説明

ナノ構造材料の大規模製造

【課題】カーボンナノチューブを含む大規模なナノ構造材料を製造するための方法を提供する。
【解決手段】堆積ステーションを介してカーボンナノチューブを少なくとも1つの基材に堆積させる工程を含むナノ構造材料製造方法が開示され、堆積する工程は、分子を液体または気体などの堆積流体から基材へと移送する工程を含む。キャリア流体を透過できる基材を使用し、差圧濾過によってキャリア流体が基材を通って流れられるようにすることにより、除去されるか、または最終構成材料の一部として作用することができる基材上に、ナノ構造材料を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本出願は、2005年9月1日出願の米国仮特許出願第60/712,847号に対する国内優先権を主張する。本出願は、2005年4月22日出願の米国特許出願第11/111,736号の部分継続でもあり、これは2004年3月8日出願の米国特許出願第10/794,056号の部分継続であり、2003年3月7日出願の米国仮特許出願第60/452,530号、2003年5月6日出願の米国仮特許出願第60/468,109号、および2003年9月3日出願の米国仮特許出願第60/499,375号に対する国内優先権を主張する。上記出願は全て、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
[002] 本発明は、カーボンナノチューブを含み、ガラス繊維などの他の構成材料を含むか、または含まない、ナノ構造材料を大量に製造する効率的な方法に関する。本開示は、特に、差圧濾過技術に基づいてナノ構造材料を製造する連続的、半連続的またはバッチ式方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[003] ウェブ、シートなどの大部分の2次元材料は、その材料特性に固有の短所を有する。金属およびプラスチックは長らくその広範囲の融通性のために好まれてきたが、多くの用途では、より高い重量対強度比(strength to weight ratio)、より高い伝導性、より大きい表面積、より高い維持可能性を有し、全体的な性能が向上した材料が必要とされる。宇宙探査およびエレクトロニクスのような限られたハイテク用途に新種の軽量で高強度の材料が使用されているが、弾道緩和用途(防弾チョッキなど)、ヒートシンク、流体濾過、流体分離、バッテリコンデンサおよび燃料電池の高効率電極、コンピュータシェル、車体、飛行機の翼、機械部品および多くの他の用途で、大量用途のためにますます重要になっている。
【0004】
[004] カーボンナノチューブを含む材料などのナノ構造材料は、1ピコグラム/cmから20g/cmまでの範囲などの広範囲の密度を有することができるので、材料を多種多様な用途に合わせて調整することができる。本明細書で説明するようなナノ構造材料から作成した物品の非制限的な例は、織物、シート、ワイヤ、構造的支持体または流体浄化用膜を含む。カーボンナノチューブに伴う電気的、機械的および熱特性によって、さらに、ナノ構造材料を、より高性能の機械的アクチュエータ、ヒートシンク、熱伝導体または電極に使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[005] 多くの用途でこのように改良された性能特性を有する材料が切実に必要とされているので、これらの材料を大量に生産する方法が必要とされる。したがって、本開示は、得られる製品を、電気または機械的使用法でフィルタ材から織物までの様々な用途に合わせたサイズにできるように、ナノ構造材料のカーボンナノチューブを大量に作成する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[006] 以下の開示は、マクロ規模の大量のナノ構造材料を製造する大規模生産方法に関する。以下で説明するように、この方法は、繊維、粒子などの他の構成材料を含むか、または含まない、カーボンナノチューブを含むキャリア流体の、差圧濾過に基づく、連続、半連続、またはバッチ式でもよいプロセスである。
【0007】
[007] 1つの実施形態では、本開示はカーボンナノチューブを含むナノ構造材料の製造方法に関する。この方法は、典型的には、混合物を形成するためにキャリア流体中にカーボンナノチューブを懸濁させる工程と、差圧濾過によって、キャリア流体を透過可能な基材を通って流れるように混合物を誘導する工程と、混合物からのカーボンナノチューブ(およびガラス繊維などの任意選択の構成材料)を基材上に堆積させる工程とを含む。大規模ナノ構造材料は、少なくとも1つの寸法が1cmより大きい材料である。
【0008】
[008] 本開示は、カーボンナノチューブを含むナノ構造材料を製造する連続的または半連続的方法にも関する。この実施形態では、カーボンナノチューブが混合物から移動基材上に堆積して、1メートルより大きい長さを有するナノ構造材料を形成する。この実施形態によって、少なくとも1つの寸法が1メートルより大きい、例えば、数百または数千メートルの長さ、および最大10,000メートルの材料など、非常に大きいナノ構造材料を形成することができる。
【0009】
[009] ナノ構造材料を製造するバッチ式方法も開示される。連続的または半連続的方法とは異なり、バッチ式方法は、混合物からのカーボンナノチューブを、キャリア流体を透過可能な静止基材上に堆積させる工程を含む。バッチ式方法は、通常、連続的または半連続的方法と同じ長さなどの同じサイズで形成された材料を形成することができないが、少なくとも1つの寸法が10cmより大きいようなマクロスケールのナノ構造材料を製造することはできる。
【0010】
[010] 本明細書で説明する方法は、流体を濾過するマクロスケールのナノ構造材料などの多種多様な新規の製品を作成するために使用することができる。この方法は、最終製品の一体部品になる基材上に、継ぎ目のないナノ構造材料を直接堆積させるために使用することができる。1つの実施形態では、この方法を使用して、マクロスケールのナノ構造材料を多孔性カーボンブロックなどのフィルタ材に堆積させることができる。
【0011】
[011] 上記主題以外に、本開示は以降で説明するようないくつかの他の例示的特徴を含む。上記説明および以下の説明は両方とも例示にすぎないことを理解されたい。
【0012】
[012] 添付の図面は本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
A.定義
[017] 本開示で使用する以下の用語またはフレーズは、以下で概略する意味を有する。
【0014】
[018] 「繊維」という用語またはその変形は、アスペクト比が高い材料と定義される。本開示で使用する繊維は、1つまたは多くの異なる組成で構成された材料を含むことができる。
【0015】
[019] 「ナノチューブ」という用語は、管状の形状の、一般に1〜60nmの範囲の平均直径、および0.1μmから250mmの範囲の平均長さを有する分子構造を指す。
【0016】
[020] 「カーボンナノチューブ」という用語またはその変形は、継ぎ目のない円筒管の壁を形成するよう閉じている六角形の格子(グラフェンシート)に配置された炭素原子で主に構成された管状形状の分子構造を指す。これらの管状シートは、単独で発生するか(単一壁)、多くの入れ子状の層(多重壁)として発生して、円筒構造を形成することができる。
【0017】
[021] 「不良カーボンナノチューブ」というフレーズは、管状構造の層の少なくとも1つで少なくとも1つの炭素環中に格子の歪みを含むナノチューブを指す。
【0018】
[022] 「格子の歪み」というフレーズは、管状シート構造を形成するカーボンナノチューブ原子の結晶格子のいかなる歪みも意味する。非制限的な例として、非弾性変形による原子の変位、または5または7員炭素環の存在、または化学的相互作用とその後の炭素原子結合のsp混成(hybridization)変化が挙げられる。このような不良または歪みは、カーボンナノチューブの自然な曲がりを招くことがある。
【0019】
[023] 「コート」、「コーティング」という用語、またはその任意の変形は、個々の粒子で形成された被覆層、材料の連続層、またはその両方を意味するものとする。すなわち、「コートされた」構成材料は、それを「コートされた」表面と考えられる連続被覆層を含むこともできるが、そうである必要はなく、表面の一部を覆う材料を含むだけでよい。
【0020】
[024] 「官能基」という用語は、特定の挙動を提供する任意の原子または化学物質の基と定義される。「官能化」という用語は、ナノチューブおよび/またはゼータ電位などのナノチューブの特性を変化させる追加的繊維の表面に官能基を付加することと定義される。
【0021】
[025] 「含浸」という用語は、ナノチューブの内側に他の原子またはクラスターが存在することと定義される。「充填カーボンナノチューブ」というフレーズは、「含浸カーボンナノチューブ」と同じ意味で使用される。
【0022】
[026] 「ドーピングした」という用語は、ナノチューブ結晶格子中に炭素以外の原子が挿入されるか、存在することと定義される。
【0023】
[027] 「帯電」という用語は、カーボンナノチューブまたは追加的繊維の表面中または表面上に、補償されていない電荷が存在することと定義される。
【0024】
[028] 「照射された」という用語は、ナノチューブ、繊維またはその両方に対して、ナノチューブ、繊維またはその両方の結晶格子に非弾性変化を引き起こすのに十分なエネルギーレベルを有するx線などの粒子または光子で衝撃を与えることと定義される。
【0025】
[029] 「融合した」、「融合」という用語、または「融合する」という言葉の任意の変形は、ナノチューブ、繊維またはこれらその組合せを、それらその間の1または複数の接触点で結合することと定義される。例えば、このような結合は、sp混成を含む炭素−炭素の化学結合、または炭素と他の原子の化学結合であってもよい。
【0026】
[030] 「連結する」、「連結した」という用語、または「連結」という言葉の任意の変形は、ナノチューブおよび/または他の繊維を、機械的、電気的または化学的力によって接続し、より大きい構造にすることと定義される。例えば、このような接続は、分離に抵抗する、大きくて絡み合った結び目状構造の生成によることができる。
【0027】
[031] 「織った」、「織物」という用語、または「織る」という言葉の任意の変形は。ナノチューブおよび/または他の繊維を織り合わせ、より大規模な材料にすることと定義される。
【0028】
[032] 「ナノ構造」および「ナノスケール」という用語は、少なくとも1つの寸法(dimension)が100nm以下である構成材料を有する構造または材料を指す。ナノ構造の定義は、Joel I. GerstenおよびFrederick W. SmithのThe Physics and Chemistry of Materials(Wiley publishers、p.382−383)で与えられており、この定義については参照により本明細書に組み込むものとする。
【0029】
[033] 「ナノ構造材料」という用語は、その構成要素が、少なくとも1つの、100ナノメートル以下の特徴的な長さスケールを有する配置を有する材料を指す。「特徴的な長さスケール」という用語は、構造内に生成された孔の特徴的直径、繊維間の間隙距離、またはその後に続く繊維交差部間の距離など(ただしこれらに限定されない)、配置内にあるパターンのサイズの大きさを指す。この測定は、材料中の長さスケールを特徴付ける多スケール情報を与える主要構成要素またはスペクトル分析などの応用数学の方法により実行してもよい。
【0030】
[034] 「ナノメッシュ」という用語は、以上で定義したナノ構造材料であって、さらに、多孔質であるものを指す。例えば、1つの実施形態では、ナノメッシュ材料は一般にフィルタ材として使用され、したがって多孔質であるか、浄化対象とされた流体に対して透過性でなければならない。
【0031】
[035] 「大きい」または「マクロ」という用語は、単独で、または「スケール(規模)」と組み合わせて、以上で定義したようなナノ構造材料を含み、少なくとも2つの寸法が1cmより大きくなるように、本明細書で説明する方法を使用して製造されている材料を指す。このようなマクロスケールのナノ構造材料の非制限的な例としては、1メートル平方のナノ構造材料のシートや少なくとも100メートルの長さまで連続的に製造されたナノ構造材料のロールが挙げられる。大規模またはマクロスケールとは、使用の仕方に応じて、10cmまたは100cm、さらには、例えば、バッチ式プロセスにより製造された材料で作成した材料のサイズを定義するために使用される場合など、1メートルより大きいことをも意味するものとする。連続的または半連続的方法の説明に使用する場合、大規模製造には、1メートルより長い長さ、例えば、1メートル〜1万メートルの長さなど、を有する材料の製造が含まれる。
【0032】
[036] 「連続的方法」とは、プロセス中にナノ構造材料の製造が終了するまで、堆積基材が連続的に移動する方法を指す。
【0033】
[037] 「半連続的方法」とは、製造プロセス中に堆積基材が段階的に移動する方法を指す。連続的プロセスとは異なり、半連続的方法では、基材は、例えば複数の層を堆積するなど特定のプロセスを実行可能にするために停止することができる。
【0034】
[038] 「バッチ式方法」とは、方法の間中堆積基材が静止している方法を指す。
【0035】
[039] 「マクロ材料」という用語は、以上で説明した長さを有する材料、例えば、上述した「大規模」または「マクロスケール」製造プロセスで作成した材料である。
【0036】
[040] 本明細書で使用する「選択的堆積基材」という用語は、キャリア流体に対してほぼ透過性であり、前記カーボンナノチューブ複合構成材料に対してはほぼ不透過性である基材を指す。例えば、水は通すがカーボンナノチューブ構成材料は通さない濾過材料は選択的堆積基材と考えられる。
【0037】
[041] 「活動材料」という用語は、物理的、化学的、生物化学的または触媒的な手段で、流体から汚染物質を除去するなど、特定の活動を担当する材料と定義される。逆に、「受動」材料は、フィルタ材として使用された場合に汚染物質の除去に寄与する化学的特性を示さないような不活性タイプの材料と定義される。
【0038】
[042] 「流体」という用語は、液体または気体を含むものとする。
【0039】
[043] 「装填キャリア流体」という用語は、少なくともカーボンナノチューブと、ガラス繊維などの本明細書で説明する任意の構成材料を含むキャリア流体を指す。
【0040】
[044] 「汚染物質」という用語は、流体中の、少なくとも1つの不要な、または望ましくない元素、分子または生物を意味する。
【0041】
[045] 「除去」という用語(またはその任意の変形)は、粒子サイズ排除、吸収、吸着、化学的または生物学的相互作用または反応というメカニズムのうち少なくとも1つを使用して汚染物質を破壊、変性、または分離することを意味する。
【0042】
[046] 「化学的または生物学的相互作用または反応」という用語は、汚染物質に危害を引き起こせないようにする、化学的または生物学的プロセスによる、汚染物質との相互作用を意味すると理解される。その例には、還元、酸化、化学的変性、微生物、生体分子への物理的損傷、摂取、および包装がある。
【0043】
[047] 「粒子サイズ」という用語は、数の分布によって、例えば、ある特定のサイズを有する粒子の数によって定義される。方法は通常、較正された光学顕微鏡などの顕微鏡技術、較正されたポリスチレンビーズ、較正された走査型プローブ顕微鏡、走査型電子顕微鏡、または光学近接場顕微鏡によって測定される。本明細書で説明するサイズの粒子を測定する方法は、Walter C. McCrone’sその他のThe Particle Atlas(An encyclopedia of techniques for small particle identification)Vol. I、Principles and Techniques第2版(Ann Arbor Science Pub.)で教示され、これは参照により本明細書に組み込むものとする。
【0044】
[048] 本明細書で使用する「から選ばれる」、「から選択される」という用語は、個々の構成要素または2つ(以上)の構成要素の組合せの選択を指す。例えば、ナノ構造材料は、含浸、官能化、ドーピング、装填、被覆、および不良カーボンナノチューブのうちのいずか1つだけであるカーボンナノチューブを含むことができるし、または、様々な処理がナノチューブに施された場合など、これらのタイプのナノチューブのいずれかまたは全部の混合物を含むことができる。
【0045】
B.ナノ構造材料の製造方法
[049] 差圧技術に基づいてキャリア流体からナノ構造材料を作成する方法が開示される。1つの実施形態では、この方法は、カーボンナノチューブおよび任意に他の構成材料をキャリア流体中に懸濁させる工程と、キャリア流体を透過可能な基材にカーボンナノチューブを堆積させる工程と、ナノ構造材料を形成するために、差圧濾過によってキャリア流体を基材に通して流れることを可能にする工程とを含む。本明細書で説明する方法は、少なくとも1つの寸法が1cmより大きい、または100cmよりも大きい材料などの、大きい、またはマクロサイズの材料を製造するために使用することができる。
【0046】
[050] 本方法はさらに、ナノ構造材料を基材から取り外す工程を含むことができる。この実施形態では、基材は単純な分離技術によって除去するか、基材を加熱、または化学的に溶解させることによって取り外すことができる。
【0047】
[051] あるいは、基材はナノチューブナノ構造材料が付着した状態で、最終製品の永久的部分として残る。
【0048】
[052] 本開示で使用できる基材は、繊維質または非繊維質材料で構成することができる。このような繊維質または非繊維質材料の非制限的な例としては、金属、ポリマー、セラミック、天然繊維およびその組合せが挙げられる。1つの実施形態では、このような材料は任意に、カーボンナノチューブが堆積する前に熱処理および/または圧力処理する。
【0049】
[053] 本明細書で説明するキャリア流体は、少なくとも1つの水性および非水性液、少なくとも1つの気体、またはその組合せを含むことができる。水性液を使用する場合、これは1から8.9の範囲のpHを有することができる。
【0050】
[054] 非水性溶剤は通常、有機および無機溶剤、またはその組合せから選択される。有機溶剤の非制限的な例としては、メタノール、イソプロパノール、エタノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、1,2−ジクロロベンゼン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0051】
[055] 1つの実施形態では、キャリア流体は、空気、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、ヘリウム、ネオン、またはこれらの任意の組合せで構成された気体などの気体である。
【0052】
[056] カーボンナノチューブに加えて、キャリア流体に含むことができる他の構成材料としては、金属、ポリマー、セラミック、天然材料、およびこれらの組合せで構成された繊維、クラスターおよび/または微粒子が挙げられる。このような任意の構成材料は通常、少なくとも1つの寸法が1nmから100nmの範囲である。
【0053】
[057] 1つの実施形態では、キャリア流体はさらに、ポリビニルアルコール、界面活性剤、緩衝剤、ポリ電解質(poly−electrolytes)、およびこれらの組合せなどの化学結合剤を含む。キャリア流体は、追加的にまたは代替的に、タンパク質、DNA、RNA、およびこれらの組合せから選択される生物材料を含むことができる。
【0054】
[058] キャリア流体に追加することができる他の構成材料は、アンチモン、アルミニウム、バリウム、硼素、臭素、カルシウム、炭素、セリウム、塩素、クロム、コバルト、銅、フッ素、ガリウム、ゲルマニウム、金、ハフニウム、水素、インジウム、ヨウ素、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、窒素、オスミウム、酸素、パラジウム、燐、プラチナ、レニウム、ロジウム、ルテニウム、スカンジウム、セレニウム、シリコン、銀、硫黄、タンタル、錫、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、ジルコニウム、またはこれらの組合せから選択される原子を含む分子である。
【0055】
[059] 本明細書で説明する他の構成材料は、堆積工程の前に事前に組み立てて、カーボンナノチューブ、他の構成材料、またはこれらの任意の組合せに堆積させることができる。
【0056】
[060] 1つの実施形態では、本明細書で開示された方法を使用して、少なくとも1つのナノ構造層、および、ナノ構造であってもそうでなくてもよい少なくとも1つの追加層を順番に堆積させることによって多層構造を形成することができる。
【0057】
[061] 本方法はさらに、堆積工程の前に、キャリア流体中のカーボンナノチューブを分散させるまたは分散を維持するために、音場を印加することを含むことができる。開示された方法に使用できる音場の非制限的な例は、10kHzから50kHzの範囲の周波数を有する音場である。
【0058】
[062] 高剪断流動場をキャリア流体に印加することによってキャリア流体中にカーボンナノチューブを分散および/または混合させることも可能である。他の構成材料が存在する場合、この同じプロセスを使用して、カーボンナノチューブをそれに分散および/または混合させることができる。
【0059】
[063] 上述した周波数範囲を有する音場と高剪断流動場との組合せを順次、または組み合わせて使用して、前記堆積の前にキャリア流体中のカーボンナノチューブの分散を達成または維持することも可能である。
【0060】
[064] 様々な実施形態では、本方法はさらに、少なくとも1つの堆積後処理プロセスでナノ構造材料を処理する工程を含む。このようなプロセスの非制限的な例は、(a)官能基を付加するか、または別の材料(高分子または金属など)でコーティングするか、あるいはその両方などの化学処理、(b)ナノ構造材料を赤外線放射、電子ビーム、イオンビーム、x線、光子から選択される少なくとも1つの放射に曝露するなどの照射、または(a)および(b)の任意の組合せを含む。
【0061】
[065] 本明細書で説明する堆積後官能化プロセスには、酸洗浄、界面活性剤処理、分子接合、ポリエチレン材料の堆積、コーティング、加熱、噴霧、化学または電解質浸漬、またはその組合せから選択される手順を含むことができる。
【0062】
[066] 本明細書で説明する方法は、さらに、特定の用途に応じて十分な形状およびサイズを形成するように、ナノ構造材料を仕上げる工程を含むことができる。例えば、ナノ構造材料の仕上げとしては、切断、積層、密封、圧縮、包装、またはその組合せから選択される少なくとも1つの方法が挙げられる。
【0063】
[067] 開示された方法は、ナノ構造材料を製造するために連続的に、または半連続的に使用することができる。例えば、カーボンナノチューブは、キャリア流体を介して、キャリア流体を透過可能な移動中の基材に堆積する。この実施形態によって、最大100メートル、さらには数千メートルもの長さを含む、例えば、少なくとも1つの寸法が1メートルより大きい材料などの、非常に大きいナノ構造材料を連続的に形成することができる。
【0064】
[068] ナノ構造材料を製造するバッチ式方法も開示されている。連続的または半連続的方法とは異なり、バッチ式方法は、カーボンナノチューブを、キャリア流体を透過可能な静止基材上に堆積する工程を含む。バッチ式方法では、通常、連続的または半連続的方法のように、材料を、同じサイズ(長さなど)で形成することはできないが、少なくとも1つの寸法が10cmより大きいなど、マクロスケールのナノ構造材料を製造することができる。
【0065】
[069] ナノ構造材料を製造するバッチ式プロセスは、基材とそれに堆積するナノ構造材料との間の継ぎ目のない構造から恩恵を受ける複雑な形状および/または製品を製造するのに特に有用である。1つの実施形態では、カーボンブロックなどの、底部にある基材がフィルタの一体部分を形成するフィルタ材を製造することができる。
【0066】
[070] 1つの実施形態では、キャリア流体は、カーボンナノチューブとガラス繊維の組合せを含む。ガラス繊維は、金属−酸素化合物でコーティングしないことも、コーティングすることもでき、これは、金属水酸化物M(OH)、オキシ水酸化物M(OH)、酸化物M、オキシ塩、水酸塩、オキシ水酸塩M(OH)から選択される化合物などである。
【0067】
[071] 非制限的な実施形態では、Mはマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つのカチオンである。
【0068】
[072] また、Aは水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸化物、硫化物、窒化物、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、炭酸塩、燐酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、硼素、またはその組合せから選択される少なくとも1つのアニオンである。
【0069】
[073] カーボンナノチューブと金属酸素化合物でコーティングしたガラス繊維との組合せは、汚染した流体の洗浄に使用すると、格別に優れた浄化特性を提供することが発見された。したがって、フィルタ材としての最終製品の使用に関して、本明細書で説明する1つの実施形態では、活動構成要素として働くカーボンナノチューブとは異なり、ガラス繊維などの大きなスケールの繊維の主な役割は、活動構成材料の支持体として働くことである。繊維は、サイズ排除の原理を通して流体から微粒子を除去することができるが、通常は汚染された流体の濾過に使用されるナノ構造材料の受動的な非反応性要素である。
【0070】
[074] 本明細書で開示した方法を、以下で広義に説明する添付の図面によってさらに例示することができる。
【0071】
[075] 図1および図2に示すように、本明細書で説明する方法は、改造した製紙タイプのプロセスを使用してナノ構造材料を製造する連続的または半連続的方法を含むことができる。特定の実施形態では、方法は以下の工程を含む。
(1)所望の化学的、電気化学的および物理的特性を与えて、ナノ構造材料の分散および/または自己集合を補助するために、官能化など、カーボンナノチューブを化学的に処理する工程。このようなプロセスによれば、カーボンナノチューブの形態など、望ましい堆積後の特徴を付加することもできる。
(2)カーボンナノチューブ構成材料、および必要に応じて他の構成材料の懸濁物を形成するために、超音波および/または機械的混合および/または適切な高剪断流体場を使用して、追加の支持繊維を含むか、または含まないナノチューブを分散させる工程。この懸濁液を、「装填キャリア流体」という。
(3)装填キャリア流体が選択的堆積基材と接触する堆積ヘッドボックスに、装填キャリア流体を導入する工程。
(4)差圧駆動式プロセスを使用して、ほぼ安定した連結、モノリシック構造を取得するのに十分な量で、添加キャリア流体から選択的堆積基材にナノチューブおよび/または他の構成材料を堆積させる工程。
(5)任意に、選択的堆積基材からモノリシック構造を剥離させる工程。
(6)強固な半連続的ナノ構造材料を製造するために、加圧、加熱および/または差圧濾過によりナノ材料を乾燥する工程。
(7)任意に、多層ナノ材料を製造するために、材料の片側または両側にエアロゾル結合剤を噴霧し、および/または他のナノ材料または他のフィルム層と結合することにより、ナノ構造材料を後処理する工程。
【0072】
[076] このようなプロセスは、一連のバッチ式プロセスとして、または、基材のロール材料を交換するために中断される半連続的作業として設計することができる。
【0073】
[077] あるいは、図1に示すように、本発明の1つの実施形態では、カーボンナノチューブのナノ構造材料を製造する連続的方法が開示される。このプロセスでは、堆積基材は、ナノ構造材料の一部にはならない周期的ベルトである。例えば、この方法は、オープンリール式システム、または長網抄紙機または傾斜ワイヤフォーマ(図4)製造システムを含むことができる。
【0074】
[078] このようなシステムでは、堆積基材の機械的完全性(integrity)は、システムを作動する圧力差を支持するのに十分で、さらにシステムを通って移動するために基材に加えられる張力に耐えられなければならない。
【0075】
[079] 図1は、装填キャリア流体(例えば、カーボンナノチューブおよび本明細書で説明する任意の構成材料を含むキャリア流体)が水平に移動する基材に堆積する1つの実施形態を示す。基材は多孔質であるか、キャリア流体のみを透過できるが、キャリア流体中の構成材料は透過できず、したがってカーボンナノチューブおよび任意の材料を基材の表面に堆積することができる。1つの実施形態では、真空を低圧側に、例えば、堆積が生じない側に印加して、堆積を補助することができる。真空を使用する場合は、キャリア流体を収集し、任意に再循環する収集機構を使用することが可能である。
【0076】
[080] 図1は、堆積ヘッドボックスユニットを1つしか図示していないが、このような連続的システムは、特に順次堆積した多層構造を形成することが望ましい場合、複数の堆積ヘッドボックスユニットを組み込むことができることが認識される。
【0077】
[081] 図1は、製紙プロセスに類似しているが、図1に示す連続的プロセスを使用して、数メートルから数百、さらには数千メートルの範囲の長さの開示されたナノ構造材料を製造することが可能である。システムはオープンリール式プロセスであるので、仕上げた製品は、巻き取りリールで容易に収集することができ、ここで、コーティング、サイジング、打ち抜きなどのさらなる処理のために移送することができる。あるいは、材料が巻き取りリールに収集される前に、このような後処理工程を含むことが可能である。
【0078】
[082] 別の実施形態では、図1で説明したシステムは、バッチ式プロセスに適応させることができる。例えば、オープンリール式システム上で移動する基材を使用するのではなく、静止した水平基材を使用することが可能であり、これは、堆積の後に取り除いて、別の堆積用の基材と交換することができる。連続的プロセスのように、この方法を使用して、複数の層を基材に順番に堆積させ、多層カーボンナノチューブのナノ構造材料を形成することができる。
【0079】
[083] 図2に示すように、本発明の別の実施形態では、回転フォーマシステムに基づいてカーボンナノチューブのナノ構造材料を使用する、連続的な製造方法が開示される。このようなシステムでは、堆積基材の機械的完全性は、システムを作動する圧力差を支持するのに十分で、さらにシステムを通って移動するために基材に加えられる張力に耐えられなければならない。
【0080】
[084] 図2は、ナノ構造層を順次堆積させる2つの堆積ユニットを図示しているが、特に、順次堆積した複数の層を有する材料を形成することが望ましい場合は、これより多くの堆積ユニットを使用できることが認識される。
【0081】
[085] また、図1および図2に例示したシステムに、堆積後サブシステムを使用できることを認識されたい。このような堆積後サブシステムの非制限的な例としては、例えば、ナノ構造材料を乾燥させるための加熱ローラ、または堆積システムとリールアップの間のコーティングシステムが挙げられる。また、静止真空ボックスから排液またはキャリア流体回復サブシステムまでのフィードスルー機構も使用することができる。
【0082】
[086] ナノ構造材料を剛性基材に直接堆積させ、継ぎ目のない製品を形成することも可能である。上述した連続的方法のように、この方法も差圧機構で働き、したがって堆積基材が圧力差を支持しなければならない。
【0083】
[087] この実施形態では、堆積基材の形状は、キャリア流体を除去するために内部容積が利用できる限り任意であってもよい。例えば、図3に示すように、1つまたは複数の基材を最初に、カーボンナノチューブ、および本明細書で説明した他の任意の構成材料を装填したキャリア流体を収容するのに十分な容器内に入れる。
【0084】
[088] キャリア流体が、必要に応じて圧力下で、多孔質または透過性基材を覆い、それらを通って流れるのに十分な量で、容器に導入される。基材は多孔質であるか、キャリア流体のみを透過できるがキャリア流体中の構成材料は透過できず、したがってカーボンナノチューブおよび任意の材料を基材の表面に堆積させることができる。別の実施形態では、真空を低圧側に、例えば、堆積が生じない側に印加することができる。真空を使用することは、大気圧下で堆積が起こる場合に、特に望ましい。
【0085】
[089] この方法は、通常、その上にカーボンナノチューブのナノ構造層を有する1つまたは複数の基材を処理するバッチ処理において使用される。
【0086】
[090] 図4で説明したシステムは、図1で説明したものと同様であるが、製造されるナノ構造材料の所望の特徴に応じて、傾斜角度を変更できることを示す。
【0087】
[091] 本明細書で説明する方法のいずれでも、連続堆積を行うことができ、各堆積では異なる組成のナノチューブおよび/または繊維懸濁物を使用することができ、したがって得られるナノ材料は組成の勾配を有する。
【0088】
[092] フィルタ材に関連する実施形態では、本方法は、織物、不織布、スパンボンド、孔の開いた、焼結または他の熱処理材料(例えば、炭素質の多孔質基材を形成する環境で加熱された木材)、またはこれらの組合せで構成された濾過基材を使用することができる。これらの材料は、自己集合を補助し、および/または得られるナノ材料に特定の機械的または物理的特性を提供するように選択される。この基材は、犠牲的であってもよいし、最終的な材料の一部になってよい。
【0089】
[093] カーボンナノチューブおよび/または繊維の分散は、通常、超音波および/または機械的混合および分散を含む。これらの混合および/または分散技術は通常、集塊を破壊し、および/またはキャリア流体中に構成材料を分散する働きをする高剪断流動場を生成するために使用される。ナノチューブを分散させるために適切な流体は、水、有機溶媒、酸、または塩基を含んでいてもよい。適切な有機溶剤の非制限的な例としては、エタノール、イソプロパノール、メタノールおよびキシレンが挙げられる。
【0090】
[094] 計算によれば、1つの実施形態では、ナノ構造材料が、1平方センチメートルの材料当たり約3×10cmのカーボンナノチューブを含み、これは100平方ミクロンの材料当たり約3×10ミクロンのカーボンナノチューブである。キャリア液体中のカーボンナノチューブの分散は、仕上げたナノ構造材料が、100平方ミクロンの材料当たり約1×1010ミクロンのカーボンナノチューブを有するように処方できることが可能である。
【0091】
[095] 別の実施形態では、ナノチューブ懸濁液は、本明細書で説明するポリマー、セラミックおよび金属から選択され、その形態が繊維、ビーズ、粒子、ワイヤ、シート、箔およびこれらの任意の組合せから選択され得る、カーボンナノチューブと共に分散している支持材料をさらに含む。
【0092】
[096] これらの支持材料は、3次元構造物の製造中に支持を提供するのみに使用され、および/またはナノ構造材料の一体部分になることができる。あるいは、これらの材料には、犠牲的なものもある。すなわち、最終構造からなくなるように、その後の熱または化学プロセスなどの処理によって除去され、完全にカーボンナノチューブ構成材料で構成された安定した構造を残す。犠牲支持材料は、製造中にナノ材料の剥離を補助するために使用されるか、特定の高強度または防護服/弾道用途など、最終製品では支持材料の特性を必要としないが、製造中には必要とされる用途で使用することができる。
【0093】
[097] 代替実施形態では、上述した支持材料が活動材料になる。例えば、カーボンナノチューブを使用する場合、上述したガラス繊維などの繊維が支持材料になる。この代替実施形態では、上述した金属−酸素構成材料でコーティングした場合、繊維は、流体から汚染物質を除去する活動材料になる。ここで説明する方法は、融通性および適応性のを有するので、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、またはカーボンナノチューブとガラス繊維の組合せに基づくシステムにおいて、ナノ構造材料の大規模製造が可能になる。上述のとおり、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、特に金属−酸素構成材料でコーティングされた場合、またはその両方は、活動材料であってもよい。
【0094】
[098] 本明細書で説明するナノ構造材料の製造に使用される方法の非制限的な例としては、差圧濾過プロセスまたはナノ構造重合プロセスが挙げられる。以下でさらに詳細に説明するプロセスを含め、これらのプロセスはそれぞれ、ナノ材料が埋め込まれた、またはナノ材料で構成されたナノ構造物を製造することができる。
【0095】
[099] 1つの非制限的な実施形態では、本方法は、上述したセラミック、金属およびポリマーから選択される少なくとも1つの材料の化学または物理蒸着を含むことができる。この方法において、蒸着には、上述したポリマー、セラミックおよび金属のうち少なくとも1つを、交点の付近、またはナノ構造材料内のカーボンナノチューブの外面のどこかに堆積させることが含まれる。
【0096】
[0100] 構造的支持および他の構成要素との結合を強化するために、ナノ構造材料全体を上述した金属、プラスチックまたはセラミックでコーティングすることができる。また、ナノ構造材料の構造的完全性は、化学、電気、電磁気、熱、または機械的処理またはこれらの任意の組合せによって強化することができる。非制限的な実施形態では、機械的処理は、加圧して材料を圧延する工程を含むことができ、電気処理は、電気移動を実行するのに十分な時間実行することができる。
【0097】
[0101] また、ナノ材料内での材料の融合は、照射、電気、化学、生物化学、熱、または機械的処理によって、別個に、または相互に組み合わせて実行することができる。例えば、照射処理は、電子ビーム照射、UVおよびIR放射、X線、および電離放射を含むことができる。化学処理は、カーボンナノチューブを、酸、塩基、カルボキシル、過酸化物、およびアミンから選択される少なくとも1つの化学物質で、カーボンナノチューブの相互の融合を促進するのに十分な時間、処理することを含むことができる。同様に、化学処理は、化学架橋を取得するのに十分な時間、光化学結合することを含むことができる。
【0098】
[0102] 1つの実施形態では、融合は、支持材料および/または結合剤として作用する他の構成材料の融点より低い温度で、炉内でナノ構造物を加熱することを含む。例えば、ポリマー二成分繊維は、繊維の外層のみが軟化し、他の二成分繊維、カーボンナノチューブの構成材料および/または材料内の他の構成材料と結合するように製造される。このプロセスは、真空内で、または不活性ガスまたは空気から選択される雰囲気中で実行することができる。
【0099】
[0103] 上述した方法のいずれかまたは全部は、多層ナノメッシュ材料を構築するようにさらに一般化することができ、各層は層状材料内の他の層と同じ、または異なる組成であってもよい。さらに各層は、得られる多層材料に何らかの所望の挙動を与えるように特に設計することができる。また、これらの層には、ナノ材料で構成されず、その存在が機械的、電気的および/または熱特性を与えるか、ナノメッシュ層に膜間の間隔を設定する作用をする層を含むものもある。
【0100】
C.開示された方法により作成した物品
[0104] したがって、本開示の1つの態様では、液体と気体との両方を含む流体から汚染物質を除去するために、開示された方法によって製造された物品も提供される。
【0101】
[0105] 本明細書で説明する物品を使用して洗浄できる液体の非制限的な例としては、水、食料品、生物学的流体、石油およびその副産物、非石油燃料、薬品、有機および無機溶剤、および水素、酸素、窒素および二酸化炭素の液体形態が挙げられ、ロケットの推進剤または産業用途に使用することができる。
【0102】
[0106] この物品で処理できる食料品の非制限的な例としては、料理または食品産業で使用される動物の副産物(卵および乳など)、フルーツジュース、アルコールおよび非アルコール飲料、天然および人工シロップ、および天然および合成油[オリーブ油、ピーナツ油、花精油(ヒマワリ、紅花)、植物油、または動物性油(すなわち、バター、ラード)]、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一例として、変色を防止し、保存を助けるために、ワインには往々にして亜硫酸塩が添加される。しかし、亜硫酸は健康上の懸念を引き起こし、回避しなければならない。本発明の1つの態様は、分注時の亜硫酸塩の除去を含むことができ、ワイン産業は本明細書で説明する浄化プロセスの恩恵を受ける。
【0103】
[0107] 本明細書で説明した物品で汚染を除去できる生物学的流体は、通常、動物、人間、植物から誘導するか、バイオテクノロジーまたは製薬製品の処理に使用される培養液を含むことができる。1つの実施形態では、洗浄できる生物学的流体は、血液(または血液成分)、血清、および乳を含む。製薬製品に使用される生物学的試薬は、往々にして非常に不安定であり、従来の技術で殺菌することは困難である。小さい微生物(マイクロプラズマおよびウィルスなど)の除去は、従来の濾過では達成することができない。本発明のカーボンナノメッシュ物品は、生物学的試薬内に往々にして存在し、必要とされる血清タンパク質に損傷を引き起こすことなく、ウィルス除去に使用することができる。1つの実施形態では、ナノメッシュの物理的および化学的特性を制御して、薬品の製造中に生成される汚染物質を除去可能にすることができる。
【0104】
[0108] 別の実施形態では、石油製品の殺菌に本発明の物品を使用することができる。重大な汚染問題は、保存中に石油またはその誘導体中で細菌が潜在的に成長することであり、これは特に航空燃料で問題になっている。このような細菌が存在すると、燃料を非常に汚して、最終的には台無しにすることがある。したがって、液体浄化の分野で重大な懸念分野は、天然および/または合成石油製品の細菌を洗浄することである。天然および/または合成石油およびその副産物としては、航空機、自動車、船舶、機関車およびロケット燃料、産業および機械用油および潤滑剤、および加熱用油およびガスが挙げられる。
【0105】
[0109] 石油製品の別の重大な汚染問題は、硫黄分が高く、特定の金属のレベルが過剰なことであり、顕著な例は鉛である。政府の規則は、(内燃機関に使用される)炭化水素燃料中で特定量を超える硫黄および鉛の濃度(MCL−最高汚染レベル)を禁止している。したがって、他の不要な成分を加えずに、石油から特定の化学汚染物質を除去する物品が必要とされている。1つの実施形態では、本明細書で説明する物品を使用して、炭化水素や燃料電池で使用されるガスなどの他のタイプの燃料から硫黄および/または特定の金属を除去することができる。
【0106】
[0110] 上記汚染物質の多くが空気中に分散するので、開示されたプロセスで作成した材料を使用した、気体を洗浄するための物品の需要がある。したがって、本発明の別の態様は、空気を洗浄して、上述した汚染物質を全て除去する方法を含む。本明細書で説明する物品を使用して洗浄できる気体の非制限的な例は、空気または車両、排気筒、煙突、またはタバコからの排気から選択される1つまたは複数の気体を含む。空気の洗浄に使用する場合、物品は、空気流に対する表面積を大きくするために、平坦な形態をとってよい。このような平坦な形状は、ガスマスクやHVACシステムに使用されるフィルタのように、様々なフィルタ設計に合わせて簡単に適切な形状に切断できるという追加の利点を提供する。気体を洗浄するか、排気からそれを除去するなど、本開示に従って処理できる気体としては、アルゴン、アセチレン、窒素、亜酸化窒素、ヘリウム、水素、酸素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、プロパン、ブタン、天然ガス、エチレン、塩素、または上記いずれかの混合物、例えば、空気、窒素酸化物、およびヘリウム/酸素混合気などのダイビング用途に使用される気体が挙げられる。
【0107】
[0111] さらに、1つの流体用途で汚染物質とされるようなものが、別の用途では実際に所望の生成物であり得ることに留意されたい。例えば、汚染物質は貴金属または有益な薬剤生成物を含むことがある。したがって、1つの実施形態では、ただ除去し、破壊するのではなく、汚染物質を分離し、保持して収集することが有益なことがある。有用な汚染物質または特定の反応副産物を分離できるようにする、所望の汚染物質を「キャッチ・アンド・リリース」する能力は、以下でさらに詳細に説明するように、ナノメッシュ物品のゼータ電位の調整、および/またはナノ電子制御の利用によって達成することができる。
【0108】
[0112] 本明細書で説明する物品の用途は、家庭(例えば、家庭での水および空気の濾過)、レクリエーション(環境の濾過)、産業(例えば、溶剤の再利用、試薬の精製)、政府(例えば、免疫ビルプロジェクト、軍用、廃棄物の修復)、および医療(例えば、手術室、清浄な空気およびマスク)の場所を含む。
【0109】
[0113] 必須ではないが、本明細書で説明したナノメッシュは、相互に、または別の材料に付着したカーボンナノチューブを含むことができる。ナノメッシュ内の付着および/または接続は、ナノスケールで作用する力の結果であり、その非制限的な例にはファンデルワールス力、共有結合、イオン結合、幾何拘束、静電気、磁気、電磁気、またはカシミール力またはその組合せがある。
【0110】
[0114] 本開示は、汚染した流体を本明細書で説明した物品内でナノメッシュと接触させることによる、流体の浄化方法にも関する。1つの実施形態では、流体を浄化する方法は、流体をナノメッシュに接触させる工程を含み、ナノメッシュ、またはナノメッシュによって生成された相互作用域に接触する流体中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を低下させるのに十分な量だけ、ナノメッシュ中にカーボンナノチューブが存在する。本明細書で使用する「少なくとも1つの汚染物質の濃度を低下させる」とは、少なくとも1つの汚染物質を、適切な規制当局によって、または本発明の物品で処理された後の特定の流体の品質基準を支配する産業要件によって規定されるような最高汚染レベル(MCL)より下など、未処理の流体のレベルより低いレベルまで低下させる、という意味である。
【0111】
[0115] カーボンナノチューブは通常、2つの形態を有する。すなわち、単一壁および多重壁である。単一壁カーボンナノチューブは、これらの管状構造の1つを含み、相互接続した六角形が相互に整列している。多重壁カーボンナノチューブは、これらの管状構造の多くの同心シェルを含む。これは数十ナノメートルの直径を有することができ、理論上は最大数百メートルの長さを有することができる。
【0112】
[0116] 本開示の1つの態様は、カーボンリングの渦巻き状の管状または非管状構造を有するカーボンナノチューブを使用することに関する。これらのカーボンナノチューブは通常、単一壁、多重壁またはこれらの組合せであり、様々な形態をとることができる。例えば、本開示に使用されるカーボンナノチューブは、渦巻型ホーン、渦巻、多糸螺旋、ばね形、樹枝、樹状、スパイダナノチューブ構造、ナノチューブのY接合部、および竹の形態から選択される形態を有することができる。上述した形状のいくつかは、M.S. Dresselhaus、G. Dresselhaus、およびP. Avouris編集のCarbon Nanotubes: Synthesis, Structure, Properties, and Applications(Topics in Applied Physics. 80. 2000, Springer−Verlag)、およびLisa M. Viculis、Julia J. MackおよびRichard B. KanerのA Chemical Route to Carbon Nanoscrolls(Science、2003年2月28日;299)で特に規定され、これは両方とも参照により本明細書に組み込むものとする。
【0113】
[0117] 1つの態様では、炭素二量体で単独、またはパターン状に修飾されている形態を有するカーボンナノチューブを使用することができる。例えば、2つの六角形の結合の間に挿入され、網目中に2つの隣接する五角形および七角形を形成している炭素二量体を使用することができる。
【0114】
[0118] 炭素二量体のパターンを含むカーボンナノチューブも使用することができる。このようなカーボンナノチューブの非制限的な例としては、安定した膨らみを生成するために管の周囲に対称に追加された炭素二量体を有する「凸凹の」管、1つおきの六角形に軸方向に沿って水平に追加され、交互の単体の八角形と対になった五角形を生成する二量体を有する「ジッパ」管、および管の周囲の六角形の列によって隔置された6つの軸方向の(上述した)「ジッパ」を有する「複数ジッパ」管が挙げられる。
【0115】
[0119] 開示された物品の1つの態様では、カーボンナノチューブの大部分が結晶欠陥によって歪み、したがって歪んでいないカーボンナノチューブよりも向上した浄化性能を呈する。「結晶欠陥」とは、少なくとも1つの炭素環に格子の歪みがある、カーボンナノチューブの管壁にある部位を指す。
【0116】
[0120] 「向上した浄化性能を呈する」というフレーズは、ナノメッシュが、汚染物質除去の強化につながる、得られる材料の構造的完全性、多孔度、多孔性の分布、導電性、流体の流れに対する抵抗、幾何拘束、またはこれらの任意の組合せにおいて、改良されていることを意味する。例えば、浄化性能の向上は、個々のカーボンナノチューブの吸着または吸収特性の改良および効率化によるものである。さらに、カーボンナノチューブ中の欠陥が多いほど、化学官能基を付着する部位が多く存在することになる。1つの実施形態では、ナノメッシュに存在する官能基の数が増加すると、得られる物品の性能が改良される。
【0117】
D.カーボンナノチューブの処理
[0121] キャリア流体に追加できる任意の構成材料に関する上記説明とは異なり、以下の説明は、カーボンナノチューブの直接的な処理に関し、これは、キャリア流体中にカーボンナノチューブを分散させる前に実行することができる。しかし、開示された方法によって、キャリア流体およびカーボンナノチューブの処理は、所望の結果に応じて個別に、または組み合わせて実行できることに留意されたい。例えば、カーボンナノチューブは、以下で説明するように官能化して、キャリア流体中での分散を補助することができ、キャリア流体が、さらに、最終製品の完全性を改良する構成材料を含むことができることを理解されたい。
【0118】
[0122] したがって、カーボンナノチューブはキャリア流体に添加する前に、化学的および/または物理的に処理して、その化学的および/または物理的挙動を変更してもよい。これらの処理は通常、得られる物品が、類まれな浄化性能など、以上で規定した点で所望の特性を呈することができるように実行される。いくつかの類まれな浄化特性の非制限的な例が、本開示の実施例で与えられている。
【0119】
[0123] 1つの実施形態では、カーボンナノチューブは化学的または物理的に処理して、以下の効果のうち少なくとも1つを達成することができる。すなわち、汚染物質の除去、欠陥の追加、または欠陥部位および/またはナノチューブ表面への官能基の付加である。
【0120】
[0124] 本明細書では、「化学的または物理的な処理」とは、非晶質炭素、酸化物、またはカーボンナノチューブ製造プロセスの結果生じる微量の副産物など、不要な成分を除去するのに十分な時間、酸、溶媒または酸化剤で処理することを意味する。
【0121】
[0125] 第2タイプの化学的処理の例は、カーボンナノチューブの表面に所望の欠陥密度を生成するのに十分な時間、カーボンナノチューブを酸化剤に曝露することである。
【0122】
[0126] 第3タイプの化学的処理の例は、所望のゼータ電位を有する特定の官能基を付加することである(Johnson, P.R.、Fundamentals of Fluid Filtration第2版(1998年、Tall Oaks Publishing Inc.)で定義。この定義は参照により本明細書に組み込むものとする)。これは、特定のセットの所望の汚染物質を特定の流体から除去するために、カーボンナノチューブのゼータ電位または等電点(ゼータ電位がゼロであるpH)を十分に調整するように作用する。
【0123】
[0127] 別の実施形態では、カーボンナノチューブは、流体からの汚染物質の除去および/または変性を補助するのに効果的な量だけ、自身に付加されたか、または自身内に配置された原子、イオン、分子または集団を含む。
【0124】
[0128] 本明細書で説明するカーボンナノチューブは、その特性や、流体から除去され、および/または、流体内で変性される汚染物質を変化させるために処理することもできる。例えば、1つの実施形態では、カーボンナノチューブは、酸素を含む気体、硝酸、硫酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、およびその組合せから選択されるが、それに限定されない酸化剤で化学的に処理される。酸化剤で処理されたナノチューブは、流体の流れ、堆積流体中のナノチューブの分散、または官能化の観点(例えば、特に官能化される能力を有する)に関して、類まれな特性を提供することができる。
【0125】
[0129] 官能化は、一般に、湿式化学や、蒸気、気体またはプラズマ化学などの化学技術、およびマイクロ波補助の化学技術を使用し、材料がカーボンナノチューブの表面に結合する表面化学を利用して、カーボンナノチューブの表面を変性させることによって実行される。これらの方法は、カーボンナノチューブを「活性化する」ために使用され、これは少なくとも1つのC−CまたはC−ヘテロ原子結合を破壊し、それによって分子またはクラスターを自身に堆積させるための表面を提供することと定義される。1つの実施形態では、官能化したカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの外部側壁などの表面に付加したカルボキシル基などの化学基を含む。さらに、ナノチューブの官能化は、官能基をナノチューブに順次追加して、特定の所望の官能化ナノチューブに到達する多段手順を通して実行することができる。
【0126】
[0130] 官能化されたカーボンナノチューブは、その表面全体に亘って、官能基のタイプや種など、官能基の不均一な組成および/または密度を有することができる。同様に、官能化されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの表面全体でほぼ均一な勾配の官能基を有することができる。例えば、1つのナノチューブの長さの中に、またはナノチューブの集まりの中に、多くの異なる官能基タイプ(すなわち、ヒドロキシル、カルボキシル、アミド、アミン、ポリアミンおよび/または他の化学官能基)および/または官能化密度が存在することがある。
【0127】
[0131] さらに、繊維および/またはナノ粒子などのナノメッシュの他の構成材料も、化学基、加飾またはコーティングまたはこれらの組合せにより官能化して、そのゼータ電位および/または架橋能力を変化させ、ナノメッシュの濾過性能を改良することもできる。
【0128】
[0132] 多段官能化を実行することの非制限的例としては、カーボンナノチューブのゼータ電位の制御を可能にし、そのウィルス除去能力を改良することである。カーボンナノチューブは酸の混合物の中で還流する。いかなる理論にも拘束されないが、このようなプロセスは、ナノチューブの表面にある欠陥の数を増加させ、欠陥位置に付加するカルボキシル官能基を増加させ、および/または水中のカルボキシル官能基のマイナス電荷によりナノチューブのゼータ電位を変化させると考えられる。
【0129】
[0133] カルボキシルで官能化したナノチューブを、次に窒素雰囲気中で塩化チオニルの溶液の中で還流することができる。いかなる理論にも拘束されないが、これは、以前に付加したカルボキシル官能基を塩化アシル官能基に変換する働きをすると考えられる。その後、これらの塩化アシルで官能化したナノチューブを、窒素雰囲気中でエチレンジアミンの溶液中で再び還流する。これがジアミンの端のアミン基および塩化アシル官能基と反応し、塩素原子をジアミンの1つのアミン基と交換することによって、塩素アシル官能基を2−アミノエチルアミド官能基に変換すると考えられる。アミン基でのナノチューブ官能化の終了は、水中のナノチューブにプラス電荷を与え、プラスまたはそれほどマイナスではないゼータ電位を与える。以上によって、このタイプのナノチューブで構築されたナノメッシュ装置は、ファンデルワールス力および/または静電力により捕捉するために、マイナス電荷の汚染物質(アニオン、特定の分子、およびウィルス粒子など)を特に標的にし、それを汚染物質の流れから除去することができる。
【0130】
[0134] 別の実施形態では、カーボンナノチューブは、有機および/または無機受容体で構成された官能基の高表面積分子の足場として、または天然または人工細胞[細菌、ナノ細菌およびextremophilic細菌を含む]の構造および支持体を提供するために使用することもできる。炭酸塩堆積物および岩石中のナノ細菌の像を含むナノ細菌の例は、参照により本明細書に組み込むものとする以下の参考文献で見ることができる。すなわち、R.L.Folkの「J.Sediment.Petrol」(63:990−999(1993年))、R.H.Sillitoe、R.L.FolkおよびN.Saricの「Science」(272:1153−1155(1996年))である。有機および/または無機受容体は、流体の流れから選択的に特定の汚染物質を除去の標的にする。ナノチューブによって支持される天然または人工の細胞は、特定の生物学的に活性な汚染物質を消費、代謝、中和および/または生体内無機質化する。例えば、ナノチューブに堆積し、石油流出物の毒性を減少させることができる特定の微生物がある。
【0131】
[0135] 本発明の別の態様では、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ材料、またはその任意のサブアセンブリは、放射で処理することができる。放射は、電磁放射からの露光および/または電子、放射性核種、イオン、粒子、集団、分子またはこれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つの粒子から選択することができるが、それに限定されない。上述したように、放射は、1)少なくとも1つの炭素と炭素の結合または炭素とヘテロ原子の結合を破壊する、2)ナノチューブとナノチューブ、ナノチューブと他のナノメッシュ成分、またはナノチューブと基材の間の架橋を実行する、3)粒子注入を実行する、4)カーボンナノチューブの化学処理を改良する、またはこれらの任意の組合せを実行するのに十分な量で、カーボンナノチューブに衝突しなければならない。照射は、(例えば、放射の透過性の違いのために)ナノチューブの線量に差を生じることがあり、これはナノメッシュ構造内に不均一な欠陥構造を引き起こす。これは、カーボンナノチューブに付加した様々な官能基により、様々な特性を提供するために使用することができる。
【0132】
[0136] 本明細書で説明するカーボンナノチューブは、特定の有益な特性を取得するために、所望の材料で充填または含浸することもできる。「充填」または「含浸」という用語は区別無く使用することができ、対象となる物質で少なくとも部分的に充填したカーボンナノチューブを指す。カーボンナノチューブに充填または含浸される物質は通常、ナノメッシュの濾過性能を改善し、および/またはその用途を特定の新しい標的に向けることができる。非制限的な例は、特定の汚染物質に対するナノチューブの親和性の向上によって濾過を改良することである。例えば、ある物品を、水中の砒素複合体などの電気陰性汚染物質を除去するために使用する場合は、まずカーボンナノチューブに電気陽性物質を含浸する。
【0133】
[0137] また本開示によるカーボンナノチューブは、流体からの汚染物質除去を補助するか、または機械的強度、体積伝導率、またはナノメカニカル特性などの他の性能特性を向上させる材料および/または粒子でコーティングまたは加飾することによって変性させることができる。官能化されたカーボンナノチューブとは異なり、コーティングまたは加飾されたカーボンナノチューブは、官能基とは異なり、必ずしもナノチューブと化学的に結合せず、ナノメッシュの濾過性能を改良するのに十分なナノチューブの表面積を覆う材料および/または粒子の層で覆われる。
【0134】
[0138] 本明細書で説明する物品に使用するカーボンナノチューブは、流体からの汚染物質の除去を補助する成分でドーピングすることもできる。本明細書では、「ドープされた」カーボンナノチューブとは、六方晶系炭素の圧延薄板の結晶構造内に炭素とは異なるイオンまたは原子が存在することを指す。ドープされたカーボンナノチューブとは、六角環中の少なくとも1つの炭素が非炭素原子で置換されているという意味である。
【0135】
[0139] 別の実施形態では、本明細書で説明するようなカーボンナノチューブは、原子または分子の1つまたは複数のクラスターで加飾することができる。本明細書で使用する「加飾」とは、部分的にコーティングされたカーボンナノチューブを指す。「クラスター」は、任意の化学結合または物理結合によって結合した少なくとも2つの原子または分子を意味する。
【0136】
[0140] クラスターは光安定性があり、色を調整可能で、広い吸収スペクトルおよび狭い発光ピークを有するナノ結晶となる量子ドットの特性を呈することができる。量子ドットを含むクラスターは、金属、非金属およびこれらの組合せで構成することができる。これらの結合したクラスターは、その後に光活性化して、汚染物質を除去、無能力化および/または破壊することができる。量子ドットは、とても小さい物質の粒子であるため、電子の付加または除去が検出でき、何らかの有用な方法によりその特性が変化する。1つの実施形態では、量子ドットは、数ナノメートルの直径の半導体結晶であり、ナノ結晶とも呼ばれ、サイズが小さいので、電子を3次元で数ナノメートルの領域に閉じ込める電位の井戸のような挙動をする。
【0137】
[0141] 分子または集団は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、錫、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、ビスマスから選択される少なくとも1つの金属原子、および水素、硼素、炭素、窒素、酸素、フッ素、珪素、燐、硫黄、塩素、臭素、アンチモン、ヨウ素およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの非金属原子を含む無機化合物を含むことができる。
【0138】
[0142] 分子またはクラスターは、ペプチド結合によって繋がれたアミノ酸で構成された天然ポリマー、炭水化物、ポリマー、芳香族または脂肪族アルコール、およびRNAおよびDNAなどの核酸または非核酸など、少なくとも1つのタンパク質を含む有機化合物も含むことができる。
【0139】
[0143] 有機化合物の非制限的な例としては、カルボキシル、アミン、芳香族炭化水素、ニトリル、アミド、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ポリアミド、ポリ両親媒性物質、ジアゾニウム塩、金属塩、ピレニル、チオール、チオエーテル、スルフヒドリル、シラン、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの化学基を含む有機化合物が挙げられる。
【0140】
[0144] ポリマー、セラミック、金属および生物学的材料の上記リストには、カーボンナノチューブを充填、官能化またはコーティングすることができる同じ材料が含まれる。このような材料は、カーボンナノチューブの表面に意図的欠陥がある場合は、さらに容易にカーボンナノチューブに付加するか、その中に配置できることが分かっている。
【0141】
E.ナノメッシュに含まれる繊維
[0145] 本明細書で説明するナノメッシュは、処理中にカーボンナノチューブの分散(または剥離)を維持するように作用し、および/または堆積基材または最終生成物に機械的完全性を与えることができる繊維も含むことができる。このような繊維は、犠牲的であってもよいし(化学処理または熱処理などのさらなる処理中に構造から除去することができる)、最終装置の一体部分として残ることができる。本明細書で使用する「繊維」という用語は、長さLが直径Dより大きくなるようなLおよびDを有する物体を意味し、ここでDは繊維の断面が内接する円の直径である。例えば、アスペクト比L/D(または形状係数)は、例えば、2から10、5から10など、さらに5から10などの範囲から選択される。通常、これらの繊維は、1nmから1mm、例えば、10nmから100μmの範囲の直径を有する。
【0142】
[0146] 本明細書で開示する組成に使用できる繊維は、人工または天然由来の鉱物または有機繊維であってもよい。これは、短くても長くてもよいし、ばらばらでもまとまっていてもよいし、例えば、編まれていても、中空または中実であってもよい。これは、意図された特定の用途に応じて任意の形状を有することができ、例えば、円形または多角形(四角形、六角形または八角形)の断面を有することができる。
【0143】
[0147] 繊維は、例えば10nmから10m、20nmから1cmなどの範囲の長さを有する。その断面は、例えば1nmから1mmの範囲の直径の円内にあってよい。
【0144】
[0148] 繊維は、生体内無機質化または生体内重合から得られるような織物の製造に使用する繊維であってもよい。例えば、絹繊維、木綿繊維、ウール繊維、亜麻繊維、羽毛繊維、例えば、木材、豆果または藻類から抽出したセルロース繊維である。
【0145】
[0149] 本開示では医療用繊維も使用することができる。例えば、再吸収性合成繊維は、グリコール酸およびカプロラクトンから調製した繊維、乳酸およびグリコール酸の共重合体である再吸収性合成繊維、およびポリテレフタルエステル繊維を含むことができる。ステンレス鋼の糸のような再吸収性ではない繊維も使用することができる。
【0146】
[0150] 繊維は以下から選択することができる。
【0147】
[0151] (a)ナイロン、アクリル、メタクリル、エポキシ、シリコーンゴム、合成ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド(すなわち、ケブラ(登録商標)およびノーメックス(登録商標))、ポリクロロプレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリパラフィレンテレフタルアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)およびポリエステルエステルケトン、ポリエステル[例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、例えば、ダクロン(登録商標)]、ポリテトラフルオロエチレン(すなわち、テフロン(登録商標))、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビトンフルオロエラストマ、ポリメチルメタクリレート(すなわち、プレキシガラス(登録商標))、およびポリアクリロニトリル(すなわち、オーロン(登録商標))、およびその組合せなどの単一または複数構成材料のポリマーから選択される少なくとも1つの高分子材料。
【0148】
[0152] (b)炭化硼素、窒化硼素、尖晶石、石榴石、フッ化ランタン、フッ化カルシウム、炭化珪素、炭素およびその同素体、酸化珪素、ガラス、水晶、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硼化ハフニウム、酸化トリウム、菫青石、ムライト、フェライト、サファイア、ステアタイト、炭化チタン、窒化チタン、硼化チタン、炭化ジルコニウム、硼化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、およびその組合せから選択される少なくとも1つのセラミック材料。
【0149】
[0153] (c)アルミニウム、硼素、銅、コバルト、金、プラチナ、パラジウム、珪素、鋼、チタン、ロジウム、イリジウム、インジウム、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、錫、タングステン、ニオブ、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、銀、ジルコニウム、イットリウム、その酸化物、水素化物、水酸化物およびその合金から選択される少なくとも1つの金属材料。
【0150】
[0154] (d)綿、セルロース、ウール、絹、および羽毛、およびその組合せから選択される少なくとも1つの生物学的材料またはその派生物。
【0151】
[0155] (e)ナノ渦巻型ホーン、ナノ螺旋、ナノばね、樹枝、樹状、スパイダナノチューブ構造、ナノチューブY接合部、およびバンブー形態または多糸螺旋の入れ子状または非入れ子状形態を有する単一壁、2重または多重壁カーボンナノチューブから選択される少なくとも1つのカーボンナノチューブ。
【0152】
[0156] (f)少なくとも1つの金属酸化物または金属水酸化物ナノワイヤ。例えば、金属酸化物のナノワイヤは、反応容器内にて金属線を酸素で230〜1000℃の範囲の温度まで30分から2時間の範囲の間加熱することによって調製することができる。ナノワイヤは、供給材料として上述した任意の金属によって作成されたマクロスケールの線を使用して成長する。得られる金属酸化物のナノワイヤは、直径が1〜100ナノメートル、例えば、直径が1〜50ナノメートル、直径2〜5ナノメートルなどの範囲のサイズでよい。このプロセスの1つの有利な態様では、ベースワイヤの表面を研磨して、粗くした表面組織を出し、ナノメッシュ内でナノチューブの付着を向上させ、さらに、物品の浄化性能を向上できるようにする。これらの金属酸化物または金属水酸化物のナノワイヤは、供給業者からも入手することができる。
【0153】
F.装置に使用される基材
[0157] 1つの実施形態は、差圧プロセスを使用してカーボンナノチューブを堆積させる支持基材を含み、基材は多孔質であるか、カーボンナノチューブの堆積に使用されるキャリア流体を透過することができる。多孔質支持基材は、ブロック、管(または円筒)、シートまたはロールなど、得られる物品の形状に適した任意の形態でよく、セラミック、炭素、金属、合金、またはプラスチックまたこれらの組合せから選択される材料を含むことができる。1つの実施形態では、基材は織物または不織繊維材料を含む。
【0154】
[0158] さらに、基材がシートの形態をとる場合、基材は、平坦または平面のシートであっても、またはひだ状形態であってもよい。ひだ状形態は、汚染した流体の浄化に使用された場合に、汚染した流体に曝露するナノメッシュの表面積を増加させるために選択される。
【0155】
[0159] 1つの実施形態では、基材はナノメッシュが堆積する材料のロールである。このプロセスでは、ロールは、上述したような連続的または半連続的方法で、一連の堆積ステーションおよび他の処理ステーションをスクロールすることができる。
【0156】
[0160] 圧延プロセスでナノメッシュを生成する別の実施形態では、フィルタ材を形成するために、中空の多孔質円筒、ブロックまたは他の支持構造に巻き付けて、これを使用することができる。
【0157】
[0161] 別の実施形態では、多孔質管状基材は、活性炭(塊または繊維)などの炭素材料を含み、その外面は本明細書で説明するカーボンナノチューブでコーティングされる。
【0158】
[0162] 別の実施形態では、上述したように作成された金属酸化物/水酸化物ナノワイヤの集まりを、差圧堆積プロセスを使用してカーボンナノチューブを堆積させるための基材として使用することもできる。得られたナノワイヤ/カーボンナノチューブのナノメッシュは、構造的完全性を向上させ、および/または物品の浄化性能を改良するために、熱的、機械的または化学的に処理してもよいし、処理しないでもよい。化学的処理は、化学基、金属、セラミック、プラスチックまたはポリマーで得られたナノメッシュを官能化、コーティングまたは加飾することを含む。さらに、これらの化学的処理は、ナノメッシュ物品が汚染物質と化学的または物理的に反応または相互作用して、それを破壊、変性、不動化、除去、または分離するように実行することができる。
【0159】
[0163] 他の実施形態では、差圧堆積プロセス中に使用される多孔質支持基材は、紙の製造と同様の方法で、ナノメッシュを形成するために、犠牲的であったり、堆積中に一時的にしか使用されなくてもよい。
【0160】
G.装置についてその他の説明
[0164] 物品の別の実施形態は、複数のナノメッシュの層を備え、それぞれの層は、汚染物質の特定の分布を除去するか、物品の他の性能特性を改良するために、ゼータ電位や他の手段を、特別に、独立して調整されてもよい。「他の手段」とは、多孔度、汚染物質との親和性[例えば、ナノメッシュ構成材料、特定の汚染物質受容体の官能化]、または強度(例えば、使用される結合または架橋剤)などの、ナノメッシュ層の特定の特性を調整することである。
【0161】
[0165] 別の実施形態では、ナノメッシュは、物品の濾過性能を改良するように作用する結合剤(ポリビニルアルコールなど)を含む。このような結合剤は、ナノメッシュ構造を形成する前に、カーボンナノチューブおよび他のナノメッシュ構成材料を含む懸濁液に導入することができる。
【0162】
[0166] 別の実施形態では、自己集合プロセスによってナノメッシュを形成することができる。「自己集合」とは、ナノメッシュ構成材料自体が最終的なナノメッシュ構造になるように配列するという意味である。これは、官能基、表面電荷の分布、分散剤の組成または特性、またはこれらの任意の組合せを選択し、電気、磁気、化学および幾何制約を制御することによって達成される。例えば、ナノメッシュ構成材料の表面電荷分布を調節することにより、その電気的挙動を制御し、これにより、これらが集合したナノメッシュの構造内にどのように配列するかを決定する。この自己集合は、除去特性、多孔質、電気抵抗、流体の流れに対する抵抗、強度特性またはその組合せを改良するナノメッシュ内の構造的枠組の強化につながるいかなる形態であってもよい。
【0163】
[0167] さらに上記自己集合は、外部フィールドを負荷することによって「指示」することができる。この負荷されたフィールドは、ナノメッシュ構成材料および/または構成材料が懸濁している流体のいずれかまたは全ての特性と協調して働き、その集合を得られるナノメッシュ内に案内する。例えば、ナノメッシュの構成材料の一部または全部を含む懸濁物は、ナノメッシュの形成中に電磁刺激を受けて、所望の構成材料の配列および/または織りを達成し、流体浄化性能を向上させることができる。
【0164】
H.作用のメカニズム
1.流体の殺菌
[0168] いかなる理論にも拘束されないが、本明細書で説明したナノメッシュは、化学的および物理的力を使用して、まず微生物およびその他の病原体を流体の流れから引きつけてから、変性または分離する、類まれなナノスケールの相互作用域を形成すると考えられる。例えば、流体の殺菌中に、微生物がナノメッシュと接触し、集中させた力を微生物に加えると考えられる。これらの力は最初に細胞を引きつけ、次にその付着および/または変性を引き起こす。この変性は、細胞膜の破壊、または細胞内の損傷を引き起こすことを含み、したがって微生物またはその再生能力を無能化し、および/または破壊することが可能である。この方法で、流体を微生物に対して効果的に殺菌することができる。一般的な微生物は長さが1〜5ミクロンの範囲のサイズであり、したがってカーボンナノチューブなどのナノ構造より少なくとも100倍大きい。これらの生物の既知の例としては、大腸菌、コレラ菌、チフス菌、志賀赤痢菌、クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)、ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバ、およびその他多くが挙げられる。水によって移送されるウィルスの例としては、ポリオ、A型肝炎、ロタウィルス、腸内ウィルスおよびその他多くが挙げられる。化学薬品の例としては、イオン、重金属、殺虫剤、除草剤、有機および無機毒素、および(ボツリヌス中毒を引き起こすような)微生物毒素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
[0169] サイズに大きな差があるので、顕微鏡的または肉眼的テクノロジに基づくオーダーより強力なオーダーのナノスケールの力を加えることができる。集束した光がレーザに強度を与えるのと同様の方法で、集中した力は、微生物に対するナノスケールの引力および/または破壊に強度を与える。それ故、大きいスケールの場合には、小さすぎて有効でないか、または非常にエネルギー集約的な機械的および電気的力を使用して、ナノスケールでは、微生物を効果的かつ効率的に除去または死滅することができる。
【0166】
[0170] このようなナノスケールにおいて、微生物を吸着してから、死滅させるメカニズムとして考えられているものは、独立して、または相互に協調して作用することができる。このようなメカニズムの非制限的な例としては、以下のものが挙げられる。
[0171] ・集中した力による細胞壁の機械的貫通および/または剥離。
[0172] ・細胞壁および輸送路への外部からの損傷および/またはDNA、RNA、タンパク質、細胞器官などへの細胞内の損傷を引き起こす振動波。
[0173] ・細胞構造を損傷する、カーボンナノチューブ周辺の液体中の衝撃波によるバブルキャビテーション。
[0174] ・生物学的汚染物質を捕捉し、保持する電磁力、静電力および/またはファンデルワールス力。
[0175] ・細胞壁および/またはDNAの損傷を引き起こす、ゼータ作用によるナノ構造近辺の水素結合の破壊。
[0176] ・水中で自然に発生するHイオンを引きつけて、細胞壁および/またはDNAを損傷する、特定のナノチューブ官能化によるナノ構造の周囲環境の酸性化。
【0167】
[0177] 典型的な微生物細胞内の浸透圧は、周囲の流体の浸透圧より高いので、非生理学的状態を仮定すると、細胞壁のわずかな損傷であっても全体的破裂を引き起こすことがある。何故なら、細胞の内容物が高圧から低圧へと流れるからである。さらに、ウィルスまたは微生物細胞のDNAが十分に損傷すると、微生物の、再生または宿主細胞を感染させる能力の少なくとも1つを破壊し、感染を引き起こせないようにすることができる。
【0168】
2.ナノ電子流体浄化
[0178] 本開示によれば、流体浄化の別のプロセスもナノメッシュ物品を利用する。この場合、静電界または電磁界をナノメッシュに印加して、流体の浄化を制御する。静電分離装置の挙動と非常によく似たナノメッシュへの電位の印加により、ナノスケールで汚染物質を除去することができる。さらに、このプロセスを逆に使用して、フィルタ物品を洗浄することができる。
【0169】
[0179] またナノメッシュ全体を動的電磁界で刺激することができ、これは適切に調節すると、ナノメッシュの幅の振動を励起する。この振動は、微生物損傷効果を有するか、超音波自己洗浄効果を誘発することができる。この点に関して、本発明の物品の有用性は、ナノチューブの高い強度、高い剛性(大きい弾性率)、高い伝導率、および圧電特性を活用できることである。
【0170】
[0180] また用途によっては、より汎用の電磁界を印加すると、既存の技術を超えた流体浄化性能を与えることができる。例えば、2つの導電性ナノメッシュ層がある場合、電流を印加すると、ナノメッシュ層間に磁界が発生する。この磁界を調整して、流体の流れからの全帯電粒子を捕捉することができる。
【0171】
3.液体の脱塩
[0181] 本開示によると、液体脱塩プロセスも説明したナノメッシュ物品に基づく。説明したナノメッシュで液体を脱塩できると考えられる1つのメカニズムは、2つ以上のナノメッシュ膜の間に電圧差を与えることである。この場合、一方のナノメッシュ膜はプラスの電荷を有し、他方の膜はマイナスの電荷を有する。印加した電位差によって、カチオンがマイナスに帯電した膜に向かって移動し、アニオンがプラスに帯電した膜に向かって移動する。カーボンナノチューブの表面積が大きいので(1000m/g)、ナノメッシュ膜全体に電圧差を与えると、静電容量が非常に高い装置を生成し、したがって効率的でコンパクトで可逆的なイオン分離ゾーン(すなわち、イオントラップ)を生成する。
【0172】
[0182] 脱塩ユニットには、相互に絶縁され、支持された導電性ナノメッシュの2つ以上の平行な層を組み込むことができる。2つ以上の層は、静止モードまたは活動モードで帯電することができる。静止モードでは、例えば、ナノメッシュ層を反対に帯電させて、その間に塩トラップを生成する。4つ以上の層がある活動モード装置では、例えば、信号の4つのレッグを4つの連続したナノメッシュ層に与えるように、4相信号が多層ナノメッシュ構造に供給される。このパターンを4つのナノメッシュ層毎に繰り返す。この方法で、各ナノメッシュ層、および装置全体の電荷が、時間的に順次プラスから中性、マイナスさらに中性へと割り送られる。経時的に連続して実行すると、装置内を移動する仮想コンデンサが電子的に生成され、これによって塩イオンが装置を通る水の流れとは異なる方向に移動することができる。淡水は装置を通過するが、濃縮した塩水は、仮想コンデンサの終点に蓄積し、装置の塩水口から排水される。
【0173】
[0183] 実際には水分子の分極の性質により、水溶液中のイオンは、これを囲む水分子の雲によって電荷が保護され、これをデバイ雰囲気と言う。この水分子の雲は、イオンが移動するにつれてそれと一緒に運ばれるので、イオンの有効質量およびイオン半径を増加させる作用をする。したがって(イオン分離を誘発するために必要な周波数に対して)周波数の高いAC信号を、脱塩装置の膜層に与えることができる。この周波数の高い信号の目的は、溶液中のイオンを保護しているデバイ雰囲気を破壊することである。この水分子のシェルを取り除いた結果、イオンの見かけが小型化し、質量が減少して、より小さい抵抗で流体中を移動することができる。本発明のこの態様は脱塩装置の効率を改良する。
【0174】
[0184] また本明細書で説明する脱塩装置は、得られる淡水を浄化するために、上述したようなナノメッシュ構造の生物学的除去特性を利用するように設計することができる。
【0175】
4.生物膜の防止
[0185] 本開示の1つの態様によると、汚染微生物の堆積および成長によって生物膜が形成しやすい表面は、ナノ材料の層でコーティングし、カビ、細菌などの望ましくない要素の付着またはその後の成長を防止することができる。このようなナノ材料の非制限的な例としては、カーボンナノチューブの表面に付着するか、その中に配置される、または他のナノメッシュ構成材料に付着する、抗菌特性を有する要素または化合物(ヨウ素樹脂、銀、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはトリクロサンなど)が挙げられる。
【0176】
I.本発明によって除去可能な汚染物質のタイプ
[0186] 開示された物品を使用して流体から除去できる汚染物質の非制限的な例としては、以下の生物剤(biological agent)が挙げられるが、これに限定されない。すなわち、病原微生物[ウィルス(例えば、天然痘および肝炎)、細菌(例えば、炭疽菌、発疹チフス、コレラ菌)、オーシスト、(天然または兵器として使用する)胞子、カビ、菌類、大腸菌、および腸管寄生生物など]、生物学的分子(例えば、DNA、RNA)、および他の病原体[プリオンおよびナノ細菌(天然および合成の両方)]である。
【0177】
[0187] 「プリオン」は、核酸および他の大部分のタンパク質を変性することによって、不活性化に抵抗する、小さな感染性のタンパク様粒子と定義される。人間も動物も、[牛のウシ海綿状脳症(BSEまたは狂牛病)、または人間のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)のような]プリオン病にかかりやすい。
【0178】
[0188] 「ナノ細菌」とはナノスケールの細菌であり、その一部は最近人間と動物の両方で生体内無機質化を引き起こすと仮定されている。さらにナノ細菌は、腎結石の形成、何らかの形態の心臓病およびアルツハイマー病にも役割を果たしているかもしれないと仮定されている。さらにナノ細菌は、不要な生体内無機質化および/または一部の工業プロセスでの化学反応を引き起こすことも疑われている。
【0179】
[0189] 開示された物品を使用して流体から除去できる汚染物質の他の非制限的な例としては、天然および人工有機分子(毒素、内毒素、タンパク質、酵素、殺虫剤、および除草剤など)、無機汚染物質(重金属、肥料、無機毒物など)およびイオン(海水中の塩または帯電した懸濁粒子状物質など)で構成された有毒、有害または発ガン性化学物質が挙げられるが、それに限定されない。
【0180】
[0190] 洗浄した流体、特に上水の用途には、飲料水、灌漑、医療および産業が含まれる。例えば、半導体製造、金属めっき、および一般的な化学産業および実験室での使用が挙げられるが、それに限定されない工業プロセスの脱イオン水の原料となる。
【0181】
[0191] 特に、本明細書で説明した物品を使用して流体から除去できる化合物は、以下の元素から選択される少なくとも1つの原子またはイオンを含む、除去対象原子団または分子である。すなわち、アンチモン、砒素、アルミニウム、セレニウム、水素、リチウム、硼素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ニオブ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、臭素、ストロンチウム、ジルコニウム、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、ヨウ素、銀、カドミウム、インジウム、セシウム、錫、バリウム、ランタン、タンタル、ベリリウム、銅、フッ素、水銀、タングステン、イリジウム、ハフニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、ラドン、ラジウム、トリウム、ウラニウム、プルトニウム、ラドンおよびこれらの組合せである。
【0182】
J.本発明の汎用構造
[0192] 本開示の別の態様は、官能化されたカーボンナノチューブを含むナノメッシュ材料など、流体から汚染物質を除去するために物品内で使用されるナノメッシュ材料を製造する方法に関する。
【0183】
1.官能化されたカーボンナノチューブの調製
[0193] 官能化されたカーボンナノチューブを調製する1つのプロセスは、一般に通常、まず市販のカーボンナノチューブを溶剤中で超音波処理する工程を含む。このようなカーボンナノチューブは、化学蒸着(CVD)炉プロセスなどの任意の化学的プロセスで作成した多層カーボンナノチューブの粉末を含み、これは一般的に>95重量%の純度、および長さが500nm〜50μm、例えば、10〜20μm、直径が2〜200nmの特徴的寸法を有する。
【0184】
[0194] したがって、超音波処理の後またはそれと同時に、カーボンナノチューブを、硝酸、硫酸、塩酸および/またはフッ化水素酸またはその組合せから選択されるが、それに限定されない酸で処理する。これらの酸は、カーボンナノチューブを洗浄するために個別に使用するか、様々な組合せで使用することができる。例えば、1つの実施形態では、カーボンナノチューブを最初に硝酸中で洗浄し、次にフッ化水素酸中で洗浄する。別の実施形態では、カーボンナノチューブを、硝酸で洗浄した後に硫酸で洗浄する。
【0185】
[0195] 酸洗浄は、非晶質炭素、または触媒粒子およびナノチューブの表面化学を妨害するようなその支持体などのいかなる汚染物質も除去し、カーボンナノチューブの表面の欠陥位置に付着した官能基(例えば、カルボキシルなど)を生成するために実行される。
【0186】
[0196] この官能化はカーボンナノチューブに親水性も与え、これは得られる物品の濾過性能を改良すると考えられる。次に、カーボンナノチューブを最終的に蒸留水で濯ぎ、蒸留水、またはアルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノールなどの適切な分散剤中に懸濁させる。1つの実施形態では、超音波処理、攪拌および加熱を、この官能化プロセスを通して使用し、ナノチューブの十分な分散を洗浄中維持する。
【0187】
2.金属酸化物処理の繊維の調製
[0197] 1つの実施形態では、説明した物品に使用するナノメッシュを作成するプロセスは、本明細書で開示するように、上述した官能化カーボンナノチューブを金属酸化物(酸化鉄など)または金属水酸化物(水酸化鉄など)で処理した(コーティングまたは加飾した)繊維と混合する工程を含む。このような金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラス繊維の調製としては、金属酸化物または金属水酸化物を含む溶液を、0.2μm〜5μmの範囲の直径を有する繊維などの市販のガラス繊維と混合することが挙げられる。
【0188】
[0198] 1つの実施形態では、プロセスは、ガラス繊維を蒸留水と金属酸化物または金属水酸化物のコロイド溶液の混合物とともに、ガラス繊維を処理するのに十分な時間だけ攪拌することを含む。次に、処理した繊維を炉内で乾燥することができる。
【0189】
3.懸濁液の調製
[0199] 懸濁液を作成するために使用する成分は、上述したプロセスで調製した官能化されたカーボンナノチューブの溶液、および金属酸化物または金属水酸化物で処理した繊維を含む。懸濁液の構成材料部分を調製するために、まず官能化されたカーボンナノチューブを、超音波処理によって水またはエタノールなどの適切な媒体中に分散させる。金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラス繊維を、容器内で、同じく水またはエタノールなどの適切な媒体中に別々に分散する。次に、これらの別個の分散物を混合して、官能化されたカーボンナノチューブと金属酸化物または金属水酸化物で処理した繊維との懸濁液を形成する。
【0190】
[0200] 1つの実施形態では、最終的なナノメッシュの構造は、官能化されたカーボンナノチューブと金属酸化物または金属水酸化物で処理したガラス繊維との様々な層を含むことができる。これらの様々な層は、様々な比率のカーボンナノチューブと処理したガラス繊維から作成した別個の懸濁液から形成される。
【0191】
4.カーボンナノメッシュの堆積
[0201] 官能化されたカーボンナノチューブ/本明細書で開示した繊維のいずれかの金属酸化物または金属水酸化物のコーティング等の(ただし、これに限定されない)処理された繊維の混合物を堆積させる手順。例えば、ナノメッシュは、差圧堆積または直接的な集合を利用して、カーボンナノチューブと処理された繊維の混合物から作成することができる。この実施形態では、堆積プロセスは、基材全体の差圧を利用して、官能化されたカーボンナノチューブ/金属処理した繊維の懸濁液を、カーボンブロック基材に堆積させる。この実施形態では、基材全体に加える圧力差は、基材ブロックの内側の方が圧力が低くなるような圧力差である。この差圧は、懸濁液を含む流体を強制的に流して基材に通し、カーボンナノチューブおよびガラス繊維の混合物を基材の外面に堆積させ、これによってナノメッシュを形成する。
【0192】
5.物品の組立
[0202] ナノメッシュ材料を乾燥した後、コーティングした基材を多孔質保護紙と粗いプラスチックの網で覆って、ナノメッシュ材料を保護する。次に、エンドキャップを取り付けて、ナノメッシュの縁部を密封し、流体がナノメッシュを迂回することを防止する。次に、このアセンブリを外部ハウジングに組み込み、これを密封して、流体から汚染物質を除去する物品を製造する。
【0193】
K.効果の判定方法
[0203] 本明細書で説明した確立された微生物学技術を使用して、カーボンナノメッシュフィルタが、7ログを超える細菌汚染物質(大腸菌)および4ログを超えるウィルス剤の代用薬(MS2バクテリオファージ)を除去できることが実証された。これらの除去能力は、US−EPA(Guidance Manual for Compliance with the Filtration and Disinfection Requirements for Public Water Systems Using Surface Water、米国環境保護局、1991年3月)で規定された細菌除去の要件およびウィルス除去の推奨レベルを超えている。本発明の物品を独立に試験して、物品は米国の浄水の基本的基準を満足していることが確認された。
【0194】
[0204] 大腸菌などの細菌、およびMS2バクテリオファージなどのウィルスを使用し、以上で概略した方法を使用して作成したサンプルで、複数の試験を実行した。飲料水で装置のウィルス除去能力を評価する際に代用薬として一般的に使用されるMS2バクテリオファージは、オスに特異的な単糸RNAウィルスで、0.025μmの直径および正二十面体形状を有する。そのサイズおよび形状は、ポリオおよび肝炎ウィルスなどの他の水系感染性ウィルスと同様であるが、MS2バクテリオファージは人間の病原体ではない。
【0195】
[0205] 以下の全ての例で、大腸菌細菌およびMS2バクテリオファージを水から除去する試験に使用するプロトコルは、参照によって本明細書に組み込むものとする:(i)Standard Operating Procedure for MS 2 bacteriophage Propagation/Enumeration。Margolin、Aaron、2001年、ニューハンプシャー大学、ニューハンプシャー州ダーラム、および(ii)Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater、第20版、Standard Method、1998年、APHA、AWWA、WEF、ワシントンDCと一致し、概ねこれを遵守する。
【0196】
[0206] 上述した方法を使用すると、以下の例で例示するように細菌とカーボンナノチューブとの間に強力な接着力が観察された。例えば細菌は、特に超音波処理中に分散すると、カーボンナノチューブ表面に付着する。開示されたカーボンナノチューブのナノメッシュを大腸菌懸濁液が通過する場合にも、同じような付着が生じると考えられる。
【0197】
[0207] また、細菌細胞の完全結着性を、カーボンナノメッシュとの相互作用によって部分的に損なわせることができるという証拠も観察された。例えば、本明細書で説明するカーボンナノチューブが存在した状態で、細菌を電子顕微鏡で検査により、細菌外皮/細胞壁の明らかな侵食を示す像が得られた。長期間(24時間)の後、細胞壁の完全性の侵食から生じた破壊が明らかになり、これは細胞の内部と外部との浸透圧の差によるものであり、細胞壁の破局的障害および細菌の崩壊につながる。しかし、細胞完全性のこの破壊は、位相差顕微鏡で光学顕微鏡検査により観察すると、カーボンナノチューブと接触した直後に明白になった。
【0198】
[0208] さらに試験により、濾液中に少なくとも少量の遊離細菌DNAおよびタンパク質が存在していることから明白になり、いくつかの細菌が破壊されたことが確認された。しかし、細菌細胞の大部分は、ナノチューブに接触直後は無傷のままである。本発明のナノメッシュ物品が、排液流から細菌を効果的に除去することは実証されたが、細菌細胞を殺すナノチューブの能力はまだ立証されていない。しかしこの可能性は高い。
【0199】
[0209] さらに、本発明の物品に関する他の試験を通して、上述したような他の汚染物質(金属、塩、有機汚染物質、内毒素など)を水および空気から除去することができる。
【0200】
[0210] 純粋に本発明を例示するように意図されている以下の非制限的例により、本発明はさらに明らかになる。
【0201】
<実施例1>
大腸菌とカーボンナノチューブの相互作用
[0211] 大腸菌細菌の培養物とカーボンナノチューブの懸濁液との相互作用を調査して、細菌細胞に付着して、続いてそれを無能化するか破壊するカーボンナノチューブの効果を判定した。さらに、この研究により、本発明のナノ浄化物品において作用するメカニズムへの洞察が得られた。本手順では、細菌培養物を含む未処理のサンプルと、カーボンナノチューブと混合したサンプルとを比較した。比較は、光学顕微鏡と原子間力顕微鏡両方の検査技術を使用して、高い倍率で実行される。
【0202】
大腸菌懸濁液の調製
[0212] 無菌の生物学的ループ(市販)を使用し、市販の血液寒天培地プレートで画線した再構成株[American Type Culture Collection(ATCC)から入手、保存株ATCC#25922]でいっぱいのループを取り出して、大腸菌懸濁液を作成した。次に、このプレートを36℃で12〜18時間培養し、培養器から取り出して、純度を検査した。
【0203】
[0213] 無菌の生物学的ループ(市販)を使用して、培養した株でいっぱいの1つのループを取り出し、10mlの市販されている無菌のトリプシン大豆培養液(Remel Cat.No.07228)に入れた。次に、得られたトリプシン大豆培養液中で大腸菌を37℃で18時間培養し、その後に遠心分離して懸濁させ、純水中の約5×10コロニ形成単位(cfu)/mlの濃縮細菌培養物を形成した。
【0204】
硝酸でのカーボンナノチューブの官能化
[0214] カーボンナノチューブを硝酸溶液で処理して、汚染物質(非晶質炭素、または触媒粒子およびナノチューブの表面の化学的性質を妨害するようなその支持体など)を除去し、カーボンナノチューブの表面の結晶質欠陥部位の数を増加させ、カルボキシル化学基をこの欠陥部位に付着させた。この官能化は、カーボンナノチューブに親水性挙動も与えた。
【0205】
[0215] 遠心分離管内で合計量35mlの濃縮硝酸中に250mgの精製されたナノチューブを混合し、十分に振盪して、Cole Parmer 8851 Sonicatorを全出力にして10分間、50℃の水浴中で超音波処理することにより、処理を実行した。次に、硝酸/カーボンナノチューブの混合物を、上澄みが透明になるまで(6〜10分間)2,500rpmで遠心分離し、次に上澄みを傾瀉した。硝酸処理を、超音波処理は20分にして繰り返した。次に、硝酸処理したカーボンナノチューブを、合計量35mlの蒸留水に懸濁させ、10分間(上述したように)超音波処理し、次に上澄みを傾瀉することによって水洗浄した。pHが少なくとも5.5になるまでこの水洗浄を繰り返し(約3〜4回)、毎回5分間超音波処理した。
【0206】
試験溶液の調製
[0216] 次に、以上で概略説明したように調製した大腸菌懸濁液を2等分した。分割した大腸菌懸濁液の一方を蒸留水で希釈し、約2×10cfu/mlの大腸菌濃度(2:5希釈)を得ることによって、未処理溶液(試験溶液#1)を調製した。25mgの官能化されたナノチューブを分割した他方の大腸菌懸濁液に加えることによって、他方の溶液(試験溶液#2)を調製した。次に、この溶液を蒸留水で希釈し、試験溶液#1と同じ濃度にした。この希釈の結果、試験溶液#2のカーボンナノチューブ濃度は625ppmになった。
【0207】
[0217] 試験溶液#1と#2の両方を、Branson−2510 Sonicatorで3分間、同時に超音波処理した。次に、試験溶液を市販の遠心分離器にて2500rpmで2分間遠心分離してペレットを形成し、上澄みは傾瀉して、1mlの上澄みを残した。次に、試験溶液#1および#2のペレットを使用して、以下で説明する2つのサンプル(#1および#2)を作成した。
【0208】
サンプル#1の調製:カーボンナノチューブなし
[0218] カーボンナノチューブのない試験溶液(試験溶液#1)1滴を市販の顕微鏡ガラススライド(American Scientific Products、Micro Slides、プレーン、Cat. M6145、サイズ75×25mm、硫酸で洗浄し、蒸留水で濯ぐ)に配置し、4℃で19時間冷却して、サンプル#1を調製した。冷却後、(固定せずに)Veeco Dimension 3100 Scanning Probe Systemをタッピングモードで使用して、原子間力顕微鏡(AFM)分析を実行し、サンプルを調査した。
【0209】
[0219] サンプル#1はさらに、(裸火に短時間曝露して)熱固定され、次に(Gram Crystal Violet染料で)着色してから水洗浄した。Olympus光学顕微鏡を1000xの倍率で使用し、浸漬油中で光学顕微鏡検査を実行した。Olympus DP10 CCDでディジタル画像を作成した。
【0210】
サンプル#2の調製:カーボンナノチューブ処理
[0220] カーボンナノチューブ/大腸菌の試験溶液(試験溶液#2)1滴を、上述したように顕微鏡のガラススライド上に配置して(塗りつけて)サンプル#2を調製した。次に、サンプルを上記サンプル#1と同様にして、熱固定し、着色して、光学顕微鏡検査を実行した。次に、サンプル#2を4℃の冷却器に19時間入れ、その後に取り出して、サンプル#1のように(上述したように)AFM分析を実行した。サンプル#2を冷却器に戻して、さらに24時間かけ、その後に再び光学顕微鏡検査を実行した。
【0211】
顕微鏡分析の結果
[0221] サンプル#1(カーボンナノチューブがない細菌の懸濁液)は、スライドの表面全体に大腸菌細胞が均一に分布していることを示した。画像はさらに、細菌が非常に明確な縁部を有していることを示し、細菌細胞が無傷であることを示唆した。冷却器内に乾燥状態で2日間保存した後も、その形状に変化は見られなかった。
【0212】
[0222] カーボンナノチューブ処理した試験溶液(サンプル#2)からのサンプルの結果は、細菌がカーボンナノチューブに凝集していることを実証した。スライドから余分な汚れを洗浄すると、ナノチューブの大部分が除去された。カーボンナノチューブの境界に細菌の集中が観察された。
【0213】
[0223] カーボンナノチューブのないサンプル(サンプル#1)では、スライド全体に無数の個々の細菌細胞が存在し、カーボンナノチューブがあるサンプル(サンプル#2)では、スライドの大部分に細菌細胞がなかった。後者のケースで存在していた細菌は全て、カーボンナノチューブの周囲に密集し、カーボンナノチューブが細菌を捕捉し、保持していることを示した。
【0214】
[0224] サンプル#1では、大腸菌が相互に密集していることが実証された。正常な細胞の細菌細胞は明確な境界を有する。熱処理前のサンプル#1のAFM画像、および熱処理後のこのサンプルの光学画像に、細菌のサイズと充填密度の減少が見られた。
【0215】
[0225] サンプル#2では、ナノチューブの近傍にいくつかの細胞が見られ、大腸菌細胞壁の境界は拡散および/または損傷していた。実際、ナノチューブと混合した後、大腸菌細胞の一部は、認識点を越えて崩壊した。ナノチューブの近傍に拡散した大腸菌の断片が多少存在することも見られた。
【0216】
[0226] 蒸留水中で大腸菌および官能化されたカーボンナノチューブを超音波処理すると、この2つの構成材料が凝集した。これは、ナノスケールで作用する静電力およびファンデルワールス力によるものと考えられる。検出の限界まで、懸濁液中の全ての細菌がナノチューブに接触し、付着していることが観察された。溶液#2中に遊離大腸菌細胞はもう存在していなかった。これにより、分散したカーボンナノチューブが細菌に強力に付着し、これを不動化する能力が示された。
【0217】
[0227] 大腸菌細胞の崩壊は、気づいた時には細胞がナノチューブと密接に接触した後に現れた。その結果、これらの細菌細胞は鮮明な細胞の境界を失い、その内容物が細胞から漏れ出るように見えた。
【0218】
[0228] 影響を受けた細胞では、このプロセスが3時間後に開始することが判明し、22時間後には細胞の形状を認識するのが困難なほど内容物が広がった。移動性が高い細菌の蛍光菌を、(Difco Laboratoryからの)栄養培養液中で室温で12時間培養し、カーボンナノチューブの溶液と混合した。
【0219】
[0229] 暗視野顕微鏡で観察すると、運動性細菌が凝集したカーボンナノチューブの付近で泳ぎ、それに引き込まれ、露出したカーボンナノチューブ繊維にしっかり付着しているのが観察された。接触して5分以内に、カーボンナノチューブ凝集物の全表面が、数百の無傷の細菌に覆われ、しっかり付着しているのが観察された。何故なら、離れようと奮闘しているが、できないように見えたからである。これらの細菌は全ての運動性を喪失し、カーボンナノチューブ繊維に最初に接触してから30秒以内に、完全に固定される。これにより、細かく分散したカーボンナノチューブ繊維が、多数の細菌に迅速に付着し、これを不動化する能力が示された。これにより、微生物除去におけるカーボンナノチューブ繊維の効果の根拠が確認される。
【0220】
<実施例2>
円筒形浄化物品
円筒形浄化物品の構成
a.水酸化鉄で処理したガラス繊維の調製
[0230] 23.5リットルの蒸留水と、9.62mlの10N水酸化ナトリウム(NaOH)の溶液を作成し、1時間攪拌した。16.66グラムの量の塩化第二鉄(FeCl・6HO)を添加し、約2.2の最終pHに到達するまで(約24時間)攪拌した。この溶液に、直径が100〜500nmで、長さが300〜500μmのサイズのガラス繊維(Johns−Mansville)200グラムを添加して、溶液の鉄が透明になるまで(約3時間)攪拌を続けた。溶液を蒸留水で希釈し、10グラム/リットルのガラス繊維濃度にした。
【0221】
b.堆積性懸濁液の調製
[0231] 上述したように事前に調製した官能化カーボンナノチューブと水酸化鉄で処理したガラス繊維の溶液を使用して、懸濁液を調製した。懸濁液の構成材料部分を調製するには、5gの(実施例#1で説明した硝酸洗浄手順でカルボキシ化されている)官能化カーボンナノチューブを1リットルの水に懸濁させ、Cole Parmer 8851 Sonicator内で室温の水浴に入れ、全出力で20分間超音波処理した。超音波処理した官能化カーボンナノチューブ/水の混合物に4リットルの蒸留水を添加し、水1ml当たり1mgの官能化カーボンナノチューブの濃度にした。約100mlのFe加飾したガラス繊維溶液を、別個の容器に入れ、蒸留水で1リットルに希釈した。この混合物を市販の混合器内で5分間混合した。
【0222】
[0232] 最初の堆積性懸濁液を混合するために、600mlの懸濁した(上述の)官能化カーボンナノチューブを960mlのガラス繊維溶液に添加した(CNT/ガラスの重量比率5:8)。この混合物に十分な量の蒸留水を添加して4リットルまで希釈し、Bransonの900B型プローブSonicatorで10分間、全出力で超音波処理した。
【0223】
c.カーボンナノメッシュの堆積
[0233] 官能化カーボンナノチューブ/水酸化鉄でコーティングしたガラス繊維の混合物の層を、炭素ブロック基材上に堆積させて、最終的なナノメッシュの構造にした。
【0224】
[0234] 官能化カーボンナノチューブ/水酸化鉄でコーティングまたは加飾したガラスの混合物を堆積させる手順を、以下に説明する。円筒形の炭素ブロックを有孔マンドレルに装填して、フィルタアセンブリを作成した。堆積室をカーボンナノチューブ/ガラス繊維の懸濁液(比率5:8)で充填した。Franklin Electronics Varian TriScroll真空ポンプにつながる真空管にフィルタアセンブリを接続し、次に充填した堆積室に沈めた。フィルタアセンブリに取り付けた真空ポンプをオンに切り換え、懸濁液を全て真空でカーボンフィルタ基材に通して引き出し、外面にナノメッシュを堆積させた。堆積後、真空ポンプに接続したまま、堆積したフィルタアセンブリを堆積室から取り出し、50℃に設定した窒素雰囲気の乾燥炉で1〜2時間、堆積したナノメッシュフィルタアセンブリを真空で乾燥した。
【0225】
[0235] 完全に組み立てたフィルタ物品は、官能化カーボンナノチューブのナノメッシュでコーティングされ、円筒形のプラスチック網で所定の位置に保持された多孔質保護紙で覆われた、中心のカーボンフィルタ芯で構成された。このカートリッジにキャップをし、ナノメッシュの縁部を密封して、流体がナノメッシュを迂回するのを防止し、外部ハウジングに入れて、最終製品を生成した。
【0226】
円筒形浄化物品の有効性
[0236] 円筒形形態の本発明の物品の汚染水に関する流体浄化試験を、大腸菌細菌培養物[American Type Culture Collection(ATCC)から入手]を用いて実行した。
【0227】
[0237] 本発明の実施例(実施例2)に従って作成したナノメッシュを、再構成した大腸菌保存株ATCC#25922の検査流体で検査することによって、細菌検定を実行した。この検査流体は、無菌の生物学的ループ(市販)を使用して、再構成した株でいっぱいのループを取り出して、それを市販の血液寒天培地プレートで画線培養して作成した。次に、このプレートを36℃で12〜18時間培養した。次に、培養器から培養物を取り出し、純度を検査した。
【0228】
[0238] 無菌の生物学的ループ(市販)を使用して、培養した株でいっぱいの1つのループを取り出し、10mlの市販されている無菌のトリプシン大豆培養液(Remel Cat.No.07228)に入れた。次に、得られたトリプシン大豆培養液中で大腸菌を37℃で18時間培養し、約1×10コロニ形成単位(cfu)/mlの培養物を形成した。この保存株のサンプル1mlを、検査試験に使用する100mlの水に添加し、約1×10cfu/mlの濃度まで希釈した。次に、得られた検査水を円筒形浄化物品に通した。
【0229】
[0239] 試験は、以上で言及した「Standard Methods for the Examination of Water and Waste Water」に従って実行した。上述したプロトコルに従った試験結果は、検査流体が本発明のナノメッシュを通過した場合に、6ログを超える値(>99.99995%)から7ログを超える値(>99.999995%)の大腸菌細菌を常時除去することを立証した。これらの試験結果は、水からの細菌除去に関するEPAの飲用水基準(以上で言及)を超える除去率を立証した。EPA標準では、飲料水を獲得するには大腸菌の6ログ(>99.99995%)の除去を命じている。このような試験では、上述したように作成した、大腸菌細菌濃度のより高い既知の細菌濃度の(すなわち、検査)溶液を、ナノメッシュに通すことにより、より大きいログでの大腸菌細菌の除去という改良型の浄化が達成されている。より高い濃度の溶液を用いた試験により、7ログより大きい値(>99.999995%)の除去率が確認される。この実施例で説明した試験手順を使用するナノメッシュの独立した試験により、この材料を大腸菌細菌の障壁として確立した。さらに、独立した実験室の試験結果は、本材料が様々な試験細菌(Klebsiella terrigenaおよびBrevindomonas)を6ログより大きい値で除去することを示し、本材料が細菌に対して一般的な障壁であることを示した。
【0230】
<実施例3>
平坦な浄化物品の製造
[0240] 実施例2と同様に、市販の精製したカーボンナノチューブと不織布の融合ポリプロピレン基材で、平坦なナノメッシュを作成した。最初に、100mgの(実施例#1で説明したように硝酸洗浄でカルボキシ化してある)官能化カーボンナノチューブを、400mlの市販の純イソプロパノールに添加し、カーボンナノチューブが十分に分散するまで(約10分間)80%出力の「Branson 900B Ultrasonicator」で超音波処理した。得られる混合物の総量が2.4リットルになるように、2リットルのイソプロパノールを添加することによって、混合物をさらに希釈した。この希釈混合物を、さらに10分間超音波処理した。
【0231】
[0241] 次に、800mgの市販の直径200nmのガラスナノファイバを、全出力の市販の混合器で、500mlの市販の純イソプロパノール中で10分間ホモジナイズした。次に、ホモジナイズした混合物に、追加の1リットルの市販の純イソプロパノールを添加して希釈した。
【0232】
[0242] カーボンナノチューブとガラスナノファイバの混合物を混合し、十分量(QS)のイソプロパノールを添加して、4リットルにした。次に、この4リットルの溶液を、80%出力の「Branson 900B Ultrasonicator」で15分間超音波処理し、これによってカーボンナノチューブのナノ材料が均一に分散した。
【0233】
[0243] 次に、4リットルの溶液全体を、市販の5ミクロンの融合活性化カーボン不織布に1大気圧の差圧で通し、カーボンナノチューブ/処理されたガラス繊維ナノメッシュを堆積させた。得られたナノメッシュを、製造装置から取り出し、50℃の炉内で2時間乾燥させた。
【0234】
[0244] 得られた平坦な四角形のナノメッシュ/基材膜を、NSF適合のホットメルト接着剤で平坦なハウジングの片側に接着する。次に、ハウジングのこの半分を相手に対合させて接着し、密封する。
【0235】
平坦な浄化物品の有効性試験
a.大腸菌で汚染された水−化学分析
[0245] 本実施例にしたがって作成した平坦なナノメッシュ浄化物品で、実施例2の説明のように実行した大腸菌検査試験の濾液の化学分析結果について、以下に説明する。この実施例によれば、本発明のナノメッシュを通過した大腸菌細菌の一部が破壊したことの何らかの証拠が得られた。汚染物質(大腸菌細菌)の部分的破壊のこの証拠は、検査濾液中に細菌DNAおよびタンパク質が存在することによって確認された。
【0236】
[0246] 検査溶液の組成を、約1×10cfu/mlの大腸菌とした以外は、実施例2と同じ手順に従って検査試験を実行した。合計100ml(合計約1×1010cfu)のこの検査溶液を、約0.25psiの差圧を使用してカーボンナノメッシュ/基材材料に通した。市販の0.45ミクロンのMilliporeフィルタに大腸菌検査濾液を通すことにより、対照標準の濾液を調製した。試験検査濾液は濃縮しなかった。次に、タンパク質とDNAの存在を判定するために、得られた対照標準濾液と検査濾液を、市販のスペクトル光度計で分析した。しかし、市販のスペクトル光度計による濾液の分析で、40μg/mlのDNAおよび0.5mg/mlのタンパク質が存在することが判明した。濃縮していない検査濾液中のこのようなレベルのタンパク質およびDNAの濃度は、Milliporeフィルタを通した濾過によって取得された対照標準の試験材料より6倍高かった。これらの濃度は、追加した大腸菌の少なくとも多少の部分が、ナノメッシュによって破壊されたことを示している。
【0237】
b.MS2バクテリオファージウィルスで汚染した水
[0247] 本実施例(実施例3)に従って作成した平坦な浄化物品を、MS2バクテリオファージウィルスで汚染水で、上述した「Standard Operating Procedure for MS−2 Bacteriophage Propagation/Enumeration, Margolin, Aaron,2001,An EPA Reference Protocol」の手順を使用して試験した。MS2バクテリオファージウィルスは、飲料水処理用に設計された膜の処理能力を評価する際に一般的に使用されている(NSF1998)。この実施例における加圧した検査は、上述したプロトコルを使用して、100mlの検査溶液を用いて実行した。以上で列挙したこれらの工程に従って、MS2検査材料を調製した。
【0238】
[0248] この試験では、本実施例(実施例3)に従って作成したカーボンナノチューブのナノ構造材料で構成した80の膜を検査した。使用した検査材料は、MS2バクテリオファージウィルスで約5×10プラーク形成単位(pfu)/mlの濃度まで汚染した水であった。
【0239】
[0249] 試験した80個のうち、50個が5ログ(99.999%)または5ログより大きい(>99.9995%)MS2除去を達成した。残りの30個は、4ログ(99.99%)または4ログより大きい(>99.995%)MS2の除去を実証した。EPA標準では、飲料水を獲得するために4ログのMS2バクテリオファージ除去を推奨しているが、より高いログのMS2の検査液で検査することによって、より高い感度(より高いログ除去)が達成されると考えられる。このような試験では、本実施例(実施例3)に従って作成したカーボンナノチューブのナノメッシュを、上述したように作成した、BS2バクテリオファージの濃度がこれより高い検査懸濁液で検査することにより、より多いログでMS2バクテリオファージを除去する改良された浄化が達成され、材料がBS2バクテリオファージに対する障壁バリアであることを立証する。
【0240】
c.砒素(As)で汚染された水
[0250] 本実施例(実施例3)に従って作成した平坦な浄化物品を、砒素で汚染した水で試験した。この試験では、約150ppb(十億分率)の砒素を含む100mlの水溶液を、本実施例(実施例3)に従って作成したカーボンナノメッシュに通した。砒素で処理した水のサンプルを、EPA方法#SM183113Bに従って分析した。検査濾液の分析で、検査砒素処理水が本発明のカーボンナノメッシュ材料を1回通過した後、砒素レベルが86%±5%低下したことが確認された。
【0241】
d.細菌で汚染された航空機燃料
[0251] 本実施例(実施例3)に従って作成した平坦な浄化物品を、汚染したジェット燃料で試験した。汚染したジェット燃料(JP8)のサンプルは、Wright Patterson空軍基地の米国空軍研究所に配置された33,000ガロンの保存タンクから入手した。採集後、サンプルをトリプシン大豆寒天培地で培養し、3タイプの細菌、すなわち、2つの桿菌種(Bacillus species)および1つの球菌種(Micrococcus species)を含むことが判明した。サンプルをそれぞれ2リットルの2つの容器に分離した。容器は両方とも、2つの別個の層、すなわち、上部のジェット燃料と底部の水を示した。容器Aは、水と燃料の界面に非常に汚染した培養層を含んでいた。容器Bはわずかな汚染しか示さなかった。容器Bの燃料と水の界面から、検査試験用細菌を入手した。
【0242】
[0252] 検査試験用の燃料/水/細菌を1分間激しく振盪して均質化した後、200mlの燃料/水/細菌の検査混合物を、約1.5psiの差圧を使用して、本実施例(実施例3)に従って作成したカーボンナノチューブのナノ構造材料に1回通した。
【0243】
[0253] 燃料/水/細菌の検査濾液サンプルを、燃料と水の構成材料に分離し、各構成材料から4つの試験サンプルを取得した。各試験サンプルを寒天培地で平地培養した。次に、細菌増殖を分析するためにサンプルを37℃で培養し、、カビの増殖を分析するためにサンプルを室温で培養した。サンプルを24時間および48時間培養した後、検査濾過試験プレートでは、細菌もカビも培養増殖が観察されなかった。対照標準のサンプルは、24時間および48時間の培養後に、細菌およびカビ増殖の活発なコロニが観察された。その結果は、本実施例(実施例3)に従って作成したカーボンナノメッシュが、燃料中の細菌の障壁バリアであることを示している。何故なら、試験プロトコルの検出限界を超えて、燃料から細菌およびカビを除去したからである。
【0244】
<実施例4>
多段官能化を使用する平坦な浄化物品
[0254] 市販の精製したカーボンナノチューブと、0.5oz/ydの融合炭素薄葉不織紙基材から平坦なナノメッシュ装置を作成した。この装置の構築には、上述したようなナノメッシュの自己集合プロセスを利用した。特定の電気陽性および電気陰性の機能的構成材料を使用して、その自己集合を可能にした。水中に分散した場合にカーボンナノチューブを電気陽性(プラスのゼータ電位)にするアミン基で、カーボンナノチューブを官能化した。水中に分散した場合にガラス繊維を電気陰性にする水酸化鉄集団でガラス繊維を加飾した。2つの懸濁液を混合すると、電気的な力によりナノチューブがガラス繊維に巻き付けられる。
【0245】
[0255] 最初に、20gのカーボンナノチューブを、400mlの、60%、36Nの硫酸および40%、15.8Nの硝酸で、110℃にて30分間還流した。これは、カルボキシル官能基をカーボンナノチューブに付加することが知られている。これらのカルボキシルで官能化されたナノチューブを濾過し、蒸留水で洗浄して、100℃の炉で乾燥した。次に、乾燥したナノチューブを500mlの塩化チオニル中に懸濁させ、60℃で20時間超音波処理した。塩化チオニルを蒸留して除去し、シンクポンプを使用してカーボンナノチューブを脱水した。脱水したナノチューブを500mlのエチレンジアミン中に懸濁させ、窒素雰囲気中で60℃で20時間超音波処理した。エチレンジアミンを蒸留して除去し、サンプルを0.1Mの塩酸で洗浄し、濾過して、中性のpHに到達するまで、蒸留水で繰り返し濯いだ。濯いだアミン官能化カーボンナノチューブを、次に100℃の炉内で24時間乾燥した。
【0246】
[0256] 360mgのアミン官能化カーボンナノチューブと960mgの処理したガラス繊維との混合物を混合し、十分量(QS)の蒸留水を添加し、4リットルにした。次に、この4リットルの溶液を、80%出力の「Branson 900B Ultrasonicator」で15分間超音波処理し、これによってカーボンナノチューブ/ガラス繊維のナノ材料が均一に分散した。
【0247】
[0257] 次に、4リットルの溶液全体を、市販の0.5oz/ydの融合炭素不織組織に約1大気圧の差圧で通し、自己集合したカーボンナノチューブ/処理したガラス繊維ナノメッシュを堆積させた。得られたナノメッシュを、製造装置から取り出し、50℃の炉内で2時間乾燥させた。
【0248】
[0258] 得られた平坦な四角形のナノメッシュ/基材膜を、NSF適合のホットメルト接着剤で平坦なハウジングの片側に接着する。次に、ハウジングのこの半分を相手に対合させて接着し、密封する。
【0249】
平坦な浄化物品の有効性試験
[0259] アミン官能化カーボンナノチューブおよび水酸化鉄で加飾したガラス繊維を使用して、本実施例(実施例#4)で構築した平坦な浄化装置を、生物学的除去について、実施例3の有効性試験[試験a)大腸菌およびb)MS2バクテリオファージ]で説明したように試験した。これらの試験は、自己集合したナノメッシュ物品が、それぞれ8ログおよび7ログを超える細菌およびウィルスの除去能力を達成したことを示した。
【0250】
<実施例5>
流体の脱塩
[0260] 64層の平坦なナノメッシュ装置を、市販の精製して官能化されたカーボンナノチューブ;直径が500nm、長さが300〜500μmのガラス繊維;蒸留水中に分子量が20,000gのポリビニルアルコールを溶かした0.0125重量%の水溶液、絶縁体として1.5oz/ヤードのセルロースフィルタ紙;0.5oz/ydの融合導電性炭素不織薄葉紙基材;銀を埋め込んだ導電性および絶縁性エポキシ;プラスチックの非導電性ハウジング;および隣接する各対の導電性ナノメッシュ層に直流1.5Vを供給する電源で作成した。
【0251】
[0261] 最初に、25mgの官能化されたナノチューブ(実施例#1で説明した通りの硝酸洗浄手順でカルボキシル化してある)と50mgの(上述した)ガラス繊維を、上述した0.0125%濃度のポリビニルアルコールを含む4リットルの蒸留水に懸濁させた。IKA Ultra Turrax T18浸漬混合装置を速度3で使用して、懸濁液を3分間攪拌した。
【0252】
[0262] このカーボンナノチューブ/ガラス繊維の懸濁液を、約1psiの差圧を使用して、0.5oz/ydの炭素繊維紙の5.5”×5.5”のシートのうち5”×5”の面積に堆積させた。この5”×5”のナノメッシュシートから直径2”の円板を4枚切り取り、64層の直径2”の装置のうちの4層とした(64層のうち32層は導電性、他は絶縁性)。
【0253】
[0263] 銀を充填した導電性エポキシを使用して、電気リード線を各導電性ナノメッシュ層に取り付けた。導電性ナノメッシュ層を全部、絶縁層の間に挟み、次にこの「サンドイッチ」を、電気リード線が全方位で等間隔になるように(すなわち、上下の層のリード線から約11.25°回転して)積み重ねた。電気リード線を束にし、プラスチックのハウジング壁を通して電源まで送り、アセンブリ全体を密封した。
【0254】
[0264] 電荷または刺激を加えない状態で1‰の生理食塩水(1‰=塩1g/水1000g)を1リットル、装置に通して、静止保持試験を実行した。濾液の塩分を試験し、約13mgの塩が失われていることが判明した。したがって、本発明の装置は、静止モード(すなわち、電子刺激がない)で塩分を約1.3%減少させた。この減少は、本発明の装置のカーボンナノチューブ1グラム当たり0.42グラムの塩を除去したことになる。
【0255】
[0265] 動的保持試験を実行し、ここでは4.0mVの差動DC電圧を隣接する16対の導電性ナノメッシュ層それぞれに印加した(すなわち、偶数番号のナノメッシュ層はプラスに帯電し、奇数番号の層はマイナスに帯電した)。1000mlの蒸留水に1gの塩化ナトリウムが溶解した検査生理食塩水(塩分1‰)を使用して、装置の効力を試験した。装置に1回通すと、塩の1.6%が除去された。この除去率は、カーボンナノチューブ1g当たり0.52gの塩と等価である。これは、静止装置よりも塩分除去が23%増加したことになり、非常に弱い電圧でも、水溶液からの塩イオンの除去を向上させることを示し、ナノ電気の除去効果を実証した。DC電圧を上昇させ、デバイ雰囲気を妨害するAC信号を加えると、塩分除去がさらに向上することは確実である。
【0256】
<実施例6>
空気膜
[0266] (実施例#1で説明したように硝酸洗浄してカルボキシル化した)官能化カーボンナノチューブを使用して、平坦な空気膜フィルタを構築した。この手順は、このような官能化ナノチューブ25mgを25mlの蒸留水中に懸濁させ、Branson Model 900B Sonicator内で室温の水浴中で10分間超音波処理した。次に、この溶液を蒸留水で4リットルまで希釈し、ポリビニルアルコール濃度が0.125重量%になるように、ポリビニルアルコールを添加した。次に、この懸濁液をUltraTurrax T18 Basic浸漬混合装置で速度設定3にて3分間混合した。約1psiの差圧の差圧濾過プロセスを使用して、5.25”×5.25”の四角形の多孔質高分子基材のうち5”×5”の面積に堆積させることにより、ナノメッシュを生成した。
【0257】
空気膜物品の有効性試験
[0267] 膜で生物学的除去試験を実行して、その有効性を判定した。四角形の膜から2.5”の円板を2つ切り取り、内径2”、外径2.5”の2つの平坦な金属環の間に装着した。一方の円板を膜物品装置の流速曲線に対する圧力低下の測定に使用し、他方を生物学的除去試験に使用した。生物学的除去試験は、内径2”の円筒形風洞にフィルタ円板を装着して実行した。これにより、枯草菌(生物剤として広く受け入れられている代理物であって、人間の病原体ではなく、そのため実験室での試験を安全にできる)の細菌胞子の捕捉効率を試験することができる。
【0258】
[0268] 試験は、エアロゾル化装置を通してフィルタ円板の上流で細菌胞子を放出し、試験装置の下流端で、流体を充填した総ガラスのインピンジャ内のフィルタを通過した部分を捕捉して行った。制御された実験セットを実行して、試験装置の胞子保持を推定した。この生物学的試験では、6ログを超える枯草菌胞子の除去を達成した。さらに、生物剤の除去は、非生物学的粒子の除去および空気流に対するフィルタの抵抗と関係ないことも判明した。
【0259】
<実施例7>
オープンリール式製造プロセス
[0269] この実施例は、本開示によるナノ構造材料の製造プロセスに関する。この実施例は、各構成材料の前処理、キャリア流体中での混合、および移動する基材上への基材を通ったキャリア流体の堆積について説明する。堆積したナノ構造材料の後処理、およびナノ構造材料の性能試験についても説明する。
【0260】
構成材料の前処理
a.カーボンナノチューブ
[0270] カーボンナノチューブを硝酸溶液で処理して、ナノチューブ表面の化学的性質と干渉するような非晶質炭素などの汚染物質を除去した。この処理工程は、ナノチューブの結晶欠陥部位の数を増加させ、カルボキシル化学基をこれらの欠陥部位に付着させるためにも実行された。官能化ナノチューブの75gのバッチを、これより小さいいくつかのバッチから作成した。これらの小さいバッチでは、600mlの蒸留水に懸濁した20mgの精製ナノチューブを合計量450mlの70%濃度の硝酸と混合して、処理を実行した。
【0261】
[0271] この混合物をガラスのビーカに注入し、次にこれを70℃の超音波処理槽に入れて、30分間攪拌した。次に、硝酸/カーボンナノチューブの混合物をブーフナー漏斗に注入し、真空濾過を使用してカーボンナノチューブから酸を取り除いた。次に、硝酸処理したこのカーボンナノチューブを、pHが約5.5になるまで蒸留水で3〜4回水洗浄した(合計でほぼ4リットルを使用した)。次に、これを75リットルの逆浸透処理水中に懸濁させた。官能化カーボンナノチューブの混合物を、直径75μmの分散ヘッドおよび10kPsiの圧力低下を使用するMicrofluidicsの高圧分散装置に通して処理し、ナノチューブの凝塊を破壊した。
【0262】
b.ガラス繊維
[0272] 120リットルの逆浸透処理水中に懸濁したJohns−Manville Code 90ガラス繊維から600gのガラス繊維を含む混合物を調製し、60分攪拌した。この繊維混合物を、75Hzで作動して汎用分解ヘッドを有するSilverson Model 200L High Shear In−Line Mixerに通した。220gのFe(NO・9HOを含む1リットルの溶液をこの混合物に添加することにより、このガラス繊維を水酸化鉄の薄いコーティングでコーティングした。色が一様になるまでこの混合物を攪拌し、pHを記録した。次に、この混合物を覆い、一定に攪拌しながら60時間熟成した。
【0263】
[0273] 0.50Nの水酸化ナトリウム溶液4リットルを調製し、Millipore Waters Model 520ポンプを使用して2ml/分の速度で24時間、鉄/ガラスの混合物に自動的に添加した。3.95±0.05のpHに到達するまで、この滴定を継続した。この時点で、滴定した溶液をさらに2日間熟成させ、水酸化鉄(III)コーティング手順を終了した。追加の熟成期間後の最終pH値は4.60±0.05であった。
【0264】
懸濁液および分散の調製
[0274] 前処理の後、構成材料を以下のように混合した。上述したように調製した官能化カーボンナノチューブと水酸化鉄処理のガラス繊維との混合物を使用して、懸濁液を調製した。堆積性懸濁液を混合するために、1グラム/リットルの官能化カーボンナノチューブ懸濁液75リットルを、5グラム/リットルのガラス繊維溶液120リットルに添加し、GreercoモデルAEHNXU X0022直列型二重ヘッド高剪断混合装置に通して、ナノチューブとガラスの比率が(重量で)1:8の懸濁液を195リットル得た。
【0265】
カーボンナノチューブおよびガラス繊維の堆積
[0275] 超音波処理を使用して、オープンリール式ナノ材料製造装置の堆積性ヘッドボックスへの経路上で、繊維/カーボンナノチューブ懸濁液の十分な分散を達成および/または維持した。上述したように調製し、カーボンナノチューブ/ガラス繊維を混合した懸濁液をアルキメデスのねじ式静止混合要素に通して給送し、次にSeepexモデル12F−90L/4 CUSプログレッシブキャビティポンプを使用してAdvanced Sonicsの4kWおよび20kW、16/20kHzの2周波直列Sonicatorに順次通した。
【0266】
[0276] 調製した後、繊維/カーボンナノチューブの懸濁液を、20フィート/分で作動する幅18”の長網抄紙機のヘッドボックスに供給した。この懸濁液は、Blue Thunder Novatech−1000基材材料で構成された基材に堆積し、得られた材料を、その後の機械および手作業での取り扱いおよび圧延に対する保護のため、Reemay 2014スパンボンドで覆った。後処理は実行しなかった。
【0267】
[0277] 別段の指定がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用する成分、反応状態などを表す全ての数字は、全ての場合で「約」という用語で修飾されると理解されたい。したがって、逆の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲で述べる数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化する近似値である。
【0268】
[0278] 本発明の他の実施形態は、明細書を考察し、本明細書で開示された本発明を実行することにより当業者には明らかになるだろう。明細書および実施例は単なる例示と見なされ、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲に示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0269】
[013]
【図1】本開示によってナノ構造材料を連続的に製造するシステムの略図である。[014]
【図2】本開示によってナノ構造を製造する連続的回転フォーマ堆積システムの略図である。[015]
【図3】本開示の1つの実施形態によって、継ぎ目のない製品を形成するためにナノ構造材料を剛性基材に直接堆積させるシステムの略図である。[016]
【図4】本開示の1つの実施形態によって、ナノ構造材料を製造する連続的ワイヤ型システムの略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを含むナノ構造材料を作成する方法であって、
混合物を形成するために、キャリア流体中にカーボンナノチューブを懸濁させる工程と、
差圧濾過によって、前記キャリア流体を透過できる基材を通って流れるように、前記混合物を誘導する工程と、
ナノ構造材料を形成するために、前記カーボンナノチューブを前記混合物から前記基材に堆積させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記キャリア流体が、カーボンナノチューブ以外のその他の構成材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、前記ナノ構造材料の一部を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材を前記ナノ構造材料から除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、繊維質または非繊維質材料で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維質または非繊維質材料が、金属、ポリマー、セラミック、天然繊維、およびこれらの組合せを含み、前記材料が、前記カーボンナノチューブの前記堆積前に先立って、必要に応じ熱および/または圧力処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリア流体が、少なくとも1つの液体、または気体、またはこれらの組合せで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア流体が、水性および非水性液から選択される分散剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア流体が、1から8.9の範囲のpHを有する水性液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリア流体が、少なくとも1つの水性または非水性溶媒またはこれらの組合せをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記非水性溶媒が、有機または無機溶媒を含み、該有機溶媒がメタノール、イソプロパノール、エタノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、1,2−ジクロロベンゼン、およびこれらの組合せから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記その他の構成材料が、金属、ポリマー、セラミック、天然材料、およびこれらの組合せで構成される繊維、クラスター(cluster)および/または粒子状物質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記その他の構成材料の少なくとも1つの寸法(dimension)が、1nmから100nmの範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記その他の構成材料が、アンチモン、アルミニウム、バリウム、硼素、臭素、カルシウム、炭素、セリウム、塩素、クロム、コバルト、銅、フッ素、ガリウム、ゲルマニウム、金、ハフニウム、水素、インジウム、ヨウ素、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、窒素、オスミウム、酸素、パラジウム、燐、プラチナ、レニウム、ロジウム、ルテニウム、スカンジウム、セレニウム、珪素、銀、硫黄、タンタル、錫、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、ジルコニウム、またはこれらの組合せから選択される原子を含む分子で構成される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記その他の構成材料が、前記堆積に先立って事前に組み立てられており、前記カーボンナノチューブ、その他の構成材料、またはこれらの組合せに付着している、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記キャリア流体が、化学結合剤、表面活性剤、緩衝剤、高分子電解質、およびこれらの組合せをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化学結合剤が、ポリビニルアルコールを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリア流体が、タンパク質、DNA、RNA、およびこれらの組合せから選択される生物学的材料をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
カーボンナノチューブを含む少なくとも1つのナノ構造材料とナノ構造であっても、ナノ構造でなくてもよい少なくとも1つの追加層を順次堆積することによって多層構造を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリア流体が、空気、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、ヘリウム、ネオン、またはこれらのいずれかの組合せで構成される気体である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記堆積に先立って、前記キャリア流体中に前記カーボンナノチューブを分散させる、または、前記キャリア流体中での前記カーボンナノチューブの分散を維持するために、10kHzから50kHzの範囲の周波数を有する音場を印加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
堆積に先立って、前記キャリア流体中に前記カーボンナノチューブを分散および/または混合するために、前記キャリア流体に高剪断流動場を印加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
堆積に先立って、前記キャリア流体中に前記カーボンナノチューブを分散させる、または、前期キャリア流体中での前記カーボンナノチューブの分散を維持するために、10kHzから50kHzの範囲の周波数を有する音場および高剪断流動場を順次、または組み合わせて印加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
化学処理、照射、またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つの堆積後処理で前記ナノ構造材料を処理する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記化学処理が、(a)官能基を付加すること、(b)高分子または金属材料でコーティングすること、または(a)と(b)の組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記照射が、赤外線放射、電子ビーム、イオンビーム、X線、光子、またはこれらのいずれかの組合せから選択される照射に前記ナノ構造材料を曝露することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
切断、積層、密封、圧縮、包装、またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つの方法で、前記ナノ構造材料を仕上げる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ構造材料が、管状形状を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ構造材料が、少なくとも2つの寸法が1cmより大きいシートである、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノ構造材料が、少なくとも2つの寸法が10cmより大きいシートである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記シートが、100cmより大きい少なくとも2つの寸法を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記シートが、100cmから2メートルの範囲の少なくとも2寸法を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、バッチ式方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記誘導する工程が、前記ナノ構造材料が堆積する前記基材の反対側に真空を印加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
カーボンナノチューブを含むナノ構造材料を製造する連続的または半連続的方法であって、
混合物を形成するために、キャリア流体中にカーボンナノチューブを懸濁させる工程と、
差圧濾過によって、前記キャリア流体を透過できる移動基材を通って流れるように、前記混合物を誘導する工程と、
1メートルを超える長さを有するナノ構造材料を形成するために、前記カーボンナノチューブを前記混合物から前記移動基材に堆積させる工程と、
を含む方法。
【請求項36】
前記ナノ構造材料が、1メートルを超え最大10,000メートルの範囲の長さを有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
巻き取りリールに前記ナノ構造材料を収集する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記誘導する工程が、前記ナノ構造材料が堆積する前記基材の反対側に真空を印加する工程を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの汚染された流体を濾過するためのナノ構造材料を製造する方法であって、
混合物を形成するために、キャリア流体中にカーボンナノチューブおよびガラス繊維を懸濁させる工程と、
差圧濾過によって、前記キャリア流体および前記汚染流体を透過できる基材を通って流れるように前記混合物を誘導する工程と、
ナノ構造材料を形成するように、前記カーボンナノチューブを前記混合物から前記基材に堆積させる工程と、
を含む方法。
【請求項40】
前記ガラス繊維が、金属水酸化物M(OH)、オキシ水酸化物M(OH)、酸化物M、オキシ塩、水酸塩、オキシ水酸塩M(OH)から選択される金属酸素化合物でコーティングされる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
Mが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つのカチオンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
Aが、水素化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸化物、硫化物、窒化物、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、炭酸塩、燐酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、硼素、またはこれらの組合せから選択される少なくとも1つのアニオンである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、1メートルから1000メートルの範囲の長さを有するナノ構造材料を形成するために、連続的または半連続的に操作される、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、シートであって、1cmから1メートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有するナノ構造材料を形成するために、バッチ式方法で操作される、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記方法が、管状形状を有するナノ構造材料を形成するために、バッチ式方法で操作される、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記誘導する工程が、前記ナノ構造材料が堆積する前記基材の反対側に真空を印加する工程を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記流体が、
(a)水、石油およびその副産物、生物学的流体、食料品、アルコール飲料、および薬品から選択される1種類の液体、
(b)空気と、アルゴン、窒素、ヘリウム、アンモニアおよび二酸化炭素を含む工業用ガスと、車両、排気筒、煙突またはタバコからの排気から選択される気体;または
(a)と(b)の組合せを含む、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−506973(P2009−506973A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529308(P2008−529308)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/034225
【国際公開番号】WO2007/149109
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508062177)セルドン テクノロジーズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】