノファイバ製造装置において、連続してナノファイバを堆積する。
【解決手段】ナノファイバ301の原料となる原料液300を空間中に噴射する噴射手段101と、原料液300に電荷を付与して帯電させる第一電源102と、原料液300が静電爆発することにより製造されたナノファイバ301を収集する長尺の収集電極103と、収集電極103を所定の電位とする第二電源104と、収集電極103を供給する供給手段105と、収集電極103を回収する回収手段106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノファイバの製造装置に関し、特に、製造されたナノファイバの収集技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質などから成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状(繊維状)物質(ナノファイバ)を製造する方法として、エレクトロスピニング(電荷誘導紡糸)法が知られている。
【0003】
このエレクトロスピニング法とは、溶媒中に高分子物質などを分散または溶解させた原料液を空間中に噴射(吐出)させるとともに、原料液に電荷を付与して帯電させ、空間を飛行中の原料液を静電爆発させることにより、ナノファイバを得る方法である。
【0004】
より具体的には、空間を飛行中の原料液の粒から溶媒が蒸発するに伴い原料液の体積は減少していくが、原料液に付与された電荷は維持されるため、結果として原料液の粒の電荷密度が上昇する。そして、溶媒は、継続して蒸発するため、原料液の粒の電荷密度がさらに高まり、原料液の粒の中に発生する反発方向のクーロン力が原料液の表面張力より勝った時点で高分子溶液が爆発的に線状に延伸される現象(静電爆発)が生じる。この静電爆発が、空間において次々とねずみ算式に発生することで、直径がサブミクロンの高分子から成るナノファイバが製造される。
【0005】
以上のようにして製造されるナノファイバは、空間中に広がって分布しているため、製造されたナノファイバを収集する技術が必要になる。特に、製造されたナノファイバを紡糸(撚糸)してナノファイバ製の糸を製造する場合、広がったナノファイバを纏める技術が種々提案されている。
【0006】
例えば、静電爆発により製造されたナノファイバが広がって落下した地点から一定の線速度でナノファイバを紡ぎ出し、ナノファイバからなる連続フィラメント(糸)を製造できるようにしたものが特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特表2006−507428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるような方法では、ナノファイバの原料液を吐出するノズルが糸を紡ぎ出す方向に並べられており、当該ノズルから出たナノファイバが各ノズルの下方近傍に集中して落下してしまうこととなる。その為、糸を紡ぎ出す部分から遠いノズルから出たナノファイバの上に糸を紡ぎ出す部分に近いノズルから出たナノファイバが重なって堆積してしまい、紡ぎ出された連続フィラメントの太さ等に差やバラツキが出来るという問題を有していた。
【0008】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ナノファイバで構成される長尺の製品(以下「ナノファイバ製品」と記す。)を安定した品質で製造することのできるナノファイバ製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明に係るナノファイバ製造装置は、ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射手段と、前記原料液に電荷を付与して帯電させる第一電源と、前記原料液が静電爆発することにより製造されたナノファイバを収集する長尺の収集電極と、前記収集電極を所定の電位とする第二電源と、前記収集電極を供給する供給手段と、前記収集電極を回収する回収手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
これによれば、製造されたナノファイバが長尺の収集電極に収集され、ナノファイバを収集した収集電極自体がナノファイバごと回収されるため、安定した状態でナノファイバを提供することが可能となる。
【0011】
また、前記収集電極は、導電性を有さない長尺の収集基体を備え、前記ナノファイバ製造装置はさらに、導電性を有する液体からなる導電液を前記収集基体に連続的に担持させる担持手段を備えることが好ましい。
【0012】
これによれば、収集基体が導電性を備えていなくても、収集基体に導電液を担持させることで収集電極とすることができ、材質の導電性を問うことなく収集基体の表面にナノファイバを堆積させることが可能となる。
【0013】
さらに、ナノファイバを収集した後の前記収集基体の一部から導電液を除去する乾燥手段を備えることが好ましい。
【0014】
これによれば、任意の位置で収集電極の導電性を消失させることができるため、回収手段の絶縁対策が不要、または、簡易的なものとすることができる。また、収集したナノファイバを乾燥させる機能も併有することが可能となる。
【0015】
また、前記噴射手段は、原料液が噴射される複数の噴射口を環状に備え、前記収集電極は、前記噴射口に囲まれるように配置される、または、前記噴射手段は、原料液が噴射される噴射口と、前記噴射口を所定の軸の周りで回転させる回転手段とを備え、前記収集電極は、前記噴射口の回転円内に挿通するように配置されることが好ましい。
【0016】
これによれば、収集電極の周囲全体にわたってナノファイバが収集されるため、一度に多量のナノファイバを収集することができ、生産効率を向上させることができる。また、多様なナノファイバ製品に供することのできるナノファイバ製造装置を提供することが可能となる。
【0017】
一方、上記目的を達成するために、本願発明に係るナノファイバ製造方法は、ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射ステップと、前記原料液に電荷を付与して帯電させる帯電ステップと、導電性を有さない長尺の収集基体に導電性を有する液体からなる導電液を連続的に担持させる担持ステップと、前記導電液に電位を付与する電位付与ステップと、前記収集基体を供給する供給ステップと、ナノファイバを収集した前記収集基体を回収する回収手段とを含むことを特徴とする。
【0018】
これによれば、上記ナノファイバの製造装置と同様の作用、効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、長尺のナノファイバ製品の製造に供するナノファイバを安定した状態で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係るナノファイバ製造装置について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本願発明に係るナノファイバ製造装置を模式的に示す図である。同図は、噴射手段101が斜視図で示され、残る要素は模式図で示されている。
【0022】
図2は、ナノファイバ製造装置を模式的に示す図である。同図は、噴射手段101が断面図で示され、残る要素は模式図で示されている。
【0023】
これらの図に示すようにナノファイバ製造装置100は、噴射手段101と、第一電源102と、収集電極103と、第二電源104と、供給手段105と、回収手段106とを備えている。さらに、ナノファイバ製造装置100は、担持手段201と、乾燥手段202と、絶縁管203と、原料液供給手段204とを備えている。なお、同図中、ナノファイバを製造するための原料液については原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧である。
【0024】
噴射手段101は、ナノファイバ301の原料となる原料液300を空間中に噴射する装置であり、噴射手段101は、回転体113と、回転手段114と、絶縁基体115とを備えている。
【0025】
回転体113は、原料液300を蓄え回転することにより遠心力を原料液300に与え、遠心力により原料液を空間に噴射することができるものであり、内部に供給される原料液300を貯留する、大径円筒の容器部と、当該容器部に同軸上に接続される小径円筒のシャフト部とを備えている。また、回転体113の先端面には、噴射口112を備えたノズル111が直径上軸対象に2個備えられている。ノズル111は、容器部内部と連通しており、また、回転軸に向かう方向に若干傾いた状態で取り付けられている。これにより、回転体113の回転軸に向かって原料液300を噴射することができるものとなっている。また、回転体113全体は金属などの導電体で構成されており、回転体113を所定の電位に維持することにより、内部に貯留される原料液300に電荷を付与することができるものとなっている。
【0026】
回転手段114は、回転体113を回転させるための装置であり、回転体113を回転させるための装置であり、モータ116と、プーリ117と、ベルト118とを備えている。
【0027】
絶縁基体115は、回転体113を回転自在に保持すると共に、回転体113を所定の場所に絶縁状態で取り付けるための部材であり、回転体113の小径円筒が挿通される厚さ方向に貫通する貫通孔と、当該貫通孔に取り付けられ回転体113の小径円筒外周面を保持するベアリング119を備えている。また、モータ116が取り付けられている。
【0028】
絶縁基体115上に取り付けられるモータ116に取り付けられるプーリ117と、絶縁基体115に取り付けられる回転体113の小径円筒に取り付けられるプーリ117との間にベルト118が掛け渡されている。
【0029】
以上のように、回転手段114としてベルト駆動を採用しているのは、所定の電位に維持する必要がある回転体113を絶縁状態で回転させる場合に好適だからである。
【0030】
第一電源102は、原料液300に正または負の電荷を付与して帯電させる機能を備える装置であり、本実施の形態の場合、回転体113を接地することにより、収集電極103との電位差に基づき誘導される電荷を原料液300に付与するものとなっている。つまり、本実施の形態の場合、接地状態も電源に含まれる。また、第一電源102は、回転する回転体113を所定の電位に維持するため、ブラシが用いられて回転体113と電気的に接続されている。なお、第一電源102として回転体を所定の電位にしうる電源装置を用いてもかまわない。
【0031】
収集電極103は、原料液300が静電爆発することにより製造されたナノファイバ301を収集する長尺の部材であり、導電性を有さない長尺の収集基体131を備えている。なお、導電性を有さない収集基体131だけでは、帯電したナノファイバ301を収集することができないため、操業の際には収集基体131は、後述の導電液211を担持するものとなっている。また、このことから、収集基体131は、複数の繊維が束となったマルチフィラメントを採用することが望ましい。繊維自体に導電液211を担持する性能が無かったとしても、繊維と繊維との間に導電液211を担持することができるからである。また、繊維の種類は限定されるものではなく、木綿のような自然の繊維や、ナイロンなどの合成繊維などを例示することができる。
【0032】
第二電源104は、収集電極103を所定の電位に維持する電源である。ここで、所定の電位とは、噴射手段101の回転体113に誘導電荷を発生させることができる電位であり、かつ、製造されたナノファイバ301を吸引して収集することのできる電位である。具体的に第二電源104は、接地されている噴射手段101との間で、2KV以上、200KV以下の範囲の電圧を発生させることができる装置である。第二電源104は、後述の担持手段201に接続されており、導電液211を介して収集電極103を所定の電位に維持するものとなっている。
【0033】
ここで、導電液211とは、導電性を有する液体であれば特に限定されるものではなく、カルキ(さらしこ)を含んだ水を例示することができる。また、水の中に電解質を解かしたものでも導電液211となりうる。特に強電解質を水に溶かしたものが好ましい。また、導電とは、ナノファイバ製造装置100の場合、ある程度の電気抵抗を備えていても所定の電位を維持できる状態であれば導電とする。
【0034】
供給手段105は、収集電極103を連続的に供給することのできる装置である。本実施の形態の場合、収集電極103を構成する収集基体131は、ロールに巻き付けられており、回収手段106に収集基体131が引っ張られることで収集基体131を順次供給するものとなっている。また、供給手段105は、引っ張り出される収集基体131を所定のテンションで維持できるよう、テンション付与装置(図示せず)を備えている。
【0035】
回収手段106は、ナノファイバ301を収集した収集電極103を回収することのできる装置である。本実施の形態の場合、ロールを回転駆動させることによりナノファイバ301が付着された収集基体131を引っ張りながらロールに巻き付けることによって収集電極103を回収するものとなっている。
【0036】
図3は、担持手段を模式的に示す図である。
【0037】
同図に示すように、担持手段201は、導電液211を収集基体131に連続的に担持させることのできる装置であり、導電液211を貯留する貯液槽212と、貯液槽212に貯液される導電液211を汲み上げることのできる含浸ローラ213と、含浸ローラ213に対し収集電極103(収集基体131)を押し付けることのできる押圧ローラ214とを備えている。なお、担持には収集基体131が導電液211を含浸する、保持する付着させる、導電液211が収集基体131に浸潤するなど、あらゆる状態が含まれる。また、連続的に担持とは、収集基体131が担持する導電液211が断続的ではないことを意味し、収集基体131が導電液211を担持している部分については第二電源104を一部に接続するだけで全体に渡り所定の電位を付与することができる状態をいう。
【0038】
含浸ローラ213は、貯液槽212に貯留される導電液211に一部が浸される状態で配置され、導電液211を含浸可能で、回転により導電液211の一部を導電液211の液面より上に持ち上げることのできるローラであり、例えば、比較的硬質のスポンジ状のローラを挙示することができる。
【0039】
図1、図2に示す乾燥手段202は、ナノファイバ301を収集した後の収集電極103(収集基体131)の一部から導電液211を除去する装置であり、例えば、昇温され所定の温度で乾燥空気を収集電極103吹き付けることのできるブロワー、いわゆるドライヤーを挙示することができる。また、防爆対策として、低酸素状態の窒素ガスや過熱水蒸気などを収集電極103に吹き付けて収集電極103を乾燥させるものでもかまわない。なお、前記乾燥手段202で収集電極103を乾燥すると、導電液211が除去され、それより先は第二電源104により電位を付与することができず、ナノファイバ301を収集できなくなる。よって、乾燥手段202によりナノファイバ301の堆積エリアの先端を規定することが可能となる。
【0040】
絶縁管203は、収集電極103が挿通され、噴射口112を備える噴射手段101と収集電極103との間を絶縁するための部材であり、回転体113の回転軸と同軸状に回転体113を挿通するように配置されている。また、絶縁管203の先端は、回転体113の先端よりも突出している。この絶縁管203により、回転体113の中心に挿通される収集電極103と回転体113との間で異常放電が発生することを防止する。また、絶縁管203の先端から先にある収集電極103には製造されたナノファイバ301が堆積するため、絶縁管203により、ナノファイバ301の堆積エリアの基端を規定することが可能となる。
【0041】
原料液供給手段204は、原料液300供給用のタンク241を備え、パイプ242を通じて噴射手段101の回転体113内部に原料液300を供給するものである。
【0042】
ここで、原料液300とは、ナノファイバ301を構成する高分子物質を溶媒に溶解、または分散させたものである。
【0043】
高分子物質の内容としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。原料液の中の溶媒の占める割合は、60%位から98%位が好適で、使用するファイバの材料、溶媒の種類、生成するファイバの径等で決定を行う。
【0045】
次に、本実施の形態においてナノファイバが製造される態様を説明する。
【0046】
まず、担持手段201に接地電位に対し高電圧となるように電位を印加する。これにより担持手段201に貯留される導電液211も同じ電位となる。
【0047】
次に、供給手段105から供給される収集基体131を含浸ローラ213と押圧ローラ214との間に通過させる。これにより、収集基体131に導電液211が担持され収集基体131も同電位となり収集電極103として機能するようになる。そして、当該状態の収集電極103を噴射手段101の回転体113の中心に配置される絶縁管203の孔に挿通させる。
【0048】
この状態で、原料液300は、パイプ242を通過して回転体113の内部に注入される。回転体113は、モータ116により回転される。これに伴い、注入された原料液300にも回転による遠心力が発生する。そして回転体113の先端に設けられるノズル111の噴射口112を介して原料液300が遠心力により回転体113の回転軸に向かって噴射される。
【0049】
収集電極103は、担持手段201を介してマイナスの電位が付与されているため、原料液300は、誘導電荷により正に帯電する。従って、正の電荷を帯びた原料液300が空間中に噴射され、静電爆発を繰り返しつつナノファイバ301が製造されていく。ナノファイバ301は、正の電荷を帯びているため、絶縁管203から先に現れる収集電極103に吸引されつつ飛翔し、収集電極103の先端に堆積していく。
【0050】
収集電極103は、供給手段105と回収手段106とにより所定のテンションを維持しながらゆっくりと回収手段106側に移動している。一方、噴射手段101は、糸状の収集電極103の周りを回転している。
【0051】
そして、絶縁管203の先端部から所定の距離の先では乾燥手段202により収集電極103が乾燥され、導電液211が収集基体131から除去される。導電液211が除去された収集基体131には電位が付与されないため、当該部分にはナノファイバ301が吸引されず、ナノファイバ301が堆積されにくくなる。
【0052】
以上により、収集電極103の全周にわたり、均等にナノファイバ301が堆積し、さらに収集電極103の長さ方向に対しても均等にナノファイバ301を堆積させることが可能となる。従って、長尺で安定した状態のナノファイバ301を製造することができ、ナノファイバ製品の製造工程に供することが可能となる。
【0053】
また、モータ116や絶縁基体115、原料液300を供給する経路を構成するパイプ242、原料液300のタンク241などは、回転体113と触れていたとしても接地電位であるため、噴射手段101や収集電極103などを高電圧に維持するための高度な絶縁を施す必要が無い。また、また上記部材が接地電位であるため、異常放電などが抑止され、モータ116等に使用している電子部品や半導体等が破壊されることが抑止される。また、万が一、人が上記部材に接触したとしても感電することがない。
【0054】
なお、本実施の形態では、噴射手段101をアースと接続して接地電位としたが、噴射手段101や収集電極103に電源を接続し−1KV〜+1KVの範囲で電圧を印加しても構わない。なお、当該電源は、出力インピーダンスが低く、電荷の連続供給が可能な構成の電源であればよい。比較的低電圧を噴射手段101に印加しておくことで、コロナ放電などの異常放電を可及的に抑制しつつ噴射手段101の接地電位に対する電位を安定させることが可能となる。また、収集電極103との間に発生する電界(電気力線)を安定させることができる。
【0055】
また、噴射手段101が備えるノズル111は、二つのみを記載しているが、複数個並べて配置してもよい。
【0056】
また、本実施の形態では担持手段201に負の電位を付与する場合を説明したが、正の電位を付与すれば、前記の正と負との関係が逆になるだけである。
【0057】
また、担持手段201に交流電圧を印加すれば、前記正と負との関係が交互に発生するため、周囲の装置が誘導電荷により帯電し、異常放電が発生するのを防止することが可能となる。
【0058】
なお、噴射手段101は、上記実施の形態に記載した構造に限定されるわけではない。
【0059】
例えば、図4に示すように、噴射手段101は、原料液300が噴射される複数の噴射口112を環状に備えており、収集電極103は、円環上に配置される噴射口112に囲まれるように配置され、全ての噴射口112から原料液300を噴射することで収集電極103の全周に渡ってナノファイバ301を堆積するものでもかまわない。
【0060】
この場合、噴射口112から原料液300を噴射させるためには、ある程度の圧力が必要となるため、原料液供給手段204は、原料液300圧送用のポンプ243を備えている。
【0061】
また、担持手段201も上記に限定されるわけではなく、図4に示すように収集電極103が導電液211に浸漬するように収集電極103の移動経路を形成してもかまわない。
【0062】
また、収集電極103を導電性の物質で構成してもかまわない。この場合、図5に示すように、担持手段201は必要なく、ローラやブラシを使って収集電極103と第二電源104を接続すればよい。
【0063】
また、乾燥手段202も不要になるが、ナノファイバ301の堆積エリアを規定するため、堆積エリアの先にもう一つ絶縁管203を配置する必要がある。
【0064】
また、上記実施の形態の収集電極103は全て糸形状のもので説明したが、図6に示すように、例えばある程度幅を備えた長尺のリボン(帯)であってもかまわない。
【0065】
この場合、噴射手段101の噴射口112をリボンの表裏にのみ向かって配置してもかまわない。
【0066】
なお、上記実施例では、回転体113の先端面にノズル111や噴射口112を設けたが、回転体113の回転表面に噴射口を設けた構成や噴射口を有するノズルを設けてもよい。
【0067】
なお、図1、2、5の実施例では、タンク241からパイプを通じて原料液300を供給しているが、ギアポンプ等を用いて、所定量の原料液300を回転体113に供給できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明は、ナノファイバからなる糸やナノファイバからなる不織布の製造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本願発明に係るナノファイバ製造装置を模式的に示す図である。
【図2】ナノファイバ製造装置を模式的に示す図である。
【図3】担持手段を模式的に示す図である。
【図4】噴射手段の別例を示す図である。
【図5】導体からなる収集電極を使用した場合を示す図である。
【図6】リボン形状の収集電極を使用した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
100 ナノファイバ製造装置
101 噴射手段
102 第一電源
103 収集電極
104 第二電源
105 供給手段
106 回収手段
111 ノズル
112 噴射口
113 回転体
114 回転手段
115 絶縁基体
116 モータ
117 プーリ
118 ベルト
119 ベアリング
131 収集基体
201 担持手段
202 乾燥手段
203 絶縁管
204 原料液供給手段
211 導電液
212 貯液槽
213 含浸ローラ
214 押圧ローラ
241 タンク
242 パイプ
243 ポンプ
300 原料液
301 ナノファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射手段と、
前記原料液に電荷を付与して帯電させる第一電源と、
前記原料液が静電爆発することにより製造されたナノファイバを収集する長尺の収集電極と、
前記収集電極を所定の電位とする第二電源と、
前記収集電極を供給する供給手段と、
前記収集電極を回収する回収手段と
を備えるナノファイバ製造装置。
【請求項2】
前記収集電極は、
導電性を有さない長尺の収集基体を備え、
前記ナノファイバ製造装置はさらに、
導電性を有する液体からなる導電液を前記収集基体に連続的に担持させる担持手段
を備える請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項3】
前記担持手段は、
前記導電液を貯留する貯液槽と、
前記貯液槽に貯留される導電液に一部が浸される状態で配置され、前記導電液を含浸可能で、回転により前記導電液の一部を前記導電液の液面より上に持ち上げることのできる含浸ローラと、
前記含浸ローラに対し前記収集電極を押し付けることのできる押圧ローラとを備える
請求項2に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項4】
さらに、ナノファイバを収集した後の前記収集基体の一部から導電液を除去する乾燥手段を備える請求項2に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項5】
前記収集基体は、複数本の糸が束となったマルチフィラメントである請求項2に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項6】
前記噴射手段は、原料液が噴射される複数の噴射口を環状に備え、
前記収集電極は、前記噴射口に囲まれるように配置される
請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項7】
前記噴射手段は、
原料液が噴射される噴射口と、
前記噴射口を所定の軸の周りで回転させる回転手段とを備え、
前記収集電極は、前記噴射口の回転円内に挿通するように配置される
請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項8】
前記収集電極が挿通され、前記噴射口と収集電極との間を絶縁する絶縁管を備える請求項6または請求項7に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項9】
ナノファイバの原料となる原料液を空間中に噴射する噴射ステップと、
前記原料液に電荷を付与して帯電させる帯電ステップと、
導電性を有さない長尺の収集基体に導電性を有する液体からなる導電液を連続的に担持させる担持ステップと、
前記導電液に電位を付与する電位付与ステップと、
前記収集基体を供給する供給ステップと、
ナノファイバを収集した前記収集基体を回収する回収手段と
を含むナノファイバ製造方法。
【請求項10】
前記噴射ステップにおいて、前記原料液は噴射口から噴射され、
前記噴射口は、前記収集基体の周囲を回転する、または、前記収集基体は、回収方向を軸として回転する請求項9に記載のナノファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144256(P2009−144256A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319462(P2007−319462)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】