ナノ粒子を介するがん細胞標的化送達のための方法および組成物
本発明は、活性薬剤を所持するナノ粒子を腫瘍細胞に選択的かつ直接的に送達するための方法および組成物を提供する。該活性薬剤は、腫瘍細胞によって内部移行され、治療用途の場合は抗腫瘍効果をもたらし、かつ/または診断用途の場合は検出可能なマーカーを堆積する。本発明は、さらに、がんの治療および腫瘍の大きさの縮小における治療薬としてのp53突然変異体のドミナントネガティブ活性を回避するp53キメラを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権に関する記載]
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2010年1月18日出願の米国特許仮出願第61/295,898号の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、ナノ粒子を介して活性薬剤をがん細胞に選択的に送達するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗がん治療の有効性は、健常組織を損傷することなしにがん細胞を縮小および除去する能力に依拠する。したがって、がん細胞を優先的に標的にする戦略は、がん治療の成功において最も重要である。がん細胞への治療薬剤の送達を高めるために、ナノ粒子をベースにした系が探索されてきた。新たな進展は薬物送達効率を改善してきたが、がん細胞に特異的な送達を達成することは、相変わらず巨大な難題のままである。
【0004】
ワールブルグ効果として知られるがん細胞の現象は、悪性腫瘍に特徴的な抑制の効かない代謝活性に燃料を供給するためにグルコースを細胞中にしきりに引き入れる、がん細胞の十分に特徴付けられた傾向を規定する。ワールブルグ効果の最もよく知られた利用法は、放射性核種をグルコース分子に結び付け、それを患者に投与する、陽電子放射断層撮影(PET)においてである。悪性の細胞は、より多くのグルコース−放射性核種の媒体を取り込み、該媒体は細胞中に内部移行されるか、あるいは少なくとも腫瘍細胞に付着させる。放射性核種によって放射される放射線は、腫瘍部位での光子の放出をもたらし、次いで、この光子をPET(光子)検出装置で検出する。したがって、PET走査は、極めて正確かつ特異的ながんの検出方法である。
【0005】
本発明は、ワールブルグ効果を活用して、ナノ粒子を介して活性成分をがん細胞に直接かつ選択的に導き、治療薬剤(例えば、薬物、核酸、タンパク質/ペプチド)を送達すること、および/または診断のための検出可能なマーカーを配置することによって、当技術分野における従来の欠点を克服する。
【0006】
さらなる態様において、腫瘍抑制因子p53は、遺伝子宿主のプロモーター内のp53応答配列にテトラマーとして初めは結合する転写因子であり、その産生物は、ゲノム安定性および恒常性の維持にとって決定的に重要である増殖停止、アポトーシス、老化、分化、およびDNA修復−細胞事象の調節に関連している[1、2]。p53は、がん遺伝子活性化およびDNA損傷を含む種々のストレスシグナルによって活性化され、翻訳後修飾がp53活性化の主要な機構であり、その活性化はp53タンパク質の存在量および転写活性の増加をもたらすことが示されている[1、2]。
【0007】
p53タンパク質の安定性の調節により主として成立している正常な生理学的条件下では、野生型p53のレベルは、その増殖抑制活性のため、低く保たれているのが通常である。いくつかの制御因子が関連すると報告されているが、MDM2が、p53の代謝回転の調節における主要プレーヤーである。MDM2は、ユビキチン化およびそれに続く分解のためにp53を標的にするE3ユビキチンリガーゼであるが、同時に、p53の転写標的であり、それによって、負の制御ループを創出する。種々のストレスシグナルは、すべて、この制御ループに影響を与えてp53の活性化に影響を与える[1、2]。野生型p53と対照的に、突然変異p53タンパク質は、通常、がん細胞中に高いレベルで蓄積し、このことは、突然変異p53がMDM2の発現を誘導する能力がないためであると考えられている。実際、突然変異p53ノックインマウスを使用する遺伝子研究は、突然変異p53タンパク質レベルが主としてMDM2によって制御されることを立証した[3]。
【0008】
腫瘍抑制因子としてのp53の決定的に重要な役割は、p53遺伝子座へ直接的に影響を及ぼす突然変異、またはその正常な制御からの逸脱のどちらかよる、がん細胞中でのその普遍的な不活性化によって支持される[1、2]。p53の突然変異は、ほとんどすべての種類のヒトのがんにおいて、約10%(例えば、造血系悪性腫瘍[4])から50〜70%(例えば、卵巣[5]、結腸直腸[6]および頭頸部[7]がん)までの種々の頻度で確認されている。豊富な証拠は、野生型p53は、がん細胞に化学療法および放射線療法に対する感受性を付与するが、がん細胞中の突然変異p53は、療法への抵抗性および劣悪な予後の原因である。突然変異p53の発現とがん療法への抵抗性との間の相関は、広範に報告されている。例えば、シスプラチンに対する抵抗性が、卵巣がん患者において観察されている[8]。結腸直腸がんも、突然変異p53の存在下で化学感受性がより低いことが立証された[9]。同様に、p53の不活性化は、血液系悪性腫瘍に抗悪性腫瘍薬に対する抵抗性を付与した[10]。
【0009】
p53の突然変異は、p53変化の大部分が、完全長タンパク質の合成をもたらすミスセンス突然変異であることにおいて独特である[11]。ほとんどのp53突然変異は、配列に特異的なDNA結合活性の喪失をもたらすコアDNA結合ドメイン(DBD)内に見出されるが、高度の構造的、生化学的、および生物学的異質性が存在する。ほとんどのp53突然変異は、p53タンパク質の熱力学的安定性に対するそれらの効果により、一般的に「DNA−接触」および「立体配座」突然変異と呼ばれる2つの主要部類に類別することができる[12]。DNA−接触基は、R248QおよびR273HのようにDNA結合に直接的に関与する残基における突然変異を含む。この基は、立体配座モノクロナール抗体によって探索されるような野生型立体配座を有し、シャペロンhsp70に結合しない[13、14]。立体配座基は、hsp70への強力な結合を伴うタンパク質をもたらす、局所的(R294SおよびG245Sなど)および全体的(R175HおよびR282Wなど)な立体配座の歪を引き起こす突然変異を含む。立体配座の突然変異は、インビトロでDNA接触突然変異に比べてより厳しい表現型と関連している[13]。p53の突然変異の異質性は、また、生じる残基の性質に反映されることもある。突然変異R273Hは、野生型立体配座を有するが、一方、突然変異R273Pは変性されている[13]。
【0010】
腫瘍抑制因子の機能を喪失することに加え、突然変異p53は、テトラマー内の突然変異p53のわずか1つの分子がDNA結合を有意に危うくするのでp53不活性化の極めて有効な機構である突然変異体と野生型p53との間のヘテロ−オリゴマー化を介して野生型p53に関してドミナントネガティブ活性を獲得する[1、2]。さらに、諸研究は、突然変異p53が野生型p53から独立して新たな発がん活性を獲得できることを示した[15〜17]。p53の機能獲得型特性の根底にある統一的機構は解明にいたっていないが、いくつかのモデルが提案されている。突然変異p53は、p63およびp73とそれらのDNA結合ドメインを介して相互に作用することが示されている。この相互作用は、p73およびp63の機能の不活性化につながる[18〜21]。一般的な突然変異p53(R248WおよびR273H)を発現するノックインマウスを用いた遺伝子研究は、突然変異体が、DNA損傷応答にとって決定的に重要なプロテインキナーゼであるATMの不活性化によって発がん特性を獲得することを示した[22]。まとめると、利用可能な情報は、突然変異p53が、機能欠失型、ドミナントネガティブ型および機能獲得型活性の組合せを介する腫瘍形成および療法抵抗性の一因となることを指摘している。突然変異p53を再活性化する能力のある小分子を開発するために多くの努力がなされてきた。しかし、がん細胞における2000を超える異なる種類の突然変異p53タンパク質によって反映されるような突然変異p53の構造的異質性[23]は、融通性のあるp53再活性化剤の開発に対してかなりの難問を課す。代わりの取組みは、遺伝子療法を介して腫瘍細胞に野生型p53を再導入ことである。複製欠損ウイルスをベースにしたベクターは、頭頸部がんにおいて若干の治療効果を立証してきたが、腫瘍細胞中の高レベルの突然変異p53タンパク質は、機能性p53を復元させる上での大きな障害である。本発明は、当技術分野における以前の欠点を、突然変異p53に結合せず、そのため、高レベルの突然変異p53の存在下でp53の機能を効果的に回復することのできるp53誘導体を提供することによって克服する。
【発明の概要】
【0011】
一態様において、本発明は、
A)a)ポリカチオン/ポリアルキレングリコール/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
B)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
C)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
D)a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
E)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、
F)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)を取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、ならびに
G)a)上記(A)〜(F)のナノ粒子の任意の組合せ
からなる群から選択されるナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明のナノ粒子において、活性薬剤は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、化学療法薬、細胞障害性薬剤、放射性核種、検出可能なマーカー、造影剤、およびこれらの任意の組合せであってもよい。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、a)ポリエチレンイミン(PEI)およびp53をコードするポリヌクレオチドを含むコアと、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリエチレングリコール(PEG)接合体とを含むナノ粒子が提供される。
【0014】
さらなる実施形態において、本発明は、a)ポリエチレンイミン(PEI)およびp73ODを含むp53キメラ(例えば,p53/p73OD)をコードするポリヌクレオチドを含むコアと、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリエチレングリコール(PEG)接合体とを含むナノ粒子を提供する。さらに、本明細書では、p73ODを含むp53キメラを薬学的に許容される担体中に含む組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明は、ナノ粒子を細胞に送達する方法であって、細胞を本発明のナノ粒子と、ナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し細胞によって内部移送される条件下で接触させることを含む方法を提供し、この細胞はインビボであってもインビトロであってもよい。
【0016】
さらに、本明細書では、対象(例えば、それを必要とする対象)において活性薬剤を腫瘍細胞に送達する方法であって、本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し、腫瘍細胞によって内部化され、それによって活性薬剤を腫瘍細胞に送達することを含む方法が提供される。
【0017】
よりさらなる実施形態において、本発明は、対象(例えば、それを必要とする対象)における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞の表面のグルコース輸送体に結合し、細胞によって内部移行され、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法を提供する。
【0018】
本発明は、さらに、対象(例えば、それを必要とする対象)におけるがんを治療する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、p73ODを含むp53キメラを細胞(例えば、がん細胞または腫瘍細胞)に送達する方法であって、細胞を本発明のp53キメラと、p53キメラが細胞によって内部移行される条件下で接触させるステップを含む方法を提供し、この細胞はインビボであってもインビトロであってもよい。
【0020】
よりさらなる実施形態において、本発明は、対象(例えば、それを必要とする対象)における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の本発明のp53キメラを対象に送達し、それによってキメラが腫瘍細胞によって内部移行され、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法を提供する。
【0021】
本発明は、さらに、対象(例えば、それを必要とする対象)におけるがんを治療する方法であって、有効量の本発明のp53キメラを対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法を提供する。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、それを必要とする対象における腫瘍の退縮を誘導する方法であって、有効量の本発明のp53キメラを対象に送達し、それによって対象における腫瘍の退縮を誘導することを含む方法を包含する。
【0023】
本明細書に記載の方法は、対象にプロテインキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびこれらの任意の組合せを投与するステップをさらに含むことができる。
【0024】
上記の方法は、対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、放射線処置、外科処置、またはこれらの任意の組合せを施すステップを含むこともできる。このさらなるステップは、対象へのナノ粒子および/またp53キメラの送達の前、後および/または送達と同時に実施することができる。
【0025】
本発明のさらなる態様は、薬学的に許容される担体中に本発明のナノ粒子を含む組成物、および本発明のナノ粒子および/または本発明の組成物を含むキットを包含する。
【0026】
本明細書では、また、対象におけるがんをインビトロで診断する方法であって、a)検出可能なマーカーを含む本発明のナノ粒子を対象からの細胞と接触させること;b)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を測定すること、ならびにc)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を、対照対象の細胞および/または診断されている対象の対照細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性と比較することを含み、それによって対照対象の細胞および/または対照細胞と比較した場合の、対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の量および/または割合および/または特異性の増加または変化が、対象におけるがんの診断指標となる、方法が提供される。
【0027】
さらに、本発明は、対象におけるがんをインビボで診断する方法であって、a)造影剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達すること;b)対象において造影剤からのシグナルを検出すること;ならびにc)対象において造影剤からのシグナルを対照対象および/または診断されている対象からの対照組織/細胞における同一造影剤からのシグナルと比較することを含み、それによって対照対象および/または対照組織/細胞からのシグナルと比較した場合の対象からのシグナルの変化が、対象におけるがんの診断指標となる、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1(a)】GLU−PEG−PEIプラスミド複合体の合成を示す図である。
【図1(b)】GLU−PEG−PEIプラスミド複合体の合成を示す図である。
【図2A】2種の細胞株、乳癌細胞株MDA−MB−231および非形質転換ヒト乳腺上皮細胞株MCF−10Aにおける緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするプラスミドの発現差異を示す図である。
【図2B】非形質転換前立腺上皮細胞株RWPEに比較した場合の前立腺癌細胞株PC3におけるナノ粒子の選択的標識指向化を示す図である。
【図2C】2種のがん細胞株および2種の非形質転換細胞株におけるβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)をコードするプラスミドの発現差異を示す図である。
【図3A】GLU−PEG−PEI介在性核酸送達がグルコース輸送体依存性であることを立証する競合アッセイを示す図である。
【図3B】ナノ粒子−核酸複合体がエンドサイトーシス介在性内部移行を介して細胞に侵入することを示す図である。
【図4】Aは、腫瘍所持マウス(腫瘍体積はほぼ100mm3)に腫瘍抑制遺伝子(PTEN、20または40μg)プラスミドをナノ粒子と複合して(全体積50μL)静脈内で注入し、マウスを14日後に屠殺し、腫瘍を集めた図である。Bは、腫瘍組織切片を増殖マーカーKi−67で染色した図である。Ki−67染色の代表的画像および腫瘍の大きさを示す。PTENホスファターゼおよびテンシン相同体に関する配列は、GenBank(登録商標)データベース受託番号NM000314.4.で提供される(Liら、「PTEN,a putative protein tyrosine phosphatase gene mutated in human brain,breast、and prostate cancer」Science 275(5308):1943〜1947(1997))。
【図5】Aは、p53/73ODが、野生型p53と異なり、突然変異p53を発現する細胞の増殖を抑制することを示す図である。MDA−MB−231細胞に、対照ベクター(1.0μg)、野生型p53(1.0μg)、p53/p73OD(0.5μg)またはp53(R175H)/p73OD(1.0μg)をコードするpCNDA3ベクターをトランスフェクトした。ピューロマイシンでの選択の後、細胞をコロニー形成アッセイに供した。データは、3つの独立した実験から得られる平均±SEである。Bは、選択の48時間後に採取された細胞を用いてウェスタン分析を実施し、指定の抗体を使用して探索した図である。抗Mycブロットは外来性p53のレベルを示し、抗p53ブロットは、外来性突然変異p53と外来性p53とをあわせたレベルを反映している。
【図6】MCF−10A細胞が、中位レベルのp53/p73OD発現に対する感受性がより低いことを示す図である。対照としてのMDA−MB−231細胞と共にMCF−10A細胞に、指定のベクター(0.5μg)をトランスフェクトし、図5におけるようなコロニー形成アッセイに供した。並行してウェスタンブロットを実施し、p53/p73OD発現のレベルを測定した。
【図7】Aは、p53/p73ODの発現が、MDA−MB−231細胞において異なる応答をもたらしたことを示す図である。図6におけるように細胞を、指定の抗体を使用するウェスタン分析に供した。p53/p73ODを発現するMDA−MB−231またはMCF−10A細胞を、照射しないか、あるいは4Gyで照射した。Bでは、照射の6時間後にウェスタン分析のため、またはCでは、24時間の時点でFACS分析のため、細胞を採取した。結果は3つの独立実験から得られる平均±SEである。
【図8】Glu−PEG−PEIナノ粒子は、遺伝子送達に関して悪性腫瘍細胞を特異的に標的とすることを示す図である。Aでは、MCF−10A/MDA−MB−231細胞を、またはBで、RWPE/PC3細胞をGlu−PEG−PEI/lacZ DNA複合体と共にインキュベートした。24時間後に細胞を固定し、X−gal(登録商標)試薬で染色した。Cでは、GLU−PEG−PEI−β−galの取込みと競合させるため培養培地中に50mMグルコースを含めた。代表的画像を示す。
【図9】GLU−ALGが、PEIの細胞障害性を低減することを示す図である。増加するPEI濃度(0、0.05、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5または5.0μg/mL)のMDA−MB−231細胞(500万個の細胞)の生存率に対する効果を、図5に記載のような方法を使用するコロニー生き残りアッセイによって評価した。GLU−ALGの効果を、1μg/mLのPEIを0.05、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5または5.0μg/mLのGLU−ALGと混合することによって調べた。
【図10】GLU−ALG−PEIが介在するLacZ発現プラスミドの腫瘍特異的送達を示す図である。乳がん細胞株MDA−MB−231(500万細胞)をヌードマウス(4〜6週齢)の側腹領域に移植し、2週間腫瘍を発育させた。腫瘍の大きさがほぼ200mm3に達したら、マウスを一夜飢えさせた。翌朝、LacZ発現プラスミドを、PEIと、続いてグルコース−アルギン酸と混合し、静脈内で注入した。注入の48時間後にマウスを屠殺した。心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓および腫瘍サンプルを含め、種々の組織サンプルを採取した。組織切片を調製し、β−galで記載のように染色した。各組織からの代表的画像を示す。
【図11】p53/p73ODの発現によるMDA−MB−231細胞中でのPg13−GFPの誘導を示す図である。pg13−GFPを安定的に発現するMDA−MB−231細胞を、GLU−PEG−PEI/WTp53またはp53/p73ODと共にインキュベートした[p53介在性細胞死を回避するために低レベルのプラスミド(0.2μgDNA/60mm皿)を使用した]。24時間後に、2%ホルマリンを使用して細胞を固定し、DAPI色素で染色した。上のパネルはGFPの発現を示す。下のパネルはDAPI染色によって検出される細胞核を示す。
【図12】p53、p73βおよびp53キメラの概略を示す図である。p53キメラは、p73βのオリゴマー化ドメイン(OD)を含み、ここで、p53タンパク質の393個のアミノ酸配列は、アミノ酸318〜364の位置がp73βタンパク質のアミノ酸346〜390で置き換えられている。TAD:トランス活性化ドメイン、PRD:プロリンに富むドメイン、DBD:DNA結合ドメイン、Oligo:オリゴマー化ドメイン。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本説明は、本発明を実行することのできるすべての様々な方法、または本発明に付加することのできるすべての特徴の詳細な列挙であることを意図しない。例えば、ある実施形態に関して例示された特徴を、他の実施形態中に組み込むことができ、特定の実施形態に関して例示した特長を、その実施形態から削除することができる。加えて、本明細書中で提案される種々の実施形態に対する、本発明から逸脱しない多くの変形形態および付加形態は、本開示に照らして当業者にとって明白であろう。それゆえ、以下の説明は、本発明の一部の特定の実施形態を例示することを意図し、そのすべての並び替え形態、組合せ形態、および変形形態を網羅的に特定することを意図するものではない。
【0030】
そうでないことを規定しない限り、本明細書で使用するすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同様の意味を有する。本明細書中で本発明を説明するのに使用される術語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、本発明を限定することを意図しない。本明細書中で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、1つまたはそれ以上を意味することができる。例えば、「1つの(a)」細胞は、1つの細胞または複数の細胞を意味することができる。
【0032】
また、本明細書中で使用する場合、「および/または」は、1つまたは複数の列挙した関連項目のいずれかおよびすべての可能な組合せを、ならびに代替と判断される場合(「または」)には組合せの欠如を包含することを指す。
【0033】
さらに、本明細書中で使用する場合、本発明の生体分子または薬剤の量、投与量、時間、温度などの測定可能な値に対して言及する場合の用語「約」は、指定量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには0.1±%の変動を包含することを意味する。
【0034】
一態様において、本発明は、対象中の腫瘍細胞を選択的かつ直接的に標的にするように操作された本発明のナノ粒子を対象(例えば、がんを有する対象)に投与することによる、がん治療の新たな戦略を提供する。ナノ粒子は、活性薬剤を腫瘍細胞中に送達し、細胞を死滅させ、かつ/または細胞を腫瘍細胞と同定するための検出可能なマーカーを堆積する。
【0035】
したがって、一実施形態において、本発明は、a)ポリカチオン/ポリアルキレングリコール/グルコース接合体、およびb)活性薬剤を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。別の実施形態において、本発明は、a)活性薬剤を含むコア、およびb)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、a)活性薬剤を含むコア、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体、およびc)ポリカチオンを含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、グルコース/活性薬剤複合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体、およびb)活性薬剤を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子、ならびにa)活性薬剤を含むコア、およびb)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらに、本明細書では、a)活性薬剤を含むコア、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体、およびc)ポリカチオンを含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。
【0036】
本発明のナノ粒子は、ナノ粒子の集団として存在することができ、したがって、本発明は、担体中にナノ粒子の集団を含む組成物を提供する。集団中のナノ粒子はすべて同一の種類からなることができ、あるいはナノ粒子の集団は、任意の組合せおよび任意の比率の本明細書に記載のような2種以上の異なる種類のナノ粒子から構成することができる。
【0037】
本発明のナノ粒子は、約20nm〜約500nmの範囲の大きさで存在する。したがって、ナノ粒子は、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm,170nm、180nm、190nm、200nm,225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、400nm、450nm、500nmなど、またはこれらの任意の組合せであってもよい。当業者は、本発明のナノ粒子を含む組成物において、組成物中のナノ粒子は、大きさを異にすることができるが、一般には本明細書中に示す大きさの範囲に包含されることを認識するであろう。
【0038】
本発明のナノ粒子において、接合体のグルコース部分は、グルコースとして、F−18−フルオロデオキシグルコース(FDG)として、放射能標識化グルコース(例えば、[11C]グルコース、[14C]グルコース)として、グルコース誘導体またはその任意の組合せとして存在することができる。用語「グルコース誘導体」は、生体適合性であり、かつ身体によって生化学的に処理することのできる(例えば、グルコース輸送体によって拘束された)修飾されたグルコースの化学構造を有するグルコース分子を包含する。グルコース誘導体の例には、限定はされないが、デキストラグルコース(D−グルコース)および2−デオキシグルコース(2−DG)が含まれる。
【0039】
「ポリアルキレングリコール」は、直鎖または分枝のポリアルキレングリコールポリマーを意味し、限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリブチレングリコール(PBG)、ならびにPEG、PPGおよびPBGの任意の組合せのコポリマーを包含し、かつポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルを包含する。したがって、本発明の種々の実施形態において、本発明のナノ粒子中のポリアルキレングリコールは、限定はされないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびこれらの任意の組合せであってもよい。
【0040】
特定の実施形態において、ナノ粒子中のポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールまたは「PEG」である。用語「PEGサブユニット」は、ただ1つのポリエチレングリコール単位、すなわち、−(CH2CH2O)−を指す。
【0041】
一部の実施形態において、ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)は、非多分散性、単分散性、実質的に単分散性、純粋に単分散性、または実質的に純粋に単分散性であってもよい。
【0042】
「単分散性」は、混合物中の化合物の約100%が同様の分子量を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。
【0043】
「実質的に単分散性」は、混合物中の化合物の少なくとも約95%が同様の分子量を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。
【0044】
「純粋に単分散性」は、混合物中の化合物の約100%が同様の分子量を有し、かつ同様の分子構造を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。したがって、純粋に単分散性の混合物は、単分散性の混合物であるが、単分散性の混合物は、必ずしも純粋に単分散性の混合物であるとは限らない。
【0045】
「実質的に純粋に単分散性」は、混合物中の化合物の少なくとも約95%が同様の分子量を有し、かつ同様の分子構造を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。したがって、実質的に純粋に単分散性の混合物は、実質的に単分散性の混合物であるが、実質的に単分散性の混合物は、必ずしも実質的に純粋に単分散性の混合物であるとは限らない。
【0046】
ナノ粒子が、a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体、およびb)活性薬剤を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなる実施形態において、ポリカチオン、グルコースおよびアルギネートは、共有結合性相互作用を介して接合体中で互いに結び付くことができる。さらに、ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体は、静電力を介して活性薬剤に結び付くことができる。
【0047】
ナノ粒子が、a)活性薬剤を含むコア、およびb)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなる実施形態において、グルコースおよびアルギネートは、共有結合性相互作用を介して互いに結び付くことができる。さらに、グルコース/アルギネート接合体は、共有結合性相互作用を介して活性薬剤に結び付くことができる。
【0048】
本発明のナノ粒子の一部の実施形態において、グルコース/PAG接合体(例えば、グルコース/PEG接合体)は、活性薬剤を含むコアを取り囲んで存在することができる。グルコース/PAG接合体において、グルコースおよびPAGは、例えば、化学的な共有結合(例えば、共有結合性相互作用)を介して結び付くことができる。グルコース/PAG接合体のPAG部分は、共有結合性相互作用によってコアの活性薬剤に結び付くことができる。
【0049】
さらに、本発明のナノ粒子の一部の実施形態において、活性成分に加えて、ポリカチオン/PAG/グルコース接合体が存在することができる。この接合体において、グルコースとPAGとは、上記のように互いに結び付くことができ、ポリカチオン(例えば、PEI)は、グルコース/PA接合体のPAG(例えば、PEG)に、例えば化学的共有結合を介して結び付くことができる。接合体のポリカチオンは、静電力によって活性薬剤に結び付くことができる。
【0050】
コアを取り囲むグルコース/PAG接合体に加えて、ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアが存在する本発明のナノ粒子において、該ポリカチオンは、静電力を介して活性薬剤に結び付くことができ、グルコース/PAG接合体は、共有結合を介してコアのポリカチオンに結び付くことができる。
【0051】
さらに、コアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体に加えて、ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアが存在する本発明のナノ粒子において、該ポリカチオンは、静電力を介して活性薬剤に結び付くことができ、グルコース/アルギネート接合体は、共有結合を介してコアのポリカチオンに結び付くことができる。
【0052】
ポリカチオンがナノ粒子中に存在する本発明の実施形態において、該ポリカチオンは、限定はされないが、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアニオン塩酸塩、PAH)、プトレシン、カダベリン、ポリリシン、ポリ−アルギニン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド−ポリアミン、ジデオキシ−ジアミノ−β−シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、ポリメタクリル酸(2−ジメチルアミノ)エチル、ポリ(ヒスチジン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン、およびこれらの任意の組合せであってもよい。
【0053】
本発明のナノ粒子の特定の実施形態において、ポリカチオンはポリエチレンイミン(PEI)である。
【0054】
本発明の種々の実施形態では、ポリカチオン(例えば、PEI)を、本発明の活性薬剤(例えば、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アニオン性タンパク質、アニオン性薬物、ペプチドまたはタンパク質に共有結合されたポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ならびにこれらの任意の組合せ)と、物理的静電力(例えば、ここで、活性薬剤(群)中の負電荷がポリカチオン中の正電荷と結合する)を介して複合させることができる。ポリカチオンをGLU−PAGまたはGLU−アルギネートに接合する前および/または後に、活性薬剤をポリカチオンと複合させることができる。
【0055】
また、本発明のナノ粒子中の種々の成分を、架橋形成を介して、例えば、架橋性および/または触媒性薬剤[例えば、1−エチル−(3−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ゲニピン、および任意の組合せの当技術分野で公知の任意のその他の架橋性および/または触媒性薬剤]を用いて互いに結び付けることができると考えられる。一部の実施形態では、光硬化性基を備えた成分をナノ粒子中の光硬化性成分と共架橋することのできる光架橋などの化学的架橋を採用することができる。
【0056】
他の実施形態では、ナノ粒子中の成分を、連結分子を介して結び付けることができる。本発明の連結分子の例には、限定はされないが、ヘパリンおよび硫酸ヘパリンが含まれる。ヘパリンが連結分子として使用される実施形態では、静電力または特異的結合によってヘパリンに結合する活性薬剤を使用することができる。例えば、ヘパリンは、当技術分野で周知のようにTGF−β1、IL−10、HGF、FGFなどと特異的に結合する。さらに、ヘパリンは、負に帯電し、正に帯電したポリカチオンに静電力を介して結合することができる。本発明のさらなる連結分子としては、例えば、Frankら(J.Biol.Chem.278(44):43229〜43235(2003))中に記載のようなヘパリン類似体および修飾された多糖類が挙げられる。
【0057】
本発明のナノ粒子中に存在する活性薬剤は、限定はされないが、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドのフラグメント、オリゴヌクレオチド、アンチセンス配列、リボザイム、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、干渉RNA(siRNA、shRNA、dsRNA)、マイクロRMA(miRNA)、タンパク質、タンパク質の生物学的に活性なフラグメント、ペプチド、化学療法薬もしくは薬剤、細胞障害性薬剤、放射性核種、検出可能なマーカー、造影剤、およびこれらの任意の組合せであってもよい。一部の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、機能性タンパク質または治療効果を付与するその他の産生物をコードするプラスミドまたは核酸構築物であってもよい。本発明の核酸構築物によってコードされるタンパク質の非限定的例には、当技術分野で公知であるか、後に同定されるような、p53、p53/p73ODキメラ、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン21−(IL−21)、インターロイキン−27(IL−27)、セサリン、CPT−11、インターフェロン誘導性タンパク質−10(IP−10)、インターフェロンγによって誘導されるモノカイン(Mig;CXCL9)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、Fasリガンド、PTEN、AFR(p14)、Fas、CDK阻害タンパク質(CIP)p15、CIPp27、CIPp21、β−カテニン、血管内皮増殖因子受容体2(msFlk1)、チミジンキナーゼ、血管新生抑制因子、アポトーシス誘導因子(例えば、BIK、BNIP、NOXA、PUMA、BAD、BAX、EGL−1、CED13)などが含まれる。
【0058】
ナノ粒子が活性薬剤を含むコアを含む一部の実施形態において、該コアは、活性薬剤としてポリヌクレオチド/ポリカチオン(例えば、PEI)複合体を含む、それから実質的になる、またはそれからなることができる。
【0059】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、p53をコードするプラスミドまたは核酸構築物である。この実施形態において、本発明のナノ粒子は、p53をコードするプラスミドを腫瘍細胞に選択的かつ直接的に送達する。p53タンパク質が、トランスフェクトされた腫瘍細胞中で産生され、ここで、該タンパク質はその抗腫瘍効果を明らかにする。
【0060】
本明細書中で使用する場合、「核酸」、「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば、化学的に合成された)DNAもしくはRNA、およびRNAおよびDNAのキメラを含めて、RNAとDNAの双方を包含する。用語「ポリヌクレオシド」または「ヌクレオチド配列」は、鎖の長さに関係なく、ヌクレオチドの鎖を指す。核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖であってもよいアンチセンス鎖であってもよい。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えば、イノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、塩基対形成能力を変更した、またはヌクレアーゼに対する抵抗性を高めた核酸を調製するのに使用することができる。本発明は、さらに、本発明の核酸またはヌクレオチド配列の補体(完全補体であってもよい部分補体であってもよい)である核酸を提供する。
【0061】
「単離型ポリヌクレオチド」は、それが由来する生物体の天然に存在するゲノムにおいて、直接的につながっているヌクレオチド配列と(1つは5’末端に、1つは3’末端に)直接的にはつながっていないヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)である。したがって、一実施形態において、単離型核酸は、コード配列に直接的につながっている5’非コード(例えば、プロモーター)配列の一部または全部を含む。したがって、該用語は、例えば、ベクター中に、自律的複製プラスミドもしくはウイルス中に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれている、あるいは他の配列とは独立に別の分子(例えば、PCRまたは制限エンドムクレアーゼ処理によって産生されるcDNAまたはゲノムDNAフラグメント)として存在する組換えDNAを包含する。該用語は、また、さらなるポリペプチドまたはペプチド配列をコードするハイブリッド核酸の一部である組換えDNAを包含する。遺伝子を含む単離型ポリヌクレオチドは、このような遺伝子を含む染色体のフラグメントではなく、むしろ遺伝子に付随するコード領域および制御領域を含み、染色体上で天然に見出されるさらなる遺伝子ではない。
【0062】
用語「単離型」は、細胞性材料、ウイルス性材料、および/または培養培地(組換えDNA技術で製造される場合)、または化学的前駆体もしくはその他の化学物質(化学的に合成される場合)を実質的に含まない、核酸、ヌクレオチド配列またはポリペプチドを指すことができる。さらに、「単離型フラグメント」は、天然にはフラグメントとして存在せず、かつ天然の状態では見出されない、核酸、ヌクレオチド配列またはポリペプチドのフラグメントである。「単離型」は、調製が、技術的に純粋(均一)であることを意味しないが、それは、十分に純粋であり、ポリペプチドまたは核酸を意図した目的のために使用できる形態で提供する。
【0063】
単離型細胞は、その天然の状態で通常的に付随する他の成分から分離されている細胞を指す。例えば、単離型細胞は、培養培地中の細胞(例えば、インビトロ)、および/または本発明の薬学的に許容される担体中の細胞であってもよい。したがって、単離型細胞を、対象に送達および/または導入することができる。一部の実施形態において、単離型細胞は、対象から取り出された、および生体外で操作され、次いで対象に戻される細胞であってもよい。
【0064】
用語「フラグメント」は、ポリヌクレオチドに適用する場合、参照の核酸またはヌクレオチド配列に比較して長さが短縮され、かつ参照の核酸またはヌクレオチド配列に同一またはほとんど同一(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一)であるつながったヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、その配列から実質的になる、および/またはその配列からなる、ヌクレオチド配列を意味すると解される。本発明によるこのような核酸フラグメントを、適切なら、その構成要素であるより大きなポリヌクレオチド中に含めることができる。一部の実施形態において、このようなフラグメントは、本発明による核酸またはヌクレオチド配列の少なくとも約8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれ以上の連続ヌクレオチドの長さを有するオリゴヌクレオチドを含む、それらのオリゴヌクレオチドから実質的になる、および/またはそれらのオリゴヌクレオチドからなることができる。
【0065】
用語「フラグメント」は、ポリペプチドに適用する場合、参照のポリペプチドまたはアミノ酸配列に比較して長さが短縮され、かつ参照のポリペプチドまたはアミノ酸配列に同一またはほとんど同一(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一)であるつながったアミノ酸のアミノ酸配列を含む、ほとんどその配列からなる、および/またはその配列からなる、アミノ酸配列を意味すると解される。本発明によるこのようなポリペプチドフラグメントを、適切なら、その構成要素であるより大きなポリペプチド中に含めることができる。一部の実施形態において、このようなフラグメントは、本発明によるポリペプチドまたはアミノ酸配列の少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれ以上の連続したアミノ酸の長さを有するペプチドを含む、それらのペプチドから実質的になる、および/またはそれらのペプチドからなることができる。
【0066】
本明細書中で使用する場合、「機能性」ポリペプチドまたは「機能性タンパク質」または「機能性フラグメント」またはポリペプチドの「生物学的に活性なフラグメント」は、そのポリペプチドに通常的に付随する少なくとも1種の生物学的活性(例えば、抗腫瘍活性、タンパク質結合、リガンドもしくは受容体結合)を実質的に維持しているものである。特定の実施形態において、「機能性」ポリペプチドまたはタンパク質または「機能性フラグメント」は、未改変タンパク質によって所持されるすべての活性を実質的に維持している。生物学的活性を「実質的に維持している」とは、ポリペプチドまたはタンパク質またはフラグメントが、本来のポリペプチドの生物学的活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上を維持していること(さらには本来のポリペプチドよりも高いレベルの活性を有する場合もある)を意味する。「非機能性」ポリペプチドは、ポリペプチドに通常的に付随する検出可能な生物学的活性をほとんどまたは本質的に示さない(例えば、せいぜい、意味のない量、例えば、約10%またはさらには5%未満の)ものである。タンパク質結合および抗腫瘍活性などの生物学的活性は、当技術分野で周知であり、かつ本明細書中で説明されるようなアッセイを使用して測定することができる。
【0067】
コード配列を含む核酸に関する用語「発現する」、「発現すること」または「発現」とは、核酸が、転写され、任意選択的に翻訳されることを意味する。典型的には、本発明によれば、本発明のコード配列の発現は、本発明のポリペプチドまたはその他の産生物の産生をもたらす。すべての発現されたポリペプチドまたはフラグメントまたはその他の産生物も、精製なしに無傷の細胞中で機能することができる。
【0068】
本発明の一部の実施形態において、活性薬剤は、アンチセンスヌクレオチド配列であってもまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。用語「アンチセンスヌクレオチド配列」または「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書中で使用する場合、特定の標的ヌクレオチド配列に対して相補的であるヌクレオチド配列を指す。同一物を発現するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび核酸は、通常的な技術により調製することができる。例えば、Tullisへの米国特許第5,023,243号、Pedersonらへの米国特許第5,149,797号を参照されたい。アンチセンスヌクレオチド配列は、全標的ヌクレオチド配列、または少なくとも10、20、40、50、75、100、150、200、300または500個のつながった塩基からなるその部分に対して相補的であることができ、標的ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質または産生物の産生レベルを低下させる。
【0069】
当業者は、配列の類似度が、アンチセンスヌクレオチド配列がその標的にハイブリダイズし、かつコードされたポリペプチドまたは産生物の産生を低下させるのに十分である限り、アンチセンスヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列に対して完全に相補的であることを必ずしも要しないことを認識している。当技術分野で周知のように、一般には、より高度の配列類似性が、短いアンチセンスヌクレオチド配列に対して要求され、一方、より大きな度合いの不適正塩基が、より長いアンチセンスヌクレオチド配列によって許容される。
【0070】
例えば、このようなアンチセンスヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションは、それらの標的ヌクレオチド配列に関して、低減されたストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、またはさらに高いストリンジェンシーの条件下(例えば、それぞれ、5×デンハート溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEを含む35〜45%ホルムアミドからなる37℃での洗浄ストリンジェンシーで代表される条件;5×デンハート溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEを含む40〜45%ホルムアミドからなる42℃での洗浄ストリンジェンシーで代表される条件;および/または5×デンハート溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEを含む50%ホルムアミドからなる42℃での洗浄ストリンジェンシーで代表される条件)で実施できる。例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版(Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989)を参照されたい。したがって、一部の実施形態において、本発明のアンチセンスヌクレオチド配列は、標的コード配列の補体と少なくとも約70%、80%、90%、95%、97%、98%またはより高い配列類似性を有することができ、ポリペプチド産生のレベルを低下させる。
【0071】
アンチセンスヌクレオチド配列の長さ(すなわち、その中のヌクレオチドの数)は、それが意図した位置に選択的に結合し、標的配列の転写および/または翻訳を低下させる限り、決定的に重大ではなく、定型的手順に従って決定することができる。一般に、アンチセンスヌクレオチド配列は、約8、10または12個のヌクレオチドの長さから約20、30、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500個、またはより長いヌクレオチドの長さまでである。
【0072】
アンチセンスヌクレオチド配列は、当技術分野で公知の手順による化学合成および酵素的連結反応を使用して構築することができる。例えば、アンチセンスヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド、あるいは分子の生物学的安定性を高めるように、またはアンチセンスとセンスヌクレオチド配列の間で形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された種々の修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンスヌクレオチド配列を作出するのに使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテン−イルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが含まれる。別法として、アンチセンスヌクレオチド配列は、その中に核酸がアンチセンス配向でクローンされた発現ベクターを使用して産生させることができる。(すなわち、挿入核酸から転写されたRNAは、注目の標的核酸に対してアンチセンス配向を有する)。
【0073】
本発明のアンチセンスヌクレオチド配列は、さらに、ヌクレオチド間架橋形成ホスフェート残基の少なくとも1つまたはすべてが、メチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、およびホスホロアミデートなどの修飾ホスフェートであるヌクレオチド配列を包含する。例えば、ヌクレオチド間架橋形成ホスフェート残基を1つおきに記載のように修飾することができる。別の非限定的例において、アンチセンスヌクレオチド配列は、ヌクレオチドの1つまたはすべてが、2’低級アルキル部分(例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1−プロペニル、2−プロペニル、およびイソプロピルなど、C1〜C4の直鎖または分枝の、飽和または不飽和のアルキル)を含むヌクレオチド配列である。例えば、ヌクレオチドを1つおきに記載のように修飾することができる。また、修飾ヌクレオチド塩基を含むものを含め、アンチセンス分子の調製方法に関するそれらの教示について参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Furdonら、Nucleic Acids Res.17:9193(1989);Agrawalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1401(1990);Bakerら、Nucleic Acids Res.18:3537(1990);Sproatら、Nucleic Acids Res.17:3373(1989);WalderおよびWalder、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5011(1988)を参照されたい。
【0074】
本発明の種々の実施形態において、活性薬剤は、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)またはマイクロRNA(miRNA)などの干渉RNAであってもよい。これらの干渉RNAを腫瘍細胞内の標的ヌクレオチド配列に向けて、ヌクレオチド配列の発現の調節、およびそれに続く標的ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質または産生物の産生の調節をもたらすことができる。干渉RNA法を使用して腫瘍細胞またはがん細胞中で標的とされる予定の核酸配列の非限定的例には、Bcl−2、Bcl−XL、Akt、HIF−a、MMP、RasおよびMDM2が含まれる。
【0075】
siRNAは、標的コード配列に対応する二本鎖RNA(dsRNA)が細胞または生物体中に導入され、対応するmRNAの分解をもたらす転写後遺伝子発現抑制の機構である。siRNAが遺伝子発現抑制を達成する機構は、Sharpら、Gene Dev.15:485(2001);およびHammondら、Nature RevGen.2:110(2001)中で概説されている。siRNAの効果は、遺伝子発現が回復される前の多様な細胞分裂の間持続する。siRNAは、ヒト胚生期腎臓およびHela細胞を含むヒト細胞中で成功的であることが証明されている(例えば、Elbashirら、Nature 411:494(2001)を参照されたい)。一実施形態において、発現抑制は、RNAヘアピン(shRNA)の内因性発現を強制することによって哺乳動物細胞中で誘導され得る(Paddisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:1443(2002)を参照されたい)。別の実施形態において、小さな(21〜23nt)dsRNAのトランスフェクションは、核酸発現をとりわけ抑制する(Caplen、Trends Biotechnol.20:49(2002)中で概説されている)。
【0076】
siRNA技術は、標準的な分子生物学の方法を利用する。不活性化されるべき標的コード配列の全部または一部に対応するdsRNAは、標準的な方法によって、例えば、T7RNAポリメラーゼを用いる鋳型DNA(標的配列に対応する)の双方の鎖の同時転写によって作り出すことができる。siRNAで使用するためのdsRNAを産生させるキットは、例えば、New England Biolabs.Incから市販されている。dsRNAを調製するように操作されたdsRNAまたはプラスミドのトランスフェクションの方法は、当技術分野で定型的である。
【0077】
約21〜23個の長さのヌクレオチドからなる一本鎖RNA分子であるマイクロRNA(miRNA)を、siRNAに対して類似の方式で使用して、遺伝子発現を調節することができる(米国特許第7,217,807号を参照されたい)。
【0078】
siRNAによって作り出されるものに類似の発現抑制効果は、mRNA−cDNAハイブリッド構築物のトランスフェクションを含む哺乳動物細胞で報告されており(Linら、Biochem.Biophys.Res.Commun.281:639(2001))、注目のコード配列を発現抑制するためのさらに別の戦略を提供する。
【0079】
本発明の活性薬剤は、また、一部の実施形態において、リボザイム、およびリボザイムをコードする核酸であってもよい。リボザイムは、核酸を部位特異的方式で開裂するRNA−タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を所持する特定の触媒ドメインを有する(Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8788(1987);Gerlachら、Nature 328:802(1987);ForsterおよびSymons、Cell 49:211(1987))。例えば、多数のリボザイムは、ホスホエステル移動反応を高度の特異性で加速し、しばしば、オリゴヌクレオチド基質中のいくつかのホスホエステルの1つのみを開裂する(MichelおよびWesthof、J.Mol.Biol.216:585(1990);Reinhold−HurekおよびShub、Nature 357:173(1992))。この特異性は、基質が、化学反応に先立って、特定の塩基対形成相互作用を介してリボザイムの内部先導配列(「IGS」)に結合するという要求に寄与している。
【0080】
リボザイム触媒は、核酸を含む配列特異的開裂/連結反応の一部として主に観察される(Joyce、Nature 338:217(1989))。例えば、米国特許第5,354,855号には、特定のリボザイムが、既知のリボヌクレアーゼのそれを超え、DNA制限酵素のそれに近い配列特異性を有するエンドヌクレアーゼとして作用することができると述べられている。したがって、遺伝子発現の配列特異的リボザイム介在性阻害は、治療的応用にとりわけ適している可能性がある(Scanlonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10591(1991);Sarverら、Science 247:1222(1990);Sioudら、J.Mol.Biol.223:831(1992))。
【0081】
一部の実施形態において、本発明の活性薬剤は、化学療法薬または化学療法剤であってもよい。化学療法薬または化学療法剤の非限定的例には、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン);2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド);3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC);4)酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ);5)生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン−α);6)白金配位錯体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン);7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン);8)置換尿素(例えば、ヒドロキシウレア);9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH));10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’−DDD)およびアミノグルテチミド);11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン);12)プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール);13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール);14)抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン);16)抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド);および17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、リュープロリド)が含まれる。本発明の化学療法剤のさらなる例には、メトトレキサート、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、デモコルシン、エトポシド、ミトラマイシン、クロラムブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、パクリタキセル、カンプトテシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤(例えば、Marimastat、Trocade、ドキソサイクリン、ミノサイクリンおよび参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,872,152号に記載のようなもの、ならびにシタラビンが含まれる。
【0082】
本発明のさらなる実施形態において、活性薬剤は、放射性核種であってもよい。本明細書に記載のような「放射性核種」は、腫瘍またはがん細胞に治療線量の放射線を送達するのに適した任意の放射性核種でよく、限定はされないが、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、および212Pbが挙げられる。
【0083】
本発明のよりさらなる実施形態において、活性薬剤は、検出可能なマーカーまたは標識でよく、あるいはそれらを含むことができる。検出可能なマーカーまたは標識の非限定的例には、放射性核種(35S、125I、131I、99Te、64Cuなど)、酵素、蛍光剤、化学発光剤、および発光性薬剤、ならびに当技術分野で周知のような基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子などが含まれる。
【0084】
本発明の活性薬剤は、また、細障害性薬剤であってもよい。「細胞障害性薬剤」には、本明細書中で使用する場合、限定はされないが、リシン(例えば、リシンA鎖)、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素、モネンシン(Monensin)、ベルカリン(Verrucarin)A、アブリン(Abrin)、ビンカアルカロイド、トリコテセンおよびシュードモナス(Pseudomonas)外毒素Aが含まれる。
【0085】
さらに、本発明の活性薬剤は、造影剤であってもよい。例えば、フルオレセインイソチシアネート(FITC)は、蛍光画像法のための造影剤であることができ、超常磁性酸化鉄は、磁気共鳴画像法(MRI)のための造影剤であることができ、かつ/または放射性核種は、X線画像法のための造影剤であることができる。
【0086】
本発明のナノ粒子の任意の要素は、前記のような本発明のナノ粒子の種々の実施形態中に存在することができ、任意のこのような要素は、存在しないか、本発明のナノ粒子から除外されていてもよく、このようなその排除または不在は、本発明の否定的限定(negative limitation)として規定され得る(例えば、否定的但し書きによって記載の実施形態から排除される)ことが理解されよう。
【0087】
さらなる態様として、本発明は、本明細書に記載のように、治療効果を達成するための、かつ/または診断のための医薬製剤およびその投与方法を提供する。医薬製剤は、薬学的に許容される担体中に本明細書に記載の任意のナノ粒子を含むことができる。
【0088】
「薬学的に許容される担体」は、(i)組成物をその意図した目的に対して不適にすることなしに本発明の組成物と組み合わせることができるという意味で組成物中の他の成分と適合性があり、かつ(ii)過度の副作用(毒性、刺激、およびアレルギー反応)なしに本明細書中で示されるような対象で使用するのに適している、塩類、担体、賦形剤、または組成物の希釈剤などの成分である。副作用は、それらのリスクが組成物によって提供される利益にまさる場合に、「過度」である。
【0089】
薬学的に許容される成分の非限定的例には、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、油/水型エマルジョンなどのエマルジョン、マイクロエマルジョン、および種々のタイプの湿潤化剤などの、任意の標準的な医薬担体が含まれるが、これらには限定されない。とりわけ、薬学的に許容される担体は、本発明の対象への投与または送達のために製剤化される無菌の担体であると解釈される。さらに、薬学的に許容される担体は、動物、より詳細にはヒトでの使用について、連邦または州政府の規制当局によって承認された、または米国薬局方もしくはその他の一般的に認められた薬局方中に列挙された任意の担体分子である。このような担体は、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、粉剤、徐放性製剤、座剤、乳剤、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁液剤の形態、または使用するのに適した任意のその他の形態を取ることができる。適切な医薬担体の例は、当業者に周知である(例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第21版(2005)、Lippincott Williams & Wilkins、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)を参照されたい)。
【0090】
さらに、活性成分または成分群を組成物の製剤化に必須の成分との混合物中に含むこのような医薬組成物を調製する上で、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤化剤、乳化剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、風味剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤などを含む、その他の通常的な薬理学的に許容される添加物を組み込むことができる。添加物としては、例えば、デンプン、蔗糖、果糖、デキストロース、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、沈降性炭酸カルシウム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ゼラチン、アラビアゴム、EDTA、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタ重亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0091】
本発明の製剤は、薬用薬剤、医薬品、担体、補助剤、分散剤、希釈剤などを任意選択的に含むことができる。
【0092】
本発明のナノ粒子は、公知の技術により医薬担体中で投与用に製剤化することができる。例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第21版(2005)、Lippincott Williams & Wilkins、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造において、化合物(その生理学的に許容される塩を含む)は、典型的には、とりわけ許容される担体と混合される。担体は、固体または液体、あるいはその双方でよく、化合物と、単位用量製剤、例えば、0.01または0.5重量%〜95または99重量%の化合物を含むことのできる錠剤として好ましくは製剤化される。1種または複数の化合物を、製薬に関する任意の周知技術によって調製することのできる本発明の製剤中に組み込むことができる。
【0093】
本発明のさらなる態様は、対象をインビボで治療する方法であって、薬学的に許容される担体中に本発明のナノ粒子を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法であり、該医薬組成物は、治療上有効な量で投与される。それを必要とするヒト対象または動物への本発明の組成物の投与は、このような組成物の投与に関する当技術分野で公知の任意の手段によることができる。
【0094】
本発明の製剤は、経口、直腸、局所、頬側(例えば、舌下)、膣、非経口(例えば、皮下、骨格筋、心筋、隔膜筋および平滑筋を含む筋内、皮内、静脈内、腹膜内)、局所(すなわち、皮膚および気道表面を含む粘膜表面の双方)、鼻腔内、眼内、内臓内、網膜内、経皮、関節内、髄腔内、および吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接臓器注入(例えば、肝臓中への、中枢神経系への送達のための脳中への、膵臓中への、または腫瘍もしくは腫瘍を取り囲む組織中への)に適したものを包含する。与えられた事例で最も適切な経路は、治療されている状態の性質および重症度、ならびに使用されている個々の化合物の性質に依存する。
【0095】
注射の場合、担体は、典型的には、無菌のパイロジェンフリー水、パイロジェンフリーリン酸緩衝化生理食塩水溶液、静菌水、またはCremophor EL[R](BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)などの液体である。他の投与方法の場合、担体は、固体または液体のいずれであってもよい。
【0096】
経口投与の場合、組成物は、カプセル剤、錠剤、粉剤などの固形剤形で、またはエレキシル剤、シロップ剤および懸濁液剤などの液体剤形で投与することができる。組成物を、ゲラチンカプセル中に、ブドウ糖、乳糖、蔗糖、マンニトール、デンプン、セルロースもしくはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、炭酸マグネシウムなどの不活性成分および粉末性担体と一緒に封じ込めることができる。所望の色彩、風味、安定性、緩衝能、分散またはその他の既知の望ましい特徴を提供するために添加することのできるさらなる不活性成分の例が、ベンガラ、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インクなどである。類似の希釈剤を使用して圧縮錠剤を作製することができる。錠剤およびカプセル剤は、双方とも、数時間にわたる薬剤の継続的放出を提供するための徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤を、なんらかの不快な風味を遮断し、かつ錠剤を雰囲気から保護するために糖で被覆、またはフィルムで被覆することができ、あるいは消化管中での選択的崩壊のために腸溶性被覆を施すことができる。経口投与用の液体剤形は、患者の受容性を高めるために着色剤および風味剤を含むことができる。
【0097】
頬側(舌下)投与に適した製剤としては、風味基剤、通常的には蔗糖とアラビアゴムまたはトラガカントゴム中に組成物を含むロゼンジ剤;ならびにゼラチン、グリセリンもしくは蔗糖、およびアラビアゴムなどの不活性基剤中に組成物を含むパステル剤が挙げられる。
【0098】
非経口投与に適した本発明の製剤は、組成物の無菌水性および非水性注射溶液を含み、該調合物は、意図した受容者の血液と好ましくは等張である。これらの調合物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図した受容者の血液と等張にする溶質を含むことができる。水性および非水性無菌懸濁液剤は、懸濁化剤および増粘剤を含むことができる。製剤は、単位投与、または多回投与容器、例えば、密閉されたアンプルおよびバイアル瓶の状態で提供することができ、使用直前に無菌液状担体、例えば、生理食塩水または注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)の状態で貯蔵することができる。
【0099】
即席の注射用液剤および懸濁液剤は、前に説明した種類の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。例えば、本発明の一態様において、密閉容器中に本発明のナノ粒子を単位剤形の状態で含む注射可能で安定な無菌組成物が提供される。該組成物は、その対象への注射に適した液体組成物を形成するように、適切な薬学的に許容される担体を用いて再構成される能力のある、凍結乾燥体の形態で提供される。組成物が実質的に非水溶性である場合、薬学的に許容される十分な量の乳化剤を、組成物を水性担体中で乳化するのに十分な量で採用することができる。1つのこのような有用な乳化剤がホスファチジルコリンである。
【0100】
直腸投与に適した製剤は、好ましくは、単位用量の座剤として提供される。これらは、組成物を1種または複数の通常的な固体担体、例えば、カカオバターと混合すること、次いで生じる混合物を成型することによって調製することができる。
【0101】
皮膚への局所適用に適した製剤は、好ましくは、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾル剤、または油剤の形態を取る。使用できる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮吸収増強剤、およびこれらの2つ以上からなる組合せが挙げられる。
【0102】
経皮投与に適した製剤は、受容者の上皮との長時間の完全接触を維持するように構成された分離型パッチとして提供することができる。経皮投与に適した製剤は、イオン注入によって送達することもでき(例えば、Tyle、Pharm.Res.3:318(1986)を参照されたい)、典型的には、組成物の任意選択的に緩衝化された水性溶液の形態を取る。適切な製剤は、クエン酸塩またはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含む。
【0103】
化合物は、代わりに、経鼻投与用に製剤化すること、あるいは任意の適切な手段によって対象の肺へ投与すること、例えば、ナノ粒子を含む呼吸可能な粒子の対象が吸入するエアロゾル懸濁剤によって投与することができる。呼吸可能な粒子は、液体であっても固体であってもよい。用語「エアロゾル」は、細気管支または鼻通路中に吸入される能力のある、任意の気体によって運ばれる懸濁相を含む。具体的には、エアロゾルは、定用量吸入器もしくはネブライザー中で、またはミスト噴霧器中で生成させることができるような、気体で運ばれる小滴懸濁物を含む。エアロゾルは、また、例えば吸入装置から吹込みによって送達できる、空気またはその他の担体気体中に懸濁された乾燥粉末組成物を含む。GandertonおよびJones、「Drug Delivery to the Respiratory Tract」Ellis Horwood(1987);Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273〜313;およびRaeburnら、J.Pharmacol.Toxicol.Meth.27:143(1992)を参照されたい。ナノ粒子を含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に公知であるように、圧力駆動式エアロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーを用いるなどの任意の適切な手段によって生成させることができる。例えば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。ナノ粒子を含む固体粒子のエアロゾルも、同様に、製薬の技術分野で公知の技術により、任意の固体粒子状薬剤のエアロゾル発生器を用いて生成させることができる。
【0104】
別法として、本発明のナノ粒子を、全身ではなく局所的に(例えば、腫瘍中および/またはその近隣に直接的に)例えばデポ剤または徐放性製剤の状態で投与することができる。
【0105】
本発明のナノ粒子は、任意選択的に他の治療剤および/または処置と共に送達することができる。さらなる治療剤および/または処置は、本発明のナノ粒子の前に、後に、および/またはナノ粒子と同時に送達することができる。本明細書中で使用する場合、単語「同時に」は、併用効果をもたらすように、時間が十分に近接していることを意味する(すなわち、同時とは、一緒でよく、あるいは互いに前または後の短時間内に2つ以上の事象が行われてもよい)。一実施形態において、本発明のナノ粒子は、抗がん剤(例えば、本明細書に記載のような化学療法薬または化学療法剤)および/または血管新生抑制剤と共に投与され、それらの非限定的例には、VEGF(例えば、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS))および血管新生のその他のプロモーター(例えば、bFGF、アンジオポイエチン−1)に対する抗体;α−v/β−3血管インテグリンに対する抗体(例えば、VITAXIN)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ダルテパリン、ABT−510、CNGRCペプチドTNFα接合体、シクロホスファミド、リン酸コンブレタスタチンA4、酢酸ジメチルキサンテノン、ドセタキセル、レナリドミド、エンザスタウリン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、(Abraxane)、大豆イソフラボン(Genistein)、クエン酸タモキシフェン、サリドマイド、ADH−1(EXHERIN)、AG−013736、AMG−706、AZD2171、トシル酸ソラフェニブ、BMS−582664、CHIR−265、パゾパニブ、PI−88、バタラニブ、エベロリムス、スラミン、リンゴ酸スニチニブ、XL184、ZD6474、ATN−161、シレンギチド、およびセレコキシブが含まれる。さらに、本発明の主題は、当技術分野で公知のように、ナノ粒子の送達と組み合わせて、放射線処置および/または外科処置を受け入れることができ、かつまた、化学療法薬、サイトカイン、ホルモンおよび/または血管新生抑制剤を受け入れることができる。
【0106】
特定の実施形態において、ナノ粒子は、対象に治療有効量(この用語は本明細書中で定義される通りである)で投与される。薬学的に活性な化合物の投与量は、当技術分野で公知の方法によって決定することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.イーストン、ペンシルヴェニア州)を参照されたい。任意の特定のナノ粒子組成物の治療有効量は、組成物によって、および対象によって若干相違し、対象の状態、個々のナノ粒子の組成、ならびに/あるいは送達の経路および/または頻度に依存する。
【0107】
核酸を含むナノ粒子の投与/送達に関して、約109〜約1012ナノ粒子/cm2(例えば、109/cm2、1010/cm2、1011/cm2、1012/cm2のナノ粒子)の投与量範囲を採用できる。所定体積の担体または媒体(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS);ヒドロゲルなど)中のナノ粒子の数は、分光分析により、または粒子を定量するための当技術分野で公知の任意の他の方法により測定される。
【0108】
治療薬を含むナノ粒子の投与/送達に関して、投与量範囲は、どの薬物が使用されるかに応じて、当技術分野で標準的な方法により決定されるような、約5mg/m2〜約200mg/m2のナノ粒子、またはより詳細には約10mg/m2〜約100mg/m2のナノ粒子(例えば、5mg/m2、6mg/m2、7mg/m2、8mg/m2、9mg/m2、10mg/m2、11mg/m2、12mg/m2、13mg/m2、14mg/m2、15mg/m2、16mg/m2、17mg/m2、18mg/m2、5mg/m2、19mg/m2、20mg/m2、25mg/m2、30mg/m2、35mg/m2、40mg/m2、45mg/m2、50mg/m2、55mg/m2、60mg/m2、65mg/m2、70mg/m2、75mg/m2、80mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、95mg/m2、100mg/m2、125mg/m2、150mg/m2、175mg/m2、200mg/m2のナノ粒子)であってもよい。
【0109】
ナノ粒子の投与/送達に関する典型的な投与量範囲としては、mg/kgで表現して、約2mg/kg〜約20mg/kgのナノ粒子、および約5mg/kg〜約10mg/kgの範囲のナノ粒子(例えば、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kgのナノ粒子)が挙げられる。
【0110】
本発明のp53キメラ(例えば、p53/p73OD)の投与/送達に関して、典型的な投与量範囲は、約1.0mgDNA/kg〜約10.0mgDNA/kg(例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4,5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10.0mgDNA/kg)であってもよい。
【0111】
本発明の特定の実施形態において、治療効果を達成するために、および/または診断の目的のために、1回を超える投与(例えば2、3、4またはそれ以上の投与)を、種々の時間間隔にわたって(例えば、毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年など)採用することができる。
【0112】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、本発明のナノ粒子を採用する種々の方法を提供する。とりわけ、本明細書中で提供されるのは、ナノ粒子を細胞に送達する方法であって、細胞を本発明のナノ粒子と、ナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法である。該細胞は、インビボであってもよく(すなわち、対象中の細胞)、または該細胞は、インビトロまたは生体外であってもよい。さらに、本発明の細胞は、がん細胞、前がん細胞、または腫瘍細胞であってもよい。
【0113】
本明細書でさらに提供されるのは、それを必要とする対象において活性薬剤を腫瘍細胞に送達する方法であって、本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞表面のグルコース輸送体に結合し、腫瘍細胞によって内部移行され、それによって活性薬剤を腫瘍細胞に送達することを含む方法である。
【0114】
さらに、本発明は、それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法を提供する。
【0115】
また、本明細書で提供するのは、それを必要とする対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象における腫瘍の退縮を誘導することを含む方法である。腫瘍退縮は、例えば、当技術分野で周知のように、白血病およびその他の「液状がん」などの固形腫瘍がんでないがんにおいて測定することができる。
【0116】
本発明は、さらに、対象(例えば、それを必要とする対象)における過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法を提供する。本発明は、また、対象(例えば、それを必要とする対象)における過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象における過剰増殖性障害(例えば、過剰増殖性細胞が細胞表面のグルコース輸送体を過剰発現する)を治療することを含む方法を提供する。
【0117】
用語「がん」は、本明細書中で使用する場合、細胞の任意の良性または悪性の異常増殖を指す。本発明のがんは、原発性がんおよび/または転移性がんであってもよい。例には、限定はされないが、乳がん、前立腺がん、リンパ腫、皮膚がん、膵臓がん、結腸がん、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣がん、脳がん、原発性脳癌、頭頸部がん、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸部癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、前立腺癌、尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頸部肥厚、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、および網膜芽細胞腫であってもよい。本明細書でさらに提供されるのは、当技術分野で公知であるような、突然変異p53表現型に付随する任意のがんである。
【0118】
用語「対象」は、本明細書中で使用する場合、本発明の方法を実施することのできる任意の対象を包含する。本発明の方法により本発明のナノ粒子を送達することのできる対象には、医療目的(例えば、治療および/または診断)でのヒト対象、ならびに獣医学および薬物のスクリーニングおよび開発の目的での動物対象の双方を包含する。一部の実施形態において、対象は、鳥類対象または哺乳動物対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、霊長類、ラット、マウス、ウサギ目、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)でよく、特定の実施形態において、ヒト対象(男性および女性対象の双方を含み、かつ新生児、幼児、若年、青年、成人、および老齢対象を含み、さらに懐妊対象を含む)である。他の実施形態において、対象は、がん、腫瘍増殖、および/または他の過剰増殖性障害の動物モデルである。
【0119】
「それを必要とする」対象には、限定はされないが、がんまたはその他の増殖性障害と診断された対象、がんを有すると疑われる対象、腫瘍を有する対象、腫瘍を有すると疑われる対象、がんまたはその他の増殖性障害を有するリスクの高い対象、がんを有する可能性が高い対象、腫瘍を有する可能性が高い対象などが含まれる。このような対象は、それゆえ、治療および/または診断の目的でそれらに本発明のナノ粒子を投与または送達することを必要とし、かつ/またはそれが有益であり、かつ/またはそれを望む対象である。
【0120】
用語「治療有効量」または「有効量」は、本明細書中で使用する場合、当技術分野で周知のように、例えば、状態(例えば、障害、疾患、症候群、疾病、傷害、外傷性および/または外科性創傷)に苦しむ対象に、対象の状態(1種または複数の症状)の改善、状態の進行の遅延または低減、状態の開始の予防または遅延、および/または臨床パラメーター、疾患または疾病の状態または分類の変化を含む有益な効果であり得る、など調節効果を付与する本発明のナノ粒子、および/または本発明のナノ粒子を含む組成物の量を指す。
【0121】
例えば、治療有効量または有効量は、対象において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%まで状態を改善する(例えば、がんを治療するおよび/または腫瘍の大きさを縮小するおよび/または腫瘍の退縮を誘導する)本発明のナノ粒子または組成物の量を指す。
【0122】
「治療する」、「治療すること」、「治療」または「治癒すること」は、状態(例えば、障害、疾患、症候群、疾病、外傷性または外科性創傷など)に苦しむ対象に、例えば有益な効果であり得る調節効果を付与する任意の部類の活動を指す。
【0123】
用語「治療する」、「治療すること」、「治癒すること」または「〜の治療」(または文法的に等価な用語)とは、対象の状態の重症度が、低減されるまたは少なくとも好転または改善されること、および/または少なくとも1つの臨床症状の若干の緩和、軽減または減少が達成されること、および/または状態の進行の遅延および/または疾患もしくは障害の開始の遅延が存在することも意味する。
【0124】
「予防する」、「予防すること」または「予防」とは、対象における病理学的状態および/または疾患状態もしくは現状の進行および/または顕在化を回避または排除することを意味する。
【0125】
腫瘍の大きさが縮小される本発明の方法では、腫瘍の大きさを、本発明のナノ粒子および/または組成物での治療なしでの腫瘍の大きさに比較して縮小することができる(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%まで縮小される)。また、治療の有効性は、本発明のナノ粒子および/または組成物での治療なしでの腫瘍成長率に比較した場合の、腫瘍の成長率の低下または腫瘍退縮の誘導を監視することによって測定することできる(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%まで低下した成長率または誘導された退縮率)。有効性を判定するために測定することのできるその他のパラメーターは、本発明のナノ粒子および/または組成物での治療に応答した腫瘍細胞のアポトーシスの割合/程度、および/または老化である。
【0126】
本発明のナノ粒子は、限定はされないが、経口送達、静脈内送達、皮下送達、注射、外科的移植、体腔中への送達、局所適用、およびこれらの任意の組合せを含む、種々の方法を介して対象に送達される。
【0127】
本発明は、さらに、対象におけるがんを診断する方法を提供する。一実施形態において、対象におけるがんをインビトロで診断する方法であって、a)本発明のナノ粒子を対象からの細胞と接触させること;b)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性を測定すること;ならびにc)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性を、対照対象の細胞中へのおよび/または診断されている対象の対照細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性と比較することを含み、それによって対照対象の細胞および/または試験対象の対照細胞と比較した場合の対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の量および/または割合および/または示された選択性の増加が、対象におけるがんの診断指標となる、方法が提供される。細胞中への本発明のナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性を測定する方法は、本明細書で示される実施例に記載の通りであり、当技術分野で周知の通りである。非限定的例には、マーカー(例えばGFP)の検出、および産生物(例えば、β−ガラクトシダーゼ)を産生するための、ナノ粒子によって運搬されるヌクレオチド配列の発現の測定が含まれる。
【0128】
また、本明細書中で提供されるのは、対象におけるがんをインビボで診断する方法であって、a)造影剤を含む本発明のナノ粒子を対象に送達すること;b)対象において造影剤からのシグナルを検出すること;およびc)対象において造影剤からのシグナルを、対照対象または診断されている対象の対照組織における同一造影剤からのシグナルと比較することを含み、それによって対照対象または対照組織からのシグナルと比較した場合の対象からのシグナルの変化(例えば、特定の臓器、細胞型、位置などへのシグナルの蓄積)が、対象におけるがんの診断指標となる、方法である。前記造影剤が対象内に存在する場合に本発明の造影剤からのシグナルを検出する方法は、当技術分野で周知である。
【0129】
さらに、本発明の方法を採用して、腫瘍の動態(例えば、対象への本発明のナノ粒子の送達に続く、時間にともなう腫瘍の大きさの縮小)を監視し、効果的な治療を見つけることができると考えられる。本発明のナノ粒子を、治療効果を同時に付与し、このような監視方法のための検出可能なシグナルを提供するように操作することができる。
【0130】
本発明の実施形態は、さらに、1種または複数の本明細書に記載のナノ粒子および/または組成物、ならびに任意選択で使用および/または投与のための説明書を含むキットを含む。当業者は、本発明のキットが、当技術分野で周知であるような適切な試薬およびキットを使用するための指示書に加えて、キットの試薬を保持するための1つまたは複数の容器および/または貯蔵場所を含むことができることを理解するであろう。キットのこれらの各成分は、同一容器中で一緒にされ、かつ/または別々の容器中に準備される。
【0131】
さらなる態様において、本発明は、p73ODを含むp53キメラであるp53の誘導体を提供する。また本明細書中で提供するのは、薬学的に許容される担体中に、p73ODを含むp53キメラを含む、それから実質的になる、またはそれからなる組成物である。
【0132】
p53/p73ODとしても知られる、p73オリゴマー化ドメイン(OD)を含むp53キメラは、393個のアミノ酸を有するヒトp53タンパク質であり、その中のアミノ酸318〜364は、p73のアミノ酸346〜390(オリゴマー化ドメイン)で置き換えられている[28]。野生型p53(例えば、PubMed中の遺伝子ID7157)、野生型p73(例えばPubMed中の遺伝子ID7161)、およびキメラp53/p73ODのそれぞれのアミノ酸配列を、置換された配列を太字で表して後に示す。これらの野生型およびキメラ(図でp53(73βaa346−390)と記載)の概略を、種々のドメインを識別して図12に示す。当業者は、p53キメラのアミノ酸配列に対する種々の置換を、本発明のp53の機能を変えることなしに行うことができることを、容易に理解するであろう。このような変異アミノ酸配列の産生および生じる変異p53キメラの機能性に関する試験のためのアッセイは、十分に当業者の技術の範囲内である。したがって、本明細書で提供されるp53キメラ配列のこのような変異は、本発明に包含される。
【0133】
p73(499個のアミノ酸;GenBank(登録商標)データベース受託番号CAA72219)、アミノ酸346〜390が太字である。
【表1】
【0134】
p53(393個のアミノ酸;GenBank(登録商標)データベース受託番号NP 00537)、アミノ酸318〜364が太字である。
【表2】
【0135】
p53/p73OD。p53(393個のアミノ酸からなる配列)のアミノ酸318〜364が、p73(499個のアミノ酸からなる配列)のアミノ酸346〜390で置き換えられている。
【表3】
【0136】
本発明の特定の態様は、本発明のp53キメラが、腫瘍細胞中の突然変異p53に結合せず、そのため高レベルの突然変異p53の存在下でp53の機能を効果的に回復できるという予想外の発見に基づく。したがって、本発明のp53キメラを治療薬として使用して、がんを治療しかつ/または腫瘍の大きさを縮小することができる。したがって一態様において、本発明は、p73ODを含むp53キメラ(例えば、p53/p73OD)を細胞に送達する方法であって、細胞をp53キメラと、p53キメラが細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法を提供する。この方法の種々の実施形態において、細胞は、インビボで、インビトロで、またはその双方で存在することができる。本明細書中でさらに提供されるのは、それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象の腫瘍細胞中に導入し、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む、そのことから実質的になる、またはそのことからなる方法である。
【0137】
本発明は、さらに、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む、そのことから実質的になる、またはそのことからなる方法を提供する。
【0138】
本発明のp53キメラは、前に記載のように、本発明のナノ粒子の一部として含めることができる。しかし、対象へのp53キメラの送達は、本発明のナノ粒子の一部としての対象の細胞中への導入に限定されないと解される。具体的には、このような送達は、細胞中に核酸分子を導入するための公知の任意の媒体および/または機構によって、本発明の対象の細胞中に本発明のp53キメラを導入することを含むことができる。核酸分子を対象中および対象の細胞中に送達するための多くのプロトコールは、当技術分野で周知であり、本発明の方法に包含される。非限定的例には、周知のように、プラスミド、発現ベクター、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AVV)、アルファウイルス、ポックスウイルスなど)、リボソーム、裸の核酸分子などが含まれる。本発明の特定の実施形態では、p53キメラを、当技術分野で周知であるアデノウイルス介在性遺伝子移動システムを介して細胞中に導入することができる。
【0139】
本発明のナノ粒子および/またはキメラを採用する本発明の方法において、このような方法は、さらに、当技術分野で周知のプロトコールにより、対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、サイトカイン、ホルモン、放射線処置、外科的処置、またはこれらの組合せを施すことを含む、それから実質的になる、またはそれからなることができる。このようなさらなるステップは、対象へのp53キメラの送達の前、後、および/または送達と同時に実施することができる。
【0140】
さらに、ナノ粒子および/またはp53キメラを採用する本発明の方法には、対象にプロテインキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびこれらの任意の組合せを投与することを含む、それから実質的になる、またはそれからなるさらなるステップが含まれ得る。本明細書中でさらに提供されるのは、薬学的に許容される担体中に本発明のキメラを含む組成物を含むキットである。
【0141】
本発明は、以下の実施例中でより詳細に説明されるが、その多くの修正形態および変形形も当業者にとって明白であるので、該実施例は、単なる例示と解釈される。
【実施例】
【0142】
[実施例1 がん細胞に特異的なナノ粒子送達システム]
本発明では、ワールブルグ効果、すなわち、がん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込む現象を利用することによって、がん細胞を標的とする以前には記載されていない部類のナノ粒子を開発した。具体的には、グルコースに接合されたPEGに連結されたポリエチレンイミン(PEI)接合体(GLU−PEG−PEI)を合成した。細胞培養研究において、このシステムを使用してEGFPまたはβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)発現プラスミドを送達すると、非がん細胞株であるRWPEまたはMCF−10A細胞と比較して、がん細胞株であるPC3またはMDA−MB−231において相当により大きな送達効率が達成された。送達の特異性は、過剰量のグルコースの添加がEGFPまたはβ−Galの発現を著しく抑制することの発見によって立証されるように、グルコース輸送体に特有のものである。さらなる分析は、GLU−PEG−PEI/DNA複合体が、ナノ粒子/グルコース輸送体複合体のエンドサイトーシス介在性内部移行により細胞に入ることを示した。まとめると、これらの結果は、がん療法における該送達システムの可能性に関する原理証明を提供する。
【0143】
抗がん療法の有効性は、健常細胞を損傷することなしに、がん細胞を縮小または除去する能力に依拠する。したがって、がん細胞を優先的に標的とする戦略は、がん療法の成功において必須である。ナノテクノロジーをベースにした薬物送達システム内に治療薬剤を封じ込めることは、製剤化戦略に広範に適用されている。種々のリポソーム、ポリマー性ミセル、デンドリマー、タンパク質ナノ粒子、ウイルスナノ粒子、炭素ナノチューブ、およびカチオン性ポリマーを含め、がん細胞への治療薬の送達を高めるために現在探索されている種々のナノ粒子系が存在する[24]。腫瘍組織中へのナノ粒子の蓄積は、腫瘍の微小血管系を通るナノ粒子の管外遊出および腫瘍組織中での治療薬品の蓄積を促進するための長い循環半減期に依存する受動的過程である。
【0144】
循環時間を長くする1つの決定的な戦略は、組織のマクロファージによる取込みを回避すること、および網膜内皮系による除去に抵抗することである。この目的のため、ナノ粒子を不活性で生体適合性のあるポリマーで被覆し、ステルス表面を創出してきた。例えば、ナノ粒子表面へのポリエチレングリコール(PEG)またはアルギネートなどの親水性ポリマーの組込みが、循環時間を増大させるために広範に使用されてきた[25]。一旦ナノ粒子が脈管系から腫瘍組織中に管外遊出すると、腫瘍細胞によるそれらの取込みは、治療薬品のより高い細胞内濃度およびそれに続く高められた治療有効性をもたらすことのできる積極的標的指向化によって促進される。積極的標識指向化は、送達を高めるために外面に接合された標的指向性リガンドの使用を必要とする。細胞増殖マーカーは、多くのこれらのマーカーが特定のがん細胞上で高度に発現されるので、がん治療薬のための重要な標的の部類を代表する。積極的標的指向性ナノ粒子によって利用される最も確立されたがん細胞標的としては、ヒト上皮受容体に対する抗体、移行受容体、および葉酸受容体が挙げられる。抗体を標的とすることは、見込みのある戦略と考えられるが、それは、腫瘍内取込みおよび腫瘍中での均一分布の双方を制限し、そのため薬物動態特性に有害な影響を及ぼす大きな水力学的大きさを含む、いくつかの欠点を有する。標的指向化の新たな方法が最近開発されている。それらの中で、核酸リガンド(アプタマー)は、かなりの興味を得ている。アプタマーは、分子内相互作用を介して、標的抗原に高い親和性および特異性で結合する独特な三次構造に折りたためるDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドである。バイオマーカーの認識に現在利用可能なプローブと比較して、アプタマーは、高特異性、低分子量、容易で再現性のある産生、多様な応用性、および容易な操作性を所持する[24]。アプタマーの使用は、標的指向化ナノ粒子の送達の重要な進歩を代表するが、がん細胞に特異的なアプタマーの同定は、相変わらず難題であり、このような取組みのボトルネックであった。
【0145】
本発明は、ワールブルグ効果を、すなわち、一般にがん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込むことを利用することによってがん細胞を標的とするナノ粒子の新規な形態の開発に基づく。具体的には、本発明では、高度に過剰発現されたグルコース輸送体を利用して、がん細胞に優先的に入ることのできる、グルコースに接合されたPEG(GLU−PEG)に連結されたナノ粒子を合成した。アンチセンスRNA、RNAi、およびmiRNAなどの新たな部類の生物活性巨大分子の明らかになりつつある治療的潜在能力を認識し、これらのGLU−PEGナノ粒子の使用を、発現プラスミドの細胞内送達について解析した。ポリエチレンイミン(PEI)を使用して、GFPを発現するまたはβ−ガラクトシダーゼを発現するプラスミドを細胞中へ送達するためのGLU−PEG−PEIを合成した。
【0146】
図1に示すように、GLU−PEG−PEIプラスミド複合体を合成するための4ステップ反応を設計した。PEGに対するグルコースの比率は、285nmでの分光法を使用して測定した。GLU−PEG/PEI/DNAの最適組成は、3:1:1であると判定された。
【0147】
GLU−PEG−PEIナノ粒子を調製したら、EGFP発現プラスミドを使用して、GFP発現に関して、送達システムが非形質転換細胞に比較して形質転換細胞を優先的に標的とする能力を試験した。具体的には、乳癌細胞株MDA−MB−231を、非形質転換ヒト乳腺上皮細胞株であるMCF−10A細胞株と比較した。緑色蛍光シグナルの試験は、2種の細胞株中でのGFPの明らかに異なる発現を明らかにした(図2A)。平均して、MDA−MB−231細胞中では50%を超えるトランスフェクション効率が達成され、一方、同一条件下でGFP陽性であるMCF−10A細胞は5%未満であることが見出された。
【0148】
GLU−PEG−PEIが介在する差別的な送達が細胞型に特異的であるかどうかを判定するため、1対のヒト前立腺上皮細胞株を並行して調べた。図2Bに示すように、非形質転換前立腺上皮細胞に比較した前立腺がん細胞の優先的標的化が、明らかである。前立腺癌細胞株であるPC3は、ほぼ60%のGFP陽性細胞を提示した。対照的に、非形質転換前立腺上皮細胞株であるRWPEは、5%未満のGFP発現細胞集団を有した。
【0149】
結果をさらに検証するため、EGFPプラスミドを、β−ガラクトシダーゼを発現するベクターで置き換えた。図2Cに示すように、GFPに類似の結果が観察され、GLU−PEG−PEIはβ−gal発現に関してがん細胞を標的とした。まとめると、これらのデータは、GLU−PEG−PEIが、発現プラスミドを、非形質転換細胞に比較して癌細胞に優先的に送達する能力があることを立証した。
【0150】
がん細胞は、高度に増加したグルコース取込みの原因である高レベルのグルコース輸送体を一般には発現することが、広く発表されている。GLU−PEG−PEIが、遺伝子送達のためにグルコース輸送体を利用したかどうかを判定するために、過剰量のグルコースを含めることによって競合実験を実施した。高濃度(50mM)のグルコースの存在下での遺伝子発現の分析は、5mMグルコースを含む培地で培養された細胞と比較した場合のGFP発現の著しい抑制によって証明されるように、グルコース輸送体依存性遺伝子送達を支持している(図3A)。
【0151】
グルコース競合研究は、GLU−PEG−PEI介在性遺伝子送達がグルコース輸送体依存性であることを確証したが、GLU−PEG−PEI/DNA複合体がどのように細胞に入るかは不明なままであった。グルコースの大きさに比べてより大きいGLU−PEG−PEI/DNAの大きさを考慮すると、ナノ粒子/DNA複合体は、グルコース輸送体で促進される拡散により形質膜を横切るグルコースとは異なる方式で細胞に入ると予想される。受容体−リガンド複合体のエンドサイトーシス介在性内部移行は、トランスフェリンおよび葉酸を含むリガンド接合型ナノ粒子のための主な細胞進入経路であることが示されている。エンドサイトーシスがGLU−PEG−PEI/DNA複合体のための細胞進入機構でもあるかどうかを判定するための研究を実施した。これに取り組むために、エンドサイトーシスの活性を、初期エンドソームの活性を、そしてそれによってエンドサイトーシスの活性を制御する、恒常的に活性のあるまたはドミナントネガティブな突然変異Rab5の発現を介して変化させた。エンドサイトーシス介在性取込みと矛盾せず、恒常的に活性なRab5{Rab5(Q79L)}の発現は、対照と比較してより高レベルのβ−Gal発現によって立証されるように、GLU−PEG−PEIによる遺伝子送達の著しい増加と関連していた(図3B)。ドミナントネガティブな突然変異{Rab5(S34N)}を発現することによるエンドサイトーシスの活性の阻害が、GLU−PEG−PEI介在性β−Gal発現の抑制をもたらすという観察は、これらのデータと一致する(図3B)。
【0152】
[実施例II インビボでの研究]
組織への分布を研究するため、GLU−PEG−PEIを含むナノ粒子を使用して、β−ガラクトシダーゼ発現プラスミドをマウスに送達する。無胸腺の雄性および雌性ヌードマウス(Balb/c nu/nu、4〜6週齢)は、Harlan laboratoriesから購入する。マウスを、病原体のない条件下に収容し、食物および水を制約なしに供給して、12時間/12時間の明暗サイクルで維持する。0.1mLのPBS中の5×106個の腫瘍細胞(例えば、肺癌細胞、乳がん細胞、前立腺がん細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞など)の接種物をマトリゲル(Matrigel)と4℃で混合し、次いでマウス脇腹の皮下(s.c.)区域に注入する。腫瘍の大きさが1cmに達したら、GLU−PEG−PEI/β−Gal(50μLのPBS中50μg/DNA)を尾部静脈注入により投与するか、あるいは0.5mLのGLU−PEG−PEI/β−gal/ヒドロゲル(20wt%Pluronic F127ゲル)混合物を、腫瘍をもつマウスに皮下で投与する。24または48時間後に、マウスを頸部断頭によって屠殺する。肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓、および腫瘍を含め、種々の組織を集める。β−Gal染色のため凍結組織切片を調製する。腫瘍細胞へのプラスミドの選択的送達を確実にするため、相対的遺伝子移動効率(腫瘍組織対正常組織中でのβ−Galの発現)を評価し、最適化した。
【0153】
[実施例III ヒト対象へのナノ粒子の送達]
ポリヌクレオチドを含む本発明のナノ粒子を、ナノ粒子の組成および治療すべき個々の障害に応じて、本明細書に記載のような投与量で(例えば、経口および/または静脈内および/または皮下で)ヒト対象に送達する。治療の有効性を、当技術分野で周知のように、腫瘍の大きさおよび/または腫瘍増殖率の変化を測定すること、腫瘍細胞のアポトーシスおよび/または老化を測定すること、ナノ粒子によって運ばれる核酸でコードされる産生物の産生を分析すること、がん抗原(例えば、CEA、PSA)のレベルを測定すること、対象のがんに付随する兆候または症状の調節を評価することなどによって監視する。
【0154】
[実施例IV 腫瘍抑制因子PTENをコードする核酸を送達するナノ粒子を使用する、腫瘍の大きさの用量依存性縮小]
図4Bは、対照ベクター、腫瘍抑制因子PYMをコードする20μgのベクター、または腫瘍抑制因子PTENをコードする40μgのベクターのどれかを与えられたマウスから単離された腫瘍の画像である。腫瘍の大きさの用量依存性縮小に一致して、Ki67染色も、腫瘍抑制因子の遺伝子の用量依存的方式での発現による細胞増殖の阻害を示した(図4A)。
【0155】
[実施例V p73ODを含むp53キメラに関する研究]
腫瘍細胞は、ゲノムの不安定性および発がん遺伝子の活性化のせいで、持続性のp53活性化シグナルを内部に含み、p53機能の回復をがん療法の魅力的な取組みとする。突然変異p53をその野生型相当物で置き換えるために、種々の方法が試みられてきた。しかし、腫瘍細胞中の高度に豊富な突然変異p53タンパク質のドミナントネガティブな活性のため、野生型p53は、機能性であるためには、正常組織に対して厳しい毒性をもたらす可能性のある極端に高いレベルで発現されなければならない。本発明では、p73のオリゴマー化ドメイン(OD)を含むp53キメラ(p53/p73OD)が、提供される。p53ODとp73ODとの間の相互作用の欠如のため、p53/p73ODは、突然変異p53と会合せず、それゆえ突然変異p53の高いレベルにもかかわらず、p53の機能を効果的に回復する能力がある。重要なことであるが、p53/p73ODの発現は、MDM2の発現誘導による突然変異p53タンパク質レベルの著しい低下と関連している。結果として、このキメラの相当に低い発現レベルは、がん細胞の増殖を十分に抑制する。特定の実施形態において、本発明は、また、p53/p73ODをがん細胞に優先的に送達するための、グルコースに接合されたPEI−ナノ粒子系を提供する。予備的データは、がん細胞に特異的な送達に関する原理証明を提供している。したがって、本発明では、臨床環境中への迅速な移行の目的で、p53をベースにした効果的な抗がん療法の開発のために、この新規な送達システムを利用することが考えられる。この取組みは、p53をベースにしたがん療法を革命的に変える潜在能力を有するのみならず、がん療法において広範な用途を有する、がん細胞に特異的な送達システムを提供する。
【0156】
[予備研究]
マウス腫瘍モデルを用いた研究は、p53の発現を回復することが腫瘍の退縮をもたらすことを示し、確立された腫瘍がp53に弱いことを示した[26、27]。しかし、過半数のヒトがんは、野生型p53をODの介在する会合により効果的に不活性化する高レベルの突然変異p53タンパク質を発現し、腫瘍細胞におけるp53機能の回復を極めて困難にする。本発明は、p53/p73キメラを利用して、突然変異p53によるこのOD介在性不活性化を回避する。一連のp53/p73キメラタンパク質を、p53およびp73の対応するドメインを交換することによって作出した[28]。これらのキメラタンパク質の研究は、p53/p73ODがp53に結合せず、むしろそれはp73と会合し、p53およびp73は、オリゴマー化ドメイン(OD)を介して互いに会合しないことを示した。結晶構造の研究は、この観察を裏付けた[29]。機能的特徴づけは、p53/p73ODが、試験されたp53の機能をすべて保存していることを示した[28]。MDA−MB−231細胞(高レベルの突然変異p53を発現する乳がん細胞株)中で発現される場合、p53/p73ODは、野生型p53ではないが、細胞増殖を効果的に阻害した(図5A)。p53/p73は、また、おそらくはMDM2発現の誘導に由来するのであろう、突然変異p53タンパク質レベルの有意な低下を誘導した(図5B、レーン3)。発癌機能の主な原因である突然変異p53のドミナントネガティブ型および機能獲得型活性を考慮すると、このことはとりわけ重要である。結果は、野生型p53と異なり、p53/p73ODが、高レベルの突然変異p53の存在下で効率的な増殖抑制を誘導できることを立証しており、このキメラの発現が、突然変異p53を発現する腫瘍細胞中でp53の機能を回復するための効果的な取組みとして役立つことができることを示している。
【0157】
腫瘍細胞とは逆に、正常細胞は、p53活性化の固有のシグナルを通常的には内部に含まない。結果として、中位レベルのp53/p73OD発現に対する正常細胞の応答は、がん細胞のそれとはおそらく異なる。このことは、同様のコロニー形成アッセイを使用して、MDA−MB−231細胞およびMCF−10A細胞(非形質転換ヒト乳腺上皮細胞株)を比較することによって試験された。結果は、MDA−MB−231の細胞増殖の著しい阻害を誘導するレベルで発現された場合、p53/p73ODは、MCF−10A細胞の増殖に有意に影響を与えなかったことを示している(図6)。
【0158】
がん細胞および非形質転換細胞のp53/p73OD発現に対する異なる感受性の根底にある潜在的機構を理解するため、p53活性をさらに調べた。p53活性化の一般的に使用される代用マーカーである抗Sp15p53抗体を用いたウェスタンブロットは、p53/p73ODが、MDA−MB−231細胞中でリン酸化されるが、MCF−10A細胞中ではされないことを示した(図7A)。リン酸化と一致して、p53/p73ODの発現は、MDA−MB−231中でPUMA、MDM2、およびp21の発現の活発な誘導をもたらしたが、MCF−10A細胞中ではそうではなく(図7A)、図6に示す異なる感受性と一致していた。結果は、がん細胞は、正常細胞と異なり、強力な固有のp53活性化シグナルを内部に含むという概念に一致している。MCF−10A細胞中でのp53/p73ODの低い活性は、キメラを放射線などの外来性刺激によって活性化することができるかどうかの疑問につながる。IRで処理すると、p53/p73ODのリン酸化が、MCF−10A細胞、およびMDA−MB−231細胞中で著しく誘導され、双方の細胞型におけるDNA損傷によるキメラの活性化を示した(図7B)。フローサイトメトリー分析は、IR処理MCF−10A細胞における有意なG1細胞周期の停止を明らかにした。対照的に、MDA−MB−231細胞は、G1細胞周期の停止をほとんど示さず、むしろサブG1またはアポトーシス集団の著しい増加を示した(図7C)。この結果は、DNA損傷で誘導されるp53/p73OD活性化に対する形質転換細胞と非形質転換細胞とでの異なる応答を暗示している。
【0159】
p53/p73ODが、がん細胞中でp53の機能を効果的に回復できることがわかり、遺伝子送達の戦略が探索されてきた。長年にわたり、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、およびウイルスベクターなどの種々の送達システムが導入されてきた。ウイルスベクターは、高効率の遺伝子移動を提供できるが、免疫原性および宿主ゲノム中での挿入型変異誘発の可能性が、大きな懸念として存在する。結果として、非ウイルス性送達システムがますます一般的になっている。本明細書に記載の研究では、カチオン性ポリマーを使用し、ワールブルグ効果、すなわち、がん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込むことを利用することによって新規な形態のがん細胞標的化を開発した。具体的には、グルコースに接合されたPEGに連結されたポリエチレンイミン(PEI)(GLU−PEG−PEI)を合成した。図1に示すように、GLU−PEG−PEIプラスミド複合体を合成するために4ステップ反応を設計した。グルコースのPEGに対する比率は、285nmでの分光法で測定した。GLU−PEG/PEI/DNAの最適組成は、3:3:1であると判定された。β−ガラクトシダーゼの発現系(lacZプラスミド)を使用して、送達システムがβ−gal発現に関して非形質転換細胞に比較して形質転換細胞を優先的に標的とする能力を試験した。具体的には、乳癌細胞株MDA−MB−231を、MCF−10A細胞と比較した。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal(登録商標))での染色は、2種の細胞株におけるβ−galの明確に異なる発現を明らかにした(図8A)。平均して、MDA−MB−231細胞では60%を超えるトランスフェクション効率が得られたが、同一条件下でβ−gal陽性であることが見出されたMCF−10A細胞は5%未満であった。GLU−PEG−PEI介在性の異なる送達が、細胞型に特異的であるかどうかを判定するために、1対のヒト前立腺上皮細胞株を並行して試験した。図8Bに示すように、非形質転換前立腺上皮細胞に比較して優先的な前立腺がん細胞の標的化は、明らかである。前立腺癌細胞株であるPC3は、ほぼ60%のβ−gal陽性細胞を提示した。対照的に、非形質転換前立腺上皮細胞株であるRWPEは、集団の5%未満がβ−galを発現した。GLU−PEG−PEIが遺伝子送達のためにグルコース輸送体を利用したかどうかを判定するために、過剰量のグルコースを含めることによって、競合実験を実施した。高濃度(50mM)のグルコースの存在下における遺伝子発現の分析は、5mMのグルコースを含む培地を用いて培養された細胞と比較した場合のβ−gal発現の著しい抑制によって証明されるように(図8C)、グルコース輸送体依存性の遺伝子送達を支持している。同時に、これらのデータは、GLU−PEG−PEIが、発現プラスミドを非形質転換細胞に比較して癌細胞に優先的に送達する能力のあることを立証した。
【0160】
PEIは優れたトランスフェクション効率を提供できるが、その使用は、高い細胞障害性によって阻止されることがある。実際、PEIは、MDA−MB−231細胞の生存率に用量依存的方式で否定的影響を及ぼす(図9)。しかし、細胞障害性は、PEIをGLU−PEGまたはGLU−ALGと混合した場合に低減されることが見出された。この効果は、細胞障害性の用量依存性低下をもたらす、漸増する量のGLU−ALGを使用することによって確認された(図9)。
【0161】
腫瘍異種移植片マウスモデルを使用して、GLU−ALG−PEIが腫瘍細胞にプラスミドをインビボで選択的に送達する能力を評価した。0.1mLのPBS中の5×106個のMDA−MB−231細胞の接種物をマトリゲルと4℃で混合し、次いでマウス脇腹の皮下(s.c.)区域に注入した。腫瘍の大きさがほぼ200mmに達したらPBS中のGLU−PEG−PEI/lacZを、腫瘍をもつマウスに尾部静脈注入により投与した。48時間後に、マウスを頸部断頭によって屠殺した。肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓、および腫瘍を含め、種々の組織を集めた。β−Gal染色のため凍結組織切片を調製した。驚くべきことに、β−Gal陽性染色は、腫瘍組織においてのみ観察され、他の組織では観察されなかった(図10)。ALG−PEIが同一条件下でlacZを送達できないことは、グルコース依存性の腫瘍細胞標的化を示している。
【0162】
インサイチュでのp53の活性化の検出を容易にするため、基準的なp53応答要素の13反復を、GFPタンパク質の発現を推進するようにクローン化したPg13−GFP系を開発した。p53に関するGFP発現の絶対依存性を、p53欠損H1299細胞で検証した。Pg13−GFP構築物を安定的に発現するMDA−MB−231細胞を作出し、GLU−PEG−PEI/WTp53またはp53/p73ODと共にインキュベートした。24時間後に細胞を固定した。細胞核の検出を容易にするためDAPI染色を実施し、GFPシグナルを蛍光顕微鏡下で調べた。p53/p73ODは、p53wtと異なり、GFPの発現によって証明されるように、MDA−MB−231細胞中でp53転写活性の増加と関連していた(図11)。結果は、GLU−PEG−PEI粒子が、発現されるだけではなく機能性でもあるp53/p73ODを成功裏に送達したことを示している。GLU−PEG−PEI/p53/p73ODのインビボでの研究のために、Pg13−lacZおよびPg13−ルシフェラーゼプラスミドを創出し、Pg13−GFPと並行して使用する。
【0163】
[実験モデル]
本明細書に記載の研究は、インビトロおよびインビボモデルの双方を使用する。細胞モデルとしては、NC160ヒトがん細胞株、および例えば、American Type Culture Collection(ATCC)を通して得られるその他の非形質転換細胞株またはがん細胞株が挙げられる。ヌードマウスを使用して、腫瘍異種移植片モデルを創出する。ヒトがんの遺伝子操作されたマウスモデルも使用される。
【0164】
[NCI60ヒト腫瘍細胞株中のp53/p73ODをその細胞増殖を阻害する活性について試験するための研究]
p53/p73ODの増殖阻害活性をより広範な基盤上で検証するため、肺、結腸、乳腺および前立腺などの一般的なヒト腫瘍から得られたNCI60ヒトがん細胞株について研究を実施する。がん細胞株中のp53/p73ODの活性を、1)生化学的レベル−キメラタンパク質およびp53標的遺伝子の発現で、および2)細胞レベル−AlamarBlue(登録商標)およびコロニー生き残りアッセイによるがん細胞増殖で評価する。p53は、細胞型に応じて細胞の老化またはアポトーシスのどちらかの誘導によって細胞増殖を阻害することが確認されている。これらの2種の細胞応答は、p53/p73OD介在性増殖阻害の根底にある機構を判定するための対応するマーカーを使用することによって調べられる。mycタグを付けた野生型p53、p53/p73OD、またはp53(R175H)/p73ODをコードするレトロウイルスベクター(pBABE)を調製し、使用する。Mycタグは、再導入されるタンパク質を外来性突然変異p53タンパク質から容易に区別することを可能にする。並行して野生型p53を試験して、がん細胞中の突然変異p53のドミナントネガティブ活性を評価する。最近の研究は、アポトーシスの誘導におけるp53のための転写非依存的役割を示唆している[1、2]。このような可能性は、転写欠損型突然変異p53(R175H)/p73ODを含めることによって調べられる。
【0165】
レトロウイルス介在性遺伝子移動を、以前に説明されているように実施する[30]。p53またはp53/p73ODの異なる発現レベルは、5μg/mLのポリブレンの存在下に100mmの皿につき2500万個の受容者細胞を異なる量のウイルス原液(0.5、1、1.5、2、2.5、または3mL)で感染させ、37℃でインキュベートすることによって得られる。いくつかの癌細胞株を用いた予備研究において実施されたpBABE−lacZウイルスでの対照感染は、平均で50〜80%の細胞が定型的に感染されたことを示している。感染の24時間後に、非感染細胞を除去するために、細胞を、細胞型に応じて2〜5μg/mLのヒューロマイシン(Sigma)を含む培地中で2日間選択する。細胞を、ピューロマイシン不含培地中で24時間回収し、次いで、さらなる分析に供した。
【0166】
製造業者のプロトコールに従ってAlamarBlue(登録商標)(Invitrogen)を使用するAlamarBlueアッセイを実施して、細胞生存率を測定する。タイムコース実験(0、1、3、5、7および9日間)を実施して、時間と共に細胞生存率を監視する。
【0167】
コロニー形成アッセイでは、細胞を、p60−mm培養皿中に播種する(細胞数は、各細胞型のプレーティング効率に応じて異なる)。12日後に、コロニーを固定し、クリスタルバイオレットで染色する。少なくとも50細胞を含むコロニーのみを計数し、プレーティング効率(計数されたコロニー/播種した細胞)を計算する。
【0168】
細胞老化は、老化関連β−ガラクトシダーゼ(SA−β−Gal)、p15−Ink4b、p16−Ink4a、DcR2、およびDec−1を含むいくつかの細胞マーカーを使用して測定される。細胞生存率の実験に類似のタイムコースを実施して、老化表現型の発生を調べる。アポトーシスは、アネキシン−5−陽性細胞のフローサイトメトリー分析よって測定され、ウェスタンブロットを、前記のように種々の時点での活性化カスパーゼ−3のために使用する。
【0169】
抗Myc、p53、p21、MDM2、またはアクチンを使用する、タンパク質発現のウェスタン分析のために、細胞を採取する。遺伝子アレイ分析のために、RNAを単離する。具体的には、p53パスウェイに関連する113個の鍵遺伝子パネルの遺伝子発現をプロフィールするように設計されているp53パスウェイアレイ(AB BioScience)を使用する。調節されたp53標的遺伝子は、アポトーシス、細胞周期、細胞成長、増殖および分化、ならびにDNA修復に関与する機能性クラスターに分割される。アレイデータは、QRT−PCRおよびウェスタン分析によって確認される。
【0170】
腫瘍細胞は、高い増殖率がアポトーシス促進性遺伝子の誘導としばしば関連しているので、正常細胞に比べて有意により高いアポトーシスストレスの下にあるのが通常である[31]。腫瘍細胞が、ゲノムの不安定性および発癌遺伝子の活性化により、持続的なp53活性化シグナルを内部に含むという事実と一緒に[32]、p53/p73ODは、予備研究で示されたように、がん細胞中で発現すると容易に活性化されると予想することができる。p53/p73ODの発現は、p53の状態にかかわらずほとんどの腫瘍細胞株において増殖の有意な抑制をもたらすと予想されるが、一方、野生型p53は、p53発現の不十分ながん細胞株においてのみ活性である。突然変異p53タンパク質が腫瘍細胞中に極めて高レベルまで通常的には蓄積することを考慮すると、p53/p73ODが突然変異p53による阻害を逃れる能力は、中位レベルの発現が、がん細胞の増殖を阻害するのに十分であり、それによって潜在的に好ましくない副作用を回避すると予想されるので、極めて好都合であることがわかる可能性がある。提案される、異なるレベルのp53/p73ODを発現する実験は、腫瘍細胞の成長を抑制するのに十分な最適発現レベルの決定を可能にするはずである。最近の遺伝子研究は、MDM2が、予備研究中で確認される、がん細胞中の突然変異p53の分解の主たる原因であることを示した[3]。MDM2発現の誘導のせいで、p53/p73Dの発現による腫瘍細胞中での突然変異p53タンパク質レベルの相当の低下が期待される。このことは、治療に対する抵抗性および不十分な患者の生き残りの原因であることが示されている、腫瘍細胞中での突然変異p53タンパク質の高い存在度のため、極めて重要である。したがって、腫瘍細胞中へのp53/p73ODの導入は、腫瘍抑制機能を回復するのみならず高度に発癌性の突然変異p53タンパク質を除去する。p53/p73ODのこの一石二鳥の効果は、抗がん療法としてキメラを使用するための強力な根本的理由を提供する。
【0171】
p53の腫瘍抑制因子としての機能が主としてその転写活性によって仲介されることは、広く記載されている。p53パスウェイに特異的な遺伝子アレイ分析を実施することによって、p53/p73ODによるがん細胞中でのp53標的遺伝子発現の誘導が検出されると予想される。がんの類型に応じて、遺伝子発現の大きさおよびパターンは、p53応答性遺伝子のスペクトルの相違および種々の腫瘍細胞におけるp53共活性化因子の利用能のため、変化する可能性がある。遺伝子発現データおよびそのp53/p73OD誘導性増殖阻害との相関は、それぞれのがん類型において分析される。このような情報は、所定の腫瘍型のp53/p73OD発現への応答を評価するうえで有益であるはずである。
【0172】
腫瘍マウスモデルを使用する研究は、p53の再活性化が、腫瘍類型に応じて、主として造血器悪性腫瘍でのアポトーシスおよびその他の腫瘍型での老化を伴う、老化またはアポトーシスの誘導による腫瘍退縮を引き起こすことを立証した[26]。老化またはアポトーシスのマーカーを使用して概略を示す研究は、試験した各腫瘍細胞株におけるp53/p73OD介在性増殖阻害の根底にある機構をあらわにすると予想される。タイムコース実験は、p53/p73ODによって誘導される各表現型の誘導の動力学を測定することを可能にするはずである。
【0173】
要約すると、提案されたこれらの研究は、ヒトがん細胞株の大きなパネルにおいてp53/p73ODがp53の機能を回復する能力を評価する。p53/p73ODで誘導される遺伝子発現および増殖阻害の根底にある機構が調べられる。概略的研究から得られる結果は、腫瘍細胞、とりわけ突然変異p53を発現する細胞の増殖を阻害するためのp53/p73ODの優れた活性を立証する強力な証拠を提供すると予想される。
【0174】
[p53/p73OD発現の放射線または化学療法と併用した効果を調べるための研究]
放射線および化学療法薬は、p53を極めて強力に活性化するDNA損傷の誘導を主として介してがん細胞を死滅させる。予備研究からの結果は、p53/p73ODは、MDA−MB−231細胞およびMCF−10A細胞の双方において、放射線によって活性化されたが、それに続く細胞効果はまったく異なったことを示している。p53/p73ODの活性化が主として細胞死をもたらしたMDA−MB−231細胞と対照的に、MCF−10A細胞において放射線で誘導されるp53/p73ODの活性化は、G1細胞周期の停止と主に関連していた。形質転換細胞と非形質転換細胞との間のこのような異なる応答は、がん細胞を区別して標的とする機会を提供することができる。このことは、p53/p73ODの放射線および/または化学療法薬との併用を調べることによって検証される。低から中位の線量の放射線または用量の化学療法薬での前処置は、正常細胞において細胞周期の停止を誘導すると予想されるが、一方、がん細胞は、細胞周期のチェックポイントの欠落のため、増殖し続ける。結果として、増殖を停止した細胞は、後に続く処置によって誘導される損傷に対してより抵抗性であるのが通常なので、正常細胞は保護される。一方、がん細胞は、固有の発癌シグナルおよび外来性DNA損傷シグナルによるp53/p73ODの相乗的活性化のため、増感される。このことは、細胞をベースにしたモデルおよび動物モデルの双方を使用して検証される。
【0175】
p53/p73ODまたはp53のどちらかの異なる発現レベルは、ヒトの主ながん類型を代表する、MDA−MB−231とMCF−10A乳腺上皮細胞、PC3と正常前立腺上皮細胞、NCI−H358と3B3肺上皮細胞、Ovcar−3とIOSE−29卵巣上皮細胞、およびHT−29とRIE−1結腸上皮細胞を含む、いくつかの対をなす形質転換細胞および非形質転換細胞において、前記のようなレトロウイルス感染を介して達成される。照射または化学療法薬の用量コース実験を実施する。細胞周期の停止、細胞の生き残り、および老化を含む細胞応答を、対をなす細胞株で比較する。ウェスタン分析を並行して実施して、p53の応答を監視する。前処置のために、癌細胞における有意な細胞死を引き起こさないp53/p73ODの発現レベルを選択し、後に続く放射線または化学療法薬の処置に対する対をなす細胞の感受性に関する前治療の効果を調べる。
【0176】
p53/p73ODまたはp53のどちらかを発現する癌細胞をヌードマウスに移植し、インビボでの放射線または化学療法薬との組合せに関する研究のための異種移植片モデルを作出する。細胞研究における本明細書に記載のものに類似の戦略を使用する。
【0177】
照射または化学療法薬によって引き起こされるDNA損傷は、p53活性化の最も強力なシグナルである。発癌遺伝子の活性化およびその他のストレス表現型によるがん細胞に固有の持続的p53活性化シグナルと一緒に[33]、p53/p73ODの照射または化学療法薬との組合せに対するがん細胞の高められた感受性が期待される。発癌ストレスおよびDNA損傷は、がん細胞において相乗的活性化につながり、かつそれによってp53/p73ODの活性を増大させる可能性のある、部分的に重複はするが異なる機構を介してp53を活性化する。このような効果は、臨床医が照射線量または化学療法薬の投与量を低減し、潜在的副作用を最小化することを可能にする。提案される研究は、p53/p73ODの照射または化学療法薬との併用使用の有益な効果を試験することを可能にする。予備研究で示したように、正常細胞において放射線または化学療法薬で誘導されるp53/p73ODの活性化は、G1細胞周期の停止と関連しており、成長停止細胞は細胞障害性療法に対してより抵抗性であるのが通常なので、中位用量での前処置は、正常細胞に対して保護効果を提供すると予想される。非形質転換細胞をそれらの中でおよびがん細胞とp53/p73OD発現の存在または不在下で比較することによって、正常細胞およびがん細胞の抗がん療法の処置に対する異なる感受性が期待される。提案されるマウス異種移植片モデルは、特に突然変異p53を発現する腫瘍においてp53/p73ODの優れた抗腫瘍活性を立証するための細胞をベースにした研究を補完すると予想される。p53活性化を腫瘍部位に限定し、正常組織に対する損傷をさらに最小化することのできる照射の局所化送達は、価値ある考え方である。
【0178】
要約すると、これらの研究は、化学療法薬または放射線のp53/p73ODとの細胞生き残りに対する併用効果を調べる。p53/p73ODの化学療法または放射線との併用使用の治療有効性を高めるために、非形質転換細胞において細胞周期の停止を誘導する低用量での前処置の戦略を探索する。
【0179】
[マウス腫瘍モデルにおけるp53/p73ODの発現のための、腫瘍細胞を標的とするGLU−PEG−PEIの研究]
抗がん治療の有効性は、健常組織を損傷することなしにがん細胞を縮小および除去する能力によって判定される。したがって、がん細胞を優先的に標的とする戦略は、がん療法の成功において必須である。本発明は、ワールブルグ効果、すなわち、がん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込むことを利用することよってがん細胞を標的とするナノ粒子をベースにした送達システムの新規な形態を提供する。予備研究は、GLU−PEG−PEIが、それぞれRWPEまたはMCF−10A細胞中と比べてPC3またはMDA−MB−231中で相当により大きな効率でのlacZ発現プラスミドの送達を可能にすることを示した。マウス腫瘍モデルを使用して、GLU−PEG−PEIのインビボでの有用性を試験する。
【0180】
GLU−PEG−PEIは、組織分布研究のためにlacZ発現プラスミドを送達するのに使用される。すべての動物実験は、UTHSCSAの国際動物保護使用委員会の指針に従う。無胸腺の雄性および雌性ヌードマウス(Balb/c nu/nu、4〜6週齢)はHarlan laboratoriesから購入する。マウスを、病原体のない条件下に収容し、食物および水を制約なしに供給して、12時間/12時間の明暗サイクルで維持する。GLU−PEG−PEI/DNAを、無菌生理食塩水溶液中に、沈殿を回避するために200μg/mLを超えないDNA濃度で懸濁する。最大許容用量を、尾部静脈を経由する20、40、60、80または100μg用量のプラスミドDNAに等価な量の静脈内注入によって判定し、マウスを毒性の任意の兆候について綿密に監視する。動物の体重を3日ごとに計量する。急性毒性の一般に使用される代用マーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、血清トランスアミナーゼ活性レベルを、GLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子の全身投与の1、3、6、9、15および30日後に集めた血液サンプルから測定した。肝臓、肺、脾臓および腎臓を、組織学的検査のために採取する。
【0181】
腫瘍によるGLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子の優先的取込みを評価するために、マウス異種移植片腫瘍モデルを作出する。0.1mLのPBS中の3×106個の腫瘍細胞からなる接種物をマトリゲルと4℃で混合し、次いでマウス脇腹の皮下(s.c.)区域に注入する。腫瘍の大きさが0.2cmに達したら、PBS中のGLU−PEG−PEI/lacZを、腫瘍をもつマウスに尾部静脈注入により投与する。24または48時間後に、マウスを頸部断頭によって屠殺する。肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓、および腫瘍を含め、種々の組織を集める。β−Gal染色のため凍結組織切片を調製する。腫瘍細胞へのプラスミドの選択的送達を確実にするため、相対的遺伝子移動効率を評価し、最適化する。並行して、ナノ粒子を使用して、EGFPまたはホタルルシフェラーゼのどちらかをコードするプラスミドを送達し、蛍光造影用低エネルギーレーザー走査、またはルミネセンス造影のためのホタルルシフェラーゼに対する基質である150mg/kgのルシフェリンの腹膜内注入を使用して分布を可視化する。さらに、GLU−PEG−PEI/DNAを腫瘍内注入で投与し、ナノ粒子の分布を測定する。ナノ粒子の複数回投与が必要であるかどうかを決定するための重要な参考として役立つ遺伝子発現の持続期間を監視する。
【0182】
送達条件を確立したら、対照として野生型p53またはp53(R175H)/p73ODを含めて、p53/p73ODの活性を評価する。初期研究は、4種の癌細胞;それぞれ乳腺、前立腺、結腸直腸および卵巣がんの代表としてのMDA−MB−231、PC3、HT−29およびOvcar−3への移植からなる。これらのがん細胞株には、Pg13−lacZ、Pg13−GFP、またはPg13−Lucが安定的にトランスフェクトされ、それらを異種移植片モデルの作出に使用する。腫瘍の大きさが1cmに到達したら、PBS中のGLU−PEG−PEI/DNA複合体を尾部静脈注入により投与する。腫瘍を持つマウスをさらに4〜8週間監視する。体重および腫瘍体積を3日ごとに測定する。腫瘍体積は、式(体積=長さ×幅×深さ×0.5236mm3)を使用して計算される。蛍光またはルミネセンス造影を使用して、Pg13−GFPまたはPg13−Luc発現がん細胞に由来する異種移植片腫瘍におけるp53/p73OD介在性腫瘍抑制の動力学を監視する。p53/p73ODの発現と腫瘍退縮の程度との間の相関に基づいて、GLU−PEG−PEI/p53/p73ODの更なる投与が必要かどうかを決定する。各実験の終末時点で、頸部断頭によってマウスを屠殺する。本明細書に記載のような遺伝子発現を分析するために腫瘍サンプルおよび選択組織を集め、アポトーシスおよび老化のマーカーを使用する組織学的検査を、やはり本明細書に記載のように実施する。
【0183】
並行して、マウス異種移植片モデルを化学療法薬または放射線のどちらかで処理し、腫瘍増殖に対するGLU−PEG−PEI/p53/p73ODの化学療法または放射線との併用効果を評価する。
【0184】
異種移植片マウスモデルに由来する結果は、p53/p73ODを、ヒトがんコンソーシアム(Human Cancer Consortium)(http://mouse.ncifcrf.gov)のNIH/NCIマウスモデルからのヒトがんの遺伝子操作マウスモデルを用いて試験することによって検証される。
【0185】
GLU−PEG−PEIは、異種移植片マウスモデルにおける送達に関して腫瘍細胞を優先的に標的にすると予想される。PEG被覆は、PEIにインビボで有意に増加した循環時間を付与する。さらに、PEGは、医薬添加剤として使用され、非毒性かつ非免疫原性であることが知られている[34]。GLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子は、毒性をほとんど示さないと予想され、マウスによって十分に耐えられる。細胞をベースにした研究からの予備データは、がん細胞をグルコース輸送体に依存する方式で標的にするGLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子に関する原理証明を立証した。異種移植片マウスモデルのこれらの研究は、腫瘍によるナノ粒子の優先的取込みを立証すると予想される。EGFPまたはホタルルシフェラーゼをコードするプラスミドの使用は、GLU−PEG−PEI介在性がん細胞送達を監視することを可能にするはずである。リアルタイムのルミネセンスおよび蛍光(400〜900nm)造影を使用して、生存マウス内のナノ粒子の分布を監視し、記録する。β−galシグナルの提案される組織学的検査で補完すると、これらのインビボでの造影方法は、腫瘍細胞中での発現プラスミドの時間的および空間的分布の測定を可能にするはずである。ナノ粒子の正常組織への最低レベルの分布が期待され、EGFPまたはルシフェラーゼの発現は、プラスミドが発現できる組織の検出および発現レベルの定量化を可能にするはずである。このような情報は、p53/p73ODの使用を指導する上で助けになる。癌細胞を安定的に発現するPg13−EGFPまたはPg13−Lucの使用は、腫瘍退縮と相関する場合に最良の治療結果に最適なp53/p73ODの用量および発現の持続時間の決定を可能にするはずであるp53/p73ODのインビボでの活性を監視する上で好都合であることがわかる。化学および放射線療法と併用する場合、p53/p73ODのがん細胞へのGLU−PEG−PEI介在性送達は治療用量の低減さらに潜在的副作用の最小化を可能にするはずである化学療法または放射線の治療効果まで、腫瘍細胞を選択的に増感すると予想される。
【0186】
同時的な造影および治療的応用のための二重機能性ナノ粒子も開発することができる。予備研究において、アルギン酸−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)/GLU−PEG−PEIナノ粒子が合成され、現在、これらの応用について研究中である。
【0187】
要約すると、研究は、関連はするが相互に依存的でない2つの領域、すなわち、1)突然変異p53による不活性化に抵抗性であるp53/p73ODキメラの使用によって強調されるp53をベースにした新規ながん療法を開発すること、2)ナノ粒子をベースにしたがん細胞ターゲティング送達システムを開発すること、に焦点を当てることによって実験的治療薬を探索するために実施される。予備データは、突然変異p53を発現するがん細胞中でp53の機能を回復する上でのこのキメラの優れた活性を立証した。過半数のヒトがんが高レベルの突然変異p53を内部に含むことを考慮すると、p53/p73ODの使用は、単独または化学療法または放射線との組合せのどちらかで、かなりの治療潜在能力を有すると予想される。予備研究からのデータは、がん細胞選択的送達方法としてのGLU−PEG−PEIナノ粒子に関する原理証明を提供した。一部の実施形態においてp53/p73ODの治療有効性を増強するように設計されるが、送達システムは、がん治療を改善するためのさらなる実施形態において広範な応用を有すると予想される。
【0188】
ヌクレオチド配列に関するすべての刊行物、特許出願、特許、言及、アミノ酸配列に関する言及、および本明細書中で引用されるその他の言及は、該言及が提供される文および/または段落に関連する教示に関して参照によりその全体で組み込まれる。
【0189】
これまでの説明は、本発明の例示であり、発明を限定するものと解釈すべきでない。本発明は、クレームの等価体もその中に含めて、後記のクレームによって定義される。
【0190】
[参考文献]
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【技術分野】
【0001】
[優先権に関する記載]
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2010年1月18日出願の米国特許仮出願第61/295,898号の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、ナノ粒子を介して活性薬剤をがん細胞に選択的に送達するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗がん治療の有効性は、健常組織を損傷することなしにがん細胞を縮小および除去する能力に依拠する。したがって、がん細胞を優先的に標的にする戦略は、がん治療の成功において最も重要である。がん細胞への治療薬剤の送達を高めるために、ナノ粒子をベースにした系が探索されてきた。新たな進展は薬物送達効率を改善してきたが、がん細胞に特異的な送達を達成することは、相変わらず巨大な難題のままである。
【0004】
ワールブルグ効果として知られるがん細胞の現象は、悪性腫瘍に特徴的な抑制の効かない代謝活性に燃料を供給するためにグルコースを細胞中にしきりに引き入れる、がん細胞の十分に特徴付けられた傾向を規定する。ワールブルグ効果の最もよく知られた利用法は、放射性核種をグルコース分子に結び付け、それを患者に投与する、陽電子放射断層撮影(PET)においてである。悪性の細胞は、より多くのグルコース−放射性核種の媒体を取り込み、該媒体は細胞中に内部移行されるか、あるいは少なくとも腫瘍細胞に付着させる。放射性核種によって放射される放射線は、腫瘍部位での光子の放出をもたらし、次いで、この光子をPET(光子)検出装置で検出する。したがって、PET走査は、極めて正確かつ特異的ながんの検出方法である。
【0005】
本発明は、ワールブルグ効果を活用して、ナノ粒子を介して活性成分をがん細胞に直接かつ選択的に導き、治療薬剤(例えば、薬物、核酸、タンパク質/ペプチド)を送達すること、および/または診断のための検出可能なマーカーを配置することによって、当技術分野における従来の欠点を克服する。
【0006】
さらなる態様において、腫瘍抑制因子p53は、遺伝子宿主のプロモーター内のp53応答配列にテトラマーとして初めは結合する転写因子であり、その産生物は、ゲノム安定性および恒常性の維持にとって決定的に重要である増殖停止、アポトーシス、老化、分化、およびDNA修復−細胞事象の調節に関連している[1、2]。p53は、がん遺伝子活性化およびDNA損傷を含む種々のストレスシグナルによって活性化され、翻訳後修飾がp53活性化の主要な機構であり、その活性化はp53タンパク質の存在量および転写活性の増加をもたらすことが示されている[1、2]。
【0007】
p53タンパク質の安定性の調節により主として成立している正常な生理学的条件下では、野生型p53のレベルは、その増殖抑制活性のため、低く保たれているのが通常である。いくつかの制御因子が関連すると報告されているが、MDM2が、p53の代謝回転の調節における主要プレーヤーである。MDM2は、ユビキチン化およびそれに続く分解のためにp53を標的にするE3ユビキチンリガーゼであるが、同時に、p53の転写標的であり、それによって、負の制御ループを創出する。種々のストレスシグナルは、すべて、この制御ループに影響を与えてp53の活性化に影響を与える[1、2]。野生型p53と対照的に、突然変異p53タンパク質は、通常、がん細胞中に高いレベルで蓄積し、このことは、突然変異p53がMDM2の発現を誘導する能力がないためであると考えられている。実際、突然変異p53ノックインマウスを使用する遺伝子研究は、突然変異p53タンパク質レベルが主としてMDM2によって制御されることを立証した[3]。
【0008】
腫瘍抑制因子としてのp53の決定的に重要な役割は、p53遺伝子座へ直接的に影響を及ぼす突然変異、またはその正常な制御からの逸脱のどちらかよる、がん細胞中でのその普遍的な不活性化によって支持される[1、2]。p53の突然変異は、ほとんどすべての種類のヒトのがんにおいて、約10%(例えば、造血系悪性腫瘍[4])から50〜70%(例えば、卵巣[5]、結腸直腸[6]および頭頸部[7]がん)までの種々の頻度で確認されている。豊富な証拠は、野生型p53は、がん細胞に化学療法および放射線療法に対する感受性を付与するが、がん細胞中の突然変異p53は、療法への抵抗性および劣悪な予後の原因である。突然変異p53の発現とがん療法への抵抗性との間の相関は、広範に報告されている。例えば、シスプラチンに対する抵抗性が、卵巣がん患者において観察されている[8]。結腸直腸がんも、突然変異p53の存在下で化学感受性がより低いことが立証された[9]。同様に、p53の不活性化は、血液系悪性腫瘍に抗悪性腫瘍薬に対する抵抗性を付与した[10]。
【0009】
p53の突然変異は、p53変化の大部分が、完全長タンパク質の合成をもたらすミスセンス突然変異であることにおいて独特である[11]。ほとんどのp53突然変異は、配列に特異的なDNA結合活性の喪失をもたらすコアDNA結合ドメイン(DBD)内に見出されるが、高度の構造的、生化学的、および生物学的異質性が存在する。ほとんどのp53突然変異は、p53タンパク質の熱力学的安定性に対するそれらの効果により、一般的に「DNA−接触」および「立体配座」突然変異と呼ばれる2つの主要部類に類別することができる[12]。DNA−接触基は、R248QおよびR273HのようにDNA結合に直接的に関与する残基における突然変異を含む。この基は、立体配座モノクロナール抗体によって探索されるような野生型立体配座を有し、シャペロンhsp70に結合しない[13、14]。立体配座基は、hsp70への強力な結合を伴うタンパク質をもたらす、局所的(R294SおよびG245Sなど)および全体的(R175HおよびR282Wなど)な立体配座の歪を引き起こす突然変異を含む。立体配座の突然変異は、インビトロでDNA接触突然変異に比べてより厳しい表現型と関連している[13]。p53の突然変異の異質性は、また、生じる残基の性質に反映されることもある。突然変異R273Hは、野生型立体配座を有するが、一方、突然変異R273Pは変性されている[13]。
【0010】
腫瘍抑制因子の機能を喪失することに加え、突然変異p53は、テトラマー内の突然変異p53のわずか1つの分子がDNA結合を有意に危うくするのでp53不活性化の極めて有効な機構である突然変異体と野生型p53との間のヘテロ−オリゴマー化を介して野生型p53に関してドミナントネガティブ活性を獲得する[1、2]。さらに、諸研究は、突然変異p53が野生型p53から独立して新たな発がん活性を獲得できることを示した[15〜17]。p53の機能獲得型特性の根底にある統一的機構は解明にいたっていないが、いくつかのモデルが提案されている。突然変異p53は、p63およびp73とそれらのDNA結合ドメインを介して相互に作用することが示されている。この相互作用は、p73およびp63の機能の不活性化につながる[18〜21]。一般的な突然変異p53(R248WおよびR273H)を発現するノックインマウスを用いた遺伝子研究は、突然変異体が、DNA損傷応答にとって決定的に重要なプロテインキナーゼであるATMの不活性化によって発がん特性を獲得することを示した[22]。まとめると、利用可能な情報は、突然変異p53が、機能欠失型、ドミナントネガティブ型および機能獲得型活性の組合せを介する腫瘍形成および療法抵抗性の一因となることを指摘している。突然変異p53を再活性化する能力のある小分子を開発するために多くの努力がなされてきた。しかし、がん細胞における2000を超える異なる種類の突然変異p53タンパク質によって反映されるような突然変異p53の構造的異質性[23]は、融通性のあるp53再活性化剤の開発に対してかなりの難問を課す。代わりの取組みは、遺伝子療法を介して腫瘍細胞に野生型p53を再導入ことである。複製欠損ウイルスをベースにしたベクターは、頭頸部がんにおいて若干の治療効果を立証してきたが、腫瘍細胞中の高レベルの突然変異p53タンパク質は、機能性p53を復元させる上での大きな障害である。本発明は、当技術分野における以前の欠点を、突然変異p53に結合せず、そのため、高レベルの突然変異p53の存在下でp53の機能を効果的に回復することのできるp53誘導体を提供することによって克服する。
【発明の概要】
【0011】
一態様において、本発明は、
A)a)ポリカチオン/ポリアルキレングリコール/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
B)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
C)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
D)a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
E)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、
F)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)を取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、ならびに
G)a)上記(A)〜(F)のナノ粒子の任意の組合せ
からなる群から選択されるナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明のナノ粒子において、活性薬剤は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、化学療法薬、細胞障害性薬剤、放射性核種、検出可能なマーカー、造影剤、およびこれらの任意の組合せであってもよい。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、a)ポリエチレンイミン(PEI)およびp53をコードするポリヌクレオチドを含むコアと、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリエチレングリコール(PEG)接合体とを含むナノ粒子が提供される。
【0014】
さらなる実施形態において、本発明は、a)ポリエチレンイミン(PEI)およびp73ODを含むp53キメラ(例えば,p53/p73OD)をコードするポリヌクレオチドを含むコアと、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリエチレングリコール(PEG)接合体とを含むナノ粒子を提供する。さらに、本明細書では、p73ODを含むp53キメラを薬学的に許容される担体中に含む組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明は、ナノ粒子を細胞に送達する方法であって、細胞を本発明のナノ粒子と、ナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し細胞によって内部移送される条件下で接触させることを含む方法を提供し、この細胞はインビボであってもインビトロであってもよい。
【0016】
さらに、本明細書では、対象(例えば、それを必要とする対象)において活性薬剤を腫瘍細胞に送達する方法であって、本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し、腫瘍細胞によって内部化され、それによって活性薬剤を腫瘍細胞に送達することを含む方法が提供される。
【0017】
よりさらなる実施形態において、本発明は、対象(例えば、それを必要とする対象)における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞の表面のグルコース輸送体に結合し、細胞によって内部移行され、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法を提供する。
【0018】
本発明は、さらに、対象(例えば、それを必要とする対象)におけるがんを治療する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、p73ODを含むp53キメラを細胞(例えば、がん細胞または腫瘍細胞)に送達する方法であって、細胞を本発明のp53キメラと、p53キメラが細胞によって内部移行される条件下で接触させるステップを含む方法を提供し、この細胞はインビボであってもインビトロであってもよい。
【0020】
よりさらなる実施形態において、本発明は、対象(例えば、それを必要とする対象)における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の本発明のp53キメラを対象に送達し、それによってキメラが腫瘍細胞によって内部移行され、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法を提供する。
【0021】
本発明は、さらに、対象(例えば、それを必要とする対象)におけるがんを治療する方法であって、有効量の本発明のp53キメラを対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法を提供する。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、それを必要とする対象における腫瘍の退縮を誘導する方法であって、有効量の本発明のp53キメラを対象に送達し、それによって対象における腫瘍の退縮を誘導することを含む方法を包含する。
【0023】
本明細書に記載の方法は、対象にプロテインキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびこれらの任意の組合せを投与するステップをさらに含むことができる。
【0024】
上記の方法は、対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、放射線処置、外科処置、またはこれらの任意の組合せを施すステップを含むこともできる。このさらなるステップは、対象へのナノ粒子および/またp53キメラの送達の前、後および/または送達と同時に実施することができる。
【0025】
本発明のさらなる態様は、薬学的に許容される担体中に本発明のナノ粒子を含む組成物、および本発明のナノ粒子および/または本発明の組成物を含むキットを包含する。
【0026】
本明細書では、また、対象におけるがんをインビトロで診断する方法であって、a)検出可能なマーカーを含む本発明のナノ粒子を対象からの細胞と接触させること;b)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を測定すること、ならびにc)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を、対照対象の細胞および/または診断されている対象の対照細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性と比較することを含み、それによって対照対象の細胞および/または対照細胞と比較した場合の、対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の量および/または割合および/または特異性の増加または変化が、対象におけるがんの診断指標となる、方法が提供される。
【0027】
さらに、本発明は、対象におけるがんをインビボで診断する方法であって、a)造影剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達すること;b)対象において造影剤からのシグナルを検出すること;ならびにc)対象において造影剤からのシグナルを対照対象および/または診断されている対象からの対照組織/細胞における同一造影剤からのシグナルと比較することを含み、それによって対照対象および/または対照組織/細胞からのシグナルと比較した場合の対象からのシグナルの変化が、対象におけるがんの診断指標となる、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1(a)】GLU−PEG−PEIプラスミド複合体の合成を示す図である。
【図1(b)】GLU−PEG−PEIプラスミド複合体の合成を示す図である。
【図2A】2種の細胞株、乳癌細胞株MDA−MB−231および非形質転換ヒト乳腺上皮細胞株MCF−10Aにおける緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするプラスミドの発現差異を示す図である。
【図2B】非形質転換前立腺上皮細胞株RWPEに比較した場合の前立腺癌細胞株PC3におけるナノ粒子の選択的標識指向化を示す図である。
【図2C】2種のがん細胞株および2種の非形質転換細胞株におけるβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)をコードするプラスミドの発現差異を示す図である。
【図3A】GLU−PEG−PEI介在性核酸送達がグルコース輸送体依存性であることを立証する競合アッセイを示す図である。
【図3B】ナノ粒子−核酸複合体がエンドサイトーシス介在性内部移行を介して細胞に侵入することを示す図である。
【図4】Aは、腫瘍所持マウス(腫瘍体積はほぼ100mm3)に腫瘍抑制遺伝子(PTEN、20または40μg)プラスミドをナノ粒子と複合して(全体積50μL)静脈内で注入し、マウスを14日後に屠殺し、腫瘍を集めた図である。Bは、腫瘍組織切片を増殖マーカーKi−67で染色した図である。Ki−67染色の代表的画像および腫瘍の大きさを示す。PTENホスファターゼおよびテンシン相同体に関する配列は、GenBank(登録商標)データベース受託番号NM000314.4.で提供される(Liら、「PTEN,a putative protein tyrosine phosphatase gene mutated in human brain,breast、and prostate cancer」Science 275(5308):1943〜1947(1997))。
【図5】Aは、p53/73ODが、野生型p53と異なり、突然変異p53を発現する細胞の増殖を抑制することを示す図である。MDA−MB−231細胞に、対照ベクター(1.0μg)、野生型p53(1.0μg)、p53/p73OD(0.5μg)またはp53(R175H)/p73OD(1.0μg)をコードするpCNDA3ベクターをトランスフェクトした。ピューロマイシンでの選択の後、細胞をコロニー形成アッセイに供した。データは、3つの独立した実験から得られる平均±SEである。Bは、選択の48時間後に採取された細胞を用いてウェスタン分析を実施し、指定の抗体を使用して探索した図である。抗Mycブロットは外来性p53のレベルを示し、抗p53ブロットは、外来性突然変異p53と外来性p53とをあわせたレベルを反映している。
【図6】MCF−10A細胞が、中位レベルのp53/p73OD発現に対する感受性がより低いことを示す図である。対照としてのMDA−MB−231細胞と共にMCF−10A細胞に、指定のベクター(0.5μg)をトランスフェクトし、図5におけるようなコロニー形成アッセイに供した。並行してウェスタンブロットを実施し、p53/p73OD発現のレベルを測定した。
【図7】Aは、p53/p73ODの発現が、MDA−MB−231細胞において異なる応答をもたらしたことを示す図である。図6におけるように細胞を、指定の抗体を使用するウェスタン分析に供した。p53/p73ODを発現するMDA−MB−231またはMCF−10A細胞を、照射しないか、あるいは4Gyで照射した。Bでは、照射の6時間後にウェスタン分析のため、またはCでは、24時間の時点でFACS分析のため、細胞を採取した。結果は3つの独立実験から得られる平均±SEである。
【図8】Glu−PEG−PEIナノ粒子は、遺伝子送達に関して悪性腫瘍細胞を特異的に標的とすることを示す図である。Aでは、MCF−10A/MDA−MB−231細胞を、またはBで、RWPE/PC3細胞をGlu−PEG−PEI/lacZ DNA複合体と共にインキュベートした。24時間後に細胞を固定し、X−gal(登録商標)試薬で染色した。Cでは、GLU−PEG−PEI−β−galの取込みと競合させるため培養培地中に50mMグルコースを含めた。代表的画像を示す。
【図9】GLU−ALGが、PEIの細胞障害性を低減することを示す図である。増加するPEI濃度(0、0.05、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5または5.0μg/mL)のMDA−MB−231細胞(500万個の細胞)の生存率に対する効果を、図5に記載のような方法を使用するコロニー生き残りアッセイによって評価した。GLU−ALGの効果を、1μg/mLのPEIを0.05、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5または5.0μg/mLのGLU−ALGと混合することによって調べた。
【図10】GLU−ALG−PEIが介在するLacZ発現プラスミドの腫瘍特異的送達を示す図である。乳がん細胞株MDA−MB−231(500万細胞)をヌードマウス(4〜6週齢)の側腹領域に移植し、2週間腫瘍を発育させた。腫瘍の大きさがほぼ200mm3に達したら、マウスを一夜飢えさせた。翌朝、LacZ発現プラスミドを、PEIと、続いてグルコース−アルギン酸と混合し、静脈内で注入した。注入の48時間後にマウスを屠殺した。心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓および腫瘍サンプルを含め、種々の組織サンプルを採取した。組織切片を調製し、β−galで記載のように染色した。各組織からの代表的画像を示す。
【図11】p53/p73ODの発現によるMDA−MB−231細胞中でのPg13−GFPの誘導を示す図である。pg13−GFPを安定的に発現するMDA−MB−231細胞を、GLU−PEG−PEI/WTp53またはp53/p73ODと共にインキュベートした[p53介在性細胞死を回避するために低レベルのプラスミド(0.2μgDNA/60mm皿)を使用した]。24時間後に、2%ホルマリンを使用して細胞を固定し、DAPI色素で染色した。上のパネルはGFPの発現を示す。下のパネルはDAPI染色によって検出される細胞核を示す。
【図12】p53、p73βおよびp53キメラの概略を示す図である。p53キメラは、p73βのオリゴマー化ドメイン(OD)を含み、ここで、p53タンパク質の393個のアミノ酸配列は、アミノ酸318〜364の位置がp73βタンパク質のアミノ酸346〜390で置き換えられている。TAD:トランス活性化ドメイン、PRD:プロリンに富むドメイン、DBD:DNA結合ドメイン、Oligo:オリゴマー化ドメイン。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本説明は、本発明を実行することのできるすべての様々な方法、または本発明に付加することのできるすべての特徴の詳細な列挙であることを意図しない。例えば、ある実施形態に関して例示された特徴を、他の実施形態中に組み込むことができ、特定の実施形態に関して例示した特長を、その実施形態から削除することができる。加えて、本明細書中で提案される種々の実施形態に対する、本発明から逸脱しない多くの変形形態および付加形態は、本開示に照らして当業者にとって明白であろう。それゆえ、以下の説明は、本発明の一部の特定の実施形態を例示することを意図し、そのすべての並び替え形態、組合せ形態、および変形形態を網羅的に特定することを意図するものではない。
【0030】
そうでないことを規定しない限り、本明細書で使用するすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同様の意味を有する。本明細書中で本発明を説明するのに使用される術語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、本発明を限定することを意図しない。本明細書中で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、1つまたはそれ以上を意味することができる。例えば、「1つの(a)」細胞は、1つの細胞または複数の細胞を意味することができる。
【0032】
また、本明細書中で使用する場合、「および/または」は、1つまたは複数の列挙した関連項目のいずれかおよびすべての可能な組合せを、ならびに代替と判断される場合(「または」)には組合せの欠如を包含することを指す。
【0033】
さらに、本明細書中で使用する場合、本発明の生体分子または薬剤の量、投与量、時間、温度などの測定可能な値に対して言及する場合の用語「約」は、指定量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには0.1±%の変動を包含することを意味する。
【0034】
一態様において、本発明は、対象中の腫瘍細胞を選択的かつ直接的に標的にするように操作された本発明のナノ粒子を対象(例えば、がんを有する対象)に投与することによる、がん治療の新たな戦略を提供する。ナノ粒子は、活性薬剤を腫瘍細胞中に送達し、細胞を死滅させ、かつ/または細胞を腫瘍細胞と同定するための検出可能なマーカーを堆積する。
【0035】
したがって、一実施形態において、本発明は、a)ポリカチオン/ポリアルキレングリコール/グルコース接合体、およびb)活性薬剤を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。別の実施形態において、本発明は、a)活性薬剤を含むコア、およびb)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、a)活性薬剤を含むコア、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体、およびc)ポリカチオンを含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、グルコース/活性薬剤複合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体、およびb)活性薬剤を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子、ならびにa)活性薬剤を含むコア、およびb)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。さらに、本明細書では、a)活性薬剤を含むコア、b)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体、およびc)ポリカチオンを含む、それらから実質的になる、またはそれらからなるナノ粒子を提供する。
【0036】
本発明のナノ粒子は、ナノ粒子の集団として存在することができ、したがって、本発明は、担体中にナノ粒子の集団を含む組成物を提供する。集団中のナノ粒子はすべて同一の種類からなることができ、あるいはナノ粒子の集団は、任意の組合せおよび任意の比率の本明細書に記載のような2種以上の異なる種類のナノ粒子から構成することができる。
【0037】
本発明のナノ粒子は、約20nm〜約500nmの範囲の大きさで存在する。したがって、ナノ粒子は、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm,170nm、180nm、190nm、200nm,225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、400nm、450nm、500nmなど、またはこれらの任意の組合せであってもよい。当業者は、本発明のナノ粒子を含む組成物において、組成物中のナノ粒子は、大きさを異にすることができるが、一般には本明細書中に示す大きさの範囲に包含されることを認識するであろう。
【0038】
本発明のナノ粒子において、接合体のグルコース部分は、グルコースとして、F−18−フルオロデオキシグルコース(FDG)として、放射能標識化グルコース(例えば、[11C]グルコース、[14C]グルコース)として、グルコース誘導体またはその任意の組合せとして存在することができる。用語「グルコース誘導体」は、生体適合性であり、かつ身体によって生化学的に処理することのできる(例えば、グルコース輸送体によって拘束された)修飾されたグルコースの化学構造を有するグルコース分子を包含する。グルコース誘導体の例には、限定はされないが、デキストラグルコース(D−グルコース)および2−デオキシグルコース(2−DG)が含まれる。
【0039】
「ポリアルキレングリコール」は、直鎖または分枝のポリアルキレングリコールポリマーを意味し、限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリブチレングリコール(PBG)、ならびにPEG、PPGおよびPBGの任意の組合せのコポリマーを包含し、かつポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルを包含する。したがって、本発明の種々の実施形態において、本発明のナノ粒子中のポリアルキレングリコールは、限定はされないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびこれらの任意の組合せであってもよい。
【0040】
特定の実施形態において、ナノ粒子中のポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールまたは「PEG」である。用語「PEGサブユニット」は、ただ1つのポリエチレングリコール単位、すなわち、−(CH2CH2O)−を指す。
【0041】
一部の実施形態において、ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)は、非多分散性、単分散性、実質的に単分散性、純粋に単分散性、または実質的に純粋に単分散性であってもよい。
【0042】
「単分散性」は、混合物中の化合物の約100%が同様の分子量を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。
【0043】
「実質的に単分散性」は、混合物中の化合物の少なくとも約95%が同様の分子量を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。
【0044】
「純粋に単分散性」は、混合物中の化合物の約100%が同様の分子量を有し、かつ同様の分子構造を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。したがって、純粋に単分散性の混合物は、単分散性の混合物であるが、単分散性の混合物は、必ずしも純粋に単分散性の混合物であるとは限らない。
【0045】
「実質的に純粋に単分散性」は、混合物中の化合物の少なくとも約95%が同様の分子量を有し、かつ同様の分子構造を有する、化合物の混合物を記述するのに使用される。したがって、実質的に純粋に単分散性の混合物は、実質的に単分散性の混合物であるが、実質的に単分散性の混合物は、必ずしも実質的に純粋に単分散性の混合物であるとは限らない。
【0046】
ナノ粒子が、a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体、およびb)活性薬剤を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなる実施形態において、ポリカチオン、グルコースおよびアルギネートは、共有結合性相互作用を介して接合体中で互いに結び付くことができる。さらに、ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体は、静電力を介して活性薬剤に結び付くことができる。
【0047】
ナノ粒子が、a)活性薬剤を含むコア、およびb)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなる実施形態において、グルコースおよびアルギネートは、共有結合性相互作用を介して互いに結び付くことができる。さらに、グルコース/アルギネート接合体は、共有結合性相互作用を介して活性薬剤に結び付くことができる。
【0048】
本発明のナノ粒子の一部の実施形態において、グルコース/PAG接合体(例えば、グルコース/PEG接合体)は、活性薬剤を含むコアを取り囲んで存在することができる。グルコース/PAG接合体において、グルコースおよびPAGは、例えば、化学的な共有結合(例えば、共有結合性相互作用)を介して結び付くことができる。グルコース/PAG接合体のPAG部分は、共有結合性相互作用によってコアの活性薬剤に結び付くことができる。
【0049】
さらに、本発明のナノ粒子の一部の実施形態において、活性成分に加えて、ポリカチオン/PAG/グルコース接合体が存在することができる。この接合体において、グルコースとPAGとは、上記のように互いに結び付くことができ、ポリカチオン(例えば、PEI)は、グルコース/PA接合体のPAG(例えば、PEG)に、例えば化学的共有結合を介して結び付くことができる。接合体のポリカチオンは、静電力によって活性薬剤に結び付くことができる。
【0050】
コアを取り囲むグルコース/PAG接合体に加えて、ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアが存在する本発明のナノ粒子において、該ポリカチオンは、静電力を介して活性薬剤に結び付くことができ、グルコース/PAG接合体は、共有結合を介してコアのポリカチオンに結び付くことができる。
【0051】
さらに、コアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体に加えて、ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアが存在する本発明のナノ粒子において、該ポリカチオンは、静電力を介して活性薬剤に結び付くことができ、グルコース/アルギネート接合体は、共有結合を介してコアのポリカチオンに結び付くことができる。
【0052】
ポリカチオンがナノ粒子中に存在する本発明の実施形態において、該ポリカチオンは、限定はされないが、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアニオン塩酸塩、PAH)、プトレシン、カダベリン、ポリリシン、ポリ−アルギニン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド−ポリアミン、ジデオキシ−ジアミノ−β−シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、ポリメタクリル酸(2−ジメチルアミノ)エチル、ポリ(ヒスチジン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン、およびこれらの任意の組合せであってもよい。
【0053】
本発明のナノ粒子の特定の実施形態において、ポリカチオンはポリエチレンイミン(PEI)である。
【0054】
本発明の種々の実施形態では、ポリカチオン(例えば、PEI)を、本発明の活性薬剤(例えば、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アニオン性タンパク質、アニオン性薬物、ペプチドまたはタンパク質に共有結合されたポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ならびにこれらの任意の組合せ)と、物理的静電力(例えば、ここで、活性薬剤(群)中の負電荷がポリカチオン中の正電荷と結合する)を介して複合させることができる。ポリカチオンをGLU−PAGまたはGLU−アルギネートに接合する前および/または後に、活性薬剤をポリカチオンと複合させることができる。
【0055】
また、本発明のナノ粒子中の種々の成分を、架橋形成を介して、例えば、架橋性および/または触媒性薬剤[例えば、1−エチル−(3−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ゲニピン、および任意の組合せの当技術分野で公知の任意のその他の架橋性および/または触媒性薬剤]を用いて互いに結び付けることができると考えられる。一部の実施形態では、光硬化性基を備えた成分をナノ粒子中の光硬化性成分と共架橋することのできる光架橋などの化学的架橋を採用することができる。
【0056】
他の実施形態では、ナノ粒子中の成分を、連結分子を介して結び付けることができる。本発明の連結分子の例には、限定はされないが、ヘパリンおよび硫酸ヘパリンが含まれる。ヘパリンが連結分子として使用される実施形態では、静電力または特異的結合によってヘパリンに結合する活性薬剤を使用することができる。例えば、ヘパリンは、当技術分野で周知のようにTGF−β1、IL−10、HGF、FGFなどと特異的に結合する。さらに、ヘパリンは、負に帯電し、正に帯電したポリカチオンに静電力を介して結合することができる。本発明のさらなる連結分子としては、例えば、Frankら(J.Biol.Chem.278(44):43229〜43235(2003))中に記載のようなヘパリン類似体および修飾された多糖類が挙げられる。
【0057】
本発明のナノ粒子中に存在する活性薬剤は、限定はされないが、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドのフラグメント、オリゴヌクレオチド、アンチセンス配列、リボザイム、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、干渉RNA(siRNA、shRNA、dsRNA)、マイクロRMA(miRNA)、タンパク質、タンパク質の生物学的に活性なフラグメント、ペプチド、化学療法薬もしくは薬剤、細胞障害性薬剤、放射性核種、検出可能なマーカー、造影剤、およびこれらの任意の組合せであってもよい。一部の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、機能性タンパク質または治療効果を付与するその他の産生物をコードするプラスミドまたは核酸構築物であってもよい。本発明の核酸構築物によってコードされるタンパク質の非限定的例には、当技術分野で公知であるか、後に同定されるような、p53、p53/p73ODキメラ、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン21−(IL−21)、インターロイキン−27(IL−27)、セサリン、CPT−11、インターフェロン誘導性タンパク質−10(IP−10)、インターフェロンγによって誘導されるモノカイン(Mig;CXCL9)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、Fasリガンド、PTEN、AFR(p14)、Fas、CDK阻害タンパク質(CIP)p15、CIPp27、CIPp21、β−カテニン、血管内皮増殖因子受容体2(msFlk1)、チミジンキナーゼ、血管新生抑制因子、アポトーシス誘導因子(例えば、BIK、BNIP、NOXA、PUMA、BAD、BAX、EGL−1、CED13)などが含まれる。
【0058】
ナノ粒子が活性薬剤を含むコアを含む一部の実施形態において、該コアは、活性薬剤としてポリヌクレオチド/ポリカチオン(例えば、PEI)複合体を含む、それから実質的になる、またはそれからなることができる。
【0059】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、p53をコードするプラスミドまたは核酸構築物である。この実施形態において、本発明のナノ粒子は、p53をコードするプラスミドを腫瘍細胞に選択的かつ直接的に送達する。p53タンパク質が、トランスフェクトされた腫瘍細胞中で産生され、ここで、該タンパク質はその抗腫瘍効果を明らかにする。
【0060】
本明細書中で使用する場合、「核酸」、「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば、化学的に合成された)DNAもしくはRNA、およびRNAおよびDNAのキメラを含めて、RNAとDNAの双方を包含する。用語「ポリヌクレオシド」または「ヌクレオチド配列」は、鎖の長さに関係なく、ヌクレオチドの鎖を指す。核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖であってもよいアンチセンス鎖であってもよい。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えば、イノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、塩基対形成能力を変更した、またはヌクレアーゼに対する抵抗性を高めた核酸を調製するのに使用することができる。本発明は、さらに、本発明の核酸またはヌクレオチド配列の補体(完全補体であってもよい部分補体であってもよい)である核酸を提供する。
【0061】
「単離型ポリヌクレオチド」は、それが由来する生物体の天然に存在するゲノムにおいて、直接的につながっているヌクレオチド配列と(1つは5’末端に、1つは3’末端に)直接的にはつながっていないヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)である。したがって、一実施形態において、単離型核酸は、コード配列に直接的につながっている5’非コード(例えば、プロモーター)配列の一部または全部を含む。したがって、該用語は、例えば、ベクター中に、自律的複製プラスミドもしくはウイルス中に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれている、あるいは他の配列とは独立に別の分子(例えば、PCRまたは制限エンドムクレアーゼ処理によって産生されるcDNAまたはゲノムDNAフラグメント)として存在する組換えDNAを包含する。該用語は、また、さらなるポリペプチドまたはペプチド配列をコードするハイブリッド核酸の一部である組換えDNAを包含する。遺伝子を含む単離型ポリヌクレオチドは、このような遺伝子を含む染色体のフラグメントではなく、むしろ遺伝子に付随するコード領域および制御領域を含み、染色体上で天然に見出されるさらなる遺伝子ではない。
【0062】
用語「単離型」は、細胞性材料、ウイルス性材料、および/または培養培地(組換えDNA技術で製造される場合)、または化学的前駆体もしくはその他の化学物質(化学的に合成される場合)を実質的に含まない、核酸、ヌクレオチド配列またはポリペプチドを指すことができる。さらに、「単離型フラグメント」は、天然にはフラグメントとして存在せず、かつ天然の状態では見出されない、核酸、ヌクレオチド配列またはポリペプチドのフラグメントである。「単離型」は、調製が、技術的に純粋(均一)であることを意味しないが、それは、十分に純粋であり、ポリペプチドまたは核酸を意図した目的のために使用できる形態で提供する。
【0063】
単離型細胞は、その天然の状態で通常的に付随する他の成分から分離されている細胞を指す。例えば、単離型細胞は、培養培地中の細胞(例えば、インビトロ)、および/または本発明の薬学的に許容される担体中の細胞であってもよい。したがって、単離型細胞を、対象に送達および/または導入することができる。一部の実施形態において、単離型細胞は、対象から取り出された、および生体外で操作され、次いで対象に戻される細胞であってもよい。
【0064】
用語「フラグメント」は、ポリヌクレオチドに適用する場合、参照の核酸またはヌクレオチド配列に比較して長さが短縮され、かつ参照の核酸またはヌクレオチド配列に同一またはほとんど同一(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一)であるつながったヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、その配列から実質的になる、および/またはその配列からなる、ヌクレオチド配列を意味すると解される。本発明によるこのような核酸フラグメントを、適切なら、その構成要素であるより大きなポリヌクレオチド中に含めることができる。一部の実施形態において、このようなフラグメントは、本発明による核酸またはヌクレオチド配列の少なくとも約8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれ以上の連続ヌクレオチドの長さを有するオリゴヌクレオチドを含む、それらのオリゴヌクレオチドから実質的になる、および/またはそれらのオリゴヌクレオチドからなることができる。
【0065】
用語「フラグメント」は、ポリペプチドに適用する場合、参照のポリペプチドまたはアミノ酸配列に比較して長さが短縮され、かつ参照のポリペプチドまたはアミノ酸配列に同一またはほとんど同一(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一)であるつながったアミノ酸のアミノ酸配列を含む、ほとんどその配列からなる、および/またはその配列からなる、アミノ酸配列を意味すると解される。本発明によるこのようなポリペプチドフラグメントを、適切なら、その構成要素であるより大きなポリペプチド中に含めることができる。一部の実施形態において、このようなフラグメントは、本発明によるポリペプチドまたはアミノ酸配列の少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれ以上の連続したアミノ酸の長さを有するペプチドを含む、それらのペプチドから実質的になる、および/またはそれらのペプチドからなることができる。
【0066】
本明細書中で使用する場合、「機能性」ポリペプチドまたは「機能性タンパク質」または「機能性フラグメント」またはポリペプチドの「生物学的に活性なフラグメント」は、そのポリペプチドに通常的に付随する少なくとも1種の生物学的活性(例えば、抗腫瘍活性、タンパク質結合、リガンドもしくは受容体結合)を実質的に維持しているものである。特定の実施形態において、「機能性」ポリペプチドまたはタンパク質または「機能性フラグメント」は、未改変タンパク質によって所持されるすべての活性を実質的に維持している。生物学的活性を「実質的に維持している」とは、ポリペプチドまたはタンパク質またはフラグメントが、本来のポリペプチドの生物学的活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上を維持していること(さらには本来のポリペプチドよりも高いレベルの活性を有する場合もある)を意味する。「非機能性」ポリペプチドは、ポリペプチドに通常的に付随する検出可能な生物学的活性をほとんどまたは本質的に示さない(例えば、せいぜい、意味のない量、例えば、約10%またはさらには5%未満の)ものである。タンパク質結合および抗腫瘍活性などの生物学的活性は、当技術分野で周知であり、かつ本明細書中で説明されるようなアッセイを使用して測定することができる。
【0067】
コード配列を含む核酸に関する用語「発現する」、「発現すること」または「発現」とは、核酸が、転写され、任意選択的に翻訳されることを意味する。典型的には、本発明によれば、本発明のコード配列の発現は、本発明のポリペプチドまたはその他の産生物の産生をもたらす。すべての発現されたポリペプチドまたはフラグメントまたはその他の産生物も、精製なしに無傷の細胞中で機能することができる。
【0068】
本発明の一部の実施形態において、活性薬剤は、アンチセンスヌクレオチド配列であってもまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。用語「アンチセンスヌクレオチド配列」または「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書中で使用する場合、特定の標的ヌクレオチド配列に対して相補的であるヌクレオチド配列を指す。同一物を発現するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび核酸は、通常的な技術により調製することができる。例えば、Tullisへの米国特許第5,023,243号、Pedersonらへの米国特許第5,149,797号を参照されたい。アンチセンスヌクレオチド配列は、全標的ヌクレオチド配列、または少なくとも10、20、40、50、75、100、150、200、300または500個のつながった塩基からなるその部分に対して相補的であることができ、標的ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質または産生物の産生レベルを低下させる。
【0069】
当業者は、配列の類似度が、アンチセンスヌクレオチド配列がその標的にハイブリダイズし、かつコードされたポリペプチドまたは産生物の産生を低下させるのに十分である限り、アンチセンスヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列に対して完全に相補的であることを必ずしも要しないことを認識している。当技術分野で周知のように、一般には、より高度の配列類似性が、短いアンチセンスヌクレオチド配列に対して要求され、一方、より大きな度合いの不適正塩基が、より長いアンチセンスヌクレオチド配列によって許容される。
【0070】
例えば、このようなアンチセンスヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションは、それらの標的ヌクレオチド配列に関して、低減されたストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、またはさらに高いストリンジェンシーの条件下(例えば、それぞれ、5×デンハート溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEを含む35〜45%ホルムアミドからなる37℃での洗浄ストリンジェンシーで代表される条件;5×デンハート溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEを含む40〜45%ホルムアミドからなる42℃での洗浄ストリンジェンシーで代表される条件;および/または5×デンハート溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEを含む50%ホルムアミドからなる42℃での洗浄ストリンジェンシーで代表される条件)で実施できる。例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版(Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989)を参照されたい。したがって、一部の実施形態において、本発明のアンチセンスヌクレオチド配列は、標的コード配列の補体と少なくとも約70%、80%、90%、95%、97%、98%またはより高い配列類似性を有することができ、ポリペプチド産生のレベルを低下させる。
【0071】
アンチセンスヌクレオチド配列の長さ(すなわち、その中のヌクレオチドの数)は、それが意図した位置に選択的に結合し、標的配列の転写および/または翻訳を低下させる限り、決定的に重大ではなく、定型的手順に従って決定することができる。一般に、アンチセンスヌクレオチド配列は、約8、10または12個のヌクレオチドの長さから約20、30、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500個、またはより長いヌクレオチドの長さまでである。
【0072】
アンチセンスヌクレオチド配列は、当技術分野で公知の手順による化学合成および酵素的連結反応を使用して構築することができる。例えば、アンチセンスヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド、あるいは分子の生物学的安定性を高めるように、またはアンチセンスとセンスヌクレオチド配列の間で形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された種々の修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンスヌクレオチド配列を作出するのに使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテン−イルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが含まれる。別法として、アンチセンスヌクレオチド配列は、その中に核酸がアンチセンス配向でクローンされた発現ベクターを使用して産生させることができる。(すなわち、挿入核酸から転写されたRNAは、注目の標的核酸に対してアンチセンス配向を有する)。
【0073】
本発明のアンチセンスヌクレオチド配列は、さらに、ヌクレオチド間架橋形成ホスフェート残基の少なくとも1つまたはすべてが、メチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、およびホスホロアミデートなどの修飾ホスフェートであるヌクレオチド配列を包含する。例えば、ヌクレオチド間架橋形成ホスフェート残基を1つおきに記載のように修飾することができる。別の非限定的例において、アンチセンスヌクレオチド配列は、ヌクレオチドの1つまたはすべてが、2’低級アルキル部分(例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1−プロペニル、2−プロペニル、およびイソプロピルなど、C1〜C4の直鎖または分枝の、飽和または不飽和のアルキル)を含むヌクレオチド配列である。例えば、ヌクレオチドを1つおきに記載のように修飾することができる。また、修飾ヌクレオチド塩基を含むものを含め、アンチセンス分子の調製方法に関するそれらの教示について参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Furdonら、Nucleic Acids Res.17:9193(1989);Agrawalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1401(1990);Bakerら、Nucleic Acids Res.18:3537(1990);Sproatら、Nucleic Acids Res.17:3373(1989);WalderおよびWalder、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5011(1988)を参照されたい。
【0074】
本発明の種々の実施形態において、活性薬剤は、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)またはマイクロRNA(miRNA)などの干渉RNAであってもよい。これらの干渉RNAを腫瘍細胞内の標的ヌクレオチド配列に向けて、ヌクレオチド配列の発現の調節、およびそれに続く標的ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質または産生物の産生の調節をもたらすことができる。干渉RNA法を使用して腫瘍細胞またはがん細胞中で標的とされる予定の核酸配列の非限定的例には、Bcl−2、Bcl−XL、Akt、HIF−a、MMP、RasおよびMDM2が含まれる。
【0075】
siRNAは、標的コード配列に対応する二本鎖RNA(dsRNA)が細胞または生物体中に導入され、対応するmRNAの分解をもたらす転写後遺伝子発現抑制の機構である。siRNAが遺伝子発現抑制を達成する機構は、Sharpら、Gene Dev.15:485(2001);およびHammondら、Nature RevGen.2:110(2001)中で概説されている。siRNAの効果は、遺伝子発現が回復される前の多様な細胞分裂の間持続する。siRNAは、ヒト胚生期腎臓およびHela細胞を含むヒト細胞中で成功的であることが証明されている(例えば、Elbashirら、Nature 411:494(2001)を参照されたい)。一実施形態において、発現抑制は、RNAヘアピン(shRNA)の内因性発現を強制することによって哺乳動物細胞中で誘導され得る(Paddisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:1443(2002)を参照されたい)。別の実施形態において、小さな(21〜23nt)dsRNAのトランスフェクションは、核酸発現をとりわけ抑制する(Caplen、Trends Biotechnol.20:49(2002)中で概説されている)。
【0076】
siRNA技術は、標準的な分子生物学の方法を利用する。不活性化されるべき標的コード配列の全部または一部に対応するdsRNAは、標準的な方法によって、例えば、T7RNAポリメラーゼを用いる鋳型DNA(標的配列に対応する)の双方の鎖の同時転写によって作り出すことができる。siRNAで使用するためのdsRNAを産生させるキットは、例えば、New England Biolabs.Incから市販されている。dsRNAを調製するように操作されたdsRNAまたはプラスミドのトランスフェクションの方法は、当技術分野で定型的である。
【0077】
約21〜23個の長さのヌクレオチドからなる一本鎖RNA分子であるマイクロRNA(miRNA)を、siRNAに対して類似の方式で使用して、遺伝子発現を調節することができる(米国特許第7,217,807号を参照されたい)。
【0078】
siRNAによって作り出されるものに類似の発現抑制効果は、mRNA−cDNAハイブリッド構築物のトランスフェクションを含む哺乳動物細胞で報告されており(Linら、Biochem.Biophys.Res.Commun.281:639(2001))、注目のコード配列を発現抑制するためのさらに別の戦略を提供する。
【0079】
本発明の活性薬剤は、また、一部の実施形態において、リボザイム、およびリボザイムをコードする核酸であってもよい。リボザイムは、核酸を部位特異的方式で開裂するRNA−タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を所持する特定の触媒ドメインを有する(Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8788(1987);Gerlachら、Nature 328:802(1987);ForsterおよびSymons、Cell 49:211(1987))。例えば、多数のリボザイムは、ホスホエステル移動反応を高度の特異性で加速し、しばしば、オリゴヌクレオチド基質中のいくつかのホスホエステルの1つのみを開裂する(MichelおよびWesthof、J.Mol.Biol.216:585(1990);Reinhold−HurekおよびShub、Nature 357:173(1992))。この特異性は、基質が、化学反応に先立って、特定の塩基対形成相互作用を介してリボザイムの内部先導配列(「IGS」)に結合するという要求に寄与している。
【0080】
リボザイム触媒は、核酸を含む配列特異的開裂/連結反応の一部として主に観察される(Joyce、Nature 338:217(1989))。例えば、米国特許第5,354,855号には、特定のリボザイムが、既知のリボヌクレアーゼのそれを超え、DNA制限酵素のそれに近い配列特異性を有するエンドヌクレアーゼとして作用することができると述べられている。したがって、遺伝子発現の配列特異的リボザイム介在性阻害は、治療的応用にとりわけ適している可能性がある(Scanlonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10591(1991);Sarverら、Science 247:1222(1990);Sioudら、J.Mol.Biol.223:831(1992))。
【0081】
一部の実施形態において、本発明の活性薬剤は、化学療法薬または化学療法剤であってもよい。化学療法薬または化学療法剤の非限定的例には、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン);2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド);3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC);4)酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ);5)生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン−α);6)白金配位錯体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン);7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン);8)置換尿素(例えば、ヒドロキシウレア);9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH));10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’−DDD)およびアミノグルテチミド);11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン);12)プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール);13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール);14)抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン);16)抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド);および17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、リュープロリド)が含まれる。本発明の化学療法剤のさらなる例には、メトトレキサート、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、デモコルシン、エトポシド、ミトラマイシン、クロラムブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、パクリタキセル、カンプトテシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤(例えば、Marimastat、Trocade、ドキソサイクリン、ミノサイクリンおよび参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,872,152号に記載のようなもの、ならびにシタラビンが含まれる。
【0082】
本発明のさらなる実施形態において、活性薬剤は、放射性核種であってもよい。本明細書に記載のような「放射性核種」は、腫瘍またはがん細胞に治療線量の放射線を送達するのに適した任意の放射性核種でよく、限定はされないが、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、および212Pbが挙げられる。
【0083】
本発明のよりさらなる実施形態において、活性薬剤は、検出可能なマーカーまたは標識でよく、あるいはそれらを含むことができる。検出可能なマーカーまたは標識の非限定的例には、放射性核種(35S、125I、131I、99Te、64Cuなど)、酵素、蛍光剤、化学発光剤、および発光性薬剤、ならびに当技術分野で周知のような基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子などが含まれる。
【0084】
本発明の活性薬剤は、また、細障害性薬剤であってもよい。「細胞障害性薬剤」には、本明細書中で使用する場合、限定はされないが、リシン(例えば、リシンA鎖)、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素、モネンシン(Monensin)、ベルカリン(Verrucarin)A、アブリン(Abrin)、ビンカアルカロイド、トリコテセンおよびシュードモナス(Pseudomonas)外毒素Aが含まれる。
【0085】
さらに、本発明の活性薬剤は、造影剤であってもよい。例えば、フルオレセインイソチシアネート(FITC)は、蛍光画像法のための造影剤であることができ、超常磁性酸化鉄は、磁気共鳴画像法(MRI)のための造影剤であることができ、かつ/または放射性核種は、X線画像法のための造影剤であることができる。
【0086】
本発明のナノ粒子の任意の要素は、前記のような本発明のナノ粒子の種々の実施形態中に存在することができ、任意のこのような要素は、存在しないか、本発明のナノ粒子から除外されていてもよく、このようなその排除または不在は、本発明の否定的限定(negative limitation)として規定され得る(例えば、否定的但し書きによって記載の実施形態から排除される)ことが理解されよう。
【0087】
さらなる態様として、本発明は、本明細書に記載のように、治療効果を達成するための、かつ/または診断のための医薬製剤およびその投与方法を提供する。医薬製剤は、薬学的に許容される担体中に本明細書に記載の任意のナノ粒子を含むことができる。
【0088】
「薬学的に許容される担体」は、(i)組成物をその意図した目的に対して不適にすることなしに本発明の組成物と組み合わせることができるという意味で組成物中の他の成分と適合性があり、かつ(ii)過度の副作用(毒性、刺激、およびアレルギー反応)なしに本明細書中で示されるような対象で使用するのに適している、塩類、担体、賦形剤、または組成物の希釈剤などの成分である。副作用は、それらのリスクが組成物によって提供される利益にまさる場合に、「過度」である。
【0089】
薬学的に許容される成分の非限定的例には、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、油/水型エマルジョンなどのエマルジョン、マイクロエマルジョン、および種々のタイプの湿潤化剤などの、任意の標準的な医薬担体が含まれるが、これらには限定されない。とりわけ、薬学的に許容される担体は、本発明の対象への投与または送達のために製剤化される無菌の担体であると解釈される。さらに、薬学的に許容される担体は、動物、より詳細にはヒトでの使用について、連邦または州政府の規制当局によって承認された、または米国薬局方もしくはその他の一般的に認められた薬局方中に列挙された任意の担体分子である。このような担体は、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、粉剤、徐放性製剤、座剤、乳剤、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁液剤の形態、または使用するのに適した任意のその他の形態を取ることができる。適切な医薬担体の例は、当業者に周知である(例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第21版(2005)、Lippincott Williams & Wilkins、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)を参照されたい)。
【0090】
さらに、活性成分または成分群を組成物の製剤化に必須の成分との混合物中に含むこのような医薬組成物を調製する上で、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤化剤、乳化剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、風味剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤などを含む、その他の通常的な薬理学的に許容される添加物を組み込むことができる。添加物としては、例えば、デンプン、蔗糖、果糖、デキストロース、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、沈降性炭酸カルシウム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ゼラチン、アラビアゴム、EDTA、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタ重亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0091】
本発明の製剤は、薬用薬剤、医薬品、担体、補助剤、分散剤、希釈剤などを任意選択的に含むことができる。
【0092】
本発明のナノ粒子は、公知の技術により医薬担体中で投与用に製剤化することができる。例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第21版(2005)、Lippincott Williams & Wilkins、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造において、化合物(その生理学的に許容される塩を含む)は、典型的には、とりわけ許容される担体と混合される。担体は、固体または液体、あるいはその双方でよく、化合物と、単位用量製剤、例えば、0.01または0.5重量%〜95または99重量%の化合物を含むことのできる錠剤として好ましくは製剤化される。1種または複数の化合物を、製薬に関する任意の周知技術によって調製することのできる本発明の製剤中に組み込むことができる。
【0093】
本発明のさらなる態様は、対象をインビボで治療する方法であって、薬学的に許容される担体中に本発明のナノ粒子を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法であり、該医薬組成物は、治療上有効な量で投与される。それを必要とするヒト対象または動物への本発明の組成物の投与は、このような組成物の投与に関する当技術分野で公知の任意の手段によることができる。
【0094】
本発明の製剤は、経口、直腸、局所、頬側(例えば、舌下)、膣、非経口(例えば、皮下、骨格筋、心筋、隔膜筋および平滑筋を含む筋内、皮内、静脈内、腹膜内)、局所(すなわち、皮膚および気道表面を含む粘膜表面の双方)、鼻腔内、眼内、内臓内、網膜内、経皮、関節内、髄腔内、および吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接臓器注入(例えば、肝臓中への、中枢神経系への送達のための脳中への、膵臓中への、または腫瘍もしくは腫瘍を取り囲む組織中への)に適したものを包含する。与えられた事例で最も適切な経路は、治療されている状態の性質および重症度、ならびに使用されている個々の化合物の性質に依存する。
【0095】
注射の場合、担体は、典型的には、無菌のパイロジェンフリー水、パイロジェンフリーリン酸緩衝化生理食塩水溶液、静菌水、またはCremophor EL[R](BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)などの液体である。他の投与方法の場合、担体は、固体または液体のいずれであってもよい。
【0096】
経口投与の場合、組成物は、カプセル剤、錠剤、粉剤などの固形剤形で、またはエレキシル剤、シロップ剤および懸濁液剤などの液体剤形で投与することができる。組成物を、ゲラチンカプセル中に、ブドウ糖、乳糖、蔗糖、マンニトール、デンプン、セルロースもしくはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、炭酸マグネシウムなどの不活性成分および粉末性担体と一緒に封じ込めることができる。所望の色彩、風味、安定性、緩衝能、分散またはその他の既知の望ましい特徴を提供するために添加することのできるさらなる不活性成分の例が、ベンガラ、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インクなどである。類似の希釈剤を使用して圧縮錠剤を作製することができる。錠剤およびカプセル剤は、双方とも、数時間にわたる薬剤の継続的放出を提供するための徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤を、なんらかの不快な風味を遮断し、かつ錠剤を雰囲気から保護するために糖で被覆、またはフィルムで被覆することができ、あるいは消化管中での選択的崩壊のために腸溶性被覆を施すことができる。経口投与用の液体剤形は、患者の受容性を高めるために着色剤および風味剤を含むことができる。
【0097】
頬側(舌下)投与に適した製剤としては、風味基剤、通常的には蔗糖とアラビアゴムまたはトラガカントゴム中に組成物を含むロゼンジ剤;ならびにゼラチン、グリセリンもしくは蔗糖、およびアラビアゴムなどの不活性基剤中に組成物を含むパステル剤が挙げられる。
【0098】
非経口投与に適した本発明の製剤は、組成物の無菌水性および非水性注射溶液を含み、該調合物は、意図した受容者の血液と好ましくは等張である。これらの調合物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図した受容者の血液と等張にする溶質を含むことができる。水性および非水性無菌懸濁液剤は、懸濁化剤および増粘剤を含むことができる。製剤は、単位投与、または多回投与容器、例えば、密閉されたアンプルおよびバイアル瓶の状態で提供することができ、使用直前に無菌液状担体、例えば、生理食塩水または注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)の状態で貯蔵することができる。
【0099】
即席の注射用液剤および懸濁液剤は、前に説明した種類の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。例えば、本発明の一態様において、密閉容器中に本発明のナノ粒子を単位剤形の状態で含む注射可能で安定な無菌組成物が提供される。該組成物は、その対象への注射に適した液体組成物を形成するように、適切な薬学的に許容される担体を用いて再構成される能力のある、凍結乾燥体の形態で提供される。組成物が実質的に非水溶性である場合、薬学的に許容される十分な量の乳化剤を、組成物を水性担体中で乳化するのに十分な量で採用することができる。1つのこのような有用な乳化剤がホスファチジルコリンである。
【0100】
直腸投与に適した製剤は、好ましくは、単位用量の座剤として提供される。これらは、組成物を1種または複数の通常的な固体担体、例えば、カカオバターと混合すること、次いで生じる混合物を成型することによって調製することができる。
【0101】
皮膚への局所適用に適した製剤は、好ましくは、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾル剤、または油剤の形態を取る。使用できる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮吸収増強剤、およびこれらの2つ以上からなる組合せが挙げられる。
【0102】
経皮投与に適した製剤は、受容者の上皮との長時間の完全接触を維持するように構成された分離型パッチとして提供することができる。経皮投与に適した製剤は、イオン注入によって送達することもでき(例えば、Tyle、Pharm.Res.3:318(1986)を参照されたい)、典型的には、組成物の任意選択的に緩衝化された水性溶液の形態を取る。適切な製剤は、クエン酸塩またはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含む。
【0103】
化合物は、代わりに、経鼻投与用に製剤化すること、あるいは任意の適切な手段によって対象の肺へ投与すること、例えば、ナノ粒子を含む呼吸可能な粒子の対象が吸入するエアロゾル懸濁剤によって投与することができる。呼吸可能な粒子は、液体であっても固体であってもよい。用語「エアロゾル」は、細気管支または鼻通路中に吸入される能力のある、任意の気体によって運ばれる懸濁相を含む。具体的には、エアロゾルは、定用量吸入器もしくはネブライザー中で、またはミスト噴霧器中で生成させることができるような、気体で運ばれる小滴懸濁物を含む。エアロゾルは、また、例えば吸入装置から吹込みによって送達できる、空気またはその他の担体気体中に懸濁された乾燥粉末組成物を含む。GandertonおよびJones、「Drug Delivery to the Respiratory Tract」Ellis Horwood(1987);Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273〜313;およびRaeburnら、J.Pharmacol.Toxicol.Meth.27:143(1992)を参照されたい。ナノ粒子を含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に公知であるように、圧力駆動式エアロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーを用いるなどの任意の適切な手段によって生成させることができる。例えば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。ナノ粒子を含む固体粒子のエアロゾルも、同様に、製薬の技術分野で公知の技術により、任意の固体粒子状薬剤のエアロゾル発生器を用いて生成させることができる。
【0104】
別法として、本発明のナノ粒子を、全身ではなく局所的に(例えば、腫瘍中および/またはその近隣に直接的に)例えばデポ剤または徐放性製剤の状態で投与することができる。
【0105】
本発明のナノ粒子は、任意選択的に他の治療剤および/または処置と共に送達することができる。さらなる治療剤および/または処置は、本発明のナノ粒子の前に、後に、および/またはナノ粒子と同時に送達することができる。本明細書中で使用する場合、単語「同時に」は、併用効果をもたらすように、時間が十分に近接していることを意味する(すなわち、同時とは、一緒でよく、あるいは互いに前または後の短時間内に2つ以上の事象が行われてもよい)。一実施形態において、本発明のナノ粒子は、抗がん剤(例えば、本明細書に記載のような化学療法薬または化学療法剤)および/または血管新生抑制剤と共に投与され、それらの非限定的例には、VEGF(例えば、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS))および血管新生のその他のプロモーター(例えば、bFGF、アンジオポイエチン−1)に対する抗体;α−v/β−3血管インテグリンに対する抗体(例えば、VITAXIN)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ダルテパリン、ABT−510、CNGRCペプチドTNFα接合体、シクロホスファミド、リン酸コンブレタスタチンA4、酢酸ジメチルキサンテノン、ドセタキセル、レナリドミド、エンザスタウリン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、(Abraxane)、大豆イソフラボン(Genistein)、クエン酸タモキシフェン、サリドマイド、ADH−1(EXHERIN)、AG−013736、AMG−706、AZD2171、トシル酸ソラフェニブ、BMS−582664、CHIR−265、パゾパニブ、PI−88、バタラニブ、エベロリムス、スラミン、リンゴ酸スニチニブ、XL184、ZD6474、ATN−161、シレンギチド、およびセレコキシブが含まれる。さらに、本発明の主題は、当技術分野で公知のように、ナノ粒子の送達と組み合わせて、放射線処置および/または外科処置を受け入れることができ、かつまた、化学療法薬、サイトカイン、ホルモンおよび/または血管新生抑制剤を受け入れることができる。
【0106】
特定の実施形態において、ナノ粒子は、対象に治療有効量(この用語は本明細書中で定義される通りである)で投与される。薬学的に活性な化合物の投与量は、当技術分野で公知の方法によって決定することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.イーストン、ペンシルヴェニア州)を参照されたい。任意の特定のナノ粒子組成物の治療有効量は、組成物によって、および対象によって若干相違し、対象の状態、個々のナノ粒子の組成、ならびに/あるいは送達の経路および/または頻度に依存する。
【0107】
核酸を含むナノ粒子の投与/送達に関して、約109〜約1012ナノ粒子/cm2(例えば、109/cm2、1010/cm2、1011/cm2、1012/cm2のナノ粒子)の投与量範囲を採用できる。所定体積の担体または媒体(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS);ヒドロゲルなど)中のナノ粒子の数は、分光分析により、または粒子を定量するための当技術分野で公知の任意の他の方法により測定される。
【0108】
治療薬を含むナノ粒子の投与/送達に関して、投与量範囲は、どの薬物が使用されるかに応じて、当技術分野で標準的な方法により決定されるような、約5mg/m2〜約200mg/m2のナノ粒子、またはより詳細には約10mg/m2〜約100mg/m2のナノ粒子(例えば、5mg/m2、6mg/m2、7mg/m2、8mg/m2、9mg/m2、10mg/m2、11mg/m2、12mg/m2、13mg/m2、14mg/m2、15mg/m2、16mg/m2、17mg/m2、18mg/m2、5mg/m2、19mg/m2、20mg/m2、25mg/m2、30mg/m2、35mg/m2、40mg/m2、45mg/m2、50mg/m2、55mg/m2、60mg/m2、65mg/m2、70mg/m2、75mg/m2、80mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、95mg/m2、100mg/m2、125mg/m2、150mg/m2、175mg/m2、200mg/m2のナノ粒子)であってもよい。
【0109】
ナノ粒子の投与/送達に関する典型的な投与量範囲としては、mg/kgで表現して、約2mg/kg〜約20mg/kgのナノ粒子、および約5mg/kg〜約10mg/kgの範囲のナノ粒子(例えば、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kgのナノ粒子)が挙げられる。
【0110】
本発明のp53キメラ(例えば、p53/p73OD)の投与/送達に関して、典型的な投与量範囲は、約1.0mgDNA/kg〜約10.0mgDNA/kg(例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4,5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10.0mgDNA/kg)であってもよい。
【0111】
本発明の特定の実施形態において、治療効果を達成するために、および/または診断の目的のために、1回を超える投与(例えば2、3、4またはそれ以上の投与)を、種々の時間間隔にわたって(例えば、毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年など)採用することができる。
【0112】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、本発明のナノ粒子を採用する種々の方法を提供する。とりわけ、本明細書中で提供されるのは、ナノ粒子を細胞に送達する方法であって、細胞を本発明のナノ粒子と、ナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法である。該細胞は、インビボであってもよく(すなわち、対象中の細胞)、または該細胞は、インビトロまたは生体外であってもよい。さらに、本発明の細胞は、がん細胞、前がん細胞、または腫瘍細胞であってもよい。
【0113】
本明細書でさらに提供されるのは、それを必要とする対象において活性薬剤を腫瘍細胞に送達する方法であって、本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞表面のグルコース輸送体に結合し、腫瘍細胞によって内部移行され、それによって活性薬剤を腫瘍細胞に送達することを含む方法である。
【0114】
さらに、本発明は、それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法を提供する。
【0115】
また、本明細書で提供するのは、それを必要とする対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象における腫瘍の退縮を誘導することを含む方法である。腫瘍退縮は、例えば、当技術分野で周知のように、白血病およびその他の「液状がん」などの固形腫瘍がんでないがんにおいて測定することができる。
【0116】
本発明は、さらに、対象(例えば、それを必要とする対象)における過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法を提供する。本発明は、また、対象(例えば、それを必要とする対象)における過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の本発明のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象における過剰増殖性障害(例えば、過剰増殖性細胞が細胞表面のグルコース輸送体を過剰発現する)を治療することを含む方法を提供する。
【0117】
用語「がん」は、本明細書中で使用する場合、細胞の任意の良性または悪性の異常増殖を指す。本発明のがんは、原発性がんおよび/または転移性がんであってもよい。例には、限定はされないが、乳がん、前立腺がん、リンパ腫、皮膚がん、膵臓がん、結腸がん、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣がん、脳がん、原発性脳癌、頭頸部がん、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸部癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、前立腺癌、尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頸部肥厚、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、および網膜芽細胞腫であってもよい。本明細書でさらに提供されるのは、当技術分野で公知であるような、突然変異p53表現型に付随する任意のがんである。
【0118】
用語「対象」は、本明細書中で使用する場合、本発明の方法を実施することのできる任意の対象を包含する。本発明の方法により本発明のナノ粒子を送達することのできる対象には、医療目的(例えば、治療および/または診断)でのヒト対象、ならびに獣医学および薬物のスクリーニングおよび開発の目的での動物対象の双方を包含する。一部の実施形態において、対象は、鳥類対象または哺乳動物対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、霊長類、ラット、マウス、ウサギ目、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)でよく、特定の実施形態において、ヒト対象(男性および女性対象の双方を含み、かつ新生児、幼児、若年、青年、成人、および老齢対象を含み、さらに懐妊対象を含む)である。他の実施形態において、対象は、がん、腫瘍増殖、および/または他の過剰増殖性障害の動物モデルである。
【0119】
「それを必要とする」対象には、限定はされないが、がんまたはその他の増殖性障害と診断された対象、がんを有すると疑われる対象、腫瘍を有する対象、腫瘍を有すると疑われる対象、がんまたはその他の増殖性障害を有するリスクの高い対象、がんを有する可能性が高い対象、腫瘍を有する可能性が高い対象などが含まれる。このような対象は、それゆえ、治療および/または診断の目的でそれらに本発明のナノ粒子を投与または送達することを必要とし、かつ/またはそれが有益であり、かつ/またはそれを望む対象である。
【0120】
用語「治療有効量」または「有効量」は、本明細書中で使用する場合、当技術分野で周知のように、例えば、状態(例えば、障害、疾患、症候群、疾病、傷害、外傷性および/または外科性創傷)に苦しむ対象に、対象の状態(1種または複数の症状)の改善、状態の進行の遅延または低減、状態の開始の予防または遅延、および/または臨床パラメーター、疾患または疾病の状態または分類の変化を含む有益な効果であり得る、など調節効果を付与する本発明のナノ粒子、および/または本発明のナノ粒子を含む組成物の量を指す。
【0121】
例えば、治療有効量または有効量は、対象において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%まで状態を改善する(例えば、がんを治療するおよび/または腫瘍の大きさを縮小するおよび/または腫瘍の退縮を誘導する)本発明のナノ粒子または組成物の量を指す。
【0122】
「治療する」、「治療すること」、「治療」または「治癒すること」は、状態(例えば、障害、疾患、症候群、疾病、外傷性または外科性創傷など)に苦しむ対象に、例えば有益な効果であり得る調節効果を付与する任意の部類の活動を指す。
【0123】
用語「治療する」、「治療すること」、「治癒すること」または「〜の治療」(または文法的に等価な用語)とは、対象の状態の重症度が、低減されるまたは少なくとも好転または改善されること、および/または少なくとも1つの臨床症状の若干の緩和、軽減または減少が達成されること、および/または状態の進行の遅延および/または疾患もしくは障害の開始の遅延が存在することも意味する。
【0124】
「予防する」、「予防すること」または「予防」とは、対象における病理学的状態および/または疾患状態もしくは現状の進行および/または顕在化を回避または排除することを意味する。
【0125】
腫瘍の大きさが縮小される本発明の方法では、腫瘍の大きさを、本発明のナノ粒子および/または組成物での治療なしでの腫瘍の大きさに比較して縮小することができる(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%まで縮小される)。また、治療の有効性は、本発明のナノ粒子および/または組成物での治療なしでの腫瘍成長率に比較した場合の、腫瘍の成長率の低下または腫瘍退縮の誘導を監視することによって測定することできる(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%まで低下した成長率または誘導された退縮率)。有効性を判定するために測定することのできるその他のパラメーターは、本発明のナノ粒子および/または組成物での治療に応答した腫瘍細胞のアポトーシスの割合/程度、および/または老化である。
【0126】
本発明のナノ粒子は、限定はされないが、経口送達、静脈内送達、皮下送達、注射、外科的移植、体腔中への送達、局所適用、およびこれらの任意の組合せを含む、種々の方法を介して対象に送達される。
【0127】
本発明は、さらに、対象におけるがんを診断する方法を提供する。一実施形態において、対象におけるがんをインビトロで診断する方法であって、a)本発明のナノ粒子を対象からの細胞と接触させること;b)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性を測定すること;ならびにc)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性を、対照対象の細胞中へのおよび/または診断されている対象の対照細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性と比較することを含み、それによって対照対象の細胞および/または試験対象の対照細胞と比較した場合の対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の量および/または割合および/または示された選択性の増加が、対象におけるがんの診断指標となる、方法が提供される。細胞中への本発明のナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または選択性を測定する方法は、本明細書で示される実施例に記載の通りであり、当技術分野で周知の通りである。非限定的例には、マーカー(例えばGFP)の検出、および産生物(例えば、β−ガラクトシダーゼ)を産生するための、ナノ粒子によって運搬されるヌクレオチド配列の発現の測定が含まれる。
【0128】
また、本明細書中で提供されるのは、対象におけるがんをインビボで診断する方法であって、a)造影剤を含む本発明のナノ粒子を対象に送達すること;b)対象において造影剤からのシグナルを検出すること;およびc)対象において造影剤からのシグナルを、対照対象または診断されている対象の対照組織における同一造影剤からのシグナルと比較することを含み、それによって対照対象または対照組織からのシグナルと比較した場合の対象からのシグナルの変化(例えば、特定の臓器、細胞型、位置などへのシグナルの蓄積)が、対象におけるがんの診断指標となる、方法である。前記造影剤が対象内に存在する場合に本発明の造影剤からのシグナルを検出する方法は、当技術分野で周知である。
【0129】
さらに、本発明の方法を採用して、腫瘍の動態(例えば、対象への本発明のナノ粒子の送達に続く、時間にともなう腫瘍の大きさの縮小)を監視し、効果的な治療を見つけることができると考えられる。本発明のナノ粒子を、治療効果を同時に付与し、このような監視方法のための検出可能なシグナルを提供するように操作することができる。
【0130】
本発明の実施形態は、さらに、1種または複数の本明細書に記載のナノ粒子および/または組成物、ならびに任意選択で使用および/または投与のための説明書を含むキットを含む。当業者は、本発明のキットが、当技術分野で周知であるような適切な試薬およびキットを使用するための指示書に加えて、キットの試薬を保持するための1つまたは複数の容器および/または貯蔵場所を含むことができることを理解するであろう。キットのこれらの各成分は、同一容器中で一緒にされ、かつ/または別々の容器中に準備される。
【0131】
さらなる態様において、本発明は、p73ODを含むp53キメラであるp53の誘導体を提供する。また本明細書中で提供するのは、薬学的に許容される担体中に、p73ODを含むp53キメラを含む、それから実質的になる、またはそれからなる組成物である。
【0132】
p53/p73ODとしても知られる、p73オリゴマー化ドメイン(OD)を含むp53キメラは、393個のアミノ酸を有するヒトp53タンパク質であり、その中のアミノ酸318〜364は、p73のアミノ酸346〜390(オリゴマー化ドメイン)で置き換えられている[28]。野生型p53(例えば、PubMed中の遺伝子ID7157)、野生型p73(例えばPubMed中の遺伝子ID7161)、およびキメラp53/p73ODのそれぞれのアミノ酸配列を、置換された配列を太字で表して後に示す。これらの野生型およびキメラ(図でp53(73βaa346−390)と記載)の概略を、種々のドメインを識別して図12に示す。当業者は、p53キメラのアミノ酸配列に対する種々の置換を、本発明のp53の機能を変えることなしに行うことができることを、容易に理解するであろう。このような変異アミノ酸配列の産生および生じる変異p53キメラの機能性に関する試験のためのアッセイは、十分に当業者の技術の範囲内である。したがって、本明細書で提供されるp53キメラ配列のこのような変異は、本発明に包含される。
【0133】
p73(499個のアミノ酸;GenBank(登録商標)データベース受託番号CAA72219)、アミノ酸346〜390が太字である。
【表1】
【0134】
p53(393個のアミノ酸;GenBank(登録商標)データベース受託番号NP 00537)、アミノ酸318〜364が太字である。
【表2】
【0135】
p53/p73OD。p53(393個のアミノ酸からなる配列)のアミノ酸318〜364が、p73(499個のアミノ酸からなる配列)のアミノ酸346〜390で置き換えられている。
【表3】
【0136】
本発明の特定の態様は、本発明のp53キメラが、腫瘍細胞中の突然変異p53に結合せず、そのため高レベルの突然変異p53の存在下でp53の機能を効果的に回復できるという予想外の発見に基づく。したがって、本発明のp53キメラを治療薬として使用して、がんを治療しかつ/または腫瘍の大きさを縮小することができる。したがって一態様において、本発明は、p73ODを含むp53キメラ(例えば、p53/p73OD)を細胞に送達する方法であって、細胞をp53キメラと、p53キメラが細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法を提供する。この方法の種々の実施形態において、細胞は、インビボで、インビトロで、またはその双方で存在することができる。本明細書中でさらに提供されるのは、それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象の腫瘍細胞中に導入し、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む、そのことから実質的になる、またはそのことからなる方法である。
【0137】
本発明は、さらに、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む、そのことから実質的になる、またはそのことからなる方法を提供する。
【0138】
本発明のp53キメラは、前に記載のように、本発明のナノ粒子の一部として含めることができる。しかし、対象へのp53キメラの送達は、本発明のナノ粒子の一部としての対象の細胞中への導入に限定されないと解される。具体的には、このような送達は、細胞中に核酸分子を導入するための公知の任意の媒体および/または機構によって、本発明の対象の細胞中に本発明のp53キメラを導入することを含むことができる。核酸分子を対象中および対象の細胞中に送達するための多くのプロトコールは、当技術分野で周知であり、本発明の方法に包含される。非限定的例には、周知のように、プラスミド、発現ベクター、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AVV)、アルファウイルス、ポックスウイルスなど)、リボソーム、裸の核酸分子などが含まれる。本発明の特定の実施形態では、p53キメラを、当技術分野で周知であるアデノウイルス介在性遺伝子移動システムを介して細胞中に導入することができる。
【0139】
本発明のナノ粒子および/またはキメラを採用する本発明の方法において、このような方法は、さらに、当技術分野で周知のプロトコールにより、対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、サイトカイン、ホルモン、放射線処置、外科的処置、またはこれらの組合せを施すことを含む、それから実質的になる、またはそれからなることができる。このようなさらなるステップは、対象へのp53キメラの送達の前、後、および/または送達と同時に実施することができる。
【0140】
さらに、ナノ粒子および/またはp53キメラを採用する本発明の方法には、対象にプロテインキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびこれらの任意の組合せを投与することを含む、それから実質的になる、またはそれからなるさらなるステップが含まれ得る。本明細書中でさらに提供されるのは、薬学的に許容される担体中に本発明のキメラを含む組成物を含むキットである。
【0141】
本発明は、以下の実施例中でより詳細に説明されるが、その多くの修正形態および変形形も当業者にとって明白であるので、該実施例は、単なる例示と解釈される。
【実施例】
【0142】
[実施例1 がん細胞に特異的なナノ粒子送達システム]
本発明では、ワールブルグ効果、すなわち、がん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込む現象を利用することによって、がん細胞を標的とする以前には記載されていない部類のナノ粒子を開発した。具体的には、グルコースに接合されたPEGに連結されたポリエチレンイミン(PEI)接合体(GLU−PEG−PEI)を合成した。細胞培養研究において、このシステムを使用してEGFPまたはβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)発現プラスミドを送達すると、非がん細胞株であるRWPEまたはMCF−10A細胞と比較して、がん細胞株であるPC3またはMDA−MB−231において相当により大きな送達効率が達成された。送達の特異性は、過剰量のグルコースの添加がEGFPまたはβ−Galの発現を著しく抑制することの発見によって立証されるように、グルコース輸送体に特有のものである。さらなる分析は、GLU−PEG−PEI/DNA複合体が、ナノ粒子/グルコース輸送体複合体のエンドサイトーシス介在性内部移行により細胞に入ることを示した。まとめると、これらの結果は、がん療法における該送達システムの可能性に関する原理証明を提供する。
【0143】
抗がん療法の有効性は、健常細胞を損傷することなしに、がん細胞を縮小または除去する能力に依拠する。したがって、がん細胞を優先的に標的とする戦略は、がん療法の成功において必須である。ナノテクノロジーをベースにした薬物送達システム内に治療薬剤を封じ込めることは、製剤化戦略に広範に適用されている。種々のリポソーム、ポリマー性ミセル、デンドリマー、タンパク質ナノ粒子、ウイルスナノ粒子、炭素ナノチューブ、およびカチオン性ポリマーを含め、がん細胞への治療薬の送達を高めるために現在探索されている種々のナノ粒子系が存在する[24]。腫瘍組織中へのナノ粒子の蓄積は、腫瘍の微小血管系を通るナノ粒子の管外遊出および腫瘍組織中での治療薬品の蓄積を促進するための長い循環半減期に依存する受動的過程である。
【0144】
循環時間を長くする1つの決定的な戦略は、組織のマクロファージによる取込みを回避すること、および網膜内皮系による除去に抵抗することである。この目的のため、ナノ粒子を不活性で生体適合性のあるポリマーで被覆し、ステルス表面を創出してきた。例えば、ナノ粒子表面へのポリエチレングリコール(PEG)またはアルギネートなどの親水性ポリマーの組込みが、循環時間を増大させるために広範に使用されてきた[25]。一旦ナノ粒子が脈管系から腫瘍組織中に管外遊出すると、腫瘍細胞によるそれらの取込みは、治療薬品のより高い細胞内濃度およびそれに続く高められた治療有効性をもたらすことのできる積極的標的指向化によって促進される。積極的標識指向化は、送達を高めるために外面に接合された標的指向性リガンドの使用を必要とする。細胞増殖マーカーは、多くのこれらのマーカーが特定のがん細胞上で高度に発現されるので、がん治療薬のための重要な標的の部類を代表する。積極的標的指向性ナノ粒子によって利用される最も確立されたがん細胞標的としては、ヒト上皮受容体に対する抗体、移行受容体、および葉酸受容体が挙げられる。抗体を標的とすることは、見込みのある戦略と考えられるが、それは、腫瘍内取込みおよび腫瘍中での均一分布の双方を制限し、そのため薬物動態特性に有害な影響を及ぼす大きな水力学的大きさを含む、いくつかの欠点を有する。標的指向化の新たな方法が最近開発されている。それらの中で、核酸リガンド(アプタマー)は、かなりの興味を得ている。アプタマーは、分子内相互作用を介して、標的抗原に高い親和性および特異性で結合する独特な三次構造に折りたためるDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドである。バイオマーカーの認識に現在利用可能なプローブと比較して、アプタマーは、高特異性、低分子量、容易で再現性のある産生、多様な応用性、および容易な操作性を所持する[24]。アプタマーの使用は、標的指向化ナノ粒子の送達の重要な進歩を代表するが、がん細胞に特異的なアプタマーの同定は、相変わらず難題であり、このような取組みのボトルネックであった。
【0145】
本発明は、ワールブルグ効果を、すなわち、一般にがん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込むことを利用することによってがん細胞を標的とするナノ粒子の新規な形態の開発に基づく。具体的には、本発明では、高度に過剰発現されたグルコース輸送体を利用して、がん細胞に優先的に入ることのできる、グルコースに接合されたPEG(GLU−PEG)に連結されたナノ粒子を合成した。アンチセンスRNA、RNAi、およびmiRNAなどの新たな部類の生物活性巨大分子の明らかになりつつある治療的潜在能力を認識し、これらのGLU−PEGナノ粒子の使用を、発現プラスミドの細胞内送達について解析した。ポリエチレンイミン(PEI)を使用して、GFPを発現するまたはβ−ガラクトシダーゼを発現するプラスミドを細胞中へ送達するためのGLU−PEG−PEIを合成した。
【0146】
図1に示すように、GLU−PEG−PEIプラスミド複合体を合成するための4ステップ反応を設計した。PEGに対するグルコースの比率は、285nmでの分光法を使用して測定した。GLU−PEG/PEI/DNAの最適組成は、3:1:1であると判定された。
【0147】
GLU−PEG−PEIナノ粒子を調製したら、EGFP発現プラスミドを使用して、GFP発現に関して、送達システムが非形質転換細胞に比較して形質転換細胞を優先的に標的とする能力を試験した。具体的には、乳癌細胞株MDA−MB−231を、非形質転換ヒト乳腺上皮細胞株であるMCF−10A細胞株と比較した。緑色蛍光シグナルの試験は、2種の細胞株中でのGFPの明らかに異なる発現を明らかにした(図2A)。平均して、MDA−MB−231細胞中では50%を超えるトランスフェクション効率が達成され、一方、同一条件下でGFP陽性であるMCF−10A細胞は5%未満であることが見出された。
【0148】
GLU−PEG−PEIが介在する差別的な送達が細胞型に特異的であるかどうかを判定するため、1対のヒト前立腺上皮細胞株を並行して調べた。図2Bに示すように、非形質転換前立腺上皮細胞に比較した前立腺がん細胞の優先的標的化が、明らかである。前立腺癌細胞株であるPC3は、ほぼ60%のGFP陽性細胞を提示した。対照的に、非形質転換前立腺上皮細胞株であるRWPEは、5%未満のGFP発現細胞集団を有した。
【0149】
結果をさらに検証するため、EGFPプラスミドを、β−ガラクトシダーゼを発現するベクターで置き換えた。図2Cに示すように、GFPに類似の結果が観察され、GLU−PEG−PEIはβ−gal発現に関してがん細胞を標的とした。まとめると、これらのデータは、GLU−PEG−PEIが、発現プラスミドを、非形質転換細胞に比較して癌細胞に優先的に送達する能力があることを立証した。
【0150】
がん細胞は、高度に増加したグルコース取込みの原因である高レベルのグルコース輸送体を一般には発現することが、広く発表されている。GLU−PEG−PEIが、遺伝子送達のためにグルコース輸送体を利用したかどうかを判定するために、過剰量のグルコースを含めることによって競合実験を実施した。高濃度(50mM)のグルコースの存在下での遺伝子発現の分析は、5mMグルコースを含む培地で培養された細胞と比較した場合のGFP発現の著しい抑制によって証明されるように、グルコース輸送体依存性遺伝子送達を支持している(図3A)。
【0151】
グルコース競合研究は、GLU−PEG−PEI介在性遺伝子送達がグルコース輸送体依存性であることを確証したが、GLU−PEG−PEI/DNA複合体がどのように細胞に入るかは不明なままであった。グルコースの大きさに比べてより大きいGLU−PEG−PEI/DNAの大きさを考慮すると、ナノ粒子/DNA複合体は、グルコース輸送体で促進される拡散により形質膜を横切るグルコースとは異なる方式で細胞に入ると予想される。受容体−リガンド複合体のエンドサイトーシス介在性内部移行は、トランスフェリンおよび葉酸を含むリガンド接合型ナノ粒子のための主な細胞進入経路であることが示されている。エンドサイトーシスがGLU−PEG−PEI/DNA複合体のための細胞進入機構でもあるかどうかを判定するための研究を実施した。これに取り組むために、エンドサイトーシスの活性を、初期エンドソームの活性を、そしてそれによってエンドサイトーシスの活性を制御する、恒常的に活性のあるまたはドミナントネガティブな突然変異Rab5の発現を介して変化させた。エンドサイトーシス介在性取込みと矛盾せず、恒常的に活性なRab5{Rab5(Q79L)}の発現は、対照と比較してより高レベルのβ−Gal発現によって立証されるように、GLU−PEG−PEIによる遺伝子送達の著しい増加と関連していた(図3B)。ドミナントネガティブな突然変異{Rab5(S34N)}を発現することによるエンドサイトーシスの活性の阻害が、GLU−PEG−PEI介在性β−Gal発現の抑制をもたらすという観察は、これらのデータと一致する(図3B)。
【0152】
[実施例II インビボでの研究]
組織への分布を研究するため、GLU−PEG−PEIを含むナノ粒子を使用して、β−ガラクトシダーゼ発現プラスミドをマウスに送達する。無胸腺の雄性および雌性ヌードマウス(Balb/c nu/nu、4〜6週齢)は、Harlan laboratoriesから購入する。マウスを、病原体のない条件下に収容し、食物および水を制約なしに供給して、12時間/12時間の明暗サイクルで維持する。0.1mLのPBS中の5×106個の腫瘍細胞(例えば、肺癌細胞、乳がん細胞、前立腺がん細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞など)の接種物をマトリゲル(Matrigel)と4℃で混合し、次いでマウス脇腹の皮下(s.c.)区域に注入する。腫瘍の大きさが1cmに達したら、GLU−PEG−PEI/β−Gal(50μLのPBS中50μg/DNA)を尾部静脈注入により投与するか、あるいは0.5mLのGLU−PEG−PEI/β−gal/ヒドロゲル(20wt%Pluronic F127ゲル)混合物を、腫瘍をもつマウスに皮下で投与する。24または48時間後に、マウスを頸部断頭によって屠殺する。肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓、および腫瘍を含め、種々の組織を集める。β−Gal染色のため凍結組織切片を調製する。腫瘍細胞へのプラスミドの選択的送達を確実にするため、相対的遺伝子移動効率(腫瘍組織対正常組織中でのβ−Galの発現)を評価し、最適化した。
【0153】
[実施例III ヒト対象へのナノ粒子の送達]
ポリヌクレオチドを含む本発明のナノ粒子を、ナノ粒子の組成および治療すべき個々の障害に応じて、本明細書に記載のような投与量で(例えば、経口および/または静脈内および/または皮下で)ヒト対象に送達する。治療の有効性を、当技術分野で周知のように、腫瘍の大きさおよび/または腫瘍増殖率の変化を測定すること、腫瘍細胞のアポトーシスおよび/または老化を測定すること、ナノ粒子によって運ばれる核酸でコードされる産生物の産生を分析すること、がん抗原(例えば、CEA、PSA)のレベルを測定すること、対象のがんに付随する兆候または症状の調節を評価することなどによって監視する。
【0154】
[実施例IV 腫瘍抑制因子PTENをコードする核酸を送達するナノ粒子を使用する、腫瘍の大きさの用量依存性縮小]
図4Bは、対照ベクター、腫瘍抑制因子PYMをコードする20μgのベクター、または腫瘍抑制因子PTENをコードする40μgのベクターのどれかを与えられたマウスから単離された腫瘍の画像である。腫瘍の大きさの用量依存性縮小に一致して、Ki67染色も、腫瘍抑制因子の遺伝子の用量依存的方式での発現による細胞増殖の阻害を示した(図4A)。
【0155】
[実施例V p73ODを含むp53キメラに関する研究]
腫瘍細胞は、ゲノムの不安定性および発がん遺伝子の活性化のせいで、持続性のp53活性化シグナルを内部に含み、p53機能の回復をがん療法の魅力的な取組みとする。突然変異p53をその野生型相当物で置き換えるために、種々の方法が試みられてきた。しかし、腫瘍細胞中の高度に豊富な突然変異p53タンパク質のドミナントネガティブな活性のため、野生型p53は、機能性であるためには、正常組織に対して厳しい毒性をもたらす可能性のある極端に高いレベルで発現されなければならない。本発明では、p73のオリゴマー化ドメイン(OD)を含むp53キメラ(p53/p73OD)が、提供される。p53ODとp73ODとの間の相互作用の欠如のため、p53/p73ODは、突然変異p53と会合せず、それゆえ突然変異p53の高いレベルにもかかわらず、p53の機能を効果的に回復する能力がある。重要なことであるが、p53/p73ODの発現は、MDM2の発現誘導による突然変異p53タンパク質レベルの著しい低下と関連している。結果として、このキメラの相当に低い発現レベルは、がん細胞の増殖を十分に抑制する。特定の実施形態において、本発明は、また、p53/p73ODをがん細胞に優先的に送達するための、グルコースに接合されたPEI−ナノ粒子系を提供する。予備的データは、がん細胞に特異的な送達に関する原理証明を提供している。したがって、本発明では、臨床環境中への迅速な移行の目的で、p53をベースにした効果的な抗がん療法の開発のために、この新規な送達システムを利用することが考えられる。この取組みは、p53をベースにしたがん療法を革命的に変える潜在能力を有するのみならず、がん療法において広範な用途を有する、がん細胞に特異的な送達システムを提供する。
【0156】
[予備研究]
マウス腫瘍モデルを用いた研究は、p53の発現を回復することが腫瘍の退縮をもたらすことを示し、確立された腫瘍がp53に弱いことを示した[26、27]。しかし、過半数のヒトがんは、野生型p53をODの介在する会合により効果的に不活性化する高レベルの突然変異p53タンパク質を発現し、腫瘍細胞におけるp53機能の回復を極めて困難にする。本発明は、p53/p73キメラを利用して、突然変異p53によるこのOD介在性不活性化を回避する。一連のp53/p73キメラタンパク質を、p53およびp73の対応するドメインを交換することによって作出した[28]。これらのキメラタンパク質の研究は、p53/p73ODがp53に結合せず、むしろそれはp73と会合し、p53およびp73は、オリゴマー化ドメイン(OD)を介して互いに会合しないことを示した。結晶構造の研究は、この観察を裏付けた[29]。機能的特徴づけは、p53/p73ODが、試験されたp53の機能をすべて保存していることを示した[28]。MDA−MB−231細胞(高レベルの突然変異p53を発現する乳がん細胞株)中で発現される場合、p53/p73ODは、野生型p53ではないが、細胞増殖を効果的に阻害した(図5A)。p53/p73は、また、おそらくはMDM2発現の誘導に由来するのであろう、突然変異p53タンパク質レベルの有意な低下を誘導した(図5B、レーン3)。発癌機能の主な原因である突然変異p53のドミナントネガティブ型および機能獲得型活性を考慮すると、このことはとりわけ重要である。結果は、野生型p53と異なり、p53/p73ODが、高レベルの突然変異p53の存在下で効率的な増殖抑制を誘導できることを立証しており、このキメラの発現が、突然変異p53を発現する腫瘍細胞中でp53の機能を回復するための効果的な取組みとして役立つことができることを示している。
【0157】
腫瘍細胞とは逆に、正常細胞は、p53活性化の固有のシグナルを通常的には内部に含まない。結果として、中位レベルのp53/p73OD発現に対する正常細胞の応答は、がん細胞のそれとはおそらく異なる。このことは、同様のコロニー形成アッセイを使用して、MDA−MB−231細胞およびMCF−10A細胞(非形質転換ヒト乳腺上皮細胞株)を比較することによって試験された。結果は、MDA−MB−231の細胞増殖の著しい阻害を誘導するレベルで発現された場合、p53/p73ODは、MCF−10A細胞の増殖に有意に影響を与えなかったことを示している(図6)。
【0158】
がん細胞および非形質転換細胞のp53/p73OD発現に対する異なる感受性の根底にある潜在的機構を理解するため、p53活性をさらに調べた。p53活性化の一般的に使用される代用マーカーである抗Sp15p53抗体を用いたウェスタンブロットは、p53/p73ODが、MDA−MB−231細胞中でリン酸化されるが、MCF−10A細胞中ではされないことを示した(図7A)。リン酸化と一致して、p53/p73ODの発現は、MDA−MB−231中でPUMA、MDM2、およびp21の発現の活発な誘導をもたらしたが、MCF−10A細胞中ではそうではなく(図7A)、図6に示す異なる感受性と一致していた。結果は、がん細胞は、正常細胞と異なり、強力な固有のp53活性化シグナルを内部に含むという概念に一致している。MCF−10A細胞中でのp53/p73ODの低い活性は、キメラを放射線などの外来性刺激によって活性化することができるかどうかの疑問につながる。IRで処理すると、p53/p73ODのリン酸化が、MCF−10A細胞、およびMDA−MB−231細胞中で著しく誘導され、双方の細胞型におけるDNA損傷によるキメラの活性化を示した(図7B)。フローサイトメトリー分析は、IR処理MCF−10A細胞における有意なG1細胞周期の停止を明らかにした。対照的に、MDA−MB−231細胞は、G1細胞周期の停止をほとんど示さず、むしろサブG1またはアポトーシス集団の著しい増加を示した(図7C)。この結果は、DNA損傷で誘導されるp53/p73OD活性化に対する形質転換細胞と非形質転換細胞とでの異なる応答を暗示している。
【0159】
p53/p73ODが、がん細胞中でp53の機能を効果的に回復できることがわかり、遺伝子送達の戦略が探索されてきた。長年にわたり、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、およびウイルスベクターなどの種々の送達システムが導入されてきた。ウイルスベクターは、高効率の遺伝子移動を提供できるが、免疫原性および宿主ゲノム中での挿入型変異誘発の可能性が、大きな懸念として存在する。結果として、非ウイルス性送達システムがますます一般的になっている。本明細書に記載の研究では、カチオン性ポリマーを使用し、ワールブルグ効果、すなわち、がん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込むことを利用することによって新規な形態のがん細胞標的化を開発した。具体的には、グルコースに接合されたPEGに連結されたポリエチレンイミン(PEI)(GLU−PEG−PEI)を合成した。図1に示すように、GLU−PEG−PEIプラスミド複合体を合成するために4ステップ反応を設計した。グルコースのPEGに対する比率は、285nmでの分光法で測定した。GLU−PEG/PEI/DNAの最適組成は、3:3:1であると判定された。β−ガラクトシダーゼの発現系(lacZプラスミド)を使用して、送達システムがβ−gal発現に関して非形質転換細胞に比較して形質転換細胞を優先的に標的とする能力を試験した。具体的には、乳癌細胞株MDA−MB−231を、MCF−10A細胞と比較した。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal(登録商標))での染色は、2種の細胞株におけるβ−galの明確に異なる発現を明らかにした(図8A)。平均して、MDA−MB−231細胞では60%を超えるトランスフェクション効率が得られたが、同一条件下でβ−gal陽性であることが見出されたMCF−10A細胞は5%未満であった。GLU−PEG−PEI介在性の異なる送達が、細胞型に特異的であるかどうかを判定するために、1対のヒト前立腺上皮細胞株を並行して試験した。図8Bに示すように、非形質転換前立腺上皮細胞に比較して優先的な前立腺がん細胞の標的化は、明らかである。前立腺癌細胞株であるPC3は、ほぼ60%のβ−gal陽性細胞を提示した。対照的に、非形質転換前立腺上皮細胞株であるRWPEは、集団の5%未満がβ−galを発現した。GLU−PEG−PEIが遺伝子送達のためにグルコース輸送体を利用したかどうかを判定するために、過剰量のグルコースを含めることによって、競合実験を実施した。高濃度(50mM)のグルコースの存在下における遺伝子発現の分析は、5mMのグルコースを含む培地を用いて培養された細胞と比較した場合のβ−gal発現の著しい抑制によって証明されるように(図8C)、グルコース輸送体依存性の遺伝子送達を支持している。同時に、これらのデータは、GLU−PEG−PEIが、発現プラスミドを非形質転換細胞に比較して癌細胞に優先的に送達する能力のあることを立証した。
【0160】
PEIは優れたトランスフェクション効率を提供できるが、その使用は、高い細胞障害性によって阻止されることがある。実際、PEIは、MDA−MB−231細胞の生存率に用量依存的方式で否定的影響を及ぼす(図9)。しかし、細胞障害性は、PEIをGLU−PEGまたはGLU−ALGと混合した場合に低減されることが見出された。この効果は、細胞障害性の用量依存性低下をもたらす、漸増する量のGLU−ALGを使用することによって確認された(図9)。
【0161】
腫瘍異種移植片マウスモデルを使用して、GLU−ALG−PEIが腫瘍細胞にプラスミドをインビボで選択的に送達する能力を評価した。0.1mLのPBS中の5×106個のMDA−MB−231細胞の接種物をマトリゲルと4℃で混合し、次いでマウス脇腹の皮下(s.c.)区域に注入した。腫瘍の大きさがほぼ200mmに達したらPBS中のGLU−PEG−PEI/lacZを、腫瘍をもつマウスに尾部静脈注入により投与した。48時間後に、マウスを頸部断頭によって屠殺した。肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓、および腫瘍を含め、種々の組織を集めた。β−Gal染色のため凍結組織切片を調製した。驚くべきことに、β−Gal陽性染色は、腫瘍組織においてのみ観察され、他の組織では観察されなかった(図10)。ALG−PEIが同一条件下でlacZを送達できないことは、グルコース依存性の腫瘍細胞標的化を示している。
【0162】
インサイチュでのp53の活性化の検出を容易にするため、基準的なp53応答要素の13反復を、GFPタンパク質の発現を推進するようにクローン化したPg13−GFP系を開発した。p53に関するGFP発現の絶対依存性を、p53欠損H1299細胞で検証した。Pg13−GFP構築物を安定的に発現するMDA−MB−231細胞を作出し、GLU−PEG−PEI/WTp53またはp53/p73ODと共にインキュベートした。24時間後に細胞を固定した。細胞核の検出を容易にするためDAPI染色を実施し、GFPシグナルを蛍光顕微鏡下で調べた。p53/p73ODは、p53wtと異なり、GFPの発現によって証明されるように、MDA−MB−231細胞中でp53転写活性の増加と関連していた(図11)。結果は、GLU−PEG−PEI粒子が、発現されるだけではなく機能性でもあるp53/p73ODを成功裏に送達したことを示している。GLU−PEG−PEI/p53/p73ODのインビボでの研究のために、Pg13−lacZおよびPg13−ルシフェラーゼプラスミドを創出し、Pg13−GFPと並行して使用する。
【0163】
[実験モデル]
本明細書に記載の研究は、インビトロおよびインビボモデルの双方を使用する。細胞モデルとしては、NC160ヒトがん細胞株、および例えば、American Type Culture Collection(ATCC)を通して得られるその他の非形質転換細胞株またはがん細胞株が挙げられる。ヌードマウスを使用して、腫瘍異種移植片モデルを創出する。ヒトがんの遺伝子操作されたマウスモデルも使用される。
【0164】
[NCI60ヒト腫瘍細胞株中のp53/p73ODをその細胞増殖を阻害する活性について試験するための研究]
p53/p73ODの増殖阻害活性をより広範な基盤上で検証するため、肺、結腸、乳腺および前立腺などの一般的なヒト腫瘍から得られたNCI60ヒトがん細胞株について研究を実施する。がん細胞株中のp53/p73ODの活性を、1)生化学的レベル−キメラタンパク質およびp53標的遺伝子の発現で、および2)細胞レベル−AlamarBlue(登録商標)およびコロニー生き残りアッセイによるがん細胞増殖で評価する。p53は、細胞型に応じて細胞の老化またはアポトーシスのどちらかの誘導によって細胞増殖を阻害することが確認されている。これらの2種の細胞応答は、p53/p73OD介在性増殖阻害の根底にある機構を判定するための対応するマーカーを使用することによって調べられる。mycタグを付けた野生型p53、p53/p73OD、またはp53(R175H)/p73ODをコードするレトロウイルスベクター(pBABE)を調製し、使用する。Mycタグは、再導入されるタンパク質を外来性突然変異p53タンパク質から容易に区別することを可能にする。並行して野生型p53を試験して、がん細胞中の突然変異p53のドミナントネガティブ活性を評価する。最近の研究は、アポトーシスの誘導におけるp53のための転写非依存的役割を示唆している[1、2]。このような可能性は、転写欠損型突然変異p53(R175H)/p73ODを含めることによって調べられる。
【0165】
レトロウイルス介在性遺伝子移動を、以前に説明されているように実施する[30]。p53またはp53/p73ODの異なる発現レベルは、5μg/mLのポリブレンの存在下に100mmの皿につき2500万個の受容者細胞を異なる量のウイルス原液(0.5、1、1.5、2、2.5、または3mL)で感染させ、37℃でインキュベートすることによって得られる。いくつかの癌細胞株を用いた予備研究において実施されたpBABE−lacZウイルスでの対照感染は、平均で50〜80%の細胞が定型的に感染されたことを示している。感染の24時間後に、非感染細胞を除去するために、細胞を、細胞型に応じて2〜5μg/mLのヒューロマイシン(Sigma)を含む培地中で2日間選択する。細胞を、ピューロマイシン不含培地中で24時間回収し、次いで、さらなる分析に供した。
【0166】
製造業者のプロトコールに従ってAlamarBlue(登録商標)(Invitrogen)を使用するAlamarBlueアッセイを実施して、細胞生存率を測定する。タイムコース実験(0、1、3、5、7および9日間)を実施して、時間と共に細胞生存率を監視する。
【0167】
コロニー形成アッセイでは、細胞を、p60−mm培養皿中に播種する(細胞数は、各細胞型のプレーティング効率に応じて異なる)。12日後に、コロニーを固定し、クリスタルバイオレットで染色する。少なくとも50細胞を含むコロニーのみを計数し、プレーティング効率(計数されたコロニー/播種した細胞)を計算する。
【0168】
細胞老化は、老化関連β−ガラクトシダーゼ(SA−β−Gal)、p15−Ink4b、p16−Ink4a、DcR2、およびDec−1を含むいくつかの細胞マーカーを使用して測定される。細胞生存率の実験に類似のタイムコースを実施して、老化表現型の発生を調べる。アポトーシスは、アネキシン−5−陽性細胞のフローサイトメトリー分析よって測定され、ウェスタンブロットを、前記のように種々の時点での活性化カスパーゼ−3のために使用する。
【0169】
抗Myc、p53、p21、MDM2、またはアクチンを使用する、タンパク質発現のウェスタン分析のために、細胞を採取する。遺伝子アレイ分析のために、RNAを単離する。具体的には、p53パスウェイに関連する113個の鍵遺伝子パネルの遺伝子発現をプロフィールするように設計されているp53パスウェイアレイ(AB BioScience)を使用する。調節されたp53標的遺伝子は、アポトーシス、細胞周期、細胞成長、増殖および分化、ならびにDNA修復に関与する機能性クラスターに分割される。アレイデータは、QRT−PCRおよびウェスタン分析によって確認される。
【0170】
腫瘍細胞は、高い増殖率がアポトーシス促進性遺伝子の誘導としばしば関連しているので、正常細胞に比べて有意により高いアポトーシスストレスの下にあるのが通常である[31]。腫瘍細胞が、ゲノムの不安定性および発癌遺伝子の活性化により、持続的なp53活性化シグナルを内部に含むという事実と一緒に[32]、p53/p73ODは、予備研究で示されたように、がん細胞中で発現すると容易に活性化されると予想することができる。p53/p73ODの発現は、p53の状態にかかわらずほとんどの腫瘍細胞株において増殖の有意な抑制をもたらすと予想されるが、一方、野生型p53は、p53発現の不十分ながん細胞株においてのみ活性である。突然変異p53タンパク質が腫瘍細胞中に極めて高レベルまで通常的には蓄積することを考慮すると、p53/p73ODが突然変異p53による阻害を逃れる能力は、中位レベルの発現が、がん細胞の増殖を阻害するのに十分であり、それによって潜在的に好ましくない副作用を回避すると予想されるので、極めて好都合であることがわかる可能性がある。提案される、異なるレベルのp53/p73ODを発現する実験は、腫瘍細胞の成長を抑制するのに十分な最適発現レベルの決定を可能にするはずである。最近の遺伝子研究は、MDM2が、予備研究中で確認される、がん細胞中の突然変異p53の分解の主たる原因であることを示した[3]。MDM2発現の誘導のせいで、p53/p73Dの発現による腫瘍細胞中での突然変異p53タンパク質レベルの相当の低下が期待される。このことは、治療に対する抵抗性および不十分な患者の生き残りの原因であることが示されている、腫瘍細胞中での突然変異p53タンパク質の高い存在度のため、極めて重要である。したがって、腫瘍細胞中へのp53/p73ODの導入は、腫瘍抑制機能を回復するのみならず高度に発癌性の突然変異p53タンパク質を除去する。p53/p73ODのこの一石二鳥の効果は、抗がん療法としてキメラを使用するための強力な根本的理由を提供する。
【0171】
p53の腫瘍抑制因子としての機能が主としてその転写活性によって仲介されることは、広く記載されている。p53パスウェイに特異的な遺伝子アレイ分析を実施することによって、p53/p73ODによるがん細胞中でのp53標的遺伝子発現の誘導が検出されると予想される。がんの類型に応じて、遺伝子発現の大きさおよびパターンは、p53応答性遺伝子のスペクトルの相違および種々の腫瘍細胞におけるp53共活性化因子の利用能のため、変化する可能性がある。遺伝子発現データおよびそのp53/p73OD誘導性増殖阻害との相関は、それぞれのがん類型において分析される。このような情報は、所定の腫瘍型のp53/p73OD発現への応答を評価するうえで有益であるはずである。
【0172】
腫瘍マウスモデルを使用する研究は、p53の再活性化が、腫瘍類型に応じて、主として造血器悪性腫瘍でのアポトーシスおよびその他の腫瘍型での老化を伴う、老化またはアポトーシスの誘導による腫瘍退縮を引き起こすことを立証した[26]。老化またはアポトーシスのマーカーを使用して概略を示す研究は、試験した各腫瘍細胞株におけるp53/p73OD介在性増殖阻害の根底にある機構をあらわにすると予想される。タイムコース実験は、p53/p73ODによって誘導される各表現型の誘導の動力学を測定することを可能にするはずである。
【0173】
要約すると、提案されたこれらの研究は、ヒトがん細胞株の大きなパネルにおいてp53/p73ODがp53の機能を回復する能力を評価する。p53/p73ODで誘導される遺伝子発現および増殖阻害の根底にある機構が調べられる。概略的研究から得られる結果は、腫瘍細胞、とりわけ突然変異p53を発現する細胞の増殖を阻害するためのp53/p73ODの優れた活性を立証する強力な証拠を提供すると予想される。
【0174】
[p53/p73OD発現の放射線または化学療法と併用した効果を調べるための研究]
放射線および化学療法薬は、p53を極めて強力に活性化するDNA損傷の誘導を主として介してがん細胞を死滅させる。予備研究からの結果は、p53/p73ODは、MDA−MB−231細胞およびMCF−10A細胞の双方において、放射線によって活性化されたが、それに続く細胞効果はまったく異なったことを示している。p53/p73ODの活性化が主として細胞死をもたらしたMDA−MB−231細胞と対照的に、MCF−10A細胞において放射線で誘導されるp53/p73ODの活性化は、G1細胞周期の停止と主に関連していた。形質転換細胞と非形質転換細胞との間のこのような異なる応答は、がん細胞を区別して標的とする機会を提供することができる。このことは、p53/p73ODの放射線および/または化学療法薬との併用を調べることによって検証される。低から中位の線量の放射線または用量の化学療法薬での前処置は、正常細胞において細胞周期の停止を誘導すると予想されるが、一方、がん細胞は、細胞周期のチェックポイントの欠落のため、増殖し続ける。結果として、増殖を停止した細胞は、後に続く処置によって誘導される損傷に対してより抵抗性であるのが通常なので、正常細胞は保護される。一方、がん細胞は、固有の発癌シグナルおよび外来性DNA損傷シグナルによるp53/p73ODの相乗的活性化のため、増感される。このことは、細胞をベースにしたモデルおよび動物モデルの双方を使用して検証される。
【0175】
p53/p73ODまたはp53のどちらかの異なる発現レベルは、ヒトの主ながん類型を代表する、MDA−MB−231とMCF−10A乳腺上皮細胞、PC3と正常前立腺上皮細胞、NCI−H358と3B3肺上皮細胞、Ovcar−3とIOSE−29卵巣上皮細胞、およびHT−29とRIE−1結腸上皮細胞を含む、いくつかの対をなす形質転換細胞および非形質転換細胞において、前記のようなレトロウイルス感染を介して達成される。照射または化学療法薬の用量コース実験を実施する。細胞周期の停止、細胞の生き残り、および老化を含む細胞応答を、対をなす細胞株で比較する。ウェスタン分析を並行して実施して、p53の応答を監視する。前処置のために、癌細胞における有意な細胞死を引き起こさないp53/p73ODの発現レベルを選択し、後に続く放射線または化学療法薬の処置に対する対をなす細胞の感受性に関する前治療の効果を調べる。
【0176】
p53/p73ODまたはp53のどちらかを発現する癌細胞をヌードマウスに移植し、インビボでの放射線または化学療法薬との組合せに関する研究のための異種移植片モデルを作出する。細胞研究における本明細書に記載のものに類似の戦略を使用する。
【0177】
照射または化学療法薬によって引き起こされるDNA損傷は、p53活性化の最も強力なシグナルである。発癌遺伝子の活性化およびその他のストレス表現型によるがん細胞に固有の持続的p53活性化シグナルと一緒に[33]、p53/p73ODの照射または化学療法薬との組合せに対するがん細胞の高められた感受性が期待される。発癌ストレスおよびDNA損傷は、がん細胞において相乗的活性化につながり、かつそれによってp53/p73ODの活性を増大させる可能性のある、部分的に重複はするが異なる機構を介してp53を活性化する。このような効果は、臨床医が照射線量または化学療法薬の投与量を低減し、潜在的副作用を最小化することを可能にする。提案される研究は、p53/p73ODの照射または化学療法薬との併用使用の有益な効果を試験することを可能にする。予備研究で示したように、正常細胞において放射線または化学療法薬で誘導されるp53/p73ODの活性化は、G1細胞周期の停止と関連しており、成長停止細胞は細胞障害性療法に対してより抵抗性であるのが通常なので、中位用量での前処置は、正常細胞に対して保護効果を提供すると予想される。非形質転換細胞をそれらの中でおよびがん細胞とp53/p73OD発現の存在または不在下で比較することによって、正常細胞およびがん細胞の抗がん療法の処置に対する異なる感受性が期待される。提案されるマウス異種移植片モデルは、特に突然変異p53を発現する腫瘍においてp53/p73ODの優れた抗腫瘍活性を立証するための細胞をベースにした研究を補完すると予想される。p53活性化を腫瘍部位に限定し、正常組織に対する損傷をさらに最小化することのできる照射の局所化送達は、価値ある考え方である。
【0178】
要約すると、これらの研究は、化学療法薬または放射線のp53/p73ODとの細胞生き残りに対する併用効果を調べる。p53/p73ODの化学療法または放射線との併用使用の治療有効性を高めるために、非形質転換細胞において細胞周期の停止を誘導する低用量での前処置の戦略を探索する。
【0179】
[マウス腫瘍モデルにおけるp53/p73ODの発現のための、腫瘍細胞を標的とするGLU−PEG−PEIの研究]
抗がん治療の有効性は、健常組織を損傷することなしにがん細胞を縮小および除去する能力によって判定される。したがって、がん細胞を優先的に標的とする戦略は、がん療法の成功において必須である。本発明は、ワールブルグ効果、すなわち、がん細胞が健常細胞に比べてより多くのグルコースを取り込むことを利用することよってがん細胞を標的とするナノ粒子をベースにした送達システムの新規な形態を提供する。予備研究は、GLU−PEG−PEIが、それぞれRWPEまたはMCF−10A細胞中と比べてPC3またはMDA−MB−231中で相当により大きな効率でのlacZ発現プラスミドの送達を可能にすることを示した。マウス腫瘍モデルを使用して、GLU−PEG−PEIのインビボでの有用性を試験する。
【0180】
GLU−PEG−PEIは、組織分布研究のためにlacZ発現プラスミドを送達するのに使用される。すべての動物実験は、UTHSCSAの国際動物保護使用委員会の指針に従う。無胸腺の雄性および雌性ヌードマウス(Balb/c nu/nu、4〜6週齢)はHarlan laboratoriesから購入する。マウスを、病原体のない条件下に収容し、食物および水を制約なしに供給して、12時間/12時間の明暗サイクルで維持する。GLU−PEG−PEI/DNAを、無菌生理食塩水溶液中に、沈殿を回避するために200μg/mLを超えないDNA濃度で懸濁する。最大許容用量を、尾部静脈を経由する20、40、60、80または100μg用量のプラスミドDNAに等価な量の静脈内注入によって判定し、マウスを毒性の任意の兆候について綿密に監視する。動物の体重を3日ごとに計量する。急性毒性の一般に使用される代用マーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、血清トランスアミナーゼ活性レベルを、GLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子の全身投与の1、3、6、9、15および30日後に集めた血液サンプルから測定した。肝臓、肺、脾臓および腎臓を、組織学的検査のために採取する。
【0181】
腫瘍によるGLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子の優先的取込みを評価するために、マウス異種移植片腫瘍モデルを作出する。0.1mLのPBS中の3×106個の腫瘍細胞からなる接種物をマトリゲルと4℃で混合し、次いでマウス脇腹の皮下(s.c.)区域に注入する。腫瘍の大きさが0.2cmに達したら、PBS中のGLU−PEG−PEI/lacZを、腫瘍をもつマウスに尾部静脈注入により投与する。24または48時間後に、マウスを頸部断頭によって屠殺する。肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓、および腫瘍を含め、種々の組織を集める。β−Gal染色のため凍結組織切片を調製する。腫瘍細胞へのプラスミドの選択的送達を確実にするため、相対的遺伝子移動効率を評価し、最適化する。並行して、ナノ粒子を使用して、EGFPまたはホタルルシフェラーゼのどちらかをコードするプラスミドを送達し、蛍光造影用低エネルギーレーザー走査、またはルミネセンス造影のためのホタルルシフェラーゼに対する基質である150mg/kgのルシフェリンの腹膜内注入を使用して分布を可視化する。さらに、GLU−PEG−PEI/DNAを腫瘍内注入で投与し、ナノ粒子の分布を測定する。ナノ粒子の複数回投与が必要であるかどうかを決定するための重要な参考として役立つ遺伝子発現の持続期間を監視する。
【0182】
送達条件を確立したら、対照として野生型p53またはp53(R175H)/p73ODを含めて、p53/p73ODの活性を評価する。初期研究は、4種の癌細胞;それぞれ乳腺、前立腺、結腸直腸および卵巣がんの代表としてのMDA−MB−231、PC3、HT−29およびOvcar−3への移植からなる。これらのがん細胞株には、Pg13−lacZ、Pg13−GFP、またはPg13−Lucが安定的にトランスフェクトされ、それらを異種移植片モデルの作出に使用する。腫瘍の大きさが1cmに到達したら、PBS中のGLU−PEG−PEI/DNA複合体を尾部静脈注入により投与する。腫瘍を持つマウスをさらに4〜8週間監視する。体重および腫瘍体積を3日ごとに測定する。腫瘍体積は、式(体積=長さ×幅×深さ×0.5236mm3)を使用して計算される。蛍光またはルミネセンス造影を使用して、Pg13−GFPまたはPg13−Luc発現がん細胞に由来する異種移植片腫瘍におけるp53/p73OD介在性腫瘍抑制の動力学を監視する。p53/p73ODの発現と腫瘍退縮の程度との間の相関に基づいて、GLU−PEG−PEI/p53/p73ODの更なる投与が必要かどうかを決定する。各実験の終末時点で、頸部断頭によってマウスを屠殺する。本明細書に記載のような遺伝子発現を分析するために腫瘍サンプルおよび選択組織を集め、アポトーシスおよび老化のマーカーを使用する組織学的検査を、やはり本明細書に記載のように実施する。
【0183】
並行して、マウス異種移植片モデルを化学療法薬または放射線のどちらかで処理し、腫瘍増殖に対するGLU−PEG−PEI/p53/p73ODの化学療法または放射線との併用効果を評価する。
【0184】
異種移植片マウスモデルに由来する結果は、p53/p73ODを、ヒトがんコンソーシアム(Human Cancer Consortium)(http://mouse.ncifcrf.gov)のNIH/NCIマウスモデルからのヒトがんの遺伝子操作マウスモデルを用いて試験することによって検証される。
【0185】
GLU−PEG−PEIは、異種移植片マウスモデルにおける送達に関して腫瘍細胞を優先的に標的にすると予想される。PEG被覆は、PEIにインビボで有意に増加した循環時間を付与する。さらに、PEGは、医薬添加剤として使用され、非毒性かつ非免疫原性であることが知られている[34]。GLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子は、毒性をほとんど示さないと予想され、マウスによって十分に耐えられる。細胞をベースにした研究からの予備データは、がん細胞をグルコース輸送体に依存する方式で標的にするGLU−PEG−PEI/DNAナノ粒子に関する原理証明を立証した。異種移植片マウスモデルのこれらの研究は、腫瘍によるナノ粒子の優先的取込みを立証すると予想される。EGFPまたはホタルルシフェラーゼをコードするプラスミドの使用は、GLU−PEG−PEI介在性がん細胞送達を監視することを可能にするはずである。リアルタイムのルミネセンスおよび蛍光(400〜900nm)造影を使用して、生存マウス内のナノ粒子の分布を監視し、記録する。β−galシグナルの提案される組織学的検査で補完すると、これらのインビボでの造影方法は、腫瘍細胞中での発現プラスミドの時間的および空間的分布の測定を可能にするはずである。ナノ粒子の正常組織への最低レベルの分布が期待され、EGFPまたはルシフェラーゼの発現は、プラスミドが発現できる組織の検出および発現レベルの定量化を可能にするはずである。このような情報は、p53/p73ODの使用を指導する上で助けになる。癌細胞を安定的に発現するPg13−EGFPまたはPg13−Lucの使用は、腫瘍退縮と相関する場合に最良の治療結果に最適なp53/p73ODの用量および発現の持続時間の決定を可能にするはずであるp53/p73ODのインビボでの活性を監視する上で好都合であることがわかる。化学および放射線療法と併用する場合、p53/p73ODのがん細胞へのGLU−PEG−PEI介在性送達は治療用量の低減さらに潜在的副作用の最小化を可能にするはずである化学療法または放射線の治療効果まで、腫瘍細胞を選択的に増感すると予想される。
【0186】
同時的な造影および治療的応用のための二重機能性ナノ粒子も開発することができる。予備研究において、アルギン酸−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)/GLU−PEG−PEIナノ粒子が合成され、現在、これらの応用について研究中である。
【0187】
要約すると、研究は、関連はするが相互に依存的でない2つの領域、すなわち、1)突然変異p53による不活性化に抵抗性であるp53/p73ODキメラの使用によって強調されるp53をベースにした新規ながん療法を開発すること、2)ナノ粒子をベースにしたがん細胞ターゲティング送達システムを開発すること、に焦点を当てることによって実験的治療薬を探索するために実施される。予備データは、突然変異p53を発現するがん細胞中でp53の機能を回復する上でのこのキメラの優れた活性を立証した。過半数のヒトがんが高レベルの突然変異p53を内部に含むことを考慮すると、p53/p73ODの使用は、単独または化学療法または放射線との組合せのどちらかで、かなりの治療潜在能力を有すると予想される。予備研究からのデータは、がん細胞選択的送達方法としてのGLU−PEG−PEIナノ粒子に関する原理証明を提供した。一部の実施形態においてp53/p73ODの治療有効性を増強するように設計されるが、送達システムは、がん治療を改善するためのさらなる実施形態において広範な応用を有すると予想される。
【0188】
ヌクレオチド配列に関するすべての刊行物、特許出願、特許、言及、アミノ酸配列に関する言及、および本明細書中で引用されるその他の言及は、該言及が提供される文および/または段落に関連する教示に関して参照によりその全体で組み込まれる。
【0189】
これまでの説明は、本発明の例示であり、発明を限定するものと解釈すべきでない。本発明は、クレームの等価体もその中に含めて、後記のクレームによって定義される。
【0190】
[参考文献]
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)a)ポリカチオン/ポリアルキレングリコール/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
B)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
C)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
D)a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
E)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、
F)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)を取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、ならびに
G)a)上記(A)〜(F)のナノ粒子の任意の組合せ
からなる群から選択されるナノ粒子。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
ポリカチオンがポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
活性薬剤が、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、化学療法薬、細胞障害性薬剤、放射性核種、検出可能なマーカー、造影剤、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1から3までのいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが、p73ODを含むp53キメラをコードするプラスミドである、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
a)PEIおよびp53をコードするポリヌクレオチドを含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/PEG接合体と
を含むナノ粒子。
【請求項7】
a)PEIおよびp73ODを含むp53キメラをコードするポリヌクレオチドを含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/PEG接合体と
を含むナノ粒子。
【請求項8】
ナノ粒子を細胞に送達する方法であって、細胞を請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子と、該ナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法。
【請求項9】
細胞がインビボである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞がインビトロである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
それを必要とする対象において活性薬剤を腫瘍細胞に送達する方法であって、請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞表面のグルコース輸送体に結合し、腫瘍細胞によって内部移行され、それによって活性薬剤を腫瘍細胞に送達することを含む方法。
【請求項12】
それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞表面のグルコース輸送体に結合し、内部移行され、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法。
【請求項13】
それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、有効量の請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法。
【請求項14】
対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、サイトカイン、ホルモン、放射線処置、外科処置、またはこれらの任意の組合せを施すステップをさらに含む、請求項11から13までのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
さらなるステップが、対象へのナノ粒子の送達の前、後、および/または送達と同時に実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
薬学的に許容される担体中に請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を含む組成物。
【請求項17】
請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子または請求項16に記載の組成物を含むキット。
【請求項18】
対象におけるがんをインビトロで診断する方法であって、
a)検出可能なマーカーを含む、請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象からの細胞と接触させるステップと、
b)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を測定するステップと、
c)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を、対照対象の細胞および/または診断されている対象からの対照細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性と比較するステップと
を含み、それによって対照対象の細胞および/または対照細胞と比較した場合の対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の量および/または割合および/または特異性の増加が、対象におけるがんの診断指標となる、方法。
【請求項19】
対象におけるがんをインビボで診断する方法であって、
a)造影剤を含む、請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達するステップと、
b)対象において造影剤からのシグナルを検出するステップと、
c)対象において造影剤からのシグナルを、対照対象および/または診断されている対象の対照組織/細胞における同一造影剤からのシグナルと比較するステップと
を含み、それによって対照対象および/または対照組織/細胞からのシグナルと比較した場合の対象からのシグナルの変化が、対象におけるがんの診断指標となる、方法。
【請求項20】
薬学的に許容される担体中にp73オリゴマー化ドメイン(OD)を含むp53キメラを含む組成物。
【請求項21】
p73ODを含むp53キメラを細胞に送達する方法であって、細胞をp53キメラと、p53キメラが細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法。
【請求項22】
細胞がインビボである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞がインビトロである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象の腫瘍細胞中に導入し、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法。
【請求項25】
それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法。
【請求項26】
それを必要とする対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象に送達し、それによって対象における腫瘍退縮を誘導することを含む方法。
【請求項27】
対象にプロテインキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびこれらの任意の組合せを投与するステップをさらに含む、請求項21から26までのいずれかに記載の方法。
【請求項28】
対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、サイトカイン、ホルモン、放射線処置、および外科処置、またはこれらの任意の組合せを施すステップをさらに含む、請求項21から27までのいずれかに記載の方法。
【請求項29】
さらなるステップが、対象へのp53キメラの送達の前、後、および/または送達と同時に実施される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項20に記載の組成物を含むキット。
【請求項1】
A)a)ポリカチオン/ポリアルキレングリコール/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
B)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
C)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/ポリアルキレングリコール接合体と
を含むナノ粒子、
D)a)ポリカチオン/アルギネート/グルコース接合体と、
b)活性薬剤と
を含むナノ粒子、
E)a)活性薬剤を含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、
F)a)ポリカチオンおよび活性薬剤を含むコアと、
b)(a)を取り囲むグルコース/アルギネート接合体と
を含むナノ粒子、ならびに
G)a)上記(A)〜(F)のナノ粒子の任意の組合せ
からなる群から選択されるナノ粒子。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
ポリカチオンがポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
活性薬剤が、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、化学療法薬、細胞障害性薬剤、放射性核種、検出可能なマーカー、造影剤、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1から3までのいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが、p73ODを含むp53キメラをコードするプラスミドである、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
a)PEIおよびp53をコードするポリヌクレオチドを含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/PEG接合体と
を含むナノ粒子。
【請求項7】
a)PEIおよびp73ODを含むp53キメラをコードするポリヌクレオチドを含むコアと、
b)(a)のコアを取り囲むグルコース/PEG接合体と
を含むナノ粒子。
【請求項8】
ナノ粒子を細胞に送達する方法であって、細胞を請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子と、該ナノ粒子が細胞表面のグルコース輸送体に結合し細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法。
【請求項9】
細胞がインビボである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞がインビトロである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
それを必要とする対象において活性薬剤を腫瘍細胞に送達する方法であって、請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞表面のグルコース輸送体に結合し、腫瘍細胞によって内部移行され、それによって活性薬剤を腫瘍細胞に送達することを含む方法。
【請求項12】
それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、有効量の請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達し、それによってナノ粒子が腫瘍細胞表面のグルコース輸送体に結合し、内部移行され、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法。
【請求項13】
それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、有効量の請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法。
【請求項14】
対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、サイトカイン、ホルモン、放射線処置、外科処置、またはこれらの任意の組合せを施すステップをさらに含む、請求項11から13までのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
さらなるステップが、対象へのナノ粒子の送達の前、後、および/または送達と同時に実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
薬学的に許容される担体中に請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を含む組成物。
【請求項17】
請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子または請求項16に記載の組成物を含むキット。
【請求項18】
対象におけるがんをインビトロで診断する方法であって、
a)検出可能なマーカーを含む、請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象からの細胞と接触させるステップと、
b)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を測定するステップと、
c)対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性を、対照対象の細胞および/または診断されている対象からの対照細胞中へのナノ粒子の内部移行の割合および/または量および/または特異性と比較するステップと
を含み、それによって対照対象の細胞および/または対照細胞と比較した場合の対象の細胞中へのナノ粒子の内部移行の量および/または割合および/または特異性の増加が、対象におけるがんの診断指標となる、方法。
【請求項19】
対象におけるがんをインビボで診断する方法であって、
a)造影剤を含む、請求項1から7までのいずれかに記載のナノ粒子を対象に送達するステップと、
b)対象において造影剤からのシグナルを検出するステップと、
c)対象において造影剤からのシグナルを、対照対象および/または診断されている対象の対照組織/細胞における同一造影剤からのシグナルと比較するステップと
を含み、それによって対照対象および/または対照組織/細胞からのシグナルと比較した場合の対象からのシグナルの変化が、対象におけるがんの診断指標となる、方法。
【請求項20】
薬学的に許容される担体中にp73オリゴマー化ドメイン(OD)を含むp53キメラを含む組成物。
【請求項21】
p73ODを含むp53キメラを細胞に送達する方法であって、細胞をp53キメラと、p53キメラが細胞によって内部移行される条件下で接触させることを含む方法。
【請求項22】
細胞がインビボである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞がインビトロである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象における腫瘍の大きさを縮小する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象の腫瘍細胞中に導入し、それによって対象における腫瘍の大きさを縮小することを含む方法。
【請求項25】
それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象に送達し、それによって対象におけるがんを治療することを含む方法。
【請求項26】
それを必要とする対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、p73ODを含む有効量のp53キメラを対象に送達し、それによって対象における腫瘍退縮を誘導することを含む方法。
【請求項27】
対象にプロテインキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、メチルトランスフェラーゼ阻害剤、およびこれらの任意の組合せを投与するステップをさらに含む、請求項21から26までのいずれかに記載の方法。
【請求項28】
対象に化学療法剤、血管新生抑制剤、サイトカイン、ホルモン、放射線処置、および外科処置、またはこれらの任意の組合せを施すステップをさらに含む、請求項21から27までのいずれかに記載の方法。
【請求項29】
さらなるステップが、対象へのp53キメラの送達の前、後、および/または送達と同時に実施される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項20に記載の組成物を含むキット。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1(b)】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−517297(P2013−517297A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549151(P2012−549151)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/021547
【国際公開番号】WO2011/088456
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(511089963)ボード・オヴ・リージェンツ,ユニヴァーシティ・オヴ・テキサス・システム (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/021547
【国際公開番号】WO2011/088456
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(511089963)ボード・オヴ・リージェンツ,ユニヴァーシティ・オヴ・テキサス・システム (2)
【Fターム(参考)】
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