説明

ナノワイヤを用いた食品添加物のL−グルタミン酸ナトリウム検出用バイオセンサ及びその製造方法

本発明は、電気的特性の優れたナノワイヤを用い、かつ、1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間における基板表面に、検出しようとする目標物質であるグルタメート、特に、食品添加物であるL−グルタミン酸ナトリウムに対するレセプタを固定化することにより、L−グルタミン酸ナトリウムの検出感度を増加させたバイオセンサ及びその製造方法に関する。本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサは、ナノワイヤが選択的に固体表面に行列に整列された配列で製造できる。このようなバイオセンサは、サイズを非常に小さくすることができ、ナノワイヤの電気的特性の低下を防ぐことができるため、少量のL−グルタミン酸ナトリウムだけでも非常に敏感にグルタメートを検出することができ、加工食品に存在する食品添加物を検出する携帯用バイオセンサとして効果的に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤを用いたグルタメート検出用バイオセンサ及びその製造方法に関し、より詳細には、電気的特性の優れたナノワイヤを用い、かつ、1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間における基板表面に、検出しようとする目標物質のグルタメートに対するレセプタを固定化することにより、グルタメートの検出感度を増加させたバイオセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズの小径を有する物質は、独特の電気的、光学的、機械的特性のため、近年、非常に重要な物質として注目されている。これまで進められてきたナノ構造に関する研究は、量子サイズ効果といった新たな現象により、将来における新たな光素子物質としての可能性を示している。特に、ナノワイヤの場合、単一電子トランジスタ素子のみならず、新たな光素子材料として脚光を浴びている。
【0003】
ナノワイヤの代表的な物質であるカーボンナノチューブは、炭素からなる炭素同素体であって、1個の炭素が他の炭素原子と六角形のハニカム構造で結合されてチューブ状をなしている物質であり、チューブの直径がナノメートル水準で極めて小さな領域の物質である。このようなカーボンナノチューブは、特に、優れた機械的特性、電気的選択性、優れた電界放出特性、高効率の水素吸蔵媒体特性などを有し、現存する物質の中では欠陥がほとんどない完壁な新素材として知られている。
【0004】
近年、カーボンナノチューブのようなナノワイヤを用いて高容量のバイオ分子検出センサが開発されている。バイオセンサにカーボンナノチューブのようなナノワイヤが用いられる理由は、ラベリングを必要とせず、蛋白質の変形なく水溶液上で反応を進行させることができるからである。すなわち、一般的なバイオ分子の検出方法では、反応結果を検出する方法として蛍光物質または同位元素などを用いていたが、蛍光物質または同位元素の場合は、人体に非常に有害であり、検出過程も複雑であった。反面、検出時にナノワイヤの電気的特性を用いれば、人体に対する有害性なくより簡便かつ正確に反応結果を検出することができるという利点がある。
【0005】
しかし、従来のナノワイヤまたはカーボンナノチューブを用いたバイオセンサでは、ナノワイヤまたはカーボンナノチューブ上に生体物質と直接反応できる物質を結合させていたが、このとき、抵抗が増加して電気的特性が低下し、結果的に、検出時の感度が低下するという問題があった。また、ナノワイヤの表面にポリマー膜を被覆させるか、リンカー分子を介してナノワイヤの表面に生体物質を直接固定化させることも、各ナノワイヤの電気的特性を大きく変形させるという問題があった。
【0006】
したがって、ナノワイヤの優秀かつ便利な電気的特性を用いながらも、電気的特性が低下せず、感度の高いバイオセンサに対する要求が増加しているのが実情である。
【0007】
一方、最近、食品工業の発達により、市中には様々な種類の加工食品が登場している。これに伴い、食品に用いられる食品添加物の種類や消費量も増えている。食品添加物は、食品を製造、加工または保存するのに欠かせないため、使用せざるを得ないものの、厳密にいうと、食品本来の成分ではない異質物であり、少量とはいえ、飲食物を通して一生摂取するという点から安全性の確保が重要視されている。一般の消費者は、食品添加物に対して単に漠然とした疑問や不安感を抱いているだけで、どの食品に食品添加物があるのか、その安全性はどうなのかを理解していない場合がほとんどである。したがって、どの食品に食品添加物が入っているのかを容易に確認できる方法が次第に要求されているのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術課題は、グルタメート、特に、食品添加物であるL−グルタミン酸ナトリウムの検出に使用可能であり、電気的特性に優れ、検出感度の高いバイオセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術課題を達成するために、本発明は、固体基板と、該固体基板の表面に行列に整列されており、両末端に電極の付着したナノワイヤが存在する1つ以上の信号変換部と、前記固体基板の表面における1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間に存在し、グルタメートと結合可能なグルタメートオキシダーゼが付着している1つ以上の信号感知部とを備えてなることを特徴とするグルタメート検出用バイオセンサを提供する。
【0010】
また、本発明は、固体基板の表面にナノワイヤを集積させるステップと、前記ナノワイヤの両末端に電極を蒸着させた後、ポリマーを用いて前記電極をコーティングするステップと、前記1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間における基板表面に官能基を付着させるステップと、前記基板表面の官能基にグルタルアルデヒドを付着させるステップと、前記グルタルアルデヒドにグルタメートと結合可能なグルタメートオキシダーゼを固定化するステップとを含むグルタメート検出用バイオセンサの製造方法を提供する。
【0011】
また、前記バイオセンサを用いてグルタメートを検出する方法を提供する。
【0012】
本発明において、「ナノワイヤ」は、中空のナノチューブ、内部が充填されているナノワイヤ及びナノロッドを含む意味で使われている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサは、ナノワイヤが選択的に固体表面に行列に整列された配列で製造できる。このようなバイオセンサは、ナノワイヤの電気的特性の低下を防ぐことができるため、少量のグルタメートだけでも非常に敏感にグルタメートを検出することができ、加工食品に存在する食品添加物を検出するバイオセンサとして効果的に使用することができる。また、前記バイオセンサは、小型化が可能なため、個人携帯用通信端末や携帯用検出器に付着して携帯用食品添加物検出器として応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
従来のナノワイヤを用いたバイオセンサは、検出しようとする目標物質と結合可能なレセプタをナノワイヤ上に直接固定化させた構造を有する。しかし、本発明に係るバイオセンサは、ナノワイヤの表面は処理せず、ナノワイヤの周辺、すなわち、1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間に存在する基板表面に、検出しようとする物質と結合可能なレセプタを固定化させた構造を有するという点に特徴がある。
【0016】
本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサは、固体基板と、該固体基板の表面に行列に整列されており、電極の付着したナノワイヤが存在する1つ以上の信号変換部と、前記固体基板の表面における1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間に存在し、グルタメートと結合可能なレセプタとしてグルタメートオキシダーゼが付着している1つ以上の信号感知部とを備えてなる。
【0017】
本発明において、グルタメートは、具体的には、L−グルタミン酸ナトリウムである。本発明が検出しようとする食品添加物のL−グルタミン酸ナトリウムは、グルタミン酸一ナトリウム(monosodium glutamate)とも呼ばれ、水溶液に溶解しているときは、ナトリウムイオンとL−グルタメートとに分離されて存在する。したがって、本発明に係るバイオセンサは、L−グルタメートのみを選択的に反応させる物質を用いて、窮極的に食品添加物であるL−グルタミン酸ナトリウムを検出することができる。
【0018】
上記で固体基板は、シリコン基板またはガラス基板のように、絶縁体表面を有する基板であることが好ましく、前記シリコン基板は、シリコン酸化膜(SiO)であることが好ましいが、通常、バイオセンサに使用できる基板であれば制限なく使用することができる。
【0019】
本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサは、前記固体基板の表面上に存在する信号感知部と信号変換部とを備える。前記「信号感知部」は、検出しようとする目標物質とこれに対する感知能力があるレセプタまたは生化学物質とが反応して、物理的または化学的変化が発生する部位であり、「信号変換部」は、電極などのような物理または化学的変換装置を用いて、信号感知部で発生した信号を定量化する部位である。
【0020】
本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサの信号変換部は、固体基板の表面に行列に整列されているナノワイヤからなり、ナノワイヤの両末端に電極が付着している部位である。前記電極は、信号変換部を外部の信号印加回路と検出回路とに接続することにより、外部で電気的特性の変化を観察できるようにする接着点の役割を果たす。信号感知部で発生する物理的・化学的反応は、信号変換部の電気的特性の変化をもたらし、これは、電極という外部との接着点を介した外部での検出を可能にする。前記電極は、吸着金属と導電金属との二重構造となっており、熱蒸着器(thermal evaporator)や、スパッタ(sputter)、または電子線蒸着器(e−gun evaporator)などの装置を用いて順次蒸着することができる。前記吸着金属は、ナノワイヤと一次的な接触を行い、表面との強い結合力を有していなければ、二次的に蒸着された導電金属を堅固に付着することができない。吸着金属としては、チタンまたはクロムのように、ナノワイヤとの電気的接触特性に優れ、物理的堅固性のために、表面との強い吸着性を有する金属を用いることが好ましい。導電金属としては、導電性の高い金属であれば制限なく使用することができ、具体的には、金を用いることができる。
【0021】
また、本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサの信号感知部は、前記ナノワイヤと電極とからなる信号変換部の周辺に存在し、検出しようとする目標物質であるグルタメートと反応できるレセプタとしてグルタメートオキシダーゼが付着している。
【0022】
前記グルタメートオキシダーゼは、リンカーとしてグルタルアルデヒドにより信号感知部の表面に存在する官能基に付着している。しかし、酵素の付着は、このような方法に制限されない。酵素の役割は、グルタメートの酸化を触媒させて反応物を生成させ、反応物中でアンモニアがカーボンナノチューブの電気伝導度を変化させるものであるため、酵素は、ナノワイヤ間の基板表面に固定されるか、ナノワイヤに直接固定されているか、あるいは電極上に固定され得る。
【0023】
前記グルタルアルデヒドと固体基板とを連結する官能基は、アミン基、カルボキシル基、及びチオール基からなる群より選択されるいずれか1つ以上であることが好ましいが、これらに制限されない。
【0024】
本発明に係るバイオセンサの信号変換部に蒸着されるナノワイヤは、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、酸化亜鉛ナノワイヤ、及び酸化バナジウムナノワイヤからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることが好ましいが、これらに制限されない。
【0025】
具体的には、図2による本発明のグルタメート検出用バイオセンサの構造を詳細に説明すると、次のとおりである。
【0026】
まず、固体基板107の表面には、1つ以上の信号変換部102が存在し、信号変換部102は、カーボンナノチューブ104とカーボンナノチューブの両末端の電極105とからなる。前記電極105は、ポリマーによってコーティング106されている。信号変換部102は、固体基板上に行列に整列されており、1つの信号変換部と他の1つの信号変換部との間に存在する、すなわち、カーボンナノチューブ104が蒸着されていない部位が信号感知部101になる。前記信号変換部は、官能基に連結されたグルタルアルデヒドによりグルタメートオキシダーゼ103が付着する空間である。
【0027】
一方、本発明では、前記グルタメート検出用バイオセンサを製造する方法を提供する。本発明に係るグルタメート検出用バイオセンサの製造方法は、固体基板の表面にナノワイヤを集積させるステップと、前記ナノワイヤの両末端に電極を蒸着させた後、ポリマーを用いて前記電極をコーティングするステップと、前記1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間における基板表面に官能基を付着させるステップと、前記基板表面の官能基にリンカーとしてグルタルアルデヒドを付着させるステップと、前記グルタルアルデヒドにグルタメートと結合可能なグルタメートオキシダーゼを固定化するステップとを含んでなる。
【0028】
本発明に係るバイオセンサを製造するためには、まず、シリコン酸化膜またはガラス基板のような固体基板の表面にナノワイヤを集積させる。基板表面に対するナノワイヤの集積は、当業界において通常用いられているナノワイヤの集積方法が利用可能であるが、本発明によるナノワイヤの集積方法、すなわち、固体基板の表面を滑らかな分子膜でパターニングした後、吸着させようとするナノ構造が、滑らかな分子膜から固体表面にスライドされながら、固体表面に直接吸着される方法を用いることが好ましい。
【0029】
その後、ナノワイヤの両末端に電極を蒸着し、蒸着方法としては、熱蒸着、電子線蒸着、スパッタなどのような、通常の半導体電極を形成する工程を用いる。蒸着された電極は、リーク電流を最小化するためにポリマーでコーティングする。このように、ナノワイヤと電極とからなる信号変換部が形成された後は、1つのナノワイヤと他のナノワイヤとの間における基板表面に官能基を付着させ、付着された官能基にリンカーとしてグルタルアルデヒドを付着させた後、検出しようとする物質であるグルタメートと結合可能なレセプタとしてグルタメートオキシダーゼを固定化する。
【0030】
グルタメートオキシダーゼは、グルタメートを分解する酵素であって、自らは化学的に変化せず、グルタメートを、様々な副生成物、すなわち、α−ケトグルタレート、過酸化水素、及びアンモニアに分けられるように触媒の役割を果たす。このとき、様々な副生成物のうち、特に、アンモニアがナノワイヤの電気的特性を変化させ、このような変化によりグルタメートを検出することになる。
【0031】
本発明では、従来技術とは異なり、ナノワイヤが蒸着されていない基板にのみ選択的に官能基を付着したという点に特徴があるが、本発明では、ナノワイヤが集積されていない基板にのみ選択的に官能基を付着するために、シラン基を有する化合物を用い、具体的には、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane;APTES)を用いた。シラン基にあるエトキシ基は、シリコン酸化膜またはガラス表面上のヒドロキシ基に接すると、エトキシ基が分離されて強い共有結合によりシリコン表面に結合され、このような共有結合により結合されなかった分子は、洗浄過程で全て洗い落とされてしまうため、選択的にナノワイヤが集積されていない表面にのみ官能基が付着する。具体的には、ナノワイヤが集積された基板を、シラン基を有する化合物に5〜20分浸漬させることが好ましい。前記時間だけ浸漬させると、官能基が、ナノワイヤの集積されていない表面にのみ選択的により効果的に付着可能である。
【0032】
一般的に、ナノワイヤは、その種類に応じて表面の化学的構造が完全に異なる。例えば、カーボンナノチューブは、六角形の炭素格子構造となっており、シリコンナノワイヤは、シリコン結晶構造をなしている。このほか、酸化亜鉛ナノワイヤ、酸化バナジウムナノワイヤなどの各々のナノワイヤは、表面の化学的特性が互いに異なる。固体表面に多様な種類のナノワイヤを集積した後、追加的に検出しようとする目標物質と結合可能なレセプタを固定しようとするならば、ナノワイヤ毎に異なる化学的工程を適用しなければならず、これらの工程は、非常に複雑な条件を満たさなければならない場合が多い。すなわち、カーボンナノチューブの場合、フェニル基またはアルキル基とカーボンナノチューブとの間の疏水性相互作用(hydrophobic interaction)に基づく非共有結合を用いてレセプタを固定化するか、カーボンナノチューブ表面のカルボキシル基を攻撃する共有結合に基づくレセプタを固定化する技術を利用しており、シリコンナノワイヤの場合は、シラン基を用いている。これは、ナノワイヤの大量集積回路工程後、レセプタの固定化作業を非常に複雑にし、時間が非常に長くなるという問題を生じる。また、1種類のナノワイヤのための工程が、他のナノワイヤには非常に有害な工程になることもある。しかし、本発明では、検出しようとする目標物質と結合可能なレセプタをナノワイヤに直接付着させるのではなく、ナノワイヤ周辺の基板表面に固定化させ、ナノワイヤの種類に依存せずにレセプタを固定化させたため、工程ステップ上の時間及び資源の節減効果があるという利点がある。
【0033】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0034】
ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は、下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[実施例1]グルタメート検出用バイオセンサの製造
シリコン酸化膜基板の表面にフォトリソグラフィを用いてフォトレジストパターンを形成させた。その後、オクタデシルトリクロロシラン(octadecyl trichloro silane;以下、「OTS」とする)(シグマ)とエタノールとが1:500(容積比)の割合で混合された溶液に浸漬して、基板表面にOTS分子膜を形成させた。
【0036】
その後、前記分子膜が形成された基板をアセトン溶液に浸漬してフォトレジストを除去し、カーボンナノチューブ溶液のo−ジクロロベンゼン(o−dichlorobenzene)に浸漬して、基板表面にカーボンナノチューブを自己組織化した。
【0037】
前記基板上のカーボンナノチューブにチタン電極を蒸着させ、SU−8のようなポリマーで電極をコーティングした。
【0038】
その後、カーボンナノチューブが集積された基板を、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyltriethoxysilane;APTES)(シグマ)溶液に5分間浸漬し、各カーボンナノチューブ間のシリコン基板の表面にのみ選択的にアミン基を付着させた。
【0039】
上記アミン基が付着した基板にグルタルアルデヒドをリンカーとして結合させた後、グルタメートオキシダーゼ溶液に浸漬して、基板表面のアミン基にレセプタとしてグルタメートオキシダーゼを結合させ、グルタメート検出用バイオセンサを製造した。具体的には、まず、上記のように、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて基板表面にアミン基を生成させた。その後、2.5%のグルタルアルデヒド水溶液に1〜3時間程度サンプルを浸漬し、このとき、グルタルアルデヒドのアルデヒド基とアミン基との共有結合により結合することになる。こうすることにより、アルデヒド基が官能基に変化する。または、アミン基の官能化過程を経ずに直ちにアルデヒド基を固定化させることもあり得る。このとき、トリメトキシシランアルデヒドを用いる。
【0040】
その後、pH7.4のPBSバッファ溶液(Phosphate Buffer Saline)にグルタメートオキシダーゼを溶解させた後、アルデヒド基が固定化されたサンプル上に前記酵素溶液を滴下し、12時間反応させた。このような過程により、酵素のアミノ酸配列にあるアミン基と基板表面に固定化されたアルデヒド基とが共有結合により結合する。
【0041】
図1に、本発明に係るバイオセンサの製造過程を示しており、図2に、完成したバイオセンサの構造を示している。
【0042】
[試験例1]グルタメート検出試験
実施例1で製造されたグルタメート検出用バイオセンサの性能試験を行った。
【0043】
従来の方法にて製造されたグルタメートオキシダーゼが固定化されていないバイオセンサ(対照群)と、上記実施例1で製造されたグルタメートオキシダーゼが固定化されたバイオセンサとにバッファ溶液(PBS pH7.4)を滴下した後、各基板の電極の両末端に0.01Vの電圧を印加し、時間に応じて電流をサンプリングした。グルタメート(L−グルタミン酸ナトリウム)がないとき及び注入した後の電流の変化を測定した結果を、図3及び図4に示している。
【0044】
図3に示すように、従来の方法にて製造されたグルタメートオキシダーゼが固定化されていないバイオセンサに、L−グルタミン酸ナトリウムを投与した場合、時間が経過しても電流が一定であることがわかった。
【0045】
反面、図4に示すように、グルタメートオキシダーゼが固定化されたバイオセンサに、L−グルタミン酸ナトリウム濃度5mMを投与した場合、約20秒後、電流が減少していることがわかった。すなわち、少量のグルタメートでも効果的にグルタメートを検出することができるため、本発明のバイオセンサの感度が高いことを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るバイオセンサの製造過程を示す概略図である。
【図2】本発明に係るバイオセンサの構造である。
【図3】従来の方法にて製造されたバイオセンサに、L−グルタミン酸ナトリウムを投与した後の電気伝導度の変化を示すグラフである。
【図4】本発明に係る、グルタメートオキシダーゼが固定化されたバイオセンサに、L−グルタミン酸ナトリウムを投与した後の電気伝導度の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基板と、
該固体基板の表面に行列に整列されており、両末端に電極の付着したナノワイヤが存在する1つ以上の信号変換部と、
前記固体基板の表面における1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間に存在し、グルタメートと結合可能なグルタメートオキシダーゼが付着している1つ以上の信号感知部と
を備えてなることを特徴とするグルタメート検出用バイオセンサ。
【請求項2】
前記グルタメートが、グルタミン酸一ナトリウム(monosodium glutamate)であることを特徴とする請求項1に記載のグルタメート検出用バイオセンサ。
【請求項3】
前記固体基板が、シリコン基板またはガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載のグルタメート検出用バイオセンサ。
【請求項4】
前記グルタメートオキシダーゼが、グルタルアルデヒドにより信号感知部の表面の官能基に付着していることを特徴とする請求項1に記載のグルタメート検出用バイオセンサ。
【請求項5】
前記官能基が、アミン基、カルボキシル基、及びチオール基からなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項4に記載のグルタメート検出用バイオセンサ。
【請求項6】
前記ナノワイヤが、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、酸化亜鉛ナノワイヤ、及び酸化バナジウムナノワイヤからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のグルタメート検出用バイオセンサ。
【請求項7】
固体基板の表面にナノワイヤを集積させるステップと、
前記ナノワイヤの両末端に電極を蒸着させた後、ポリマーを用いて前記電極をコーティングするステップと、
前記1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間における基板表面に官能基を付着させるステップと、
前記基板表面の官能基にグルタルアルデヒドを付着させるステップと、
前記グルタルアルデヒドにグルタメートと結合可能なグルタメートオキシダーゼを固定化するステップと
を含むことを特徴とするグルタメート検出用バイオセンサの製造方法。
【請求項8】
前記グルタメートが、グルタミン酸一ナトリウム(monosodium glutamate)であることを特徴とする請求項7に記載のグルタメート検出用バイオセンサの製造方法。
【請求項9】
前記固体基板が、シリコン基板またはガラス基板であることを特徴とする請求項7に記載のグルタメート検出用バイオセンサの製造方法。
【請求項10】
前記官能基が、アミン基、カルボキシル基、及びチオール基からなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項7に記載のグルタメート検出用バイオセンサの製造方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤが、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤ、酸化亜鉛ナノワイヤ、及び酸化バナジウムナノワイヤからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項7に記載のグルタメート検出用バイオセンサの製造方法。
【請求項12】
前記1つのナノワイヤと他の1つのナノワイヤとの間における基板表面に官能基を付着させるステップが、ナノワイヤが集積された基板を、シラン基を有する化合物に5〜20分間浸漬することによって行われることを特徴とする請求項7に記載のグルタメート検出用バイオセンサの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオセンサを用いてグルタメートを検出することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−532698(P2009−532698A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504126(P2009−504126)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/KR2007/001648
【国際公開番号】WO2007/114650
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(507171856)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファンデーション (14)
【出願人】(508298835)マイテック コーポレーション (2)