説明

ナノレベル構造組成観察装置及びナノレベル構造組成観察方法

【課題】 ナノレベル構造組成観察装置及びナノレベル構造組成観察方法に関し、試料探針の位置合わせを容易にするとともに、大気中での汚染や酸化を防止する。
【解決手段】 ナノレベル構造組成観察装置内の試料探針部2に対向する形で、試料加工手段3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノレベル構造組成観察装置及びナノレベル構造組成観察方法に関するものであり、特に、ナノレベル構造組成観察装置内でナノレベル構造組成観察用試料を加工するための構成に特徴のあるナノレベル構造組成観察装置及びナノレベル構造組成観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(ハードディスクドライブ)の小型化、大容量化が急速に進んでおり、高密度磁気記録を実現するためのヘッド及び媒体の開発が求められている
媒体に微細に配列された記録ビットから発生する磁気的信号を再生ヘッドで高効率に電気信号に変換するために、MRヘッドの微細化・薄層化が求められている。
【0003】
この様に微細化・薄層化されたMRヘッドにおいては、スピンバルブ膜を構成する各層の層厚を精度良く形成するとともに、各層間の界面状態を良好に保つ必要がある。
例えば、膜厚分布が不均一であったり、界面が湾曲していたり、或いは、界面で構成原子が相互拡散して界面が不明確になっていれば、所望の特性が得られなくなる。
【0004】
そこで、従来においては、界面におけるX線の反射を利用した2θ法を用いて、スピンバルブ膜等の各層の膜厚及び界面状態を評価して、結果を製造工程へフィードバックすることによって、性能の向上と製造歩留りの向上を図っていた。
【0005】
しかし、2θ法は界面でのX線の反射強度を利用する手法であるため、界面で構成原子が相互拡散して界面が不明確になっている場合には精度の高い解析が困難であり、また、予期せぬ層が介在していた場合にも、精度の高い解析が困難であった。
【0006】
そこで、この様な問題を解決する手法として、原子レベルの3次元構造を直接観察する手法として3次元アトムプローブ法が知られており(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)、このアトムプローブ法は針状に鋭角に形成された先端径が1μm以下の針状試料にパルス状高電界やレーザを照射し、このエネルギーで、表面の原子或いはクラスターを電解蒸発させ2次元位置検出器により試料の3次元原子レベルの構造を観察するものであるので、ここで、図13を参照して従来のアトムプローブ法を説明する。
【0007】
図13参照
図13は、上述のアトムプローブ法の原理の説明図であり、先端半径が例えば、100nm(=0.1μm)の針状試料61にパルス高電圧を印加して針状試料61の先端から構成物質62,63を電界蒸発させ、飛来する構成物質62,63の到達時間(TOF:Time of Flight)を測定器64によって測定し、到達時間から構成物質62,63のイオン種を同定するものである。
【0008】
この様なアトムプローブ法に用いる試料はFIB(収束イオンビーム)法(例えば、特許文献3或いは特許文献4参照)を用いて加工し、加工後の試料を3次元アトムプローブ装置内に持ち込んで観察をしている。
【特許文献1】特開2002−042715号公報
【特許文献2】特開2001−208659号公報
【特許文献3】特開2003−042929号公報
【特許文献4】特開平03−280342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の3次元アトムプローブ装置では、上述のように試料加工はFIB装置等の別の装置で行い、加工後の試料を3次元アトムプローブ装置内に持ち込んでいるため、試料探針の軸線と3次元アトムプローブ装置の中心軸との精確な位置合わせが困難であり、そのため、精密な電界放射(蒸発)がなされないという虞がある。
【0010】
また、加工後の試料の搬送を大気中で行っているため、大気中での汚染や酸化が発生し、試料の本来の構造を正確に反映した結果にならなかったり或いは汚染層や酸化層が電解蒸発するまで無駄な時間を費やすという問題がある。
【0011】
したがって、本発明は、試料探針の位置合わせを容易にするとともに、大気中での汚染や酸化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、針状試料1の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察装置において、ナノレベル構造組成観察装置内の試料探針部2に対向する形で、試料加工手段3が備え付けられていることを特徴とする。
【0013】
このように、ナノレベル構造組成観察装置内の試料探針部2に対向する形で、収束イオンビーム装置等の試料加工手段3を設けることによって、試料探針部2の中心軸と針状試料1の軸線との精密な軸合わせが可能になり、また、大気による探針表面の汚染や酸化を防止することができるので、精度の高い観察を行うことが可能になる。
なお、この場合の内部エネルギーとしては、パルス状高電界よる電界蒸発が典型的なものであり、また、外部エネルギーとしては、パルスレーザ光等のパルス状電磁波が典型的なものである。
【0014】
この場合、試料探針部2と試料加工手段3とを一直線上に配列することにより、試料探針部2の中心軸と針状試料1の軸線との精密な軸合わせが可能になる。
【0015】
また、ナノレベル構造組成観察装置に、リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5を備えることにより、試料加工手段3と原子或いはクラスタを検出する検出器6との機械的干渉を回避することが可能になり、検出器6の配置の自由度が高まる。
【0016】
なお、この場合のリフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5は、試料探針部2の軸線に対して移動可能に配置しても良いし、或いは、固定配置しても良く、移動可能に配置した場合には、試料加工後にリフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5を観察位置に移動させて観察を行えば良く、また、固定配置した場合には、試料加工手段3からの加工用エネルギービーム7の通過用開口部を設ければ良い。
【0017】
或いは、リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5を備えない場合には、原子或いはクラスタを検出する検出器6を試料探針部2の軸線に対して移動可能に配置すれば良く、針状試料1を加工形成したのち、検出器6を観察位置に移動させて観察を行えば良い。
【0018】
また、上記の各装置において、針状試料1の近傍に引出電極を配置することが望ましく、それによってより精度の高い観察が可能になる。
特に、針状試料1が、多数の針状突起を有する多点測定試料の場合に効果的になる。
なお、引出電極は、針状試料1の加工形成後に針状試料1の近傍に移動配置する。
【0019】
また、ナノレベル構造組成観察装置の内部に、試料の表面を保護する保護膜の成分を検出する質量分析器或いは保護膜成分に起因する発光・吸光を検出する光学手段からなる試料加工終点検知手段を備えることが望ましく、それによって、最適な試料加工が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、同一試料室内で試料加工と測定とを行っているので、試料探針部の中心軸と針状試料の軸線との精密な軸合わせが可能になるとともに、大気中移動の表面汚染や酸化を防止することができ、それによって、精度の高い三次元アトムプローブが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、ナノレベル構造組成観察装置内の試料探針部に対向する形で、収束イオンビーム装置等の試料加工手段を配置し、試料探針部に設けたホルダー(図示を省略)で固定した試料に試料加工手段から収束Gaイオン等の加工用エネルギービームを照射して針状試料に加工したのち、大気中に取り出すことなくそのまま針状試料に外部エネルギー或いは内部エネルギーを印加して針状試料の表面より離脱する原子或いはクラスター等の粒子を検出器、特に、二次元位置敏感型検出器によって検出して、針状試料のナノレベルの3次元構造組成を観察するものである。
【実施例1】
【0022】
ここで、図2乃至図5を参照して、本発明の実施例1のナノレベル構造組成観察方法を説明する。
図2参照
図2は、本発明の実施例1のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図であり、観察室21、観察室21内に設けられ、観察用試料10を固定する試料探針部22、試料探針部22の中心軸とGaイオン銃31の中心軸とが一直線上で重なるように配置したFIB装置30、観察位置に予め配置された中空状のリフレクトロン23、リフレクトロン23により軌道を偏向された原子やクラスタ等がイオン化した荷電粒子26を検出する二次元位置検出器27によって基本構成が構成される。
【0023】
図3参照
図3は、加工前の観察用試料10の説明図であり、測定しようとする試料を予め例えば、20μm角で200μmの長さの棒状試料11に精密カッタで切り出したのち、例えば、直径が0.3mm(=300μm)で先端部か機械的に鋭角に加工されたWワイヤ16の先端に導電性接着剤17で取り付ける。
【0024】
なお、この場合の棒状試料11の構成としては、例えば、シリコン基板12上にTa下地層13を介して測定対象となるCo/Cu多層膜14、及び、Au保護層15を順次積層したものとする。
【0025】
図4参照
図4は、試料加工状態を示す説明図であり、Gaイオン銃31から十分収束されたGaイオン32をリフレクトロンの中空部を通過して棒状試料11に照射して、針状試料18に加工する。
この時、観察時間の無駄をなくすために、Au保護層15を完全に除去するまでGaイオン32の照射を行う。
なお、FIB装置30自体の構成については、上述の特許文献3或いは特許文献4等に記載された構成を用いれば良い。
【0026】
この場合、Gaイオン銃31の中心軸が試料探針部22の中心軸と一直線上で重なるように配置しているので、加工された針状試料18の軸線は試料探針部22の中心軸と一致することになるので、従来のような針状試料18の取付けの際の軸合わせは不要になる。
【0027】
図5参照
図5は、観察状態の説明図であり、針状試料18を形成したのち、観察室21を開放することなく、リフレクトロン23を移動させることなく針状試料18との間に電圧を印加することによって針状試料18の先端部から電界蒸発した原子或いはクラスタ等がイオン化された荷電粒子26をリフレクトロン23によって軌道偏向させて二次元位置検出器27で検出する。
【0028】
このリフレクトロン23は、多数の電極部から構成されており階段状に逆電圧が内部の空間に印加されており、針状試料18とリフレクトロン23との間に電圧を印加することによって針状試料18の先端部から電界蒸発した原子或いはクラスタ等のイオン化された荷電粒子26が、リフレクトロン23のイオン入射出部分24へ進入すると逆印加電圧により最奥端部25に荷電粒子26が到着する前に、逆方向に引き戻され、イオン入射出部分24から射出されて二次元位置検出器27で検出される。
なお、リフレクトロンのイオン入射出部分24は空間であり、最奥端部25も、開放型の空間になっている。
【0029】
従来の測定ではFIB加工後、大気中に暴露してから3次元アトムプローブ装置に導入していたため、安定したデータが得られるのに3次元アトムプローブのイオンカウントから30分の不安定信号領域が存在していたのに対し、本発明の実施例1においては、試料を大気中にさらすことがないので、不安定信号領域は5分と短く、直ちに有効データの取得が可能になる。
【0030】
また、本発明の実施例1においては、リフレクトロン23は移動する必要がないので、リフレクトロン23を試料探針部22の中心軸及び二次元位置検出器27に対して装置のセッテイングの時点で精度良く位置合わせしておくことで、精度の高い観察が可能になる。
【実施例2】
【0031】
次に、図6を参照して、本発明の実施例2のナノレベル構造組成観察方法を説明するが、装置構成が異なるだけで加工手順及び観察手順は上記の実施例1と同様であるので、装置構成のみを説明する。
図6参照
図6は、本発明の実施例2のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図であり、観察室21、観察室21内に設けられ、観察用試料10を固定する試料探針部22、試料探針部22の中心軸とGaイオン銃31の中心軸とが一直線上で重なるように配置したFIB装置30、観察位置に予め配置された中空状のリフレクトロン23、リフレクトロン23により軌道を偏向された原子やクラスタ等がイオン化した荷電粒子26を検出する二次元位置検出器27、及び、内径が例えば、100μmの開口部を有するとともに、針状試料18の先端部の直上に配置された引出電極28によって基本構成が構成される。
【0032】
この引出電極28は、内径が例えば、100μmの開口部を有するとともに、観察時に針状試料18の先端部の直上まで移動され、電圧を印加することによって、針状試料18の先端部から電界蒸発した原子或いはクラスタ等のイオン化された荷電粒子26を引き出す。
【0033】
このように、本発明の実施例2においては、引出電極28を設けているので、荷電粒子28の検出効率が高まるのでより精度の高い観察が可能になる。
【実施例3】
【0034】
次に、図7及び図8を参照して、本発明の実施例3のナノレベル構造組成観察方法を説明するが、装置構成が異なるだけで加工手順及び観察手順は上記の実施例1と同様であるので、装置構成のみを説明する。
図7参照
図7は、本発明の実施例3のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図であり、観察室21、観察室21内に設けられ、観察用試料10を固定する試料探針部22、試料探針部22の中心軸とGaイオン銃31の中心軸とが一直線上で重なるように配置したFIB装置30、試料加工後に観察位置に移動可能に設置したリフレクトロン29、リフレクトロン29により軌道を偏向された原子やクラスタ等がイオン化した荷電粒子26を検出する二次元位置検出器27によって基本構成が構成される。
【0035】
この場合、試料加工時には、リフレクトロン29を退避位置へ退避させた状態で、Gaイオン銃31からの十分収束されたGaイオン32を棒状試料11に照射して、棒状試料11を針状試料18に加工する。
【0036】
図8参照
図8は、観察状態の説明図であり、針状試料18を形成したのち、観察室21を開放することなく、リフレクトロン29と観察位置へ移動して観察を行う。
【0037】
このように、上記の実施例1と同様に、試料を大気中にさらすことがないので、不安定信号領域は短くなり、直ちに有効データの取得が可能になる。
【0038】
また、リフレクトロン23を移動可能に配置しているので、FIB加工工程において飛散した試料構成物質がリフレクトロン29を構成する電極部に付着することがなく、リフレクトロン29の特性を劣化させることがない。
【実施例4】
【0039】
次に、図9及び図10を参照して、本発明の実施例4のナノレベル構造組成観察方法を説明する。
図9参照
図9は、本発明の実施例4のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図であり、観察室41、観察室41内に設けられ、観察用試料10を固定する試料探針部42、試料探針部42の中心軸とGaイオン銃31の中心軸とが一直線上で重なるように配置したFIB装置30、試料加工後に観察位置に移動できるように可能に設置した二次元位置検出器43、及び、二次元位置検出器43と一体になって移動し、例えば内径が100μmを開口部を有する引出電極44によって基本構成が構成される。
【0040】
この場合、試料加工時には、二次元位置検出器43及び引出電極44を退避位置へ退避させた状態で、Gaイオン銃31からの十分収束されたGaイオン32を棒状試料11に照射して、棒状試料11を針状試料18に加工する。
【0041】
図10参照
図10は、観察状態の説明図であり、針状試料18を形成したのち、観察室21を開放することなく、二次元位置検出器43及び引出電極44と一体として観察位置へ移動して観察を行う。
【0042】
この実施例4においても、上記の実施例1と同様に、試料を大気中にさらすことがないので、不安定信号領域は短くなり、直ちに有効データの取得が可能になる。
【0043】
また、二次元位置検出器43及び引出電極44を移動可能に配置しているので、FIB加工工程において飛散した試料構成物質が二次元位置検出器43及び引出電極44に付着することがなく、検出性能を劣化させることがない。
【実施例5】
【0044】
ここで、図11及び図12を参照して、本発明の実施例5のナノレベル構造組成観察方法を説明する。
図11参照
図11は、本発明の実施例5のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図であり、上記の実施例1のナノレベル構造組成観察装置に加工終点検知用の四重極型質量分析器50を観察室21内に組み込んだものである。
【0045】
即ち、このナノレベル構造組成観察装置は、観察室21、観察室21内に設けられ、観察用試料10を固定する試料探針部22、試料探針部22の中心軸とGaイオン銃31の中心軸とが一直線上で重なるように配置したFIB装置30、観察位置に予め配置された中空状のリフレクトロン23、リフレクトロン23により軌道を偏向された原子やクラスタ等がイオン化した荷電粒子26を検出する二次元位置検出器27、及び、試料探針部22の近傍に配置された四重極型質量分析器50によって基本構成が構成される。
【0046】
図12参照
図12は、試料加工状態を示す説明図であり、Gaイオン銃31から十分収束されたGaイオン32をリフレクトロンの中空部を通過して棒状試料11に照射して、針状試料18に加工する。
【0047】
この時、棒状試料11を構成する原子或いはクラスタがイオンエッチングに伴って飛び出すので、この原子或いはクラスタを棒状試料11の近傍に配置した四重極型質量分析器50で検出する。
【0048】
この四重極型質量分析器50によってAu原子が検出されなくなった時点で、Au保護層15が完全に除去されたジャスト加工時であると判断してFIB加工を終了する。
なお、以降の観察手順は上記の実施例1と全く同様である。
【0049】
このように、本発明の実施例5においては、ナノレベル構造組成観察装置に加工終点検知用の四重極型質量分析器50を組み込んでいるので、試料の過剰加工やAu保護層の残存を防止することができる。
【0050】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、試料加工のためにFIB装置を用いているが、必ずしもFIB装置に限られるものではなく、試料を構成する材質によっては、電子ビームを用いても良いものである。
【0051】
また、上記実施例においては、電界蒸発及びイオン化に際して電圧しか印加していないものの、パルス電圧に同期させてレーザ光等のパルス電磁波を印加しても良いものであり、電磁波によるパルス電磁界により試料先端部における電界蒸発を容易に引き起こすことができ、特に、先端部のサイズが大きい場合に効果的である。
【0052】
さらには、蒸発及びイオン化に際して、電界を印加することなく、外部エネルギー、例えば、レーザ光等のパルス電磁波のみで行っても良いものである。
【0053】
また、上記の実施例3においては、引出電極を設けていないが、上記の実施例2と同様に引出電極を設け、リフレクトロンと一体に或いは別に観察位置まで移動するように構成しても良い。
【0054】
また、上記の実施例4においては、引出電極を二次元位置検出器と一体に移動させているが、二次元位置検出器とは別に移動させても良いものである。
【0055】
また、引出電極を設けた場合には、観察用試料としては単体の針状試料に限られるものではなく、平面試料に多数の針状突起物を有する多点測定試料にも有効であり、この場合には、引出電極と二次元位置検出器とを一体に移動させて、各針状突起物を順次観察すれば良い。
【0056】
また、上記の実施例5においては加工終点検知手段として四重極型質量分析計を用いてるが、装置構成が大型化するものの、より高精度の検出を可能にするために扇形磁場型アナライザー質量分析計を用いても良いものである。
また、加工終点検知手段は質量分析器に限られるものではなく、原子吸光分析法や原子発光分析法等の公知の光学的手段を用いても良いものである。
【0057】
また、実施例5は実施例1に対応するものであるが、実施例2乃至実施例4に記載されたナノレベル構造組成観察装置に質量分析器や光学的手段からなる加工終点検知手段を備えても良いものである。
【0058】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 針状試料1の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察装置において、前記ナノレベル構造組成観察装置内の試料探針部2に対向する形で、試料加工手段3が備え付けられていることを特徴とするナノレベル構造組成観察装置。
(付記2) 上記試料探針部と試料加工手段とを一直線上に配列することを特徴とする付記1記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記3) 上記ナノレベル構造組成観察装置が、リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5を備えていることを特徴とする付記1または2に記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記4) 上記リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5が、上記試料探針部2の中心軸に対して移動可能に配置されていることを特徴とする付記3記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記5) 上記リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5が、上記試料探針部2の中心軸に対して固定配置されているとともに、上記試料加工手段3からの加工用エネルギービーム7の通過用開口部を有することを特徴とする付記3記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記6) 上記原子或いはクラスタを検出する検出器6が上記試料探針部2の中心軸に対して移動可能に配置されていることを特徴とする付記1または2に記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記7) 上記試料加工手段3が、収束イオンビーム照射手段であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1に記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記8) 上記針状試料1の近傍に引出電極を配置したことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1に記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記9) 上記ナノレベル構造組成観察装置の内部に試料加工終点検知手段を備えたことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1に記載のナノレベル構造組成観察装置。
(付記10) 付記1乃至9のいずれか1に記載のナノレベル構造組成観察装置を用いたナノレベル構造組成観察方法において、ナノレベル構造組成観察装置内において針状試料1を加工形成したのち、ナノレベル構造組成観察装置外に取り出すことなく前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察することを特徴とするナノレベル構造組成観察方法。 (付記11) 付記4記載のナノレベル構造組成観察装置を用いたナノレベル構造組成観察方法において、ナノレベル構造組成観察装置内において針状試料1を加工形成したのち、上記リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置5をナノレベル構造組成観察位置に移動させて前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察することを特徴とするナノレベル構造組成観察方法。
(付記12) 付記6記載のナノレベル構造組成観察装置を用いたナノレベル構造組成観察方法において、ナノレベル構造組成観察装置内において針状試料1を加工形成したのち、上記原子或いはクラスタを検出する検出器6をナノレベル構造組成観察位置に移動させて前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察することを特徴とするナノレベル構造組成観察方法。
(付記13) 付記8記載のナノレベル構造組成観察装置を用いたナノレベル構造組成観察方法において、ナノレベル構造組成観察装置内において針状試料1を加工形成したのち、上記針状試料1の近傍に引出電極を移動させて前記針状試料1のナノレベルの構造組成を観察することを特徴とするナノレベル構造組成観察方法。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活用例としては、再生ヘッドを構成するGMR素子や磁気記録媒体が典型的なものであるが、再生ヘッド等に限られるものではなく、MISFETにおけるゲート絶縁膜の界面近傍の組成構造や界面状態等が問題となる半導体素子のナノレベル構造組成の解析方法等にも適用されるものであり、さらには、一般のFIB加工によりナノレベル構造を観察する際にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図である。
【図3】加工前の観察用試料の説明図である。
【図4】本発明の実施例1における試料加工状態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1における観察状態の説明図である。
【図6】本発明の実施例2のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図である。
【図7】本発明の実施例3のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図である。
【図8】本発明の実施例3における観察状態の説明図である。
【図9】本発明の実施例4のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図である。
【図10】本発明の実施例4における観察状態の説明図である。
【図11】本発明の実施例5のナノレベル構造組成観察方法に用いるナノレベル構造組成観察装置の概念的構成図である。
【図12】本発明の実施例5における試料加工状態を示す説明図である。
【図13】アトムプローブ法の原理の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 針状試料
2 試料探針部
3 試料加工手段
4 粒子
5 粒子軌道偏向装置
6 検出器
7 加工用エネルギービーム
10 観察用試料
11 棒状試料
12 シリコン基板
13 Ta下地層
14 Co/Cu多層膜
15 Au保護層
16 Wワイヤ
17 導電性接着剤
18 針状試料
21 観察室
22 試料探針部
23 リフレクトロン
24 イオン入射出部分
25 最奥端部
26 荷電粒子
27 二次元位置検出器
28 引出電極
29 リフレクトロン
30 FIB装置
31 Gaイオン銃
32 Gaイオン
41 観察室
42 試料探針部
43 二次元位置検出器
44 引出電極
50 四重極型質量分析器
61 針状試料
62 構成物質
63 構成物質
64 測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状試料の表面より、外部エネルギー或いは内部エネルギーにより原子1つ1つ或いは複数の元素からなるクラスター1集団1集団が外部空間に離脱することにより前記針状試料のナノレベルの構造組成を観察するためのナノレベル構造組成観察装置において、前記ナノレベル構造組成観察装置内の試料探針部に対向する形で、試料加工手段が備え付けられていることを特徴とするナノレベル構造組成観察装置。
【請求項2】
上記試料探針部と上記試料加工手段とを一直線上に配列させたことを特徴とする請求項1記載のナノレベル構造組成観察装置。
【請求項3】
上記ナノレベル構造組成観察装置が、リフレクトロン型の粒子軌道偏向装置を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のナノレベル構造組成観察装置。
【請求項4】
上記原子或いはクラスタを検出する検出器が上記試料探針部の中心軸に対して移動可能に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のナノレベル構造組成観察装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のナノレベル構造組成観察装置を用いたナノレベル構造組成観察方法において、ナノレベル構造組成観察装置内において針状試料を加工形成したのち、ナノレベル構造組成観察装置外に取り出すことなく前記針状試料のナノレベルの構造組成を観察することを特徴とするナノレベル構造組成観察方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2006−258772(P2006−258772A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80644(P2005−80644)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】