説明

ナノ微粒子造影剤を用いた血管撮像の方法

【課題】組織の潅流及び血液の管外遊出を撮像するための新規かつ感受性ある方法を提供する。
【解決手段】対象の血管内の蓄積マクロファージを検出又は評価するためのin vivoでの方法であって、a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、b)前記造影剤を検出することで、前記血管内の前記蓄積マクロファージの画像を形成するステップとを含む方法。このような評価は、狭心症、心臓発作、卒中等に関連する器官の損傷の評価や、動脈瘤、外傷後のびまん性出血等に関連する血管漏出の評価を含め、数多くの臨床上の診断に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、引用をもってその内容をここに援用することとする、2001年11月7日
に出願の標題「ナノ微粒子造影剤を用いた血管撮像の方法」の米国仮出願番号60/346,162
号、及び、2002年1月8日出願の標題「ナノ微粒子造影剤を用いた血管撮像の方法
」の米国仮出願番号60/346,519号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
冠状動脈性心疾患(又は冠状動脈性疾患(CAD))は米国の男女において最も多い死因
である。米国心臓協会によれば、米国では約29秒で1人が、冠状動脈性心疾患関連の事
象に見舞われ、このような事象のためにほぼ毎秒、1人が死亡している。40歳以降に冠
状動脈性心疾患に罹患する生涯リスクは、男性の場合49%であり、女性の場合は32%
である。女性は加齢と共にこのパーセンテージがほぼ男性と同じまで増加する。米国では
過去三十年にわたって心疾患による死亡率は着実に減り続けているが、冠状動脈性疾患の
総患者数は、高齢者の増加が原因で、来る30年で大きく増えると予測されている。米国
における心疾患による医療費及び逸失経済生産性は、1995年では600億ドルを超え
たと推定された。
【0003】
冠状動脈性心疾患のリスクを高める因子は数多くある。このリスクのいくつかは家族歴
(即ち遺伝的)に基づくものであるが、他はより制御可能である。このようなリスク因子
には、冠状動脈性心疾患の家族歴(特に50歳前)、男性、65歳以上という年齢、喫煙
、高血圧、糖尿病、高コレステロール値(特に低密度リポたんぱく[LDL]コレステロー
ルレベルの高値と高密度リポたんぱく[HDL]コレステロールレベルの低値)、運動不足
、肥満、血中ホモシステインレベルの高値、及び、女性の閉経後、がある。動脈壁内で炎
症性応答を起こす感染を含め、他の因子が現在調査されている。興味深いことに、最近の
研究では、冠状動脈の内側壁面に位置するマクロファージ(身体組織内からの異物除去に
関与する貪食性白血球)の活性化が、冠状動脈プラークの形成に重要な役割を果たしてい
るのではないか、と示唆されている。さらに、マクロファージは、炎症区域や血管プラー
クなどの異物の沈着区域への遊走能を有することが示されている。
【0004】
病理学的には、冠状動脈性心疾患は、心臓に血液及び酸素を供給する小さな血管の狭窄
を特徴とする。冠状動脈性心疾患は通常、脂肪物質及びプラークの蓄積(アテローム性硬
化症)が原因である。この物質は繊維状の結合組織と関係しており、しばしば、カルシウ
ム塩及び他の残余物質の沈着物を含む。冠状動脈性心疾患により引き起こされる損傷は多
様である。動脈の狭窄と共に心臓への血流は遅くなるか、又は停止し、その結果、胸痛(
安定狭窄症)、息切れ、又は心臓発作(即ち心筋梗塞)などの症状が起きる。血栓形成も
、プラークの蓄積が原因で生じた凹凸のある区域に起きる場合がある。
【0005】
大きな懸念は、血管から剥がれ落ちて細い血管に沈着し、しばしば冠状動脈性心疾患及
びアテローム性硬化症を起こす傾向のある「脆弱性」又は「活動性」プラークである。こ
の物質は剥がれ落ちると血管系を移動して、脳内で起きれば卒中、又は、脚部で起きれば
血管遮断という冠状動脈性の発作を起こすことがある。局部的な等級の高い遮断でも取り
除かれれば症状が収まるであろうが、この患者には通常、後に破裂して梗塞を起こす傾向
のある多数の非遮断性プラークが残っている。
【0006】
冠状動脈性アテローム硬化症の従来の撮像法及び検出法や、静脈内造影剤による強調を
用いた血管撮像法が現在利用できるが、これらの方法及び媒体は、媒体の種類、容量、濃
度、注射技術、カテーテルの大きさ及び部位、撮像技術、心搏出量及び組織の特徴を含め
、数多くの複雑な因子に依存している。これらの因子のうちで特定のもののみが放射線科
医に制御できる(例えばBae, K.T., Heikin, J.P. and Brink, J.A. (1998) Radiology 2
07:647-655 及び Bae, K.T., Heikin, J.P. and Brink, J.A. (1998) Radiology 207:657
-662)を参照されたい。例えば混合及び画線という人為的操作は、腹部のコンピュータ断
層撮影(CT)スキャンの解釈を損ねる場合がある。これらの人為的操作は、主に血管強調
に静脈内造影が及ぼす初回通過(動脈相)効果に関係する(例えば Silverman, P.M. et
al. (1995) Radiographics 15:25-36 and Herts, B.R., Einstein, D.M. and Paushter,
D.M. (1993) J. Roentgenol. 161:1185-1190を参照されたい)。血管空間の外への造影
剤の拡散のために、病巣の顕著性が損なわれるだけでなく、注射開始後2分間以内で画像
を形成する必要も出てくる。これらの物質は、腎臓では大変急速に消失してしまい、充分
な時間、許容できる程度のコントラストを提供できないため、その血管系の撮像には向か
ない。これらの問題はすべて、多種の血管床で血管内血液プールをむらなくコントラスト
強調する必要があるという示唆で強められている。従って、これらの制約に対処する優れ
た撮像法及び造影剤があれば、幅広い臨床上の実用性を有するであろう。
【0007】
発明の概要
本発明は、少なくとも部分的に、限定はしないが血管床(例えば動脈及び静脈床)、器
官組織(例えば心筋組織及び他の器官組織)、及び腫瘍を含め、潅流及び血管組織外への
管外遊出を撮像するための組成物及び方法を提供するものである。さらに本発明は、活性
化マクロファージなどの蓄積マクロファージや、脆弱性プラークなどの血管プラークを撮
像、検出又は評価するための組成物及び方法にも関する。従って、ある局面では、本発明
は、対象の血管中の蓄積マクロファージを検出又は評価する方法であって、対象に有効量
のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出することで、血管内の前記
蓄積マクロファージの画像を形成するステップと、を含む方法を提供するものである。別
の局面では、本発明は、対象の血管内で、脆弱性プラークなどのプラークの蓄積を検出又
は評価する方法であって、対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記
造影剤を検出することで、前記血管内の前記蓄積プラークの画像を形成するステップと、
を含む方法を提供するものである。
【0008】
更なる局面では、本発明は、対象の血管内の蓄積マクロファージを検出又は評価するこ
とにより、血管性疾患又は異常のリスクを予測する方法であって、対象に有効量のナノ微
粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出することで、前記血管内の前記蓄積
マクロファージの画像を形成するステップと、前記対象の血管内の造影剤の蓄積に基づい
て、前記対象の血管性疾患のリスクを予測するステップと、を含む方法を提供するもので
ある。ある実施態様では、当該血管性疾患は、アテローム性硬化症、冠状動脈性疾患(CA
D)、心筋梗塞(MI)、虚血、卒中、末梢血管疾患、及び静脈血栓、から成る群より選択
される。別の実施態様では、血管性疾患又は異常のリスクを予測する本方法を、血管性疾
患又は異常に関する他の公知のリスク因子と組み合わせて用いてよい。
【0009】
更なる局面では、本発明は、対象において、例えば腎臓、肝臓、肺、脾臓、脳、心臓、
又は膵臓などの器官の潅流状況を検出又は評価する方法であって、対象に有効量のナノ微
粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出することで、前記器官の画像を形成
するステップと、を含む方法を提供するものである。ある実施態様では、本方法は、前記
画像を評価して、該器官の前記潅流状況を判定するステップを含む。
【0010】
また更なる局面では、本発明は、毛管などの小さな血管の微小潅流状況を検出又は評価
する方法であって、対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤
を検出することで、前記小さな血管の微小潅流状況の画像を形成するステップと、を含む
方法を提供するものである。ある実施態様では、本方法は、前記画像を評価して、前記血
管の前記微小潅流状況を判定するステップを含む。関連する局面では、本発明は、対象の
腫瘍の潅流状況を検出又は評価する方法であって、対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投
与するステップと、前記造影剤を検出することで、前記腫瘍の前記潅流状況の画像を形成
するステップと、を含む方法を提供するものである。
【0011】
更なる局面では、本発明は、対象において腫瘍の処置を観察する方法であって、対象に
有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出することで、前記腫
瘍の前記潅流状況の画像を形成するステップと、を含み、但し処置前の腫瘍の潅流に比較
したときに腫瘍の潅流に減少があれば、前記腫瘍の処置が効果的であったことを示す、方
法を提供するものである。
【0012】
さらに別の局面では、本発明は、対象において器官の損傷を評価する方法であって、対
象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出することで、前
記器官の画像を形成するステップと、前記画像に基づいて器官の損傷を判定するステップ
と、を含む方法を提供するものである。
【0013】
さらに別の局面では、本発明は、対象において血管からの血液漏出を評価する方法であ
って、前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出す
ることで、前記血管及び血管周囲領域の画像を形成するステップと、前記画像に基づいて
血管の漏出を判定するステップと、を含む方法を提供するものである。
【0014】
本発明のある実施態様では、本ナノ微粒子造影剤は非水溶性の造影剤である。別の実施
態様では、本ナノ微粒子造影剤は、重元素ヨウ素又はバリウムを含む。ある好適な実施態
様では、前記造影剤はPH-50である。
【0015】
更なる実施態様では、本ナノ微粒子造影剤を含む粒子の平均サイズは約20ナノメート
ル乃至約750ナノメートルである。ある好適な実施態様では、本ナノ微粒子造影剤を含
む粒子の平均サイズは好ましくは約200ナノメートル乃至約400ナノメートルであり
、より好適には約300ナノメートル未満である。
【0016】
さらに別の実施態様では、撮像をX線撮影、超音波検査法、コンピュータ断層撮影法(
CT)、コンピュータ断層血管造影法(CTA)、例えば冠状動脈血管造影法、又は他の血管
域(例えば腎臓、脳、肝臓等)の血管造影法、電子ビーム(EBT)、磁気共鳴画像法(MRI
)、磁気共鳴血管造影法(MRA)、又は陽電子射出断層撮影法、で行う。
【0017】
さらに別の実施態様では、造影剤の検出が、投与後約10分、好ましくは投与後約15
分、そしてより好ましくは投与後約30分又はそれ以上で行われる。
【0018】
更なる局面では、本発明は、活性化マクロファージによる本ナノ微粒子の取り込みが可
能な平均粒子サイズを持つ非水溶性のナノ微粒子を含む組成物を提供するものである。あ
る実施態様では、本ナノ微粒子は、ヨウ素などの造影剤で標識可能である。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的に、限定はしないが血管床(例えば動脈及び静脈床)、器
官組織(例えば心筋組織及び他の器官組織)、及び腫瘍を含め、撮像体腔及び血液プール
や、潅流及び血管組織外への管外遊出を撮像、検出、及び評価するための組成物及び方法
を、例えば血管形成の測定や、腫瘍の潅流状況の測定などのために、提供するものである
。冠状動脈及び他の血管区域での血管床の撮像は、限局性及び全身性疾患及び異常及び/
又は器官、組織もしくは血管の損傷(例えば虚血性、炎症性、外傷性、感染性又は治癒中
の器官、組織、又は血管、血管壁の損傷、末梢血管の疾患等)の予測及び/又は診断にと
って重要である。さらに本発明は、器官組織及び腫瘍の微小潅流を、最も小さな血管(即
ち毛管)レベルで撮像するためにも役立つ。本発明は、撮像される特定の血管組織、血管
床又は器官組織に限定されない。
【0020】
本発明の局面の1つは、器官又は腫瘍の潅流状況を検出又は評価する方法であって、対
象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、前記造影剤を検出するステップと
、を含む方法を特徴とする。
【0021】
さらに本発明は、活性化マクロファージなどのマクロファージ、及び、脆弱性プラーク
などの血管プラークを撮像、検出、及び評価するための組成物及び方法にも関する。脆弱
性プラークは、動脈壁上に蓄積する、活性化マクロファージなどのマクロファージを含有
する。本発明の造影剤は、活性化マクロファージなどのマクロファージにより取り込まれ
る。従って、このマクロファージを含有するプラークの視覚化が、例えばX線撮影、超音
波検査法、コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ断層血管造影法(CTA)、電子
ビーム(EBT)、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴血管造影法(MRA)、陽電子射出断層
撮影法、及び他の撮像技術など、慣例的な撮像技術を用いて可能である。
【0022】
対象に投与された、PH-50などの本発明の好適な造影剤は、血管内空間に実質的に留ま
り、従って間質空間又は実質外流体中へ透過することがないため、血液プールや、血管組
織、血管床、及び器官組織などの血管構造や、脆弱性プラークなどのプラーク及びマクロ
ファージの撮像が容易となる。さらに、PH-50など、本発明の好適な造影剤は、腎臓系で
はなく肝臓系を通じて身体から排出されるため、腎臓系を介して排出される薬剤よりも長
時間、身体内に留まる。さらに、肝臓系を通じた排出では、腎不全患者などに、PH-50な
どの本発明の好適な造影剤を用いることが可能であり、また、例えば高血圧、糖尿病、又
は腎腫瘍などの癌など、腎臓系の病的状態を診断するための、腹部大動脈及び腎動脈を含
む腎臓系の撮像も可能である。さらに、PH-50など、このような造影剤は、腎臓系への損
傷を起こさないであろう。
【0023】
本発明のいくつかの実施態様は、機能的に活性な濃度で長時間、血管構造内に留まる、
PH-50などの造影剤を特徴とし、当該造影剤は肝臓で代謝されるまでの半減期が約30乃
至60分である。このように、本造影剤を一回、低用量投与した後に、複数の画像を撮像
できよう。さらに、この機能的半減期は、目的の血管床(腎臓、肝臓、心臓、脳及び他所
)で血管スキャンニングを行えるように充分長い。これは、造影剤投与後、例えば数秒間
又は数分間などで急速に拡散してしまい、ごく僅かな時間しか、撮像に許されないような
現在用いられている造影剤とは対照的である。さらに、本発明の好適な造影剤は実質的に
血管空間内に留められるために、全身の血管撮像や、全身のプラークの撮像が、例えばX
線撮影、超音波検査法、コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ断層血管造影法(
CTA)、電子ビーム(EBT)、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴血管造影法(MRA)、及び
陽電子射出断層撮影法など、当業者に公知の慣例的な撮像技術を用いて可能である。加え
て、本発明の造影剤が血管空間内から拡散する量が微量であるため、血管性疾患又は異常
の区域を撮像することができ、あるいは、血管空間内空間の外側区域に造影剤が蓄積する
ため、例えば漏出、組織損傷又は腫瘍などの血管損傷区域を撮像することができる。さら
に本発明は、血栓性もしくは血塞栓の予測及び/又は診断のための方法及び組成物を提供
する。
【0024】
用語「血管構造」、「血管」及び「循環系」は、限定はしないが、静脈、動脈、細動脈
、細静脈及び毛管を含め、血液が循環するすべての血管を包含するものと意図されている
。血管系は通常、巨視的血管構造(例えば0.1mmを越える直径を有する血管など)及び微
小血管構造(例えば直径が0.1mm未満の血管など)に分けられる。ここで用いる用語「毛
管」には、細動脈(例えば筋性動脈と毛管との間の最も小さな分類の動脈)及び細静脈(
例えば毛管叢から血液を集めると共に互いに接合して静脈を形成する細い血管など)を接
続して、身体のほぼすべての部分のネットワークを形成する微小な血管のあらゆるものを
包含する。それらの壁面は、流体を含む多種の物質が、血液と組織流体との間で交換され
るための半透過性の膜として働く。毛管の平均直径は通常、約7マイクロメートル乃至9
マイクロメートルである。それらの長さは通常、約0.25mm乃至1mmであり、後者は筋性組
織に特徴的である。場合(例えば副腎皮質、腎髄質など)によっては、毛管は最高で50mm
長にもなることがある。
【0025】
用語「血管性疾患又は異常」はさらに通常は、ここでも言及されるように「心臓血管性
疾患、冠状動脈性心疾患[CHD]及び冠状動脈性疾患[CAD]とも呼ばれ、心臓及び血管を
含め、血管系に影響するあらゆる疾患又は異常を言う。血管性の疾患又は異常には、例え
ば内側動脈壁面上へのプラーク蓄積などを原因とする血管内狭窄(狭くなること)又は閉
塞(閉塞)や、それが原因で生じる疾患及び異常を含め、血管の機能不全を特徴とするあ
らゆる疾患又は異常が含まれる。さらに本発明の範囲には、血栓性もしくは血塞栓性の事
象も含まれるものと、意図されている。用語「血栓性もしくは血塞栓性事象」には、血栓
のある動脈又は静脈の閉塞もしくは部分的閉塞を含むあらゆる異常が含まれる。血栓性も
しくは血塞栓性事象は、血管内に血餅が形成して停滞したときに起き、脆弱性プラークの
破裂後などに起きることがある。血管性疾患及び異常の例には、限定はしないが、アテロ
ーム性硬化症、CAD、MI、不安定狭心症、急性冠状動脈性症候群、肺塞栓、一過性虚血性
発作、血栓(例えば深部静脈血栓、血栓性遮断及び再遮断並びに末梢血管性血栓)、血塞
栓、例えば静脈血塞栓、虚血、卒中、末梢血管性疾患、及び一過性虚血性発作、がある。
【0026】
ここで用いる用語「プラーク」は通常、「アテローム」を言うが、血管の狭窄を引き起
こすような血管壁の内側表面に堆積した物質を言い、CADに共通の原因である。通常、プ
ラークは繊維状結合組織、脂質(即ち脂肪)及びコレステロールから成る。しばしば、カ
ルシウム塩及び他の残余物質の沈着物がある場合もある。プラークの堆積の結果、血管壁
が侵食されて、血管の弾性(例えば延び)が損なわれて、最終的には血流が妨げられる。
血餅がプラーク沈着物の周囲に形成して、さらに血流を妨げるようになることもある。プ
ラークの安定性は、プラークの組成に基づいて2つのカテゴリーに分類される。ここで用
いる用語「安定性」又は「非活性」プラークとは、石灰性もしくは繊維状であり、破壊又
は断片化のリスクのないものを言う。これらの種類のプラークは対象に狭心症性の胸痛を
起こすこともあるが、心筋梗塞はめったにない。代替的には、用語「脆弱性」又は「活性
」プラークとは、薄い繊維状の蓋で覆われた脂質プールを含むものを言う。この繊維状の
蓋内には、密な平滑筋細胞、マクロファージ、及びリンパ球の浸潤物がある。脆弱性プラ
ークは動脈を遮断せず、しかし動脈壁に染み込んで検出不能となることがあり、また無症
状であることもある。さらに、血管性プラークは破裂のリスクが高いと考えられている。
脆弱性プラークの破裂は、例えば血流や、マクロファージなどの細胞による炎症性応答を
原因とした生化学的、血液力学的及び生体力学的なストレスを含む、内因性及び外因性因
子の結果である。
【0027】
ここで用いる用語「マクロファージ」とは、血液単球から派生する、哺乳動物組織の比
較的長命の貪食性細胞を言う。マクロファージは免疫応答のすべての段階に関与している
。マクロファージは、例えば細菌、ウィルス、プロトゾア、腫瘍細胞、細胞破片等の異物
の貪食作用(消化)や、サイトカイン、成長因子等、免疫系の他の細胞を刺激する化学物
質の放出でも、重要な役割を果たす。さらにマクロファージは、抗原提示や組織修復及び
創傷治癒などにも関与している。肺胞マクロファージ及び腹腔マクロファージ、組織マク
ロファージ(組織球)、肝臓のクッパー細胞及び骨の破骨細胞を含め、多種のマクロファ
ージがあり、そのすべてが本発明の範囲内にある。マクロファージはさらに慢性炎症性病
変部で分化して外皮細胞になったり、あるいは、融合して異物巨細胞(例えば肉芽腫)又
はランゲルハンス巨細胞を形成することがある。
【0028】
I. 本発明の造影剤
本発明の造影剤には、例えば器官、組織、血管、血液プール、又はプラークなど構造に
注射などにより導入でき、また本造影剤と当該構造物との間で、例えばX線、電波、音波
等の検出媒体の吸収の違いにより、前記器官、組織、血管、血液プール、又はプラークな
ど構造の、例えばX線もしくは音波可視化など、検出、視覚化、又は強調された視覚化を
可能にするあらゆる物質が含まれる。本発明の造影剤は、血管内空間に実質的に留まるた
め、間質空間又は実質外流体へ透過することはない。いくつかの実施態様では、本造影剤
は、活性化マクロファージなどのマクロファージによる貪食が可能な大きさである。好ま
しくは、本造影剤がナノ微粒子であるとよい。別の実施態様では、本発明の造影剤は非水
溶性である。さらに別の実施態様では、本発明の造影剤は、放射性標識しても、又はしな
くともよい、例えばヨウ素又はバリウムなどの重元素を含むか、又は、重元素で標識可能
である。例えば、ヨウ素などの重元素の濃度は、標識可能な化合物対ヨウ素で2:1の比
であってよい。さらに別の実施態様では、本発明の造影剤の対象の血管構造における半減
期は少なくとも約30分間である。さらに別の実施態様では、本造影剤は中性のpHを有
する。
【0029】
本発明の方法での使用に適した化合物には、例えばその内容全体を引用をもってここに
援用することとする米国特許第5,322,679号、第5,466,440号、第5,518,187号、第5,580,5
79号、及び第5,718,388号に解説された組成物がある。
【0030】
ある実施態様では、本発明の方法で用いられる造影剤は、ジアトリゾア酸のエステルで
ある。別の実施態様では、本発明の方法で用いられる造影剤はヨウ化アロイルオキシエス
テルである。さらに別の実施態様では、本発明の方法で用いられる造影剤は、PH-50(WIN
67722 及びN1177とも呼ばれる)である。PH-50は、実験式がC19H23I3N2O6であり、化学
名が6-エトキシ-6-オキソエキシ-3,5-ビス(アセチルアミノ)-2,4,6-トリヨードベンゾ
エートであるヨウ化アロイルオキシエステルである。PH-50は、重合体型に架橋されてお
り、粉砕されるとナノ微粒子になり、例えば非水溶性であるなど、不溶性である。
【0031】
ある実施態様では、造影剤としての使用に向けて調合されるPH-50は、150 mg/ml のPH-
50、150 mg/ml のポリエチレングリコール1450NF、30 mg/mlのポロキサマ338を含む。加
えて、中性のpHを緩衝するのに充分な0.36 mg/mlのトロメタミンも用いられる。ある実
施態様では、PH-50のpHは約7.4でもよい。
【0032】
重合体の医薬品添加物であるポロキサマ338及びポリエチレングリコール1450は、粒子
安定剤として働き、と同時に、血管内投与後に細網内皮系(RES)により粒子の血漿ク
リアランス速度を遅らせるよう、意図されている。ポロキサマ338は製造工程の一部で透
析濾過により精製されて、低分子量ポリマのレベルが下げられている。他の適した医薬品
添加物又は粒子安定剤も、用いてよい。
【0033】
本発明の造影剤の物理化学的性質は、その可溶化薬が吸収されたら皮下注射部位からゆ
っくりと溶解し、全身吸収や、血漿及び/又は組織エステラーゼによる代謝反応もゆっく
りと起きると予測されるものである。さらに、粒子のいくらかはリンパ管内を輸送されて
局所リンパ節に送られる。マクロファージによる粒子の抱き込み及び続く貪食作用も、注
射部位や、局所リンパ節で起こさせることができる。
【0034】
加えて、ある実施態様では、PH-50など、本発明の造影剤を静脈内投与すると、肝臓、
脾臓、又は骨髄などのRESでマクロファージにより取り込まれ、その後細胞内での溶解及
び/又は代謝、及び/又は血漿中への再分配が起きる。
【0035】
用語「ナノ微粒子」又は「ナノ粒子」とは、好ましくは約20.0ナノメートル乃至約2.0
ミクロン、典型的には約100ナノメートル乃至1.0ミクロンの間の平均直径を有する粒子を
含む組成物を言う。ある好適な実施態様では、本発明の方法で用いられるナノ微粒子造影
剤は、約20ナノメートル乃至約750ナノメートルの平均粒子サイズを有する。別の好適な
実施態様では、本ナノ微粒子造影剤は、約200ナノメートル乃至約400ナノメートル、さら
により好ましくは約300ナノメートル乃至約350ナノメートルの平均粒子サイズを有する。
ある特に好適な実施態様では、本ナノ微粒子造影剤は、約300ナノメートル未満の平均粒
子サイズを有する。ナノ微粒子組成物はある範囲の粒子サイズを含む。「平均」粒子サイ
ズとは、粒子サイズが分布した組成物内の粒子の平均半径を言う。前記平均サイズよりも
小さい及び大きい粒子も本発明の包含するところである。別の好適な実施態様では、本ナ
ノ微粒子造影剤は、50%が350ナノメートルを越えず、90%が1,200ナノメートルを越えない
、という粒子サイズ分布を達成するように粉砕される。
【0036】
用語「ナノ微粒子造影剤」には、例えば器官、組織、血管、血液プール、又はプラーク
など構造に注射などにより導入でき、また本造影剤と当該構造物との間で、例えばX線、
電波、音波等の検出媒体の吸収の違いがあるために、前記器官、組織、血管、血液プール
、又はプラークなど構造の、例えばX線もしくは音波可視化など、検出、視覚化、又は強
調された視覚化を可能にし、好ましくは約20.0ナノメートル乃至約2.0ミクロンの間の平
均直径を有する粒子から成る、あらゆる物質が含まれる。好適なナノ微粒子造影剤は、約
100ナノメートル乃至1.0ミクロン、約20乃至約750ナノメートル、約200ナノメートル乃至
約400ナノメートル、又は約300ナノメートル乃至約350ナノメートルの平均直径を有する
粒子から成るものである。ある特に好適な実施態様では、本ナノ微粒子造影剤は、約300
ナノメートル未満の平均直径を有する粒子から成る。
【0037】
本発明の方法で用いられる造影剤の平均粒子サイズは所望の用途に応じて様々であり、
例えば平均ナノ微粒子サイズは、血液プールの撮像、微小潅流、潅流、又はプラークの撮
像のための使用に応じて様々であろうことを理解されたい。さらに、本ナノ微粒子のサイ
ズの変更により副作用も上下するため、平均粒子サイズを、不要な副作用を避けるように
調節してもよい。例えば平均サイズの小さなナノ微粒子は、対象における副作用も少なく
なるであろう。
【0038】
薬物及び薬物担体の微細に粉砕されたもしくは分割された粒子を作成する方法は当業で
公知であり、医薬組成物中のこのような粒子のサイズ及びサイズ範囲は厳密に制御可能で
ある。例えば、本発明の方法で用いられるナノ微粒子造影剤を、所望の粒子サイズの作製
に関して当業で公知のいずれかのプロセスにより、あるいは、例えば米国特許第5,718,38
8 号及び第5,518,187号で解説された方法により、作製できよう。
【0039】
II. 使用法
A. マクロファージ及び血管プラークの撮像
最近の証拠では、冠状動脈などの血管構造での炎症が、アテローム硬化症や、それが関
連する急性冠状動脈症候群の発生に密接に関与している可能性が示唆されている。この炎
症性応答の一部として、マクロファージ細胞は、プラーク形成部位に遊走及び蓄積する。
従って、本発明の局面の1つは、造影剤を検出し、血管内の蓄積マクロファージの画像を
形成できるように、有効量の造影剤をヒトなどの哺乳動物など、対象に静脈内などにより
投与することで、冠状動脈又は肺動脈などの動脈など、血管内での蓄積マクロファージを
検出又は評価する方法を提供するものである。さらに本発明は、蓄積マクロファージの検
出に基づいた虚血、炎症、損傷、又は感染部位で、活性マクロファージなどのマクロファ
ージの撮像及び検出に基づいて、本発明の造影剤を用いることで、虚血性、炎症性、損傷
性、又は感染性の組織、又は血管、血管壁の損傷等を検出する方法も包含する。別の実施
態様では、血管外空間でのマクロファージ蓄積も検出してよい。例えば漏出、膿瘍、又は
血管壁の損傷などが原因で、血管外空間に本造影剤が存在する場合、マクロファージの蓄
積は、蓄積マクロファージの検出に基づいて、虚血、炎症、損傷、又は感染の区域に検出
されよう。従って、限定はしないが、リウマチ性関節炎、慢性肺炎症性疾患、乾癬、リウ
マチ性脊椎炎、変形性関節症及び痛風性関節炎、アレルギ、多発性硬化症、自己免疫糖尿
病、自己免疫疾患もしくは異常、及び腎炎症候群などの炎症、又は炎症性疾患又は異常を
、検出又は診断してもよい。さらに、組織又は血管の治癒又は治療、あるいは血管外空間
での治癒又は治療も、処置前及び処置後に損傷部位で活性化マクロファージの蓄積を撮像
することにより、本発明の方法により、視覚化してもよい。
【0040】
本発明のさらに別の局面は、有効量の本発明の造影剤を対象に静脈内等により投与し、
血管内でのプラーク蓄積を検出することで、対象の血管、組織、又は器官における脆弱性
プラークなどのプラーク蓄積を検出又は評価する方法に関する。
【0041】
本発明は、当業で公知の撮像技術を用いた、造影剤の、例えば検出又は撮像などの視覚
化に役立つ。これらの技術には、限定はしないが、X線撮影、超音波検査法、コンピュー
タ断層撮影法(CT)、コンピュータ断層血管造影法(CTA)、電子ビーム(EBT)、磁気共
鳴画像法(MRI)、磁気共鳴血管造影法(MRA)、及び陽電子射出断層撮影法が含まれよう
。好ましくは当該検出はCTによるとよい。
【0042】
また本発明は、有効量の本発明の造影剤を投与し、前記造影剤を対象内で検出し、そし
て得られた画像に基づいて、対象の血管性疾患のリスクを予測することで、対象の血管内
の蓄積マクロファージを検出又は評価することにより、血管性疾患のリスクを予測するた
めの撮像法にも関する。ここで用いる用語「リスクを予測する」及び「予後を判定する」
とは、例えば、限定はしないが、アテローム性硬化症、冠状動脈疾患(CAD)、心筋梗塞
(MI)、虚血、卒中、末梢血管性疾患、及び静脈血塞栓などの血管性疾患などの状態が発
生する確率や、本発明の造影剤を投与した対象から得られる画像の評価に関連する、又は
、この画像の評価で示された段階が発生する確率を、ある対象について評価することを言
う。炎症や血漿中の血管性異常の生化学的マーカに基づいた最近の実験的及び臨床的研究
では、血栓性疾患の指標として、生化学的マーカ及び/又は他の炎症の指標を用いるため
の潜在的役割が示唆されている(例えば上記のVan Lente, F. 及び上記のSchmidt, M.I.
et al.を参照されたい)。従って、本発明の方法で得られた画像データを用いてマクロフ
ァージを撮像し、例えば年齢、肥満、コレステロール・レベル、HDL及びLDLレベル、喫煙
等、当業者に公知の他の基準と一緒にすると、当業者であれば、対象が血管性疾患又は異
常を発症したり、あるいは血管性疾患又は異常を発症するリスクがあるかどうか、その可
能性を予測することができる。例えば、コレステロール及びLDLレベルが高く、マクロフ
ァージ蓄積量が多い対象は、LDLレベルが低く、マクロファージ蓄積量のないか、もしく
は小さい対象よりも、リスクが大きいであろう。本発明の方法によるマクロファージ蓄積
の撮像は、他の血管性疾患もしくは関連する異常を予測、診断、又は予後判定する上でも
役立つことができる。このような他の疾患には、アテローム性硬化症、CAD、MI、不安定
狭心症、急性冠状動脈症候群、肺血栓、一過性虚血性発作、血栓(例えば深部静脈血栓、
血栓性閉塞及び再閉塞及び末梢静脈血栓)、血塞栓、例えば静脈血塞栓、虚血、卒中、末
梢血管性疾患、及び一過性虚血性発作、がある。
【0043】
B. 血管撮像及び潅流
さらに本発明は、体腔及び血液プールを撮像したり、例えば心臓、血管、肺、腎臓、肝
臓、肝臓、脾臓、又は脳組織、及び血管造影法など血管構造などを含む組織及び器官など
の解剖学的構造を撮像したり、また例えば血管、肝臓、心臓、肝臓、脾臓、又は毛管など
の小血管の微小潅流を含む脳組織潅流を含め、器官及び組織を撮像するための方法を提供
する。
【0044】
本発明は、毛管など最も小さな血管のレベルで器官の潅流状況を評価するために、器官
組織での微小潅流を撮像するために用いることができる。例えば腎臓、肝臓、脳、及び肺
などの組織及び器官を、充分な血液供給及び血液潅流に関して観察することができる。こ
の能力を、狭心症又は心臓発作、卒中、又は血管の損傷又は傷害に関連する器官の損傷を
評価する際に用いることができ、ひいては現在用いられているテクネチウム99スキャンに
取って替わることができ、また病的事象(卒中、腫瘍等)を評価する脳潅流の撮像を行っ
たり、血管漏出(外傷又は他の病的事象後の動脈瘤及び広汎性出血)を評価したり、ある
いは、これらのすべての用途に向けた治療効果(抗血管形成治療、外科的介入、及び他の
治療法の効果を含む)の観察を含め、腫瘍の微小潅流状況を判定するために用いることが
できる。さらに、プラーク形成を原因とする閉塞を評価したり、例えばバイパス手術など
の外科的手法や、又は他の侵襲的もしくは非侵襲的治療、例えば食事又は投薬の変更を含
むライフスタイルの変更、の必要性を評価するために、血管を撮像してもよい。小さな血
管での造影は、これらの組織域の活発な潅流の指標であり、撮像中の組織の健康及び生命
力に関する重要な結論付けを可能にする。
【0045】
ある実施態様では、本発明の造影剤を、例えば末梢動脈、冠状動脈又は腎動脈などの動
脈の閉塞などを診断する血管造影法に用いることができる。血管造影により、閉塞の精確
な箇所を特定し、生成された画像に基づいて、閉塞の重篤度を評価することができる。ま
た閉塞や、動脈の閉塞のパーセンテージも検出してもよい。さらに血管造影法で、動脈瘤
の存在を検出してもよく、そして動脈瘤の位置及び重篤度を評価するために、術前に用い
てもよい。
【0046】
さらに、本発明は、例えば腫瘍での血管形成の測定など、腫瘍の微小潅流状況など、潅
流状況を撮像する方法を提供する者である。臨床上の意味を持つ大きさに腫瘍が成長する
かどうかは、充分な血液供給に依存している。これは、新しい毛管の形成が中心的な事象
である腫瘍間質生成のプロセスにより達成される。血液が腫瘍部位に次第に召集され、そ
の結果生じる新生血管構造による腫瘍拡大に対する相互的支援の結果、充実腫瘍の成長を
誘導する支えとなる自己永続的ループができると考えられている。新たな血管構造の発生
により、さらに、転移コンピテント腫瘍細胞の「脱出ルート」が提供され、これらの細胞
が原発部位を出発して当初は罹患していなかった器官に定着できるようになる。腫瘍様の
塊又は成長の内部又は区域で、毛管を含む血管を撮像できれば、その塊が実際に、例えば
嚢胞などの非癌性成長ではなくて腫瘍であるかどうかを評価又は診断する方法となり、さ
らに、ある腫瘍が良性か悪性かを判断し、そして悪性であれば、塊の血管形成の程度に基
づいて悪性度を判断するための方法となる。さらに、腫瘍の微小血管はとくに「漏出性」
であり、その透過性は、非腫瘍性の、健康でインタクトな組織の微小血管に比較して高い
ことが立証されている。従って、本発明の造影剤を用いて、本発明の造影剤の拡散状況又
は「漏れ度」の視覚化に基づいて腫瘍組織を特定してもよい。
【0047】
腫瘍での血管形成の測定を用いて、腫瘍の血管形成の低下が腫瘍治療法の効果の指標と
なるような抗血管治療法又は他の癌治療など、腫瘍治療法を観察してもよい。この腫瘍を
評価する方法には、一回の腫瘍視覚化を含めても、又は、例えば治療法の経過中など、あ
る一定期間にわたった2回以上の腫瘍の視覚化を含めてもよい。さらに、本発明の造影剤
を用いて、術後の腫瘍の有無を評価することにより、外科的治療の成功を評価してもよい

【0048】
ある実施態様では、本発明の造影剤を用いて、対象において卒中の発生を診断したり、
又は、卒中のリスクを判断してもよい。また本発明の造影剤を用いて、卒中の精確な位置
を迅速に指摘して損傷の程度を判定したり、脳を通る血流を評価したり、虚血性と出血性
の卒中を区別したり、損傷の程度を判定したり、脳内の関連する側副(代替的)血管の現
在を判定したり、又は、頸動脈中の閉塞を診断してもよい。
【0049】
ある実施態様では、静脈内注射又は動脈内注射により本造影剤を投与し、このとき血管
床又は組織域の撮像は、コンピュータ断層撮影技術又は他のX線を含む撮像技術を用いて
、達成することができる。
【0050】
別の実施態様では、複数の撮像法を、PH-50などの本発明の造影剤を一回投与した後に
行ってもよい。例えば血管性疾患のリスク又は存在の評価を、一回の撮像で、解剖学的構
造及び血管の構造を、例えば冠状動脈造影法などで撮像したり、組織潅流を撮像したり、
そして心臓腔などの体腔を撮像するなどにより、行ってもよい。さらに、本発明の造影剤
は血管空間から拡散しないため、全身の血管撮像や、全身の蓄積プラークの撮像が、当業
者に公知の慣例的な撮像技術を用いて可能である。
【0051】
III. 本発明の方法で用いられる撮像技術
ここで用いる用語「撮像する」又は「臨床的撮像」とは、組織が透過する、又は、組織
により吸収されるエネルギの吸収の違いを測定することで、毛管などの血管、血液プール
、又はプラークなどの構造を、in vivo又はex vivoのいずれかで視覚化するためのあらゆ
る撮像技術の使用を言う。撮像技術には、X線技術、超音波撮影法などのスキャンニング
・サーモグラフィ、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴(MRI又はNMR)、及び陽電
子射出断層撮影法等の技術で用いられる放射性ヌクレオチド、即ち123I又は125I、がある

【0052】
CT撮像法は物質の放射線濃度の測定を含む。放射線濃度は、典型的には、ハウンスフィ
ールド単位(HU)で表される。ハウンスフィールド単位は、コンピュータ断層撮影X線の
物質による相対的吸収の測定値であり、電子密度に直接比例する。水は0HUの数値を任意
に与えられており、空気の数値は-1000HUであり、そして強靱皮質骨の数値は1000HUであ
る。通常のCTスキャン装置は、対象を通過して反対側の検出子列により受け取られるX線
の細いビームを生成する。チューブ及び検出子は患者の周りを回転するリングの向かい合
う側に配置されるが、このチューブは続けては回転できない。各回転後、このスキャン装
置は停止して反対方向に回転しなければならない。各回転で、ほぼ1cmの厚さの軸方向の
画像が、1回の回転当たりほぼ1秒で得られる。テーブルは患者をスキャン装置に沿って
一定距離、移動させる。らせん(らせん)CTスキャン装置は回転チューブを有するが、こ
の回転チューブにより、スキャン時間が短くなり、またスキャン間隔もより細かくできる
。血管造影がらせん・スキャンニングで可能である。多重スライスCTスキャン装置が「過
給」らせん・スキャン装置と考えられる。通常の、そしてらせん状のスキャン装置がX線
ビームを受け取るのに一列の検出子を用いている場合、多重スライス・スキャン装置は、
最高8列の活動状態の検出子を有する。多重スライス・スキャン装置は、ある一定の体積
の組織を網羅する速度が速い。臨床現場で用いられている多種のCT技術が、例えば Garve
y, C. and Hanlon, R. (2002) BMJ 324:1077に解説されている。
【0053】
CTAでは、ヨウ化造影剤を静脈内注射して画像を得る。CTAを用いると、軸方向の画像を
フォーマット修正して、血管の複合画像を生成することにより、血管構造の大変詳細な画
像が一般に得られる。このフォーマット修正中、血管構造の画像は、視覚化しようとする
血管の測定された密度に基づいて至適化される。この撮像を行うには、多種の基線画像サ
ブトラクションが行われる。
【0054】
用いられているCT画像技術は通常のものであり、例えば引用をもってその開示全体をこ
こに援用することとするComputed Body Tomography, Lee, J. K. T., Sagel, S. S., and
Stanley, R. J., eds., 1983, Ravens Press, New York, N.Y.、特にその最初の2つの
章、標題"Physical Principles and Instrumentation", Ter-Pogossian, M. M., and "Te
chniques", Aronberg, D. J., に解説されている。
【0055】
ある実施態様では、本発明の方法を以下の手法により行う。一連のCT画像を、造影媒質
の投与直前に始まり、造影剤投与時間(1-30秒、1分、5分、10分、15分、20分、30分、40
分、50分、60分、90分、120分、又はそれ以上)、そして投与後所定の時間、継続する適
した時間分解能で得る。別の実施態様では、撮像を、造影剤の投与後に行う。幅広い画像
取得時間を本発明の方法で用いることができる。
【0056】
例えば、ある実施態様では、前記所定の時間は造影後約10秒乃至造影後約10時間、造影
後約30秒乃至造影後約3時間、より好ましくは造影後約50秒乃至造影後約1時間、又はさら
により好ましくは造影後約1分乃至造影後約10分、である。別の実施態様では、前記所定
の時間は、造影剤の終了時から、造影後約30秒、40秒、50秒、60秒乃至造影後約5分、10
分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、又は造影後約1時間、2時間、3時間、4時間、
5時間、6時間、7時間、8時間、9時間又はそれ以上の時間、である。複数の画像又は一連
の画像をPH-50などの本発明の造影剤一回投与後に取ってもよい。
【0057】
典型的なシリーズには、造影剤投与前及び投与中の5秒毎の画像、その後の3分間はさ
らにゆっくりと10秒毎の画像、そして最終的には当該シリーズの10分間完了まで30
秒毎の画像、を含めてよいであろう。これらの連続画像を用いて、動力学的モデリングに
用いる血管内で測定した動的強調データを組織及び血液から生成し、そして究極的には、
目的の組織内の血液量及び潅流を計算する。目的の領域に位置限定させた動的撮像の完了
後に、付加的な診断データを抽出するために患者の他の解剖学的部位で付加的なCT画像を
得るか、又は、同じ部位の遅延画像用の付加的なCT画像を得るかを選択してもよい。CTス
キャンニング後、対象をスキャン装置から移動させ、本造影剤の注射用に用いた静脈内カ
テーテルを取り外してもよい。このCT撮像法で得たデータを処理して、必要な情報を提供
する。
【0058】
コントラスト強調されたCT画像は、例えば、スキャンされた解剖学的領域内の血管構造
の位置、口径、及び流れ特性や、マクロファージ蓄積及びプラーク蓄積を定義するためな
どに、用いることができる。さらに、当該画像を用いて、微小血管潅流状況などの潅流状
況を変えると予測される潜在的に治療的な薬物の効果を観察するためにも、利用できる。
【0059】
ここで解説した方法は、実質的にあらゆる組織種で有用である。ある実施態様では、当
該組織は、正常組織、疾患組織、及びこれらの組合せ、から成る群より選択される構成要
素である。更なる好適な実施態様では、当該組織は少なくとも部分的に疾患組織であり、
また前記疾患組織は、新形成性、虚血性、過形成性、形成異常、炎症性、外傷性、梗塞性
、壊死性、感染、治癒過程及びこれらの組合せの組織から成る群より選択される構成要素
である。
【0060】
IV. 医薬組成物
本発明の別の局面は、1種以上の薬学的に許容可能な担体と一緒に調合された、血液プ
ール、血管組織潅流及び血管からの血液の管外遊出の撮像が可能になる有効量のナノ微粒
子造影剤を、対象の血管内でマクロファージを検出したり、又は、脆弱性プラークなどの
プラークを検出するために含む薬学的に許容可能な組成物を提供するものである。
【0061】
ある具体的な実施態様では、本ナノ微粒子造影剤を、大量投与又は時間をかけた漸次的
輸注のいずれかによる例えば静脈注射などによる非経口、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、
経皮、皮内投与したり、あるいは、例えば無菌溶液又は懸濁液として目的の血管組織に直
接向かわせるなどの液体形での投与に適した薬学的に許容可能な調合物など、薬学的に許
容可能な調合物を用いて、対象に投与する。
【0062】
いくつかの実施態様では、当該対象は例えばヒトなどの霊長類など、哺乳動物である。
ここで用いる言語「対象」には、ヒト及び非ヒト動物が包含されるものと、意図されてい
る。好適なヒト動物には、血管性疾患、血栓性疾患、卒中、又は腫瘍などの癌に罹患して
いる、又は罹患する性向があるヒトの患者が含まれる。本発明の用語「非ヒト動物」には
、あらゆる脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、及び、例えば非
ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、ウサギ、両生類、は虫類等の非哺乳動物、
が包含される。
【0063】
文言「薬学的に許容可能な」とは、妥当な利点/リスク比に見合い、過剰な毒性、刺激
、アレルギー性応答、又は他の問題もしくは合併症を起こすことなく、ヒト及び動物の組
織と接触させて用いるのに適した、健全な医学的判断の範囲内にある、本発明のナノ微粒
子造影剤、このような造影剤及び/又は剤形を含有する組成物を言うために、ここで用い
られている。
【0064】
ここで用いられる文言「薬学的に許容可能な担体」とは、対象の化学物質を器官又は身
体部分から、身体の別の器官又は部分に運搬又は輸送することに関与する、液体もしくは
固体の充填剤、希釈剤、医薬品添加物、溶媒又は封入剤などの薬学的に許容可能な物質、
組成物、又は賦形剤、を意味する。各担体は、当該調合物の他の成分と適合性があり、対
象にとって有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能
な担体として働くことのできる物質のいくつかの例には:(1)ラクトース、グルコース
及びスクロースなどの糖類、(2)コーンスターチ及びいもでんぷんなどのでんぷん、(
3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテー
トなど、セルロース及びその誘導体、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラ
チン、(7)タルク、(8)ポロキサマ338及びポリエチレングリコール1450などの医薬
品添加物、(10)ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油及び
大豆油などの油脂類、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレ
ングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルなどの
エステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩
衝剤、(15)アルギン酸、(16)無発熱源水、(17)等張性生理食塩水、(18)
リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、及び(21)薬剤調合
に用いられるその他の非毒性の適合性物質、がある。
【0065】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳濁剤、潤滑剤
や、着色剤、はく離剤、コーティング剤、甘味料、着香料及び芳香剤、保存剤及び抗酸化
剤も本組成物中に存在してもよい。
【0066】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、二硫
化ナトリウム、重二硫化ナトリウム、硫化ナトリウム等の水溶性抗酸化剤、(2)アスコ
ルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトル
エン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール等の油溶性抗
酸化剤、及び、(3)例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビト
ール、酒石酸、リン酸等といった金属キレート剤、がある。
【0067】
これらの組成物を調製する方法には、ナノ微粒子造影剤を担体、及び選択に応じ、1種
以上の付属成分に結び付けるステップが含まれる。通常、本調合物は、造影剤を液体の担
体に均一及び密接に結び付けることにより、調製される。
【0068】
本造影剤の経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容可能な乳濁液、マイクロ乳濁
液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル、がある。液体剤形には、活性成分に加え、
例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳濁剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルア
ルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレ
ングリコール、1,3-ブチレングリコール、油脂類(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚
芽油、オリーブ油、ひまし油及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコー
ル、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物な
ど、当業で通常用いられている不活性の希釈剤を含めてもよい。
【0069】
不活性の希釈剤の他に、経口用組成物にはさらに湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、
着香料、着色剤、芳香剤及び保存剤などのアジュバントを含めることができる。
【0070】
懸濁液は、活性のナノ微粒子造影剤に加えて、例えばエトキシ化イソステアリルアルコ
ール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、
メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物
などの懸濁剤を含んでいてもよい。
【0071】
直腸用又は膣投与用の、本発明による医薬組成物は座薬として提供してもよく、この座
薬は、1種以上の造影剤を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座薬用ろう
又はサリチル酸塩などを含む、一つ又はそれ以上の適した非刺激性の医薬品添加物又は担
体と一緒に混合して調製してもよく、このときこの座薬は、室温では固形であるが、体温
では液体となって直腸又は膣腔で融解して活性化合物を放出することとなる。
【0072】
膣投与に適した本発明の組成物には、当業で適していることが公知である調合物を含ん
だペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、パスタ、フォーム、又はスプレー調剤が含まれ
る。
【0073】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種以上の造影剤を、一つ又はそれ以上の
薬学的に許容可能な無菌の等張性水溶液又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳液と組み
合わせて、又は、使用直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に溶かして再構成するよう
な無菌粉末と組み合わせて、含み、その中には抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤や、調剤を目的
のレシピエントの血液と等張にする溶質や、又は懸濁剤又は増粘剤を含めてもよい。
【0074】
本発明の医薬組成物中に用いてよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノ
ール、ポリオル(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール
、等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルな
どの注射可能な有機エステルがある。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティ
ング材料を利用したり、分散液の場合には必要な粒子の大きさを維持したり、F108などの
界面活性剤を用いるなどして維持することができる。
【0075】
これらの組成物には、さらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバント
を含めてもよい。微生物の作用を防止するには、多様な抗菌剤、及び抗カビ剤、例えばパ
ラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めて確実にしてもよい。さらに
、糖類、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物中に含めるのも好ましいかも知れない。加え
て、注射可能な薬剤形の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラ
チンなど、吸収を送らせる作用薬を含めれば可能であろう。
【0076】
場合によっては、本造影剤の作用を長引かせるために、皮下又は筋肉内注射からの薬剤
の吸収を遅延させるのが好ましい。これは、水溶性の乏しい結晶質又は非晶質の懸濁液を
利用することによって可能であろう。こうすれば、薬剤の吸収速度は、その溶解速度、ひ
いては、結晶の大きさ及び結晶の形状に左右されることになる。あるいは、非経口投与さ
れる薬剤形の吸収の遅延は、薬剤を油性の伝播体中に溶解又は懸濁させることによって、
なされる。
【0077】
注射可能なデポー形は、ナノ微粒子造影剤のマイクロ封入マトリックスをポリラクチド
−ポリグリコリドなどの生分解可能なポリマに形成することによって作製される。薬剤の
ポリマに対する比、及び用いる特定のポリマの性質に応じて、薬剤放出の速度をコントロ
ールすることができる。その他の生分解可能なポリマの例には、ポリ(オルトエステル)
及びポリ(無水物)がある。さらにデポー型の注射可能な調剤は、身体組織と適合性のあ
るリポソーム又はマイクロ乳濁液中に当該薬剤を捕捉することでも調製される。
【0078】
本ナノ微粒子造影剤を医薬品としてヒト又は動物に投与する場合、それを、単独で与え
ても、又は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて例えば0.1から99.5%(より
好ましくは0.5から90%)の活性成分を含む医薬組成物として与えることもできる。
【0079】
用語「投与」又は「投与する」には、対象に本ナノ微粒子造影剤を、それらに意図され
た機能を果たさせるために導入する経路を包含するものと、意図されている。利用可能な
投与経路の例には、例えば注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、鞘内)がある。本医薬
製剤は、もちろん、各投与経路に適した形で投与される。例えばこれらの製剤を、例えば
注射により、投与する。注射は大量注射でも、又は連続的輸注でもよい。投与経路に応じ
て、本ナノ微粒子造影剤を、使い捨てもしくは所定の材料で被覆して、それに意図された
機能を果たすその能力に悪影響を与えかねない天然条件からそれを保護することができる
。本ナノ微粒子造影剤は、単独で投与することも、又は、上述のように別の薬剤、又は、
薬学的に許容可能な担体、又は両者、と組み合わせて投与することもできる。本ナノ微粒
子造影剤は、他の薬剤の投与前、薬剤と同時、又は薬剤投与後に、投与することができる
。さらに、本ナノ微粒子造影剤を、その活性代謝産物又はより活性な代謝産物にin vivo
で転化するようなプレフォーム型で投与することもできる。
【0080】
ここで用いられる「非経口投与」及び「非経口的に投与する」という文言は、多くの場
合注射による、腸内及び局所投与以外の投与形態を意味し、限定的な意味はないが、静脈
内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮
下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内及び胸骨内注射及び輸注が含まれる。
【0081】
ここで用いられる「全身投与」、「全身的に投与する」、「末梢投与」及び「末梢的に
投与する」という文言は、患者の全身に入り、従って代謝及びその他の同様なプロセスを
受けるような、例えば皮下投与など、ナノ微粒子造影剤、薬剤又はその他の物質を投与す
ることを意味する。
【0082】
選択した投与経路に関係なく、適した水和化形で用いてもよい本発明のナノ微粒子造影
剤、及び/又は、本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許
容可能な投薬形に調合される。
【0083】
本発明のナノ微粒子造影剤を用いるには、本造影剤を、診断上有効な用量、投与する。
本発明のナノ微粒子造影剤の「診断上有効な量」又は「有効量」は、典型的には生理学的
に許容できる組成物に入れて投与した場合に、対象内で、血管部位、マクロファージ蓄積
、及び/又は脆弱性プラークなどのプラークの検出を可能にするのに充分な量である。典
型的な投薬量は、体重に基づいて投与することができ、そして典型的には、約15%の重さ
/体積[w/v]から成る約150mg/mLのストック溶液に基づくと、約0.1 mL/kg 乃至約 8.0
mL/kg、約0.2 mL/kg 乃至約7.0 mL/kg、約0.3 mL/kg 乃至約 6.0 mL/kg、約4 mL/kg 乃至
約5.5 mL/kg、約0.5 mL/kg 乃至約 4.0 mL/kg、約0.6 mL/kg 乃至約 3.5 mL/kg、約0.7 m
L/kg乃至約3.0 mL/kg、約0.8 mL/kg 乃至約 2.5 mL/kg、約0.9 mL/kg 乃至約 2.0 mL/kg
、又は約1.0 mL/kg 乃至約 1.5 mL/kgの範囲である。本発明の造影剤の投与は、例えば輸
注であったり、あるいは一回の投与によるなど、一定期間にわたっていてもよい。ある実
施態様では、本造影剤の投与速度は約 0.6 mL/秒 乃至約 3 mL/秒である。
【0084】
本ナノ微粒子造影剤の投薬量は、さらに放射性同位体の放射活性によっても様々であり
、本発明の造影剤の適量を決定する上でも考慮に入れられるであろう。例えば、125I及び
123Iの両者の平均致死投与量は、約79+/-9 cGy と計算されている(チャイニーズ・ハム
スター卵巣細胞で:例えばMakrigiorgos, et al. Radiat. Res. 11:532-544を参照された
い)。診断を目的とした場合、この投薬量は、この放射性同位体の平均致死量未満であろ
う。
【0085】
例えば、通常の放射性同位体の半減期の場合、1乃至20mCiの間の用量での123Iの半減期
は約13時間であり、他方、131Iの5mCis未満の用量での半減期は約8日間である。123I
で標識された造影剤の有用な用量は、1乃至20mCiの間であるが、他方長命の131Iは5mCi未
満(例えば0.5乃至5mCiなど)、用いられると予測できる。このように、本発明に基づく
使用の場合、半減期の長い放射性同位体を含有する薬剤の好適な用量は、半減期の短い放
射性同位体を含有する薬剤の好適な用量よりも少ないであろう。
【0086】
本ナノ微粒子造影剤を含む組成物は従来、例えば単位用量の注射として静脈内投与され
ている。本発明のナノ微粒子造影剤に関して用いられる用語「単位用量」とは、それぞれ
の単位が、必要な希釈剤、即ち担体又は賦形剤、との関連から所望の効果を生じるように
計算された所定量の活性物質を含有するような、対象にとって単位投薬量として適した物
理的に個別の単位を言う。一回分の投薬型を作製するのに担体物質と組み合わせることの
できる活性成分の量は、治療しようとするホスト、特定の投与形態、に応じて様々であろ
う。一回分の投薬型を作製するのに担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は
、一般に、所望の効果を生ずる化合物量であろう。一般的には、100パーセントのうち
で、この量は約1パーセント乃至約99パーセントの活性成分、好ましくは約5パーセント乃
至約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント乃至約30パーセントの範囲であろう。
【0087】
本ナノ微粒子造影剤は、投薬の処方と適合する態様で、かつ、有効な量、投与される。
投与する量は、対象、対象の系の活性成分利用能、所望の造影程度、及び撮像しようとす
る構造、に応じる。投与する必要のある造影剤の精確な量は、担当医の判断に応じ、各個
人に固有である。しかしながら、全身投与の場合の適した投薬量範囲はここに開示されて
おり、投与経路に左右される。初回投与及びその後の投与、例えば最初の撮像後など、の
適した計画も考察されており、初回投与を行った後、その後の注射又は他の投与により、
繰り返し用量を1時間以上の間隔をおいて投与するのが典型的である。血中の濃度を、in
vivo撮像に特異的な範囲に維持するために充分な大量投与、複数回の投薬又は連続的な
静脈内輸注も考察されている。本造影剤の輸注は1分未満、2分未満、3分未満、4分未
満、5分未満、またはそれより長い時間未満であってよい。
【0088】
キット
本発明の方法及び造影剤は、限定はしないが、血管床(例えば動脈及び静脈床)、器官
組織(例えば心筋組織及び他の器官組織)、及び腫瘍を含む血管組織の潅流及び血液の管
外遊出を、例えば腫瘍の血管形成又は潅流状況を測定するために、撮像、検出、及び評価
したり、又は、マクロファージ蓄積又はプラーク蓄積を撮像、検出、及び評価するために
、市販のキット又はシステムに導入することができると予測される。さらに、本発明の方
法及び造影剤は、治療処置に応答した組織潅流もしくは微小潅流、血管形成、血液の管外
遊出、マクロファージ蓄積、又はプラーク蓄積の変化を判定するために、キットに導入す
ることができる。本キットには、ナノ微粒子造影剤と、使用に関する指示とを含めてもよ
く、さらに本微粒子造影剤を、適した撮像技術と組み合わせて投与及び用いる際の指示や
、目的の用途のための投薬要件も含めてよい。
【0089】
本発明の他の特徴、利点及び実施態様は、以下の実施例から明白となるであろうが、以
下の実施例は実例を挙げることを意図しており、従って何ら限定的な意味はない。
【0090】
実施例
実施例1: 本発明の方法で用いる造影剤の例:
無菌WIN 67722 懸濁液150 mg/mL(ここでは「無菌PH-50」、「PH-50注射用懸濁液」又
は「PH-50薬剤製品」とも言及される)は、間接的リンパ管撮影増で用いられてきた非経
口ヨウ化X線造影剤である。PH-50化合物は例えば米国特許第5,322,679号、第5,466,440
号、第5,518,187号、第5,580,579号及び第5,718,388号に解説されている。PH-50は実験式
C19H23I3N2O6を有し、化学名は6-エトキシ-6-オキソへキシ-3,5-ビス(アセチルアミノ)
-2,4,6-トリヨードベンゾエートであり、X線造影剤ジアトリゾア酸のエステル化誘導体
である。PH-50は756.1の分子量を有する。PH-50の構造式を図1に示す。本PH50化合物は
、エチル6-ブロモヘキサノエートをジアトリゾア酸ナトリウムのDMF溶液で縮合させた後
、その生成物をDMSOから沈殿させてエタノールで洗浄することで、作製できる。PH-50は
シグマ・アルドリッチ・ファイン・ケミカルズ社から入手することができる。
【0091】
PH-50注射用懸濁液中のヨウ素の濃度は76 mg/mLである。PH-50注射用溶懸濁液は、50.3
5%(重量比)のヨウ素を含有する白色から灰色がかった白色の結晶材料であり、その水溶
性は低い(10μg/ml未満)。
【0092】
PH-50薬剤製品を粉砕して、50%が約350ナノメートル以下であり、90%が1,200ナノメー
トル以下であるような粒子サイズ分布を達成する。粉砕後の該薬剤製品はナノシステムズ
社から入手できる。
【0093】
PH-50注射用懸濁液の最終的処方は下の表1に示す通りである:
【0094】
【表1】

【0095】
重合体の医薬品添加物であるポロキサマ338及びポリエチレングリコール1450は粒子安
定化剤として働き、さらに、血管内投与後に細網内皮系(RES)による粒子の血漿クリアラ
ンス速度を遅らせるように意図されている。ポロキサマ338はBASF(R)社から購入さ
れ、低分子量ポリマのレベルを下げるために、製造過程の一部として透析濾過により精製
される。
【0096】
本薬物粒子の物理化学的性質は、皮下注射部位からゆっくりと溶解するために、可溶化
薬物が吸収された後も、全身吸収や血漿及び/又は組織エステラーゼによる代謝分解も遅
いだろうと予測されるものである。加えて、本粒子の中には、局所リンパ節までリンパ系
で輸送されるものもある。粒子のマクロファージ抱き込み及びその後の貪食も注射部位や
、前記の局所リンパ節で起こさせることができる。
【0097】
さらに、PH-50のIV投与の結果、例えば肝臓、脾臓、骨髄)などのRESでマクロファージ
取り込みが起き、続いて細胞内で溶解し、及び/又は、代謝されたり、あるいは血漿中に
再分配されるはずである。
【0098】
実施例2: PH-50ナノ微粒子造影剤の血管撮像剤としての評価
この研究の主な焦点は、コンピュータ断層撮影法(CT)を用いて、正常なニュージーラ
ンド白ウサギで、ヨウ化ナノ微粒子の最初の取り込み及び血管分布を調査することだった

【0099】
A. 材料及び方法:
1.検査材料及び動物
この研究で用いた検査材料は、15%(w/v)(識別番号:GLP-N1177-20000005-A)のPH-50
から成った。
【0100】
この研究で用いた動物はNCSU-CVMから得られた4(4)匹のオスのニュージーランド白
ウサギだった。開始時、ウサギは成体であり、ほぼ3.00±0.16 kgの重さだった。これら
動物を別々の籠に入れ、標準的な乾燥実験室用食餌を与えた。濾過した水道水を適宜、与
えた。研究開始前に動物を14日(14)間、気候順応させた。ニュージーランド白ウサ
ギを選んだのは、これらはこの種類の研究にとって容認できる動物モデルと考えられたか
らである。この研究の対象となった動物の数は、この研究の目的に合致するのに必要な最
小動物数を表した。
【0101】
2. 研究のデザイン及び手法
この研究デザインは、平均直径が282nmで濃度が15%(w/v)のヨウ化ナノ微粒子PH-50の
、平均体重3.00 ± 0.16 kgの未処置オスウサギにおける最初の取り込み及び血管分布を
評価するステップを含んだ。下の表1に示す基準を用いて、1(1)mLのPH-50を頚静脈(n
=2)を通じて大量静脈内注射(IV)し、3(3)mLを5(5)分間、頚静脈(n=2)を通じてIVに
よって輸注した。
【0102】
【表2】

【0103】
* 3kgのウサギに基づく計算
【0104】
各研究の前に動物をイソフロレン(R)を用いてマスクを通じて麻酔し、CTスキャン法中
、麻酔下に維持した。動物を回復させると運動可能になり、8時間の研究まで飲水を許し
た。デジタルサブトラクション血管造影法(DSA)を最初の注射(一回のIV大量注射及び
一回の輸注)中に行い、次に各ウサギをCTに移動させた。CT は最初の注射(一回のIV大
量注射及び一回の輸注)後に行われた。
【0105】
CT撮像はすべて、GE(R)サイテック・スリ・ヘリカル・スキャナ(ウィスコンシン州ミ
ルウォーキー)を用いて行われ、画像はDICOM3 としてGE(R)オプティカル及びCD-ROM媒体
上に保存された。これらの研究用のCT撮像パラメータは、120 kvp で、1.5秒、200 mAで1
mm連続切片だった。スキャンはすべて、動物の下方に標準的な擬似模型を置いて行われた
。行ったCTスキャンはすべて、動物全身(吻側鼻域から骨盤まで)のものだった。コント
ラストの減衰をハウンスフィールド単位(HU)で測定し、擬似模型からの較正を考慮に入
れて、取り込みパーセント(%)で表した。注射後のヨウ素濃度及びヨウ素取り込みを、血
管、肺及び肝臓組織からについて推定した。
【0106】
B. 結果
これらの実験の結果を下の表2及び3に要約する。表2に示した結果は、大量注射及び
輸注の両方の実際のハウンスフィールド単位による。
【0107】
【表3】

【0108】
表3は、造影剤前CTスキャンした2匹の動物で計算した取り込み率の結果を示す。 取
り込み率は、注射前結節点を基線(即ち造影剤なし)として用いて計算された。
【0109】
【表4】

【0110】
**取り込み率=注射後ハウンスフィールド値 (t = X 時間) / 注射前ハウンスフィール
ド値(t = 0) 及びパーセンテージで表した場合。
【0111】
これらのデータは、撮像にとって最適な時間は、注射後最初の5分から15分以内と思
われることを実証している。輸注速度や、注射時の更なる体積のために、輸注法では最も
大きなコントラスト強調ができた。この方法は、血管強調及び肝臓視覚化の両方でより優
れていた。
【0112】
C. 結論
これらの実験結果は、ヨウ化ナノ微粒子が注射後最初の15分以内であればCT血管撮像
に効果的かつ効率的に使用できることを実証している。このデータは、注射後肝臓でハウ
ンスフィールド値が劇的に増加したことを示し、従ってPH-50は肝臓にとって有用な造影
剤となり得ることを実証している。さらに、この化合物に対する有害反応も認められなか
ったことに注目することも重要である。
【0113】
実施例2: ウサギのアテローム硬化症プラークを検出する上でのPH-50ナノ微粒子造影
材料の評価
この実施例の目的は、ニュージーランド白ウサギのアテローム硬化症プラークによるヨ
ウ化ナノ微粒子(PH-50)の取り込みを、コンピュータ断層撮影法(CT)を用いて示すこと
である。
【0114】
A. 材料及び方法:
1. 検査材料及び動物
本検査材料は、実験室又はホイル・コンサルティング社から入手可能な15%(w/v)のPH-
50(識別番号GLP-N1177-20000005-A)から成った。検査材料の操作は、計量前に、調合物
が充分に分散し、良好に混合していることを確認するために、バイアルを約10回、連続
してゆるやかに反転させるステップを含んだ。「泡立ち」の量を減らすために乱暴な振と
うは避けた。
【0115】
この研究で用いた動物は、UCDから得られた6(6)匹のオスのニュージーランド白ウ
サギだった。開始時、ウサギは成体であり、体重は約2.69±0.06 kgだった。動物を別々
の籠に入れ、コレステロール濃縮食(CED)(インディアナ州リッチモンド、テストダイエ
ット(R))の乾燥実験用飼料を与えた。濾過した水道水も適宜与えた。研究開始前に最小
7日間、動物を気候順応させた。
【0116】
2. 研究のデザイン及び手法
本研究のデザインは、頸動脈過伸展法を行う前に、ウサギにCEDを5週間与えるステッ
プを含んだ。5週目に頸動脈過伸展法を抗凝固剤治療法(下記)に沿って行った。次にウ
サギにCEDを再開し、と同時に該抗凝固剤治療法をさらに2(2)週間行った。次にウサ
ギを麻酔し、コンピュータ断層撮影法(CT)研究を行った。平均直径が282nmであり、濃度
が15%(w/v)であるヨウ化ナノ微粒子PH-50を、平均体重が2.69±0.06kgの未処置のオス
ウサギで評価した。6(6)mL/kgのPH-50を90(90)分間かけて耳の静脈から静脈輸
注した。8時間のCT研究後にウサギを安楽死させ、検屍した。下の表4は、コントロール
及び実験動物群に与えられた処置を示す。
【0117】
【表5】

【0118】
前記CED飼料は、2% コレステロール、5% ココナッツ油及び0.5%コール酸ナトリウムを
添加したプリナ(R)5321(広く入手できる標準的な高品質ウサギ用餌)から成った。このC
EDは、テストダイエット(R)(インディアナ州リッチモンド)により調合され、ここから
購入された。
【0119】
頸動脈過伸展法は以下のように行われた:本手法前にウサギを適した抗凝固剤(ヘパリ
ン)で前処理し、手法後はアスピリン(20mg/kg)を14日間、投与し続けた。手法当日
、ウサギを箱に入れ、適当に換気した。左頸動脈を当業で公知の標準的な技術を用いて露
出させた。過伸展させようとする部位の遠位に小さな穿孔を空け、バルーン・カテーテル
をこの動脈内に配した。血管の直径を直接的な観察で推定した。標的部位の基線動脈直径
よりも30%大きい直径のバルーンを用い、このバルーンを3回、それぞれ30秒間、6周
囲気圧で、膨張間の間隔を1分間にして膨張させることで、バルーンによる過伸展損傷を
行った。その後、カテーテルを引き抜き、PH-50を投与する前にウサギを14日間、回復
させた。この14日間の回復期間、動物にCED及びアスピリン療法を与え続けた。過伸展
法後の14(14)日目にウサギを麻酔し、PH-50輸注及びCTスキャン法の間、麻酔下に
維持した。過伸展部位域と、過伸展損傷を作らなかった代表域のCTスキャンを、上で表4
に示した時点で作製した。加えて、全身のCTスキャンを連続5mm切片(処置前、4時間及
び8時間研究で)毎に作製した。
【0120】
コンピュータ断層撮影(CT)法をGE(R)高速コンピュータ断層撮影スキャン装置(ウィ
スコンシン州ミルウォーキー)で行った。このCT画像をDICOM3画像として、GE(R)光学デ
ィスク、CD-ROMに保存した。CT撮像のパラメータは120 kvp、1.5 秒、150 mAで1mm連続切
片だった。ウサギ全体のCTスキャンを行った(吻側鼻域から骨盤まで、特定の時点で)。
頸動脈、血管、脳及び肝臓組織内でのヨウ素取り込みを推定した。コントラストの減衰を
ハウンスフィールド単位で測定し、「取り込み%」で表した。頸動脈については、プラー
クが形成していたと思われる区域での造影剤取り込みについて評価した。最後のCTスキャ
ン後、ウサギをと殺し、以下の組織:心臓、肺、両方の頸動脈(過伸展を行った区域と、
非処置区域を含む)、脾臓、肝臓、リンパ節、腎臓、及び検査中で判定された何らかの可
視の肉眼的病変、を10%ホルマリンで保存し、EPLアソシエーツに送って組織病理学的検査
を行った。
【0121】
B. 結果
臨床上の観察: 当初、コレステロール濃縮飼料が3(3)日間にわたって与えられた
唯一の食餌だったにもかかわらず、ウサギのすべてがこれを採ることを拒んだ。4日目に
飼料を改良して、75%の通常のウサギ用餌と、25%のCEDの混合物を含有させた。この混合
餌を7日間かけて次第に変形させていき、最後にはCEDのみを給餌した。ウサギは研究期
間にわたって食餌を続けた。手法後10日目で何匹かのウサギの食事量が減り始めたため
、少量のアルファルファをCEDと一緒に与えて、食欲の刺激を助けた。ウサギはすべて、
食餌し続けたが、ウサギのうち3匹の体重は大きく減少した(即ち10%未満の体重)。下
の表5及び6は、本研究で用いたウサギの体重変化及びコレステロール・レベルを示す。
【0122】
【表6】

【0123】
【表7】

【0124】
* 正常なコレステロール・レベルは200乃至300である。
【0125】
CTスキャンの直前に血液飼料をウサギから採取し、通常の血液検査を行った。表7は、
ウサギ番号3081及び3086のこの血液検査の結果の代表的サンプルである。
【0126】
【表8】

【0127】
このサンプルは「大変脂肪血であり、測定値のいくつかに影響を与えるかも知れない、
と判断された。両方のウサギとも、おそらくは血管外赤血球破壊を原因とする再生性貧血
症があったが血漿及びアルブミン値は正常だった。ALTレベルでは慢性肝臓疾患があるこ
とが示唆され、肝臓リポイド症に関係するかも知れないが、さらに貧血による低酸素性損
傷も反映していたかも知れない。AST値の上昇は肝臓疾患及び可能性として筋肉の疾患も
示すものだが、溶血も反映したものかも知れない。」と結論付けられた。文献を入念に検
討すると、これらのウサギは2%コレステロールの食餌にはあまり耐えられず、0.25%-1%の
レベルが推奨される(特にニュージーランドホワイトの場合)ことが判明した。このよう
な高コレステロール・レベルは四匹のウサギの体重減少及び早死につながったと考えられ
る。PH-50の輸注時には何ら悪影響はみとめられなかった。動物に麻酔はしたが、血圧の
上昇も心拍の上昇もみとめられなかった。
【0128】
この研究の主な目的は、アテローム硬化症性プラークによる化合物PH-50の潜在的取り
込みを研究することだった。これらの実験で用いたCTスキャナの空間解像能はほぼ0.15mm
であり、プラーク形成及びPH-50取り込みの判定を組織病理検査と相関付けた。ウサギ番
号3081及び3086のCT研究のスケジュールの時間表を表8に概観する。
【0129】
【表9】

【0130】
血管、肝臓、心臓、肝臓、脾臓及び脳の取り込みデータを下の表9に示す。
【0131】
【表10】

【0132】
データの組はすべて、慎重に採集、分析後に、組織病理検査と相関付けた。画像を採集
し、「頸動脈」、「肺」、「脾臓」、「肝臓」、「心臓」、「腎臓」又は「頸動脈のファ
キシトロン画像」とラベルした後、0=相関なし、及び5=直接的相関とする組織病理学的相
関スケール(HCS)に従って格付けした。これらの実験結果を下に要約する:
【0133】
頸動脈画像: 30分後の時点で撮影した頸動脈組織の画像は、頚静脈及び頸動脈などの
血管構造を示していた。この時点では、血管内腔内の造影剤量のために、プラークは見え
なかった。しかしながら、250分後には頸動脈プラークが可視であった。ウサギ番号30
86の左頸動脈の造影剤取り込みは最小だったため、2のHCSスコアを与えた。
【0134】
肺画像: 肺組織の注射前画像は、造影剤なしで、均一な肺パターンを血管構造と共に示
していた。しかしながら、注射後4時間目では、血管内の少なくとも2箇所で取り込みが
見えた。ウサギ番号2086 の肺の小動脈に造影剤取り込みが可視であったため、4のHCSス
コアを与えた(図2)。
【0135】
脾臓の画像: 脾臓組織の注射前画像は均一な密度を見せた。注射後4時間では、脾臓の
密度は大きく増し、脾臓血管構造内への取り込みの証拠があった。ウサギ番号3086の脾臓
の小動脈のいくつかに造影剤取り込みがあったため4のHCSスコアを与えた(図3)。
【0136】
肝臓の画像: 肝臓組織の注射前画像も均一な密度を示した。注射後4時間目では、均
一な取り込みがあったように見え、密度は不均一になっており、血管構造の示すコントラ
ストは強調されていた。ウサギ番号3086の肝臓の小動脈の一部での造影剤取り込みがあっ
たことを示すものだと考えられる外観モデルが肝臓実質にあったため、3のHCSスコアを与
えた(図4)。
【0137】
心臓の画像: 注射前の心臓組織は密度が均一に見え、心室はかすかに可視な程度だっ
た。注射後4時間で、冠状動脈の区域に顕著な取り込みがあることが見えた。注射後8時
間目では、冠状動脈の区域に引き続き取り込みがあるように見えた。ウサギ3086の冠状動
脈及び心筋のプラークが造影剤の取り込みを示していたため、4のHCSを与えた。
【0138】
腎臓の画像: 注射後4時間目では、注射前画像では見えなかった右側腎動脈に密な構
造が画像で示されたことで、この腎動脈に造影剤取り込みがあったことが実証された。ウ
サギ番号3086の腎動脈には造影剤取り込みが見つかったが、0のHCSスコアを与え、この区
域は組織病理検査に提出しなかった。
【0139】
ファキシトロン画像: ウサギ番号3086で損傷区域に何らかの造影剤取り込みを示した
と思われる唯一の画像は、左頸動脈であり、これはCT及び組織病理検査の結果ともよく相
関した。ウサギ番号3086の左頸動脈の中間領域に造影剤取り込みが検出されたため、3のH
CSスコアを与えた。
【0140】
採集された組織はすべて正常に見えたが、肝臓は例外であり、色は青白く、大変脆かっ
た。調べたウサギはすべて同様の外観を有していた。サンプルは病理学者にも送って更な
る分析を受けた。
【0141】
C. 結論
これらの実験で行った(注射前の数値に比較したときの)コントラストの増加率の予備
検査では、撮像に最適な時点は決定できなかった。しかしながら、プラーク取り込みは4
及び8時間の輸注スキャンで観察できるようである。
【0142】
血管構造は輸注から15(15)分後に良好に視覚化され、90(90)分間の輸注の
残りでも良好に視覚化された。高用量を輸注すると、血管の視覚化に加え、心臓及び肝臓
の優れた画像が得られた。
【0143】
これらの結果は、ヨウ化ナノ微粒子は、CT血管撮像研究で効果的かつ効率的に使用でき
ることを実証するものである。PH-50はまた、心臓及び肺のアテローム硬化症プラークで
も取り込まれたようであった。
【0144】
過伸展損傷では、意図されたアテローム硬化症プラークの程度は生じなかった。しかし
ながら、自発アテローム硬化症プラークがいくつかの区域で見られた。画像データは組織
病理検査とよく相関し、プラークと、アテローム硬化症プラークによるPH-50の取り込み
が示された。
【0145】
本データはさらに、PH-50がアテローム硬化症プラークの存在を判定するために有効で
あると思われることを示している。
【0146】
実施例3: 計画された臨床上の開発:プロトコルの輪郭
A. 目的
この研究の目的は、例えば末梢血管性疾患、冠状動脈性疾患及び頸動脈疾患などの心臓
血管疾患のX線コンピュータ断層撮影評価で用いられると予測される、静脈投与後のPH-5
0の許容量を、投与レベル(例えば150mg/mlストックに基づいて0.1乃至4ml/kgなど)及び
投与速度(例えば0.6乃至1.2ml/秒など)で予備的に評価することであろう。静脈投与後
の効果(用量に関連する血管混濁化)の評価を、所定の心臓血管疾患患者での用量範囲研
究(下の実施例4を参照されたい)の開発に用いるであろう。静脈内投与後の総ヨウ素、
親薬物及び遊離酸加水分解生成物(抱合体を含む)の血中レベル及び尿中回収率の測定を
行うことになるであろう。
【0147】
B. 研究のデザイン
本研究は観察研究、基線制御(患者内)研究、非無作為研究、オープン・ラベル増加用
量研究、並行群研究、単一中心研究となるであろう。
【0148】
C. 材料
合計最高36人の健康な非喫煙者のボランティアを、医療歴、現在の身体検査、臨床検
査、心電図検査、及び肺機能及び脈−酸素計測法で評価して、(1)肝機能及び損傷に関
する臨床検査の結果はいずれも、検査基準範囲を超えないこと;(2)肺機能検査の結果
が年齢調節された正常範囲値未満でないこと;及び(3)当該ボランティアが、通常の風
邪又は何らかの非全身性感染性プロセスを含め、しかし例外として局所的市販抗真菌剤で
治療可能な通常の皮膚又は粘膜真菌感染は除く、何らかの全身性感染性疾患の初期、中期
、又は回復期にないことを条件に、選択されるであろう。さらに、対象はいずれかの性別
の18歳から64歳までの年齢範囲内の成人で、但し条件として、妊娠の可能性のある女
性は効果的な避妊法を採り、薬物投与から前の72時間以内の尿中β-ヒト絨毛膜刺激ホ
ルモン検査で陰性であり、現行のFDA規則に従う方法で本研究に参加することに自発的及
び承知の上で同意していることとする。
【0149】
コントロール条件は、参加登録とPH-50投与開始前の間に行われた基線(処置前)観察
に基づいた負のコントロールを含むであろう。
【0150】
D. 方法
本PH-50化合物は、一晩の絶食の後、午前7:00から10:00までの間に投与されるであろう
。投与後最初の血清化学血液試料の前に、カフェイン含有飲料又は糖分含有飲料は与えら
れないであろう(以下参照)。その後に軽食を採ってもよく、通常食は投与から4時間後
にボランティアの選んだ時間で再開する。
【0151】
用量レベル及び投与速度は、それぞれ3人のボランティアから成る12群に分け、各群
はそれぞれの性別を少なくとも1人、含むであろう。用量及び投与速度群の案を下の表1
1に示す。
【0152】
【表11】

【0153】
薬物投与の経過中、以下の観察について評価することであろう:呼吸の速度及び口内温
度を含むバイタル・サイン、心拍及び血圧。心電図及び脈酸素測定並びに、酸素飽和度を
検査する肺機能検査が行われるであろう。血液像及び白血球像(絶対値、相対的/示差的
計数ではない)及び血小板数が評価されるであろう。血清の化学的性質(例えばSMAC-23
、又は、限定はしないが、アルブミン、アルカリホスファターゼ、カルシウム、二酸化炭
素、塩化物、コレステロール、クレアチンホスホキナーゼ(CPK、クレアチンキナーゼ[C
K])、クレアチニン、直接(非抱合型)ビリルビン、ガンマ-グルタミルトランスフェラ
ーゼ(GGT)、グルコース、無機リン、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナーゼ(LDH)、カ
リウム、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT、アスパラギン酸アミ
ノトランスフェラーゼ[AST])、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGP
T、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT])、ナトリウム、トリグリセリド、総ビリ
ルビン、総たんぱく、尿素窒素(BUN)、及び尿酸)を含む均等な群)が測定されるであ
ろう。さらに、補体活性化の可能性は、他の血清化学検定と同時に採取された血清試料中
の総溶血性補体(CH50)の機能検定によって、観察されるであろう。尿検査や、親薬物物
質の血漿濃度及び主要な代謝産物も評価されるであろう。親薬物及び代謝産物の尿中回収
率及び排出速度はLC/MSにより評価されるであろう。
【0154】
X線撮影が、投与前及び投与から20後及び40分後に(皮膚に吸収される総線量の制
約あり)、X線断層撮影(CT)により、目的の血管床に最適な設定値で行われるであろう
。代表的な切片中に含有された主要な血管(例えば大動脈、腎臓、頸動脈、末梢、脳血管
)、他の血管及び組織内の目的領域の放射線不透過が、各観察間隔毎に測定され、ハウン
スフィールド単位(HU)で表されるであろう。投与前及び投与後の両方の画像で、外部標
準を撮像体積内に配することになるであろう。
【0155】
実施例4: 計画された臨床上の開発:プロトコルの輪郭
A.目的
この臨床研究の第一の目的は、大動脈、腎臓、末梢及び頸動脈のらせん状(らせん状)
コンピュータ断層撮像中に、血管性疾患の重篤度の特定、特徴付け、及び判定に役立つよ
うな効果的なレベルの血管コントラスト強調を提供するのに必要な、投与速度を含むPH-5
0の最小で効果的かつ至適な静脈内用量を調査及び判定することであろう。開始用量、投
与速度、及び増分投与量は、許容度研究(実施例3で解説した)で得られた結果から、そ
してこの結果に基づいて、決定されるであろう。
【0156】
この提案された研究の第二の目的には、乱流、低流量、又は腎臓などの器官潅流のいず
れかを特徴とする血管領域で観察される異常の効果的な視覚化及びコントラスト強調を提
供する、CT撮像パラメータを含む、撮像装置の広汎な評価が含まれよう。これらの研究は
、正常な人のボランティアでのPH-50許容度研究の予備画像評価で得られた撮像経験に依
拠するであろう。
【0157】
B. 研究のデザイン及び方法
この研究は、血管性疾患を特定の血管領域で血管造影法による評価を行う予定の患者に
おける、制御された相対的研究となるであろう。これには、大動脈又は腎臓、頸動脈、腸
骨、大腿もしくは末梢動脈に血管性疾患を有する疑いのある患者の参加が含まれるであろ
う。PH-50 CT検査の前又は後で、認可されたヨウ化造影剤を用いた血管造影検査を行うた
めに、患者を無作為化することになるであろう。患者にはすべて、非造影剤CT検査を行う
こととなるが、この非造影剤CT検査には、限定はしないが、血管造影法で検査する予定の
血管領域も含まれよう。PH-50造影剤検査は、非造影剤CTの直後に、非造影剤CT検査と同
じ装置及び設定値並びに血管床を用いて行われるであろう。非造影剤及び造影剤CT検査の
両者ともに、目的の臨床領域の血管床が含まれることとなるが、さらに、目的の臨床領域
に隣接する、又は、目的の臨床領域の外側にある、CTで容易に撮像できそうな血管構造も
含めてよい。
【0158】
C. 投与量
この研究は、上記の研究で収集された効果及び許容度結果に基づくPH-50の開始用量を
用いた、漸増投与量研究になるであろう(実施例3を参照されたい)。
【0159】
血管造影評価の解釈は事実標準と見なされるであろう。非造影剤CT画像及びPH-50コン
トラスト強調CT画像の両者はこの事実標準と比較されるであろう。前記非造影剤研究及び
PH-50コントラスト強調CT研究から解釈された位置、大きさ、狭窄のパーセント、及び他
の顕著な特徴が、該事実標準と比較されるであろう。画像はすべて、専門の放射線科医の
独立した集団が盲験で解釈することになるであろう。
【0160】
D. 診断と、算入/除外のための主な基準
80人の貴重な患者を得るために合計で最高100人の患者を参加させてもよい。基線医療
歴、身体検査、臨床検査、心電図、脈酸素測定法及び肺機能検査が得られるであろう。
【0161】
E. 効果
以下の相対的評価を用いて、PH-50コントラスト強調CT画像の臨床有効性を評価するこ
とになるであろう:(1)血管造影検査をゴールド標準として用いて、非コントラスト強
調CT及びPH-50コントラスト強調CT検査を、無作為化した態様で、独立した一群の資格あ
る読み取り者に盲験で評価してもらい、各病変の数、位置、重篤度、及び顕著な(記述的
な)特徴を評価してもらうことになる。これらの所見は、病変毎、血管床及び患者毎に、
ゴールド標準血管造影での所見と比較されるであろう。(B)ゴールド標準の情報は臨床
の関心事の血管床のみから得られるであろうため、そして隣接する血管床も非コントラス
ト及びPH-50強調CTで評価してもよいため、これらの隣接する血管床で観察された血管の
異常の性質及び特徴も、このような異常が臨床上の関心事の血管床に限られるかどうか、
又は全体的なものかどうかを判定するために、記録されるであろう。
【0162】
F. 薬物の投与
非強調CT画像の終了後にPH-50が投与されるであろう。用量レベル、投与速度、及び群
の大きさは、許容度及び予備効果研究の結果が分析された後で決定されるであろう。患者
に、以下に定義するような治療に関連する有害事象が起きたら、患者を本研究から脱退さ
せてもよい:(a)PH-50又はその投与に関係するはずの重篤な有害事象;(b)何らか
の有害な事象があったために本研究から対象を脱退させたこと(薬物投与後のインフォー
ムド・コンセントの取り消し);及び(c)当該薬剤又はその投与に関係するであろう、
初期の重篤な有害事象の特徴的症状の出現、又は、肉眼で見えない重篤な有害事象の特徴
的兆候の出現。
【0163】
G. 観察及び評価
緊急な治療を要する薬物毒性の兆候及び症状は、薬物投与中連続的に、そしてその1時
間後、そして他の観察(下記)が予定されている間隔で、観察されるであろう。総観察期
間は、終了した臨床治験の所見を検討した後に、指定されるであろう。
【0164】
以下の観察が以下の通りに行われるであろう:バイタル・サイン、例えば心拍、収縮期
及び拡張期血圧、呼吸数及び口腔温。尿検査も測定されよう。心拍及び12-リード(原
語:lead)心電図が、薬物投与開始直前、薬物投与中、及びその後5秒毎、30秒毎で連続
5分間の間、そして10分目、15分目、20分目、40分目、60分目及び90分目、そして3時間
目、6時間目、12時間目及び24時間目並びに72時間目に記録されるであろう。肺機能検査
は、バイタル・サインと同じ観察時点の酸素飽和度により、評価されるであろう。1秒間
の努力呼気肺活量(FEV1)及び努力性肺活量(FVC)が、薬物投与前、そして薬物投与から2
0分後、そして1時間後及び24時間後並びに72時間後に測定されるであろう。連続的な酸素
飽和度観察(脈酸素測定法)は、やはりバイタル・サインと同じ観察時点で、薬物投与開
始の直前に開始し、薬物投与撮像中、続けて測定されるであろう。示差的計数(相対的で
なく、絶対的な)による全血球計算値(CBC)及び血小板数が、参加登録と薬物投与の開始
時の間の(この期間のうちで自由な、しかし精確に記録された時点での)一回、投与後2
時間目、12時間目、24時間目及び72時間目に評価されるであろう。血清の化学的性質(例
えばSMAC-23、又は、限定はしないが、アルブミン、アルカリホスファターゼ、カルシウ
ム、二酸化炭素、塩化物、コレステロール、クレアチンホスホキナーゼ(CPK、クレアチ
ンキナーゼ[CK])、クレアチニン、直接(非抱合型)ビリルビン、ガンマ-グルタミル
トランスフェラーゼ(GGT)、グルコース、無機リン、ラクテート(乳酸)デヒドロゲナ
ーゼ(LDH)、カリウム、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT、ア
スパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])、血清グルタミン酸ピルビン酸トラン
スアミナーゼ(SGPT、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT])、ナトリウム、トリ
グリセリド、総ビリルビン、総たんぱく、尿素窒素(BUN)、及び尿酸)を含む均等な群)
が、参加登録と薬物投与の開始時の間で1回、投与後2時間目、12時間目、24時間目及び7
2時間目に測定されるであろう。
【0165】
CT検査は、研究薬物投与前、及び20分後及び40分後(皮膚に対する総放射線吸収量の
制約を受ける)、X線断層撮影(CT)により、目的の血管床にとって最適な設定値で行われ
るであろう。代表切片に含まれた主要な血管(例えば大動脈、腎臓、頸動脈、末梢)他の
血管及び組織内の関心領域の放射線不透過が、各観察間隔で評価されるであろう。当該画
像は、臨床上の目的の血管床や、隣接する血管床の異常の存在、位置、大きさ、重篤度、
及び記述的特徴について評価されるであろう。目的の領域の放射性不透過は、盲験の画像
検討を調整するのに用いられた、撮像の中心となった研究室で測定され、ハウンスフィー
ルド単位(HU)で報告されるであろう。
【0166】
引用による援用
本出願全体を通じて引用された全参考文献(刊行文献、発行済み特許、公開済み特許出
願、及び同時係属中の特許出願を含む)の内容を、引用をもってそれらの全文をここに援
用することを明示する。
【0167】
均等物
当業者であれば、慣例的な実験を用いるのみで、ここに解説した本発明の具体的な実施
態様の均等物を数多く、認識し、又は確認できることであろう。このような均等物は以下
の請求の範囲の包含するところと、意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、PH-50の化学構造を示す。
【図2】図2は、ウサギの肺の小動脈でのPH-50の取り込みを示す。
【図3】図3は、ウサギの脾臓の小動脈でのPH-50の取り込みを示す。
【図4】図4は、ウサギの肝臓の小動脈でのPH-50の取り込みを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の血管内の蓄積マクロファージを検出又は評価するためのin vivoでの方法であって

a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記血管内の前記蓄積マクロファージの画像を形成
するステップと
を含む方法。
【請求項2】
対象の血管内のプラークの蓄積を検出又は評価するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記血管内の前記蓄積プラークの画像を形成するス
テップと
を含む方法。
【請求項3】
対象の血管内の蓄積マクロファージを検出又は評価することにより、血管性疾患のリスク
を予測するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記血管内の前記蓄積マクロファージの画像を形成
するステップと、
c)形成された前記画像に基づいて、前記対象の血管性疾患のリスクを予測するステッ
プと
を含む方法。
【請求項4】
前記予測が、対象の血管内の造影剤の蓄積の定量的測定値に基づいて行われる、請求項3
に記載の方法。
【請求項5】
前記血管性疾患が、アテローム性硬化症、冠状動脈性疾患(CAD)、心筋梗塞(MI)、虚
血、卒中、末梢血管疾患、及び静脈血塞栓、から成る群より選択される、請求項3に記載
の方法。
【請求項6】
対象において、血管又は器官の潅流状況を検出又は評価するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記血管又は前記器官の画像を形成するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記画像を評価して、前記器官又は前記血管の前記潅流状況を判定するステップをさらに
含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
小さな血管の微小潅流状況を検出又は評価するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記小さな血管の微小潅流状況の画像を形成するス
テップと
を含む方法。
【請求項9】
前記画像を評価して、前記血管の前記微小潅流状況を判定するステップをさらに含む、請
求項7に記載の方法。
【請求項10】
対象の腫瘍の潅流状況を検出又は評価するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記腫瘍の前記潅流状況の画像を形成するステップ
とを含む方法。
【請求項11】
前記腫瘍の処置前の潅流状態と比較して前記腫瘍の潅流状態が改善することが、前記腫瘍
への有効処置であることを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象において器官の損傷を評価するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記器官の画像を形成するステップと、
c)前記画像に基づいて器官の損傷を判定するステップと
を含む方法。
【請求項13】
ある実施態様では、前記器官が心臓、脳、肺、腎臓、肝臓、膵臓、又は脾臓から成る群よ
り選択される。
【請求項14】
対象において血管からの血液漏出を評価するin vivoでの方法であって、
a)前記対象に有効量のナノ微粒子造影剤を投与するステップと、
b)前記造影剤を検出することで、前記血管及び前記血管周囲領域の画像を形成するス
テップと、
c)前記画像に基づいて前記血管からの血液の漏出を判定するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記ナノ微粒子造影剤が水不溶性である、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ微粒子造影剤が重元素を含む、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は1
4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記重元素がヨウ素又はバリウムから成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ微粒子造影剤がヨウ化している、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は
14のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記造影剤がジアトリゾア酸のエステルである、請求項1、2、3、6、8、10、12
、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記造影剤がPH-50である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ微粒子造影剤の平均粒子サイズが、約20ナノメートル乃至約750ナノメート
ルである、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ微粒子造影剤の平均粒子サイズが約200ナノメートル乃至約400ナノメート
ルである、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ微粒子造影剤の平均粒子サイズが約300ナノメートルである、請求項1、2、
3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ微粒子造影剤の平均粒子サイズが、マクロファージに取り込ませるのに充分なサ
イズのものである、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載
の方法。
【請求項25】
前記検出が、X線撮影、コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ断層血管造影法(
CTA)、電子ビーム(EBT)、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴血管造影法(MRA)、又は
陽電子射出断層撮影法、から成る群より選択される、請求項1、2、3、6、8、10、
12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記造影剤が静脈内又は動脈内投与される、請求項1、2、3、6、8、10、12、又
は14のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記造影剤が、2回以上の時点で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記造影剤が、約5分間以上の期間にわたって輸注により投与される、請求項26に記載
の方法。
【請求項29】
前記造影剤が薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1、2、3、6、8、10、
12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記造影剤が肝臓で代謝される、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のい
ずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記造影剤の前記検出が、前記造影剤の投与後少なくとも約10分を越える時間後に行わ
れる、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記造影剤の前記検出が、前記造影剤の投与後少なくとも約15分を越える時間後に行わ
れる、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記造影剤の前記検出が、前記造影剤の投与後少なくとも約30分を越える時間後に行わ
れる、請求項1、2、3、6、8、10、12、又は14のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
非水溶性のナノ微粒子造影剤であって、活性化マクロファージによる前記ナノ微粒子造影
剤の取り込みが可能である充分な平均粒子サイズを有する、ナノ微粒子造影剤、を含む組
成物。
【請求項35】
前記ナノ微粒子造影剤の平均粒子サイズが約200ナノメートル乃至約300ナノメートルであ
る、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記ナノ微粒子造影剤の平均粒子サイズが約300ナノメートルである、請求項34に記載
の組成物。
【請求項37】
前記ナノ微粒子造影剤が肝臓系で代謝される、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記ナノ微粒子造影剤が約30分間乃至約60分間、血管構造内に留まる、請求項34に記載
の組成物。
【請求項39】
前記造影剤がジアトリゾア酸のエステルである、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記ナノ微粒子が造影剤により標識可能である、請求項34に記載の組成物。
【請求項41】
前記造影剤がヨウ素である、請求項34に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178772(P2011−178772A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151624(P2010−151624)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2003−541891(P2003−541891)の分割
【原出願日】平成14年11月7日(2002.11.7)
【出願人】(504174548)インコール ファーマシューティカル カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】IMCOR Pharmaceutical Company
【住所又は居所原語表記】6175 Lusk Boulevard San Diego, CA 92121 (US)
【Fターム(参考)】