説明

ナノ懸濁液の濃縮方法

液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液を濃縮する方法であって、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させることと、液体中のナノ粉体粒子の分散を制御することとを包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ懸濁液を濃縮する方法、特に、但し、排他的ではなく、ジルコニアナノ懸濁液を濃縮する方法に関する。本発明はまた、ナノ懸濁液に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粉体は、処理の間に凝集体状になり、結果として、所望でない材料特性を有し得るナノ成分をもたらす傾向を有する。
【0003】
この問題を軽減させるために、ナノ粉体粒子が液体中に懸濁させられたナノ懸濁液を用いる湿式成形技術が用いられ得る。しかしながら、懸濁液中のナノ粉体粒子が約2nm内に互いに接近する場合、相互作用によって、互いにそれらを通り過ぎるのに要求される力は、著しく大きくなる、すなわち、懸濁液の著しい粘度の増加がある。
【0004】
所与の固体含有量のために、ナノ粉体粒子がより微細になる程、それらはより近く互いに近づくことになる。それ故に、粒子サイズが小さくなると、より高い粘度が経験される。結果的に、ナノ成分を形成するためのナノ懸濁液の続く処理を可能にするように許容範囲の低い粘度を有する微細なナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液を提供するために、従来は、低い固体含有量を提供することが必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液を濃縮する方法であって、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させることと、液体中のナノ粉体粒子の分散を制御することとを包含する、方法が提供される。
【0006】
液体中のナノ粉体粒子の分散の制御は、ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程を包含し得、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる前にナノ懸濁液の酸性度を改変する工程を包含し得る。
【0007】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、ナノ粉体粒子の等電点より上にナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含し得、かつ、ナノ懸濁液の酸性度を減少させる工程を包含し得る。ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、あるいは、ナノ粉体粒子の等電点より下にナノ懸濁液のpHを減少させる工程を包含し得、かつ、ナノ懸濁液の酸性度を増加させる工程を包含し得る。
【0008】
ナノ懸濁液が酸性溶液を含む場合、ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、ナノ懸濁液のpHを増加させて、例えば、塩基性溶液を提供する工程を包含し得る。ナノ懸濁液は、ナノ懸濁液の酸性度を改変する前に約1.5と約6.5の間のpHを有し得、ナノ懸濁液の酸性度を改変する前に約2.4のpHを有し得る。
【0009】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、約9.0と約12.5の間にナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含し得る。ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、約11.5にナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含し得る。
【0010】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、例えばアルカリをナノ懸濁液に導入してナノ懸濁液の酸性度を減少させる工程を包含し得る。アルカリは、無水アルカリ物質を含み得、かつ、無水アルカリ粉体を含み得る。無水アルカリ物質は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含み得る。あるいは、アルカリは、アルカリ溶液を含み得る。アルカリ溶液は、アンモニウムヒドロキシド溶液を含み得る。
【0011】
液体中のナノ粉体粒子の分散の制御は、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる前に液体中にナノ粉体粒子の分散を生じさせることを包含し得る。液体中にナノ粉体粒子の分散を生じさせることは、電子立体的分散(electrosteric dispersion)を生じさせるか、立体的分散を生じさせるか、または、静電的分散(electrostatic dispersion)を生じさせることを包含し得る。
【0012】
液体中にナノ粉体粒子の電子立体的分散を生じさせることは、界面活性剤等の高分子電解質をナノ懸濁液に導入することを包含し得る。
【0013】
界面活性剤は、陰イオン界面活性剤であり得、かつ、ポリアクリル酸アンモニウム、例えばCIBA(登録商標)DISPEX(登録商標)A40を含み得る。界面活性剤は、あるいは、陽イオン界面活性剤であり得る。
【0014】
ナノ懸濁液の液体含有量の低減は、液体の一部が蒸発するようにナノ懸濁液を加熱する工程を包含し得、かつ、一部の液体を蒸発させるように加熱温度にナノ懸濁液を維持する工程を包含し得る。
【0015】
ナノ懸濁液の加熱工程は、加熱水浴を用いることによって、あるいは、マイクロ波加熱装置を用いることによって行われ得る。
【0016】
加熱工程は、約80℃までの温度にナノ懸濁液を加熱する工程を包含し得る。加熱工程は、約45℃と約60℃の間の温度にナノ懸濁液を加熱する工程を包含し得る。加熱工程は、周囲圧力未満の圧力で45℃未満の温度にナノ懸濁液を加熱することによって行われ得る。
【0017】
あるいは、または、さらに、ナノ懸濁液の液体含有量の低減は、ナノ懸濁液をろ過手段に通過させる工程を包含し得る。ナノ懸濁液をろ過手段に通過させる工程は、強制的に(例えば、圧力をかけることによって)ナノ懸濁液をろ過手段に通過させる工程を包含し得る。ナノ懸濁液をろ過手段に通過させる工程は、ナノ懸濁液を圧ろ過(filter press)装置に通過させる工程を包含し得る。
【0018】
液体中のナノ粉体粒子の分散の制御は、あるいはまたはさらに、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる間および/またはナノ懸濁液の液体含有量を低減させた後、ナノ懸濁液を攪拌することを包含し得る。ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる間、ナノ懸濁液が攪拌される場合には、加熱が、攪拌の間一時中断されられ得、続いて、再開させられ得る。
【0019】
ナノ懸濁液の攪拌は、ナノ懸濁液を振動させるようにナノ懸濁液を超音波に付す工程を包含し得る。
【0020】
ナノ懸濁液は、所定の継続期間を有する離散間隔で超音波に付され得る。この方法は、例えば、ナノ懸濁液の液体含有量が減る時に離散間隔の所定の継続期間を増加させる工程を包含し得る。この方法は、例えば、ナノ懸濁液の液体含有量が減る時に、離散間隔の間の継続期間を減らし、それにより、離散間隔の頻度(frequency)を増加させる工程を包含し得る。
【0021】
本方法は、好ましくは、ナノ懸濁液の液体含有量が減る時に超音波の振動周波数および/または出力を増加させる工程を包含し得る。
【0022】
ナノ粉体粒子は、ジルコニアナノ粉体粒子を含み得、イットリア添加ジルコニアナノ粉体粒子を含み得る。液体は、水をベースとする液体であり得る。
【0023】
未濃縮ナノ懸濁液は、30重量%未満のナノ粉体粒子を含み得、100s−1の剪断速度において0.1Pa・s未満の粘度を有し得る。
【0024】
本方法は、未濃縮懸濁液のナノ粉体粒子の重量百分率含有量と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含む濃縮ナノ懸濁液を提供し得、ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有し得る。
【0025】
ナノ懸濁液は、約50重量%と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含み得る。
【0026】
本方法は、100s−1の剪断速度において1Pa・s未満の粘度を有する濃縮ナノ懸濁液を提供し得、100s−1の剪断速度において約0.5Pa・sの粘度を有する濃縮懸濁液を提供し得る。
【0027】
本方法は、約50重量%と約80重量%との間のナノ粉体粒子を含む濃縮ナノ懸濁液を提供し得る。本方法は、約56重量%のナノ粉体粒子を含むか、または、約70重量%のナノ粉体粒子を含む濃縮ナノ懸濁液を提供し得る。
【0028】
本発明の第2の態様によると、液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液であって、本発明の第1の態様による方法を用いて濃縮されたものが提供される。
【0029】
濃縮後、ナノ懸濁液は、未濃縮懸濁のナノ粉体粒子の重量百分率含有量と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含み得、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有し得る。
【0030】
本発明の第3の態様によると、液体中に懸濁した約50重量%と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液であって、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有するものが提供される。
【0031】
ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において1Pa・s未満の粘度を有し得、100s−1の剪断速度において約0.5Pa・sの粘度を有し得る。
【0032】
ナノ懸濁液は、約55重量%と約70重量%の間のナノ粉体粒子を含み得る。
【0033】
ナノ粉体粒子は、100nm未満の平均径を有し得、約20nmの平均径を有し得る。
【0034】
ナノ粉体粒子は、ジルコニアナノ粉体粒子を含み得、イットリア添加ジルコニアナノ粉体粒子を含み得る。
【0035】
液体は、水をベースとする液体であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施形態が、以下に、例示のみの目的で記載されることになる。
【0037】
本発明は、一般的に、液体、例えば、水ベースの液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液を濃縮する方法を提供する。特定のナノ懸濁液に何ら制限されるものではないが、一実施形態において、本方法は、ジルコニアナノ粉体粒子が液体中に懸濁したジルコニアナノ懸濁液を濃縮するために用いられる。
【0038】
ジルコニアナノ懸濁液を用いて生じさせられるべきナノ成分の所望材料の特性に応じて、ナノ懸濁液は、高純度のジルコニアナノ粉体粒子を含み得るか、あるいは、イットリア添加ナノ粉体粒子を含み得る。例えば、1.5、2.7、3、5、8または10モル%のイットリアを含むジルコニアナノ懸濁液(MEL Chemicalsから入手可能である)は、本発明による方法を用いて濃縮され得る。
【0039】
一般的に、本方法は、低固体含有量、例えば、30重量%未満のナノ粉体粒子を有し、かつ、100s−1の剪断速度において0.1Pa・s未満の初期粘度(濃縮前)を有するナノ懸濁液を濃縮するために用いられる。
【0040】
本方法を用いて濃縮され得る典型的なナノ懸濁液中のナノ粉体粒子の概算平均径は、20nm程度である。
【0041】
ナノ懸濁液は、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させ、かつ、液体中のナノ粉体粒子の分散を制御することによる本発明による方法を用いて濃縮される。
【0042】
第1の工程として、および、未濃縮ナノ懸濁液の酸性度に応じて、液体中のナノ粉体粒子の分散を制御する工程は、最初に、所望のpHレベルにナノ懸濁液の酸性度を改変する工程を包含し得る。特に、ナノ懸濁液が酸性溶液である場合、ナノ懸濁液のpHは、塩基性溶液を提供するようにナノ粉体粒子の等電点より上に増加させられる。好ましい実施形態において、未濃縮ナノ懸濁液は、約2.4のpHを有し、酸性度を改変する工程は、約11.5にpHを増加させる工程を包含する。
【0043】
ナノ懸濁液のpHは、ナノ懸濁液にアルカリを導入することによって増加させられ、ナノ懸濁液を希釈させることおよびその濃度を低減させることを回避するために、無水アルカリ物質を使用することが有利である。特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の無水アルカリ粉体が、pHを増加させるために未濃縮ナノ懸濁液に添加され得る。
【0044】
代替の実施形態において、pHを増加させるために、アルカリ溶液、例えば、アンモニウムヒドロキシド溶液がナノ懸濁液に加えられ得る。しかしながら、溶液の使用は、ナノ懸濁液の液体含有量を増加させ、それによりナノ懸濁液が希釈するという不利益点を有する。
【0045】
一旦、ナノ懸濁液の酸性度が改変されて、塩基性溶液が提供されると、液体中のナノ粉体粒子の分散を制御する工程は、液体中のナノ粉体粒子の電子立体的分散を生じさせる工程を包含する。本発明の好ましい実施形態において、電子立体的分散は、ナノ懸濁液に界面活性剤を導入することによって生じさせられる。
【0046】
ナノ懸濁液が、例えば、約11.5のpHを有する塩基性溶液である場合、陰イオン界面活性剤が、電子立体的分散を生じさせるためにナノ懸濁液に導入される。ポリアクリル酸アンモニウム、例えば、CIBA(登録商標)DISPEX(登録商標)A40(Ciba Speciality Chemicalsによって製造される)等の陰イオン界面活性剤が要求される電子立体的分散を生じさせるのに適していることが見出された。
【0047】
上記工程を用いて液体中のナノ粉体粒子の分散が制御された後、ナノ懸濁液の液体含有量は低減させられて、ナノ懸濁液は濃縮される。
【0048】
本発明の一実施形態において、液体含有量は、液体の一部が蒸発するようにナノ懸濁液を加熱し、それにより、結果として、ナノ懸濁液中のナノ粉体の重量百分率含有量を増加させることによって低減させられる。約45℃と約60℃の間の温度にナノ懸濁液を加熱し、約3日の期間にわたって当該温度にこれを維持すれば、液体の制御された蒸発が提供され、結果として、許容範囲の固体含有量になることが見出された。しかしながら、ナノ懸濁液は、約80℃までの任意の温度に加熱され得、任意の適切な期間にわたって当該温度に維持され得る。
【0049】
上記の代替として、または、上記に加えて、液体含有量は、強制的に、ナノ懸濁液をろ過手段に通すことによって、例えば、適切な圧ろ過装置を用いて低減させられ得る。ナノ懸濁液が強制的に超微細ろ過膜に通される任意の適切なろ過手段が、この目的に用いられ得る。
【0050】
液体中のナノ粉体粒子の分散を制御する工程は、さらに、または、あるいは、加熱および/またはろ過によってナノ懸濁液の液体含有量を低減させる最中および/または後にナノ懸濁液を攪拌する工程を包含し得る。これは、ナノ粉体粒子の分離を維持することによって液体含有量が減少するため、ナノ懸濁液の粘度が許容範囲のレベルに維持されることを可能にする。
【0051】
ナノ懸濁液は、超音波にそれを付し、それによって、ナノ懸濁液を振動させることによって攪拌される。超音波がかけられている間のナノ懸濁液の温度を低くし、それにより、ナノ懸濁液からの液体の蒸発を最少にするために、超音波に付されている間冷水浴中でナノ懸濁液を冷却することが有利である。
【0052】
本発明の一実施形態において、ナノ懸濁液は、加熱によりナノ懸濁液の液体含有量の低減が終了した後に、単回の超音波適用に付される。
【0053】
本発明の代替の実施形態において、ナノ懸濁液は、加熱および/またはろ過の間に離散間隔で超音波に付される。これらの離散間隔は、所定の継続期間のものであり、ナノ懸濁液の固体含有量または粘度により決められた時に適用され得る。例えば、前者の場合において、ナノ懸濁液は、それが38、48、54および56重量%のナノ粉体粒子を含む場合に超音波に付され得る。後者の場合、それは、粘度が100s−1の剪断速度において1Pa・s以上である場合に超音波に付され得る。
【0054】
ナノ懸濁液の液体含有量が減少し、それ故に、ナノ懸濁液の粘度が増加する時に、さらなる継続期間にわたり超音波にナノ懸濁液を付すこと、および/または、超音波がかけられる離散間隔の間の継続期間を短くして、それにより、間隔の頻度を増やすことが望ましくあり得る。ほんの一例として、ナノ懸濁液が超音波に付される離散間隔の初期の継続期間は、2分程度であり得る。
【0055】
さらなる実施形態において、ナノ懸濁液は、許容範囲のレベルにナノ懸濁液の粘度を維持するために、加熱および/またはろ過を通して連続的に超音波に付され得る。
【0056】
ナノ懸濁液は、適切な出力、周波数および振幅を有する超音波に付され得る。75Wの出力、20〜24kHzの振動周波数および14μmの振幅を有する超音波が適切であることが見出された。ナノ懸濁液の固体含有量、それ故に、粘度が増加する時に、超音波の出力および/または周波数および/または振幅が増加させられ得ることも可能である。
【0057】
上記の方法を用いると、高い固体含有量および低い粘度を有するナノ懸濁液を生じさせることが可能である。特に、本方法は、未濃縮懸濁液のナノ粉体粒子の重量百分率含有量と80重量%の間のナノ粉体粒子を含む濃縮ナノ懸濁液を提供するために用いられ得、ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有する。
【0058】
本出願人は、状況次第で、ナノ懸濁液の固体含有量が高すぎるならば、それは、不安定になり得、任意の期間にわたり放置すれば粘度が突然増加する傾向があり得ることを評価した。約56重量%のナノ粉体粒子を含み、100s−1の剪断速度において約0.5Pa・sの粘度を有する濃縮ナノ懸濁液が、上記に記載された方法を用いて生じさせられ、かつ、安定であることが見出された。
【0059】
それ故に、高い固体含有量および低い粘度を有するナノ懸濁液を生じさせることができるナノ懸濁液を濃縮する方法が提供される。
【0060】
高い固体含有量、それ故に低い液体含有量を有し、かつ比較的低い粘度を有する濃縮ナノ懸濁液を提供することは有利である。所望の材料特性を有するナノ成分を生じさせるために、濃縮ナノ懸濁液が容易に生じさせられ得るからである。さらに、このような濃縮ナノ懸濁液を搬送するコストは、許容範囲の粘度を達成するために、相当量の液体を含む従来のナノ懸濁液を搬送するコストより低い。
【0061】
電子立体的分散を生じさせることによって液体中のナノ粉体粒子の分散を制御することが有利であることが見出された。加熱および/またはろ過の間に液体の量が低減させられる前にナノ粉体粒子が液体中に適切に分散させられることをそれが保証するからである。
【0062】
未濃縮ナノ懸濁液が酸性溶液であり、陰イオン界面活性剤が電子立体的分散を生じさせるために用いられるべきである場合、界面活性剤を添加する前に塩基性溶液を提供するためにナノ懸濁液のpHが増加させられることが特に重要である。さもなければ、所望の電子立体的分散が生じないかもしれないからである。
【0063】
加熱および/またはろ過の最中および/または後にナノ懸濁液を超音波に付すことによってナノ粉体粒子の分散を維持するように液体中のナノ粉体粒子の分散を制御することも有利である。ナノ懸濁液の粘度が注意深く制御されることおよび許容範囲のレベルに維持されることをそれが可能にするからである。
【0064】
本発明の実施形態が、種々の例を参照しながら先行する節に記載されたが、特許請求されたような本発明の範囲を逸脱することなく、与えられた例への種々の改変がなされ得ることが理解されるべきである。
【0065】
例えば、未濃縮ナノ懸濁液が塩基性溶液である場合、陰イオン界面活性剤を添加する前にナノ懸濁液の酸性度を改変することは必要ではない。
【0066】
ナノ懸濁液に陽イオン界面活性剤を導入することによって電子立体的分散が酸性溶液において生じさせられ得ることも可能である。この場合、陽イオン界面活性剤を導入する前にナノ懸濁液の酸性度を改変することは必要でないだろう。
【0067】
液体中にナノ粉体粒子の分散を生じさせることは、電子立体的分散の代わりに立体的分散または静電的分散を生じさせることを包含し得る。
【0068】
前述の記載において、特に重要であると信じられる本発明のそれらの特徴に注意を引くように努力しながら、特定の強調がそこに置かれたか否かはどうであれ、図面を参照し、かつ/または図面において示された前述の任意の特許可能な特徴または特徴の組合せに関して本出願人が保護を主張することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液を濃縮する方法であって、液体含有量を低減させることと、液体中のナノ粉体粒子の分散を制御することとを包含する方法。
【請求項2】
液体中のナノ粉体粒子の分散の制御は、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる前にナノ懸濁液の酸性度を改変する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、ナノ粉体粒子の等電点より上にナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ナノ懸濁液が酸性溶液を含む場合、ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、塩基性溶液を提供するようにナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ナノ懸濁液は、ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程の前に約1.5と約6.5の間のpHを有する、請求項2〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ナノ懸濁液は、ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程の前に約2.4のpHを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、約9.0と約12.5の間にナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含する、請求項2〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、約11.5にナノ懸濁液のpHを増加させる工程を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ナノ懸濁液の酸性度を改変する工程は、ナノ懸濁液にアルカリを導入して、その酸性度を減少させる工程を包含する、請求項2〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
アルカリは、無水アルカリ物質を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
無水アルカリ物質は、無水アルカリ粉体を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
無水アルカリ物質は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
アルカリは、アルカリ溶液を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
アルカリ溶液は、アンモニウムヒドロキシド溶液を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
液体中のナノ粉体粒子の分散の制御は、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる前に液体中のナノ粉体粒子の分散を生じさせることを包含する、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
液体中にナノ粉体粒子の分散を生じさせることは、電子立体的分散を生じさせることを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
液体中にナノ粉体粒子の電子立体的分散を生じさせることは、ナノ懸濁液に界面活性剤を導入することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
界面活性剤は、陰イオン界面活性剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
界面活性剤は、ポリアクリル酸アンモニウムを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ナノ懸濁液の液体含有量の低減は、液体の一部が蒸発するようにナノ懸濁液を加熱する工程を包含する、請求項1〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
加熱工程は、約80℃までの温度にナノ懸濁液を加熱する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
加熱工程は、約45℃と約60℃の間の温度にナノ懸濁液を加熱する工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ナノ懸濁液は、液体の一部が蒸発するように加熱温度に維持される、請求項20〜22のいずかれ1つに記載の方法。
【請求項24】
ナノ懸濁液の液体含有量の低減は、ナノ懸濁液をろ過手段に通過させる工程を包含する、請求項1〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
液体中のナノ粉体粒子の分散の制御は、ナノ懸濁液の液体含有量を低減させる最中および/または後に、ナノ懸濁液を攪拌することを包含する、請求項1〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
ナノ懸濁液の攪拌は、ナノ懸濁液を振動させるように超音波にナノ懸濁液を付す工程を包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ナノ懸濁液は、所定の継続期間を有する離散間隔で超音波に付される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ナノ懸濁液の液体含有量が減少する時に離散間隔の所定の継続期間を増加させる工程を包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ナノ懸濁液の液体含有量が減少した時に離散間隔の間の継続期間を短縮して間隔の頻度を増加させる工程を包含する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
ナノ懸濁液の液体含有量が減少した時に超音波の振動周波数および/または出力を増加させる工程を包含する、請求項26〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
ナノ粉体粒子は、ジルコニアナノ粉体粒子を含む、請求項1〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
ナノ粉体粒子は、イットリア添加ジルコニアナノ粉体粒子を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
液体は、水ベースの液体である、請求項1〜32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
未濃縮ナノ懸濁液は、30重量%未満のナノ粉体粒子を含み、100s−1の剪断速度において0.1Pa・s未満の粘度を有する、請求項1〜33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
未濃縮懸濁液のナノ粉体粒子の重量百分率含有量と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含む濃縮ナノ懸濁液を提供し、該濃縮ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
約50重量%と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含む濃縮ナノ懸濁液を提供する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
100s−1の剪断速度において1Pa・s未満の粘度を有する濃縮ナノ懸濁液を提供する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
100s−1の剪断速度において約0.5Pa・sの粘度を有する濃縮ナノ懸濁液を提供する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
実質的に明細書に記載された、液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液を濃縮する方法。
【請求項40】
液体中に懸濁したナノ粉体粒子を含むナノ懸濁液であって、ナノ懸濁液は、請求項1〜39のいずれか1つに記載の方法を用いて濃縮されたナノ懸濁液。
【請求項41】
濃縮後に、ナノ懸濁液は、未濃縮懸濁液のナノ粉体粒子の重量百分率含有量と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含み、該ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有する、請求項1〜34のいずれか1つに従属する場合の請求項40に記載のナノ懸濁液。
【請求項42】
ナノ懸濁液は、約50重量%と約80重量%の間のナノ粉体粒子を含む、請求項41に記載のナノ懸濁液。
【請求項43】
ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において1Pa・s未満の粘度を有する、請求項41または42に記載のナノ懸濁液。
【請求項44】
ナノ懸濁液は、100s−1の剪断速度において約0.5Pa・sを有する、請求項43に記載のナノ懸濁液。
【請求項45】
ナノ粉体粒子は、100nm未満の平均径を有する、請求項40〜44のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項46】
ナノ粉体粒子は、約20nmの平均径を有する、請求項45に記載のナノ懸濁液。
【請求項47】
ナノ粉体粒子は、ジルコニアナノ粉体粒子を含む、請求項40〜46のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項48】
ナノ粉体粒子は、イットリア添加ジルコニアナノ粉体粒子を含む、請求項47に記載のナノ懸濁液。
【請求項49】
液体は、水をベースとする液体である、請求項40〜48のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項50】
約50重量%と約80重量%の間のナノ粉体粒子を液体中に懸濁して含むナノ懸濁液であって、100s−1の剪断速度において2Pa・s未満の粘度を有するナノ懸濁液。
【請求項51】
100s−1の剪断速度において1Pa・s未満の粘度を有する、請求項50に記載のナノ懸濁液。
【請求項52】
100s−1の剪断速度において約0.5Pa・sの粘度を有する、請求項51に記載のナノ懸濁液。
【請求項53】
約55重量%と約70重量%の間のナノ粉体粒子を含む、請求項50〜52のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項54】
ナノ粉体粒子は、100nm未満の平均径を有する、請求項50〜53のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項55】
ナノ粉体粒子は、約20nmの平均径を有する、請求項54に記載のナノ懸濁液。
【請求項56】
ナノ粉体粒子は、ジルコニアナノ粉体粒子を含む、請求項50〜55のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項57】
ナノ粉体粒子は、イットリア添加ジルコニアナノ粉体粒子を含む、請求項56に記載のナノ懸濁液。
【請求項58】
液体は、水をベースとする液体である、請求項50〜57のいずれか1つに記載のナノ懸濁液。
【請求項59】
実質的に明細書に記載されたナノ懸濁液。
【請求項60】
請求項1〜59のいずれかと同じ発明の範囲内またはそれに関連するか否かを問わず、明細書に記載された任意の新規な材料または新規な材料を含む組合せ。

【公表番号】特表2008−543553(P2008−543553A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517572(P2008−517572)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002081
【国際公開番号】WO2006/136780
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507418290)ラフバラ ユニヴァーシティ エンタープライズィズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】