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ナノポア式分析装置
説明

ナノポア式分析装置

【課題】ナノポアを用いた計測方法において、低濃度の試料に関してナノポアを通過する通過頻度を向上させ、スループットを改善させることが可能なナノポア式生体高分子分析装置及びそれを用いた生体高分子分析方法の提供。
【解決手段】ナノポア式生体高分子分析装置であって、基板で隔てられた試料導入区画と試料流出区画とを有するチャンバと、前記試料導入区画に設けられた第1の電極及び前記試料流出区画に設けられた第2の電極と、前記基板に形成されている薄膜と、前記基板の薄膜に設けられた、前記試料導入区画と前記試料流出区画とを連通するナノポアと、前記基板の前記ナノポアの近傍に配置された第3の電極と、電極に対する電圧印加手段と、を備えたチャンバ部を有し、前記電圧印加手段が、第1の電極と第3の電極の間、第1の電極と第2の電極の間、及び第3の電極と第2の電極の間にそれぞれ電圧を印加する手段を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA、タンパク質などの生体高分子をナノメートルサイズの細孔(本願では、ナノポアと称する)を通過させて分析する装置に関する。本発明は特に、生体高分子のナノポアの通過頻度を向上させることができるナノポア式分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノポアと呼ばれる、ナノメートルサイズの細孔を用いて、DNAや蛋白質などの高分子ポリマーを分析する方法の開発が進められている。ナノポアを開けることは、技術的に難しかったが、初めに、バイオ分野において、脂質2重膜にイオンチャネルを導入することで実現された(非特許文献1)。また、ナノポアを使った測定方法も、生体のイオンチャネル計測に用いられるパッチクランプ法に準じた方法が開発された。次に、半導体プロセスを利用してナノポアを開けることが試みられ、イオンビームによる方法(非特許文献2)や電子線による方法(非特許文献3)が開発されてきた。
【0003】
ナノポアが作成できるにつれ、ナノポアを使ったDNAや蛋白質などの高分子を分析する方法が開発された。ナノポア式の分析で必要な主要技術は、以下の2つである。
1.検出技術:高分子がナノポアを通る際の物理的変化を検出
2.移動制御技術:高分子を移動させ、ナノポアを通す
【0004】
上記検出技術には、封鎖電流方式、トンネル電流方式、キャパシタンス方式が知られている。封鎖電流方式とは、高分子がナノポアの開口部を部分的に封鎖することによる影響を検出する方式である(非特許文献4)。具体的な構造としては、ナノポアを有する膜によって空間を2つに分離し、それぞれの空間にイオンを含む液体を充填し、且つ、電極を配置する。電極に一定の電圧を印加すると、イオンがナノポアを通って移動し、電流が流れる(イオン通過電流)。帯電した高分子が存在する場合、その高分子も電位差により、片側へ引き寄せられ、ナノポアを通る。その際、ナノポアの開口部が部分的に封鎖されるので、イオンが流れ難くなりイオン通過電流の大きさが低下する。この電流値低下を検出することにより、高分子の存在や成分を分析する方法である。イオンの流れにくさは、開口面積に加え、高分子の荷電状態やナノポア壁面との相互作用からの影響を受ける。
【0005】
一方、トンネル電流方式とは、高分子がナノポアを通過する際、ナノポア近辺に設けられたトンネル電流用電極と高分子とのわずかな隙間にトンネル電流が流れ、それを検出することで、高分子の存在や成分を分析する方法である(非特許文献5、非特許文献6)。
【0006】
キャパシタンス方式とは、高分子がナノポアを通過する際、ナノポアが部分的に封鎖されるため、ナノポアを有する膜のキャパシタが変化し、それを検出することで、高分子の存在や成分を分析する方法である(非特許文献7)。
【0007】
また上記移動制御技術には、電位差移動方式、酵素移動方式、力学的移動方式がある。電位差移動方式とは、上記、封鎖電流方式で出てきたように、ナノポアを有する膜によって分離された2つの空間に電極を配置し、電極に電圧を印加することで、帯電した高分子を電場の勾配にしたがって移動させる方法であり、利点として、単純な構造で実現可能である、高分子に余分な付加がかからないなどが挙げられる。
【0008】
酵素移動方式とは、ナノポア近辺に酵素を配置し、高分子と酵素の反応を利用して高分子を移動させる方法である。例えば、高分子が1本鎖DNAの場合、DNAポリメラーゼをナノポア近辺に配置し、2本鎖合成反応を起こさせることで、一塩基ずつDNAを動かす方法がある。この方法では、DNAがDNAポリメラーゼ近辺に位置する必要があるので、電位差移動方式を併用し、DNAをナノポア近辺に集めることが、高効率化の点から望ましい。
【0009】
力学的移動方式とは、高分子をビーズに固定し、ビーズを光ピンセットで移動させることで、高分子の移動を実現する方式である。この方法では、高分子のビーズがついていない端部を、ナノポアに入れる必要があり、その際に、電位差移動方式が採用される。
【0010】
従って、電位差移動方式は、試料をナノポア開口部まで運ぶ駆動力として、どの方法とも併用される。
【0011】
試料は、次の3つの移動状態を経て、ナノポア開口部まで運ばれ、ナノポアを通過する。第1は試料拡散による移動、第2は電気泳動による移動、第3は試料が長鎖状の場合にその先端がナノポア開口部に到着する確率、である(非特許文献8)。第2と第3において、電位差の影響が大きく関与する。
【0012】
従来のナノポア式の分析では、試料が低濃度の場合、試料がナノポアの開口部へ到達する頻度が低下するため、ナノポアを通過する頻度が小さくなり、計測のスループットが低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kasianowicz J.J.; Brandin E.; Branton D.; Deamer D.W.:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1996, 93, 13770-13773
【非特許文献2】Li J.; D.Stein; C.McMullan; D.Branton; M.J.Aziz; J.A. Golovchenko J. A.: 2001, Nature, 412, 166
【非特許文献3】Storm A.J.; J.H.Chen; X.S.Ling; H.Zandbergen; C.Dekker 2003, Nat. Mater. 2, 537540
【非特許文献4】D.Fologea; M.Gershow; B.Ledden; D.S.McNabb; J.A.Golovchenko;J.Li; Nano Lett 2005, 5, 10, 1905
【非特許文献5】M.Zwolak; M.D.Ventra; Nano Lett 2005, 5, 3, 421
【非特許文献6】M.Taniguchi; M.Tsutsui; K.Yokota; T.Kawai: Appl Phys Lett 95, 123701(2009)
【非特許文献7】G.Sigalov; J.Comer; G.Timp; A.Aksimentiev: Nano Lett 2008, 8, 1, 56
【非特許文献8】M.Wanunu; W.Morrison; Y.Rabin; A.Y.Grosberg; A.Meller : Nat. Nano. 5, 160, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ナノポアを用いた計測方法において、低濃度の試料に関してナノポアを通過する通過頻度を向上させ、スループットを改善させることが可能なナノポア式生体高分子分析装置及びそれを用いた生体高分子分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ナノポア近傍に配置した電極に電圧を印加することにより、試料を導入する側のナノポア開口部近傍の電位差を拡大し、試料中の生体高分子をナノポア開口部に収集しナノポアを効率良く通過させることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]ナノポア式生体高分子分析装置であって、
基板で隔てられた試料導入区画と試料流出区画とを有するチャンバと、
前記試料導入区画に設けられた第1の電極及び前記試料流出区画に設けられた第2の電極と、
前記基板に形成されている薄膜と、
前記基板の薄膜に設けられた、前記試料導入区画と前記試料流出区画とを連通するナノポアと、
前記基板の前記ナノポアの近傍に配置された第3の電極と、
電圧印加手段と、
を備えたチャンバ部を有し、
前記電圧印加手段が、第1の電極と第3の電極の間、第1の電極と第2の電極の間、及び第3の電極と第2の電極の間に電圧を印加する手段を含むことを特徴とする、ナノポア式生体高分子分析装置。
【0017】
[2]前記基板が、前記ナノポアに面して配置された計測用電極をさらに備える、[1]のナノポア式生体高分子分析装置。
[3]前記ナノポアが、最小直径部で直径1〜100nmを有する、[1]又は[2]のナノポア式生体高分子分析装置。
[4]前記電圧印加手段が、第3の電極と第2の電極の間の電位差を可逆的に切替可能に構成されていることを特徴とする、[1]〜[3]のナノポア式生体高分子分析装置。
[5]少なくとも一組の前記計測用電極が、前記ナノポアを挟んで互いに対向して配置されている、[2]のナノポア式生体高分子分析装置。
[6]前記ナノポアを挟んで第3の電極に対向して配置された前記計測用電極を備える、[2]のナノポア式生体高分子分析装置。
【0018】
[7]少なくとも一組の前記計測用電極が、前記ナノポアの軸方向に沿って並列に配置されている、[2]のナノポア式生体高分子分析装置。
[8]第3の電極と前記計測用電極とが前記ナノポアの軸方向に沿って並列に配置され、前記計測用電極は第3の電極よりも前記試料流出区画側の位置に設けられている、[2]のナノポア式生体高分子分析装置。
[9]第3の電極が、前記試料導入区画側のナノポア開口部の近傍に配置されている、[1]〜[8]のナノポア式生体高分子分析装置。
[10]前記計測用電極が、ナノポア開口部の近傍又は薄膜内部に配置されている、[2]〜[5]及び[7]〜[9]のナノポア式生体高分子分析装置。
[11]第3の電極が、ナノポア開口部を除く薄膜全面を覆っている、[1]〜[10]のナノポア式生体高分子分析装置。
【0019】
[12]第3の電極が、ナノポア開口部の周囲に配置されているか、又はナノポアを挟んで対向する位置に配置されている、[1]〜[10]のナノポア式生体高分子分析装置。
[13]第3の電極が、多重に及び/又は多層に配置された2つ以上の電極を含む、[1]〜[12]のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
[14]前記チャンバ部を複数備える、[1]〜[13]のナノポア式生体高分子分析装置。
[15][1]〜[14]のナノポア式生体高分子分析装置の前記試料導入区画に、生体高分子を含む試料溶液を導入し、前記第3の電極と第1の電極の間に電圧を印加することにより帯電した生体高分子を収集し、ナノポアを通過させて、ナノポアを通過中の生体高分子を計測することを含むことを特徴とする、生体高分子の分析方法。
[16]前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも高く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも低くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加することにより、負に帯電した生体高分子を収集することを特徴とする、[15]の分析方法。
[17]前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも高く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも高くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加し、その後第3の電極の電位が第2の電極の電位よりも低くなるように電圧を変更することにより、負に帯電した生体高分子を収集し、ナノポア通過を促進する、[15]の分析方法。
【0020】
[18]前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも低く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも高くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加することにより、正に帯電した生体高分子を収集することを特徴とする、[15]の分析方法。
[19]前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも低く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも低くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加し、その後第3の電極の電位が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を変更することにより、正に帯電した生体高分子を収集し、ナノポア通過を促進する、[15]の分析方法。
[20]前記生体高分子が、核酸、ペプチド核酸、タンパク質、ポリペプチド及び糖鎖からなる群より選択される、[15]〜[19]の分析方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、生体高分子がナノポアを通過する頻度を増加させ、ナノポア式計測法におけるスループットを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】試料をナノポア開口部に収集するための第3の電極を配置したナノポア基板を備えたナノポア式分析装置の分析用チャンバ部の模式図である。
【図2】第3の電極を有しないナノポア式分析装置の分析用チャンバ部の比較図である。
【図3−1】ナノポア近傍に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−2】全面に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−3】ナノポア周囲に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−4】ナノポア周囲に全面に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−5】ナノポア周囲にナノポア端部から後退させて電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−6】ナノポア端部から後退させた部分を除くナノポア周囲の全面に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−7】ナノポア周囲にナノポア端部から後退させて多重に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図3−8】ナノポア周囲にナノポア端部から後退させて多重且つ多層に電極を配置したナノポア基板の模式図である。
【図4】基板にナノポアを挟んで対向して配置したトンネル電流計測用電極と、試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図5】ナノポアを挟んで対向して配置したトンネル電流計測用電極が試料収集用電極を兼用しているナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図6】ナノポア軸方向に沿って並列に配置したトンネル電流計測用電極と試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図7】ナノポア軸方向に沿って並列に配置したトンネル電流計測用電極の1つが試料収集用電極を兼用しているナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図8】ナノポア軸方向に沿って並列に配置したキャパシタンス計測用電極と試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図9】ナノポア軸方向に沿って並列に配置したキャパシタンス計測用電極が試料収集用電極を兼用しているナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図10】試料容器からの流路を示したナノポア式分析装置の分析用チャンバ部の模式図である。
【図11−1】バイオロジカルナノポアの近傍に試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図11−2】バイオロジカルナノポアを直接的に固体膜(薄膜)の穴に配置し、且つナノポアの近傍に試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部の模式図である。
【図12】試料収集用電極を有するナノポアが複数個配置された分析用チャンバ部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ナノポア近傍に配置した電極に電圧を印加し、ナノポア付近における電位差を増大させることにより、生体高分子をナノポア付近に収集し、高頻度で生体高分子をナノポア通過させることを特徴とするナノポア式生体高分子分析装置、及びそれを用いた生体高分子分析方法に関する。
【0024】
本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置は、チャンバ部とその内部に配置されている基板とを有する。基板は、ベース(基材)と、基材に面して形成された薄膜と、薄膜に設けられた、試料導入区画と試料流出区画とを連通するナノポアと、ナノポアの近傍に配置された試料収集用電極(本願明細書では、第3の電極とも称する)等を有し、チャンバの試料導入区画と試料流出区画の間に配置される。基板は、試料収集用電極(第3の電極)に面して配置された絶縁層を有してもよい。基板は、固体基板であることが好ましい。
【0025】
本発明において、基板は、電極を除き、電気的絶縁体の材料、例えば無機材料及び有機材料(高分子材料を含む)から形成することができる。基板を構成する電気的絶縁体材料の例としては、シリコン(ケイ素)、ケイ素化合物、ガラス、石英、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ケイ素化合物としては、窒化ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素等、酸窒化ケイ素が挙げられる。特に基板の支持部を構成するベース(基材)は、これらの任意の材料から作製することができるが、例えばケイ素又はケイ素化合物であってよい。
【0026】
基板のサイズ及び厚さは、ナノポアを設けることができるものであれば特に限定されるものではない。基板は、当技術分野で公知の方法により作製することができ、あるいは市販品として入手することも可能である。例えば、基板は、フォトリソグラフィ又は電子線リソグラフィ、及びエッチング、レーザーアブレーション、射出成形、鋳造、分子線エピタキシー、化学蒸着(CVD)、電子線若しくは収束イオンビームなどの技術を用いて作製することができる。基板は、表面への他の分子の吸着を避けるために、コーティングされていてもよい。
【0027】
基板の厚みは好ましくは100μm〜1000μmである。基板は、少なくとも1つのナノポアを有する。ナノポアは、具体的には薄膜に設けられるが、場合により、ベース(基材)、電極、及び絶縁体に同時に設けてもよい。本発明において「ナノポア」及び「ポア」とは、ナノメートル(nm)サイズ(すなわち、1nm以上、1μm未満の直径)の孔であり、基板を貫通して試料導入区画と試料流出区画とを連通する孔である。
【0028】
基板は、ナノポアを設けるための薄膜を有することが好ましい。すなわち、ナノサイズの孔を形成するのに適した材料及び厚さの薄膜を基板上に形成することによって、ナノポアを簡便かつ効率的に基板に設けることができる。ナノポア形成の面から、薄膜の材料は、例えば酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、金属酸化物、金属ケイ酸塩などが好ましい。また薄膜(及び場合によっては基板全体)は、実質的に透明であってもよい。ここで「実質的に透明」とは、外部光をおよそ50%以上、好ましくは80%以上透過できることを意味する。また薄膜は、単層であっても複層であってもよい。薄膜の厚みは、1nm〜200nm、好ましくは1nm〜50nm、より好ましくは1nm〜20nmである。薄膜は、当技術分野で公知の技術により、例えば減圧化学気相成長(LPCVD)により、基板上に形成することができる。
【0029】
薄膜上には、絶縁層を設けることも好ましい。絶縁層の厚みは好ましくは5nm〜50nmである。絶縁層には任意の絶縁体材料を使用できるが、例えばケイ素又はケイ素化合物(窒化ケイ素、酸化ケイ素など)を使用することが好ましい。
【0030】
本発明においてナノポア又はポアの「開口部」とは、ナノポア又はポアが試料溶液と接する部分のナノポア又はポアの開口円を指す。生体高分子の分析の際には、試料溶液中の生体高分子やイオンなどは一方の開口部からナノポアに進入し、同じ又は反対側の開口部からナノポア外に出る。
【0031】
ナノポアのサイズは、分析対象の生体高分子の種類によって適切なサイズを選択することができる。ナノポアは、均一な直径を有していてもよいが、部位により異なる直径を有してもよい。ナノポアは、1μm以上の直径を有するポアと連結していてもよい。基板の薄膜に設けるナノポアは、最小直径部、すなわち当該ナノポアの有する最も小さい直径が、直径100nm以下、例えば1nm〜100nm、好ましくは1nm〜50nm、例えば1nm〜10nmであり、具体的には1nm以上5nm以下、3nm以上5nm以下などであることが好ましい。ナノポアのこのような直径100nm以下、好ましくは10nm以下、例えば1nm〜100nm又は1nm〜5nmの部分に、計測用電極を配置するなどして、検出部とすることが好ましい。
【0032】
ssDNA(1本鎖DNA)の直径は約1.5nmであり、ssDNAを分析するためのナノポア直径の適切な範囲は1.5nm〜10nm程度、好ましくは1.5nm〜2.5nm程度である。dsDNA(2本鎖DNA)の直径は約2.6nmであり、dsDNAを分析するためのナノポア直径の適切な範囲は3nm〜10nm程度、好ましくは3nm〜5nm程度である。他の生体高分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、糖鎖などを分析対象とする場合も同様に、生体高分子の外径寸法に応じたナノポア直径を選択することができる。
【0033】
ナノポアの深さ(長さ)は、基板又は基板の薄膜の厚さを調整することにより調整することができる。ナノポアの深さは、分析対象の生体高分子を構成するモノマー単位とすることが好ましい。例えば生体高分子として核酸を選択する場合には、ナノポアの深さは、塩基3個以上の大きさ、例えば約1nm以上とすることが好ましい。ナノポアの形状は、基本的には円形であるが、楕円形や多角形とすることも可能である。
【0034】
ナノポアは、基板に少なくとも1つ設けることができ、複数のナノポアを設ける場合に、規則的に配列してもよい。ナノポアは、当技術分野で公知の方法により、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)の電子ビームを照射することにより、ナノリソグラフィー技術又はイオンビームリソグラフィ技術などを使用することにより形成することができる。
【0035】
電極(第1〜第3の電極及び計測用電極など)は、金属、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなど;グラファイト、例えばグラフェン(単層又は複層のいずれでもよい)、タングステン、タンタルなどから作製することができる。電極は任意の形状であってよいが、平面状とすることで加工が容易になる。
【0036】
チャンバ部は、試料導入区画及び試料流出区画、基板、電圧印加手段、並びにナノポアを通過する生体高分子を計測するための計測用電極等を有する。好適な例では、チャンバ部は、試料導入区画及び試料流出区画、試料導入区画に設けた第1の電極、試料流出区画に設けた第2の電極、第3の電極を有する基板、第1、第2及び第3の電極に対する電圧印加手段、並びにナノポアを通過する生体高分子を計測するための計測用電極等を有する。試料導入区画に設けた第1の電極、試料流出区画に設けた第2の電極の間には、電流計が配置されていてもよい。第1の電極と第2の電極の間の電流は、試料のナノポア通過速度を決定する点で適宜定めればよく、例えば、試料を含まないイオン液体を用いた場合、DNAであれば100mV〜300mV程度が好ましいが、これに限定されない。
【0037】
本発明では、ナノポアを通過する生体高分子を計測するために、封鎖電流方式、トンネル電流方式、キャパシタンス方式等を利用することができるが、これらに限定されない。計測用電極は、これらの各計測法に適したものを適した配置で使用する。計測用電極は、1つであってもよいが、1組以上であることが好ましい。計測用電極を1つのみ使用する場合、限定するものではないが、例えば、第3の電極との組み合わせで計測を行うことが好ましい。この場合第3の電極は、試料収集用電極としてだけでなく、計測用電極としても機能する。一組以上の計測用電極は、組毎に、ナノポアを挟んで対向して配置してもよいし、ナノポアの軸方向に沿って並列に配置してもよい。並列に配置する場合、計測用電極の間には絶縁層を配置してもよい。計測用電極は、ナノポア開口部の近傍又は薄膜内部に配置されていることが好ましい。計測用電極は、第3の電極との組み合わせで計測用に使用しない場合には、第3の電極よりも前記試料流出区画側の位置に設けられることがさらに好ましい。
【0038】
第3の電極は、基板のナノポアの近傍に配置される。本発明において第3の電極が「ナノポアの近傍に配置される」とは、第3の電極の少なくとも一部が、ナノポアに面しているか、又はナノポアの端部からわずかに後退した位置(例えば、ナノポアの中心軸から鉛直方向に100nmまでの位置)に配置されることを意味する。本発明において「ナノポアに面している」とは、ナノポアの軸方向の壁面に第3の電極の少なくとも一部が接していることを意味する。第3の電極は、ナノポア開口部を除く薄膜全面を覆っていてもよいし、ナノポア開口部の周囲に配置されていてもよい。本発明において第3の電極が「ナノポアの周囲に配置されている」とは、第3の電極がナノポアの近傍において、ナノポアを完全に囲むように、又はほぼ囲むように(好ましくは、円周の70%以上、より好ましくは80%以上、例えば85%以上)、配置されていることを意味する。あるいは第3の電極は、ナノポアを挟んで対向する位置に配置された電極であってもよい。その場合の第3の電極は、ナノポアの軸方向に直交するように配置されていることが好ましい。第3の電極は、多重に配置された電極であってもよい。「多重」とは、ナノポアを中心に、電極が平面図で同心円状又は略同心円状に配置されることを意味する。第3の電極は、多層に配置された電極であってもよい。「多層」とは、電極が、ナノポアの軸方向に沿って層状に配置されることを意味する。多層に配置された電極については、各層の電極と電極の間に絶縁層が挟まれていることが好ましい。なお本発明では、第1及び第2の電極が存在しないか、又は第1及び第2の電極を生体高分子の収集に利用しないか、他の電極がさらに存在する場合でも、基板のナノポアの近傍に配置される電極を「第3の電極」と呼ぶことができる。
【0039】
第3の電極は、場合により、他の電極、例えばチャンバの外側(一例としては、試料導入区画に連結した流入路又はその流入路に接続された試料容器)に設けられた電極との間で電圧を印加され、その結果、試料をナノポア近傍に集めることができるように構成されていてもよい。
【0040】
本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置は、限定するものではないが、上記チャンバ部に加えて、典型的には例えば、試料導入区画及び試料流出区画に接続された流出入路(流路)、ナノポアを通過する生体高分子を計測する計測部等を有する。計測部は、電極間の電気信号を増幅するアンプ(増幅器)、アンプのアナログ出力をデジタル出力に変換するアナログデジタル変換器、及び計測データを記録するための記録装置等を有していてもよい。計測部は、計測手段と計測データ記録手段の両方を備えたデータロガーであってもよい。例えば、ナノポアに進入した生体高分子に外部光(励起光)を照射することにより生体高分子を励起させてラマン散乱光を発生させ、そのラマン散乱光のスペクトルに基づいて生体高分子の特性を分析する計測を行う場合には、当該計測部は外部光を照射するための光源と、ラマン散乱光を検出する検出器(分光検出器など)を有していてもよい。光源は、例えば、限定されるものではないが、クリプトン(Kr)イオンレーザ、ネオジム(Nd)レーザ、アルゴン(Ar)イオンレーザ、YAGレーザ、窒素レーザ、サファイアレーザ等であってよく、波長約400〜800nm、好ましくは500〜600nmの外部光を照射するものであることが好ましい。また計測部は、光源と組み合わせて、共焦点レンズ及び対物レンズ、フィルター、ハーフミラー、共焦点ピンポール等を有していてもよい。
【0041】
また、本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置は、前記計測部で取得した計測値を分析するための外部装置(例えばコンピュータ)と接続してもよい。
【0042】
第1、第2及び第3の電極に対する電圧印加手段は、それらの電極間へ電圧を印加する電源部であってよい。電源部は、印加電圧を制御したり切り替えたりする制御部を有していてもよい。電圧印加手段は、複数の電源を含んでもよいし、単独の電源を有していてもよい。
【0043】
第3の電極に対する電圧印加手段は、多重に配置された複数の電極の間に電圧を印加する手段であってもよい。
【0044】
本発明のナノポア式生体高分子分析装置は、より一般的には、
基板で隔てられた試料導入区画と試料流出区画とを有するチャンバと、
前記基板に形成されている薄膜と、
前記基板の薄膜に設けられた、前記試料導入区画と前記試料流出区画とを連通するナノポアと、
前記基板の前記ナノポアの近傍に配置された電極と、
前記電極に対する電圧印加手段と、
を備え、
前記電圧印加手段により、ナノポアの近傍に電位差を生じさせることにより、ナノポアの近傍に試料、好ましくは生体高分子(特に、荷電した生体高分子)を収集することを特徴とする。
【0045】
本発明のナノポア式生体高分子分析装置は、典型的には、
基板で隔てられた試料導入区画と試料流出区画とを有するチャンバと、
前記試料導入区画に設けられた第1の電極及び前記試料流出区画に設けられた第2の電極と、
前記基板に形成されている薄膜と、
前記基板の薄膜に設けられた、前記試料導入区画と前記試料流出区画とを連通するナノポアと、
前記基板の前記ナノポアの近傍に配置された第3の電極と、
電圧印加手段と、
を備えたチャンバ部を有し、
前記電圧印加手段が、第1の電極と第3の電極の間、第1の電極と第2の電極の間、及び第3の電極と第2の電極の間にそれぞれ電圧を印加する手段を含むことを特徴とする。
【0046】
図1に、試料をナノポア開口部に収集するための第3の電極を配置したナノポア基板を備えた、本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置の1つの実施形態を模式的に示す。
【0047】
図1中にはナノポア基板、及びナノポア基板を配置したチャンバ部の構成が示されている。図1に図示するように、チャンバ101は、ナノポア102を有する基板103(ナノポア基板)を隔てて2つの閉じられた空間、すなわち試料導入区画104と試料流出区画105で構成されている。但し、試料導入区画104と試料流出区画105はナノポア102で連通している。試料導入区画104及び試料流出区画105は、両区画にそれぞれ連結された流入路106、107を介して導入される液体110、111で満たされる。液体110、111は、試料導入区画104及び試料流出区画105に連結された流出路108、109から流出する。流入路106と107は基板を挟んで対向する位置に設けられてもよいが、これに限定されない。流出路108と109は基板を挟んで対向する位置に設けられてもよいが、これに限定されない。
【0048】
液体110は分析対象となる試料113を含む、試料溶液であることが好ましい。液体110は、電荷の担い手となるイオンを好ましくは大量に含む(以下、イオン液体112)。液体110は、試料以外には、イオン液体112のみを含むことが好ましい。イオン液体112としては、電離度の高い電解質を溶解した水溶液が好ましく、塩類溶液、例えば塩化カリウム水溶液などを好適に使用できる。
【0049】
試料113は、イオン液体112中で電荷を有するものであることが好ましい。試料113は、典型的には生体高分子である。
【0050】
試料導入区画104と試料流出区画105には、ナノポア102を挟んで対向するように配置された電極114、115(それぞれ、第1の電極、及び第2の電極)が設けられる。さらに、ナノポア102の開口部の、液体110に接する側の近傍に、ナノポア102を囲むように電極116(第3の電極)が配置される。
【0051】
本実施形態において、チャンバー部は、電極114、115、116に対する電圧印加手段をも備える。電圧印加手段は、電極114と116、電極114と115、電極115と116の間に電圧を印加する電化印加手段である。
【0052】
電極114、115、116に電圧を印加する場合に生じる各電極の電位をそれぞれV1、V2、V3とすると、試料が負の電荷を持つ場合、V1<V3となるように電圧を印加することにより、試料113は、試料導入区画104側のナノポア102の開口部近傍に引き寄せられて集まる。このとき、同時に、V3<V2となるように電圧を印加すると、試料113はナノポア102を通過し、試料流出区画105の電極115の近傍に引き寄せられる。この場合、電極114と115の間の電流を電流計117で計測すると、試料113がナノポア102内に存在しない場合は、イオンのみが流れる電流が計測されるが、試料113が存在する場合は、試料113の体積分だけ、ナノポア102内を通過できるイオンが制限されるため、流れる電流はイオンのみの状態から減少する。この減少量を試料113による封鎖電流として計測し、試料の分析を行うことができる。すなわち本発明の電化印加手段は、各電極の電位がV1(第1の電極)<V3(第3の電極)<V2(第2の電極)となるように同時に電圧を印加可能になるように構成されていることが好ましい。
【0053】
本実施形態のチャンバ部を有するナノポア式生体高分子分析装置を生体高分子の分析に用いる場合、試料113をできる限り速くナノポア開口部へ到達させるため、V1とV3の電位差は大きくすることが好ましい。V3とV2の電位差は、試料がナノポアを通過して電気信号を出力する速度に影響するので、電流検出系のサンプリング速度に応じた適切な値とすることが好ましい。例えば、V3とV2の電位差を小さくして試料をゆっくりナノポアに通し、試料113が存在する状態を複数回計測することで、平均化や統計処理で、精度の高い出力を得ることもできる。
【0054】
試料113が正の電荷を持つ場合は、負の電界を持つ場合とは逆方向に電圧を印加する。例えば、V1>V3>V2とする。
【0055】
別の態様として、試料113をナノポア102近傍に集める段階と、試料113をナノポア102に通過させる段階を分離して行ってもよい。その場合、試料113が負の電荷を持つ場合、試料113をナノポア102近傍に集める段階では、V1<V3となるように電圧を印加する。このときにV2はどのような電位でもよいが、V3≧V2としてもよい。次に、試料113をナノポア102に通過させる段階では、V1≦V3<V2となるように電圧を印加するか、あるいはV1<V2で電圧印加して、V3は開放とすればよい。このように一旦試料113をナノポア102開口部近傍に集め、その後に、試料113をナノポア102を通過させることで、多くの試料を短時間で通過させることができる。すなわち本発明の電圧印加手段は、各電極の電位がV1(第1の電極)<V3(第3の電極)と同時にV3(第3の電位)≧V2(第2の電位)となるように電圧を印加可能であり、かつその後にV1≦V3<V2となるように電圧を印加するか、あるいはV1<V2で電圧印加して、V3は開放とするように変更することができるよう、第3の電極と第2の電極の間の電圧を可逆的に切替可能に構成されていることが好ましい。ここで「可逆的に」とは、例えば、V3≧V2となる電圧印加状態と、V3<V2となる電圧印加状態又はV3開放状態とを相互に容易に切り替えられることを意味する。
【0056】
この手法では、封鎖電流の検出開始のタイミングを制御できるので、試料がナノポアを通過している時間のみを検出することができ、効率的なデータ収集が可能となる。試料がナノポアを通過していない状態は、ベースラインの状態をモニタリングする場合を除いて、試料を分析する上では無駄なデータとなる。短時間に膨大なデータが生じる本計測法ではこのような無駄なデータ収集を回避し効率的にデータ収集できるため、重要な技術であるといえる。
【0057】
上記は、試料が正の電荷を持つ場合も実施可能であり、その場合、各電極間に、試料が負の電荷を持つ場合とは逆向きの電位差が生じるようにする。
【0058】
本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置のチャンバ部を、第3の電極を有しないチャンバ部と比較して説明する。図2にはナノポア基板をその内部に配置しているがその基板に第3の電極を有しないチャンバ部の構成を示している。チャンバ201は、ナノポア202を有するナノポア基板203を隔てて2つの閉じられた空間204と205で構成され、流入路206、207と、流出路208、209、を介して導入される液体210、211で満たされている。液体210と211は電荷の担い手となる多量のイオン(以下、イオン液体)を含み、さらに、液体210と211のどちらか一方は、分析対象となる少量の試料212を含み、ナノポアの両側に配置された電極213、214で電圧をかけると、イオンと電荷を持った試料はナノポアを通って移動する。イオン液体は本発明と同様であり、例えば塩化カリウム水溶液などを用いる。試料212がナノポア202を通過する際、試料212とナノポア202の物理的、電気的、化学的相互作用を検出することで、試料212の成分を分析する。例えば、負の電荷を有するDNAなどの試料212を空間204に導入し、電極213と電極214に、電極214が高電位となるよう電圧を印加すると、試料212がナノポア202が通る際、試料212がナノポア202内に存在しない時より、存在する時の方が、イオンがナノポアを通過する量が減少するため、電極213と214間における電流値が低下する現象を検出する(封鎖電流方式)ことにより、試料を分析する。
【0059】
しかしこの装置を用いる場合、試料212が低濃度の場合、試料212がナノポア202の開口部へ到達する頻度が小さくなるので、試料212がナノポア202を通過して信号を検出する頻度も小さくなり、計測のスループットが低下することが課題となる。電位差移動方式では、電位差を大きくすることで、到達頻度を大きくすることができるが、試料212がナノポア202を通過する速度も増加するので、信号を正確に取得することが困難となる。例えば、試料がDNAやRNAの場合、0.3〜0.7nmで隣接する各塩基を識別する必要があり、一般的に、1MのKCl水溶液において、1nMの塩基1000個がつらなる2本鎖DNAを用い、100mVの印加電圧の下で、直径5〜10nm、長さ20nmのナノポアを通過させると、頻度は、0.5〜1回/秒であり、通過速度は、1msec以下であるので、1μsec以下の高速サンプリングで100pA程度の1塩基分の信号を取得しなければならない。
【0060】
ナノポア通過頻度を増加させる方法としては、KCl水溶液の濃度をナノポア202の両側の液体210と211で変え、濃度勾配をつくり、ナノポア開口部近傍の電位差を大きくする方法があるが、KCl水溶液の飽和濃度は、20℃で3.4mol/Lであり、濃度勾配を大きくすることも限界がある(M. Wanunu, W. Morrison, Y. Rabin, A. Y. Grosberg, A. Meller, 2009, Nat.Nano, 379)。
【0061】
試料がナノポアを通過する頻度は変えず、計測のスループットを向上させるには、ナノポアの数を増やし、並列化することでも対応できるが、複数個のナノポアを均一なサイズで製造することは困難であり、製造上のばらつきが検出信号のばらつきとなる可能性もあり、高精度の検出が難しい。
【0062】
試料が低濃度のDNAの場合、Polymerase Chain Reaction法(PCR法)などにより増幅する方法もあるが、増幅エラーが生じたり、増幅困難な部位が存在するなど、精度に関する問題点や、Polymeraseなどの酵素を利用するのでコスト高となる問題点から、PCR法を用いない方が望ましい。
【0063】
これに対し、本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置では、チャンバ部の基板に第3の電極を配置して電極114(第1の電極)及び電極115(第2の電極)と第3の電極との間に電圧を印加することにより、試料(荷電した生体高分子)をナノポア開口部の近傍に収集し、且つナノポア通過頻度を容易に向上させることができる。
【0064】
図3−1は、本発明で用いる基板の一実施形態を示している。
図3−1(a)は、基板301の平面図を示す。図3−1(b)は図3−1(c)のA−A線断面図を示す。図3−1(c)は図3−1(a)のI−I線断面図である。
【0065】
図3−1に示すように、チャンバ内に配置される基板301は、ベース(基材)302、薄膜303、電極304、絶縁層305で構成される。
【0066】
基板の薄膜には、ナノメートルサイズの細孔であるナノポア306が設けられている。ナノポア306は、基板を貫通している。
【0067】
ナノポア306のサイズは、1nm〜100nmが望ましい。ナノポアの作製は、集束イオンビームを用いた方法、電子線を用いた方法などの公知の方法により実施することができる(例えば、J.Li, D.Stein et al., 2001, Nature, 412, 166、A.J.Storm et al., 2003, Nat. Mater. 2, 537540参照)。
【0068】
限定するものではないが、材質の好適例に関しては、ベース302としてはケイ素、薄膜303としては窒化ケイ素、酸化ケイ素、又は炭化ケイ素、電極304はとしては、金、白金、タングステン、又はタンタル、絶縁層305としては窒化ケイ素、酸化ケイ素等を有利に利用できる。
【0069】
基板301は、その厚みが100μm〜1,000μmであることが好ましい。ベース302は厚み100μm〜1000μm、電極304は厚み1nm〜100nm、絶縁層は厚み5nm〜50nmであることが好ましい。薄膜の厚みは、第3の電極(試料収集用電極)や計測用電極の配置及び数によっても変化するが、図3−1のような構成の場合、薄膜の厚みが1nm〜10nm、好ましくは、1nm〜5nmであることが好ましい。
【0070】
電極304は、基板のナノポア306の近傍に配置されている。電極304は、例えば図3−1に示すような、ナノポア306を囲む部分と、そこから基板の外側端部へ向かって伸びる電圧を印加するためのリード線として機能しうる部分とから構成されるものであってよい。その場合、ナノポア306を囲む部分及びリード線として機能しうる部分は、それぞれ、直径10nm〜1,000nm、幅10nm〜1,000nmの形状である。
【0071】
電極304及びナノポアを有する基板の作製手順としては、限定するものではないが例えば、ベース302の上に、薄膜303を蒸着し、電極304を、パターンを用いた選択的エッチング又はリフトオフプロセスで加工し、絶縁層305を蒸着した後、ナノポア306の加工を行う方法が挙げられる。複数個のナノポアを形成する場合は、各ナノポアを取り囲む電極毎に異なるリード線を作成し、異なる電圧を印加することが可能である。
【0072】
また図3−2には、基板の別の実施形態307を示している。
図3−2(a)は、基板307の平面図を示す。図3−2(b)は図3−2(c)のB−B線断面図を示す。図3−2(c)は図3−2(a)のII−II線断面図である。
【0073】
図3−2に示す実施形態では、図3−1に示す基板の構造とは電極(第3の電極)の形状が異なっており、電極308は基板の薄膜全面(ナノポアを除き)を覆うように形成されている。電極308の作製は、典型的には、基板全面に電極部材を蒸着することによって簡易に行うことができる。また、ナノポアを薄膜上に複数個形成する場合でも、電極308により、全ナノポアに対して一度に同じ電圧を印加することが可能である。
【0074】
図3−3には、基板の別の実施形態309を示している。
図3−3(a)は、基板309の平面図を示す。図3−3(b)は図3−3(c)のC−C線断面図を示す。図3−3(c)は図3−3(a)のIII−III線断面図である。
【0075】
図3−3に示す実施形態では、図3−1に示す基板の構造とは、絶縁層の形状の点で異なっており、ナノポア近傍において、電極310が空間311に露出するように、絶縁層312が形成されている。この場合、電極310により試料を引き付けることができる空間(電場)が拡大することにより、広範囲に試料を集めやすくなる。基板の作製方法としては、絶縁層312を、パターンを用いた選択的エッチングあるいはリフトオフプロセスで加工する必要がある。
【0076】
また図3−4には、基板の別の実施形態313を示している。
図3−4(a)は、基板313の平面図を示す。図3−4(b)は図3−4(c)のD−D線断面図を示す。図3−4(c)は図3−4(a)のIV−IV線断面図である。
【0077】
図3−4に示す実施形態は、図3−2の実施形態307と図3−3の実施形態309を組み合わせた形状であり、電極314が薄膜全面に形成され、且つ電極314が空間315に露出するように、絶縁層316が形成されている。この実施形態は、図3−2の実施形態307と図3−3の実施形態309の利点を併せ持つ。
【0078】
また図3−5には、基板の別の実施形態317を示している。
図3−5(a)は、基板317の平面図を示す。図3−5(b)は図3−5(c)のE−E線断面図を示す。図3−5(c)は図3−5(a)のV−V線断面図である。
【0079】
図3−5に示す実施形態では、ナノポア318は薄膜319にのみ形成され、ナノポア318を囲んで(すなわち、ナノポアの周囲に)電極320が配置される。この基板の作製手順としては、ベース321の上に膜319を蒸着し、膜319の上に、パターンを用いた選択的エッチングやリフトオフプロセスなどにより、電極320と絶縁層322を予め形成し、その後、薄膜319の部分に、電子線やイオンビームによりナノポア318を加工する。ナノポアを加工するには、ナノポア加工の対象となる膜の厚みが薄い方が有利であり、また絶縁層を蒸着した薄膜にナノポア加工をするよりも薄膜だけの加工では材料が混じりにくいため、薄膜319のみにナノポアを設ける本実施形態では容易な且つ高品質な加工が実現できる。
【0080】
また図3−6には、基板の別の実施形態323を示している。
図3−6(a)は、基板323の平面図を示す。図3−6(b)は図3−6(c)のF−F線断面図を示す。図3−6(c)は図3−6(a)のVI−VI線断面図である。
【0081】
図3−6に示す実施形態では、図3−5の実施形態317に示す基板の構造とは、電極の形状の点で異なり、電極324は、ナノポア端部から後退した部分を除き、薄膜全面に形成されている。
【0082】
また図3−7には、基板の別の実施形態325を示している。
図3−7(a)は、基板325の平面図を示す。図3−7(b)は図3−7(c)のG−G線断面図を示す。図3−7(c)は図3−7(a)のVII−VII線断面図である。
【0083】
図3−7に示す実施形態では、ナノポア326の周囲に電極327と328を多重(2重)に配置することで、試料をより広範囲から集めることが可能である。例えば、試料が負に帯電している場合、内側の電極327に印加する電位V327と、外側の電極328に印加する電位V328を、V327>V328となるようにすることで、試料をナノポア326近傍に集めることができる。試料が正に帯電している場合は、逆向きの電圧を印加すればよい。電極を、3重、4重とすると、より広範囲から試料をナノポア近傍に集めることが可能となる。さらに、V1<V328≦V327<V2となるように電圧を印加することにより、ナノポア近傍に収集した試料を高効率にナノポア通過させることができる。
【0084】
また図3−8には、基板の別の実施形態329を示している。
図3−8(a)は、基板329の平面図を示す。図3−8(b)は図3−8(c)のH−H線断面図を示す。図3−8(c)は図3−8(a)のVIII−VIII線断面図である。
【0085】
図3−8に示す実施形態は、図3−7の実施形態と同様にナノポアの周囲に電極を多重に囲む方法であるが、この図に示すように、さらに電極を多層化することができる。電極330と331は各層において(ナノポア端部から後退させた部分を除き)全面に電極部材を蒸着させた構造である。試料をナノポア近傍に集めるには、例えば、試料が負に帯電している場合、電極330に印加する電位V330と、電極331に印加する電位V331を、V330>V331となるように印加する。試料が正に帯電している場合は、逆向きの電圧を印加すればよい。これにより、さらに強力に試料をナノポア近傍に集めることが可能となる。また多層化することで、電極へのリード線の配置がより容易になる。
【0086】
図3−1〜3−8に示す実施形態では、基板は上部が薄膜、下部がベースとして記載されているが、チャンバに配置されるときは、薄膜とベースの上下の関係は逆であっても構わない。但し、第3の電極は、試料導入区画側に形成されることが好ましい。
【0087】
図3の実施形態に対応するナノポア式生体高分子分析装置は、1個又は複数個のナノメートルサイズの細孔が開いている薄膜と上記薄膜を隔てて2区画に分離される、試料導入側の第1のチャンバ及び試料流出側の第2のチャンバと、上記チャンバの2区画にそれぞれ送液を行う流出入路と、上記基板を隔てて電圧を印加するために設けられた、第1のチャンバに配置される第1の電極と、第2のチャンバに配置される第2の電極と、ナノポア近傍に配置された第3の電極と、電極へ電圧を印加する電源と、電極間の電気信号を増幅するアンプと、アンプのアナログ出力をデジタル出力に変換して記録するアナログデジタル変換機とデータロガーと、を有し、第3の電極の配置が、ナノポアの両開口の内、第1のチャンバ側の近傍であることを特徴とするものであってよい。
【0088】
図4には、本発明の別の実施形態を示す。
図4(a)は本発明のチャンバ部を記載したナノポア計測システム401を示す。図4(b)は図4(a)に示す基板を電極409においてナノポア404の軸方向に鉛直に切断したJ−J線断面図を示す。
【0089】
チャンバやナノポア基板の配置、使用する液体などは、図1の実施形態101と同じであるが、試料402を計測する方法として、図3の封鎖電流とは異なり、トンネル電流を用いる。そのため、ナノポア基板403には、ナノポア404を挟んで対向するトンネル電流計測用の電極405、406を配置することが好ましい。電極405と電極406の間に電圧を印加すると、チャンバ内のその電極間の位置に試料402が存在する場合にトンネル電流が流れ、トンネル電流の大きさから試料の成分を分析することができる。電極407、408、409は、試料402をナノポア404に通過させるのに寄与し、特に、電極409は、図1の実施形態101の電極116と同様に、試料402をナノポア404の近傍に集める機能を果たす。試料402をナノポア404近傍に集めることで、試料402が高頻度にナノポア404を通過するようになり、計測のスループットを向上させることができる。
【0090】
図4の実施形態に対応するナノポア式生体高分子分析装置は、1個又は複数個のナノメートルサイズの細孔が開いている薄膜と上記薄膜を隔てて2区画に分離される、試料導入側の第1のチャンバ及び試料流出側の第2のチャンバと、上記チャンバの2区画にそれぞれ送液を行う流出入路と、上記基板を隔てて電圧を印加するために設けられた、第1のチャンバに配置される第1の電極と、第2のチャンバに配置される第2の電極と、ナノポア近傍に配置された第3の電極と、第3の電極の近傍にありナノポアの軸方向に直行し、それぞれ対向して配置される第4と第5の電極と、電極へ電圧を印加する電源と、電極間の電気信号を増幅するアンプと、アンプのアナログ出力をデジタル出力に変換して記録するアナログデジタル変換機とデータロガーと、を有し、第3の電極の配置が、ナノポア開口の第1のチャンバ側近傍にあり、第4、第5の電極が第2のチャンバ側近傍あるいは、ナノポアが形成されている薄膜内部にあることを特徴とするものであってよい。
【0091】
図5に本発明の別の実施形態を示す。
図5(a)は本発明のチャンバ部を記載したナノポア計測システム501を示す。図5(b)は図5(a)に示す基板を電極502、503においてナノポアの軸方向に鉛直に切断したK−K線断面図を示す。
【0092】
この実施形態では、図4の実施形態の電極409が果たしていた試料を集める機能もトンネル電流計測用の電極である電極502と503が代替する。試料504の成分分析も、電極502と電極503の電極間に生じるトンネル電流により行う。試料504の移動は、電極505と電極506の間の電位差を利用して誘導する。例えば、試料が負の電荷を持つ場合、電極505、506、502、503に印加する電位をそれぞれ、V505、V506、V502、V503とすると、V505<V502<V503<V506とすることで、電極505と電極502の間、及び、電極505と電極503の間で、電位差に依存した力が試料504に働き、試料504をナノポア507近傍に集めることができる。集まった試料504は、電極506に引き寄せられて、ナノポア507を通過し、その際に、電極502と電極503の間を通過する。このため、電極502と電極503の間に生じるトンネル電流の変化を検出することにより試料の成分を計測することができる。
【0093】
試料504をナノポア近傍に集める段階と、試料504の成分を検出する段階を分離して行ってもよい。試料504を集める段階では、V505<V502≦V503、V506<V502≦V503とし、試料を検出する段階では、V505<V502<V503<V506とするように、電圧を印加すればよい。
【0094】
図5の実施形態に対応するナノポア式生体高分子分析装置は、例えば、1個又は複数個のナノメートルサイズの細孔が開いている薄膜と上記薄膜を隔てて2区画に分離される、試料導入側の第1のチャンバ及び試料流出側の第2のチャンバと、上記チャンバの2区画にそれぞれ送液を行う流出入路と、上記基板を隔てて電圧を印加するために設けられた、第1のチャンバに配置される第1の電極と、第2のチャンバに配置される第2の電極と、ナノポア近傍に配置され、ナノポアの軸方向に直行し、それぞれ対向して配置される第3と第4の電極と、電極へ電圧を印加する電源と、電極間の電気信号を増幅するアンプと、アンプのアナログ出力をデジタル出力に変換して記録するアナログデジタル変換機とデータロガーと、を有し、第3と第4の電極が、ナノポア開口の第1のチャンバ側近傍にあることを特徴とするものであってよい。
【0095】
図6に本発明の別の実施形態を示す。
図6(a)は本発明のチャンバ部を記載したナノポア計測システム601を示す。図6(b)は図6(a)に示す基板を電極605においてナノポア602の軸方向に鉛直に切断したL−L線断面図を示す。
【0096】
この実施形態では、図4の実施形態においてナノポア404を挟んで対向する位置に配置したトンネル電流計測用の電極405、406に代えて、ナノポア602の軸方向に沿って並列に計測用の電極603、604が配置される。電極605は、図4の実施形態の電極409と同様に、ナノポア602近傍に試料606を集める役割を果たす。計測用の電極603と604は、互いに非常に近接して配置することが好ましい。例えば、電極603と604の間隔は、好ましくは0.3nm〜20nmであり、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。電極603と604の間を絶縁層が隔てていることも好ましい。また試料収集用電極である電極605と計測用の電極603との間隔は、電極603と604の間隔よりも大きいことが好ましい。電極605と計測用の電極603との間隔は、例えば10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。
【0097】
電極603と電極604の間に電圧を印加すると、試料606がナノポア602を通過する際に、試料の成分に応じたトンネル電流が流れる。試料の移動は、電極607、608、605の電位差を利用して誘導される。例えば、試料606が負に帯電している場合、各電極607、608、605に印加される電位をV607、V608、V605とすると、V607<V605<V608となるように電圧を印加することで、試料606についてナノポア602を通過させることができる。V607とV605の電位差を大きくとることで、試料606がより多くナノポア602近傍に集まり、試料606がナノポア602を通過する頻度が増え、計測のスループットを向上させることができる。
【0098】
図6の実施形態に対応するナノポア式生体高分子分析装置は、例えば、1個又は複数個のナノメートルサイズの細孔が開いている薄膜と上記薄膜を隔てて2区画に分離される、試料導入側の第1のチャンバ及び試料流出側の第2のチャンバと、上記チャンバの2区画にそれぞれ送液を行う流出入路と、上記基板を隔てて電圧を印加するために設けられた、第1のチャンバに配置される第1の電極と、第2のチャンバに配置される第2の電極と、ナノポア近傍に配置された第3、第4、第5の電極と、電極へ電圧を印加する電源と、電極間の電気信号を増幅するアンプと、アンプのアナログ出力をデジタル出力に変換して記録するアナログデジタル変換機とデータロガーと、を有し、第3の電極の配置が、ナノポア開口の第1のチャンバ側近傍にあり、第4、第5の電極が第2のチャンバ側近傍あるいは、ナノポアが形成されている薄膜内部にあり、それぞれの電極は、ナノポア軸方向に垂直であり、且つ、電極同士がそれぞれ平行に配置されることを特徴とするものであってもよい。
【0099】
図7に本発明の別の実施形態を示す。
図7(a)は本発明のチャンバ部を記載したナノポア計測システム701を示す。図7(b)は図7(a)に示す基板を電極702においてナノポアの軸方向に鉛直に切断したM−M線断面図を示す。
【0100】
この実施形態では、図6の実施形態の電極605が果たしていた試料を集める機能も、トンネル電流計測用の電極である電極702が代替する。試料703の成分分析も、電極702と電極704の電極間に生じるトンネル電流を利用して行う。例えば、試料703が負に帯電している場合、電極702、704、705、706に印加される電圧を、それぞれ、V702、V704、V705、V706とすると、V705<V702<V704<V706となるように電圧を印加することで、電極705と電極702の間で試料を集め、電極702と電極704の間に生じるトンネル電流により試料の成分を計測することができる。
【0101】
試料703を集める段階と、試料703を検出する段階を分離してもよい。試料703を集める段階では、V705<V702、V706≦V704≦V702とし、試料を検出する段階では、V705<V702<V704<V706とするように電圧を印加すればよい。
【0102】
図7の実施形態に対応するナノポア式生体高分子分析装置は、例えば、1個又は複数個のナノメートルサイズの細孔が開いている薄膜と上記薄膜を隔てて2区画に分離される、試料導入側の第1のチャンバ及び試料流出側の第2のチャンバと、上記チャンバの2区画にそれぞれ送液を行う流出入路と、上記基板を隔てて電圧を印加するために設けられた、第1のチャンバに配置される第1の電極と、第2のチャンバに配置される第2の電極と、ナノポア近傍に配置された第3、第4の電極と、電極へ電圧を印加する電源と、電極間の電気信号を増幅するアンプと、アンプのアナログ出力をデジタル出力に変換して記録するアナログデジタル変換機とデータロガーと、を有し、第3の電極の配置が、ナノポア開口の第1のチャンバ側近傍にあり、第4の電極が第2のチャンバ側近傍又はナノポアが形成されている薄膜内部に配置され、それぞれの電極は、ナノポア軸方向に垂直であり、且つ、電極同士がそれぞれ平行に配置され、第3の電極と第4の電極の間隔が5nm以下、例えば2nm以下であることを特徴とするものであってもよい。
【0103】
図4〜7には、試料の成分をトンネル電流で検出する計測法を示したが、検出する方法は他の方法でもよい。
【0104】
図8には、キャパシタンス計測により試料の成分を分析する場合のチャンバ、ナノポア、電極の構成を示した、本発明の別の実施形態を示す。
【0105】
図8(a)は本発明のチャンバ部を記載したナノポア計測システム801を示す。図8(b)は図8(a)に示す基板を電極802においてナノポアの軸方向に鉛直に切断したN−N線断面図を示す。
【0106】
この実施形態では、電極802、804及び805はナノポア803の軸方向に沿って並列に配置され、電極802はナノポア803に面してナノポアの近傍に配置されている。電極804と電極805は、薄膜内部の、電極802に近い方のナノポア803の開口部よりも内側に入った位置、すなわち電極802よりも前記試料流出区画側の位置に配置されている。
【0107】
計測用の電極804と電極805との間隔は、図6の実施形態と同様であり、互いに非常に近接して配置することが好ましい。例えば、電極804と805の間隔は、好ましくは0.3nm〜20nmであり、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。電極804と805の間を絶縁層が隔てていることも好ましい。また試料収集用電極である電極802と計測用の電極804との間隔は、図6の実施形態と同様であり、電極804と805の間隔よりも大きいことが好ましい。
【0108】
本実施形態では、試料806がナノポア803を通過する際の、電極804と電極805間の電圧を計測することで、キャパシタンスを計測し、試料の成分を分析することができる。電極802は、試料806をナノポア803近傍に集める機能を果たす。各電極802、807、808に印加される電位をV802、V807、V808とすると、試料が負に帯電している場合、V807<V802<V808となるように電圧を印加することで、試料806をナノポア803に効率よく通過させることができる。
【0109】
図9には、キャパシタンス計測を用いる本発明の別の実施形態を示す。
図9(a)は本発明のチャンバ部を記載したナノポア計測システム901を示す。図9(b)は図9(a)に示す基板を電極902においてナノポアの軸方向に鉛直に切断したO−O線断面図を示す。
【0110】
この実施形態では、図8の実施形態の電極802が果たしていた試料を集める機能もキャパシタンス計測用の電極である電極902が代替する。試料903の成分分析も、電極902と電極904の電極間のキャパシタンスを計測することで行うことができる。例えば、試料903が負に帯電している場合、電極902、904、905、906に印加される電圧を、それぞれ、V902、V905、V906とすると、V905<V902<V906となるように電圧を印加することで、電極905と電極902の間で試料を集めることができる。そして電極902と電極904の間のキャパシタンスを測定することで、試料903の成分を分析することができる。
【0111】
試料903を集める段階と、試料903を検出する段階を分離して行ってもよい。試料903を集める段階では、V905<V902、V906≦V902とし、試料を検出する段階では、V905<V902<V906ととするように電圧を印加すればよい。
【0112】
図10には、本発明における、チャンバへ試料を導入する実施形態の一例を示す。具体的には本発明のチャンバ部、試料容器及び流路を記載したナノポア計測システム1001を示す。
【0113】
この実施形態では、試料容器1002に試料1003が存在し、その試料1003を吸引してチャンバ1004に送り込み、更に、ナノポア1005の開口部の近傍へ集めることができる。試料容器1002とチャンバ1004を結ぶ流路1006の試料容器側の、流路自体、又は流路の近傍に電極1007を配置してもよい。この電極1007とナノポア1005の開口部に配置された電極1008との間に電圧を印加し、電気泳動により、試料1003を試料容器1002からナノポア1005の開口部まで移動させる。流路1006は、試料1003の電荷の状態に応じて、電気浸透流を防いだり、促進させたりするためのコーティングを施してもよい。
【0114】
試料1003の検出部1009は、電極1008よりナノポア1005開口部から離れた領域に配置される。検出方式としては、例えば、前出の、封鎖電流方式、トンネル電流方式、キャパシタンス方式、あるいは、ナノポアと試料のインタラクションにより生じる物理的、電気的、化学的変化を検出する方式が挙げられる。また、検出部1009に電極を用いる場合、電極1008が有する試料1003を移動させる機能を、検出部1009の電極で代替してもよい。その場合、検出部1009は、ナノポア1005の試料1003が導入される開口部付近に配置することができる。例えば、封鎖電流方式で検出する場合、電極1010と電極1011の間に電圧を印加し、試料1003がナノポア1005を通過する際の電流値の変化を計測する。電極1007は、試料1003を試料容器1002からチャンバ1004に移動させると共に、ナノポア1005の近傍へ試料1003を収集する機能をも果たす。
【0115】
図11−1には、本発明の別の実施形態として、バイオロジカルナノポアの近傍に試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部を記載したナノポア計測システム1101を示す。
【0116】
この実施形態では、α−ヘモ−リシン等からなるバイオロジカルナノポア1102が脂質2重膜1103に配置され、脂質2重膜1103は、樹脂製又はケイ素化合物等の材料から構成されうる固体膜1104にあけられた穴1105に配置することができる。固体膜1104の上に、穴1105を取り囲むように配置された電極1106に電圧を印加することで、試料1107がナノポア1102の開口部に集まることを促す。
【0117】
検出は例えば図11−1のように封鎖電流方式を用いることができ、電極1108と電極1109に電圧を印加し、試料1107がバイオロジカルナノポア1102を通過する際の電極1108と電極1109の間を流れる電流値の変化を計測すればよい。各電極1106、1108、1109に印加される電圧をV1106、V1108、V1109とすると、試料1107が負に帯電している場合、V1108<V1106<V1109となるように電圧を印加することにより、電極1108と電極1106の間で試料を集めることができる。さらに電極1108と電極1109に生じる封鎖電流を測定して試料1107の成分を分析すればよい。
【0118】
試料1107を集める段階と、試料1107を検出する段階を分離して行ってもよい。試料1107を集める段階では、V1108<V1106、V1109≦V1106とし、試料1107を検出する段階では、V1108<V1106<V1109とすることにより、効率的に試料をナノポア通過させることができる。
【0119】
図11−2には、本発明の別の実施形態として、バイオロジカルナノポアを直接的に固体膜(薄膜)の穴に配置し、且つナノポアの近傍に試料収集用電極を有するナノポア基板を備えた分析用チャンバ部を記載したナノポア計測システム1101´を示す。図11−2に示すように、脂質2重膜を用いず、直接、バイオロジカルナノポア1102´を固体膜1104´上の穴1105´に配置したものを使用してもよい。バイオロジカルナノポアの製造は、例えば、A.R. Hall; A. Scott; D. Rotem; K.l Mehta; H. Bayley; C. Dekker: Nat. Nano. 5, 874 (2010)に記載されたようにして行うことができる。
【0120】
図12には、試料収集用電極を有するナノポアが複数個配置された分析用チャンバ部を用いる本発明の別の実施形態1201を示す。配置された電極1204、1204´により、各ナノポア1202、1202´近傍へ試料1203、1203´を集めることができる。この場合、各電極1204、1204´に印加される電位を別々に変えることで、各ナノポア1202、1202´を試料1203、1203´が通過する頻度をそれぞれ変えることができる。
【0121】
試料1203、1203´に対する検出部1205、1205´は、試料1203、1203´が導入されるナノポア1202、1202´の開口部や、電極1204、1204´よりも離れた位置、すなわち電極1204、1204´よりも試料流出区画側に配置することが好ましい。
【0122】
使用する試料の検出方式としては、例えば、封鎖電流方式、トンネル電流方式、キャパシタンス方式であってもよいし、あるいはナノポアと試料のインタラクションにより生じる物理的、電気的、化学的変化を検出する方式にて、試料の成分を検出してもよい。試料1203、1203´をナノポア1202、1202´に通すには、電極1206、1206´、1207、1207´に電圧を印加することで行う。電極1204と1204´は同電位でもよく、また、一体化されていてもよい。その場合、各1202、1202´の近傍へ、同じ程度に試料1203、1203´を集めることができる。
【0123】
図12は検出部1205、1205´が封鎖電流方式の場合を示しているが、トンネル電流方式やキャパシタンス方式の場合、電極1206、1206´、1207、1207´は試料1203、1203´を移動させることのみに用いられ、検出には寄与しない。したがって、電極1206と電極1206´は同電位でもよく、また、一体化されていてもよく、同様に、電極1207と電極1207´は同電位でもよく、また、一体化されていてもよい。
【0124】
図12に示すように、本発明のナノポア式生体高分子分析装置は、複数の上記チャンバ図を有するものであってよい。チャンバ部は、2個以上、例えば2〜10個であってよい。複数のチャンバ部は、場合によりチャンバ内部で連通するように接続されていてもよい。
【0125】
複数の電極・流路、複数のチャンバ部、複数のナノポア、複数の電極とは、各要素が1次元あるいは2次元的に複数配置された構造を示す。図示では、各要素が2個表示されているが、本実施例が2個に限定されるものではない。
【0126】
以下では、ナノポア式生体高分子分析装置を用いた生体高分子分析方法について記載する。上記のような本発明に係るナノポア式生体高分子分析装置を用いれば、試料溶液中の試料、特に生体高分子を、高効率にナノポア近傍に収集し、高頻度でナノポアを通過させることができる。この結果、生体高分子の分析効率を大幅に増加させることができ、分析に要する時間を短縮することができる。
【0127】
具体的には、まず、ナノポア式生体高分子分析装置の試料導入区画に、生体高分子を含む試料溶液を導入する。ここで生体高分子は、ポリマー性の任意の生体分子であってよい。生体高分子は、天然由来のものであってよいが、合成したものであってもよく、また天然には存在しない誘導体等であってもよい。生体高分子は、具体的には例えば、核酸、例えば一本鎖DNA(ssDNA)及び二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)及び二本鎖RNA(dsRNA)、DNAとRNAとからなるハイブリッド核酸など;ペプチド核酸;タンパク質、ポリペプチド(100マー以下などのペプチドも含む)、例えばD-又はL-アミノ酸からなるタンパク質やポリペプチド等;及び糖鎖、例えば多糖、糖タンパク質の糖鎖等でありうるが、これらに限定されない。
【0128】
生体高分子を含む試料溶液の濃度は、特に限定されないが、低濃度であっても良好な分析が可能である。例えば試料溶液の濃度は、0.1nM以上であればよく、0.001nm以上であればよく、0.01nM〜1000nM、好ましくは0.01nM〜1nMが好ましい。
【0129】
試料導入区画に生体高分子を含む試料溶液を収容し、電圧印加手段を用いてナノポアの開口部の近傍において電位差を生じさせることにより、帯電した生体高分子をナノポアの開口部の近傍に引き寄せ、収集することができる。続いて、試料導入区画と試料流出区画との間に電位差を生じさせることにより、ナノポア開口部付近に集まった生体高分子を、ナノポア内に誘導し、ナノポアを通過させ、試料流出区画へと引き寄せることができる。
【0130】
電圧印加手段を用いてナノポアの開口部の近傍において電位差を生じさせるには、上記の各実施形態で記載したようにして各電極間への電圧印加を行えばよい。
【0131】
例を挙げて説明すると、例えば図1の実施形態の場合には、試料導入区画に生体高分子を含む試料溶液を収容し、前記第3の電極と第1の電極の間に電圧を印加することにより帯電した生体高分子を収集し、ナノポアを通過させることができる。
【0132】
この際、第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも高く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも低くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加することにより、負に帯電した生体高分子を収集してもよい。
【0133】
あるいは、第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも高く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも高くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加し、その後第3の電極の電位が第2の電極の電位よりも低くなるように電圧を変更することにより、負に帯電した生体高分子を収集し、ナノポア通過を促進することができる。このとき、電圧の変更は、上述のとおり、可逆的な切替手段によって行うことが好ましい。可逆的な切替手段とは、例えば制御装置である。
【0134】
また、第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも低く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも高くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加することにより、正に帯電した生体高分子を収集してもよい。
【0135】
あるいは、第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも低く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも低くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加し、その後第3の電極の電位が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を変更することにより、正に帯電した生体高分子を収集し、ナノポア通過を促進することができる。
【0136】
さらに、ナノポア通過中の生体高分子を、ナノポア式生体高分子分析装置の計測部により計測することができる。この計測には、従来公知のナノポア方式の計測方法を用いればよい。例えば、封鎖電流方式、トンネル電流方式、キャパシタンス方式等の検出法を用いることができる。あるいは、生体高分子に外部光を照射して発生させたラマン散乱光のスペクトルに基づく検出を行ってもよい。
【0137】
本発明の方法を用いれば、生体高分子を検出することができるだけでなく、定量することもでき、さらに生体高分子を構成する各モノマーの配列や組成を分析し、配列解析等を行うこともできる。本発明の方法及び分析装置は、これまで分析が困難であった比較的大きいサイズの生体高分子の分析に適している。本発明の方法及び分析装置は、例えばDNAであれば、勿論lkb未満の短いものも良好に分析できるが、好ましくは1kb以上、さらに好ましくは3kb以上、特に好ましくは4kb以上、例えば1〜5kbの長さのものを、ナノポアを通過させて分析するのに特に好適である。本発明の方法はまた、試料溶液中の低濃度の生体高分子を分析するのに好適である。
【0138】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0139】
101…チャンバ、102…ナノポア、103…ナノポア基板、104…空間(試料導入区画)、105…空間(試料流出区画)、106…流入路、107…流入路、108…流出路、109…流出路、110…液体、111…液体、112…イオン液体、113…試料、114…電極、115…電極、116…電極、117…電流計、201…チャンバ、202…ナノポア、203…ナノポア基板、204…空間(試料導入区画)、205…空間(試料流出区画)、206…流入路、207…流入路、208…流出路、209…流出路、210…液体、211…液体、212…試料、213…電極、214…電極、215…電流計、301…基板、302…ベース、303…膜、304…電極、305…絶縁層、306…ナノポア、307…基板、308…電極、309…基板、310…電極、311…空間、312…絶縁層、313…基板、314…電極、315…空間、316…絶縁層、317…基板、318…ナノポア、319…膜、320…電極、321…ベース、322…絶縁層、323…基板、324…電極、325…基板、326…ナノポア、327…電極、328…電極、329…基板、330…電極、331…電極、401…ナノポア計測システム、402…試料、403…ナノポア基板、404…ナノポア、405…トンネル電流計測用電極、406…トンネル電流計測用電極、407…電極、408…電極、409…電極、501…ナノポア計測システム、502…電極、503…電極、504…試料、505…電極、506…電極、507…ナノポア、601…ナノポア計測システム、602…ナノポア、603…トンネル電流計測用電極、604…トンネル電流計測用電極、605…電極、606…試料、607…電極、608…電極、701…ナノポア計測システム、702…電極、703…試料、704…電極、705…電極、801…ナノポア計測システム、802…電極、803…ナノポア、804…電極、805…電極、806…試料、807…電極、808…電極、901…ナノポア計測システム、902…電極、903…試料、904…電極、905…電極、906…電極、1001…ナノポア計測システム、1002…試料容器、1003…試料、1004…チャンバ、1005…ナノポア、1006…流路、1007…電極、1008…電極、1009…検出部、1010…電極、1011…電極、1101…ナノポア計測システム、1102…バイオロジカルナノポア、1103…脂質2重膜、1104…固体膜、1105…穴、1106…電極、1107…試料、1108…電極、1109…電極、1201…ナノポア計測システム、1202…ナノポア、1202´…ナノポア、1203…試料、1203´…試料、1204…電極、1204´…電極、1205…検出部、1205´…検出部、1206…電極、1206´…電極、1207…電極、1207´…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノポア式生体高分子分析装置であって、
基板で隔てられた試料導入区画と試料流出区画とを有するチャンバと、
前記試料導入区画に設けられた第1の電極及び前記試料流出区画に設けられた第2の電極と、
前記基板に形成されている薄膜と、
前記基板の薄膜に設けられた、前記試料導入区画と前記試料流出区画とを連通するナノポアと、
前記基板の前記ナノポアの近傍に配置された第3の電極と、
電圧印加手段と、
を備えたチャンバ部を有し、
前記電圧印加手段が、第1の電極と第3の電極の間、第1の電極と第2の電極の間、及び第3の電極と第2の電極の間に電圧を印加する手段を含むことを特徴とする、ナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項2】
前記基板が、前記ナノポアに面して配置された計測用電極をさらに備える、請求項1に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項3】
前記ナノポアが、最小直径部で直径1〜100nmを有する、請求項1又は2に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項4】
前記電圧印加手段が、第3の電極と第2の電極の間の電圧を可逆的に切替可能に構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項5】
少なくとも一組の前記計測用電極が、前記ナノポアを挟んで互いに対向して配置されている、請求項2に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項6】
前記ナノポアを挟んで第3の電極に対向して配置された前記計測用電極を備える、請求項2に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項7】
少なくとも一組の前記計測用電極が、前記ナノポアの軸方向に沿って並列に配置され、且つ第3の電極よりも前記試料流出区画側の位置に設けられている、請求項2に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項8】
第3の電極と前記計測用電極とが前記ナノポアの軸方向に沿って並列に配置され、前記計測用電極は第3の電極よりも前記試料流出区画側の位置に設けられている、請求項2に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項9】
第3の電極が、前記試料導入区画側のナノポア開口部の近傍に配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項10】
前記計測用電極が、ナノポア開口部の近傍又は薄膜内部に配置されている、請求項2〜5及び7〜9のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項11】
第3の電極が、ナノポア開口部を除く薄膜全面を覆っている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項12】
第3の電極が、ナノポア開口部の周囲に配置されているか、又はナノポアを挟んで対向する位置に配置されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項13】
第3の電極が、多重に及び/又は多層に配置された2つ以上の電極を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項14】
前記チャンバ部を複数備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノポア式生体高分子分析装置の前記試料導入区画に、生体高分子を含む試料溶液を導入し、前記第3の電極と第1の電極の間に電圧を印加することにより帯電した生体高分子を収集し、ナノポアを通過させて、ナノポアを通過中の生体高分子を計測することを含むことを特徴とする、生体高分子の分析方法。
【請求項16】
前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも高く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも低くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加することにより、負に帯電した生体高分子を収集することを特徴とする、請求項15に記載の分析方法。
【請求項17】
前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも高く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも高くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加し、その後第3の電極の電位が第2の電極の電位よりも低くなるように電圧を変更することにより、負に帯電した生体高分子を収集し、ナノポア通過を促進する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも低く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも高くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加することにより、正に帯電した生体高分子を収集することを特徴とする、請求項15に記載の分析方法。
【請求項19】
前記第3の電極の電位が、第1の電極の電位よりも低く、且つ第2の電極の電位と同じか又はそれよりも低くなるように第1、第2及び第3の電極に電圧を印加し、その後第3の電極の電位が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を変更することにより、正に帯電した生体高分子を収集し、ナノポア通過を促進する、請求項15に記載の分析方法。
【請求項20】
前記生体高分子が、核酸、ペプチド核酸、タンパク質、ポリペプチド、及び糖鎖からなる群より選択される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−36865(P2013−36865A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173567(P2011−173567)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】