説明

ナノ粒子材料の調製

周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の製造方法を説明する。該方法は、セレノール化合物の存在下で、前記第13族、第16族、及び第11族又は第12族イオンを含有するナノ粒子前駆体組成物の、ナノ粒子材料への転化を生じさせることを含む。又、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子を含む薄膜の製造方法、並びに前記ナノ粒子を含む印刷可能なインク調製物の製造方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期表の第16族からのイオンを含有するナノ粒子の調製方法を提供する。特に、技術は、例えば銅、インジウム及び/又はガリウム及びセレンを含有し、選択的に更に硫黄を含有する、「CIGS」タイプのナノ粒子を合成するために開発されているが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
光電池(太陽電池)は、広く受入れられるためには化石燃料のコストに張り合うコストで電気を生成する必要がある。これらの費用を低減するために、太陽電池の、光からの電気変換効率を増加させつつ材料及び製作費用を低減させなければならない。
【0003】
薄い活性層(〜2−4μm)内の材料が少量であるため、薄膜は本来、材料コストが低い。従って、高効率薄膜太陽電池を開発するために相当な努力がなされてきた。様々な材料が研究されたが、その中でカルコパイライト系装置(Cu(In及び/又はGa)(Se及び、選択的にS)、ここでは総称的に「CIGS」とする)は、大きな見込みを示し、多大な関心を集めている。CuInS(1.5eV)及びCuInSe(1.1eV)のバンドギャップは太陽スペクトルによく合致し、そのためこれらの材料に基づく光起電装置は効率的であると期待されている。これまでに、12.5%の効率を有する薄膜CuInS電池と、18%の効率を有する薄膜Cu(In,Ga)Se電池が記録されている。
【0004】
大抵のCIGS薄膜の製造方法では、高価な気相又は蒸着技術を必要とするが、ナノ粒子材料を薄膜内へ溶解させるか融合させて、ナノ粒子が合体して大粒径薄膜を形成することにより、薄膜を形成することが可能である。これは、金属酸化物ナノ粒子を用いて、続いて、Hでの還元、そしてセレン含有気体、通常HSeでの反応焼結ステップによって行うことが出来る。あるいは、そして好ましくは、既製のCIGSナノ粒子を用いて行うことが出来る。CIGSナノ粒子を用いることによって、Hでの金属酸化物の危険な還元と、有毒なHSeでのセレン化とが回避される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大粒径薄膜を形成する開始点としてナノ粒子CIGSタイプのナノ粒子(即ち、CIGS又は類似の材料)を用いるためには、CIGSタイプのナノ粒子は、幾つかの基本性質を有していなければならない。第1に、ナノ粒子は小さくなくてはならない。ナノ粒子の寸法が小さくなったとき、それらの物理的、電子、及び光学的特性が変化する可能性がある。粒子内でのより小さな寸法への電子の波動関数の拘束は、「量子閉じ込め」と呼ばれている。このサイズレジーム内にあるナノ粒子は、多くの場合量子ドットと呼ばれる。ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれて、対応する融点も低くなることが知られている。又、小さな粒子ほど密接に密集するであろう。そしてそのため、融解時に粒子が合体し易くなるかもしれない。第2に、狭いサイズ分布は非常に重要である。ナノ粒子の融点はそのサイズに関係しており、サイズ分布が狭いということは全ての粒子が略同一の温度で融解するということであり、それによって均一で高品質(均一な分布、良好な電気的特性)の膜が生じる。最後に、通常、ナノ粒子のための揮発性キャッピング剤が必要とされる。該キャッピング剤は比較的に緩やかな加熱で取り除くことが出来、そのためナノ粒子の融解時に炭素又は他の元素によって最終膜が汚染されることを回避することが出来る。
【0006】
CIGSタイプナノ材料の調製方法は多数知られている。これらは、多成分コロイド法、単一源前駆体法、及びソルボサーマル法を含んでいる。単一源前駆体法を除いて、知られた方法では通常、Cu、In及びGaのハロゲン化合物をセレン源と反応させる。通常はそれはセレン元素又はトリオクチルホスフィン(TOP)によって配位されたセレンである。しかしながらHSeとの反応が実証されている。
【0007】
水又はアセトニトリル内のCu(I)、In(III)、Ga(III)塩と、発泡HSe又はHSとの、安定剤としての働きをする1%のポリビニルアルコールを伴った反応によって、対応するCIGS材料のコロイド性ナノ粒子が生じた。調製されたナノ粒子のサイズは、水では2〜6nm及びアセトニトリルでは1〜4nmであった。(Gurin, Colloids Surf. A 1998, 142, 35-40)
【0008】
ピリジン内のCuI、InI、GaIと、メタノール内のNaSeとの不活性空気下の低温反応によって、ピリジンでキャップされたCu(In、Ga)Seナノ粒子が生じ、生成物内の元素の相対量が前駆体溶液内の量を反映する。生成物は非晶質であり、従って位相成分は確かめられなかった。しかしながら、サンプルの残留物をTGAのために400℃まで加熱すると、純粋なCIGSに位相形成を示した。TEMから測定される全体のサイズ分布は、10〜30nmと推定され、ナノ粒子の形状は、Cu/(In、Ga)率によって、球状から筒状まで変化した。(Shulz et al., J. Elect. Mat. 1998, 27, 433-437; Kim et al. J. Mech. Sci. Tech, 2005, 19, 2085-2090)
【0009】
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)内のInCl、CuCl及びTOPSeの高温(〜250℃)での反応の結果、TOPOでキャップされたおよそ5nmのサイズのCuInSeナノ粒子が生じた。330℃まで反応の温度を上昇させると、15〜20nmのサイズの粒子を生じた。(Malik et al. Adv. Mat. 1999, 11, 1441-1444; Arici et al. Thin Solid Films, 2004, 451-452, 612-618)
【0010】
CuCl、InClとドデカンチオールとの反応に続いて、180℃の温度でオクタデセン及びTOPSeを添加すると、反応時間によって6nmのナノ粒子から200nmのナノプレートまでのサイズの、ドデカンチオールでキャップされたCuInSeナノ材料が生じた。これらのナノ粒子は、サイズに依存する吸収スペクトルへの量子閉じ込め動作を示したが、重要なことに、光ルミネセンスは観察されなかった。著者は、他のキャッピング剤(例えばTOPO、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン又はこれらの配位子の組み合わせ)を用いても発明者自身の経験に合致するCuInSeが形成されないことに注目した。(Zhong et al. Nanotechnology, 2007, 18, 025602.)
【0011】
コロイド性CIGSタイプのナノ粒子を調製するために、単一供給源前駆体分子も研究された。ジオクチルフタレート内の単一供給源前駆体(PPhCuIn(SEt)及び(PPhCuIn(SePh)を200〜300℃の温度で熱分解することによって、それぞれCuInS及びCuInSeのナノ粒子が形成された。生成されたナノ粒子は、3〜30nmのサイズで、球形の形状だった。非配位性溶媒を用いたため、ナノ粒子は不溶性物質の集塊を形成した。(Castro et al. Chem. Mater. 2003, 15, 3142-3147)
【0012】
同様の単一の供給源前駆体(TOP)CuIn(SR)、ただしR=i―Pr又はt―Bu、は、ジオクチルフタレートにおいて光分解的に分解し、小さな(〜2nm)有機可溶性CuInSナノ粒子を生成した。(J. J Nairn et al. Nano Letters, 2006, 6, 1218-1223).
【0013】
CIGSナノ材料を調製するために、比較的低温で行え、有機金属や有毒な前駆体を必要としないソルボサーマル法が研究された。一般的に、ハロゲン化銅、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化ガリウム、セレン及び/又は硫黄を、溶媒(例えばベンゼン、エチレンジアミン又は水)で満たした非粘着コーティングのオートクレーブに加え、それを密封して、それから一定時間加熱する。この処理によって、反応物の化学量論組成を反映した元素組成及び反応における溶媒の相互作用で決定される形態を有するナノ材料が生じた。(Li et al. Adv. Mat. 1999, 11, 1456-1459; Lu et al. Inorg. Chem. 2000, 39, 1606-1607; Jiang et al. inorg. Chem. 2000, 39, 2964-2965; Xiao et al. J. Mater. Chem. 2001, 11, 1417-1420; Hu et al. Sol. State Comm. 2002, 121, 493-496; Chun et al. Thin Solid Films 2005, 480-481, 46-49; Gou et al. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 7222-7229). 例えば、密封されたオートクレーブにおいて、エチレンジアミン又はジエチルアミン内のCuCl、InCl、Seの化学量論量を180℃で15〜36時間反応させると、それぞれ、比較的大きなCuInSeナノウィスカ(幅3〜6nm、長さ30〜80nm)及びナノ粒子(直径15nm)を生じた。これらの材料の元素組成比は、反応物の化学量論に厳密に合致した。(Li et al. Adv. Mat. 1999, 11, 1456-1459)
【0014】
同様に、CuCl、In又はGa、及びベンゼン又は水における過剰Sの反応を密封されたオートクレーブにおいて200℃で12時間加熱することによって、ナノ結晶CuInS及びCuGaSをソルボサーマル的に調製した。CuInS及びCuGaSナノ粒子のサイズは、それぞれ5〜15nm及び35nmであった。(Lu et al. Inorg. Chem. 2000, 39, 1606-1607)
【0015】
上記の理由や他の理由で、比較的安価な方法(例えば、印刷又は吹付けであるがこれに限らない)でその後膜を形成するのに用いることができるナノ粒子の生成が望まれている。上述した現在の調製方法は、その後例えば膜に加工するのに今のところ適切でない。それは、これらの知られた方法では、何らかの側面のため、小さくて、低い融点と狭いサイズ分布を有し、揮発性のキャッピング剤を含むナノ粒子を生成することができないからである。例えば、メタノール/ピリジン内のCuCl、InCI及びNaSeの反応は、ピリジンでキャップされた広いサイズ分布のナノ粒子を生じる。更に、TOPO内のCuCl、InCI及びTOPSeの反応は、TOPOでキャップされた適度に狭いサイズ分布を有するナノ粒子を生ずるが、それは不揮発性のキャッピング剤を有する。単一供給源前駆体の場合、結果として生じるナノ粒子は適度に狭いサイズ分布を有するが、不揮発性のキャッピング剤を有し、そして単一供給源前駆体に必要な合成によって時間処理は増大する。更に、単一の供給源前駆体の化学量論は固定されており、そのため、膜の最適化に必要な膜化学量論の微調整ができない。ソルボサーマル法によって調製されるナノ粒子は通常、より大きく、更に、溶解性を促進させる調製後の処理を必要とする。
【0016】
本発明の目的は、ナノ粒子の現在の生成方法に伴う上述した問題の1つ以上を取り除くか又は緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の製造方法であって、セレノール化合物の存在下で、前記第13族、第16族、及び第11族又は第12族イオンを含有するナノ粒子前駆体組成物の、ナノ粒子材料への転化を生じさせることを含む方法を提供する。
【0018】
揮発性の配位子によってキャップされる、狭いサイズ分布を有する小さなナノ粒子(〜2nm〜50nm)を製造することができる本発明によって、ナノ粒子、特にCIGSタイプのナノ粒子の新たな調製方法が提供される。第13族、第16族、及び第11族又は第12族のイオンの全てがナノ粒子のコアに含まれ、かつ/又は、ナノ粒子コア上に一つ以上シェル層が提供されるナノ粒子においては、全てがナノ粒子の同じ層に含まれることが、特に好ましい。更に、該方法は、様々なサイズ及び化学量論の材料を製造するように調整できる。該方法は、AB1−xB´Se2―yの形の三元又は四元化合物の生成に適用できる。ただし、Aは、Cu、Zn、Ag及びCdからなる群から選択され、B及びB´は、Al、In及びGaからなる群から、それぞれ独立に選択され、Cは、S及びTeからなる群から選択され、0≦x≦1、0≦y<2であり、x>0、B´≠Bという条件である。本発明は、セレノール化合物(例えばアルキル又はアリールセレノール化合物であるがこれに限らない)を用いて、任意の望ましい化学量論のCIGSタイプのナノ粒子を製造する簡単な方法に関する。セレノール化合物を用いることで得られる重要な利点は、好ましいセレン含有ナノ粒子がセレン以外のカルコゲン、例えば硫黄によって汚染されることが回避されることである。ここでは示していないが、比較試験において、発明者がセレノール化合物をチオール化合物に置き換えたところ、望ましくない水準のCuInSeナノ粒子の硫黄汚染が観察された。従って、本発明の第1及び第2の態様の方法は、従来の方法よりも著しく純粋な(すなわち汚染物質を有しない)セレン含有ナノ粒子を製造する手段を提供する。この利点に加えて、ナノ粒子が核生成及び成長を経る前に、セレノール化合物が1つ以上の反応種を有する反応中間体を安定させる及び/又は形成するのに役立っているかもしれないと考えられる。
【0019】
CIGSタイプの材料の小さなナノ粒子を用いることで、低圧及び真空技術を必要とする、現在用いられている薄膜製作方法よりも非常に安価な薄膜製作方法を用いることが容易になる。更に、CIGSタイプの材料の既成のナノ粒子は、基板上に蒸着できるインクやペーストに調製でき、該蒸着は、印刷(例えばスクリーン印刷法、インクジェット印刷、接触印刷、グラビア印刷)又は他の方法(例えば、簡単なドクターブレードコーティング、スピンコーティング、補助エアゾール吹き付けコーティング、吹き付けコーティング、しかしこのような方法に限らない)を含む様々な技術によってなされる。
【0020】
本発明の第2の態様において、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の製造方法であって、テルロール化合物の存在下で、前記第13族、第16族、及び第11族又は第12族イオンを含有するナノ粒子前駆体組成物の、ナノ粒子材料への転化を生じさせることを含む方法が提供される。従って、本発明の第1の態様に関して上で説明されるように、テルロール化合物をセレノールの代替として用いてもよい。好ましくは、本発明の第1の態様において用いられるセレノール化合物の好ましい実施形態に関して後述するように、テルロール化合物は有機基を含む有機テルロール化合物である。
【0021】
本発明の第3の態様は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子を含む薄膜の製造方法であって、本発明の第1又は第2の態様に従ってナノ粒子を製造することと、前記薄膜を形成することとを含む方法を提供する。
【0022】
前記膜の形成は、前記薄膜を支持層上に形成することを可能にする条件下で、前記支持層上へナノ粒子を蒸着することを含んでもよい。ナノ粒子の蒸着は、任意の望ましい方法を用いて行ってもよく、例えば、印刷、コーティング又は吹付けであるが、これに限らない。
【0023】
本発明の第4の態様は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子を含む印刷可能なインク調製物の製造方法であって、本発明の第1又は第2の態様に従ってナノ粒子を製造することと、前記ナノ粒子を適切なインクベースと合わせることとを含む方法を提供する。
【0024】
本発明の第5の態様は、本発明の第1又は第2の態様に従って製造されるナノ粒子材料を含む光起電装置層に関するものである。
【0025】
本発明の第6の態様は、本発明の第1又は第2の態様に従って製造されるナノ粒子材料を含む層を具える光起電装置を提供する。
【0026】
本発明の第7の態様によれば、光起電装置の製造方法であって、材料の第1層を提供することと、本発明の第1の態様に従って製造されるナノ粒子材料を含む層を前記第1層上に提供することとを含む方法が更に提供される。
【0027】
第8の態様は、本発明の第1の態様に従って製造される、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子と、適切なインクベースとを含む印刷可能なインク調製物を提供する。
【0028】
第9の態様は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の多くとも約50%w/vと、適切なインクベースとを含む印刷可能なインク調製物を提供する。
【0029】
第10の態様は、第1及び第2のイオンを含有する半導体ナノ粒子を含む薄膜の製造方法であって、前記ナノ粒子を含む調製物の層を支持層上に蒸着することと、その後、前記蒸着されたナノ粒子含有層を静的雰囲気下でアニール化することとを含む方法を提供する。前記静的雰囲気は、好ましくは実質的に不活性雰囲気であり、それは選択的にセレンを含む。
【0030】
前記第1層は、光起電装置においてナノ粒子含有層の近傍に位置することが望ましい任意の材料を含んでもよい。好ましくは、前記第1層はモリブデンを含む。ナノ粒子材料を含む前記層上に任意の適切な材料の第2層が提供されてもよい。例としてのみ挙げるが、前記ナノ粒子含有層は、n型材料を含んでもよく、それは例えば硫化カドミウムであるがこれに限らない。
【0031】
本発明の第1の態様を構成する方法において、任意の望ましいセレノール化合物が用いられてもよい。好ましくは、前記セレノール化合物は有機セレノール化合物であり、それは最も好ましくは揮発性の有機セレノール化合物である。有機化合物が「揮発性である」というのは、関連する技術分野の当業者によってよく理解され、通常、揮発性の化合物が関連する他の種と比較して比較的低い温度及び/又は圧力で蒸発するだろう化合物を指す。このように、揮発性の有機セレノール化合物を用いることによって、前記ナノ粒子から前記セレノールが容易かつ安価に(例えば加熱によって)取り除かれる利点が得られる。
【0032】
前記有機セレノール化合物は、化学式R―SeHによって表されてもよい。ただし、Rは置換又は非置換の有機基であり、すなわち、炭素原子に結合される1以上の水素原子は、非水素原子に置き換えられることができる。有機基は、飽和することができるか又は任意の適切な不飽和度を有することができる。前記有機基は好ましくは直鎖、分岐、又は環式の有機基であり、環式は炭素環基又は複素環基でもよい。
【0033】
好ましくは、有機基は、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールからなる族から選択される。有機基は、2〜20の炭素原子、より好ましくは4〜14の炭素原子、そして最も好ましくは6〜10の炭素原子を含むアルキル、アルケニル又はアルキニル基でもよい。前記セレノール化合物が1―オクタンセレノールであることが特に好ましい(下の実施例1及び2において用いている様に)。更に好ましいセレノール化合物は、1―ドデカンセレノール又は1―ドデシルセレノールである(下の実施例3、4及び5において用いている様に)。1―ドデカンセレノールは、1―オクタンセレノールより揮発性でないが、両化合物は前記本発明の前記方法で都合良く用いるのに十分に揮発性である。
【0034】
あるいは、前記有機基は、4〜14の炭素原子を含むアリール基でもよい。より好ましくは前記有機基は6〜10の炭素原子、更に好ましくは6〜8の炭素原子を含むアリール基である。
【0035】
好ましくは、上記に規定した本発明の態様に従ってナノ粒子を形成する方法は、前記ナノ粒子前駆体組成物の少なくとも第1部分を溶媒中に分散させることを含む。前記ナノ粒子前駆体組成物の第1部分は、前記第13族イオン、及び第11又は12族イオンのうちの少なくとも1つの供給源を含んでもよい。好ましくは、前記第1部分は、前記第13族イオンの供給源及び第11又は12族イオンの供給源を含む。前記前駆体組成物の前記ナノ粒子の材料への転化は、任意の適切な溶媒において実行されてもよい。加熱によって重大な溶媒の減少なくセレノール化合物の除去を容易にするよう、溶媒が前記セレノール化合物より高い沸点を有することが好ましい。好ましくは、溶媒は、高い沸点(例えば約200℃以上)の溶媒で、最も好ましくは非配位性溶媒である。溶媒が有機溶媒、例えば飽和又は不飽和長鎖炭化水素溶媒であることが好ましい。好ましい溶媒は長鎖を含み、例えばC―C24、アルカン又はアルケン、例えばオクタデセン(C1836)であり、それは250℃を超える沸点を有する。
【0036】
前記発明の方法の好ましい実施形態において、前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第1部分の添加の後、溶媒を第1の温度に加熱した。該第1の温度は約70〜170℃でもよく、より好ましくは約90〜150℃、そして更に好ましくは約100〜140℃である。最も好ましくは、前記第1の温度は約140℃である。前記加熱は、任意の適切な時間行ってよく、好ましくは約10〜40分間、より好ましくは約20〜30分間である。
【0037】
好ましくは、セレノール化合物を、前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第1部分を含む溶媒に添加する。セレノール化合物の添加後、溶媒を約100〜200℃の温度まで加熱してもよく、より好ましくは約120〜160℃、そして最も好ましくは約160℃まで加熱してもよい。前記加熱は任意の望ましい時間行うことができ、例えば、最長で約30分間加熱を行ってもよい。
【0038】
溶媒において分散する前記ナノ粒子前駆体組成物の第1部分及びセレノール化合物を含む反応混合物の加熱に続いて、前記ナノ粒子前駆体組成物の第2部分を反応混合物に添加することが好ましい。
【0039】
好ましくは前記ナノ粒子前駆体組成物の第2部分は、第16族イオンの供給源を含む。確実にナノ粒子成長がよく制御された方法で進行するように、前記ナノ粒子前駆体組成物の第2部分は、比較的ゆっくり添加、例えば滴加されることが好ましい。
【0040】
前記ナノ粒子前駆体組成物の第2部分の添加中及び/又は添加後に、ナノ粒子前駆体組成物及びセレノール化合物を含む溶媒を第2の温度に加熱することが好ましい。好ましくは、該第2の温度は前記第1の温度より高い。例えば、前記第2の温度は、好ましくは約120〜220℃、より好ましくは約140〜200℃、更に好ましくは約150℃〜170℃である。前記第2の温度が約160℃であることが特に好ましい。第2の温度への前記加熱は、任意の適切な時間行ってもよい。最長で約10時間にわたって第2の温度に加熱することが適切でもよいことが分かっている。一旦溶媒が第2の温度まで加熱されると、所望の特性を有するナノ粒子を提供するために必要な時間、溶媒をおよそその温度に維持することが好ましい。これに関して適切な時間は、最長で約10時間でもよく、より好ましくは約1〜8時間、そして最も好ましくは約4〜7時間である。
【0041】
好ましくは、第1の第13族イオン―配位化合物、例えばアセテート化合物、例えば下の実施例1及び2にて用いられるインジウムアセテート又はガリウムアセテートによって、第13族イオンはナノ粒子前駆体組成物に提供される。ナノ粒子は、第13族イオンの少なくとも1つの更なる種を含有してもよく、その場合、第13族イオンの前記少なくとも1つの更なる種は、第2の第13族イオン―配位化合物によってナノ粒子前駆体組成物に提供されてもよい。適切な第2の第13族イオン―配位化合物は、アセテート化合物である。
【0042】
ナノ粒子前駆体組成物は、第11族イオン―配位化合物を含んでもよく、それは例えばアセテート化合物(例えば後述の実施例において用いられるように酢酸銅)でもよい。
【0043】
ナノ粒子前駆体組成物は、第12族イオン―配位化合物を含んでもよく、それは例えばアセテート化合物、例えば酢酸亜鉛である。
【0044】
本発明の上記に規定された態様に従って製造されるナノ粒子において、第16族イオンは、好ましくはセレンイオンである。セレンイオンの少なくとも一部は、セレノール化合物によって提供されてもよい。あるいは、又は加えて、ナノ粒子前駆体化合物において提供される、例えばトリオクチルホスフィンセレニドであるがこれに限らないセレン化合物によってセレンイオンの少なくとも一部が提供されてもよい。
【0045】
本発明の上記に規定された態様に従って製造されるナノ粒子は更に、硫黄及び/又はテルルイオンを含んでもよく、それらは、これらのイオンの任意の都合のよい供給源、例えばそれぞれトリオクチルホスフィンスルフィド及び/又はトリオクチルホスフィンテルリド、によって提供されてもよい。
【0046】
本発明の上記に規定された態様のナノ粒子において提供した第13族イオンは、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる族から選択されてもよい。ナノ粒子は、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる族から選択した第13族イオンの少なくとも1つの異なる種を更に含んでもよい。
【0047】
本発明の上記に規定された態様の好ましい実施形態において、前記方法を用いて形成されるナノ粒子は、ガリウム及びインジウムイオンを含有する。
【0048】
ナノ粒子は、銅及び銀からなる族から選択した第11族イオンを含有してもよい。ナノ粒子は、亜鉛又はカドミウムからなる族から選択した第12族イオンを含有してもよい。
【0049】
本発明の上記に規定された態様の更なる好ましい実施形態において、ナノ粒子は、銅、インジウム、ガリウム及びセレンイオンを含有し、硫黄イオンを更に含有してもよい。
【0050】
本発明の方法を用いて生成されるナノ粒子は、化学式(I)によって表すことができる。
AB1−xB´Se2―y 化学式(I)
ただし
Aは、Cu、Zn、Ag及びCdからなる族から選択され、
B及びB´は、Al、In及びGaからなる族から、それぞれ独立に選択され、
Cは、S及びTeからなる族から選択され、
0≦x≦1、
0≦y<2であり、
x>0、B´≠Bという条件である。
【0051】
化学式(I)において、Aは好ましくは銅である。更に、0<x≦1、Bはガリウムであり、B´はインジウムであることが好ましい。更に好ましくは0<y<2であり、Cは硫黄である。
【0052】
本発明の方法を用いて生成されるナノ粒子は、CuInSe、CuInGa1―xSe、CuGaSe、ZnInSe、ZnInGa1―xSe、ZnGaSe、AgInSe、AgInGa1―xSe、AgGaSe、CuInSe2―y、CuInGa1―xSe2―y、CuGaSe2―y、ZnInSe2―y、ZnInGa1―xSe2―y、ZnGaSe2―y、AgInSe2―y、AgInGa1―xSe2―y、AgGaSe2―yからなる族から選択されてもよく、ただし0≦x≦1及び0≦y<2である。
【0053】
上記のリストされた材料のいずれにおいても、セレンはテルルに置き換えてもよい。これは、ナノ粒子を製造するために用いられる手順において、セレノールの代わりにテルロールを用いて達成されてもよい。
【0054】
本発明の上記に規定された態様の方法は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族からのイオンを含有するナノ粒子の任意の望ましい形(例えばサイズ、形状、位相数等)を製造するために用いてもよい。本発明の上記に規定された態様の方法は三元又は四元化合物を含むナノ粒子を製造するのに特に適している。更に、本発明の上記に規定された態様に従って製造されるナノ粒子に任意の望ましい数の更なる加工ステップを行うことができることが理解されるだろう。例えば、半導体又は非半導体材料の任意の望ましい数の外側のシェルをナノ粒子の表面に成長させることができる。更に、一旦ナノ粒子が形成されると、ナノ粒子の表面原子は通常キャッピング剤に配位されるだろう。そして、それはまず、発明の方法において用いられるセレノール化合物をおそらく含むだろう。揮発性のセレノール化合物を用いた上述の好ましい実施形態において、セレノール・キャッピング剤は加熱によって容易に取り除かれて「裸の」ナノ粒子を生じさせる。「裸の」ナノ粒子には、任意の更なる配位性配位子(例えばルイス塩基)を加えることができ、それによって、結果として生じるナノ粒子は任意の望ましい特性を有する。例えば、ナノ粒子の溶解性及び/又は他の種に結合するナノ粒子の能力を変更する更なるキャッピング剤を加えることが可能である。
【0055】
本発明の第4の態様は、本発明の第1又は第2の態様に従ってナノ粒子を製造することと、前記ナノ粒子を適切なインクベースと合わせることによって印刷可能なインク調製物の製造方法を提供する。
【0056】
好ましくは、前記インクベースは、芳香族化合物、脂肪族化合物及びセレノール化合物からなる族から選択されてもよい1以上の有機化合物を含む。好ましい実施形態において、前記インクベースは、トルエン及びドデカンセレノールを含む。
【0057】
結果として生じるインク調製物が前記ナノ粒子の多くとも約50%w/v、より好ましくは前記ナノ粒子の約10〜40%w/v、そして最も好ましくは前記ナノ粒子の約20〜30%w/vを含むのに十分な量の前記ナノ粒子を前記インクベースと合わせることが好ましい。
【0058】
前記ナノ粒子と前記インクベースとを合わせることによって、その後不必要なガス状の副生成物を取り除くために処理される溶液を製造してもよい。
【0059】
本発明の第1の態様に従って製造される、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子と、適切なインクベースとを含む印刷可能なインク調製物を提供する本発明の第8の態様において、前記調製物は、前記ナノ粒子の多くとも約50%w/vを含むことが好ましい。
【0060】
上述のように、第9の態様は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の多くとも約50%w/vと、適切なインクベースとを含む印刷可能なインク調製物を提供する。
【0061】
第8及び/又は第9の態様に関して、前記インクベースが1以上の有機化合物を含むことが好ましく、それは芳香族化合物、脂肪族化合物及びセレノール化合物からなる族から選択されてもよい。好ましい実施形態において、前記インクベースは、トルエン及びドデカンセレノールを具える。
【0062】
インク調製物は、前記ナノ粒子の約10〜40%w/v、又は、より好ましくは前記ナノ粒子の約20〜30%w/vを含んでもよい。
【0063】
上述のように、本発明の第3の態様は、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子を含む薄膜の製造方法であって、本発明の第1又は第2の態様に従ってナノ粒子を製造することと、前記薄膜を形成することとを含む方法を提供する。前記膜の形成は、前記薄膜を支持層上に形成することを可能にする条件下で、印刷、コーティング又は吹付けによって前記支持層上へナノ粒子を含む調製物を蒸着することを含むことが好ましい。
【0064】
ナノ粒子調製物の蒸着は任意の適切な方法を用いて達成されてもよいが、好ましくはドロップキャスティング及び/又はスピンコーティングを含む。
【0065】
スピンコーティングが適用される場合、前記スピンコーティングは最高約5000回転数/分の回転速度、より好ましくは約500〜3500回転数/分の回転速度、そして最も好ましくは約2000回転数/分の回転速度で行ってもよい。あるいは、又は加えて、前記スピンコーティングは、最長で約300秒間、より好ましくは約20〜150秒間、そして最も好ましくは約60秒間にわたって行ってもよい。
【0066】
好ましくは、前記膜の形成は、少なくとも1つのアニーリングサイクルを含み、該又はそれぞれのアニーリングサイクルは一連のステップを含み、該ステップにおいて、前記支持層に蒸着されたナノ粒子調製物の温度を繰り返し上昇させ、その後、前記上昇した温度に所定の時間維持し、その後ナノ粒子調製物を冷却して前記膜を形成する。
【0067】
前記少なくとも1つのアニーリング処理の間、ナノ粒子調製物を加熱する最高温度が、加熱を行う圧力におけるセレンの蒸発温度より低く、かつ/又は約450℃以下、より好ましくは約410℃以下であることが好ましい。これは、ナノ粒子を含む調製物/膜からのセレン化物イオンの喪失が少なくとも最小化される、又はより好ましくは実質的に回避されることを確実にするためである。
【0068】
好ましくは、前記一連のステップの各々を実行することで、ナノ粒子調製物の温度が約10〜70℃上昇する。最初のステップを実行することで、後のステップより大きく温度を上昇させてもよい。例えば、このようなステップの第1は約50〜70℃の温度上昇を生じさせてもよい。そして、約10〜20℃温度が上昇する1以上の以降のステップが続く。
【0069】
前記一連のステップの各々は、好ましくは最高約10℃/分の速度、より好ましくは約0.5〜5℃/分の速度、そして最も好ましくは約1〜2℃/分の速度で、ナノ粒子調製物の温度を上昇させることを含む。好ましい実施例において、最初のステップは、後のステップより速い速度で温度を上昇させてもよい。例えば、好ましい実施形態で、1又は2の最初のステップでは、約8〜10℃/分で温度を上昇させる加熱を含んでもよく、後のステップは約1〜2℃/分で温度を上昇させてもよい。
【0070】
上記のように、ステップはそれぞれ、加熱し、それからナノ粒子含有調製物を所定の時間その上昇した温度に維持することを含む。該所定の時間は、最長で約60分でもよく、より好ましくは前記所定時間は約5〜40分であり、そして最も好ましくは約10〜20分である。
【0071】
好ましい実施形態において、前記又は少なくとも1つのアニーリングサイクルは、静的雰囲気、実質的に不活性雰囲気、及び/又はセレン含有雰囲気の下で行う。
【0072】
前記ナノ粒子含有膜の特に好ましい方法形成は第1及び第2のアニーリングサイクルを含み、前記第1のアニーリングサイクルはナノ粒子調製物の温度を第1の最高温度に上昇させ、前記第2のアニーリングサイクルはナノ粒子調製物の温度を第2の最高温度に上昇させ、前記第2の最高温度は前記第1の最高温度より高い。
【0073】
前記第2の最高温度が約450℃以下であり、かつ/又は、前記第1の最高温度が約300℃以下であることが好ましい。前記第2のアニーリングサイクルは、好ましくは静的な雰囲気において実行される。
【0074】
前記ナノ粒子調製物が前記ナノ粒子及び適切なインクベースを含むことが好ましい。前記調製物は、好ましくは本発明の第8の態様に従っている。
【0075】
単なる例としてであるが、本発明の好ましい非限定的な実施例を、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、1−オクタンセレノールでキャップされたCu/In/Seナノ粒子(NP)のTGAトレースである。窒素雰囲気下で加熱速度は10℃/分である。
【図2】図2は、Cu/In/SeのNPの紫外/可視及び光ルミネセンススペクトルの組み合わせであり、後述の実施例2の方法論を用いて得た量子閉じ込め効果を示している。PLmax=727nm、FWHM=117nm。
【図3】図3は、正方晶系のカルコパイライト(JCDPS 40―1487)CuInSe(棒)と比較した、後述の実施例2の方法論を用いて得たCu/In/SeのNPのサンプル(線)の粉末XRDパターンである。
【図4】図4は、後述の実施例2の方法論を用いて得たCu/In/SeのNPサンプルの粉末XRDパターンであり、背景を減算し、ガウス関数によってピークをフィットしている。
【図5】図5はCu/In/SeのNP(大きな画像)及び単一のNP(差し込み図)のTEM画像であり、スケールバーはそれぞれ20nm及び5nmである。
【図6】図6は、本発明に従って生成されるCIGSタイプ材料を含む例示的な光起電装置の概略図である。
【図7】図7は、実施例3において後述する手順において測定されるCu/In/SeのNPの紫外/可視及び光ルミネセンススペクトルの組み合わせである。
【図8】図8は、本発明に係るCu/In/SeのNPを含む膜を製造するために用いられる装置の模式的な断面図である。
【図9】図9は、本発明に係るCu/In/SeのNPを含む膜を製造するために用いられる装置の模式的な断面図であり、高温アニーリングの間、Cu/In/Se膜を入れるための真空筒を装置が具えている状態である。
【図10】図10は、Cu/In/Se量子ドットの薄膜、及び実施例5において後述するように調製されるCu/In/Se量子ドットのアニール化した薄膜の粉末XRD回折図形を重ね合わせたものである。
【0077】
実施例1
Cu(I)アセテート(1mmol)及びIn(III)アセテート(1mmol)を、清潔で乾燥したRBフラスコに入れる。反応混合物にオクタデセンODE(5mL)を加えて真空下で30分間100℃で加熱した。フラスコを窒素で逆充填し、温度を140℃に上昇させる。1―オクタンセレノールを注入し、温度は120℃に下降する。結果として生じるオレンジ懸濁液を撹拌しながら加熱し、温度が140℃に到達するときに、透明なオレンジ/赤の溶液が得られる。この温度を30分間維持し、1Mのトリ―オクチル―ホスフィンセレニドTOPSe(2mL、2mmol)を滴加し、溶液を160℃で加熱する。所望の波長に到達するまでPLを監視し、その後冷却して、結果として生じるオイルをメタノール/アセトン(2:1)で4〜5回洗浄し、最終的にアセトンで沈殿させて分離させる。
【0078】
実施例2−大量製造
窒素下でTOP(60mL)にSe粉末(10.9、138mmol)を溶解させることによって、TOPSeの原液を調製した。乾燥させるために、脱気したODEを、Cu(I)アセテート(7.89g、64.4mmol)及びIn(III)アセテート(20.0g、68.5mmol)に添加した。反応器を空にし、10分間140℃で加熱した。そして、Nによって逆充填し、室温に冷却する。1―オクタンセレノール(200mL)を添加して明るいオレンジの懸濁液を生成した。フラスコの温度は140℃に上昇し、120℃での反応から酢酸を精製した。140℃に到達すると、TOPSe溶液を1時間にわたって滴加した。3時間後に、温度は160℃まで上昇した。反応の経過は、周期的に反応から一定分量を取り、紫外/可視及び光ルミネセンススペクトルを測定することによって監視した。7時間後に、反応を室温に冷却して、結果として生じる黒油をメタノールによって洗浄した。アセトンの添加によって微細な黒色材料がオイルから沈澱するまで、メタノールの洗浄を続けた。この黒い沈澱を、遠心分離によって分離し、アセトンによって洗浄して、真空下で乾燥させた。収率:31.97g
【0079】
TGA分析(図1)によって、この方法によって製造されるCIGSナノ粒子が、おそらく残留溶媒のため室温(RT)と150℃の間で0.17%w/wを失うことが分かる。そして、1―オクタンセレノールキャッピング剤を失うことによって150℃と400℃の間で更に33.13%w/wを失う。更に、キャッピング剤は完全に取り除かれ、最終の膜組成物が生じない。しかしながら、キャッピング剤は、異なる配位子との交換でもよい。
【0080】
有機材料の最外側層(キャッピング剤)は、インク又はペーストの形状のときに、粒子凝集を抑制し、更にナノ粒子を周囲の化学環境から保護するのに役立つ。発明の方法の研究時に、キャッピング剤は、その中でナノ粒子調製が行われる溶媒であり、それはすなわちルイス塩基化合物であるセレノールである。しかしながら、外側の配位子は、炭化水素のような不活性溶媒において希釈される他のルイス塩基化合物によって置き換えることができる。そしてそれによってナノ粒子の表面に供与体タイプ配位が可能である孤立電子対があり、それは単座又は多座配位子を含むがこれに限らず、該配位子は、例えばホスフィン(トリオクチルホスフィン、トリフェノールホスフィン、t―ブチルホスフィン)、ホスフィンオキシド(トリオクチルホスフィンオキシド)、アルキルホスホン酸、アルキルアミン(ヘキサデシルアミン、オクチルアミン)、アリールアミン、ピリジン、長鎖脂肪酸及びチオフェンであるが、これらの材料に限定されない)。
【0081】
TGA残留物、すなわち1―オクタンセレノールキャッピング剤が取り除かれただけのCu/In/Seコア、の誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICPAES)分析(Cu、In、Se)によって、Cu1.00、In1.22、Se2.34及び0.82のCu/Inの割合に対応してCu16.6%、In36.6%、Se48.3%が提供された。
【0082】
図2は、トルエン溶液内のCISeのNPの吸収及び光ルミネセンススペクトルを示す。吸収スペクトルは、広い肩部を示し、後部はより長い波長となっている。吸収バンド端(約730nm)は、バルクCuInSe(約1200nm)のものと比較して青方偏移している。吸収及びPLスペクトルの形状によって、粒子が狭いサイズ分布を有することが示唆される。粒子の平均サイズはCuInSe(10.6nm)のボーア半径より小さいため、青方偏移は量子閉じ込め効果に起因する。NPが成長するにつれて波長が赤方偏移する弱いPLが観察される。
【0083】
CISeのQDの粉末XRDパターンを図3に示しており、それはQDの結晶性質を示す。カルコパイライトCuInSeは二相を有し、正方晶系で、立方体である。回折図形のそれぞれのピークは、適切な参照パターン、この場合は正方晶系のカルコパイライト構造(JCDPS 40―1487)にスライドすることができる。基線減算の後、パターンは、ガウス関数によってフィットされ、そのピーク位置及びFWHMをシェラー方程式に入れることができる(d=0.9λ/Acosθ、λ=X線波長、A=FWHM)粒子サイズを2nmと推定する。シェラー公式は、X線図が重なりピークを有するために不明確であると知られている。TEM画像(図5)は、5nmの平均直径を有するほぼ単分散の球状ナノ粒子を示す。
【0084】
Cu:Inアセテートの最初の割合を変化させることによって最終的なQDのCu/In割合を制御することが可能である。QDの最終的な元素組成比は、QDのサイズに関連するPL発光波長に関連すると思われる。
【0085】
ナノ粒子膜成長は、外部加熱源を用いる等、任意の加熱方法によって開始されてもよい。熱分解又はソルボサーマルの条件を用いることにより加熱してもよい。ここで用いられる「ソルボサーマル」という用語は、粒子成長を開始させて持続させるように反応溶液において加熱することを指す。この方法を説明するために時に用いられる更なる用語としては、「サーモルソルボル(thermolsolvol)」「溶液―熱分解」、又は「リオサーマル」がある。
【0086】
本発明の更なる態様は、本発明に従って製造されるCIGSタイプ材料の層を含むように製造される光起電装置(例えば太陽電池)に関する。このような装置の例示的であるが非限定的な実施例を図6において図示する。この図において表される装置は太陽電池1であり、ガラス基層4上に従来のMo層3が支持され、その上にp型CuInGaSeの層2が蒸着される。CIGS層2の上に、n型CdSの薄層5が形成され、その上にZnOの層6及びZnO:Alの層7が蒸着されており、その上にNi/Al接触8が提供される。
【0087】
実施例3
1―ドデカンセレノールを用いたCISeナノ粒子調製
Cu(I)アセテート(3.220mmol)及びIn(III)アセテート(3.424mmol)を、清潔で乾燥した丸底フラスコに入れた。反応混合物にオクタデセン(ODE)(15mL)を添加し、それを真空下で30分間140℃で加熱した。フラスコを窒素で逆充填し、温度を160℃に上昇させた。1―ドデカンセレノール(10mL)を注入し、温度は140℃に下降した。結果として生じるオレンジ溶液を撹拌しながら加熱し、温度を15分間維持した。それから、1MのTOPSe(6.84mL、6.84mmol)を25分にわたって滴加し、溶液温度を160℃に維持した。所望の波長(図7を参照)に到達するまで、光ルミネセンスを監視し、その後冷却して、結果として生じるオイルをメタノール/アセトン(2:1)で4〜5回洗浄し、最終的にアセトンで沈殿させて分離させた。収率1.086g、元素分析Cu9.69%、In22.36%。
【0088】
実施例4
CuInSe量子ドットインクの調製
250mgの固体のCuInSe材料(CISのQD)を約900μlのトルエン及び約100μlのドデカンセレノールに添加して25%w/vのCuInSe溶液を作製することによって、CuInSe材料の1mlの溶液を調製した。CISのQD材料の組成は、Cu(1.00)In(1.36)Se(2.46)であり、0.74のCu/In比を有する。混合物を超音波で分解してCISのQDを溶解しやすくし、その後、溶液全体を濾過した。濾過した溶液を12000回転数/分で5分間遠心分離し、セレノールの酸化によってもたらされる残留気体を取り除いた。
【0089】
実施例5
製作量子ドット(QD)薄膜製造
Mo―ガラス基板調製
シートからMo―ガラス基板をおよそ1cm×2cmの断片に切断した。該Mo―ガラス基板断片を、洗剤で洗浄して、蒸留水で洗い落した。この後、Mo―ガラス基板をアセトンによっても洗浄した。
【0090】
スピンコーティング
実施例4のように調製されたCISのQDインク溶液を、ピペットを用いて投与して、Mo―ガラス基板をスピンコーティングした。該基板を静止させて、溶液を該基板上へ液滴流延した。コーティングされたMo―ガラス基板をそれから2000回転数/分で60秒間回転させた。より厚い膜を所望の場合、より低い回転速度を用いてもよい。より薄い膜が必要な場合、より高い回転速度を用いてもよい。
【0091】
第1段階アニーリング
図8に関して、上述のように形成したCIS/Mo―ガラス膜(1)を石英アニールチューブ(2)の中に入れ、該チューブを環状炉(3)内に入れた。窒素(N)供給源はチューブ(2)の一端に接続しており、チューブ(2)の他端は漂白剤貯蔵部(4)に接続している。前記炉(3)内で、下の表1に記載の温度プロフィールが、280℃まで続いた。アニーリングの後、炉の冷却に伴って膜を冷却させた。すなわち膜を環状炉内部で保管した。これは、あまりに急速な冷却速度によって、膜にクラックが発生し始めている場合、それを悪化させたり加速することを回避するためである。

【0092】
再コーティング及びアニーリング
スピンコーティング及びアニーリングの上記手順を更に2回繰り返し、かなり厚い膜(約800nm)を製造した。この時までに、膜は暗褐色/黒色に変化し、光沢/鏡状仕上げをした。
【0093】
280℃を上回る第2段階アニーリング
280℃を上回るアニーリングで膜からSeが失われるのを制限するために、CIS/Mo膜を静的N雰囲気において加熱した。図9を参照して、真空筒(5)を空にして、それからNを充填した。密封された真空筒(5)を窒素供給に接続し、不活性雰囲気を維持しながら膨張/圧力が解放されるようにした。前記炉(3)の中では、下の表2に記載の温度プロフィールが続いた。そしてその後、最終的なアニーリングした膜を、炉の冷却に伴って膜を冷却させた。

【0094】
膜特徴
上述のように製造された膜は、1〜2nmRMSの表面粗さで800nmの厚みを有した。標準的な方法を用いて測定した表面抵抗率は、範囲10kOhms〜50kOhmsの範囲内である。それはCIGS膜の最適の膜比抵抗と整合しており、それは最高約200kOhmsであり、より好ましくは20kOhms〜200kOhmsである。
【0095】
図10は、CuInSe量子ドットの薄膜、及びCuInSe量子ドットのアニーリングした薄膜の粉末XRD回折図形を重ね合わせたものである。40度の大きなピークは、アニーリングした薄膜が蒸着した、モリブデンコーティングしたガラス基板のモリブデンに起因する。
【0096】
XRDデータによって、製造された膜がCuInSe膜であったこと、具体的には、セレン含有量が膜形成の後も維持されたことが確認される。両方のXRDパターンによって、CuInSe量子ドットが正方晶系のカルコパイライト構造を有することが確認される。重要なことに、正方晶系のカルコパイライト位相は、アニーリング方法の後も存続した。
【0097】
アニーリングした薄膜のピークは全て、減少したFWHMを示し、それはより大きなドメインサイズを示す。それによって、アニーリング方法の結果、量子ドットの合体及び成長が行われたことが理解される。基線減算の後、回折図形は、多数のガウス曲線によってフィットされる。これらの曲線のFWHMをシェラー方程式に用いて、蒸着された薄膜の約2nmの粒子サイズ及びそれアニーリングした薄膜の6nmの粒子サイズを推定することができる。
【0098】
このように形成されるアニーリングした薄膜をどのように光起電装置において用いることができるかは、当業者には明らかだろう。当業者に知られている方法を、実施例5で上述したようにナノ粒子薄膜を含むこのような装置を製造するために利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の製造方法であって、セレノール化合物の存在下で、前記第13族、第16族、及び第11族又は第12族イオンを含有するナノ粒子前駆体組成物の、ナノ粒子材料への転化を生じさせることを含む方法。
【請求項2】
前記セレノール化合物は有機セレノール化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機セレノール化合物は、化学式R―SeHによって表すことができ、ただしRは置換又は非置換の有機基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機基は、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールからなる族から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機基は、2〜20の炭素原子を含むアルキル、アルケニル又はアルキニル基である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記有機基は、4〜14の炭素原子を含むアリール基である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記セレノール化合物は1―オクタンセレノール又は1―ドデカンセレノールである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有機セレノール化合物は揮発性の有機セレノール化合物である上記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子前駆体組成物の少なくとも第1部分を溶媒中に分散させることを含む上記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第1部分は、前記第13族イオン、及び第11又は12族イオンのうちの少なくとも1つの供給源を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第1部分の添加の後、前記溶媒を第1の温度に加熱する請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の温度は約90〜150℃である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱を約10〜40分間行う請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記セレノール化合物を、前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第1部分を含む溶媒に添加する請求項9乃至13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記セレノール化合物の添加後、前記溶媒を約120〜160℃の温度まで加熱する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱を最長で約30分間行う請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第1部分及びセレノール化合物を含む溶媒に前記ナノ粒子前駆体組成物の第2部分を添加する請求項14、15、又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第2部分は、第16族イオンの供給源を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第2部分を滴加する請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノ粒子前駆体組成物の前記第2部分の添加中及び/又は添加後に、前記溶媒を第2の温度に加熱する請求項17、18、又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の温度は約140〜200℃である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱を最長で約10時間にわたって行う請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
第1の第13族イオン―配位化合物によって、前記第13族イオンがナノ粒子前駆体組成物に提供される上記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項24】
前記第1の第13族イオン―配位化合物はアセテート化合物である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子は、第13族イオンの少なくとも1つの更なる種を含有し、該第13族イオンの少なくとも1つの更なる種は、第2の第13族イオン―配位化合物によってナノ粒子前駆体組成物に提供される請求項23又は24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子前駆体組成物は、第11族イオン―配位化合物を含む上記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項27】
前記第11族イオン―配位化合物はアセテート化合物である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子前駆体組成物は、第12族イオン―配位化合物を含む請求項1乃至25の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第12族イオン―配位化合物はアセテート化合物である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第16族イオンは、セレンイオンである上記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項31】
前記セレンイオンの少なくとも一部は、セレノール化合物によって提供される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セレンイオンの少なくとも一部は、ナノ粒子前駆体化合物において提供されるセレン化合物によって提供される請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記セレン化合物はトリオクチルホスフィンセレニドである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ナノ粒子は更に、硫黄及び/又はテルルイオンを含む請求項30乃至33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記硫黄及び/又はテルルイオンは、それぞれトリオクチルホスフィンスルフィド及び/又はトリオクチルホスフィンテルリドによって提供される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第13族イオンは、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる族から選択される請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ナノ粒子は、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる族から選択される第13族イオンの少なくとも1つの異なる種を更に含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ粒子は、ガリウム及びインジウムイオンを含有する請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ粒子は、銅及び銀からなる族から選択される第11族イオンを含有する請求項1乃至22及び36乃至38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ粒子は、亜鉛又はカドミウムからなる族から選択される第12族イオンを含有する請求項1乃至22及び36乃至38の何れか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ粒子は、銅、インジウム、ガリウム及びセレンイオンを含有する請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ナノ粒子は硫黄イオンを更に含有する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ナノ粒子は、化学式
AB1−xB´Se2―y
によって表すことができ、
ただし
Aは、Cu、Zn、Ag及びCdからなる族から選択され、
B及びB´は、Al、In及びGaからなる族から、それぞれ独立に選択され、
Cは、S及びTeからなる族から選択され、
0≦x≦1、
0≦y<2であり、
x>0、B´≠Bという条件である請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
Aは銅である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
0<x≦1、Bはガリウムであり、B´はインジウムである請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
0<y<2であり、Cは硫黄である請求項43、44、又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ粒子は、CuInSe、CuInGa1―xSe、CuGaSe、ZnInSe、ZnInGa1―xSe、ZnGaSe、AgInSe、AgInGa1―xSe、AgGaSe、CuInSe2―y、CuInGa1―xSe2―y、CuGaSe2―y、ZnInSe2―y、ZnInGa1―xSe2―y、ZnGaSe2―y、AgInSe2―y、AgInGa1―xSe2―y、AgGaSe2―yからなる族から選択され、ただし0≦x≦1及び0≦y<2である請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項48】
周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンと揮発性のキャッピング剤とを含有するナノ粒子の製造方法であって、製造されたナノ粒子において前記キャッピング剤として働く揮発性のセレノール化合物の存在下で、前記第13族、第16族、及び第11族又は第12族イオンを含有するナノ粒子前駆体組成物の、ナノ粒子材料への転化を生じさせることを含む方法。
【請求項49】
前記セレノール化合物は有機セレノール化合物である請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記有機セレノール化合物は1―オクタンセレノール又は1―ドデカンセレノールである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子を含む印刷可能なインク調製物の製造方法であって、請求項1乃至50の何れか1項に従ってナノ粒子を製造することと、前記ナノ粒子を適切なインクベースと合わせることとを含む方法。
【請求項52】
前記インクベースは1以上の有機化合物を含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記又はそれぞれの有機化合物は、芳香族化合物、脂肪族化合物及びセレノール化合物からなる族から選択される請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記インクベースは、トルエン及びドデカンセレノールを含む請求項51に記載の方法。
【請求項55】
結果として生じるインク調製物が前記ナノ粒子の多くとも約50%w/vを含むのに十分な量の前記ナノ粒子を前記インクベースと合わせることを含む請求項51乃至54の何れか1項に記載の方法。
【請求項56】
結果として生じるインク調製物が前記ナノ粒子の約10〜40%w/vを含むのに十分な量の前記ナノ粒子を前記インクベースと合わせることを含む請求項51乃至54の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
結果として生じるインク調製物が前記ナノ粒子の約20〜30%w/vを含むのに十分な量の前記ナノ粒子を前記インクベースと合わせることを含む請求項51乃至54の何れか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記ナノ粒子と前記インクベースとを合わせることによって、その後不必要なガス状の副生成物を取り除くために処理される溶液を製造する請求項51乃至57の何れか1項に記載の方法。
【請求項59】
請求項1乃至50の何れか1項に従って製造される、周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子と、適切なインクベースとを含む印刷可能なインク調製物。
【請求項60】
前記ナノ粒子の多くとも約50%w/vを含む請求項59に記載の印刷可能なインク調製物。
【請求項61】
周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子の多くとも約50%w/vと、適切なインクベースとを含む印刷可能なインク調製物。
【請求項62】
前記インクベースは1以上の有機化合物を含む請求項59、60、又は61に記載の印刷可能なインク調製物。
【請求項63】
前記又はそれぞれの有機化合物は芳香族化合物、脂肪族化合物及びセレノール化合物からなる族から選択される請求項62に記載の印刷可能なインク調製物。
【請求項64】
前記インクベースは、トルエン及びドデカンセレノールを具える請求項59、60、又は61に記載の印刷可能なインク調製物。
【請求項65】
前記ナノ粒子の約10〜40%w/vを含む請求項59乃至64の何れか1項に記載の印刷可能なインク調製物。
【請求項66】
前記ナノ粒子の約20〜30%w/vを含む請求項59乃至64の何れか1項に記載の印刷可能なインク調製物。
【請求項67】
周期表の第13族、第16族、及び第11族又は第12族から選択されるイオンを含有するナノ粒子を含む薄膜の製造方法であって、請求項1乃至50の何れか1項に従ってナノ粒子を製造することと、前記薄膜を形成することとを含む方法。
【請求項68】
前記膜の形成は、前記薄膜を支持層上に形成することを可能にする条件下で、前記支持層上へ前記ナノ粒子を含む調製物を蒸着することを含む請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ナノ粒子調製物の蒸着は、印刷、コーティング及び吹付けからなる群から選択される方法を用いて行う請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記ナノ粒子調製物の蒸着はドロップキャスティング及び/又はスピンコーティングを含む請求項68又は69に記載の方法。
【請求項71】
前記スピンコーティングは最高約5000回転数/分の回転速度で行う請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記スピンコーティングは約500〜3500回転数/分の回転速度で行う請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記スピンコーティングは約2000回転数/分の回転速度で行う請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記スピンコーティングは最長で約300秒間にわたって行う請求項70乃至73の何れか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記スピンコーティングは約20〜150秒間にわたって行う請求項70乃至73の何れか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記スピンコーティングは約60秒間にわたって行う請求項70乃至73の何れか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記膜の形成は、少なくとも1つのアニーリングサイクルを含み、該又はそれぞれのアニーリングサイクルは一連のステップを含み、該ステップにおいて、前記支持層に蒸着されたナノ粒子調製物の温度を繰り返し上昇させ、その後、前記上昇した温度に所定の時間維持し、その後前記ナノ粒子調製物を冷却して前記膜を形成する請求項68乃至76の何れか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1つのアニーリング処理の間、前記ナノ粒子調製物を加熱する最高温度が、加熱を行う圧力におけるセレンの蒸発温度より低い請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも1つのアニーリング処理の間、前記ナノ粒子調製物を加熱する最高温度が、約450℃以下である請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記少なくとも1つのアニーリング処理の間、前記ナノ粒子調製物を加熱する最高温度が、約410℃以下である請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記一連のステップの各々を実行することで、前記ナノ粒子調製物の温度が約10〜70℃上昇する請求項77乃至80の何れか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記一連のステップの各々は、最高約10℃/分の速度でナノ粒子調製物の温度を上昇させることを含む請求項77乃至81の何れか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記一連のステップの各々は、約0.5〜5℃/分の速度で前記ナノ粒子調製物の温度を上昇させることを含む請求項77乃至81の何れか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記一連のステップの各々は、約1〜2℃/分の速度で前記ナノ粒子調製物の温度を上昇させることを含む請求項77乃至81の何れか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記所定の時間は最長で約60分である請求項77乃至84の何れか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記所定の時間は約5〜40分である請求項77乃至84の何れか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記所定の時間は約10〜20分である請求項77乃至84の何れか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記又は少なくとも1つのアニーリングサイクルは、静的雰囲気下で行う請求項77乃至87の何れか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記又は少なくとも1つのアニーリングサイクルは、実質的に不活性雰囲気の下で行う請求項77乃至88の何れか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記又は少なくとも1つのアニーリングサイクルは、セレン含有雰囲気の下で行う請求項77乃至89の何れか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記膜の形成は第1及び第2のアニーリングサイクルを含み、前記第1のアニーリングサイクルは前記ナノ粒子調製物の温度を第1の最高温度に上昇させ、前記第2のアニーリングサイクルは前記ナノ粒子調製物の温度を第2の最高温度に上昇させ、前記第2の最高温度は前記第1の最高温度より高い請求項77乃至90の何れか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記第2の最高温度は約450℃以下である請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の最高温度は約300℃以下である請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記第2のアニーリングサイクルは、静的な雰囲気において実行される請求項91、92、又は93に記載の方法。
【請求項95】
前記ナノ粒子調製物は前記ナノ粒子及び適切なインクベースを含む請求項68乃至94の何れか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記調製物は、請求項59乃至66の何れか1項に従っている請求項95に記載の方法。
【請求項97】
第1及び第2のイオンを含有する半導体ナノ粒子を含む薄膜の製造方法であって、前記ナノ粒子を含む調製物の層を支持層上に蒸着することと、その後、前記蒸着されたナノ粒子含有層を静的雰囲気下でアニール化することとを含む方法。
【請求項98】
前記静的雰囲気は、実質的に不活性雰囲気である請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記静的雰囲気はセレンを含む請求項97又は98に記載の方法。
【請求項100】
請求項1乃至50の何れか1項に従って製造されるナノ粒子材料を含む光起電装置層。
【請求項101】
請求項1乃至50の何れか1項に従って製造されるナノ粒子材料を含む層を具える光起電装置。
【請求項102】
光起電装置の製造方法であって、材料の第1層を提供することと、請求項1乃至50の何れか1項に従って製造されるナノ粒子材料を含む層を前記第1層上に提供することとを含む方法。
【請求項103】
前記第1層はモリブデンを含む請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記ナノ粒子材料を含む前記層上に材料の第2層が提供される請求項102又は103に記載の方法。
【請求項105】
前記第2層は硫化カドミウムを含む請求項104に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−505449(P2011−505449A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535452(P2010−535452)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003958
【国際公開番号】WO2009/068878
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(509295262)ナノコ テクノロジーズ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】