説明

ナフタレン誘導体の製造方法

一般式
R-(A1-Z-)m B-CF2O-A2-(A3)n-R' (I)
で示される化合物の製造方法。ただし、
Rはアルキルであり、1つまたは2つ以上のCH基は、相互に独立して、O、CF、CH=CH、CH=CFまたはCF=CFによって置換されていてもよく、ただしペルオキシド構造O−OおよびホルムアルデヒドアセタールO−CH−Oは除外され、
は、相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン、2,5−1,3−ジオキサニレン、1,3−シクロブチレンまたは
【化1】


であり、
およびAは、1,4−フェニレンであり、相互に独立して、1つ〜4つの水素はフッ素によって置換されていてもよく、または1つまたは2つのCH基はNによって置換されていてもよく、
Zは、単結合、−CH−CH−、−CF−CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CF−または−CF=CH−であり、
Bは、2,6−二置換ナフタレン、2,6−二置換5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンまたは2,6−二置換トランスデカリンであり、
R' は、R、F、OCF、OCFH、CF、Cl、SF、CNまたはNCSであり、そして
mおよびnは、相互に独立して、0または1であり、
以下のステップを含む:
a)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
で示される化合物のカルボン酸誘導体への、基Xの脱離およびC1ユニットの導入による変換。
ただし、Xはハロゲンまたは=Oであり、および他の記号は式(I)における定義のとおりである。
b)前記カルボン酸誘導体の、一般式
HO-A2(-A3)n-R' (III)
で示されるフェノールとの反応により、式(I)で示される化合物を与える。
ただし、A、A、R' およびnは式(I)における定義のとおりである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶化合物としてナフタレンおよびナフタレンの水素化誘導体由来であり特徴的に−CFO−ブリッジを分子内に含むものの製造方法に関する。前記方法は、水素置換ナフタレン誘導体から始まり、これを対応する酸に変換した後、目的分子に、グリニャール化合物を経て間接的に変換する。これらは好ましくはジチオオルトエステル類を経て行われる。
【0002】
液晶の広範な適用場面が、最初に市販し得る液晶が見いだされた約30年前から見いだされている。既に知られている適用領域は、例えば時計、ポケット計算機および電話のディスプレイである。適用領域は、さらに携帯用コンピュータおよびナビゲーションシステム、ならびにビデオアプリケーションおよびPCモニターに及ぶ。最後に述べたアプリケーションにおいては、とくに高い要求が、反応時間および画像のコントラストに対してなされている。
【0003】
市販のアプリケーションが使用可能であるためには、液晶分子は一定の特性を備えていなければならない。液晶ディスプレイを伴う装置を種々の気象条件下において用いるために、分子は安定したネマチック相を、極力広い温度領域にわたり、室温の領域において形成しなければならない。したがって、かかる化合物は、低い融点および高い透明点を有していなければならない。
【0004】
短い反応時間を達成するために、分子は低い回転粘度を有していなければならない。すなわち、反応時間として16.7ミリ秒がビデオアプリケーションには要求される。また、液晶分子は、高い誘電異方性を有することによって、必要なしきい値電圧が低いものでしかなくなるようなものでなければならない。このことが意味するのは、低いエネルギー要求性により、小さい電池、すなわち軽い電池を用いることを可能とすることが、例えばラップトップにおいて要求されるということである。さらに、分子の光学異方性は、コントラストおよび実用的な視野角に影響するものとしてディスプレイの設計に重要である。
【0005】
これらの要求の全てを同時に充足するために、純物質を用いる代わりに混合物を用いる。かかる混合物は、通常5個〜15個の異なる成分を含有する。このことは、個々の成分は相互に相溶性を有していなければならないことを意味する。すなわち、例えば、相互に他方の成分に溶解するのである。
現代のアクティブ・マトリクスでにおいては、高いコントラストが画像に対して求められる。したがって、液晶化合物は、高い比抵抗および高い電圧保持率を有するものでなければならない。
【0006】
液晶化合物としてとくに高い比抵抗を有するものが、フッ素含有基を分子構造内に有する化合物であることが証明されている。すなわち、例えばEP 0 844 229 A1には液晶化合物として、CFOブリッジを有するものが記載されている。種々の製造方法が、このブリッジの調製について提唱されている。記載された製造方法の1つにおいては、まず芳香族ハロゲンをグリニャール化合物またはリチウム化化合物に変換し、次にジチオカルボン酸への変換を、二硫化炭素を用いて行う。このジチオカルボン酸のチオエステルへの変換を、フェノールを用いて、アルカリ金属ヒドリドおよびヨウ素存在下において行う。さらに、所望のCFOブリッジの形成を、フッ素化剤を用いて行う。
【0007】
他の製造方法において提唱されているのは、まずシクロヘキサノンをトリス(ジメチルアミノ)ホスフィンおよびジブロモジフルオロメタンと反応せしめ、ジフルオロメチレンヘキシリデンを得ることである。臭素を後者にまず添加し、その生成物のエーテル化によって、−CFO−の形成を、フェノキシドとの反応によって臭化水素の脱離とともに行う。
【0008】
液晶性ナフタレン、テトラリンおよびデカリンが知られるようになってから久しい(M. Petrzilka, K. Schleich, Helv. Chim. Acta 65, 1982, pages 1242 ff., H. Zollinger et al., Helv. Chem. Acta 64, 1981, pages 1847 ff., and ibid 66, 1983, pages 1574 ff., E. Poetsch, Kontakte 2, 1988, pages 15 ff.)。
これらの化合物は、これまで液晶媒体ディスプレイにおいて用いられなかったが、比較的広いメソフェーズを、(市販されている)化合物としてシクロヘキシルおよびフェニル環を有するものとの対比において有する(W. Schaefer, H. Altmann, H. Zaschke, H.H. Deutscher, Mol. Cryst. Liq. Cryst. 95, 1983, pages 63 ff.)。その理由は明確であって、立体的障害がナフタレン構造によって増大し、その結果流動粘度および回転粘度が高くなり、望ましくない反応時間の伸長がもたらされるからである。
【0009】
液晶化合物として、その由来がナフタレン誘導体または(部分的に)水素化されたその誘導体であり、CFOブリッジを有するものは、DE 40 06921 A1、JP 2000-1116370/10、JP 1133495、WO 00/10952 A1、JP 2001-19649およびJP 2000-355557に記載されている。しかし、第一に、上記引用文献には、記載された化合物には通常の欠点として上記のものがないことは、ナフタレン化合物について示唆されていない。第二に、上記引用文献は、工業的に用い得る合成法としてナフタレン誘導体としてCFOブリッジを有するものの調製方法については開示していない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、このタイプの化合物の製造方法を提供することにある。かかる目的は、一般式
R-(A1-Z-)m B-CF2O-A2-(A3)n-R' (I)
で示される化合物の製造方法によって達成される。ただし、上記一般式において、
Rはアルキルであり、1個〜12個の炭素原子を有し、好ましくは1個〜5個の炭素原子を有し、とくに好ましくは1個、3個または5個の炭素原子を有し、1つまたは2つ以上のCH基は、相互に独立して、O、CF、CH=CH、CH=CFまたはCF=CFによって置換されていてもよく、ただしペルオキシド構造O−OおよびホルムアルデヒドアセタールO−CH−Oは含まれず、
【0011】
は、相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン、2,5−1,3−ジオキサニレン、1,3−シクロブチレンまたは
【化1】

であり、
およびAは、1,4−フェニレンであり、相互に独立して、1つ〜4つの水素はフッ素によって置換されていてもよく、または1つまたは2つのCH基はNによって置換されていてもよく、
Zは、単結合、−CH−CH−、−CF−CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CF−または−CF=CH−であり、
Bは、2,6−二置換ナフタレン、2,6−二置換5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンまたは2,6−二置換トランスデカリンであり、
R' は、R、F、OCF、OCFH、CF、Cl、SF、CNまたはNCSであり、そして
mおよびnは、相互に独立して、0または1であり、
以下のステップを含む:
【0012】
a)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
で示される化合物のカルボン酸誘導体への、基Xの脱離およびC1ユニットの導入による変換。
ただし、Xはハロゲンまたは=Oであり、および他の記号は式(I)における定義のとおりである。
b)前記カルボン酸誘導体の、一般式
HO-A2(-A3)n-R' (III)
で示されるフェノールとの反応により、式(I)で示される化合物を与える。
ただし、A、A、R' およびnは式(I)における定義のとおりである。
【0013】
一態様において、本発明は、ステップa)を下記のとおりに行う:
a‘)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
Xはハロゲンでありおよび他の記号は式(I)における定義のとおりである、で示される化合物の、対応するグリニャール化合物への変換、生成する前記グリニャール化合物のCOとの反応および式
R-(A1-Z-)mB-CO2H (IV)
で示される対応するカルボン酸誘導体またはその塩の加水分解による生成。
【0014】
別の一態様において、本発明は、ステップa)を下記のとおりに行う:
a‘‘)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
Xは=O基である、で示される化合物の、ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩への、適切な硫黄含有化合物との反応による変換。
とくに2,6−ジ置換トランスデカリン類の場合、X=Oである。
【0015】
本発明の好ましい態様において、式(II)のXはCl、Br、およびIからなる群から選択される。Xはとくに好ましくはBrである。
ハロゲン置換化合物として式(II)のものは、自体公知の方法によって得られる。これらの化合物は、好ましくは対応するアルコールから、対応するハロゲン化水素、ハロゲン化チオニルとの反応またはハロゲン/PPhによって調製される。式(II)の化合物の対応するグリニャール化合物での変換は、DE 102 20 549 A1に記載の方法によって行うことができる。該公報は、デカリン誘導体の製法に関するものである。
【0016】
かかる化合物においては配置が不安定であるため、得られるグリニャール化合物であるデカリン誘導体は、全てにおいてトランスの配置を取る。すなわち、アキシャル配置を取るハロゲン化物およびエカトリアル配置を取るハロゲン化物のいずれもがエカトリアル配置を取るMgBr誘導体を形成する。この立体化学は、次の酸(IV)またはこれから形成される反応生成物においても保持される。DE 102 20 549 A1において開示されている製法としてグリニャール化合物にかかるものは、本願の全体の構成に必要なものであり、参照として本明細書に組み入れられる。
【0017】
グリニャール化合物を調製する方法について、簡単に再び以下に記載する。というのは、それが本発明において対応する2,6−デカリン誘導体の調製のみならず、2,6−テトラヒドロナフタレン誘導体および2,6−ナフタレン誘導体の調製にも用いられるからである。
この目的のために、式(II)の化合物として、Bが2,6−デカリニル、2,6−テトラヒドロナフチルまたは2,6−ナフチルでありXがハロゲンであるものを、溶媒中のマグネシウムと反応せしめる。前記溶媒には、少なくとも1種の非極性溶媒および少なくとも1種の極性溶媒を含み、外部から加熱を行う。
【0018】
とくに有利に働くことは、所望のグリニャール反応を本発明に従って行うと、その進行においてベータ脱離の発生が極めて僅かであることである。ベータ脱離は、例えばHBrまたはHMgBrの形成をもたらすものである。
適切な非極性溶媒の例は、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素のうち、極性基を有さないものであり、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン、またはこれらの溶媒の混合物である。
適切な極性溶媒は、例えばエーテル類であって、例としてはジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランまたはジオキサンなどである。
【0019】
混合比(体積ベース)は、非極性溶媒または混合物を極性溶媒または混合物に対して、一般的に10:1〜1:2、好ましくは8:1〜1:1、そしてとくに好ましくは6:1〜2:1とする。
とくに好ましい溶媒混合物は、ベンゼンおよび/またはトルエンとテトラヒドロフランとの混合物である。混合比を5:1〜3:1とすると、この場合において有利になるように選択される。
【0020】
溶媒混合物として2種の成分を含有するもののほかに、3種、4種、5種または6種以上の成分を含むものを用いることも可能であるが、それぞれの場合において、少なくとも1種の、適度な極性を有する溶媒およびそれぞれの場合において、少なくとも1種の、実質的に非極性の溶媒が存在することが必要である。
前記反応が有利に行われるのは、溶媒混合物の沸点の温度において、大気圧条件下における場合である。好ましい温度範囲は、40〜100℃であり、とくに好ましくは、50〜80℃である。
【0021】
好ましい態様において、マグネシウムの適切な形態のもの、例えばターニングの形態のもの、の導入をまず保護気体雰囲気、例えば窒素、に行い、ある溶液として式(II)のハロゲン化合物を含むものを添加する。最初にこのようにして導入される量は、本発明においてはマグネシウムとともに温め、適切な開始剤、例えばヨードまたは少量のジブロモエタンを添加する。反応が開始された後、大部分の溶液をある時間をかけて、120分以内で添加し、反応混合物に対してさらに5〜360分の加温を、好ましくは環流下において行う。添加および継続中の外部からの加熱を終了して初めて前記マグネシウムは大部分が反応する。外部からの加熱に要する時間は、前記溶液の添加時間より一般に長い。外部からの加熱を本発明において行うのは反応を維持するためであり、それはグリニャール化合物の発熱性が不十分だからである。
【0022】
冷却後、グリニャール化合物を分離し、生成を当業者に公知の方法によって行う。続く反応は、好ましくは得られた反応溶液を用いて行う。
得られたグリニャール化合物を、次にCOと反応せしめる。分子の立体化学をここに示す(スキーム1を参照。デカリンおよびテトラヒドロナフタレン誘導体の両方を示す)。ナフタレン−、テトラヒドロナフタレン−、およびデカリンカルボン酸誘導体の調製は、一般にグリニャール化合物を単離せずに行う。すなわち、グリニャール化合物の生成は、原位置で直接COと反応せしめることによって行う。したがって、上記溶媒と同一のものを、グリニャール化合物の生成に用いる。
【0023】
【化2】

【0024】
スキーム(I)
グリニャール反応物質のZerewitinoff反応による分解を防ぐために、これはドライアイスの表面に濃縮された水が混ざることによって生じるものであることから、好ましくは気体のCOを用いる。
反応の終了後、カルボン酸を加水分解によって解離せしめる。カルボン酸またはその塩を、次に自体公知の方法によって単離する。
目的化合物である−CFO−ブリッジを有する化合物を、次にカルボン酸から生成せしめる。多くの可能な手法がこれを行うために考えられるところ、それらのいくつかは対応するエステルを経て進行する。
【0025】
ある態様においては、エステルの生成を酸(IV)およびフェノールとして式(III)HO−A(−A−R' (A、A、R' およびnは式(I)における定義のとおりである)から行うところ、これらの出発物質を、相互に水脱離条件下において反応せしめる。多くの場合水脱離物質を用いる。例えば、シクロヘキシルカルボジイミド、または酸ハロゲン化物として、混合した無機酸無水物(SOCl、PCl、POClまたはPBr)の対応するエステルへの変換を、塩基(ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンまたはトリエチルアミン)の存在下において行うことにより、調製したものを用いる。
【0026】
反応は、好ましくはシクロヘキシルカルボジイミドの存在下において、本技術分野の当業者に公知の条件下にて行う。
エステルを調製した後、後者を所望の式(I)の化合物への変換を、自体公知の条件下において行う。
好ましい方法には、硫化をLawesson試薬(2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,2,3,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジチオン)を用いて行いチオエステルを中間体とし、続いて酸化的脱硫フッ素化を行うことが包含される。該脱硫は、好ましくは臭素化試薬を用いて行う。
【0027】
適切なフッ素化試薬の例には、脂肪族および芳香族アミン/フッ化水素複合体、ピリジン/フッ化水素複合体、NEt・3HF、ピリジン中の50%HF、メラミン・HFおよびポリビニルピリジン・HFが包含される。
適切な酸化剤/臭素化剤の例には、ハロニウム等価体を遊離せしめる化合物が包含され、好ましくはジブロモヒダントイン、ジメチルジブロモヒダントイン、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、SOCl、SOClF、ニトロソニウムおよびニトロニウム塩、クロラミンTおよび臭素からなる群からのものであり、とくに好ましくは臭素である。
【0028】
上記調製方法について参照すべきものは、例えばT. Hiyama et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 73, 2000, 1875;およびTetrahedron Letters 33, 1992, 4173である。
最も好ましいエーテル(I)の酸(IV)からの調製方法は、ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩(V)への変換および所望の式(I)の化合物へのその変換をフェノール(III)との反応によって、フッ素化試薬および酸化剤の存在下において行うことである。
【0029】
かかる方法を下記スキーム(II)に図示する。
【化3】

【0030】
スキーム(II)
この方法においては、カルボン酸(IV)をアルキルチオールと反応せしめ、前記ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩(V)を得る。カルボン酸の代わりに、カルボン酸誘導体としてハロゲン、シュードハロゲン、置換スルホネート、アルコキシまたはフェノキシが−OH基の代わりに存在するするもの、または無水物を用いることもできる。しかし、これは好ましくはない。というのは、この場合さらに付加的な反応ステップを含むこととなるからである。
【0031】
好ましいのはチオールの使用であり、これによって環状カチオンが形成される。エタンジチオール、プロパンジチオールおよび1,2−ベンゼンジチオールによってジチアニリウム塩またはジチオラニリウム塩が形成されるところ、これらはとくに適切である。続いて塩(V)をフェノール(III)と反応せしめ、オルトエステル(VI)を得る。これは一般に単離せず、代わりに直接エーテル(I)への変換を酸化的フッ素化によって行う。エーテル(I)の上記調製方法は、WO 01/64667に記載されている。この方法は、本出願の主要な構成要素であり、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0032】
本発明の別の態様においては、ビスアルキルチオニウム塩の調製を、ケト化合物である式(II)としてXは=O基でありBはデカリニル基であるのものから開始して行う。この調製は、自体公知の方法によって行われる。参照する例として、D.J. Ager, Org. React. 38, 1990, 1頁〜223頁、とくに63、95および96頁が挙げられる。この方法においては、ケトンを脱プロトン化した2−シリル−1,3−ジチアンに添加し、室温における15〜90分の加温の後、任意にこの温度にさらに90分間保つ。通常の精製処理をNHCl溶液の添加とともに行った後ケテンジチオケタールを得て、続いてビスアルキルチオニウム塩に変換する。これは一般に酸性化によって行う。
【0033】
次に、得られた塩とフェノール(III)との反応を、フッ素化試薬および酸化剤の存在下において行い化合物(I)を得る。本発明において好ましい方法であるケテンジチオケタールを得る方法は、2−シリル−1,3−ジチアンを用いた反応であるところ、これは任意に置換したものであってもよい。とくに好ましく用いられるのは、2-トリメチルシリル−1,3−ジチアンである。前記反応は、好ましくは脱プロトン化合物の存在下において行うが、それは例えばアルキルリチウムであり、好ましくはn−ブチルリチウムである。反応温度は好ましくは−130〜0℃の範囲の値であり、とくに好ましくは−35〜0℃である。好ましい溶媒は、エーテルおよびハロアルカン、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩をケトンから調製し、CFOブリッジを有する化合物へ変換する方法は、DE 101 05313 A1に記載されている。DE 101 05313 A1の部分としてこの方法に関連するものは、参照によって本明細書に組み入れられる。
酸としてケテンジチオケタールのプロトン化に用いられるものは、一般式Hで示されるものの1つであり、ここでYは非配位性または弱い配位性を有するアニオンである。Yは好ましくはハロゲン化物、テトラフルオロボロン酸、ヘキサフルオロホスフェート、パークロレート、アルキルカーボネート、アリールカーボネート、アルキルスルホネートおよびアリールスルホネートからなる群から選択される。1個の、複数のまたは全ての水素原子であってアルキル基またはアリール基にあるものは、フッ素または塩素によって置換されていてもよい。とくに好ましい酸は、トリフルオロメタンスルホン酸およびテトラフルオロボロン酸/ジエチルエーテル複合体である。
【0035】
用いる酸の量は、ケテンジチオケタールユニットとして反応に用いるものに対して概ね当モル量とする。反応を有利に行うためには、温度の範囲を−80〜+30℃とし、不活性な溶媒または溶媒混合物の中において行う。適切な溶媒は、例えば、エーテルおよびハロアルカンならびにこれらの混合物であり、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジクロロメタンである。
【0036】
ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩は、好ましくは非配位性または弱い配位性のアニオンであり、とくに好ましくはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、パークロレートおよびパーフルオロアルキルスルホネートからなる群から選択され、とくにトリフルオロメタンスルホネートである。これらの塩は簡便に用いられるところ、その理由は事実上非吸湿性だからである。
【0037】
ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩とフェノール(III)との反応において、酸化剤として用いるものは通常の酸化剤であってよい。用いる酸化剤は、好ましくはハロニウム等価体を遊離せしめる化合物である。酸化剤の例は、ジメチルジブロモヒダントイン、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインおよび臭素である。とくに好ましくは、臭素である。その理由は、得られる臭化物を容易に分離できるからである。同様に好適なものは、例えば、SOCl、SOClF、ニトロソニウムおよびニトロニウム塩およびクロラミンTである。
【0038】
フッ素化剤として用いるものは通常のフッ素化剤であってよい。フッ素化剤は、とくに好ましくは脂肪族および芳香族アミン/フッ化水素複合体、ピリジン/フッ化水素複合体、NEt・3HF、ピリジン中の50%HF、メラミン・HFおよびポリビニルピリジン・HFからなる群から選択される。
本発明を、以下の非限定的な例によって説明する。
【0039】
例1
6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフタレン−2α−カルボン酸の調製
【0040】
【化4】

【0041】
10.0g(0.4111mol)のマグネシウムターニングをまず導入し、溶液として100.0g(0.386mol)のn-プロピル−シス−デカリニルブロミド(2β−ブロモ−6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフタレン)のベンゼンとテトラヒドロフランの4:1混合物770ml中のものを沸点において次に添加した。添加が終了すると、混合物をさらに30分間環流に付し、次に冷却して-10℃とした。CO(ドライアイスの気化によって得たもの)を次にその中に通した。温度は15℃に上がった。反応が完了したときに水を添加し、混合物の酸性化をHClを用いて行い、希釈を600mlのメチルtert−ブチルエーテルを用いて行った。有機相を分離し、回転式エバポレータによって気化せしめた。粗生成物を得て再結晶をヘプタンから行い、36.4g(41.9%)の生成物を結晶として、純度99.6%にて得た。
【0042】
例2
2-(6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフタレン−2α−イル)−1,3−ジチアン−2−イリウムトリフルオロメタンスルホネートの調製
【0043】
【化5】

【0044】
15.4g(0.069mol)の例1において得た酸の反応を、6.915ml(0.069mol)の1,3−プロパンジチオールおよび15.6 ml(0.177mol)のトリフルオロメタンスルホン酸と行った。まず前記酸およびチオールを導入し、トリフルオロメタンスルホン酸を滴下添加する。わずかに発熱性の反応が終了したとき、混合物をさらに120℃にて75分間攪拌した。混合物を約80℃に冷まし、42mlのジブチルエーテルを添加した。さらに100mlのジブチルエーテルを添加した後、溶液を一晩−20℃において保存し、49.2gのオイルを得て、これをそのまま次のステップに用いた。ジチアニリウム塩の含量は50%と推測された。分解をジエチルエーテルを用いて−80℃において行い、21.9gの結晶をオイルから、バッチ処理を反復して得た。
【0045】
例3
2α−[(ジフルオロ−3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフタレンの調製
【0046】
【化6】

【0047】
例2において得た生成物49.2g(0.035mol)として推定含量50%のものの300mlのジクロロメタンへの−70℃における導入をまず行い、混合物として23.1ml(0.166mol)のトリエチルアミンおよび8.75g(0.053mol)の3,4,5−トリフルオロフェノールの100mlのジクロロメタン中のものをこの温度において滴下添加した。無色の固体が一時的に沈殿し、最終的には再溶解した。混合物を−70℃において1.5時間攪拌し、29.75mlのトリエチルアミントリスヒドロフルオリドをこの温度において滴下添加した。混合物をさらに30分間攪拌し、48.608g(0.170mol)の1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを次に添加した。さらに1.5時間の後、バッチを0℃に温めた。黄色の懸濁液を次に注意深くNaHCO溶液に攪拌しながら添加した。有機相を分離し、水相を再度ジクロロメタンによって抽出した。有機相を合わせて再度飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水によって洗浄し、溶媒を減圧下にて除去した。シリカゲルを通しての二重ろ過の後、生成物を再結晶せしめ、7.5g(36.2%)の生成物を得た。
【0048】
例4
2-[(ジフルオロ−3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−6−エチルナフタレンの調製
【0049】
【化7】

【0050】
22.5g(0.053mol)の2−(6−エチルナフト−2−イル)−1,3−ジチアン−2−イリウムトリフルオロメタンスルホネートの440mlのジクロロメタンへの、−70℃における導入をまず行い、混合物として12.689ml(0.090mol)のトリエチルアミンおよび7.85g(0.053mol)の3,4,5−トリフルオロフェノールの640mlのジクロロメタン中のものをこの温度において滴下添加した。無色の固体が一時的に沈殿し、最終的には再溶解した。混合物を−70℃において1.5時間攪拌し、44.942mlのトリエチルアミントリスヒドロフルオリドをこの温度において滴下添加した。混合物をさらに30分間攪拌し、73.65g(0.257mol)の1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを次に添加した。さらに1.5時間の後バッチを0℃に温めた。黄色の懸濁液を次に注意深くNaHCO溶液に攪拌しながら添加した。有機相を分離し、水相を再度ジクロロメタンによって抽出した。有機相を合わせて再度飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水によって洗浄し、溶媒を減圧下にて除去した。シリカゲルを通してのろ過およびシリカゲルを用いたヘプタン/トルエン(9:1)によるクロマトグラフィの後、生成物を再結晶せしめ、1.9g(10.1%)の生成物を得た。
出発物質である2−(6−エチルナフト−2−イル)−1,3−ジチアン−2−イリウムトリフルオロメタンスルホネートは、6−エチルナフタレン−2−カルボン酸から、例1および2に記載の方法と類似の方法によって得た。
【0051】
例5
2−[(ジフルオロ−(3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメトキシ)フェノキシ)−メチル]−6−エチルナフタレンの調製
【0052】
【化8】

【0053】
22.5g(0.053mol)の2−(6−エチルナフト−2−イル)−1,3−ジチアン−2−イリウムトリフルオロメタンスルホネートの440 mlのジクロロメタンへの、−70℃における導入をまず行い、混合物として12.69ml(0.090mol)のトリエチルアミンおよび13.349g(0.053mol)の3,5−ジフルオロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェノールの200 mlのジクロロメタン中のものをこの温度において滴下添加した。無色の固体が一時的に沈殿し、最終的には再溶解した。混合物を−70℃において1.5時間攪拌し、44.942mlのトリエチルアミントリスヒドロフルオリドをこの温度において滴下添加した。混合物をさらに30分間攪拌し、73.65g(0.257mol)の1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを次に添加した。さらに1.5時間の後、バッチを0℃に温めた。黄色の懸濁液を次に注意深くNaHCO溶液に攪拌しながら添加した。有機相を分離し、水相を再度ジクロロメタンによって抽出した。有機相を合わせて再度飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水によって洗浄し、溶媒を減圧下にて除去した。シリカゲルを通してのろ過の後、生成物を再結晶せしめ、5.2g(23.3%)の生成物を得た。
【0054】
例6
【化9】

【0055】
50.0 g(0.260mol)の2−トリメチルシリル−1,3−ジチアンを900 mlのTHFに溶解し、167 ml(0.273mol)の15% n−ブチルリチウムのヘキサン中の溶液を−70℃において滴下添加した。バッチを緩やかに0℃になるまで4時間にわたり解かし、再び−70℃に冷却し、次に50.0g(0.260mol)の6−n−プロピル−トランス−デカリン−2−オンの100 mlのTHF中の溶液を滴下添加した。添加終了時に冷却を止め、透明な黄色の溶液を一晩攪拌した。次にバッチを1000mlの氷水に導入し、水相を分離し、3回の抽出をその都度300mlの石油エーテルを用いて行った。有機相を合わせて2回の洗浄を飽和塩化ナトリウム溶液によって行い、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。溶媒を減圧下にて除去し、生成物をn−ヘプタンから再結晶せしめ、63.2g(82%)の2−(6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフト−2−イリデン−1,3−ジチアンを無色の固体として得た。
【0056】
例7
【化10】

【0057】
50.0g(0.169mol)の2−(6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフト−2−イリデン−1,3−ジチアンを200 mlのジクロロメタンに溶解し、14.8 ml(0.169mol)のトリフルオロメタンスルホン酸の導入を、注意深く氷冷しながら行った。15分後に冷却を止め、混合物を室温にて30分間攪拌した。次にバッチを−70℃に冷却し、混合物として42.3ml(0.304mol)のトリエチルアミンおよび37.5g(0.254mol)の3,4,5−トリフルオロフェノールを100mlのジクロロメタンに含むものを添加し、混合物を−70℃において1時間攪拌した。次に136ml(0.845mol)のトリエチルアミントリスヒドロフルオリドを溶液に添加し、5分後に懸濁液として242g(0.845mol)の1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを、部分に分けて30分間にわたり添加した。混合物をさらに60分間攪拌し、バッチを−20℃になるまで解かし、オレンジ色の溶液を1lの氷冷1M水酸化ナトリウム溶液に攪拌しながら添加した。有機相を分離し、水相の3回の抽出をジクロロメタンによって行った。有機相を合わせて2回の洗浄を飽和塩化ナトリウム溶液によって行い、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。溶媒を減圧下にて除去した後、残渣をシリカゲルを通し、n−ヘキサンを用いてろ過し、粗生成物をn−ヘキサンから再結晶せしめ、55.3g(87%)の2α−[(ジフルオロ−3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−6β−プロピル−(4aα,8aβ)−デカヒドロナフタレンを無色の結晶として得た(融点:56℃)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
R-(A1-Z-)m B-CF2O-A2-(A3)n-R' (I)
で示される化合物の製造方法において、
Rはアルキルであり、その1つまたは2つ以上のCH基は、相互に独立してO、CF、CH=CH、CH=CFまたはCF=CFによって置換されていてもよく、ただしペルオキシド構造O−OおよびホルムアルデヒドアセタールO−CH−Oは除外され、
は、相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン、2,5−1,3−ジオキサニレン、1,3−シクロブチレンまたは
【化1】

であり、
およびAは、1,4−フェニレンであり、相互に独立して、1つ〜4つの水素はフッ素によって置換されていてもよく、または1つまたは2つのCH基はNによって置換されていてもよく、
Zは、単結合、−CH−CH−、−CF−CF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CF−または−CF=CH−であり、
Bは、2,6−二置換ナフタレン、2,6−二置換5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンまたは2,6−二置換トランスデカリンであり、
R' は、R、F、OCF、OCFH、CF、Cl、SF、CNまたはNCSであり、そして
mおよびnは、相互に独立して、0または1であり、
以下のステップを含む製造方法:
a)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
で示される化合物のカルボン酸誘導体への、基Xの脱離およびC1ユニットの導入による変換。
ただし、Xはハロゲンまたは=Oであり、および他の記号は式(I)における定義のとおりである。
b)前記カルボン酸誘導体の、一般式
HO-A2(-A3)n-R' (III)
で示されるフェノールとの反応により、式(I)で示される化合物を与えること。
ただし、A、A、R' およびnは式(I)における定義のとおりである。
【請求項2】
ステップa)を下記のとおりに行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法:
a‘)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
Xはハロゲンでありおよび他の記号は式(I)における定義のとおりである、で示される化合物の、対応するグリニャール化合物への変換、生成する前記グリニャール化合物のCOとの反応および式
R-(A1-Z-)mB-CO2H (IV)
で示される対応するカルボン酸誘導体またはその塩の加水分解による生成。
【請求項3】
式(II)のXが、Cl、BrおよびIからなる群から選択されること、とくに好ましくはBrであることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記グリニャール化合物を調製するために、式(II)で示される化合物としてB=2,6−デカリニル、2,6−テトラヒドロナフチルまたは2,6−ナフチルであるものとマグネシウムとの反応を、少なくとも1種の非極性溶媒および少なくとも1種の極性溶媒を含む溶媒中において、外部から加熱することによって行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記グリニャール化合物の反応を気体状態のCOを用いて行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
エステルの生成を、酸(IV)および式(III)HO−A(−A−R' のフェノールであってA、A、R' およびnは式(I)における定義のとおりであるものから、水を除去する条件下において行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
エーテル(I)の生成を、エステルからビスアルキルチオニウム塩(V)への変換およびそのフェノール(III)との酸化的脱硫フッ素化による反応によって行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
カルボン酸(IV)を環状アルキルチオール、とくにエタンジチオール、プロパンジチオールおよび1,2−ベンゼンジチオールからなる群からのものと反応せしめ、ビスアルキルチオニウム塩を得ることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
脱硫フッ素化において用いる酸化剤が、ハロニウム等価体を遊離せしめる化合物であり、好ましくはジブロモヒダントイン、ジメチルジブロモヒダントイン、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、SOCl、SOClF、ニトロソニウムおよびニトロニウム塩、クロラミンTおよび臭素からなる群からのものであり、とくに好ましくは臭素であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
フッ素化剤が、脂肪族および芳香族アミン/フッ化水素複合体、ピリジン/フッ化水素複合体、NEt・3HF、ピリジン中の50%HF、メラミン・HFおよびポリビニルピリジン・HFであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
エステルを酸化剤、好ましくは臭素化剤、の存在下においてフッ素化剤と反応せしめ、エーテル(I)を、中間体としてのチオエステルの形成を伴って得ることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
ステップa)を下記のとおりに行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法:
a‘‘)一般式
R-(A1-Z-)mBX (II)
Xは=O基である、で示される化合物の、ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩への、適切な硫黄含有化合物との反応による変換。
【請求項13】
ケテンジチオケタールの調製を(II)の2−シリル−1,3−ジチアンとの反応によって脱プロトン化合物の存在下において行い、前記2−シリル−1,3−ジチアンは任意に置換されていてもよく、好ましくは2-トリメチルシリル−1,3−ジチアンであり、前記脱プロトン化合物は、好ましくはアルキルリチウムであり、とくに好ましくはn−ブチルリチウムであり、続いてビス(アルキルチオ)カルベニウム塩への変換を、好ましくは酸性化によって行うことを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
プロトン化に用いる酸が、一般式Hで示される化合物の1つ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸またはテトラフルオロボロン酸/ジエチルエーテル複合体、であることを特徴とする、請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
ビス(アルキルチオ)カルベニウム塩が、非配位性または弱い配位性のアニオンを有し、好ましくはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、パークロレートおよびパーフルオロアルキルスルホネートからなる群から選択され、とくにトリフルオロメタンスルホネートであるることを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
用いる酸化剤が、ハロニウム等価体を離脱せしめる化合物であり、好ましくはジメチルジブロモヒダントイン、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、SOCl、SOClF、ニトロソニウムおよびニトロニウム塩、クロラミンTまたは臭素であり、とくに好ましくは臭素であることを特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
フッ素化剤が、脂肪族および芳香族アミン/フッ化水素複合体、ピリジン/フッ化水素複合体、NEt・3HF、ピリジン中の50%HF、メラミン・HFおよびポリビニルピリジン・HFからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれかに記載の製造方法。

【公表番号】特表2006−519756(P2006−519756A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556094(P2004−556094)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012039
【国際公開番号】WO2004/050594
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】