説明

ナノ粒子を含む繊維およびナノ粒子を製造する方法

本方法は、少なくとも1つのケイ素原子を有するケイ素組成物を電界紡糸することによってナノ粒子を製造する。ケイ素組成物を電界紡糸することにより繊維を形成する。繊維を熱分解してナノ粒子を製造する。ナノ粒子は優れたフォトルミネセント特性を有し、多くの様々な用途における使用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ナノ粒子に関する。より具体的には、本発明は、フォトルミネセントであるケイ素組成物から製造されるナノ粒子、およびケイ素組成物からナノ粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子およびナノ粒子を作製する方法は、ナノテクノロジーの当業者に知られており、光学、電子、および生物医学用途を含む多様な用途において大きな可能性を有する。ナノ粒子は、少なくとも1つの100ナノメートル未満の寸法を有する粒子であり、最初はナノ粒子より大きいバルク状の物質から、またはナノ粒子より小さい粒子、例えばイオンおよび/もしくは原子からのどちらかから製造される。ナノ粒子は、ナノ粒子が得られるバルク状の物質またはより小さな粒子とは大きく異なる特性を有する点において、特に固有のものである。例えば、絶縁体または半導体として作用するバルク状の物質が、ナノ粒子の形態である場合、電気伝導性となり得る。
【0003】
バルク状の物質から出発するナノ粒子の1つの製造方法は、磨耗である。この方法において、バルク状の物質は、ミル、例えばボールミル、遊星ボールミル、グラインダーなどの中で処理され、これによりバルク状の物質を、ナノ粒子および他のより大きな粒子に破壊する。ナノ粒子は、空気分級を介して、他のより大きな粒子から分離され得る。しかしながら、ミルする用途において現在使用される、既存のミルは、典型的には、ナノ粒子を形成するために特に適合していない。例えば、ミルは、外部の供給源からの汚染物質、同様にミルの腐食からの汚染物質を取り込み得る。汚染物質は、ナノ粒子の特性に不利な影響を与え、他のより大きな粒子からのナノ粒子の分離を困難にし得る。
【0004】
ナノ粒子は、パルスレーザーを利用するレーザーアブレーションによっても製造されてきた。レーザーアブレーションにおいて、バルク状の金属は水性溶媒および/または有機溶媒中に入れられ、バルク状の金属はパルスレーザー(例えば銅蒸気またはネオジムでドープされたイットリウムアルミニウムガーネット)にさらされる。ナノ粒子は、レーザー照射によってバルク状の金属から削磨され、続けて水性溶媒および/または有機溶媒中の懸濁液を形成する。しかしながら、パルスレーザーは高価であり、さらに、レーザーアブレーションから製造されるナノ粒子は、典型的には、金属ナノ粒子に限定される。
【0005】
フォトルミネセント特性を有するナノ粒子、例えばケイ素ナノ粒子、炭化ケイ素ナノ粒子、および炭素ナノ粒子は、これらのナノ粒子が、広く様々な用途、例えば蛍光生体撮像、半導体、マイクロチップ、および光学デバイスにおける使用の可能性を有することもあり、多くの研究の目的となってきた。現在、染料が蛍光生体撮像において使用されている。染料は、光励起下、光への曝露下、および/または昇温下で分解する。しかしながら、ナノ粒子は同様の条件下で分解せず、それゆえ、蛍光生体撮像において使用される既存の染料と比較して、優れた特性を有する。さらに、上記で記載された通り、フォトルミネセント特性を有するナノ粒子は、蛍光生体撮像を超えた用途における使用の可能性を有する。
【0006】
フォトルミネセント特性を有するナノ粒子を製造する現在の方法は、電気化学的処理である。典型的な電気化学的処理において、フッ酸、過酸化水素およびメタノールの溶液を形成する。白金のカソードを溶液中に入れ、ケイ素のアノードをゆっくりと溶液の中に入れ、白金のカソードとケイ素のアノードとの間に電流を流す。ケイ素のナノ粒子がケイ素のアノードの表面に形成する。その後、ケイ素のナノ粒子を、ケイ素のアノードを溶媒槽中に浸漬することによって、または超音波処理によって、ケイ素のアノードから分離する。この方法は、大きな労働力を必要とし、高価であり、大きな研究装置を必要とし、1回で非常に少ないケイ素ナノ粒子しか製造しない。このように、優れた特性を有し、多様な用途における使用に好適な、ケイ素ナノ粒子を含むナノ粒子を製造する方法を提供する一般的な要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2008/187996 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の観点において、他の改善された物理的特性の中で、優れたフォトルミネセント特性を有するナノ粒子を提供することが有利である。大量のナノ粒子が様々な物質および物質のブレンドから製造され得る、ナノ粒子の製造方法を提供することが、さらに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ナノ粒子を製造する方法を開示する。本発明は、ナノ粒子を含む繊維を含む。繊維は、電界紡糸装置でケイ素組成物を電界紡糸(electrospinning)することによって形成される。繊維を熱分解して、ナノ粒子を製造する。ナノ粒子は、繊維の中および/または表面で作られる。
【0010】
本発明は、最小の工程で、大量のナノ粒子を製造する方法を提供する。熱分解する工程のパラメータを調整し、特定の用途のための所望のサイズを有するナノ粒子を製造することができる。さらに、熱分解する工程は、レーザーを利用する既存の方法と比較して、高価なまたは特殊な研究装置を必要としない。また、本発明のナノ粒子は、優れたフォトルミネセント特性を有し、これは、ナノ粒子を、光学、電子、および生物医学用途を含む数多くの用途に理想的なものとする。
【0011】
本発明の他の利点は、添付する図と結び付けて考えた場合、以下の詳細な記載を参照することによって、より理解されるようになると同様に、すぐに理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、50倍の倍率の、電界紡糸後の多量の繊維の光学顕微鏡の画像である。
【図2】図2は、20倍の倍率の、繊維を熱分解する工程後のナノ粒子を含む繊維の光学顕微鏡の画像である。
【図3】図3は、50倍の倍率の、繊維をエッチングする工程後のナノ粒子を含む繊維の光学顕微鏡の画像である。
【図4】図4は、規格化された強度が波長の関数となっている、繊維のフォトルミネセントスペクトルのグラフである。
【図5】図5は、50倍の倍率の、繊維のSEM画像である。
【図6】図6は、250倍の倍率の、繊維のSEM画像である。
【図7】図7は、2000倍の倍率の、繊維のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ナノ粒子を含む繊維、繊維から単離されたナノ粒子、およびナノ粒子を製造する方法を提供する。ナノ粒子は、フォトルミネセントであり、これに限定されないが、光学、電子、および生物医学用途を含む、数多くの用途における使用の可能性を有する。
【0014】
繊維を形成するために、ケイ素組成物を準備し、電界紡糸装置でエレクトロスピンする。用語「ケイ素組成物」は、本明細書において使用される場合、その中に少なくとも1つのケイ素原子を有する任意の組成物を包含する。ケイ素原子はポリマー骨格からぶら下がった置換基であり得、またはケイ素原子はポリマー骨格の一部でもあり得る。さらに、ケイ素組成物はポリマーに限定されない; ケイ素組成物は、例えば、ジシランを含むことができる。本発明における使用に好適なケイ素組成物には、これに限定されないが、水素シルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン、ジシラン、ポリシラン、少なくとも1つのケイ素原子を有するトルヒドロキノン、およびこれらの組合せが含まれ得る。ケイ素組成物は、典型的には、以下の一般式を有する:
【化1】

ここで、Rは任意の基であり、有機部分に限定されず; 切れたケイ素の結合は任意であり、結合に限定されない。例えば、ケイ素原子は、Rのみと結合し得る。さらに、切れたケイ素の結合は、多くの結合を表すことができ、例えばケイ素原子は、シルセスキオキサンにおいて、典型的には、Rの結合に加えて3つの酸素原子と結合する。切れたケイ素の結合は、単結合、二重結合、および/または三重結合を表すこともできる。
【0015】
ケイ素組成物が少なくとも1つの炭素原子を含む場合、例えばRが有機部分である場合、製造されたナノ粒子は、上記で記載したケイ素ナノ粒子に加えて、炭素ナノ粒子および炭化ケイ素ナノ粒子を含むことができる。ケイ素ナノ粒子、炭素ナノ粒子、および炭化ケイ素ナノ粒子に加えて、本発明の方法によって製造されるナノ粒子のさらなる例には、SiC4ナノ粒子、SiC3Oナノ粒子、SiC2O2ナノ粒子、SiCO3ナノ粒子、およびSiO4ナノ粒子が含まれる。
【0016】
ケイ素組成物は、パウダーの形態であってもよい。ケイ素組成物がパウダーの形態である場合、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する前に、ケイ素組成物は溶媒に溶解されてもよい。溶媒は、典型的には、有機溶媒であり、有機溶媒がパウダーの形態のケイ素組成物を溶解することができる限り、当分野において知られている任意の有機溶媒であり得る。一実施形態において、有機溶媒は、メチルイソブチルケトンなどのケトンである。ケイ素組成物は、2つ以上の溶媒、つまり溶媒のブレンドに溶解され得ることが理解される。ケイ素組成物が有機溶媒に溶解される実施形態において、ケイ素組成物は、ゼロより多く100より少ない任意の量で存在することができる。ケイ素組成物は、典型的には、ケイ素組成物と溶媒の100質量部に基づいて、5から95質量部、より典型的には65から85質量部、最も典型的には70から80質量部の量で存在する。
【0017】
ケイ素組成物を、電界紡糸装置でエレクトロスピンして、繊維を形成する。繊維は、織物または不織であり得る。一実施形態において、図1〜3および5〜7に示した通り、繊維は不織である。これらの図に例示した通り、繊維は、典型的には1から200μm、より典型的には5から100μm、最も典型的には12から67μmの直径の範囲である。しかしながら、繊維は、本発明の範囲から離れることなく、任意の直径を有することができる。典型的には、図5に例示した通り、繊維の直径は変化し、不均一である。さらに、繊維は、本発明の範囲から離れることなく、任意の長さを有することができる。例えば、図5に例示した通り、繊維は連続的であってもよい。
【0018】
ケイ素組成物は、当分野において知られている任意の方法で提供されることができる。例えば、ケイ素組成物は、電界紡糸装置にバッチで供給され得、電界紡糸装置に半連続的に供給され得、および電界紡糸装置に連続的に供給され得る。
【0019】
電界紡糸装置は、当分野において知られている任意の電界紡糸装置であり得る。電界紡糸装置は、典型的には、ノズルおよびノズルから離れたコレクターを含む。電界紡糸装置は、1つまたは複数のノズルおよび/またはコレクターを有し得る。ノズルは、当分野において知られている任意のノズルであり得る。例えば、ノズルは、スピナレット(spinneret)、ピペット、またはニードルを含むシリンジであり得る。ノズルは、ステンレス鋼などの金属から形成され得る。しかしながら、ノズルは、当分野において知られている他の物質から形成され得る。ノズルはホール(hole)として定義される。ホールは任意の形状であり得、典型的には、10から50、より典型的には20から40、最も典型的には30ゲージ(G)のサイズの直径を有する。1つより多いノズルを、繊維を形成するために使用することができることが理解される。例えば、第一のノズルは30ゲージのホールを有し、第二のノズルは50ゲージのホールを有することができる。第一および第二のノズルは、同時にまたは次々に使用され、異なる直径の2つの繊維を形成することができる。
【0020】
コレクターは、当分野において知られている任意のコレクターであり得る。コレクターは、ステンレス鋼などの金属から形成され得る。しかしながら、コレクターは、当分野において知られている他の物質から形成され得る。一実施形態において、コレクターは、酸化アルミニウム(Al2O3)ウエハである。別の実施形態において、コレクターは、シリコンウエハおよび/またはシリカウエハである。コレクターは、ケイ素でコートされた酸化アルミニウムなどの異なる物質の組合せを含み得る。コレクターは、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する間、ノズルに対して固定されることができ、または動く、例えば回転することができる。さらに、または代わりに、ノズルは、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する間、固定されることができ、または動く、例えばコレクターに対して移動することができる。ノズルおよび/またはコレクターは、繊維を形成する1つまたは複数の例の間、固定から可動に、またはその逆に変更できることが理解される。ノズル及びコレクターのうちの少なくとも1つを動かすことは、形成の間に並べられる繊維の方向を制御するために有用であり得る。
【0021】
ノズルは、コレクターから任意の距離であり得る。典型的には、ノズルはコレクターから、1から100cm、より典型的には10から40cm、最も典型的には20から30cmの距離に配置される。一実施形態において、ノズルおよびコレクターは、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する間、お互いに一定の距離を維持する。他の実施形態において、ノズルとコレクターとの間の距離は、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する間、増加および/または減少し得る。距離は、繊維を形成する1つまたは複数の例の間、変更できることが理解される。
【0022】
電位が、典型的には、ノズルとコレクターとの間に作られる。しかしながら、コレクターは電位の一部ではないことが理解される。例えば、コレクターは、ノズルと第二のコレクターとの間に位置し、電位はノズルと第二のコレクターとの間にかかる。電位は、当分野において知られている任意の方法によって作られる。例えば、電位は、ノズルおよびコレクターに取り付けられた、1つまたは複数の電源によって作られ得る。別々の電源を、ノズルとコレクターそれぞれに取り付けることができることが理解される。電源は、電位を作るための高電圧を提供することができるものである。電位は、任意の電圧であり得る。典型的には、電位は、1から100キロボルト(kV)、より典型的には20から40kV、最も典型的には25から35kVである。電位は、繊維を形成する間、一定であり得、または変化し得ることが理解される。
【0023】
一実施形態において、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する間、圧力がケイ素化合物にかけられる。圧力は、任意の圧力であり得る。圧力は、当分野で知られている任意の方法によってケイ素組成物にかけられ得る。例えば、圧力は、ノズルに取り付けられたポンプによってケイ素化合物にかけられ得る。繊維を形成するために用いられる場合、圧力は、繊維を形成する間、一定であり得、または変化し得る。
【0024】
圧力は、ノズルを通って供給されるケイ素組成物の流速と関連し得る。例えば、ポンプなどの供給装置は、ノズルにケイ素組成物を供給し得る。供給装置は、当分野において知られている任意の供給装置であり得る。流速は、任意の流速であり得る。典型的には、ケイ素組成物の流速は、ゼロより大きく100mL/minまで、より典型的には0.01から10mL/min、最も典型的には0.1から1mL/minである。流速は、繊維を形成する間、一定であり得、または変化し得ることが理解される。
【0025】
ケイ素組成物は、ケイ素組成物が溶媒に溶解している間に、電界紡糸装置でエレクトロスピンされてもよいことが理解される。この実施形態において、溶媒は、典型的には、ケイ素組成物が電界紡糸装置でエレクトロスピンされ、これにより繊維を形成するにつれて蒸発する。代わりに、ケイ素組成物は、いずれの溶媒を含まなくてもよく、ケイ素組成物の電界紡糸の前および/または間に融解する。例えば、ケイ素組成物が比較的低い融点、例えば300℃未満の融点を有する場合、ケイ素組成物は、最初に溶媒中に溶解されることなくエレクトロスピンされ得る。この実施形態において、ケイ素組成物は電界紡糸装置に供給される前に融解してもよく、または、ケイ素組成物は電界紡糸装置中で融解してもよい。例えば、ケイ素組成物は、ノズルによって融解して、繊維を形成するためにエレクトロスピンされるときにケイ素組成物が融解してもよい。このプロセスは、一般的には、当分野において溶融電界紡糸として表される。
【0026】
本発明において、特定のパラメータにおける繊維の熱分解が、繊維中および/または繊維表面のナノ粒子の製造を決定する。熱分解はバルク状の物質の化学的分解を表し、小分子および/または粒子を形成する。繊維の熱分解によって製造されたナノ粒子は、繊維によって封入されていてもよく、および/または、ナノ粒子は繊維と接触していて、ナノ粒子が繊維によって封入されていなくてもよい。例えば、図3は、本発明の方法によって形成された、繊維から部分的に突出したナノ粒子を例示する。ナノ粒子のサイズは、繊維の直径を含む、多くの変数の関数であると理解される。それゆえ、上記で記載した通り、電界紡糸装置のパラメータは、当業者によって調整されて所望の直径を有する繊維を形成してもよい。典型的には、繊維の直径およびナノ粒子のサイズは、直接的な関係を有する、つまり、繊維の直径が大きくなるにつれて、その内部および/または表面に製造されるナノ粒子のサイズが同様に大きくなる。
【0027】
繊維は、ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成した後、熱分解されてもよい。代わりに、繊維は、繊維が電界紡糸によって形成される間に、熱分解されてもよい。繊維は、これに限定されないが、繊維を加熱することおよびプラズマ処理することを含む、様々な方法で熱分解され得る。記載の目的のみのために、加熱およびプラズマ処理して繊維を熱分解することのみを、さらに以下で記載する。
【0028】
一実施形態において、繊維を熱分解する工程は、繊維を加熱することを含む。繊維は、これに限定されないが、急速加熱プロセス(rapid thermal processing)、誘導炉(inductive furnace)、チューブ炉(tube furnace)、真空炉、オーブン、およびマイクロ波を含む、当分野において知られている任意の方法で加熱され得る。一実施形態において、繊維を熱分解する工程は、不活性または減圧環境において行われる。不活性または減圧環境は、繊維および/またはナノ粒子の酸化を最小化ならびに/あるいは除去するために用いられる。不活性または減圧環境は、典型的には、窒素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、およびこれらの組合せを含む。
【0029】
繊維を熱分解する工程が加熱することを含む実施形態において、繊維は、典型的には、400から2500℃、より典型的には900から2200℃、最も典型的には1000から1700℃の温度に加熱される。繊維の温度は、典型的には、室温から、400から2500℃の温度に、毎分5℃より速い速度で上げられる。一実施形態において、速度は毎分25℃である。一度繊維が400から2500℃の温度に加熱されると、繊維は、典型的には、0.1から20時間、より典型的には0.5から5時間、最も典型的には0.8から3時間の間、加熱される。繊維が400から2500℃の温度に到達した後に加熱される時間は、繊維の温度が毎分5℃より速い速度で上がる間の時間を含まないと理解される。繊維の温度が上がる間の時間は、室温および最終温度によって選択される速度に基づいて、容易に計算されることができる。
【0030】
上記で記載した通り、熱分解する工程によって製造されたナノ粒子のサイズは、典型的には、繊維を加熱する温度を含む、多くの変数の関数であることが理解される。それゆえ、当業者は、繊維を熱分解する工程の間のパラメータを調整して所望のサイズを有するナノ粒子を製造することができる。本発明において製造されたナノ粒子は、典型的には、0より大きく500ナノメートルまでの平均直径を有する。繊維を熱分解する工程が繊維を400から2500℃の温度に加熱することを含む実施形態において、繊維を800から1400℃の温度に加熱することにより、ゼロより大きく7ナノメートルまでの平均直径を有するナノ粒子を製造する。同様に、繊維を熱分解する工程が繊維を400から2500℃温度に加熱することを含む場合、繊維を400から800℃の温度に加熱することにより、ゼロより大きく7ナノメートルまでの平均直径を有するナノ粒子を製造することができる; しかしながら、より低い温度、つまり400から800℃における繊維の加熱は、典型的には、800から1400℃における2時間の加熱に対し、より長い期間、例えば5時間の加熱を必要とする。繊維を熱分解する工程が繊維を400から2500℃の温度に加熱することを含む場合、繊維を1400より高く2500℃までの温度に加熱することにより、7より大きく500ナノメートルまでの平均直径を有するナノ粒子を製造する。例えば、繊維を1500℃の温度に加熱する場合、50から80ナノメートルの平均直径を有するナノ粒子が製造される。繊維を1700℃の温度に加熱する場合、130から170ナノメートルの平均直径を有するナノ粒子が製造される。熟語「平均直径」は、本明細書において使用される場合、それぞれのナノ粒子の最も小さい寸法として解釈されることが理解される。さらに、ナノ粒子は、非対称または非球の形状を有していてもよい。例えば、ナノ粒子のうちの少なくとも1つは、10マイクロメートルの長さおよび5ナノメートルの幅を有するチューブに似ており、チューブの直径が5ナノメートルであるため、このチューブは本発明のナノ粒子の範囲に入るだろう。
【0031】
典型的には、繊維を熱分解する工程が繊維を加熱することを含む場合、ナノ粒子は、二酸化ケイ素と一緒に製造される。言い換えると、繊維は、その内部および/または表面に分散されたナノ粒子を有する、二酸化ケイ素を含む。さらに、繊維は二酸化ケイ素を含み、かつナノ粒子を含むが、繊維は、典型的には、繊維を熱分解する工程の間または後のいずれの段階においても、構造的に分解しない。ナノ粒子を含む繊維は、ナノ粒子を含む繊維の電気伝導性により、マイクロチップなどの用途において使用することができる。
【0032】
上記で示した通り、別の実施形態において、繊維を熱分解する工程は、繊維をプラズマ処理することを含む。プラズマ処理は、プラズマで繊維を攻撃する。典型的には、繊維を熱分解する工程は、400℃未満の温度で、より典型的には25から350℃の温度で、最も典型的には25から200℃の温度で繊維をプラズマ処理することを含む。繊維は、典型的には、400℃未満の温度で、ゼロより長く10分間まで、より典型的には2から8分間、最も典型的には4から6分間、プラズマ処理される。繊維をプラズマ処理することを含む熱分解する工程は、当分野において知られている任意のプラズマを利用することができる。一実施形態において、プラズマは不活性または減圧プラズマである。例えば、プラズマは、水素、アルゴン、窒素、およびこれらの組合せであり得る。プラズマによる繊維の攻撃は、繊維の化学的結合を開裂し、ナノ粒子の製造をもたらす。
【0033】
上記で記載した通り、繊維を熱分解する工程後の、ナノ粒子を含む繊維の様々な使用が存在する。言い換えると、繊維の多くの用途が存在する。しかしながら、ナノ粒子は、繊維から単離されてもよい。
【0034】
ナノ粒子を単離する工程は、典型的には、酸性溶液で繊維をエッチングすることを含む。酸性溶液は十分に腐食性であり、その内部および/または表面に分散されたナノ粒子を有する二酸化ケイ素を含む繊維を溶解させる。酸性溶液は水性であり、典型的には、脱イオン水中に、フッ酸、硝酸、およびこれらの組合せを含む。一実施形態において、酸性溶液は、酸性溶液の全質量に基づいて、49質量%の量でフッ酸を含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、酸性溶液は、湿潤剤をさらに含む。湿潤剤は、酸性溶液と繊維との間の接触表面積を増加させるために用いる。例えば、酸性溶液は、繊維の表面においた場合、液滴を形成しやすく、したがって、表面積の接触は最小化される。酸性溶液が湿潤剤を含む場合、酸性溶液と繊維との表面積の接触は、酸性溶液の体積が一定のままで増加する。それゆえ、湿潤剤を含む酸性溶液は、酸性溶液と繊維との間の同じ接触表面積で、湿潤剤を含まない酸性溶液と比較して、より少ない体積を必要とする。一実施形態において、湿潤剤はアルコールである。アルコールは、当分野において知られている任意のアルコールであり得る。好適なアルコールの1つの例は、エタノールである。アルコールは、典型的には、酸性溶液中に、酸性溶液の100体積部に基づいて、0より多く85体積部まで、より典型的には10から60体積部、最も典型的には20から40体積部の量で存在する。
【0036】
酸性溶液で繊維をエッチングする工程は、その内部および/または表面に分散されたナノ粒子を有する二酸化ケイ素を含む繊維を溶解し、その中に分散されたナノ粒子を有するエッチングされた溶液を形成する。繊維をエッチングする工程は、繊維を酸性溶液と接触させることを含む。酸性溶液を繊維の上に注ぐかまたは滴下する、あるいは、繊維を酸性溶液中に沈めるかまたは並べることができる。繊維が酸性溶液中に並べられる実施形態において、酸性溶液は、当分野において知られている任意の容器中に含まれて、非常に腐食性の液体を含むことができる。繊維を溶解させるために、繊維は、典型的には、0.1から60分間、より典型的には1から20分間、最も典型的には1から5分間、酸性溶液と接触される。繊維は、典型的には、室温で酸性溶液と接触される。しかしながら、酸性溶液は、繊維を酸性溶液に接触させる前および/または同時に加熱され得ることが理解される。さらに、エネルギー、例えば超音波および/またはメガソニック(megasonic)エネルギーを、繊維、酸性溶液、または両方に適用して、繊維と酸性溶液との相互作用を大きくさせることもでき、これにより繊維が酸性溶液中に溶解する速度を速くすることができる。繊維を酸性溶液でエッチングする工程後に、ナノ粒子が基材上に残っていてもよい、つまり、全てのナノ粒子がエッチングされた溶液中に分散されていなくてもよいことが理解される。
【0037】
その中に分散されたナノ粒子を含むエッチングされた溶液は、酸性溶液により腐食性である。このように、エッチングされた溶液の腐食性は、ナノ粒子を利用するほとんどの用途において、ナノ粒子の使用を阻害する。それゆえ、一実施形態において、この方法は、エッチングされた溶液を有機液体と混合する工程をさらに含む。有機液体は、混合された場合、エッチングされた溶液および有機液体の腐食性を低下させる働きをする。さらに、有機液体およびエッチングされた溶液は不混和性であり、それゆえ、エッチングされた溶液と有機液体の混合は、二相(例えば、エッチングされた溶液と有機液体)をもたらすことが理解される。エッチングされた溶液を有機液体と混合することは、ナノ粒子をある相から他の相に、つまり、エッチングされた溶液から有機液体に移動させることを誘起する。ナノ粒子の固有の物理的特性、例えば非極性は、ナノ粒子をエッチングされた溶液から有機液体に移動させることを誘起する。一実施形態において、有機液体は、オクタンなどの長鎖の炭化水素を含む。有機液体は、有機液体のブレンドを含んでもよい。例えば、有機液体をエッチングされた溶液と混合して、ナノ粒子がある相から他の相に、例えばエッチングされた溶液から有機液体に完全に移動しない場合、メチルイソブチルケトンなどの極性有機溶媒を利用して、ナノ粒子をエッチングされた溶液からさらに移動させることができる。エッチングされた溶液を有機液体と混合する工程は、エッチングされた溶液を長鎖の炭化水素と混合し、続けてエッチングされた溶液を極性有機溶媒と混合する、別々の工程を含むことができる。代わりに、エッチングされた溶液を有機液体と混合する工程は、長鎖の炭化水素を含む有機液体と極性有機溶媒とを含む有機液体が、エッチングされた溶液と同時に混合される、単一の工程を含んでもよい。エッチングされた溶液を有機液体と混合する工程が別々の工程を含む実施形態において、長鎖の炭化水素は、エッチングされた溶液を極性有機溶媒と混合する前に、エッチングされた溶液から分離され得る。代わりに、長鎖の炭化水素は、その中で極性有機溶媒を混合する間、エッチングされた溶液と混合されたままであり得る。エッチングされた溶液および有機液体は、化学の分野において知られている任意の方法、例えば振動、攪拌、磁気攪拌、静的ミキサー、渦ミキサー、ブレンダーなどによって混合され得る。例えば、エッチングされた溶液はフラスコ中に並べられてもよく、有機液体がその中に並べられてもよい。エッチングされた溶液および有機液体を、フラスコに栓を付け、振動させることによって混合してもよい。エッチングされた溶液および有機液体は、上記で記載した通り、二相に分離され、ナノ粒子はエッチングされた溶液ではなく、有機液体を通して分散される。
【0038】
一実施形態において、この方法は、エッチングされた溶液を有機液体から分離する工程をさらに含む。有機液体およびエッチングされた溶液は、典型的には非混和性であり、有機液体とエッチングされた溶液との物理的な分離が可能である。有機液体は、エッチングされた溶液から、物理的および/または化学的な分離を含む、当分野において知られている任意の方法によって分離され得る。エッチングされた溶液と有機液体との非混和性により、一実施形態において、その中に分散されたナノ粒子を有する有機液体は、デカンテーションを介してエッチングされた溶液から分離される。
【0039】
所望の場合、ナノ粒子は、有機液体から分離および/または除去され得ることが理解される。ナノ粒子は、遠心分離などの任意の方法によって、有機液体から分離および/または除去され得る。
【0040】
上記で記載した通り、ナノ粒子はケイ素ナノ粒子を含む。ナノ粒子は、ケイ素組成物に応じて、炭素ナノ粒子、炭化ケイ素ナノ粒子、およびこれらの組合せをさらに含むことができる。例えば、ケイ素組成物が水素シルセスキオキサンを含む場合、ケイ素ナノ粒子が水素シルセスキオキサンを電界紡糸および熱分解することによって製造される。ケイ素組成物がメチルシルセスキオキサンを含む場合、ケイ素ナノ粒子、炭素ナノ粒子、および/または炭化ケイ素ナノ粒子がメチルシルセスキオキサンを電界紡糸および熱分解することによって製造される。上記で記載した通り、ナノ粒子の平均直径は、繊維の直径と同様に、温度および時間などの熱分解するパラメータに依存する。しかしながら、フォトルミネセント特性を有するナノ粒子は、典型的には、ゼロより大きく7ナノメートル未満の平均直径を有することが理解される。さらに、フォトルミネセンスの色は、ナノ粒子のサイズ、およびナノ粒子がケイ素ナノ粒子、炭素ナノ粒子または炭化ケイ素ナノ粒子のいずれであるかを含む、様々な要因の関数であり得ることが理解される。フォトルミネセンスの色は、橙色、青色、緑色などの任意の色であり得る。7ナノメートルより大きい平均直径を有するナノ粒子が製造され得るが、7ナノメートルより大きい平均直径を有するナノ粒子は、典型的には、フォトルミネセンスを示さず、フォトルミネセンスを誘起するために必要な条件下で、可視することができない。しかしながら、7ナノメートルより大きい平均直径を有するナノ粒子は、フォトルミネセンスを必要とする以外の使用、例えば半導体産業および/または印刷可能なインク産業における使用を有し得る。
【0041】
ナノ粒子のフォトルミネセンスを誘起するために、電磁放射を送るための、当分野において知られている任意の方法を利用することができる。一実施形態において、ナノ粒子は、紫外光を受けてナノ粒子のフォトルミネセンスを誘起する。紫外光は、典型的には、250から400nmの波長を有する。図4は、本発明の方法に従って作製されたナノ粒子のフォトルミネセントのスペクトルのグラフを例示し、ここで、規格化された強度は、365nmの励起を有する波長の関数である。ナノ粒子のフォトルミネセンスは、ナノ粒子のそれぞれが光子を吸収した場合に発生し、より高いエネルギー状態へのナノ粒子の励起を引き起こし、続けてより低いエネルギー状態に戻り、光子を放出する。ナノ粒子は、有機液体を通して、エッチングされた溶液中、繊維中、およびコレクター上の繊維中に分散され、有機液体から単離された後にフォトルミネセンスを示すことができることが理解される。
【0042】
以下の実施例は、繊維を形成する方法および本発明のナノ粒子を製造する方法を例示し、本発明を限定することなく例示することを意図している。
【実施例】
【0043】
実施例1:
ケイ素組成物は水素シルセスキオキサンを含む。水素シルセスキオキサンは、質量に基づいて、3:1のメチルイソブチルケトンに対する水素シルセスキオキサンの比で、メチルイソブチルケトン中に溶解する。メチルイソブチルケトン中に溶解した水素シルセスキオキサンは、シリコンウエハ、つまりコレクター上にエレクトロスピンされて多数の繊維を形成する。ノズルとコレクターとの間の電位は、30kVである。ノズルとコレクターとの間の隙間は、25cmである。ノズルを通してメチルイソブチルケトン中に溶解された水素シルセスキオキサンの流速は、1mL/minである。繊維を、約1分間スピンする。繊維を、室温から1200℃の温度に到達するまで、25℃/minの速度で、繊維を加熱することによって熱分解する。繊維を、1200℃の温度で1時間加熱する。繊維を、不活性かつ酸素を含まない窒素ガスおよび水素ガスを含む環境中で熱分解して、ナノ粒子を形成する。繊維を酸性溶液に沈めることによって、繊維を1:1:1の比の49%フッ酸:アルコール:脱イオン水を含む酸性溶液でエッチングして、エッチングされた溶液を形成する。ナノ粒子を、エッチングされた溶液をオクタンおよびメチルイソブチルケトンを含む有機液体と混合することによって、エッチングされた溶液から取り除く。その中に分散されたナノ粒子を含む有機液体を、エッチングされた溶液から静かに移す。ナノ粒子を、以下の表1に記載する通り、ナノ粒子が赤色のフォトルミネセンスを示す間、365nmの紫外光に曝露させる。
【0044】
実施例2:
ケイ素組成物は水素シルセスキオキサンを含む。水素シルセスキオキサンは、質量に基づいて、3:1のメチルイソブチルケトンに対する水素シルセスキオキサンの比で、メチルイソブチルケトン中に溶解する。メチルイソブチルケトン中に溶解した水素シルセスキオキサンは、シリコンウエハ、つまりコレクター上にエレクトロスピンされて多数の繊維を形成する。ノズルとコレクターとの間の電位は、30kVである。ノズルとコレクターとの間の隙間は、25cmである。ノズルを通してメチルイソブチルケトン中に溶解された水素シルセスキオキサンの流速は、1mL/minである。繊維を、約1分間スピンする。繊維を、室温から1500℃の温度に到達するまで、25℃/minの速度で、繊維を加熱することによって熱分解する。繊維を、1500℃の温度で1時間加熱する。繊維を、不活性かつ酸素を含まない窒素ガスおよび水素ガスを含む環境中で熱分解して、ナノ粒子を形成する。繊維を酸性溶液に沈めることによって、繊維を1:1:1の比の49%フッ酸:アルコール:脱イオン水を含む酸性溶液でエッチングして、エッチングされた溶液を形成する。ナノ粒子を、エッチングされた溶液をオクタンおよびメチルイソブチルケトンを含む有機液体と混合することによって、エッチングされた溶液から取り除く。その中に分散されたナノ粒子を含む有機液体を、エッチングされた溶液から静かに移す。ナノ粒子を、以下の表1に記載する通り、ナノ粒子がフォトルミネセンスを示さない間、365nmの紫外光に曝露させる。
【0045】
実施例3:
ケイ素組成物はメチルシルセスキオキサンを含む。メチルシルセスキオキサンは、質量に基づいて、3:1のメチルイソブチルケトンに対するメチルシルセスキオキサンの比で、メチルイソブチルケトン中に溶解する。メチルイソブチルケトン中に溶解したメチルシルセスキオキサンは、シリコンウエハ、つまりコレクター上にエレクトロスピンされて多数の繊維を形成する。ノズルとコレクターとの間の電位は、30kVである。ノズルとコレクターとの間の隙間は、25cmである。ノズルを通してメチルイソブチルケトン中に溶解されたメチルシルセスキオキサンの流速は、1mL/minである。繊維を、約1分間スピンする。繊維を、室温から1200℃の温度に到達するまで、25℃/minの速度で、繊維を加熱することによって熱分解する。繊維を、1200℃の温度で1時間加熱する。繊維を、不活性かつ酸素を含まない窒素ガスおよび水素ガスを含む環境中で熱分解して、ナノ粒子を形成する。繊維を酸性溶液に沈めることによって、繊維を1:1:1の比の49%フッ酸:アルコール:脱イオン水を含む酸性溶液でエッチングして、エッチングされた溶液を形成する。ナノ粒子を、エッチングされた溶液をオクタンおよびメチルイソブチルケトンを含む有機液体と混合することによって、エッチングされた溶液から取り除く。その中に分散されたナノ粒子を含む有機液体を、エッチングされた溶液から静かに移す。ナノ粒子を、以下の表1に記載する通り、ナノ粒子が青色のフォトルミネセンスを示す間、365nmの紫外光に曝露させる。
【0046】
実施例4:
ケイ素組成物は水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンを含む。メチルシルセスキオキサンに対する水素シルセスキオキサンの比は、質量に基づいて、3.75:1である。水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンは、メチルイソブチルケトン中に溶解する。メチルイソブチルケトンの質量に対する水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンを組み合わせた質量の比は、4:1である。メチルイソブチルケトン中に溶解した水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンは、シリコンウエハ、つまりコレクター上にエレクトロスピンされて多数の繊維を形成する。ノズルとコレクターとの間の電位は、30kVである。ノズルとコレクターとの間の隙間は、25cmである。ノズルを通してメチルイソブチルケトン中に溶解された水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンの流速は、1mL/minである。繊維を、約1分間スピンする。繊維を、室温から1200℃の温度に到達するまで、25℃/minの速度で、繊維を加熱することによって熱分解する。繊維を、1200℃の温度で1時間加熱する。繊維を、不活性かつ酸素を含まない窒素ガスおよび水素ガスを含む環境中で熱分解して、ナノ粒子を形成する。繊維を酸性溶液に沈めることによって、繊維を1:1:1の比の49%フッ酸:アルコール:脱イオン水を含む酸性溶液でエッチングして、エッチングされた溶液を形成する。ナノ粒子を、エッチングされた溶液をオクタンおよびメチルイソブチルケトンを含む有機液体と混合することによって、エッチングされた溶液から取り除く。その中に分散されたナノ粒子を含む有機液体を、エッチングされた溶液から静かに移す。ナノ粒子を、以下の表1に記載する通り、ナノ粒子が緑色のフォトルミネセンスを示す間、365nmの紫外光に曝露させる。
【0047】
実施例5:
ケイ素組成物は水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンを含む。メチルシルセスキオキサンに対する水素シルセスキオキサンの比は、質量に基づいて、3.75:1である。水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンは、メチルイソブチルケトン中に溶解する。メチルイソブチルケトンの質量に対する水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンを組み合わせた質量の比は、4:1である。メチルイソブチルケトン中に溶解した水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンは、シリコンウエハ、つまりコレクター上にエレクトロスピンされて多数の繊維を形成する。ノズルとコレクターとの間の電位は、30kVである。ノズルとコレクターとの間の隙間は、25cmである。ノズルを通してメチルイソブチルケトン中に溶解された水素シルセスキオキサンおよびメチルシルセスキオキサンの流速は、1mL/minである。繊維を、約1分間スピンする。繊維を、室温から1500℃の温度に到達するまで、25℃/minの速度で、繊維を加熱することによって熱分解する。繊維を、1500℃の温度で1時間加熱する。繊維を、不活性かつ酸素を含まない窒素ガスおよび水素ガスを含む環境中で熱分解して、ナノ粒子を形成する。繊維を酸性溶液に沈めることによって、繊維を1:1:1の比の49%フッ酸:アルコール:脱イオン水を含む酸性溶液でエッチングして、エッチングされた溶液を形成する。ナノ粒子を、エッチングされた溶液をオクタンおよびメチルイソブチルケトンを含む有機液体と混合することによって、エッチングされた溶液から取り除く。その中に分散されたナノ粒子を含む有機液体を、エッチングされた溶液から静かに移す。ナノ粒子を、以下の表1に記載する通り、ナノ粒子がフォトルミネセンスを示さない間、365nmの紫外光に曝露させる。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示す通り、繊維を熱分解することによって製造されるナノ粒子のサイズは、熱分解温度の関数である。例えば、ケイ素組成物は実施例1と実施例2において同じであり、ケイ素組成物から形成される繊維を熱分解した温度、例えば1200℃か1500℃かは、繊維を熱分解することによって製造されるナノ粒子のサイズ、例えば4nmか50から80nmかに、実質的な影響を与えた。同様の結果が、その両方が同じケイ素組成物を利用する、実施例4および実施例5において見られる。さらに、ケイ素組成物は、ケイ素組成物から形成される繊維を熱分解することによって製造されたナノ粒子のフォトルミネセントの色に影響を与える。例えば、実施例1および実施例4のケイ素組成物は異なるが、ケイ素組成物から形成される繊維を熱分解する工程の間のパラメータは同じ、例えば1200℃であり、実施例1のナノ粒子のフォトルミネセントの色は赤色であり、実施例4のナノ粒子のフォトルミネセントの色は緑色である。
【0050】
本発明は例示的な方法で記載され、使用された用語は、制限なく、記載された言葉の性質におけるものであることが意図されると理解される。明らかに、本発明の多くの修正および変形が上記の教示の点で可能であり、本発明は、添付した請求項の範囲内で具体的に記載したものとは別の方法で実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
ケイ素組成物を電界紡糸して繊維を形成する工程; および
前記繊維を熱分解してナノ粒子を製造する工程
を含む、ナノ粒子を製造する方法。
【請求項2】
前記繊維を熱分解する工程が、400から2500℃の温度で前記繊維を加熱する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維を加熱する工程が、0.1から20時間の間、前記繊維を加熱する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維を加熱する工程が、室温から、400から2500℃の温度に、少なくとも5℃/分の速度で前記繊維の温度を上げる工程を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
400から2500℃の温度に前記繊維を加熱する工程が、800から1400℃の温度に前記繊維を加熱して0より大きく7nmまでの平均直径を有するナノ粒子を製造する工程を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
400から2500℃の温度に前記繊維を加熱する工程が、1400より高く2500℃までの温度に前記繊維を加熱して7より大きく500nmまでの平均直径を有するナノ粒子を製造する工程を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維を熱分解する工程が、400℃未満の温度で前記繊維をプラズマ処理する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維を熱分解する工程が、0より長く10分までの時間、前記繊維をプラズマ処理する工程を含む、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維を熱分解する工程が、加熱、プラズマ処理、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維からナノ粒子を単離する工程をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ナノ粒子を単離する前記工程が、酸性溶液で前記繊維をエッチングして前記繊維を溶解し、これによりエッチングされた溶液を形成する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ナノ粒子を単離する前記工程が、エッチングされた溶液を有機液体と混合する工程、および前記有機液体からエッチングされた前記溶液を分離する工程をさらに含み、ここで、ナノ粒子はエッチングされた前記溶液からの前記有機液体の分離時に有機液体中に分散されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ素組成物が、水素シルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン、ジシラン、ポリシラン、少なくとも1つのケイ素原子を有するトルヒドロキノン、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ素組成物がパウダー形態であり、かつ前記方法がパウダー形態の前記ケイ素組成物を溶媒中に溶解する工程をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子がケイ素ナノ粒子を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子が、炭化ケイ素ナノ粒子、炭素ナノ粒子、およびこれらの組合せの群から選択されるナノ粒子をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子が、0より大きく7nmまでの平均直径を有する、請求項1から5および7から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子がフォトルミネセントである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
電磁放射によって前記ナノ粒子のフォトルミネセンスを誘起する工程をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から9および13から19のいずれか一項に記載の方法によって作製された、ナノ粒子を含む繊維。
【請求項21】
請求項10から19のいずれか一項に記載の方法による、ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−501290(P2012−501290A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525097(P2011−525097)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/054306
【国際公開番号】WO2010/025067
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】