説明

ナノ粒子の細胞培養表面

基質を含んでいる細胞培養物品であって、基質表面上にナノ粒子を有し、ナノ粒子はここで定義される化学式(I)の重合体を含んでいる。
【化1】


細胞培養物品又は細胞培養物品を作るための方法及び物品を有するリガンドのアッセイを実行するための方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連した同時係属出願に対する相互参照
2008年11月26日に出願された標識独立検出システムのためのナノ粒子捕捉と称するヨーロッパ特許出願第08305846.1号及び関連する同表題の2009年11月17日に出願された米国特許出願第12/620100号の利点を本出願では請求する。本願明細書に言及される刊行物、特許及び特許文献の全ての開示を引用し、本願明細書に含まれたものとする。
【背景技術】
【0002】
本開示は、細胞培養のための表面に関し、特に血清の存在又は非存在における細胞培養基の細胞培養のための界面化学に関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、細胞培養のために表面処理された物品並びにそれらのための調製方法及び使用方法を提供する。細胞培養表面は、血清の存在又は非存在における細胞培養の基質を提供し、同様に標識独立検出(LID)及びEpic(登録商標)バイオセンサなど高効率バイオセンサに敏感に反応する特性を提供する。本開示はまた、生物実体(例えば、受容体タンパク質などのような細胞標的)を高濃度で固定できかつ、検体の検出に関して、以前に報告されたものより優れた感度を提供できるセンサを提供するシステム及び方法に関する。本開示のLIDバイオセンサは、生物分子事象の検出に対し高感度を有する。本開示の処理されたバイオセンサ表面は、増加するリガンド結合を呈することができ、より少ないタンパク質の消費ができ、周知の処理されたバイオセンサ表面と比較してより大きい感度を提供できる。本開示の処理されたバイオセンサ表面は、細胞培養にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】図1Aは本開示の実施例において親和性捕捉の機能があるナノ粒子からなる典型的な重合体化学式を示す図である。
【図1B】図1Bは本開示の実施例において親和性捕捉の機能があるナノ粒子からなる典型的な重合体化学式を示す図である。
【図1C】図1Cは本開示の実施例において親和性捕捉の機能があるナノ粒子からなる典型的な重合体化学式を示す図である。
【図2A】図2Aは本開示の実施例におけるNTA誘導されたEMAナノ粒子のSEM画像を示す図である。
【図2B】図2Bは本開示の実施例におおけるNTA誘導されたEMAナノ粒子のSEM画像を示す図である。
【図2C】図2Cは本開示の実施例におけるNTA誘導されたEMAナノ粒子のSEM画像を示す図である。
【図3】図3は本開示の実施例における例2のナノ粒子組織を有する及び有さない表面にかかるSPR応答を示すグラフである。
【図4】図4は、本開示の実施例におけるナノ粒子組織を有する例3と比較した、ナノ粒子組織を有さない市販のNTAチップを使用したもののSPR応答を示すグラフである。
【図5】図5は、本開示の実施例における例4の親和性/共有結合的表面上と親和性表面だけ上とのHisタグCAII固定化レベルの比較を示すグラフである。
【図6】図6は、本開示の実施例における例4の親和性表面上と親和性/共有結合的表面上とのタンパク質浸出応答の比較を示すグラフである。
【図7】図7は、本開示の実施例における例4の親和性/共有結合的表面上と親和性表面だけ上との結合の値の比較を示すグラフである。
【図8】図8は、本開示の実施例における例5の親和性/共有結合的表面上と、市販製品の親和性/共有結合的表面上と、親和性表面だけ上とのHisタグCAII固定化レベルの比較を示すグラフである。
【図9】図9は、本開示の実施例における例5の親和性/共有結合的表面上と、市販製品の親和性/共有結合的表面上と、親和性表面上とのタンパク質浸出又は解離応答の比較を示すグラフである。
【図10】図10は、本開示の実施例における例5の親和性/共有結合的表面上と、市販製品の親和性/共有結合的表面上と、親和性表面上との結合の値の比較を示すグラフである。
【図11】図11は、本開示の実施例における例6の親和性/共有結合的表面上のCAII又はHisタグCAII固定化レベルの比較を示すグラフである。
【図12】図12は、本開示の実施例における例7のニッケルイオン処理の有る場合と無い場合の親和性/共有結合的表面上のHisタグCAII固定化レベルを示すグラフである。
【図13】図13は、コラーゲンIと関連するEMA−NTA合成表面上の4時間付着のヒト初代肝細胞を示すグラフである。
【図14】図14は、ヒト初代肝細胞のコラーゲンIと関連するEMA−NTA合成表面上の付着(24h)と保持(7d)を示すグラフである。
【図15】図15は、コラーゲンIと関連するEMA−NTA合成の表面上で培養されたヒト初代肝細胞の3つの主要な代謝遺伝子(CYP450)の相対的遺伝子発現を示すグラフである。
【図16A】図16Aは、例えば、コラーゲン又はMatrigel(登録商標)であり得る基質上単独で存在する細胞の概略図である。
【図16B】図16Bは、例えば、コラーゲン又はMatrigel(登録商標)であり得るサンドイッチ層において存在する細胞の概略図である。
【図17A】図17Aは、肝臓組織の顕微鏡写真である。
【図17B】図17Bは、コラーゲンI被覆基質上で成長した肝細胞の顕微鏡写真である。
【図17C】図17Cは、MRP2トランスポータを示すため蛍光染色されたMatrigel(登録商標)サンドイッチ層で重ねられたコラーゲンI被覆基質上で成長した肝細胞の顕微鏡写真である。
【図18A】図18Aは、合成EMA−NTA表面上で単独で成長した肝細胞の顕微鏡写真である。
【図18B】図18Bは、図16Bにて図示したような、Matrigel(登録商標)サンドイッチ層がある場合の成長した肝細胞の顕微鏡写真である。
【図19A】図19Aは、血清がありMatrigel(登録商標)サンドイッチ層がある場合の合成EMA−NTA表面上で成長した肝細胞の顕微鏡写真である。
【図19B】図19Bは、MRP2トランスポータを示すため蛍光染色された血清の非存在下での合成EMA−NTA表面上で成長した肝細胞の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図面を参照して本開示の様々な実施例について詳細に説明する。様々な実施例に対する参照は本発明の範囲を制限せずに、本発明の範囲は本願明細書に添付の請求項の範囲だけによって、制限される。その上、本明細書に記載されるいかなる例も制限されず、単に特許請求の範囲に記載された発明のためのいくつかの多くの可能な実施例を記載するだけである。
【0006】
定義
「アッセイ」、「分析する」又は同様の用語は、例えば、リガンド候補化合物又はウイルス粒子又は病原体、表面又は培養条件又は実体のような外因性刺激による刺激時の生物学的の又は細胞の光学的応答又はバイオインピーダンス応答のタイプ、存在、非存在、量、範囲、速度、動態力学を確定するための分析をいう。この種の語は、また、刺激に対する反応又は刺激に対する非生物学的もしくは非細胞応答を含むことができる。
【0007】
「付着する」、「付着」、「接着する」、「接着した」、「接着性の」「不動化した」又は同様の用語は、例えば、本開示の表面修飾物質、適合化剤、細胞、リガンド候補化合物及び同様の主体を、物理吸着、化学的結合及び同様のプロセス又はこれらの組み合せによって表面に固定化する又は不動化することを一般的にいう。特に、「細胞付着」、「細胞吸着」又は同様の用語は表面への細胞の結合又は相互作用を言い、例えば、培養による、又は、アンカー物質、適合化剤(例えばフィブロネクチン、コラーゲン、ラミン、ゼラチン、ポリリジン、その他)での相互作用による、又は、実体によるものである。
【0008】
「付着細胞」は原核又は真核細胞などの細胞又は細胞株又は細胞系を言い、これは基質の外部表面との特定の接触、又は固定化され協働して存続するものである。かかるタイプの培養後の細胞は、洗浄及び媒質交換プロセス、多くの細胞ベースアッセイに不可欠なプロセスに耐え又は存続する。「弱い付着細胞」は、細胞培養の間、基質の表面と弱く相互作用する又は関連する又は接触する原核又は真核細胞などの細胞又は細胞株をいう。しかしながら、これらのタイプの細胞、例えばHEK細胞などは洗浄又は媒質交換などの物理的に阻害する方法によって基質の表面から容易に分離される傾向がある。「懸濁細胞」は、培養の間、基質の表面に付着又は接着せずに、好ましくは媒質中で培養された細胞又は細胞株をいう。「細胞培養」又は「細胞培養中」は、管理された条件下で原核か真核細胞のいずれかが成長されるプロセスをいう。「細胞培養」は、多細胞真核細胞、特に動物細胞から得られる細胞を培養することのみならず、複合組織及び臓器を培養することもいう。
【0009】
「細胞」又は同様の用語は、小さく通常顕微鏡的な半透膜によって外的に結合された原形質の質量であって、任意に1つ以上の核及び様々な他の細胞小器官を含み、単独で、あるいは他の同様の質量と相互作用して生体の全ての基本的機能を実行でき、合成細胞構成、細胞モデル系及び同様の人工細胞系を含む独立して機能しうる最小の生体構造単位を形成するものをいう。
【0010】
「細胞系」又は同様の用語は、各々が他と相互に作用してそこで生物学的又は生理学的又は病態生理学な機能を実行する1つ以上のタイプの細胞の集合(又は細胞の単一タイプの特異化した形態)をいう。かかる細胞系は、器官、組織、幹細胞、特異化された肝細胞などの系を含む。
【0011】
「刺激」、「治療候補化合物」、「治療候補」、「予防候補」、「予防薬剤」、「リガンド候補」、「リガンド」又は同様の用語は、バイオセンサに付着した細胞と相互作用する可能性について興味深い、天然の又は合成された分子又は物質をいう。治療又は予防候補物質は、例えば、化合物、生体分子、ペプチド、タンパク質、生体試料、薬剤候補の小分子例えば約1,000ダルトン未満の分子量の分子、薬剤候補の生物学的分子、薬剤候補の小分子−生物学的分子複合物及び同様の物質又は分子実体又はそれらの組み合せを含んでもよく、それらは具体的には、タンパク質、DNA、RNA、イオン、脂質又は同様の生細胞の構造又は成分などの細胞標的又は病原体標的の少なくとも1つと相互作用し又は結合し得る。
【0012】
「バイオセンサ」又は同様の用語は、一般に、生物学的なコンポーネントを物理化学的な検出部コンポーネントと結合する検体の検出のための装置をいう。当該バイオセンサは、通常3つの部分、すなわち、生物学的な成分又は構成要素(例えば、細胞標的、組織、微生物、病原体、生細胞又はそれらの結合)と、検出部構成要素(例えば光学的、圧電、電気化学的、測熱法的、磁気などの物理化学的な態様で動作する)と、当該両要素と関連するトランスデューサと、から構成されている。実施例において、光学バイオセンサは、細胞標的、生細胞、病原体、又はそれらの結合における分子識別又は分子刺激現象を数量化できるシグナルに変換する光学トランスデューサを有していてもよい。
【0013】
「含む」、「含」は、制限的ではなく含むことを意味し、すなわち、包括的であり、排他的でないことである。
【0014】
「約」は、本開示の実施例を記載する際に用いられ、例えば組成の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、同様の値及び同様の範囲を修飾し、例えば、化合物、組成物、濃度物、使用配合物を作るのに用いられる通常の測定又は取扱処理、これらの処理における偶然誤差や、これらの方法を実行する際に用いられる製造、ソース又は出発物質又は成分の純度の違い、及び同様の事項などにおいて生じうる数量の変動をいう。用語「約」はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する組成又は調製の経年変化による違い、及び特定の初期濃度又は混合物を有する組成又は調製の混合又は処理による違いを包含する。添付の特許請求の範囲は、「約」の修飾の有無にかかわらずこれらの量の等しい量を含むことを意図する。
【0015】
「任意の」、「任意に」又は同様の用語は、その後記載されている結果又は状況が起こることができないか又は起こることができないことをいい、そして、記述が結果又は状況が起こる事例及びそれが起こらない事例を含むことをいう。例えば、句「任意の成分」は、成分が有ること又は無いことを意味し、そして、本開示が成分を含んでいる、又はいない、両方の実施例を含むことを意味する。
【0016】
実施例における「から成る」「から本質的に成る」は、例えば、表面組成、表面組成を生成又は用いる方法、調製、バイオセンサ表面上の組成、物、装置、又は本開示の装置に対して云い、特許請求の範囲に列挙の要素又はステップ、また組成、物品、装置及び本開示の製造又は使用方法の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼさない他の要素又はステップ、を含むことであり、例えば特定の反応物、特定の添加物又は成分、特定の薬剤、特定の細胞又は細胞株、特定の表面修飾物質又は状態、特定の適合化剤、特定の細胞又は細胞系、特定のリガンド候補物質又は同様の構造、物質又は選択されるプロセス変形である。実質的に本開示の要素又はステップの基本的な特性に影響を及ぼしてもよいか、又は望ましくない特性を本開示に与えてもよいアイテムは、例えば、約300nmを超え約500nm程度の重合体表面層を含む。
【0017】
ここで用いられる不定冠詞「a」又は「an」、及びその対応する定冠詞「the」は、特定されない限り、少なくとも1つ又は1つ以上を意味する。
【0018】
従来技術における当業者にとって周知である略語、例えば、「h」又は「hR」は時間、「g」又は「gm」はグラム、「mL」はミリリットル、「RT」は室温、「nm」はnm、及び同様の略語、が用いられている。
【0019】
特に反対に述べていなければ、例えば、成分に関する「重量パーセント」、「wt%」、「重量パーセント」又は同様の用語は、組成の合計重量に対する成分の重量の比であり、成分が含まれ、パーセンテージとして表されたものである。
【0020】
開示された構成要素、成分、添加物、細胞タイプ、抗体、Hisタグ実体及び同様の態様、及びそれらの範囲のために特定値又は好ましい値は、説明のみのためであり、定められた範囲内の他の値又は他の定められた値を除外するものではない。本開示の組成、装置及び方法は、ここに記載されている値、特定の値、より特定の値及び好ましい値のいかなる値又はいずれかの組み合せを有するものを含む。
【0021】
上述のポリマーゲルは、例えばデキストラン多糖類、又は例えばポリアクリル酸のような合成ポリマーからなるLIDバイオセンサ上の生体分子を固定できる。例えば米国特許第5,436,161号(BIAcoreへ譲渡)及び"Materials and methods for microchemical testing,"と称する J.A. Bosley, et al.,のヨーロッパ特許第EP0226470号(いわゆる「‘470特許」)(Unileverへ譲渡)を参照のこと。
【0022】
ポリマーゲルの多数タイプ中において、多用されるものの1つは、カルボキシメチルデキストランに基づいており、例として、文献S. Lofas, et al., "A Novel Hydrogel Matrix on Gold Surfaces in Surface Plasmon Resonance Sensors for Fast and Efficient Covalent Immobilization of Ligands," J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1990, 21, 1526-1528及び上述した米国特許第5,436,161号に説明されている。このカルボキシメチルデキストランに基づくゲルは、非常に高いタンパク質捕捉容量に対し不適当な最終的なゲルの高さ及び厚さをなす、その分子量(BIAcoreから入手可能なCM5センサチップに対しMw500,000g/モル)のために捕捉容量を制限している。
【0023】
類似したアプローチは、特許協力条約公開WO2007/049269号公報(出願人Bio−Rad)に記載されていた。この刊行物は、配位子分子の結合及び検体分子との相互作用において高性能を示すカルボン酸基で置換された多糖類から成る結合層に言及している。多糖類は、アラニンスペーサとの反応によって修飾される。この刊行物も、スペーサ修飾が周知のカルボキシメチル化された多糖類のカルボン酸基の活性化と比較して、スペーサのカルボン酸基のより効率的な活性化を可能とする、と述べている。この刊行物は更に、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のような合成ポリマーがより効率的な活性化と続く固定化とを示すと述べている。しかし、これらのポリマーの低い「生体親和性」により、配位子分子がおそらく低い活性を呈したと思われる(第13頁第5−9行参照のこと)。
【0024】
LID方法は、受容体のような固定された標的上へのリガンド吸着によって誘導された屈折率の局所的変化に基づいている。
【0025】
バイオセンサ上の低標的固定化及びバイオセンサ上の低い特定リガンド結合活性の問題は、本開示の選択化学的及び生物学的機能化された表面、すなわち、バイオセンサ上の高い生化学標的固定化及び表面結合生化学標的との高い特定リガンド結合活性を有することによって克服され得る。
【0026】
本開示のバイオセンサ物品の表面処理は、固定化された受容体密度、すなわち順番に目標とされたリガンドのための増加する捕捉容量を提供するバイオセンサに固定される受容体の数、を増やすことによって、そして、固定化された受容体の増加する活性又は有効性を提供することによって結果として生じるシグナルを強化する。
【0027】
本開示の界面化学は、他のタイプのLIDセンサである二面偏波干渉技術(DPI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)タイプのセンサと互換性を持ってもよい。
【0028】
実施例において、本開示は、例えば、基質又はセンサ表面上のタンパク質のような、生体分子を能率的に固定するための方法に関する。本開示は、特に標識独立検出(LID)のためのバイオセンサの場に役立つ。本開示は、特にLIDバイオセンサ及び調整法の界面化学に関する。
【0029】
本開示はより詳しくは、例えば、より高い密度で親和性捕捉及び以前に報告したものより高い安定性によって受容体(例えばタンパク質)を固定することができる化学的に修飾された表面を提供するための逐次的な方法に関する。開示によれば作製されるLIDバイオセンサは、周知の方法と比較してバイオ−分子識別事象の検出において、より高い感応性を有する。さらに、固定化表面は、一般な時間消費や資源変更など、いかなる事前活性化も必要としない。本開示は、特にそれらが表面プラスモン共振(SPR)、二相偏光干渉計法などに基礎をおいたLIDバイオセンサ(例えばEpic(登録商標)システム(Corning(登録商標)社))にかなり適している。
【0030】
LIDを有する生体分子認識事象の解析において、少なくとも一つの生体分子は導波路表面及び第2の分子パートナー若しくは補体にできるだけ近い基質に固定されなければならない。それは固定された生体分子を認識するか、又は、固定された生体分子によって認識されるか、固定された分子に反応又は結合する。結合は、局所質量増加により局所的に屈折率を変化させて、波長シフト又はSPRシグナルとして検出される。
【0031】
固定された受容体上のリガンドの吸着に因る局所の屈折率変化に基づくLID技術の故に、適当な界面化学は、リガンドをより大量に捕捉するために固定される受容体の数を増やすことによって、シグナルを強化することができる。さらに、界面化学はセンサ表面に確実に付着する受容体を保持しなければならない。実に、受容体の脱着は、容認できない波長シフトやSPRシグナルの大きな変動をもたらし、例えば新薬実体(物質)のような小分子の結合を全く隠すことになり得る。かかる受容体の脱着を防ぐために、センサ上の受容体の共有結合的付着は、共通して使われている。しかし、場合によっては、ランダム配向、構造上の変形などの重要点により、共有結合的固定化はタンパク質活性の部分又は完全損失に至り得る。
【0032】
高い結合応答を達成するために、高次の固定された生体分子を有することが望ましく、等しく結合事象に利用できる固定された生体分子を有することが望ましい。このことは、例えば、減少した結合応答に一般に至る立体障害効果を防ぐために、生体分子が自生又は活性配座であり且つセンサ表面上に良く配向されなければならないことを意味する。
【0033】
かかる生体分子の有用性及び良好な配向性を得るために、親和性捕捉による固定化は、共有結合的付着に対して一般に好適である。かかる親和性捕捉方法は、例えば、表面に予め付着したストレプトアビジン若しくはアビジンによって捕捉されるビオチン標識された分子に、又は、表面に前もって固定された金属イオンによって捕捉されるヒスチジン−標識分子に基づいている。これらの両方法とも、固定化ステップのための生体分子に対するタグの添加を必要とするが、固定された生体分子の優れた有用性及び良好な配向性を提供することができる。しかしながら、固定されたヒスチジン標識分子の場合、脱着は通常観察され、小分子の結合を隠され得る。
【0034】
本開示は、以前に報告されたものより高い密度で且つ高い安定性の親和性捕捉によって、続けて、基質上の受容体の共有結合的付着を導く化学処理ステップによって、受容体(例えばタンパク質)を固定できるバイオセンサ表面を提供する逐次的な方法を提供する。
【0035】
金属キレートアフィニティークロマトグラフィ(Porathによって報告された(J. Porath, et al., "Metal Chelate Affinity Chromatography, A New Approach to Protein Fractionation," Nature, 1975, Vol. 258, pg. 598))は、クロマトグラフィによるタンパク質の分別のための1つの周知の技術である。この技術は、金属イオン/イミノ二酢酸錯体によって予め機能化した固定相の上の選択的タンパク質を捕捉するようにする。
【0036】
Hochuliは、カルボキシメチルリジン(CML)基類を例えば、担体マトリックス上に移植することによって生成された新規な金属キレート樹脂を記載している。マトリックスに移植された基ニトリロ三酢酸(NTA)は、以前に報告されたイミノ二酢酸系の樹脂と比較してより強いNi2+付着を呈する効率的なキレート樹脂を提供する(米国特許第4,887,830号、ヨーロッパ特許第EP0253303B1号及びE.Hochuli等を参照のこと(U.S. Patent No. 4,887,830, Hochuli, et al., "Metal Chelate Resins," European Patent No. EP 0 253 303B1, Hochuli, et al., "Neue Metallchelatharze," and E. Hochuli, et al., J. Chromatogr., 1987, Vol. 411, pgs. 177-184)参照)。このニトリロ三酢酸基は、選択的に隣接ヒスチジン残基を含んでいるタンパク質及びペプチドを結合することができる。例えば、ニトリロ三酢酸化合物を調製する方法は、米国特許第4,877,830号に記載されている。
【0037】
この金属/キレート錯体安定性の有意改善により、ニトリロ三酢酸(NTA)/ヒスチジン−タグ(HT)の技術は、ヒスチジン残基を有するそれらのN−末端又はC−末端で修飾されるリコンビナントタンパク質及びエンザイムの単離及び精製のための強力な道具となった(K. Terpe, et al., Microbiol. Biotechnol., 2003, Vol. 60, pgs. 523-533)。
【0038】
NTA/金属/HT相互作用がタンパク質精製に適しているが、例えばバイオセンサ、表面被覆、結合研究などの長期の安定性を必要とする応用は、メタルリーチング及びタンパク質解離に関連した問題によって障害が生じる((例えば W. Jiang, et al., (W.チャン等) "Protein Selectivity with Immobilized Metal Ion-tacn Sorbents: Chromatography Studies with Human Serum Proteins and Several Other Globular Proteins," Anal. Biochem., 1998, Vol. 255, pgs. 47-58, and Mateo, et al., Biotechnol. Bioeng., 2001, Vol. 49, pgs. 313-334)を参照のこと)。Ni2+/NTA表面に対するHisタグされたタンパク質の固定化は、固定されたタンパク質と薬剤など更なるパートナーとの間の相互作用の動態学的作用が低い場合、安定性が特に必要となる。Hochuliによって示されるように、NTAに対する金属イオンの安定性がNTA基に対する金属の非常に高い親和性のために高いことは知られている。
【0039】
残念なことに、ヒスチジンタグ(Hisタグ)は、金属イオン上の低親和性だけによって結合している。Nieba等は、中性pHで10-6Mと解離定数を推定している(L. Nieba, et al., "Bioacore Analysis of Histidine - Tagged Proteins Using a Chelating NTA Sensor Chip," Anal. Biochem., 1997, Vol. 252, pgs. 217-228)を参照のこと)。これが固定された金属イオン−アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)によって、タンパク質精製のために受け入れられる一方で、センサ及び特にLIDセンサ上の固定化には適していない。これらの理由とその多数の効果にもかかわらず、NTA捕捉アプローチはLIDを使用しているリガンドスクリーニングに使われていない。なぜならば、必然的なタンパク質解離による結合応答では実質的な誤差を生じさせることが知られているからである(例えばGershonを参照のこと)。
【0040】
実施例において、本開示はNTA捕捉に基づく界面化学を提供するが、更なる改善を提供する。そして、それは例えばタンパク質解離を防ぐ。
【0041】
しかし、タンパク質解離のリスクにもかかわらず、Whitesides等は、タンパク質捕捉のためのSPRセンサ及びタンパク質/タンパク質相互作用の解析上のNTA化学作用の使用を記載している(例えば、G.B. Sigal, et al., "A Self-Assembled Monolayer for the Binding and Study of Histidine-Tagged Proteins by Surface Plasmon Resonance," Anal. Chem., 1996, Vol. 68, pgs. 490-497,及び U.S. Patent No. 5,620,850, Whitesides, et al., "Molecular Recognition at Surfaces Derivatized with Self-Assembled Monolayers"参照)。Whiteside等は、この方法がカルボキシル基化されたデキストラン層への共有結合的付着を含むことで、金表面上のタンパク質を固定するために歴史的に使われた方法に勝る多数の利点を提供すると述べている。実に、この界面化学は、共有結合性修飾によって成し遂げられるものより、抗体及び他のタンパク質によって認識できるタンパク質の高い百分率をもって、Hisタグを含むタンパク質の固定化が可能となる。
【0042】
残念なことに、Whiteside文献はまた、良く管理されたタンパク質定位によるNTA捕捉化学作用によって固定されるときに、タンパク質がより認識できることを示している。しかし、固定化タンパク質の量は、LID応用ではあまりに低いままである。Whitesidesは、NTAによって機能化された自己組織化単分子膜(SAM)が約1ng/mm2の捕捉されたタンパク質(約1,000のRU固定化応答)を産生すると報告した。かかる固定されたタンパク質の低収量がタンパク質/抗体又はタンパク質/タンパク質アッセイのような大きい分子相互作用アッセイに許容されるが、それは薬剤/タンパク質アッセイのような小分子/タンパク質アッセイには不適当である。周知のプロセスにより調製された弱い固定化性能は、LIDセンサを使用する新薬創製にてNTA捕捉化学を不適当なものとする。
【0043】
また、NTA単層の低い固定化容量の問題はGershon(P.D. Gershon, et al., "Stable Chelating Linkage for Reversible Immobilization of Oligohistidine Tagged Proteins in the Biacore Surface Plasmon Resonance Detector," Journal of Immunological Methods, 1995, Vol. 183, pgs. 65-76)によって研究された。そして、彼等はNTA修飾デキストランヒドロゲルでSPRチップを被覆することを提案した。この化学作用は、現在商品名NTAチップの下でBIAcoreから市販されている。デキストランマトリックスは3Dヒドロゲル(概して100nmの厚さ)を提供し、これは上記したNTA単層(SAM)に基づく界面化学で観察されるより、かなり非常に多くのタンパク質の捕捉を許容する。このNTAセンサチップが特に大きい分子相互作用研究に役立つが、それは固定されたタンパク質の限られた量でかつ高タンパク質解離の故に小分子相互作用には不適当なままである。
【0044】
タンパク質浸出の欠点を克服するために、他のストラテジは、良好なタンパク質安定性を確実にして、タンパク質解離を防ぐために親和性捕捉及び共有結合を結合する方法を記載している(WO 2004/046724;; U.S. Patent Publication No. US2006/0014232, to Inagawa, et al., "Immobilization Method"; and F.S. Willard, et al., "Covalent Immobilization of Histidine-Tagged Proteins for Surface Plasmon Resonance," Anal. Biochem., 2006, Vol. 353, pgs. 147-149参照のこと)。残念なことに、この方法は、重要な欠点がある。共有結合及び親和性捕捉が同時に実現するので、タンパク質付着は、表面の反応基及びタンパク質から反応基の間の特異性のない反応によって制御できない態様で実行される。これは特に不適当である。なぜなら、親和性によってタンパク質捕捉を選ぶ主な理由は、否定タンパク質が、良く定義された位置を有するタグだけによってセンサ表面に付着し、非特異的化学反応によってではないからである。他のストラテジは、NTAチップを使用して適用された。NTAチップ上のタンパク質の固定化後、EDC/NHS処理は、基質及び生体分子間の共有結合をつくるために固定された生体分子上で実行された((M.A. Wear, et al., "A Surface Plasmon Resonance-Based Assay for Small Molecule Inhibitors of Human Cyclophilin A," Anal. Biochem., 2005, Vol. 345, pgs. 214-226)を参照)。残念なことに、基質からの生体分子の解離がEDC/NHS処理の後、観察されなかった場合であっても、タンパク質浸出は活性化ステップの間、重要になるべく表れる。周知の方法の化学作用の本質的に弱い固定化容量に連結して、表面からのタンパク質浸出又は損失は、更に基質上の固定されたタンパク質の量の減少に貢献する。最後に、捕捉される生体分子の低い容量は、この化学作用が小分子認識事象に適しているのを防止する第一の欠点であるように見える。
【0045】
NTAキレート化基を金属ナノ粒子上の付着させる試みは、例えば金−ナノ粒子((Abad, et al., "Functionalization of Thioacetic Acid-Capped Nanoparticles for Specific Immobilization of Histidine Tagged Proteins," J. Am. Chem. Soc., 2005, Vol. 127, pgs. 5689-5694) を参照)又はマグネチック−ナノ粒子((Xu, et al., "Nitrilotriacetic Acid-Modified Magnetic Nanoparticles as a General Agent to Bind Histidine tagged Proteins," J. Am. Chem. Soc., 2004, Vol. 126, pgs. 3392-3393) を参照)について記載されていた。しかし、それらはナノ粒子のみに基づくだけでポリマー付のLIDセンサがどのようにの効率を高めるかについて、述べていない。
実施例において、本開示は、例えば、非常に高い固定化容量を有する親和性基礎界面化学を提供し、それは無標識検出と互換性を持ち、それは高安定なNTA−Ni−ヒスチジン錯体を提供し、そして、リガンド検出より先に実質的にポスト−固定化共有結合的付着反応を使用していかなるタンパク質解離を防ぐ。
【0046】
実施例において、本開示は、基質を有するバイオセンサ物品であって、
基質表面上にナノ粒子(NP)を有し、ナノ粒子が、金属イオンキレート化基(x)、イオン化可能基(y)及び表面実質的基(z)のうちの少なくとも1つを有する下記化学式(I)7
【0047】
【化1】

【0048】
{ここで、
Rは、水素又は置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の1から6の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル部分であり、
R’は、2から18の炭素原子を有する不飽和モノマーと無水マレイン酸との共重合から生じた、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の二価のヒドロカルビル部分であり、
R”は、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の1から10の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部であり、
Sは、基質に付着する少なくとも一つの付着点を含み、例えば、X置換基を介し重合体に共有結合して接着することができる基質表面基又は表面修飾基であり、
Wは、少なくとも一つの金属イオンキレート基から成り、少なくとも一つのタグを有する生体分子のための初期結合部位であり、例えば、金属イオンの非存在下での金属イオンキレート化基のような少なくとも一つの二座基であり、例えば、キレート化された金属イオンの存在下で少なくとも一つのタグを有する生体分子のための活性結合部位であることができ、
Xは、−NH−基、−NR−基又は−O−基及びそれら同類の二価基であり、
ここで、金属イオンキレート化基(x)、イオン化可能基(y)及び表面実質的基(z)のモル比x:(y+z)は、約2:8から約8:2であり、
ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有する}で示される重合体から成ることを特徴とするバイオセンサ物品を提供する。
【0049】
実施例において、本開示は、基質を有する細胞培養物品であって、
基質表面上にナノ粒子(NP)を有し、ナノ粒子が金属イオンキレート化基(x)、イオン化可能基(y)及び表面実質的基(z)のうちの少なくとも1つを有する下記化学式(I)
【0050】
【化2】

【0051】
{ここで、
Rは、水素又は置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の1から6の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル部分であり、
R’は、2から18の炭素原子を有する不飽和モノマーと無水マレイン酸との共重合から生じた、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の二価のヒドロカルビル部分であり、
R”は、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の1から20の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部であり、
Sは、基質に付着する少なくとも一つの付着点を含み、
Wは、少なくとも一つの二座基を含み、
Xは、−NH−基、−NR−基又は−O−基であり、
ここで、金属イオンキレート化基(x)、イオン化可能基(y)及び表面実質的基(z)のモル比x:(y+z)は、約2:8から約8:2であり、
ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有する}で示される重合体から成ることを特徴とする細胞培養物品を提供する。
【0052】
実施例において、Rは2から6の炭素原子を有しヒドロキシ置換された一価のヒドロカルビル部分である。
【0053】
実施例において、前記x:(y+z)の基のモル比は約1:1である。
【0054】
実施例において、Sは、金属酸化物、混合した金属酸化物、重合体、複合物若しくはそれらの組み合わせと、表面修飾基質又はそれらの組み合わせの少なくとも1つからなる。
【0055】
実施例において、Rは、2から4の炭素原子を有するヒドロキシ置換されたアルキルであり、R’は、2から10の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部分であり、R”は、3から6の炭素原子を有する置換若しくは非置換の二価のヒドロカルビル部分であり、Sは、アミノシロキサン処理されたガラス又はプラスチック基質であり、Wは、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、トリアザシクロノナン、アミノエチルエタノールアミン、トリエチレンテトラアミン、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシラート又はこれらの混合物の少なくとも一つから成り、Xは、−NH−基であり、x:(y+z)の基のモル比は約2:1から1:2であり、ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有する。
【0056】
実施例において、Rは、2から4の炭素原子を有するヒドロキシ置換されたアルキルであり、R’は、2から10の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部分であり、R”は、置換若しくは非置換の3から6の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部分であり、Sは、プラスチック基質であり、Wは、ニトリロ三酢酸から成り、Xは、−NH−基であり、x:(y+z)の基のモル比は約2:1から1:2であり、ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有する。
【0057】
実施例において、本開示は、記載されるような細胞培養基質を提供し、細胞培養基質に細胞を提供し、細胞培養基質上の適切な培地の細胞をインキューベートして、細胞を培養する方法を提供する。実施例において、本開示は血清の存在又は非存在において細胞培養基質上の細胞にサンドイッチ層を提供することを提供する。実施例において、細胞は肝細胞である。
【0058】
実施例において、例えば、(y)中のR基は、例えば、2から6の炭素原子を有しヒドロキシ置換された一価のヒドロカルビル部分、例えば、残る無水物基を有する重合体の生成物、及びエタノールアミンであり得る。実施例において、例えば、R基は、2から4の炭素原子を有し水素又はヒドロキシ置換され直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり得、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、及び、置換されたヒドロカルビル部分であり得る。
【0059】
実施例において、R’は、例えば、2から10の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部分であり得る。R’は、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、スチレン、及び、ヒドロカルビル部分などであり得る。特許協力条約/US2006/047885、12ページを参照のこと。
【0060】
実施例において、R”は、例えば、である、3から6の炭素原子を有する置換若しくは非置換の二価のヒドロカルビル部分であり得る。
【0061】
実施例において、Sは、例えば、金属酸化物、混合金属酸化物、重合体、複合物又はそれら組み合わせであり、例えば、Nb25、SiO2、Nb25/SiO2、環状オレフィン共重合体、及び基質に対する付着点のようなものの少なくとも一つであり得る。Sは例えば、アミノシロキサン処理されたガラス又はプラスチック基質であり得る。当該Sは、付加的又は択一的に、例えば、シラン類、GAPS、APS、MOPS及びそれらの変形又は組み合わせなどの表面被覆修飾された基質であり得る。
【0062】
実施例において、キレート化基Wは、例えば、イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トリアザシクロノナン(TACN)、アミノエチルエタノールアミン、トリエチレンテトラアミン、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシラート(クエン酸塩)、並びに、ビス、トリス及び多座配位性キレート性置換基類、それらの誘導体又はそれらの組み合わせの少なくとも一つであり得る。金属キレート基は、モノNTA、ビス−NTA、トリス−NTA、テトラキス−NTA、ポリ−NTA及びそれらの同類の基又はそれらの組み合わせであり得る。例えば、イオン化可能な基は、カルボン酸基及びそれらの同類の基又はそれらの組み合わせであり得る。
【0063】
実施例において、Xは例えば、−NH−(アミド酸)、−O−(ヘミエステル)及びそれらの同類の基又はそれらの組み合わせであり得る。実施例において、Xが−NH−であることが好適である。
【0064】
実施例において、モル比x:(y+z)は、例えば、約2:8から約8:2、約1:2から約2:1、約1から約1であり、これらの中間の値及び範囲をすべて含み得る。モル比x:(y+z)は、好ましくは、例えば、約1:1であり、例えば、ここで開示される典型的なEMA050NTA材料において見られる。
【0065】
実施例において、基質表面上のナノ粒子(NP)は、例えば、ナノ粒子、ポリマー皮膜又はナノ粒子及びポリマー皮膜の組み合わせの層であり得る。重合体のナノ粒子層は、例えば、「粉末又は雪(粒子)のコーティング」を有する相似性によるナノ粒子の外被又はコーティングであり得、そして、その層又はコーティングは例えば、完全又は不完全な基質表面被覆率を有することができる。ナノ粒子は例えば、約20からの約1,000nmまで、約20から約500nmまで、約20から約300nmまで、約20から約200nmまで、約20から約150nmまで、約20から約100nmまで、約20から約75nmまで、など約10から約1,000nmまでの厚さの粒径厚さの全ての中間域及び値を含む粒径厚さを有することができる。実施例において、ナノ粒子は例えば、約10から約60nmまで、そして、約20から約40nmまで、約10から約100nmまでの全ての中間域及び値を含む直径を有することができる。
【0066】
バイオセンサ物品を作るための1つの例示する調製手順の概要は、例えば、挿入物若しくはガラススライドなどの適切な基質を、APSを有する処理によって例えば得られる結着層又は変換皮膜により、被覆することを含む。次に、結着層処理された基質は、例えば、DMSO:IPA = 50/50 = v:vの1mg/mLの濃度のEMA050NTA溶液により、約10分の浸漬被覆又はポリマー撒布で行われ得る。すすがれて乾燥した重合体被覆基質は、エタノールアミンのような試薬の正味の又はボラート緩衝液などの適切な溶液によって、約30分、処理される。金属イオンは、例えば、40mMのNiSO4水溶液などの適切な金属塩水溶液の添加と約30分の間の撹拌とによって、重合体と複合化され得る。
【0067】
実施例において、重合体は、例えば、スペーサ(R”)、金属イオンキレータ(W)のような少なくとも一つの二座基及び任意に金属イオン(Mn+)によって誘導された骨格鎖の一部を有する、無水マレイン酸(MA)重合体又はエチレン−無水マレイン酸(EMA)共重合体の予め形成された誘導生成物であり得る。実施例において、例えば、重合体は、ナノ粒子装飾基質表面とスペーサ及び金属キレータを有する化合物(例えば、NTAとして知られているカルボキシメチルリジンCML)とを接触させ、そして、スペーサ基及び二座金属イオンキレータを付着したナノ粒子装飾基質表面と金属イオン水溶液とを接触させて、少なくともいくつかのキレート化した金属イオンを有するナノ粒子を形成する。
【0068】
図1Bは、表面(S)と会合する化学式(I)の重合体の典型的な構造を示す。理論によって制限されないが、化学式(I)の重合体のナノ粒子が、緩衝液培地などの特定溶液中において、位置調整可能にかつ方向反転可能に弛緩又は拡げることができて、付着の単一であるか極めて少ない点によって、湖の底に付かれる海藻に良く類似した伸展構造を提供できると考えられる。この伸展構造は、金属イオンが複合化でき、そして、タグを付けられた生体分子又は同類の実体が複合化できる所の点のより大きい数を提供することができる。
【0069】
実施例において、本開示は開示されたバイオセンサ物品を使用する方法を提供し、この方法は基質を接触させるステップを含む。当該基質は、小分子、Ab、タンパク質、細胞のような実体の上記の金属−イオン複合型ナノ粒子(NP)とHisタグされた実体標的を有する。それは、例えば、カルボニックアンヒドラーゼなどの少なくとも1つのHisタグすなわち標識を有し、Hisタグされた実体を固定し、そして、固定したHisタグされた実体を有するナノ粒子と安定化剤とを接触させ、そして、安定化したHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質を形成する。
【0070】
安定化剤は、例えば、NHS/EDCなどの試薬又は処理であり得る。安定化剤との接触から生じた安定化中間生成物は、分離される必要はない。必要に応じて、安定化中間生成物は、共有結合的リガンドの捕捉及び検出に直接使われることができる。使用方法は、安定化したHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質をリガンドに接触させ、結合リガンド(すなわち、例えば小分子、Ab、タンパク質、細胞のようなHisタグされた実体のためのリガンド又はHisタグ接合体形成部(His-tag conjugate-former))を有するHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質を形成する。Hisタグ標的親和性捕捉、安定化ステップ並びに共有結合的リガンド捕捉及び検出は図1Cにて略図で例示される。
【0071】
実施例において、ナノ粒子装飾基質とHisタグされた実体とを接触させること(すなわち固定化)は、例えば、約pH3から約pH9までで達成されることができる。ナノ粒子装飾基質とHisタグされた実体とを接触させることは、例えば、Hisタグされた実体のpIより上のpHで達成されることができる。
【0072】
実施例において、Hisタグされた実体固定化は例えば約1,500pmより大きく、そして、固定されたHisタグ実体の損失は例えば元々の固定されたHisタグされた実体の合計の約0.1重量%より少なく、ここで、一緒にされた増加した固定化及び安定性特性は約10ピコメートル(pm)より大きいバイオセンサ結合応答を有するバイオセンサに提供する。バイオセンサは、例えば、表面プラスモン共振バイオセンサ、導波管共鳴回折格子バイオセンサ、インピーダンスバイオセンサ、質量分析バイオセンサなどの装置又はそれらの組み合わせの少なくとも一つである。
【0073】
実施例において、本開示はリガンドのアッセイを実行する方法を提供し、当該方法は、ここで開示のリガンド及びバイオセンサ物品を接触させることと、もしリガンドがHisタグされた実体に結合した場合、バイオセンサのリガンド−誘導応答を検出すること、を含む。
【0074】
実施例において、Hisタグされた実体は、例えば、自然若しくは合成のオリゴヌクレオチド、自然又若しくは合成の核酸(DNA又はRNA)、自然のペプチド、天然ペプチド若しくは一つ以上修飾又は遮断アミノ酸が任意に有する合成ペプチド、抗体、ハプテン、生物学的リガンド、タンパク質膜、脂質膜、タンパク質、約500ダルトン未満の分子量を有する小分子、細胞又はそれらの組み合わせ若しくは接合体のうちの少なくとも一つであり得、ここでHisタグされた実体は、例えば1つのHisタグ又はHis標識、そして、より好ましくは、約2から約6などの中間の値及び範囲を含む1以上のHisタグ又はHis標識を有する。
【0075】
実施例において、リガンドは、例えば、刺激、治療候補物質、予防候補物質、予防試薬、化学物質、生体分子、ペプチド、タンパク質、生体試料、約500ダルトン未満の分子量を有する小分子、生物学的薬物分子候補物質、薬剤候補物質小分子−生物学的接合体、病原、細胞又はそれらの組み合わせの少なくとも一つであり得る。リガンドはHisタグ又はHis標識を含むことができると共に、リガンドは開示の結合又はバイオセンシング実施例の際に動作するHisタグ又はHis標識を含む必要はない。
【0076】
実施例において、本開示は、ここで開示されるようにバイオセンサ物品を使用する方法を提供し、例えば、当該方法はHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質と安定化剤を接触させ、安定化したHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質を形成することを含む。方法は、結果として生じた安定化したHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質とリガンドとを接触させ、結合リガンドを有するHisタグされた実体を有するナノ粒子装飾基質を形成することを更に含むことができる。
【0077】
実施例において、本開示はバイオセンサ又は細胞培養ために、上記の方法によって調製される物品を提供する。
【0078】
実施例において、例えば、化学式(I)の重合体は、下記の化学式I(a)であり得る。
【0079】
【化3】

【0080】
実施例において、例えば、化学式(I)の重合体は、下記の化学式I(b)であり得る。
【0081】
【化4】

【0082】
実施例において、例えば、Ni2+など金属イオンによって錯体化したときの化学式(I)の重合体は、下記の化学式I(c)であり得る。
【0083】
【化5】

【0084】
共鳴回折格子センサ又はSPR−センサなどのLIDバイオセンサが使われるときに、マイクロメートルの厚さゲルを作り、エバネセント場波が表面から最初の100から約200nmの程度の深さで検出できるだけで不適当である。このように、センサ表面から約200nmを越えてゲルにおいて捕捉された生体分子はエバネセント場波に効果的には不可視であり、約200nmを越えて起こっているいかなる生体分子認識事象も検出されない。この状況は容認不可能な高い生体分子の消費量を生じさせて、貴重なタンパク質を巻き込む高流量システム(HTS)応用のための適応できることを更に制限する。
【0085】
実施例において、本開示は、合成重合体に基づく界面化学物質を提供し、それは容易にLIDセンサ表面に付着できて、非常に高い固定化容量を有し、固定された生体分子の良好な有用性及び活性を提供して、無標識検出方法論と互換性を有する。作製方法は実行するのが簡単で、例えば、拡大製造と互換性を持ち、重合時間も洗浄時間も長く必要としない。
【0086】
実施例において、本開示は、合成重合体に基づいて界面化学を提供して、それは細胞培養応用に適している基質に付着させることができる。実施例において、界面化学物は基質の表面上のナノ粒子層である。実施例において、例えば、細胞培養応用に適している基質は、ガラス、金属、セラミック又は重合物質であってもよい。適切な重合物質は公知技術のいかなる基質でもあってもよく、例えば、ポリアクリラート、ポリ(メチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリヒドロキシ酸、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリプロピレン、ポリホスファゼン類、ポリリン酸エステル、ポリエステル、環状ポリオレフィン共重合体又はそれらの混合物を含むことができ、それは修飾表面(例えばプラズマ処理)でも未処置でもよい。実施例において、適切な細胞培養物品は、マイクロウェルプレート、スライド、フラスコ、細胞スタック又は多層細胞培養物品(例えばコーニングのHyperFlask(登録商標)又はHyperStack(登録商標)製品)を含む。実施例において、基質の表面上のナノ粒子層は、化学式Iの重合体である。実施例において、金属キレート性基(x)にキレート化される金属がない場合の基質の表面上のナノ粒子層は化学式I(a)又は化学式I(b)である。実施例において、細胞培養応用のためのナノ粒子層は、図1Bにおいて例示されるナノ粒子層である。実施例において、細胞培養物品は初代細胞(例えばヒト初代肝細胞)を含んでいる細胞培養に適していて、例えば、細胞株がHepG2/C3A(ATCC#CRL−10741(3−20の通路))、HepG2(ATCC#HB−8065(3−20の通路))、Fa2N−4(XenoTech(通路32−34)から市販されている)、等を含む。これらの細胞は、例えば、XenoTech、インビトロジェン等から市販されている培地を含んでいるいかなる適切な培地でも培養され得る。
【0087】
コラーゲンIと関連した合成EMA−NTAの表面(図1Bに示すように)上のヒト初代肝細胞の4時間の付着を比較した実験は、血清培養条件のコラーゲンIに対する同様の4時間、合成EMA−NTA表面がヒト初代肝細胞の付着を支持することを示す。胆細管及び頂端部の発現は、培養での肝細胞のための生理的に関連したマーカーである。MRP2トランスポータは、肝細胞間の頂端部での胆細管構造のマーカーであって、培養の細胞の細胞膜極性の回復の程度を示す。拡張されネットワーク化された胆細管構造は、細胞極性及びより生体内様の細胞形態の良好な(生体内様の)回復を示す。EMA−NTA表面は、コラーゲンと同様の性能を示し、Matrigel(登録商標)層(サンドイッチ層)を付けない場合は、肝細胞極性(生体内様の形態)は回復しない、そして、Matrigel(登録商標)層(サンドイッチ層)を付けた場合は、肝細胞極性(生体内様の形態)は他の実験的な細胞培養表面(データなし)上の細胞成長より比較的大きい程度に戻される。図17、図18及び19は、拡張されネットワーク化された胆細管構造を示す(図17は、コントロール面を例示する)。
【0088】
血清の存在及び非存在下での細胞の培養を支持するEMA−NTA表面の機能を試験する実験は、血清の存在及び非存在下のEMA−NTA表面上で細胞がうまく培養されことを示す。例えば、図15は遺伝子発現が血清の存在下でEMA−NTA表面全体でより均一に分布されることを示す。図19は、血清のある基準培養条件の場合より、血清のない条件(図19B)の細胞のより多くの密集及びクラスター形成があり得る様子を示す。(血清がある場合のEMA−NTA表面上の図17、図19Aを参照)。胆細管構造は、細胞が血清なしの培養条件下で密集しクラスター化する領域において、より拡張し相互に連結しているように表れる。これは、血清なしの条件(図15参照)において観察される機能(遺伝子発現)の軽度の上昇を説明することができる。
【0089】
記載されている調製方法を使用することによって、Epic(登録商標)システム(コーニング社)のような市販のLIDシステムによって、そして、細胞培養物品の調製物によって、充分に互換性を持つ基質の表面上の非常に再生可能なナノ粒子層が得られる。
【0090】
基質の表面上のナノ粒子層は、実施例で記載したように生体分子の強化された捕捉を提供する。基質の表面上のナノ粒子層は、例えば、SEM又はAFM方法によって測られるように、約10から約100nmであり得る。
【0091】
タンパク質の非常に高い固定化レベルが得られ且つ高い活性が決定された得るで、開示の被覆センサ物品は、タンパク質と例えば小分子の非常に低い分子量分子の間で起こっている結合事象を検出することに適している。
【0092】
択一的又は追加的反応性コモノマは選ばれ得、当該コモノマは、アルデヒド、アジド、エポキシ、イソシアネート、イソチオシアネート、塩化スルホニル、炭酸塩、マレイミド、アシルイミダゾール、アジリジン、イミダゾールカルバミン酸エステル、スクシンイミジルエステル及びスクシンイミジル炭酸塩、ヒドラゾン、イミノ二酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリアザシクロノナン、チオール、ピリジンジスルフィドのような置換されたジスルフィド基、並びに、これら同類の群を含み、又は、in-situ重合の後、当該コモノマは、アルデヒド、アジド、エポキシ、イソシアネート、イソチオシアネート、塩化スルホニル、炭酸塩、マレイミド、アシルイミダゾール、アジリジン、イミダゾールカルバミン酸エステル、スクシンイミジルエステル及びスクシンイミジル炭酸塩、ヒドラゾン、イミノ二酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリアザシクロノナン、チオール、ピリジンジスルフィドのような置換されたジスルフィド基、並びに、これら同類の群へ変えられ得る。例えば、本開示によって使われ得る反応基の区画は、「バイオコンジュゲート技術(Bioconjugate Techniques, Greg T. Hermanson, Academic Press, 1996)」において開示される。反応基がモノマー混合物の重合を妨げそうなときに、反応基は、例えば、in-situ重合の後、導入れされるか、又は保護基方法を使用して保護され得る。
【0093】
本開示は、ここで例示されるように劇的にアッセイ感応性を強化するタンパク質活性をかなり改善すると共に、予想外に高いタンパク質固定化容量を有するLIDセンサを調製するためのプロセスを提供する。本開示のバイオセンサ物品の固定化及び結合応答は、他の周知の界面化学のものを上回る。例えば、ここで開示されるフロセミド/カルボニックアンヒドラーゼアッセイのためのEpic(登録商標)結合応答は、WO2007/078873に記載されている方法によるセンサで得られたものより高い、例えば、少なくとも約2倍から約10倍である。
【0094】
実施例において、開示のセンサは、提供される高い結合応答のために、薬剤又は他小分子の高い流量スクリーニング(HTS)と互換性を持つ。また、例えば約500ダルトン未満の分子量を有する断片非常に低い分子量化合物さえ、高い結合応答のためにこのセンサを使用してスクリーニングができる。
【0095】
実施例において、本開示は低タンパク質濃度を使用している無標識検出のためのセンサの調製物を許容し、これは他のLID技術と比較して解析当たりのコストを実質的に減少し得ることを示唆する。
【0096】
実施例において、本開示は、強粘着細胞(チャイニーズハムスター子房(CHO)細胞、ヒト上皮癌A431細胞など)や中間付着細胞(RMS13細胞など)や弱付着細胞(ヒト胎生期腎臓(HEK)など)を含む多くの種類の細胞の付着、培養及びアッセイに適している表面を提供する。
【0097】
本開示は、バイオセンサの表面が細胞培養及び次の細胞アッセイと互換性を持ち敏感に応答するようにバイオセンサの表面を修飾する方法を提供する。開示された方法は、共鳴導波路回折格子バイオセンサに使用されるような酸化金属薄膜表面や表面プラスモン共振(SPR)に使用されるような模様なしの金表面や電気インピーダンス系のバイオセンサに使用されるような模様付の金表面に適している。
【0098】
本開示は、ここで定義されるような細胞培養物品と、ここで定義されるような細胞培養物品を調製する法と、ここで定義されるようなリガンドのアッセイを実行する方法とから、最適に、又は本質的に成る。実施例において、本開示は、基質と、少なくとも基質に付着する任意の結着層と、任意の結着層若しくは基質に又は両方に付着する、開示された重合体の生物学的適合性層と、から成る細胞培養物品を提供する。
【0099】
基質は例えば、プラスチック、重合体又は共重合物質、セラミック、ガラス、金属、結晶性材料、貴金属又は半貴金属、金属又は非金属の酸化物、遷移金属又はそれらの組み合わせから成る。実施例において、結着層は、例えば、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アクリル酸、有機又は無機酸、エステル、無水物、アルデヒド、エポキサイドなど基及びそれの塩並びにそれらの組み合わせから成る一つ以上の反応性官能基から成る化合物から、得られる。結着層を形成するための材料の選出は、基質の素質に依存する。例えば、シランは優れた結着層であり、結着層は例えばガラス、SiOx性基質、TiO2、Nb25、Ta25、HfO2及びそれらの混合物又は同類の基質などの酸化された無機基質と協働する。又は付加的に、上述した無機基質はSiOx層を積層させることもできる。金基質が選ばれるときに、チオール化合物は優れた結着層であり得る。ポリマー基質が使われるときに、ポリリジンのような正帯電された重合体は優れた結着層であり得る。
【0100】
実施例において、例えば、結着層は、直線若しくは分枝鎖アミノシラン、アミノアルコキシシラン、アミノアルキルシラン、アミノアリールシラン、アミノアリールオキシシラン、又は同様のシラン若しくはそれらの塩若しくはそれらの組み合わせから得ることができる。結着層を形成するために用い得る化合物の具体的な例としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ベータ−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ベータ−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N’−(ベータ−アミノエチル)−3−アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルシルセスキオキサン、又は同様のシラン若しくはそれの塩若しくはそれらの組み合わせがあげられる。好適な実施例において、結着層は、例えば、アミノプロピルシルセスキオキサンであり得、例えば、重合体は、ポリ(アルキレン−co−無水マイレン酸)であり得、そして基質は、例えば、マイクロプレート又は顕微鏡スライドであり得る。実施例において、結着層は、例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン、又は同様な実質的重合体若しくはそれらの組み合わせがあげられる。Pludemannは、シランカップリング剤(1982)において、シリコーン弾性体、又は、物品又は器具などのゴム応用品、そして、それらの応用のような表面改質剤に言及している。シリカ材料及び関連した金属酸化物材料の追加の定義、説明及び方法として、例えば、R. K. Iler, The Chemistry of Silica, Wiley-Interscience, 1979を参照されたい。
【0101】
実施例において、例えば、生物学的適合性ナノ粒子ポリマー層は、約10オングストロームから約2,000オングストローム、約10オングストロームから約1,500オングストローム、約10オングストロームから約1,250オングストローム、約10オングストロームから約1,000オングストローム、又は約10オングストロームから約100オングストロームの厚さを有することができる。実施例において、バイオ互換層を形成するポリマー層は初期に連続であるならば、延伸又は活発な酸化プロセス中に裂かれ又は砕かれ得て、バイオ互換層を提供でき、かかるバイオ互換層は下にある結着層又は基質表面のほとんど適用範囲を有する間隙又は領域を含み、結果として、非連続的層又は薄膜であるバイオ互換ナノ粒子ポリマー層が得られる。同様に、バイオ互換のナノ粒子ポリマー層の非連続的層又は薄膜は、初期の不連続なポリマー層のより少ない延伸又はより少ない活発な酸化から生産でき得る。したがって、例えば、裂けたエリアを有する生物学的適合性のナノ粒子ポリマー層又は非連続的層は約10から約200オングストロームの層の厚さを有することができる。実施例において、ナノ粒子重合体は、まで金属イオンでの錯体化の前後に約10オングストロームから約2,000オングストロームの厚さを有することができる。
【0102】
本開示の強みは、例えばTopas(登録商標)COC基質(TOPAS Advanced Polymers, Inc.,社から入手可能)のような、他のガラス、基質、金属、プラスチック基質、材料又はそれらの組み合わせを含んでいる他の基質に適用できることである。2008年8月29日に出願の共通に所有される出願中の米特許出願第12/201,029号には、プラズマ処理された環状ポリオレフィン共重合体表面が生理活性物質及び細胞のための強化された結合密度を有いている、ことが記載されている。これらのプラズマ処理された環状ポリオレフィン共重合体表面は、本開示の基質と同じものとして選ばれることができる。
【0103】
Nb25導波路表面はバイオセンサ系細胞アッセイに良く適しており、それは暴露のNb25バイオセンサ表面の上、又はナノ粒子重合体被覆Nb25バイオセンサ表面の上に細胞を付着させることができ、バイオセンサシステムの検出領域の近い接近にて会合する細胞を有することができる。
【0104】
実施例において、本開示は、重合体ナノ粒子(すなわち金属キレート性基及びイオン化可能な基の両者を有する重合体でできているコロイド状の重合体粒子)を有する層から成る金属キレート界面化学を有する無標識検出のためセンサ及びプロセスを提供する。生体分子固定化の後の第2のステップにおいて、化学処理ステップは固定された生体分子及びバイオセンサ表面間の共有結合的相互作用を作り、そして、それは解離を排除する。
【0105】
我々は驚くべきことに、固定された生体分子及び基質の間の第2の共有結合ステップを有しNTA基を担持する重合体ナノ粒子に基づく化学作用が、非常に高いタンパク質固定化容量を有しタンパク質解離のないセンサ表面を提供することによって、周知の欠点を克服することを発見した。そして、それはこのセンサ表面を、LIDを使用している低分子量薬剤スクリーニングと非常に互換性を持つようにする。
【0106】
重合体ナノ粒子を有する金属キレート表面は、無水マレイン酸共重合体及びキレート性基(例えばNTA)を担持している化合物の間の反応によって容易に調製され得る。NTA修飾された無水マレイン酸共重合体は、無水マレイン酸共重合体と、無水物基に反応し得、それぞれ、エステル、チオエステル、イミド又はアミド基の形成を導く少なくとも一つのNTA基、少なくとも一つのチオール、少なくとも一つのヒドロキシル基又は少なくとも一つのアミノ基を有する1つの反応物と、の反応によって得られる。好ましくは、反応物はEP0253303B1(Hochuli等、「Neue Metallchelatharze」)に記載されている化合物から選ばれる。より好ましくは、化合物は、N,N−ビス(カルボキシメチル)−L−リジン二ナトリウム塩一水和物などのN,Nビス−(カルボキシメチル)−L−リジン二ナトリウム塩一水和物である。
【0107】
NTA−無水マレイン酸ナノ粒子のサイズは、約5から200nmまでが好適である。重合体骨格鎖のNTA基及びイオン化可能基の間の比は、例えば、約1未満で且つ約0.33を超える。このように、NTA:COOHの比は、約1:1から約1:3であり得る。
【0108】
第2のステップにおいて、生体分子固定化の後、EDC/NHSなどの試薬での処理は、カルボン酸基を活性化し、親和性固定生体分子及び基質の間の共有結合をつくる。
【0109】
本開示は、親和性化学作用に非常に高い固定化容量を提供し、それは結合事象を検出し観察することにとって重要である。開示の界面化学は重合体ナノ粒子の層を提供し、それは高タンパク質/ターゲット固定化を提供する。例示の実施例において、重合体EMA050NTA(すなわちNTA基によって誘導された半分又は50mol%無水物の部分を有するエチレン−無水マレイン酸共重合体)は、i)2D界面化学に至る100%の良溶媒(すなわち、粒子なし)中;又は、ii)ナノ粒子を有する3D界面化学に至る混合溶媒中;のどちらかの中で金チップ上に被覆された。キレート化ニッケルを形成する為のニッケル水溶液の更なる添加のあと、タンパク質固定化は実行された(図3)。SPR応答は、コーティングが重合体ナノ粒子を含むときに、固定化レベルでは例えば2倍又は3倍の大きい明らかに有意な改善を示した。加えて、タンパク質固定化は、同じ実験条件を使用して開示のナノ粒子層を被覆したBiacoreのNTAチップと金チップに作られた。SPR応答も、商用のチップ(図4)と比較して、開示された表面上の2倍又は3倍の応答と、非常に高い固定化レベルを示した。加えて、タンパク質浸出は、BiacoreのNTAチップと比較して開示の表面ではかなりより低く表れる。実施例において、開示された物品及びアッセイプロセスは、EDC/NHSを有する活性化ステップの後でも、高タンパク質固定化を維持する。
【0110】
実施例において、本開示は固定されたターゲット生体分子及び基質の間の共有結合的付着を使用しているタンパク質解離を防ぐ。実施例2において、Hisタグカルボニックアンヒドラーゼ(II)は、NTA/Ni−イオン複合物を有するナノ粒子ポリマー層に固定された。EDC/NHS処理が実行されるときに、タンパク質浸出はフロセミドリガンドを有する値を結合している高量に至っているのは見られなかった。逆に、EDC/NHS処理なしで、タンパク質及び基質間の相互作用は親和性相互作用だけに基づき、そして、表面からのタンパク質の解離が観察された(図6)、この可逆性がアフィニティー法の固有の局面であって、従って有意結合値(図5)を有しない。この例では、どのpHがタンパク質のpIより高かったか、など固定化のための高いpH緩衝液を使用することは、結合結果に関し衝撃を有しなかったことに、注意することが重要である。
【0111】
さらに、我々は驚くべきことに、EDC/NHS処理ステップを実行することは最高結果にとって重要であるということを発見した。特に、EDC/NHS処理がタンパク質固定化及び現在の固定化方法の前に適用される文献の方法を区別することは重要である。そして、それは2つのステップにおいて達成される。最初に、例えば、タンパク質はEMA050NTA−Niと称され親和性表面に固定され、そして、第2に、EDC/NHS処理は固定されたタンパク質上で実行される。実施例3は、固定化レベル及び結合結果が比較研究法(図5及び7、8及び10及び11及び12)と比較して大幅に改善されているので、この第2のステップの重要性を示す。
【0112】
実施例4及び5はEMA050NTA−Ni化学作用上のタンパク質固定化の特異な局面を示し、非タグのカルボニックアンヒドラーゼがEMA050NTA−Ni表面(図9)に添加された時に、並びに、ヒスチジン−タグを付けられたカルボニックアンヒドラーゼがニッケル処理(図10)のないEMA050NTA表面に加えられた時に、有意固定化レベルが得られなかった。
【0113】
実施例において、本開示は非常に高いタンパク質固定化容量、高い観察されたタンパク質固定化及び高い結合応答を有するセンサ及びバイオセンサ表層のための調製方法を提供する。
【0114】
開示された方法及びセンサは、進歩的であって、いかなる無標識検出プラットフォーム(例えばSPR、共鳴回折格子、Epic(登録商標)センサプレート又は二相偏光干渉計法)にも、任意にマイクロ流体システムを含むものにも互換性を持つ。
【0115】
本開示は、特にタンパク質ターゲットのpIより上のpHレベルで、広いpHの上のタンパク質の固定化を許可する方法を提供する。
【0116】
図を参照すると、図1Aは、ナノ粒子から成る化学式(I)の重合体の概略図を示す。図1Bは、上記した。図1Cは、親和性捕捉、共有結合形成及びリガンド捕捉ステップを例示する。
図2Aは、NTA誘導されたEMAナノ粒子のSEM像である。図2B及び2Cは、それぞれ、EMA050NTAナノ粒子だけによって処理されたSEM像及びエタノールアミン遮断剤及びニッケルイオンによって処理されていたEMA050NTAナノ粒子のSEM像を示す。
【0117】
図3は、実施例2のナノ粒子マクロ組織ありの表面のためのSPR応答を示し(310)、そして、ナノ粒子マクロ組織なしの(300)場合のSPR応答を示す。
【0118】
図4は、実施例3(410)と比較される市販のNTAチップ(400)を使用しているSPR応答を示す。
【0119】
図5は、親和性表面上だけ(500、510)と実施例4の親和性/共有結合的表面上(520、530)とのHisタグCAII固定化レベルの比較を示す。
【0120】
図6は、親和性表面(600、610)上と、実施例4の親和性/共有結合的表面(620、630)上のタンパク質浸出応答の比較を示す。
【0121】
図7は、親和性表面上だけ(700、710)と実施例4の親和性/共有結合的表面上(720、730)との結合値の比較を示す。
【0122】
図8は、親和性表面(800)上と、市販製品の親和性/共有結合的表面(Ni2+イオンのある810、Ni2+イオンのない820)上と、実施例5の親和性/共有結合的表面上とのHisタグCAII固定化レベルの比較を示す。
図9は、親和性表面(900)上と、市販製品の(Niイオンの910、Niイオンのない920)の親和性/共有結合的表面上と、そして、実施例5(930)の親和性/共有結合的表面上と、のタンパク質浸出又は解離応答の比較を示す。
【0123】
図10は、親和性表面(1000)上と、市販製品の親和性/共有結合的表面(Niイオンのある1010、Niイオンのない1020)と、実施例5の親和性/共有結合的表面上(1030)との結合値の比較を示す。
【0124】
図11は、実施例6の親和性/共有結合的表面上のCAII(すなわち、CA2)又はHisタグCAII固定化レベル(1100が酢酸塩でのHisタグCA2;1110が酢酸塩でのCA2;1120がHEPESさらに塩でのCA2;1130がHEPESさらに塩でのHisタグCA2)の比較を示す。
【0125】
図12は、実施例7のニッケルイオン処理の有る場合と無い場合の親和性/共有結合的表面上のHisタグCAII固定化レベル(1200が酢酸塩でのEMA050NTA;1210がHEPESさらに塩でのEMA050NTA;1220が酢酸塩でのEMA050NTAと+Niイオン;1230がHEPESさらに塩でのEMA050NTAと+Niイオン)を示す。
【0126】
図13は、コラーゲンIと関連するEMA−NTA合成の表面(図1Bで示す)上の4時間付着のヒト初代肝細胞を示す。合成表面EMA−NTAは4時間の血清培養条件のコラーゲンIと同様にヒト初代肝細胞の付着を支持する。
【0127】
図14は、コラーゲンIと関連してEMA−NTA合成表面(図1Bに示すような)上のヒト初代肝細胞の付着(24h)及び保持(7d)の比較を示す。合成EMA−NTA表面は、24時間及び7日間のコラーゲンと同様のヒト初代肝細胞(血清あり及び血清なし)の付着を支持する。
【0128】
図15は、コラーゲンIと関連するEMA−NTA合成の表面(図1Bに示すように)上で培養されたヒト初代肝細胞の3つの主要な代謝遺伝子(CYP450)の相対的遺伝子発現を示す。合成EMA−NTA表面は、生物学的表面、血清を有するコラーゲンI(業界標準)と関連した機能上の効果(増加遺伝子発現)を示す。血清なしの条件は、EMA−NTA表面上のCYP2B6及びCYP3A4の遺伝子発現の上昇を導く。
【0129】
図16は、例えば、コラーゲンなどのタンパク質、細胞間マトリックス、Matrigel(登録商標)又はその組み合わせであり得るサンドイッチ層1740の存在におけるものと、単独のものとでの基質1720単独上のポリマー層1730上の細胞1710の概略図である。サンドイッチ層は、例えば、コラーゲンのようなタンパク質、細胞間マトリックス又はMatrigel(登録商標)又はその組み合わせであってもよい。Matrigel(登録商標)は、BD(フランクリンLakes(NJ))によって製造する腫瘍細胞抽出エキスである。細胞間マトリックスは、細胞間の細胞外空間に存在するタンパク質をいう。細胞間マトリックスは、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチンラミニン及びグリコサミノグリカンなどのタンパク質であり得る。
【0130】
図17A−Cは、正常肝組織の顕微鏡写真(図17A)と、コラーゲンI被覆基質上で成長した肝細胞(の顕微鏡写真図17B、図16Aにて図示したような被覆基質上)と、コラーゲンI被覆基質上で成長しMatrigel(登録商標)サンドイッチ層によって被覆されMRP2トランスポータを示すために蛍光染色された肝細胞の顕微鏡写真(図17C、図16Bにて図示したように、)である。MRP2トランスポータは、肝細胞間の頂端部での胆細管構造のマーカーであって、細胞膜極性の回復の程度を示す。図17Bは、(白矢によって示される)の小さいしみ点のように見える胆細管様の構造を示す。図17Cは、(白矢によって示される)拡張されネットワーク化された胆細管構造を示し、細胞極性及びより生体内様の細胞形態の(生体内様の)良好な回復を示している。図17は、これら胆細管構造が、正常肝組織に、コラーゲンI被覆基質上で成長した肝細胞に、コラーゲンI被覆基質上で成長しMatrigel(登録商標)サンドイッチ層によって被覆された肝細胞に存在すること示す。
【0131】
図18(A及びB)は単独の合成EMA−NTA表面上にて成長した肝細胞の顕微鏡写真(図18A)であり、そして、Matrigel(登録商標)サンドイッチが存在する場合のものの顕微鏡写真(図18B)であり、MRP2トランスポータを示し、胆細管構造(白い矢によって指示した)の存在を示すために染色されている。EMA−NTA被覆表面は、コラーゲンと同様の性能を示す。Matrigel(登録商標)被覆(サンドイッチ)なしの場合、胆細管のような構造は、染色された(白矢によって示される)の小さい点として現れる。Matrigel(登録商標)被覆については、染色された(白矢によって示されるように)延長線は、極性及び胆細管構造(生体内様の形態)の回復を示す。Matrigel(登録商標)被覆(サンドイッチ)を有する合成EMA−NTA表面上の成長した肝細胞は、肝細胞極性を呈する。生体内様の形態は、他の実験的表面(データは示されない)上の細胞より大きい程度に戻される。
【0132】
図19(A及びB)は、血清がある場合においてMatrigel(登録商標)サンドイッチの存在下での合成EMA−NTA表面に成長した肝細胞の顕微鏡写真(図19A)と、血清の非存在下でのMRP2トランスポータを示すために染色されたものの顕微鏡写真(図19B)である。血清あり及び血清なしの培養条件における肝細胞極性及び形態学的マーカーは、両条件が細胞培養及び胆細管構造の発達を支持する。細胞は、血清がある場合、EMA−NTA表面全体により均一に分布され得る。血清のない条件の場合には、血清がある基準培養条件の場合より細胞のより多くの密集及びクラスター形成がある。胆細管構造は、血清なしの培養条件下で細胞がクラスター化した領域において、より拡張し且つより相互に連結しているように見える。これは、血清なしの条件において観察される機能(遺伝子発現)の軽度の上昇を説明することができる。図19は、合成EMA−NTA表面が血清の非存在下で肝細胞及び他の細胞を培養することに役立ち得る合成表面を提供し得ることを示す。
【実施例】
【0133】
以下の実施例は、上記の開示を使用する方法をより充分に記載し、開示のさまざまな局面を実行するために考察される最良の形態を記載するために、役立つものである。これらの実施例が決してこの開示の範囲を制限せず、例示する目的のために示されると理解される。実施例は、比較例と比較される開示のLIDセンサを調製して、使用する方法を記載する。
【実施例1】
【0134】
ナノ粒子を実行するEMA−NTA(EMA050NTA)表面の調製:
0.96gのエチレン−alt−無水マレイン酸共重合体(EMA)は約1時間の撹拌の下で100mLの無水DMSOに溶かされた。予め調製されたEMAの水溶液に、0.92gのビス−(CML)(すなわちN,N’−ビス[カルボキシメチル]−Lリジン(ニトリロ酢酸)(NTA)(オールドリッチChemicalから入手可能))が添加された。使用するNTAの量は、無水物基の約50mol%をNTA基へ転換することに必要とする量と一致する。結果として生じる水溶液は、室温で、48時間かき混ぜられた。それから、この水溶液はDMSOで約500mLまで希釈され、そして、500mLの無水IPA(50/50v/v)は、撹拌を伴って約1時間で添加され、動的光散乱(DLS)(約30nm)及びSEM(図2B及び2C)によって特徴づけられる重合体ナノ粒子(EMA050NTA)を形成した。
【0135】
NTA修飾された無水マレイン酸共重合体(すなわち、EMA−NTA)は、エチレン−無水マレイン酸共重合体(すなわちEMA)などの無水マレイン酸重合体と、無水物基に化学反応可能でそれぞれのエステル、チオエステル、イミド又はアミド基の形成を導く少なくとも一つのニトリロ酢酸基(例えばNTA)及び少なくとも一つのチオール、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する反応物と、の反応によって、実施例1において得られた。例えば、反応物はEP0253303B1に記載されている化合物から選ばれることができる。例えば、好適な化合物は、N“,N“−ビス[カルボキシメチル]−Lリジン(ニトリロ酢酸)(NTA)、(ビス−CMLとして知られている)又はそれの塩、例えばN,Nビス−(カルボキシメチル)−L−リジン二ナトリウム塩一水和物である。例えば、NTAの他の名前は、AB−NTA;アミノブチル−NTA;N−(5−アミノ−1−カルボキシペンチル)イミノ二酢酸を含む。
【0136】
DI水中のアミノプロピルシラン(APS)の5wt%水溶液は、市販の20重量%水溶液から調製された。それから、384−ウェルEpic(登録商標)挿入物は、10分間、APS溶液のアリコートで浸漬して被覆された。2時間から約24時間のインキューベートの後、APS水溶液は除去され、水での三回の洗浄がなされ、無水エタノールで三回なされ、それから窒素流によって乾燥された。
【0137】
乾燥の後、APSの事前被覆された挿入物は、事前に調製されたEMA050NTAナノ粒子の懸垂液で、室温で、10分間インキューベートされた。それから、挿入物はエタノールで清浄されて、穏やか窒素流れによって乾燥された。
【実施例2】
【0138】
金チップ上に暴露のEMA050NTAを被覆するナノ粒子マクロ組織が存在及び非存在する場合の表面上のSPR応答:
無水エタノールの20mMでの(3−ルカプトプロピル)トリメトキシシラン(3−MPT(Aldrich Chemicals))は、室温で、2時間の間、清浄された金チップに添加される。洗浄した後に、5%のアミノプロピルシルセスキオキサンオリゴマ(APS(Gelest))の水溶液は、室温で、15分間、チップに加えられる。それから、予め被覆されたチップは、100%のNMP(2Dストラテジ)のEMA重合体に、室温で10分間、接触されて、そして、他のチップはEMA重合体散在NMP/IPA(90/10)(3Dストラテジ)のコロイド溶液に、室温で、10分間、接触された。それから、CML(10mLの水の0.5g)の水溶液は、室温で、1時間の両方のチップ上へ添加された。ニッケル水溶液の添加は、BiacoreX設備装置でなされた。Hisタグカルボニックアンヒドラーゼは、20mM(図3)、トリス(HCl)の100μg/mLで、これらの2つの表面(2D及び3D)に固定された。
【実施例3】
【0139】
NTAナノ粒子修飾された表面と比較した市販のNTAチップを使用するSPR応答:
実施例2の手順が繰り返されて、EMA重合体のコロイド溶液から作られるコーティングを有する金チップを調製された。ニッケル水溶液の添加は、BIACORE X設備において実験チップ上と市販のBIACORE NTAチップ上になされた。Hisタグカルボニックアンヒドラーゼは、トリス(HCl)の125μg/mLで、20mM(図4)これらの2つの表面に固定された。
【実施例4】
【0140】
「親和性及び共有結合的」の表面改質と比較された親和性だけの表面改質を使用したEpic(登録商標)解析:
実施例1の手順が繰り返され、EMA050NTAで被覆された384−ウェルマイクロプレートを調製した。異なるアプローチは、このポリマー層(4エリアに分割されたマイクロプレート)で実行された。部分1及び部分4は、ニッケル水溶液と接触させた。それから、Hisタグカルボニックアンヒドラーゼは、酢酸緩衝液内で、一晩の50μg/mL、両部分の上で固定された。第2のステップにおいて、洗浄した後に、EDC/NHS(200mM/50mM)処理は、部分4だけに適用された。部分2に関して、EDC/NHS処理は、ニッケル添加の前にEMA050NTA上で実行された。部分3に関して、ニッケル添加はEDC/NHS処理の前になされた。それから、Hisタグカルボニックアンヒドラーゼは、酢酸緩衝液内で、部分2及び部分3上で50μg/mL、固定された(Epic(登録商標)応答(図5))。緩衝液PBS+0.1%DMSOの添加はマイクロプレートの第1の部分の固定されたタンパク質上で実行され、そして、タンパク質浸出はEpic(登録商標)設備(図6)で測定された。マイクロプレートの他の部分にて、フロセミドリガンドはPBS及び0.1%のDMSOで固定されたタンパク質上に10μM添加され、そして、結合値はEpic(登録商標)設備装置(図7)によって測定された。HisタグCA2の固定化は、2つの緩衝液(酢酸塩pH5.5又はHEPESpH7.4)において達成された。結果は、約5,000pm(図5)を超える固定化レベルと、結合している25pm(図7)を超える値を示した。タンパク質の損失は、両方の場合で約3pmであり、固定されたタンパク質の約0.1パーセント未満が推定された。
【実施例5】
【0141】
本開示のものと比較された周知の「親和性及び共有結合的」アプローチを使用したEpic(登録商標)解析:
実施例1の手順は繰り返され、EMA050NTAナノ粒子で被覆された384−ウェルマイクロプレートを調製した。ニッケル水溶液の添加の後、Hisタグカルボニックアンヒドラーゼは、酢酸緩衝液又はHEPES及び塩(すなわち150mMのNaCl)緩衝液内で、一晩で挿入物上に50μg/mL、固定された。洗浄の後、EDC/NHS処理(200mM/50mM)が水で30分実行され、タンパク質固定化レベルは、Epic(登録商標)設備(図8)を使用して得られた。緩衝液(PBS及び0.1%のDMSO)の添加はマイクロプレートの一部の固定されたタンパク質上で実行され、そして、タンパク質浸出はEpic(登録商標)設備装置(図9)で測定された。マイクロプレートの他の部分上にて、フロセミドリガンドはPBS及び0.1%のDMSOで固定されたタンパク質上に10μM添加され、そして、結合値はEpic(登録商標)設備装置(図10)によって測定された。
【実施例6】
【0142】
親和性表面上のCAII又はHisタグCAII固定化レベル:
実施例1の手順が繰り返され、EMA−NTAナノ粒子で被覆された384−ウェルマイクロプレートを調製した。ニッケル水溶液の添加の後、Hisタグカルボニックアンヒドラーゼ及び非タグのカルボニックアンヒドラーゼは、酢酸緩衝液又はHEPES及び150mMのNaCl緩衝液内で、一晩で挿入物上に50μg/mL、固定された。洗浄後、EDC/NHS処理(200mM/50mM)が水で30分実行され、タンパク質固定化レベルは、Epic(登録商標)設備(図11)を使用して得られた。
【実施例7】
【0143】
ニッケル処理有り及び無しでの親和性表面上のHisタグCAII固定化:
実施例1の手順が繰り返され、EMANTAナノ粒子で被覆された384−ウェルマイクロプレートを調製した。ニッケル水溶液の添加は、マイクロプレートの半分だけに実行された。Hisタグカルボニックアンヒドラーゼは、酢酸緩衝液単独又はHEPES及び150mMのNaCl緩衝液内で、一晩で挿入物各部上に50μg/mL、固定された。洗浄後、EDC/NHS処理(200mM/50mM)が水で30分実行され、タンパク質固定化レベルは、Epic(登録商標)設備(図12)を使用して得られた。
【実施例8】
【0144】
細胞培養:
ヒト初代肝細胞は、血清含有(又は血清無含有)のMFEプレート培地(XenoTechから市販されている培地に対する同様のハウス培地調製物)に塗布され、そして、5%のCO2の湿空気において、37℃で、培養された。細胞は血清なしのMFE維持培地(XenoTechから市販されている培地に対する同様のハウス培地調製物)に維持され、細胞培養の健康体及び形態の監視のために顕微鏡的に日周で観察された。初代肝細胞は、96ウェルマイクロプレートフォーマットのウェルにつき100μL培地の60,000の細胞で、表面に種付け(塗布)された。培地は、日周で交換された。HepG2/C3A細胞(ATCC#CRL−10741)は、10%のウシ胎児血清(インビトロジェン#16000−077)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(インビトロジェン#15140−155)で任意に補充されたイーグル最小必須培地;(ATCC#30−2003)で培養された。細胞は5%のCO2及び95%の相対湿度において37℃でインキューベートされた。C3A細胞は、96ウェルマイクロプレートフォーマットのウェルにつき100μL培地の5000セルで、重合体−被覆基質に付けされた。培地は、日周で交換された。EMA−NTA表面上の培養の細胞の数は、Cell-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガG7571)を使用して定量した。
結果は、図13及び14に示される。
【実施例9】
【0145】
遺伝子発現を介する肝細胞機能の評価:
7日培養の後、細胞は溶解され、RNeasy(登録商標) Mini Kit (Qiagen, Catalog #74106(250)、RNase-Free DNase Set (Qiagen, Catalog #79254)及びQuant-iT(登録商標) RiboGreen(登録商標) RNA Reagent and Kit (Invitrogen, Catalog #R11490)を用いてRNAを分離した後、CYP 1A2, 2B6, and 3A4遺伝子の内因性の遺伝子発現は、Quantitative Real-Time PCR 及びTaqMan(登録商標) Low Density Arraysを介して7日培養について分析した。図15参照のこと。
【実施例10】
【0146】
形態学的マーカーの評価:
頂端部(胆細管)のためのMRP2形態学的マーカーを使用した細胞極性は免疫化学的アッセイを介して7日で行われた。蛍光顕微鏡検査は、胆細管構造(図17、図18及び図19)の指示作用として、頂端部のMRP2の存在を示す蛍光染色されたマーカーを撮像するために用いられた。Matrigel(登録商標)被覆は、EMA−NTA/Matrigel(登録商標)サンドイッチ培養構造を提供する1日の培養後、サンプルに添加され、形態の変化と質膜極性の回復の証明としての胆細管構造の拡大を示した。この現象は、コラーゲンI/Matrigel(登録商標)サンドイッチにおいて観察されて、更に、合成EMA−NTA表面が非合成又は生物学的表面を交換するために用い得ることを証明する。
【0147】
本開示は、様々な種の実施例及び技術に関して記載されているが、しかし、本開示の多様な変形及び修飾が、開示範囲内にあると共に可能であると理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上にナノ粒子(NP)を有する基質を含み、前記ナノ粒子が金属イオンキレート化基(x)、イオン化可能基(y)及び表面実質的基(z)のうちの少なくとも1つを有する下記化学式(I)
【化1】

{ここで、
Rは、水素又は置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の1から6の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル部分であり、
R’は、2から18の炭素原子を有する不飽和モノマーと無水マレイン酸との共重合から生じた、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の二価のヒドロカルビル部分であり、
R”は、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖の1から20の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部であり、
Sは、基質に付着する少なくとも一点を含み、
Wは、少なくとも一つの二座基を含み、
Xは、−NH−基、−NR−基又は−O−基であり、
金属イオンキレート化基(x)、イオン化可能基(y)及び表面実質的基(z)のモル比x:(y+z)は、約2:8から約8:2であり、
ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有する}で示される重合体を含むことを特徴とする細胞培養物品。
【請求項2】
前記Rは2から6の炭素原子を有しヒドロキシ置換された一価のヒドロカルビル部分であることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項3】
前記x:(y+z)の基のモル比は約1:1であることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項4】
前記Sは、金属酸化物、混合した金属酸化物、重合体、複合物若しくはそれらの組み合わせと、表面修飾基質又はそれらの組み合わせの少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項5】
前記Rは、2から4の炭素原子を有するヒドロキシ置換されたアルキルであり、
前記R’は、2から10の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部分であり、
前記R”は、3から6の炭素原子を有する置換若しくは非置換の二価のヒドロカルビル部分であり、
前記Sは、アミノシロキサン処理されたガラス又はプラスチック基質であり、
前記Wは、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、トリアザシクロノナン、アミノエチルエタノールアミン、トリエチレンテトラアミン、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシラート又はこれらの混合物の少なくとも一つであり、
前記Xは、−NH−基であり、
前記x:(y+z)の基のモル比は約2:1から1:2であり、
前記ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項6】
前記基質表面上のナノ粒子(Np)は、ナノ粒子、ポリマー皮膜又はナノ粒子及びポリマー皮膜の組み合わせの層から成ることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項7】
前記層又は皮膜が不完全な基質表面被覆率を有することを特徴とする請求項6に記載の細胞培養物品。
【請求項8】
前記基質表面上のナノ粒子が約20nmから約1,000nmの厚さを有する層から成ることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項9】
前記Rは、2から4の炭素原子を有するヒドロキシ置換のアルキルであり、
前記R’は、2から10の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル部分であり、
前記R”は、3から6の炭素原子を有する置換若しくは非置換の二価のヒドロカルビル部分であり、
前記Sは、プラスチック基質であり、
前記Wは、ニトリロ三酢酸から成り、
前記Xは、−NH−基であり、
前記x:(y+z)の基のモル比は約2:1から1:2であり、
前記ナノ粒子は約10nmから約100nmの直径を有することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養物品。
【請求項10】
細胞を培養する方法であって、
請求項1の細胞培養基質を提供し、
前記細胞培養基質に細胞を提供し、
前記細胞培養基質上の適切な培地の細胞をインキューベートすることから成ることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記細胞培養基質上の細胞にサンドイッチ層を提供するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サンドイッチ層がタンパク質から成ることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質がコラーゲン、腫瘍抽出エキス若しくは細胞間マトリックスタンパク質又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記適切な培地が血清から成ることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が肝細胞であることを特徴とする請求項8、9又は10のいずれに1に記載の方法。
【請求項16】
前記肝細胞が初代細胞又は細胞株であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
バイオセンサに基づく標識独立検出を実行するバイオセンサ上に前記細胞培養基質を提供することを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【公表番号】特表2012−509676(P2012−509676A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537732(P2011−537732)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065862
【国際公開番号】WO2010/062935
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】