ナノ粒子媒体の製造方法
ナノ粒子媒体の製造方法において、白金、窒化ケイ素および真空中での熱処理の下で解離する磁性元素の窒化物が基板上に所定量スパッタリングされ、基板は、真空中で高速熱処理操作を受けさせられ、基板は、磁性元素の窒化物が解離し拡散により窒素を放出して磁性元素を後に残す温度まで所定の期間にわたって加熱され、そして基板は放冷される。磁性元素は白金と合金を作り、実質的に単分散でありかつ窒化ケイ素中に実質的に均一に分布された粒子を形成する。この合金化プロセスは、磁性元素の窒化物が解離すると直ちに生じる。磁性元素は、好ましくはコバルトであり、基板は、好ましくは正方晶形のPtCo合金の形成を可能にする温度まで加熱される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子媒体の製造方法およびそのような方法の使用を伴う書き込み可能な磁気媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべてのデータ保存システム上での容量増大に対する飽くなき要求は、記録面でデータが保存されなければならない面密度を絶え間なく増大させている。磁気記録において、記憶媒体の厚さは、利用可能な書き込みフィールドにより制限され、その結果、所与の媒体厚さでの面密度のどのような増大も、‘1ビット’の情報を保存するために利用可能な物理的容積の対応した減少を伴わねばならない。現行の磁気記録密度では、単一のデータビットは、各ドメインが非常に多くの粒子またはグレインを含んでいる規模での1つのドメインから次のドメインへの移行の存在または不在として符号化される。
【0003】
1つのドメインを形成するグレインのこれらの群は、その磁化を一括して切り替えて、移行の最終位置において不確実性を作り出す。有用な情報は、ビットの中央部分に保存される。各ビットの境界において、磁気ビットの極は互いに直接的に対向し合い、これらの対向する磁石は、互いを不安定化させて不明確な移行領域を作り出す傾向がある。これは雑音を増加する。信号対雑音レベルを高めるために、ビット当たりのグレイン数が境界におけるビット数よりも確実にずっと高くなるようにすることが望ましい。このことは、各ビットが現在数百ないし数千グレインの面積を占めることを必要とする。このことは、単純化された形で図1に示してあり、そこでは、中央領域10が、同じ磁気方位を有する比較的多数のグレインから成っていることが見て取れ、これが単独のビットを構成する。
【0004】
記録密度が増大されるのであれば、ドメインサイズはより小さくならねばならず、従って、ドメインを含む個別の磁気粒子(グレイン)の規模はそれに応じて、信号対雑音比の低下を来さないために、ドメイン当たりの粒子数を一定に維持するように低減されねばならない。
【0005】
あいにく記録密度は現在、粒子サイズのさらなる減少が‘超常磁性限界’によってほどなく阻止されるような状態である。これは、媒体の環境の熱エネルギーが磁気粒子の異方性エネルギーと同等になるポイントである。粒子の体積(V)が超常磁性限界まで減少させられると、媒体は本質的に非強磁性になり、記録媒体としてのすべての能力を失う。さらに、超常磁性限界に実際に到達するずっと以前に、非常に微細粒な材料における自発磁化反転の確率が大きくなり、記録データの完全性は、典型的なハードドライブ動作温度において極端に低減される。記録データにとり許容できる最小寿命(基準)は、一般に10年である。平方インチ当たり約1×1012ビット(平方インチ当たり1テラビット−2010年までの業界目標)の面密度をサポートできる媒体を開発する場合に記録データの長期寿命を維持するために、超常磁性限界を拡張するための処置を考案することが必要である。
【0006】
超常磁性限界により課される制約下で、高い固有磁気異方性を有しどのような相互の磁気相互作用も最小化されるように十分に分散された材料の同一サイズ(単分散)の単一ドメイン粒子の配列で構成される記録媒体として望ましい記録媒体が考えられる。
【0007】
そのような媒体を物理的に実現するための商業的に実行可能な手法を見出す際の困難は、多岐にわたりかつ手ごわい。記録業界によって現在探求されているこの方向の経路は以下の通りである:
(i)リソグラフィックプロセスまたはエッチングプロセスを用いて製造されたパターン形成媒体、および
(ii)錯体化学的経路または生物学的経路を経て製造された自己集合微粒子配列。
【0008】
これらは両方とも、現行の磁気ハードディスク製造技術とは相容れない。経路(i)は、そう遠くない将来に、必要とされる2.5nm〜12nmで構築された媒体を製造することも、大面積の媒体を低コストで製造することもできないという点で制限される。経路(ii)は、必要とされるサイズの単分散粒子を製造することが証明されているものの、任意の大いに有用な記録面積一面で均一性を達成することに苦闘している。
【0009】
磁気記録媒体の開発において考慮されるべき第2の要因は、いわゆる“垂直”記録媒体を製造することが望ましいことである。一般的に用いられる2つの主要な記録技法があり、これらは図2(a)および図2(b)に例示される。
【0010】
図2(a)には、多くの磁気ドメイン22および読み取り/書き込みヘッド24で構成された記録媒体20を含むいわゆる“長手方向”記録の構成が示してある。これらのドメインは、図上では水平に、すなわち記録媒体の主軸に沿って“長手方向”に置かれていることが見て取れ、さらに誘導書き込みヘッドは、二極磁石26である。対照的に、既知の垂直記録システムの1つの形は、垂直に置かれており(図2(b)参照)柔らかい磁気基層28に入るまたはこれから出る一連のドメインを記録媒体として含む。この垂直構成は、単極書き込みヘッド30も用いる。長手方向記録システムの容量限界は約100〜200Gb/in2であると一般に認められているのに対して、垂直システムを用いた場合の限界は1桁大きいと考えられている。
【0011】
従って、高い垂直異方性を有する単分散の単一ドメイン粒子を含む磁気記録媒体を提供することが望ましいであろうことが理解される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の範囲は、発明の詳細な説明に続く番号を付された請求項において定義される。
【0013】
本発明の1つの実施形態を、単に例証として、図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
磁気記録媒体を製造するための本発明に従う方法は、図3(a)および図3(b)に例示されるような装置の使用を伴う。
【0015】
それぞれ正面図および平面図である図3(a)および図3(b)において、スパッタリング室40は、一方の端部に、従来のやり方で、白金、コバルトおよび窒化ケイ素でそれぞれ構成された3つのターゲット44、46および48と接触している負電極42を含んでいる。この室の他方の端部には、またもや既知のやり方で、正電極50が設けられており、この上にいくつかの基板52が設置されている。これらの基板は、好ましくは、耐熱ガラス製である。ターゲットおよび基板が室内に設置されると、この室はポート54を介して排気され、好ましくはアルゴン/窒素混合物から成る不活性ガスが、第2のポート56を介して室内に導入される。次に高電圧が電極42、50に供給され、これが介在スペース中にプラズマ(グロー放電)60を生じさせる。プラズマは、不活性ガスの陽イオンから成る。これらのイオンは、陰極に向かって加速され、ターゲットから電子をたたき出し、次にこれらの原子は、陽極に衝突して基板に付着する。基板がターゲットの上方にあるという点で、これはスパッタ‘アップ’プロセスである。そのようなプロセスは、粒子がターゲットから落下して形成されている媒体を汚染することがないので、記録媒体を製造する場合に有利である。
【0016】
DC電圧およびRF電圧双方がスパッタリングプロセスにおいて用いられる。白金およびコバルトはDCスパッタリングされるが、窒化ケイ素は、それが絶縁体なのでRFスパッタリングされる。窒化コバルトは、‘反応性’スパッタリングにより製造される。すなわち、スパッタリングにおいてコバルトが窒素と反応する時に、窒化コバルトが形成される。
【0017】
スパッタリングプロセスの間、ヒーター58は、基板を加熱することにより堆積プロセスを支援することができ、電極50は、何らかの適当な手段により回転させられる。この回転は、すべての基板がターゲット原子により均等に被覆されることを保証する。
【0018】
各基板が周回するにつれて、各基板は、ターゲットの各々から原子を順番に捕捉し、従って、これにより基板上に個別の層が通常形成される。層の厚さは、基板電極の回転速度およびターゲットに供給される電力の大きさに主として依存し、実際に、回転速度が十分に高ければ(および/またはターゲット電力が適度に低ければ)、いったんスパッタリングが完了すれば、層は、1つの均質層になるほど薄くなるであろう。飛び飛びの層が形成される状況が図4に示してある。ここでは、ガラス基板52が、白金(Pt)、窒化コバルト(Co2N)および窒化ケイ素(Si3N4)で構成される一連の3層被膜53で被覆されているのが見て取れる。(これらの構成部分の順序は任意である。)そのような複合層の数は、ターゲットの各々を通り過ぎた基板のパスの数により決定される。本発明の方法の好ましい実現において、各複合層の総厚さは、約3nm〜5nmである。各複合層を形成している3つの構成層は同一の厚さで示されているが、実際には、それらは異なる厚さとすることができる。これは、後により詳細に論じられる。
【0019】
所望数の被膜が所望の深さまでいったんスパッタリングされると、白金ターゲットおよびコバルトターゲット双方がオフにされ(例えば、それらへの負の高電圧供給が遮断される)、窒化ケイ素ターゲットのみが依然通電されたままで残される。次に、この窒化ケイ素ターゲットは、基板最上層への窒化ケイ素のスパッタリング層の適用を続け、この新しい層は、最外側の堅牢な保護層62を構成し、このことは、こうして作り出された構造が読み取り/書き込みヘッドと共に記録媒体として用いられる場合に特に有用であ。
【0020】
保護層62の好ましい厚さは、約5nm〜10nmである。
【0021】
スパッタリングプロセスが完了すると、基板は室40から取り出されて加熱室(図示せず)に挿入され、そこで基板は、高速熱処理(RTP)段階を受けさせられ、ここで基板は、真空中で光学的加熱プロセスによって500〜650℃の温度まで非常に急速に加熱され、この温度は30〜60秒間維持され、その後、光学的熱源が取り去られ、試料は真空中で自然放冷される。
【0022】
窒化コバルトは不安定であり、実際のターゲット温度は、窒化コバルトが解離して、拡散により逸出しポンプ排出される窒素を放出するように選ばれる。解放されたコバルトは、分散された非常に活性のある準蒸気状態で残され、使用された高温で窒化ケイ素と同様に影響を受けない同様に分散された白金と容易に合金を作る。このプロセスは、上記で可能性として言及されたように、スパッタリングが最初から飛び飛びの層を作ったか、1つの大きい均質層を作ったかにかかわらず生じる。
【0023】
この材料の組成−すなわち、3つの構成層の相対厚さ−は、冷却時に、結果として生じる窒化ケイ素マトリックス全体にわたって形成するPtCo合金の密度が、単一層としての形成には不十分であるが、単一ドメインと超常磁性限界との間でほぼ最適に間隔を置かれた容積を有する実質的に同一サイズの粒子の拡散に“凝縮される”ように選ばれる。より正確には、粒子は最大でも、単一ドメイン状態にあるように十分小さくあるべきであり、その場合、それらの唯一の磁化−反転プロセスは、異方性フィールドに抵抗するコヒーレント回転による。粒子がこれよりも大きければ、反転は、ドメイン成長プロセスが可能になるので、より容易になる。粒子サイズの下限において、各粒子の容積は、その総磁気エネルギーがその環境の熱エネルギーよりもかなり大きくなるようなものであるべきであり、さもなければ、粒子は強磁性ではなくて超常磁性になり、情報を保存できなくなる。
【0024】
SiN/Si3N4の存在のため、粒子は基板上で単一の層(“単層”)を形成しないが、複数の層に分離され、その結果、先行技術において一般にそうであるように、磁気ビットが多くの粒子により依然として形成されることが留意されるべきである。これには、より大きい読み出し信号、従って、既知の方法と同様、より大きいS/N比をもたらすという利点がある。
【0025】
Pt、CoN/Co2NおよびSiN/Si3N4層の相対厚さは次に、実験により容易に設定でき、室40中の3つのターゲット44、46、48に異なるDC電圧を印加することにより製造できる(図3(a)および図(3b)参照)。
【0026】
本発明の好ましい実施において、RTP段階の間に到達される温度は、CoN/Co2Nの解離を保証するだけでなく、形成されたPtCo合金がその結晶形にあることも保証するようなものである。この特定の結晶形で生成される合金の異方性は、他の結晶形の場合よりも高いので、これは望ましい。この形での結晶化が生じる温度は、CoN/Co2Nが解離する温度よりも高く、従って、RTP段階の間に基板が加熱される実際の温度は2つの温度の高い方である。
【0027】
上記で引用されたRTP温度は、磁性元素の窒化物の必要な解離、および好ましくは、結果として生じる合金の望ましい結晶形も生じる温度である。本発明のプロセスのいずれかの評価におけるこれらの温度は、当該基板の実際の温度と関連してもしなくてもよい。本発明の方法を試験する際、例えば、本発明者らは、当該基板が到達している温度ではなく、当該基板に沿って置かれた同様の、ただし未処理の基板の温度を測定した。従って、所望の効果が観察される実際の基板温度が、測定されている温度と異なることがあり得る。しかしながら、測定された温度がこれらの所望の効果の発生と正確に相関関係にある限り、このことは重要ではない。同様の考察が、異なる組成の使用について当てはまる。故意に異なる組成(例えば、CoN/Co2N量とPt量との比率が異なる)で作られる試料は、異なる光学吸収を有する。従って、それらの試料は、光学的に駆動される熱処理段階の間に、異なる効率でエネルギーを取り上げる。その結果、同じ測定温度で処理された2つの異なる試料が、異なる真の温度に達することになり、各試料が、その組成がどうであれ、必要とされる解離、および好ましくは必要とされる結晶化も生じるのに十分な温度まで確実に加温されるように注意されねばならない。
【0028】
記録媒体の性質および結果として生じる記録特性に対する非常に大きな程度の制御が、スパッタリングの間の堆積パラメータ(ターゲット電圧、基板回転速度等を含む)およびRTP段階の間に用いられる時間−温度プロファイルの厳密な操作によりもたらされる。
【0029】
RTP温度は、解離および正しい結晶化が生じるかどうかだけでなく、最終生成物がより高いまたはより低い保磁力を有するかどうかも決定する。当初のPt、Co2NおよびSi3Nの比率が、結果として生じる媒体の最終特性を決定する。
【0030】
上述のプロセスにおいては、スパッタリング段階およびRTP段階は、2つの別個の場所で生じると仮定されていたが、これらの段階は、装置の単一の部分で実行し得る。これは、必要とされる温度範囲まで基板を加熱するための適切な加熱手段の採用により改良された従来のスパッタリング室の形を取り得る。
【0031】
さらに、説明されたプロセスがPtCoで作られた粒子を作り出したのに対して、本発明は、窒化コバルトの代わりに窒化鉄(FeN)の使用も想定しており、これは、PtCoではなくてPtFe粒子の生成という結果になるであろう。ただし、CoN/Co2Nと比較してFeNが解離するターゲット温度の考えられる相違を考慮に入れることが必要であろう。行えるであろう別の代替は、最終的な保護層の窒化ケイ素をダイヤモンド様炭素で代替することある。ダイヤモンド様炭素は、その極度の耐久性および堅牢性のため、業界で好まれる記録ヘッド用境界面層であり、従って、この機能についてSiN/Si3N4の使用よりも優位に立ち得る。しかしながら、ダイヤモンド様炭素は、処理された基板に別の室において適用される必要があり(これは、CoN/Co2N4およびPtと同じ室内で適用されるSiN/Si3N4保護層と対照的である)、これにより製造サイクルはかなり複雑になるであろう。
【0032】
ずっと優れた特性を有する媒体を作り出すために必要とされる典型的な変更としては、浮動記録ヘッドを下げるために最適化される基板および保護被膜、読み出された信号を最大化するために最適化される媒体厚さならびに製造プロセスに加えられる柔らかい適切な基層が含まれる。
【0033】
上述の製造ルーチンは、ハードディスク記録業界ですでに一般的に使用されているプラントおよびプロセスを使用し、ほぼ単分散の媒体を広い面積全体にわたり均一に提供する。この媒体は高い垂直異方性を有し、高い残留磁気および2.5kOe〜>16kOeの範囲の保磁力を用いた試験の間に作り出されている。当初の記録実験において、この範囲の下限の保磁力を有する媒体は、最も進んだ現行の従来媒体により達成される密度に迫る密度での垂直記録をサポートすることがすでに実証されている。
【0034】
このことは、図5(a)を図5(b)と比較することにより実証される。これらの記録実験は、最適化された垂直ヘッドではなく長手方向記録ヘッドの漂遊磁界を用いて実施された。図5は、本発明に従ってはいるが、500℃の比較的低いRTPターゲット温度を用いて作られ、結果として、垂直記録システム(図2(b)参照)と共によく用いられる柔らかい磁気基層を用いることなく媒体への素早いデータ書き込みを可能にする比較的低い保持力を有する記録媒体の性能を例示している。この試験において用いられた基板は、例えば、特殊な洗浄および平滑化によって、どのようにも特別に製造されていなかったということは注目に値する。この試験において用いられた基板は、被膜のみでSi3N4セパレータ層を全く用いずに製造されたことも注目に値する。種々の軌跡は、3.2kfci(3200線束変化/インチ)〜128kfciの種々のデータレートに対応する。後者は、約300Mb/平方インチのデータ密度に対応する。一方で、図5は、既知の技法を用いて作られた既知の連続薄膜多層媒体の性能を、書き込み可能性を促進する柔らかい磁気基層を有する垂直記録システムを用いて読み取って示している。ここで用いられた基板は、特別に洗浄および平滑化されており、これには性能を強化する効果がある。
【0035】
見て取れるように、2つのシステムの性能は非常に類似している。しかしながら、主要な違いは、既知のシステムは、その容量の上限で作動しているが、例示された純粋に実験的なシステムは、その容量の下限にあることである。平方インチ当たり1Tbそしてそれ以上のより大量のデータを媒体に書き込むことを可能にする、より高い保持力および異方性を有するより小さい粒子を生じさせるために、スパッタリングされた基板をRTP段階の間により高温に加熱することにより、より高い性能が享受できる。しかしながら、その場合には、書き込み操作の実行を可能にするために、媒体の局所的な光学的加熱を用いることが必要になる。
【0036】
図6(a)および図6(b)を参照すると、書き込み実験においてIBM材料と比較された材料は、10nmの窒化ケイ素被覆層を有する窒化コバルトおよび白金のみで構成されている。窒化ケイ素の充填材またはセパレータは皆無である。RTP前の試料は、窒化コバルトおよび白金の72の‘層’から成っており、各層は、厚さがそれぞれ0.091nmである。これらはサブ原子厚さなので、これらは一般に認められる意味での層ではないことに留意されたい。図6(a)は、時間の関数としての温度のRTP加熱プロファイルを示す。試料がプラトー‘温度’に60秒間保持されることが見て取れる。図6(b)は、極カー効果を用いて得られる垂直方向におけるこの材料の飽和磁気ヒステリシスループを示す。
【0037】
特性をどのように変え得るかの第2の例として、上記と同じ4分間で堆積されるが、同時に窒化ケイ素がスパッタリングされる被膜を考える。試料は、窒化コバルト、白金および窒化ケイ素の108の‘層’で構成されている。層厚さは、それぞれ0.091nm、0.078nmおよび0.014nmである。また、この試料は、10nmの窒化ケイ素で被覆される。この試料は、図7(a)のRTPプロファイルを用いてプラトー温度で処理される。
【0038】
これにより、計測において利用可能なフィールドを増大させるために、今度はファラデー効果を用いて得られた図7(b)に示される垂直方向における磁気ヒステリシスループが作り出される。これは、利用可能なフィールドにおいて飽和されない小さいループであることが見て取れる。本発明者らは、約20kOeの保磁力で正方形になると予想されるこの材料の飽和ループを作り出すべく今もなお努力している。この材料は、非常に高い記録密度を優れた安定性でサポートするはずである。
【0039】
図8は、前のグラフにおけるものと同じであるが、650℃ではなく500℃でRTPを受けさせられた材料のファラデーループの例である。見て取れるように、このループは、ずっと正方形に近く、約20kOeにおいて飽和し、約10kOeの保磁力を有している。
【0040】
本発明の製造プロセスが主として記録媒体の製造生産に向けられているとはいえ、本発明の製造プロセスは、他の用途における使用に供することもできる。1つのそのような用途は、PtCoのような合金を伴う触媒プロセスである。マトリックス中にPtCo粒子の単分散の均一分布を作る本発明の方法の利点は、粒子自体が非常に小さくかつ実質的に球形なので、粒子の面積−体積比が高いことであり、このことは、触媒プロセスを実行するために利用可能なPtCo粒子の表面積が比較的に多いので、より優れた触媒性能という結果になることである。触媒用途で用いられる場合、本発明に従って作られたナノ粒子媒体は、前に説明された保護層を通常必要としない。
【0041】
要約すれば、Ptが添加されると、CoPt合金粒子が形成されて、垂直に表現されたその合金の完全な異方性を発揮するようにできる。
【0042】
本明細書において説明された技法は、HARM(熱アシスト記録磁気)媒体に関連し、1Tb/平方インチ以上を保存する可能性を持つ垂直HARM媒体の形成という結果になり得る。
【0043】
磁性元素は、好ましくはコバルトであるが、原則的に窒化コバルトターゲットからのスパッタも用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】先行技術の記録媒体におけるドメイン構造の単純化された図である。
【図2】2つのタイプの記録装置の構成、すなわち、長手方向(図2a)および垂直方向(図2b)、の斜視図である。
【図3】(a)及び(b)において、本発明に従う方法を実行するために用い得る装置を、正面図および平面図でそれぞれ示す。
【図4】次の高速熱処理操作における熱処理の前に、スパッタリング層が堆積される基板を通る断面図である。
【図5】既知の従来の垂直記録媒体の性能と本発明に従う方法の下で製造された記録媒体の性能との比較である。
【図6】さらなる展開/詳細を例示する。
【図7】さらなる展開/詳細を例示する。
【図8】さらなる展開/詳細を例示する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子媒体の製造方法およびそのような方法の使用を伴う書き込み可能な磁気媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべてのデータ保存システム上での容量増大に対する飽くなき要求は、記録面でデータが保存されなければならない面密度を絶え間なく増大させている。磁気記録において、記憶媒体の厚さは、利用可能な書き込みフィールドにより制限され、その結果、所与の媒体厚さでの面密度のどのような増大も、‘1ビット’の情報を保存するために利用可能な物理的容積の対応した減少を伴わねばならない。現行の磁気記録密度では、単一のデータビットは、各ドメインが非常に多くの粒子またはグレインを含んでいる規模での1つのドメインから次のドメインへの移行の存在または不在として符号化される。
【0003】
1つのドメインを形成するグレインのこれらの群は、その磁化を一括して切り替えて、移行の最終位置において不確実性を作り出す。有用な情報は、ビットの中央部分に保存される。各ビットの境界において、磁気ビットの極は互いに直接的に対向し合い、これらの対向する磁石は、互いを不安定化させて不明確な移行領域を作り出す傾向がある。これは雑音を増加する。信号対雑音レベルを高めるために、ビット当たりのグレイン数が境界におけるビット数よりも確実にずっと高くなるようにすることが望ましい。このことは、各ビットが現在数百ないし数千グレインの面積を占めることを必要とする。このことは、単純化された形で図1に示してあり、そこでは、中央領域10が、同じ磁気方位を有する比較的多数のグレインから成っていることが見て取れ、これが単独のビットを構成する。
【0004】
記録密度が増大されるのであれば、ドメインサイズはより小さくならねばならず、従って、ドメインを含む個別の磁気粒子(グレイン)の規模はそれに応じて、信号対雑音比の低下を来さないために、ドメイン当たりの粒子数を一定に維持するように低減されねばならない。
【0005】
あいにく記録密度は現在、粒子サイズのさらなる減少が‘超常磁性限界’によってほどなく阻止されるような状態である。これは、媒体の環境の熱エネルギーが磁気粒子の異方性エネルギーと同等になるポイントである。粒子の体積(V)が超常磁性限界まで減少させられると、媒体は本質的に非強磁性になり、記録媒体としてのすべての能力を失う。さらに、超常磁性限界に実際に到達するずっと以前に、非常に微細粒な材料における自発磁化反転の確率が大きくなり、記録データの完全性は、典型的なハードドライブ動作温度において極端に低減される。記録データにとり許容できる最小寿命(基準)は、一般に10年である。平方インチ当たり約1×1012ビット(平方インチ当たり1テラビット−2010年までの業界目標)の面密度をサポートできる媒体を開発する場合に記録データの長期寿命を維持するために、超常磁性限界を拡張するための処置を考案することが必要である。
【0006】
超常磁性限界により課される制約下で、高い固有磁気異方性を有しどのような相互の磁気相互作用も最小化されるように十分に分散された材料の同一サイズ(単分散)の単一ドメイン粒子の配列で構成される記録媒体として望ましい記録媒体が考えられる。
【0007】
そのような媒体を物理的に実現するための商業的に実行可能な手法を見出す際の困難は、多岐にわたりかつ手ごわい。記録業界によって現在探求されているこの方向の経路は以下の通りである:
(i)リソグラフィックプロセスまたはエッチングプロセスを用いて製造されたパターン形成媒体、および
(ii)錯体化学的経路または生物学的経路を経て製造された自己集合微粒子配列。
【0008】
これらは両方とも、現行の磁気ハードディスク製造技術とは相容れない。経路(i)は、そう遠くない将来に、必要とされる2.5nm〜12nmで構築された媒体を製造することも、大面積の媒体を低コストで製造することもできないという点で制限される。経路(ii)は、必要とされるサイズの単分散粒子を製造することが証明されているものの、任意の大いに有用な記録面積一面で均一性を達成することに苦闘している。
【0009】
磁気記録媒体の開発において考慮されるべき第2の要因は、いわゆる“垂直”記録媒体を製造することが望ましいことである。一般的に用いられる2つの主要な記録技法があり、これらは図2(a)および図2(b)に例示される。
【0010】
図2(a)には、多くの磁気ドメイン22および読み取り/書き込みヘッド24で構成された記録媒体20を含むいわゆる“長手方向”記録の構成が示してある。これらのドメインは、図上では水平に、すなわち記録媒体の主軸に沿って“長手方向”に置かれていることが見て取れ、さらに誘導書き込みヘッドは、二極磁石26である。対照的に、既知の垂直記録システムの1つの形は、垂直に置かれており(図2(b)参照)柔らかい磁気基層28に入るまたはこれから出る一連のドメインを記録媒体として含む。この垂直構成は、単極書き込みヘッド30も用いる。長手方向記録システムの容量限界は約100〜200Gb/in2であると一般に認められているのに対して、垂直システムを用いた場合の限界は1桁大きいと考えられている。
【0011】
従って、高い垂直異方性を有する単分散の単一ドメイン粒子を含む磁気記録媒体を提供することが望ましいであろうことが理解される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の範囲は、発明の詳細な説明に続く番号を付された請求項において定義される。
【0013】
本発明の1つの実施形態を、単に例証として、図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
磁気記録媒体を製造するための本発明に従う方法は、図3(a)および図3(b)に例示されるような装置の使用を伴う。
【0015】
それぞれ正面図および平面図である図3(a)および図3(b)において、スパッタリング室40は、一方の端部に、従来のやり方で、白金、コバルトおよび窒化ケイ素でそれぞれ構成された3つのターゲット44、46および48と接触している負電極42を含んでいる。この室の他方の端部には、またもや既知のやり方で、正電極50が設けられており、この上にいくつかの基板52が設置されている。これらの基板は、好ましくは、耐熱ガラス製である。ターゲットおよび基板が室内に設置されると、この室はポート54を介して排気され、好ましくはアルゴン/窒素混合物から成る不活性ガスが、第2のポート56を介して室内に導入される。次に高電圧が電極42、50に供給され、これが介在スペース中にプラズマ(グロー放電)60を生じさせる。プラズマは、不活性ガスの陽イオンから成る。これらのイオンは、陰極に向かって加速され、ターゲットから電子をたたき出し、次にこれらの原子は、陽極に衝突して基板に付着する。基板がターゲットの上方にあるという点で、これはスパッタ‘アップ’プロセスである。そのようなプロセスは、粒子がターゲットから落下して形成されている媒体を汚染することがないので、記録媒体を製造する場合に有利である。
【0016】
DC電圧およびRF電圧双方がスパッタリングプロセスにおいて用いられる。白金およびコバルトはDCスパッタリングされるが、窒化ケイ素は、それが絶縁体なのでRFスパッタリングされる。窒化コバルトは、‘反応性’スパッタリングにより製造される。すなわち、スパッタリングにおいてコバルトが窒素と反応する時に、窒化コバルトが形成される。
【0017】
スパッタリングプロセスの間、ヒーター58は、基板を加熱することにより堆積プロセスを支援することができ、電極50は、何らかの適当な手段により回転させられる。この回転は、すべての基板がターゲット原子により均等に被覆されることを保証する。
【0018】
各基板が周回するにつれて、各基板は、ターゲットの各々から原子を順番に捕捉し、従って、これにより基板上に個別の層が通常形成される。層の厚さは、基板電極の回転速度およびターゲットに供給される電力の大きさに主として依存し、実際に、回転速度が十分に高ければ(および/またはターゲット電力が適度に低ければ)、いったんスパッタリングが完了すれば、層は、1つの均質層になるほど薄くなるであろう。飛び飛びの層が形成される状況が図4に示してある。ここでは、ガラス基板52が、白金(Pt)、窒化コバルト(Co2N)および窒化ケイ素(Si3N4)で構成される一連の3層被膜53で被覆されているのが見て取れる。(これらの構成部分の順序は任意である。)そのような複合層の数は、ターゲットの各々を通り過ぎた基板のパスの数により決定される。本発明の方法の好ましい実現において、各複合層の総厚さは、約3nm〜5nmである。各複合層を形成している3つの構成層は同一の厚さで示されているが、実際には、それらは異なる厚さとすることができる。これは、後により詳細に論じられる。
【0019】
所望数の被膜が所望の深さまでいったんスパッタリングされると、白金ターゲットおよびコバルトターゲット双方がオフにされ(例えば、それらへの負の高電圧供給が遮断される)、窒化ケイ素ターゲットのみが依然通電されたままで残される。次に、この窒化ケイ素ターゲットは、基板最上層への窒化ケイ素のスパッタリング層の適用を続け、この新しい層は、最外側の堅牢な保護層62を構成し、このことは、こうして作り出された構造が読み取り/書き込みヘッドと共に記録媒体として用いられる場合に特に有用であ。
【0020】
保護層62の好ましい厚さは、約5nm〜10nmである。
【0021】
スパッタリングプロセスが完了すると、基板は室40から取り出されて加熱室(図示せず)に挿入され、そこで基板は、高速熱処理(RTP)段階を受けさせられ、ここで基板は、真空中で光学的加熱プロセスによって500〜650℃の温度まで非常に急速に加熱され、この温度は30〜60秒間維持され、その後、光学的熱源が取り去られ、試料は真空中で自然放冷される。
【0022】
窒化コバルトは不安定であり、実際のターゲット温度は、窒化コバルトが解離して、拡散により逸出しポンプ排出される窒素を放出するように選ばれる。解放されたコバルトは、分散された非常に活性のある準蒸気状態で残され、使用された高温で窒化ケイ素と同様に影響を受けない同様に分散された白金と容易に合金を作る。このプロセスは、上記で可能性として言及されたように、スパッタリングが最初から飛び飛びの層を作ったか、1つの大きい均質層を作ったかにかかわらず生じる。
【0023】
この材料の組成−すなわち、3つの構成層の相対厚さ−は、冷却時に、結果として生じる窒化ケイ素マトリックス全体にわたって形成するPtCo合金の密度が、単一層としての形成には不十分であるが、単一ドメインと超常磁性限界との間でほぼ最適に間隔を置かれた容積を有する実質的に同一サイズの粒子の拡散に“凝縮される”ように選ばれる。より正確には、粒子は最大でも、単一ドメイン状態にあるように十分小さくあるべきであり、その場合、それらの唯一の磁化−反転プロセスは、異方性フィールドに抵抗するコヒーレント回転による。粒子がこれよりも大きければ、反転は、ドメイン成長プロセスが可能になるので、より容易になる。粒子サイズの下限において、各粒子の容積は、その総磁気エネルギーがその環境の熱エネルギーよりもかなり大きくなるようなものであるべきであり、さもなければ、粒子は強磁性ではなくて超常磁性になり、情報を保存できなくなる。
【0024】
SiN/Si3N4の存在のため、粒子は基板上で単一の層(“単層”)を形成しないが、複数の層に分離され、その結果、先行技術において一般にそうであるように、磁気ビットが多くの粒子により依然として形成されることが留意されるべきである。これには、より大きい読み出し信号、従って、既知の方法と同様、より大きいS/N比をもたらすという利点がある。
【0025】
Pt、CoN/Co2NおよびSiN/Si3N4層の相対厚さは次に、実験により容易に設定でき、室40中の3つのターゲット44、46、48に異なるDC電圧を印加することにより製造できる(図3(a)および図(3b)参照)。
【0026】
本発明の好ましい実施において、RTP段階の間に到達される温度は、CoN/Co2Nの解離を保証するだけでなく、形成されたPtCo合金がその結晶形にあることも保証するようなものである。この特定の結晶形で生成される合金の異方性は、他の結晶形の場合よりも高いので、これは望ましい。この形での結晶化が生じる温度は、CoN/Co2Nが解離する温度よりも高く、従って、RTP段階の間に基板が加熱される実際の温度は2つの温度の高い方である。
【0027】
上記で引用されたRTP温度は、磁性元素の窒化物の必要な解離、および好ましくは、結果として生じる合金の望ましい結晶形も生じる温度である。本発明のプロセスのいずれかの評価におけるこれらの温度は、当該基板の実際の温度と関連してもしなくてもよい。本発明の方法を試験する際、例えば、本発明者らは、当該基板が到達している温度ではなく、当該基板に沿って置かれた同様の、ただし未処理の基板の温度を測定した。従って、所望の効果が観察される実際の基板温度が、測定されている温度と異なることがあり得る。しかしながら、測定された温度がこれらの所望の効果の発生と正確に相関関係にある限り、このことは重要ではない。同様の考察が、異なる組成の使用について当てはまる。故意に異なる組成(例えば、CoN/Co2N量とPt量との比率が異なる)で作られる試料は、異なる光学吸収を有する。従って、それらの試料は、光学的に駆動される熱処理段階の間に、異なる効率でエネルギーを取り上げる。その結果、同じ測定温度で処理された2つの異なる試料が、異なる真の温度に達することになり、各試料が、その組成がどうであれ、必要とされる解離、および好ましくは必要とされる結晶化も生じるのに十分な温度まで確実に加温されるように注意されねばならない。
【0028】
記録媒体の性質および結果として生じる記録特性に対する非常に大きな程度の制御が、スパッタリングの間の堆積パラメータ(ターゲット電圧、基板回転速度等を含む)およびRTP段階の間に用いられる時間−温度プロファイルの厳密な操作によりもたらされる。
【0029】
RTP温度は、解離および正しい結晶化が生じるかどうかだけでなく、最終生成物がより高いまたはより低い保磁力を有するかどうかも決定する。当初のPt、Co2NおよびSi3Nの比率が、結果として生じる媒体の最終特性を決定する。
【0030】
上述のプロセスにおいては、スパッタリング段階およびRTP段階は、2つの別個の場所で生じると仮定されていたが、これらの段階は、装置の単一の部分で実行し得る。これは、必要とされる温度範囲まで基板を加熱するための適切な加熱手段の採用により改良された従来のスパッタリング室の形を取り得る。
【0031】
さらに、説明されたプロセスがPtCoで作られた粒子を作り出したのに対して、本発明は、窒化コバルトの代わりに窒化鉄(FeN)の使用も想定しており、これは、PtCoではなくてPtFe粒子の生成という結果になるであろう。ただし、CoN/Co2Nと比較してFeNが解離するターゲット温度の考えられる相違を考慮に入れることが必要であろう。行えるであろう別の代替は、最終的な保護層の窒化ケイ素をダイヤモンド様炭素で代替することある。ダイヤモンド様炭素は、その極度の耐久性および堅牢性のため、業界で好まれる記録ヘッド用境界面層であり、従って、この機能についてSiN/Si3N4の使用よりも優位に立ち得る。しかしながら、ダイヤモンド様炭素は、処理された基板に別の室において適用される必要があり(これは、CoN/Co2N4およびPtと同じ室内で適用されるSiN/Si3N4保護層と対照的である)、これにより製造サイクルはかなり複雑になるであろう。
【0032】
ずっと優れた特性を有する媒体を作り出すために必要とされる典型的な変更としては、浮動記録ヘッドを下げるために最適化される基板および保護被膜、読み出された信号を最大化するために最適化される媒体厚さならびに製造プロセスに加えられる柔らかい適切な基層が含まれる。
【0033】
上述の製造ルーチンは、ハードディスク記録業界ですでに一般的に使用されているプラントおよびプロセスを使用し、ほぼ単分散の媒体を広い面積全体にわたり均一に提供する。この媒体は高い垂直異方性を有し、高い残留磁気および2.5kOe〜>16kOeの範囲の保磁力を用いた試験の間に作り出されている。当初の記録実験において、この範囲の下限の保磁力を有する媒体は、最も進んだ現行の従来媒体により達成される密度に迫る密度での垂直記録をサポートすることがすでに実証されている。
【0034】
このことは、図5(a)を図5(b)と比較することにより実証される。これらの記録実験は、最適化された垂直ヘッドではなく長手方向記録ヘッドの漂遊磁界を用いて実施された。図5は、本発明に従ってはいるが、500℃の比較的低いRTPターゲット温度を用いて作られ、結果として、垂直記録システム(図2(b)参照)と共によく用いられる柔らかい磁気基層を用いることなく媒体への素早いデータ書き込みを可能にする比較的低い保持力を有する記録媒体の性能を例示している。この試験において用いられた基板は、例えば、特殊な洗浄および平滑化によって、どのようにも特別に製造されていなかったということは注目に値する。この試験において用いられた基板は、被膜のみでSi3N4セパレータ層を全く用いずに製造されたことも注目に値する。種々の軌跡は、3.2kfci(3200線束変化/インチ)〜128kfciの種々のデータレートに対応する。後者は、約300Mb/平方インチのデータ密度に対応する。一方で、図5は、既知の技法を用いて作られた既知の連続薄膜多層媒体の性能を、書き込み可能性を促進する柔らかい磁気基層を有する垂直記録システムを用いて読み取って示している。ここで用いられた基板は、特別に洗浄および平滑化されており、これには性能を強化する効果がある。
【0035】
見て取れるように、2つのシステムの性能は非常に類似している。しかしながら、主要な違いは、既知のシステムは、その容量の上限で作動しているが、例示された純粋に実験的なシステムは、その容量の下限にあることである。平方インチ当たり1Tbそしてそれ以上のより大量のデータを媒体に書き込むことを可能にする、より高い保持力および異方性を有するより小さい粒子を生じさせるために、スパッタリングされた基板をRTP段階の間により高温に加熱することにより、より高い性能が享受できる。しかしながら、その場合には、書き込み操作の実行を可能にするために、媒体の局所的な光学的加熱を用いることが必要になる。
【0036】
図6(a)および図6(b)を参照すると、書き込み実験においてIBM材料と比較された材料は、10nmの窒化ケイ素被覆層を有する窒化コバルトおよび白金のみで構成されている。窒化ケイ素の充填材またはセパレータは皆無である。RTP前の試料は、窒化コバルトおよび白金の72の‘層’から成っており、各層は、厚さがそれぞれ0.091nmである。これらはサブ原子厚さなので、これらは一般に認められる意味での層ではないことに留意されたい。図6(a)は、時間の関数としての温度のRTP加熱プロファイルを示す。試料がプラトー‘温度’に60秒間保持されることが見て取れる。図6(b)は、極カー効果を用いて得られる垂直方向におけるこの材料の飽和磁気ヒステリシスループを示す。
【0037】
特性をどのように変え得るかの第2の例として、上記と同じ4分間で堆積されるが、同時に窒化ケイ素がスパッタリングされる被膜を考える。試料は、窒化コバルト、白金および窒化ケイ素の108の‘層’で構成されている。層厚さは、それぞれ0.091nm、0.078nmおよび0.014nmである。また、この試料は、10nmの窒化ケイ素で被覆される。この試料は、図7(a)のRTPプロファイルを用いてプラトー温度で処理される。
【0038】
これにより、計測において利用可能なフィールドを増大させるために、今度はファラデー効果を用いて得られた図7(b)に示される垂直方向における磁気ヒステリシスループが作り出される。これは、利用可能なフィールドにおいて飽和されない小さいループであることが見て取れる。本発明者らは、約20kOeの保磁力で正方形になると予想されるこの材料の飽和ループを作り出すべく今もなお努力している。この材料は、非常に高い記録密度を優れた安定性でサポートするはずである。
【0039】
図8は、前のグラフにおけるものと同じであるが、650℃ではなく500℃でRTPを受けさせられた材料のファラデーループの例である。見て取れるように、このループは、ずっと正方形に近く、約20kOeにおいて飽和し、約10kOeの保磁力を有している。
【0040】
本発明の製造プロセスが主として記録媒体の製造生産に向けられているとはいえ、本発明の製造プロセスは、他の用途における使用に供することもできる。1つのそのような用途は、PtCoのような合金を伴う触媒プロセスである。マトリックス中にPtCo粒子の単分散の均一分布を作る本発明の方法の利点は、粒子自体が非常に小さくかつ実質的に球形なので、粒子の面積−体積比が高いことであり、このことは、触媒プロセスを実行するために利用可能なPtCo粒子の表面積が比較的に多いので、より優れた触媒性能という結果になることである。触媒用途で用いられる場合、本発明に従って作られたナノ粒子媒体は、前に説明された保護層を通常必要としない。
【0041】
要約すれば、Ptが添加されると、CoPt合金粒子が形成されて、垂直に表現されたその合金の完全な異方性を発揮するようにできる。
【0042】
本明細書において説明された技法は、HARM(熱アシスト記録磁気)媒体に関連し、1Tb/平方インチ以上を保存する可能性を持つ垂直HARM媒体の形成という結果になり得る。
【0043】
磁性元素は、好ましくはコバルトであるが、原則的に窒化コバルトターゲットからのスパッタも用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】先行技術の記録媒体におけるドメイン構造の単純化された図である。
【図2】2つのタイプの記録装置の構成、すなわち、長手方向(図2a)および垂直方向(図2b)、の斜視図である。
【図3】(a)及び(b)において、本発明に従う方法を実行するために用い得る装置を、正面図および平面図でそれぞれ示す。
【図4】次の高速熱処理操作における熱処理の前に、スパッタリング層が堆積される基板を通る断面図である。
【図5】既知の従来の垂直記録媒体の性能と本発明に従う方法の下で製造された記録媒体の性能との比較である。
【図6】さらなる展開/詳細を例示する。
【図7】さらなる展開/詳細を例示する。
【図8】さらなる展開/詳細を例示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子媒体の製造方法であって、
(a)白金、窒化ケイ素および真空中での熱処理の下で解離する磁性元素の窒化物を基板 上にスパッタリングするステップであって、スパッタリングは、所定の相対量の白金 、窒化ケイ素および磁性元素の窒化物を生成するようなものであるステップと、
(b)このようにして処理された基板に、真空中での高速熱処理操作を受けさせるステッ プであって、基板は、磁性元素の窒化物が解離し、拡散により窒素を放出して磁性元 素を後に残す温度まで所与の期間にわたって加熱されるステップと、
(c)基板を放冷するステップとを含み、
磁性元素は白金と合金を作って、実質的に単分散でありかつ窒化ケイ素中に実質的に均一に分布された粒子を形成する方法。
【請求項2】
窒化コバルトが磁性元素の窒化物として用いられ、形成された粒子がPtCo粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高速熱処理操作は、基板を周囲温度から>500℃まで30〜60秒間にわたって加熱する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の間に到達される温度は、正方晶形のPtCo粒子の形成を保証するようなものである請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
高速熱処理操作は、基板を周囲温度から600〜650℃の温度まで30〜60秒間にわたって加熱する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
垂直熱アシスト記録可能磁気媒体の製造方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載のナノ粒子媒体の製造方法を含み、保護最外層を設けるステップをさらに含む方法。
【請求項7】
保護最外層は、ステップ(a)における窒化ケイ素のスパッタリングを、白金および窒化コバルトのスパッタリングが停止した後も継続させることにより生成される窒化ケイ素層である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記継続されたスパッタリングは、約5nm〜10nm厚さの保護層を生成するのに十分である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒装置であって、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法に従って作られたPtCoナノ粒子媒体を触媒が含む触媒装置。
【請求項10】
実質的に、添付の本文および図面のいずれかの適切な組み合わせに関連して記載されるように磁気ナノ粒子を製造する方法。
【請求項1】
ナノ粒子媒体の製造方法であって、
(a)白金、窒化ケイ素および真空中での熱処理の下で解離する磁性元素の窒化物を基板 上にスパッタリングするステップであって、スパッタリングは、所定の相対量の白金 、窒化ケイ素および磁性元素の窒化物を生成するようなものであるステップと、
(b)このようにして処理された基板に、真空中での高速熱処理操作を受けさせるステッ プであって、基板は、磁性元素の窒化物が解離し、拡散により窒素を放出して磁性元 素を後に残す温度まで所与の期間にわたって加熱されるステップと、
(c)基板を放冷するステップとを含み、
磁性元素は白金と合金を作って、実質的に単分散でありかつ窒化ケイ素中に実質的に均一に分布された粒子を形成する方法。
【請求項2】
窒化コバルトが磁性元素の窒化物として用いられ、形成された粒子がPtCo粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高速熱処理操作は、基板を周囲温度から>500℃まで30〜60秒間にわたって加熱する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の間に到達される温度は、正方晶形のPtCo粒子の形成を保証するようなものである請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
高速熱処理操作は、基板を周囲温度から600〜650℃の温度まで30〜60秒間にわたって加熱する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
垂直熱アシスト記録可能磁気媒体の製造方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載のナノ粒子媒体の製造方法を含み、保護最外層を設けるステップをさらに含む方法。
【請求項7】
保護最外層は、ステップ(a)における窒化ケイ素のスパッタリングを、白金および窒化コバルトのスパッタリングが停止した後も継続させることにより生成される窒化ケイ素層である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記継続されたスパッタリングは、約5nm〜10nm厚さの保護層を生成するのに十分である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒装置であって、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法に従って作られたPtCoナノ粒子媒体を触媒が含む触媒装置。
【請求項10】
実質的に、添付の本文および図面のいずれかの適切な組み合わせに関連して記載されるように磁気ナノ粒子を製造する方法。
【図1】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【公表番号】特表2006−528401(P2006−528401A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530509(P2006−530509)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002118
【国際公開番号】WO2004/105007
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500530340)コベントリー ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002118
【国際公開番号】WO2004/105007
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500530340)コベントリー ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
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